生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_蛍光蛋白質
出願番号:2001174421
年次:2006
IPC分類:C12N 15/09,C07K 14/435,C07K 19/00,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,G01N 21/64


特許情報キャッシュ

宮脇 敦史 永井 健治 JP 3829252 特許公報(B2) 20060721 2001174421 20010608 蛍光蛋白質 独立行政法人理化学研究所 503359821 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 宮脇 敦史 永井 健治 20061004 C12N 15/09 20060101AFI20060914BHJP C07K 14/435 20060101ALI20060914BHJP C07K 19/00 20060101ALI20060914BHJP C12N 1/15 20060101ALI20060914BHJP C12N 1/19 20060101ALI20060914BHJP C12N 1/21 20060101ALI20060914BHJP C12N 5/10 20060101ALI20060914BHJP G01N 21/64 20060101ALI20060914BHJP JPC12N15/00 AC07K14/435C07K19/00C12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 AG01N21/64 F C12N15/00-15/90 SwissProt/PIR/GeneSeq JICSTファイル(JOIS) PubMed 国際公開第00/026408(WO,A1) Proc. Natl. Acad. Sci. USA March, 98[6](2001)p.3197-3202 Annu. Rev. Biochem. 67(1998)p.509-544 11 2002369690 20021224 30 20030529 町田 尚子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、改善された特性を有する新規な蛍光蛋白質に関する。より詳細には、本発明は、緑色蛍光蛋白質、黄色蛍光蛋白質又はそれらの変異体のアミノ酸配列において46番目にロイシン残基を有することを特徴とする蛍光蛋白質、並びにその利用に関する。【0002】【従来の技術】クラゲのエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)に由来する緑色蛍光蛋白質(GFP)は、生物系のための多数の用途を提供してきた(Tsien, R. Y. (1998). Ann. Rev. Biochem. 67, 509-544)。最近数年において、ランダム突然変異誘発法および半合理的(semi-rational)突然変異誘発法の両方によって、新たな色、改善された折りたたみ特性、より高い輝度、そして改変されたpH感受性を有するGFP変異体が作製されている。遺伝子操作によって、何百もの蛋白質をGFPに融合させて、それらの発現および輸送のモニタリングを行うことに成功している。GFPまたはGFP融合蛋白質が一定のレベルにおいて異種的に発現される場合には、蛍光強度は以下の条件に依存する:1)GFP蛍光団の絶対的輝度(モル吸光係数(ε)と蛍光量子収率(Φ)との積により限定される)2)新規に合成されたGFPポリペプチドの成熟効率3)環境因子によるGFP蛍光団の消光率。【0003】黄色蛍光蛋白質(YFP)は、最もよく使用されるGFP変異体の1種であり、全てのクラゲ(Aequorea)GFP変異体の中で最長波長の発光を示す。大部分のYFPのεおよびΦは、それぞれ60,000〜100,000M-1cm-1および0.6〜0.8である(Tsien, R. Y. (1998). Ann. Rev. Biochem. 67, 509-544)。これらの値は、一般的な蛍光団(フルオレセインおよびローダミンなど)の値にほぼ匹敵する。従ってYFPの絶対的輝度の改善は、限界に達しているように思われる。【0004】新規に合成されたGFPポリペプチドは、蛍光の放出前に適切に成熟する必要がある。この成熟には、蛋白質のほぼ天然のコンホメーションへの折りたたみ、および内部トリペプチドの環化とそれに続く酸化が含まれる。GFPの成熟を改善する主要な突然変異が幾つか同定されている(Tsien, R. Y. (1998). Ann. Rev. Biochem. 67, 509-544)。例えば、F64L/M153T/V163A/S175Gは、多くの改良GFP変異体に導入されている共通の変異である。M153TおよびS175Gは、βバレルの表面上に位置し、表面疎水性を低減し、蛋白質の溶解性を高めることによって折りたたみ効率と安定性を高めていることが知られている。しかしながら、酸化過程がGFP成熟化の全過程における律速段階であるため、37℃で最終的な酸化反応を促進する変異が非常に望ましいにも拘わらず、そのような変異は明確には同定されていない。折りたたみ効率は改善されているにも関わらず、成熟が遅いことは、GFPの可視化の応用における重大な問題の一つであり、これは、37℃で発現する場合や特定のオルガネラにターゲティングする場合には、より大きな問題となる。従って、より良好な成熟効率を有するGFP変異体の取得が必要である。【0005】クラゲ(Aequorea)GFP変異体の中で、YFPは、相対的に酸感受性であり、ハロゲン化物イオン(塩素イオン(Cl-)を含む)により独特に消光される(Jayaraman, S.,他 (2000) J. Biol. Chem. 275, 6047-6050;及びWachter, 他(2000) J. Mol. Biol. 301, 157-171)。プロトン(H+)およびCl-はYFPの発色団の電荷状態に対し協働的に影響を及ぼし、それによりその蛍光を抑制する。これらのイオンの濃度は細胞内オルガネラの中で様々であり、分泌性オルガネラにおいてH+は顕著に蓄積する。また、それらの濃度は刺激により劇的に変化する(Kuner, T. 他(2000) Neuron 27, 447-459)。例えば、海馬ニューロンのグルタミン酸および電気的刺激によって細胞内pHが約0.4だけ低減する。そして受容体が媒介するCl-流入又は流出が嗅覚器官およびGABA作動性ニューロンにおいて起こる。これらの状況においてYFPを十分かつ安定に発光させるために、pHおよびCl-の両方に対する感受性を低減する突然変異が望ましい。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、良好な成熟効率を有するGFP又はYEP変異体を作製することを解決すべき課題とした。本発明はまた、pHおよびCl-の両方に対する感受性を低減させたGFP又はYEP変異体を作製することを解決すべき課題とした。【0007】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討し、YFPの新規な変異体を構築し、得られた変異体を用いて、エキソサイトーシス事象の効率的なモニタリングに関しては分化したPC12細胞の分泌小胞への該変異体のターゲティングにより、そしてFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)シグナルの直接検出に関してはアクセプターとして該変異体を用いることにより、この変異体の利点を実証した。本発明の蛍光蛋白質は、改善された成熟速度および成熟率を有し、さらにH+およびCl-両方に対する耐性を有するため、幅広い用途に利用可能であり、従来は不可能であった蛍光標識を可能とするものでもある。【0008】即ち、本発明によれば、緑色蛍光蛋白質、黄色蛍光蛋白質又はそれらの変異体のアミノ酸配列において46番目のフェニルアラニン残基がロイシン残基に置換していることを特徴とする、蛍光蛋白質が提供される。【0009】好ましくは、さらに緑色蛍光蛋白質、黄色蛍光蛋白質又はそれらの変異体のアミノ酸配列において64番目のフェニルアラニン残基がロイシン残基に、153番目のメチオニン残基がトレオニン残基に、163番目のバリン残基がアラニン残基に、そして175番目のセリン残基がグリシン残基に置換している。【0010】本発明の蛍光蛋白質の一例としては、以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質が挙げられる。(a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は、(b)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質と同等以上の蛍光特性を有するアミノ酸配列:【0011】本発明の別の側面によれば、上記した本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAが提供される。本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明のDNAを有する組み換えベクターが提供される。本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明のDNA又は組み換えベクターを有する形質転換体が提供される。【0012】本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の蛍光蛋白質と他の蛋白質とから成る融合蛍光蛋白質が提供される。他の蛋白質は、好ましくは細胞内に局在する蛋白質であり、例えば、細胞内小器官に特異的な蛋白質である。本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の融合蛋白質を細胞内で発現させることを特徴とする、細胞内における蛋白質の局在又は動態を分析する方法が提供される。【0013】本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の蛍光蛋白質をアクセプター蛋白質又はドナー蛋白質として用いてFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)法を行うことを特徴とする、生理活性物質の分析方法が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、本発明の蛍光蛋白質、DNA、組み換えベクター、形質転換体又は融合蛋白質を含む、細胞内成分の局在の分析及び/又は生理活性物質の分析のためのキットが提供される。【0014】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。(1)本発明の蛍光蛋白質本発明の蛍光蛋白質は、緑色蛍光蛋白質、黄色蛍光蛋白質又はそれらの変異体のアミノ酸配列において46番目のフェニルアラニン残基がロイシン残基に置換していることを特徴とするものである。【0015】本明細書で言う、緑色蛍光蛋白質(GFP)、黄色蛍光蛋白質(YFP)またはそれらの変異体とは、各々公知の緑色蛍光蛋白質と黄色蛍光蛋白質だけでなく、それらの変異体の全てを包含する意味である。例えば、緑色蛍光蛋白質遺伝子は単離され配列も決定されている(Prasher,D.C.ら(1992),"Primary structure of the Aequorea victoria green fluorescent protein",Gene 111:229−233)。その他の蛍光蛋白質又はその変異体のアミノ酸配列も多数報告されており、例えば、Roger Y.Tsin, Annu.Rev.Biochem.1998. 67:509-44、並びにその引用文献に記載されている。緑色蛍光蛋白質(GFP)、黄色蛍光蛋白質(YFP)またはそれらの変異体としては、例えば、オワンクラゲ(例えば、エクオレア・ビクトリア(Aequoreavictoria))由来のものを使用できる。【0016】GFP、YFPとそれらの変異体の一例を以下に示す。なお、F99Sという表示は、99番目のアミノ酸残基がFからSに置換していることを示し、他のアミノ酸置換についても同様の表示に従って示す。野生型GFP;F99S,M153T,V163Aのアミノ酸変異を有するGFP;S65Tのアミノ酸変異を有するGFP;F64L,S65Tのアミノ酸変異を有するGFP;S65T,S72A,N149K,M153T,I167Tのアミノ酸変異を有するGFP;S202F,T203Iのアミノ酸変異を有するGFP;T203I,S72A,Y145Fのアミノ酸変異を有するGFP;S65G,S72A,T203Fのアミノ酸変異を有するGFP(YFP);S65G,S72A,T203Hのアミノ酸変異を有するGFP(YFP);S65G,V68L,Q69K,S72A,T203Yのアミノ酸変異を有するGFP(EYFP−V68L,Q69K);S65G,S72A,T203Yのアミノ酸変異を有するGFP(EYFP);S65G,S72A,K79R,T203Yのアミノ酸変異を有するGFP(YFP);【0017】緑色蛍光蛋白質の変異体である増強緑色蛍光蛋白質(Enhanced green fluorescent protein)のアミノ酸配列の一例を、本明細書の配列表の配列番号2に記載し、また、黄色蛍光蛋白質の変異体である増強黄色蛍光蛋白質(Enhanced yellow fluorescent protein)のアミノ酸配列の一例を、本明細書の配列表の配列番号3に記載する。【0018】なお、配列番号2および3に記載のアミノ酸配列では、アミノ酸番号1と2の間にValが挿入されているため、天然体の蛍光蛋白質における46番目のフェニルアラニン残基(Phe)は47番目に記載されている。本発明の蛍光蛋白質は、46番目のフェニルアラニン残基がロイシン残基に置換していることを特徴とするものであるが、ここで言う「46番目のフェニルアラニン残基」とは、配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列においては、それぞれ47番目のフェニルアラニン残基(Phe)に対応するものである。【0019】従って、本発明の蛍光蛋白質の一例としては、配列番号2又は配列番号3に記載のアミノ酸配列において、47番目のフェニルアラニン残基(Phe)がロイシン残基に置換しているアミノ酸配列を有する蛋白質が挙げられる。【0020】本発明の好ましい態様では、緑色蛍光蛋白質、黄色蛍光蛋白質又はそれらの変異体のアミノ酸配列において46番目のフェニルアラニン残基がロイシン残基に置換していることに加えて、64番目のフェニルアラニン残基がロイシン残基に、153番目のメチオニン残基がトレオニン残基に、163番目のバリン残基がアラニン残基に、そして175番目のセリン残基がグリシン残基に置換している。【0021】上記と同様に、上記で言う「64番目」「153番目」「163番目」及び「175番目」のアミノ酸残基はそれぞれ、配列番号2及び配列番号3では、「65番目」「154番目」「164番目」及び「176番目」のアミノ酸残基に対応する。【0022】本発明の蛍光蛋白質の具体例としては、以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質が挙げられる。(a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は、(b)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質と同等以上の蛍光特性を有するアミノ酸配列:【0023】本明細書で言う「1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。【0024】本明細書で言う「同等以上の蛍光特性を有する」とは、同等以上の蛍光強度、同等の波長、同等以上の成熟速度および成熟率、並びにH+およびCl-に対する同等以下の感受性を有することを意味する。【0025】本発明の蛍光蛋白質の取得方法については特に制限はなく、化学合成により合成した蛋白質でもよいし、遺伝子組み換え技術による作製した組み換え蛋白質でもよい。組み換え蛋白質を作製する場合には、先ず当該蛋白質をコードするDNAを入手することが必要である。本明細書の配列表の配列番号1〜3に記載したアミノ酸配列、及び配列番号4及び5に記載した塩基配列(これらの塩基配列は、配列番号2及び3に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列の一例である)の情報を利用することにより適当なプライマーを設計し、それらを用いて上記したような各種の公知の蛍光蛋白質のcDNAクローンを鋳型にしてPCRを行うことにより、本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAを取得することができる。本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAの一部の断片を上記したPCRにより得た場合には、作製したDNA断片を順番に遺伝子組み換え技術により連結することにより、所望の蛍光蛋白質をコードするDNAを得ることができる。このDNAを適当な発現系に導入することにより、本発明の蛍光蛋白質を産生することができる。発現系での発現については本明細書中後記する。【0026】(2)本発明のDNA本発明によれば、本発明の蛍光蛋白質をコードする遺伝子が提供される。本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAの具体例としては、以下の何れかのDNAが挙げられる。(a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は(b)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質と同等以上の蛍光特性を有するアミノ酸配列をコードするDNA:【0027】本発明のDNAは、例えばホスホアミダイト法などにより合成することができるし、特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって製造することもできる。本発明のDNA又はその断片の作製方法については、本明細書中の上述した通りである。【0028】また、所定の核酸配列に所望の変異を導入する方法は当業者に公知である。例えば、部位特異的変異誘発法、縮重オリゴヌクレオチドを用いるPCR、核酸を含む細胞の変異誘発剤又は放射線への露出等の公知の技術を適宜使用することによって、変異を有するDNAを構築することができる。このような公知の技術は、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989、並びにCurrent Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)に記載されている。【0029】(3)本発明の組み換えベクター本発明のDNAは適当なベクター中に挿入して使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。好ましくは、本発明で用いるベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて本発明のDNAは、転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)が機能的に連結されている。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜することができる。【0030】細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、バチルス・ステアロテルモフィルス・マルトジェニック・アミラーゼ遺伝子(Bacillusstearothermophilus maltogenic amylase gene)、バチルス・リケニホルミスαアミラーゼ遺伝子(Bacillus licheniformis alpha-amylase gene)、バチルス・アミロリケファチエンス・BANアミラーゼ遺伝子(Bacillus amyloliquefaciens BAN amylase gene)、バチルス・サブチリス・アルカリプロテアーゼ遺伝子(Bacillus Subtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス・プミルス・キシロシダーゼ遺伝子(Bacillus pumilus xylosldase gene)のプロモータ、またはファージ・ラムダのPR若しくはPLプロモータ、大腸菌の lac、trp若しくはtacプロモータなどが挙げられる。【0031】哺乳動物細胞で作動可能なプロモータの例としては、SV40プロモータ、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモータ、またはアデノウイルス2主後期プロモータなどがある。昆虫細胞で作動可能なプロモータの例としては、ポリヘドリンプロモータ、P10プロモータ、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモータ、バキュウロウイルス即時型初期遺伝子1プロモータ、またはバキュウロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモータ等がある。酵母宿主細胞で作動可能なプロモータの例としては、酵母解糖系遺伝子由来のプロモータ、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモータ、TPI1プロモータ、ADH2-4cプロモータなどが挙げられる。糸状菌細胞で作動可能なプロモータの例としては、ADH3プロモータまたはtpiAプロモータなどがある。【0032】また、本発明のDNAは必要に応じて、例えばヒト成長ホルモンターミネータまたは真菌宿主についてはTPI1ターミネータ若しくはADH3ターミネータのような適切なターミネータに機能的に結合されてもよい。本発明の組み換えベクターは更に、ポリアデニレーションシグナル(例えばSV40またはアデノウイルス5E1b領域由来のもの)、転写エンハンサ配列(例えばSV40エンハンサ)および翻訳エンハンサ配列(例えばアデノウイルス VA RNA をコードするもの)のような要素を有していてもよい。本発明の組み換えベクターは更に、該ベクターが宿主細胞内で複製することを可能にするDNA配列を具備してもよく、その一例としてはSV40複製起点(宿主細胞が哺乳類細胞のとき)が挙げられる。【0033】本発明の組み換えベクターはさらに選択マーカーを含有してもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のようなその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、または例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン若しくはヒグロマイシンのような薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。本発明のDNA、プロモータ、および所望によりターミネータおよび/または分泌シグナル配列をそれぞれ連結し、これらを適切なベクターに挿入する方法は当業者に周知である。【0034】(4)本発明の形質転換体本発明のDNA又は組み換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。本発明のDNAまたは組み換えベクターを導入される宿主細胞は、本発明のDNA構築物を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。【0035】細菌細胞の例としては、バチルスまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌又は大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行なえばよい。哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞またはCHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換し、該細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法も公知であり、例えば、エレクトロポーレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。【0036】酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevis1ae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。【0037】他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞である。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、公知の方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。【0038】昆虫細胞を宿主として用いる場合には、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、蛋白質を発現させることができる(例えば、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manua1;及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Bio/Technology, 6, 47(1988)等に記載)。【0039】バキュロウイルスとしては、例えば、ヨトウガ科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W. H. Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHiFive(インビトロジェン社製)等を用いることができる。組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法又はリポフェクション法等を挙げることができる。【0040】上記の形質転換体は、導入されたDNA構築物の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。形質転換体の培養物から、本発明の蛍光融合蛋白質を単離精製するには、通常の蛋白質の単離、精製法を用いればよい。例えば、本発明の蛋白質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常の蛋白質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。【0041】(5)本発明の蛍光蛋白質を含む融合蛍光蛋白質とその利用本発明は蛍光蛋白質を他の蛋白質と融合させることにより、融合蛍光蛋白質を構築することができる。本発明の蛍光蛋白質を融合させる他の蛋白質の種類は特に限定されるものではないが、例えば、細胞内に局在する蛋白質、より具体的には、細胞内小器官に特異的な蛋白質などを挙げることができる。【0042】本発明の融合蛍光蛋白質の取得方法については特に制限はなく、化学合成により合成した蛋白質でもよいし、遺伝子組み換え技術による作製した組み換え蛋白質でもよい。組み換え蛋白質を作製する場合には、先ず当該蛋白質をコードするDNAを入手することが必要である。本明細書の配列表の配列番号1〜3に記載したアミノ酸配列、及び配列番号4及び5に記載した塩基配列の情報を利用することにより適当なプライマーを設計し、それらを用いて上記したような各種の公知の蛍光蛋白質のcDNAクローンを鋳型にしてPCRを行うことにより、本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAを構築するのに必要なDNA断片を作製することができる。また同様に、融合すべき蛋白質をコードするDNA断片も入手する。【0043】次いで、これらのDNA断片を順番に遺伝子組み換え技術により連結することにより、所望の融合蛍光蛋白質をコードするDNAを得ることができる。このDNAを適当な発現系に導入することにより、本発明の融合蛍光蛋白質を産生することができる。【0044】上記のようにして得た、本発明の蛍光蛋白質と他の蛋白質(蛋白質Xとする)とを融合させた融合蛍光蛋白質を細胞内で発現させ、発する蛍光をモニターすることにより、細胞内における蛋白質Xの局在や動態を分析することが可能になる。即ち、本発明の融合蛍光蛋白質をコードするDNAで形質転換またはトランスフェクトした細胞を蛍光顕微鏡で観察することにより細胞内における蛋白質Xの局在や動態を可視化して分析することができる。【0045】例えば、蛋白質Xとして細胞内オルガネラに特異的な蛋白質を利用することにより、核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、分泌小胞、ペルオキソームなどの分布や動きを観察できる。また、例えば、神経細胞の軸索、樹状突起などは発生途中の個体の中で著しく複雑な走向の変化を示すので、こういった部位を蛍光ラベルすることにより動的解析が可能になる。【0046】顕微鏡の種類は目的に応じて適宜選択できる。経時変化を追跡するなど頻回の観察を必要とする場合には、通常の落射型蛍光顕微鏡が好ましい。細胞内の詳細な局在を追及したい場合など、解像度を重視する場合は、共焦点レーザー顕微鏡の方が好ましい。顕微鏡システムとしては、細胞の生理状態を保ち、コンタミネーションを防止する観点から、倒立型顕微鏡が好ましい。正立顕微鏡を使用する場合、高倍率レンズを用いる際には水浸レンズを用いることができる。【0047】フィルターセットは、蛍光蛋白質の蛍光波長に応じて適切なものを選択できる。GFPの観察には励起光470〜490nm、蛍光500〜520nm程度のフィルターを使用することが好ましい。YFPの観察には、励起光480〜500nm、蛍光510〜550nm程度のフィルターを使用することが好ましい。【0048】また、蛍光顕微鏡を用いた生細胞での経時観察を行う場合には、短時間で撮影を行うべきなので、高感度冷却CCDカメラを使用する。冷却CCDカメラは、CCDを冷却することにより熱雑音を下げ、微弱な蛍光像を短時間露光で鮮明に撮影することができる。【0049】(6)本発明の蛍光蛋白質を利用したFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)法本発明の蛍光蛋白質は、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)法を用いた分析法に利用することができる。例えば、本発明の蛍光蛋白質が黄色蛍光蛋白質(YFP)の変異体である場合、本発明の蛍光蛋白質をアクセプター分子として使用し、シアン蛍光蛋白質(CFP)をドナー分子として使用して、両者の間でFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)を起こすことにより蛋白質間の相互作用を可視化することができる。例えば、Ca2+の濃度上昇によって起こる蛋白質間の相互作用(例えば、カルモジュリン等のカルシウム結合蛋白質と、M13等のその標的ペプチドとの結合)をCFPからYFPへのFRETで可視化することが可能である。【0050】カルシウム結合蛋白質としては、カルモジュリン、トロポニンC、カルシニューリンB、ミオシン軽鎖、レコベリン、S−モジュリン、ビシニン、VILIP、ニューロカルシン、ヒポカルシン、フレクエニン、カルトラクチン、カルパイン・ラージ・サブユニット、S100プロテイン、パルバルブミン、カルビンジンD9K、カルビンジンD28K及びカルレチニンなどが挙げられる。【0051】また、カルシウム結合蛋白質の標的ペプチドのアミノ酸配列は当業者であれば適宜選択することができる。例えば、カルシウム結合蛋白質がカルモジュリンの場合には、カルモジュリンの標的物質として知られる各種の蛋白質やペプチド中に存在することが知られているカルモジュリン結合ドメインのアミノ酸配列を、本発明の融合蛍光蛋白質のN末端側に存在させることができる。このようなカルモジュリン結合ドメインのアミノ酸配列は、これまで1200種類以上が知られている。カルモジュリン結合ドメインデータベース( HYPERLINK "http://calcium.oci.utoronto.ca/ctdb" http://calcium.oci.utoronto.ca/ctdb)で検索可能である。上記の通り本発明の蛍光蛋白質は、細胞内のカルシウムイオン濃度を測定したり、カルシウムイオン分布をモニターするために使用することができる。【0052】(7)本発明のキット本発明によれば、本明細書に記載した蛍光蛋白質、融合蛍光蛋白質、DNA、組み換えベクター又は形質転換体から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、細胞内成分の局在の分析及び/又は生理活性物質の分析のためのキットが提供される。本発明のキットは、それ自体既知の通常用いられる材料及び手法で調製することができる。蛍光蛋白質又はDNAなどの試薬は、適当な溶媒に溶解することにより保存に適した形態に調製することができる。溶媒としては、水、エタノール、各種緩衝液などを用いることができる。以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。【0053】【実施例】(1)実験方法ペリカムにおけるランダム変異誘発エラー・プローン(error-prone)PCR法(XX)を用いてサーキュラーパーミューテーションを行ったYFP(H148D/V163A/S175G/Y203F)(Nagai, T, 他 (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 3197-3202)の遺伝子にランダム変異を導入した。PCR産物をPstIおよびKpnIを用いて消化し、BamHI/PstIおよびKpnI/EcoRI部位にそれぞれM13およびカルモジュリンの遺伝子を保持するpRSETB(Invitrogen)にサブクローニングした。プレート上で37℃にて増殖させた細菌コロニーの蛍光を、蛍光画像解析システム(Sawano, A. 他 (2000) Nucleic Acids Research 28, e78)を用いて分析した。【0054】遺伝子構築既報のプロトコル(Sawano, A. 他 (2000) Nucleic Acids Research 28, e78)を用いて、変異 F46LおよびF64L/M153T/V163A/S175Gに関して、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発法を行った。pRSETB(pRSETB/EYFP)中のEYFPのcDNAを出発物質として用いて、pRSETB/SEYFP、pRSETB/EYFP(F46L)およびpRSETB/SEYFP(F46L)(= pRSETB/Venus)を作製した。pEGFP-N1-NPY中のEGFP遺伝子はVenus遺伝子と置き換えて、NPY-Venusキメラ蛋白質をコードするpVenus-N1-NPYを得た。Venusを黄色カメレオン3.1(YC3.1)の遺伝子中のEYFP-V68L/Q69Kの代わりに置き換えて、YC3.12遺伝子を作製し、これを細菌発現および哺乳動物発現のためにそれぞれpRSETBおよびpCS2中にサブクローニングした。【0055】大腸菌における蛋白質の蛍光測定細菌[JMI09(DE3)]のサンプルを50μg/mlアンピシリンを含有するLB培地中で37℃にて増殖させ、回収し、最終OD600が0.5となるようにPBS中に再懸濁した。レシオメトリックスペリカムおよびYFP変異体に関しては485 nmにおける励起、カメレオン変異体に関しては435nmにおける励起により蛍光スペクトルを取得した。【0056】蛋白質発現、インビトロ分光分析、及びpHおよび塩化物滴定蛋白質は、既報の通り、大腸菌で発現し、精製し、分光分析により同定した(Miyawaki, A., 他 (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 2135-2140)。YFP変異体の量子収率はフルオレセインの収量(0.91)との比較により求めた。モル吸光係数の計算のために、蛋白質濃度を標準として牛血清アルブミンを用いてBradfordキット(BioRad)を用いて測定した。pH滴定は、全てのバッファーに35 mM [Cl-] を含有させ、イオン強度をD-グルコン酸カリウムを用いて150mMに調整した以外は、既報(Nagai, T,他(2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 3197-3202)の通り行った。塩化物滴定はpH 7.0にて行った。蛋白質を0〜400mMの範囲の特定の[Cl-]を含有する10 mMのMOPS(pH7.0)中に溶解し、イオン強度をD-グルコン酸カリウムを用いて400 mMに調整した。【0057】YFP変異体のin vitroにおける再生および再酸化蛍光回復実験を既報の通り行った(Reid, B.G. 他 (1997) Biochemistry 36, 6786-6791)。変性YFPは、変性バッファー(8M尿素および1 mM DTT)中で95℃にて5分間蛋白質をインキュベートすることにより調製した。変性/還元YFPの調製は、5 mM次亜硫酸塩を上記変性バッファーに添加した。蛍光の回復は、37℃において再生バッファー(35 mM KC1、2 mM MgCl2、50 mM Tris pH 7.5、1 mM DTT)で100倍希釈を行って開始した。530nmにおける発光を515nmにおける励起によりモニタリングした。【0058】PC12細胞におけるNPY-融合蛋白質の発現PC12細胞(理研細胞バンク)は、37℃および5%CO2下にて増殖培地(DMEM、10%胎児ウシ血清、10%ウマ血清、100 U/ml ペニシリン、0.1 mg/ml ストレプトマイシン)中に維持した。トランスフェクションの前日に、細胞をガラス製カバースリップ上に載せた。画像化のために、カバースリップをポリエチレンイミで被覆した。Lipofect Amine 2000 (Gibco BRL)を使用して、細胞にpVenus-N1-NPYまたはpEGFP-N1-NPYをトランスフェクトした。続いて細胞を、培地中に神経成長因子(100 ng/ml ヒト組換えNGF-b鎖、Calbiochem)を添加することにより、分化させ、軸策を伸長させた。【0059】免疫組織化学トランスフェクトしたPC12細胞をPBS(-)中の4%パラホルムアルデヒドを用いて15分間固定した。0.1%TritonX-100を含有するPBS中に希釈したGFPに対するポリクローナル抗体(MBL, Japan)およびAlexa568結合抗ウサギIgG(Molecular Probe)を用いて、VenusおよびEGFPに対する免疫染色を実施した。染色した細胞は、VenusおよびEGFPの緑色蛍光に関しては470DF35(励起)およびHQ525/50(発光)を用いて、そしてAlexa568の赤色蛍光に関しては550DF30(励起)および590DF35(発光)を用いて観察した。【0060】NPY融合蛋白質の分泌のモニタリングトランスフェクトしたPC12細胞を、37℃で5%CO2下にて生理学的食塩水溶液(145 mM NaCl、5.6mM KCl、2.2mM CaCl2、0.5mM MgC12、5.6mMグルコース、15mM HEPES、pH 7.4)中でインキュベートした。脱分極刺激は、予め加温した高K+溶液(95mM NaCl、56mM KCl、2.2mM CaC12、0.5mM MgC12、5,6mMグルコース、15mM HEPES、pH 7.4)と交換することにより開始した。細胞外溶液および細胞溶解物の蛍光強度を、特定の時点において測定した。【0061】PC12細胞の単一の高密度コア顆粒の画像化倒立顕微鏡(IX-70, オリンパス)を既報の通りエバネッセント波励起のために改良した(Steyer, J. A. 他 (2001) Nature Reviews Mol. Cell Biol. 2, 268-275)。顕微鏡には、高開口数レンズ(UplanApo 60X NA1.45,オリンパス)、二色鏡(505DRLP, オメガ)及び全体内部反射蛍光顕微鏡用の照明器(TIRFM)(U-DP,オリンパス)を備えつけた。レーザー(アルゴン,Omnichrome)及び照明器をシングルモードファイバーに接続し、488nmのレーザー光線を顕微鏡内に導入した。レーザー光線を対物レンズの出口孔に発射した。MetaMorph/MetaFluor 4.0ソフトウエア(Universal Imaging)により制御される12ビット冷却CCDカメラ(MicroMax 1300Y/HS, Roper Scientific)を用いて、画像を発光フィルター(HQ525/50, オメガ)を通じて取得した。画像取得の速度は、30フレーム/秒(2×2binning)又は10フレーム/秒(1×1binning)の何れかとした。【0062】黄色カメレオンを用いたHeLa細胞のCa2+画像化Superfect(Qiagen)を用いてHeLa細胞にpCS2-YC3.1又はpCS2-YC3.12をトランスフェクションし、既報の通り画像化した(Miyawaki, A.,他 (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 2135-2140)。【0063】(2)結果および考察F46L:37℃において産生されるYFPの成熟を改善する新規な変異ペリカム(Ca2+を感知するように遺伝子操作されたサーキュラーパーミューテーション(circular permutation)を行ったGFP)(Nagai, T, 他 (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 3197-3202)におけるランダム変異誘発の間に、Ca2+感受性に影響を及ぼすことなく成熟を改善するいくつかの変異が見つかった。特に関心がもたれるものは、Phe-46のLeuへの変異であり、これは37℃における発色団形成を大きく改善した。3種類のペリカムの中で、このF46Lを有するインバースペリカム(inverse-pericam)およびレシオメトリックペリカム双方(ratiometric-pericam)は、高いCa2+感受性を保持しつつ、37℃において非常に効率的に成熟することができた。図1Aは、F46Lが大腸菌において37℃で産生されるレシオメトリックペリカムの蛍光発生に及ぼす顕著な影響を示すが、折りたたみ効率を増大させることが同定された2つの変異V163AおよびS175Gは全く影響を及ぼさなかった。フラッシュペリカム(flash-pericam)のCa2+感受性はこの変異によって低下した。従って、フラッシュペリカムはF46Lを担持せず、28〜30℃においてより良好に産生される。【0064】ペリカムは、Ca2+感受性を保持するようにYFP変異体(EYFP-V68L/Q69K)から加工されたものであるため(Miyawaki, A.,他 (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 2135-2140)、F46LがYFPに関しても成熟効率を増大させるかどうかに興味をもった。F46Lの効果を、最もよく使用されるYFP変異体であるEYFP(S65G/S72A/V68L/T203Y)において調べた。YFP変異体(S65G/S72A/V68L/T203Y)(Wachter, R.M.,他(1999) Structure 6, 1267-1277)の結晶構造において、Phe-46のベンゼン環は発色団の一部であるイミダゾリノンと隣接している。F46LはYFPの発色団形成に影響を及ぼしていると考えられる。F46Lの作用と共に、周知の折りたたみ変異であるF64L/M153T/V163A/T203YのEYFPに対する影響を調べた。なお、他のGFP変異体において折りたたみ効率を増大させることは示唆されていたが、YFP変異体にこれらの変異を導入する試みの報告はなかった。複数部位変異誘発法に関するプロトコール(Sawano, A.他(2000) Nucleic Acids Research 28, e78)を用いて、4つの一般的な折りたたみ変異を一度に全てEYFPに導入してSEYFP(スーパーEYFP)(EYFP-F64L/M153T/V163A/S175G)を作製した。続いて、F46LをEYFPおよびSEYFPに導入することによりそれぞれEYFP-F46LおよびSEYFP-F46Lを得た。最初に、これら4つのYFP変異体を大腸菌において室温で産生させて、精製のために十分に成熟させた。精製したYFP変異体は、正確に同一の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示し、ほぼ同等のεおよびΦであった(それぞれ78,700〜101,000M-1cm-1および0.56〜0.61の範囲)(表1)。次に、4つのYFPを産生する大腸菌クローンを37℃で培養し、細胞懸濁物の蛍光強度を比較した(図1B)。F46Lは37℃においてYFPの成熟を大いに促進した。図1Bは対数増殖期における1つの時点での相対蛍光強度を示すが、12時間のインキュベーション後の細胞ペレットの蛍光強度は、EYFPに比べEYFP-F46Lの方が約20倍増大した。【0065】【表1】【0066】Venus:37℃におけるYFPの最良の成熟形態折りたたみ効率は、成熟発色団を用いた尿素変性蛋白質の再生の際の蛍光獲得をモニタリングすることにより、37℃にて評価した(Reid, B.G.他 (1997) Biochemistry 36, 6786-6791)。蛋白質は再生するに従い、成熟している発色団がGFPのβバレル内に取り込まれて、蛍光が回復する(図1C)。EYFPの蛍光回復率は、変性前の蛍光強度から判断して30%未満であり、このことは変性処置により多量の不溶性凝集物が形成することを示唆している。全てのYFP変異体の再生は既報の通り2つの異なる反応速度段階を介して進行した(Reid, B.G.他 (1997) Biochemistry 36, 6786-6791)。初期段階の1次速度定数はYFP変異体の中で様々であった(表1)。SEYFPおよびSEYFP-F46Lはいずれも変異F64L/M153T/V163A/S175Gを含有し、それぞれ速度定数(Kfold)6.60×10-2S-1および5.62×10-2S-1で非常に急速に回復した。F46L単独の場合にはEYFPおよびSEYFPの回復速度および回復率が高まるが、その影響は一般的な折りたたみ変異の影響よりも弱かった。変異F64L/M153T/V163A/S175Gは、37℃でYFPの折りたたみを促進させるのに有意に効果があるとの結論になった。【0067】次に、尿素変性YFPの発色団を5mM次亜硫酸塩を用いて還元した(Reid, B.G. 他 (1997) Biochemistry 36, 6786-6791)。37℃において、尿素も次亜硫酸塩も含有しないバッファーで希釈することにより再生および再酸化を開始した。酸化は最も遅い過程であるため、観察された蛍光回復の全体の速度は、環化発色団の酸化速度を表すはずである。それらの初期段階の速度定数(KoxS)を比較した(図1D)。SEYFPおよびSEYFP-F46Lは同様のKfoldSを示したが、37℃における変性/還元蛋白質からの再生速度および再生率は、F46Lにより有意に改善された(図1D;表1におけるKox値、2.36×10-3S-1対8.04×10-3S-1)。興味深いことに、この改善は、実験を室温で行った場合には明確には観察されなかった。またEYFP-F46Lは37℃においてSEYFPよりも速い再酸化を示した(図1D)。封入体から再生されたYFPの蛍光獲得速度から、de novo成熟(内部トリペプチドの環化過程を含む)の速度論を得られるが(Reid, B.G. 他 (1997) Biochemistry 36, 6786-6791)、SEYFP及びSEYFP-F46Lは細胞溶解後に不溶性ペレットからほとんど単離されなかった。F46Lが環化に及ぼす影響を調べなかったが、上記の結果は、F46Lが酸化過程を促進し、37℃においてYFPの蛍光発生の増大が導かれることを示している。多分、Leu-46の側鎖は、酸素の接近可能性を促進するだけではなく、発生した蛋白質の酸化反応に好ましい立体配置状態への折りたたみをも促進している。この議論は、F46L単独でも尿素変性蛋白質の再生が促進される(図1C)という事実と一致する。この点に関して、折りたたみおよび発色団形成は共働的に生じるものと考えるべきである。【0068】SEYFP-F46Lは37℃において非常に効率的に折りたたまれ、発色団を形成し、最も鮮明な黄色光を与えるものである。本書中、この変異体を「Venus」とも称する。【0069】Venusのプロトンおよび塩化物イオンに対する低感受性YFPの発色団のプロトン付加およびCl-結合は共同的である(Wachter, R.M., 他(2000) J. Mol. Biol. 301, 157-171)。従って、4つのYFP変異体のH+およびCl-に対する感受性を調べた。pH滴定のために、35mMの[Cl-](Cl-濃度)を含有するバッファーを使用した。pH滴定曲線を図1Eに示す。EYEPのpKaは6.9であり、生細胞中の蛍光の定量的測定がpHに関連する人工物により障害を受けることを示している。変異F46Lの付加してもEYFPのpH感受性は変化しなかった。一方、SEYFPおよびVenusによって滴定曲線のpKaが6.0となった。従って、F64L/M153T/V163A/S175Gのいくつかの変異によってYFPのpH感受性が低減したものと考えられる。【0070】図1Fは、pH7.0における[Cl-]の増大とYFPの蛍光との依存関係を示す。EYFPおよびEYFP-F46LはCl-に対し感受性であり、それぞれKd値が110mMおよび145mMであった。対照的に、SEYFPおよびVenusはアニオンに対して感受性が低かった。pH7.0での生理学的な[Cl-]の範囲内(150mM以下)において、それらの蛍光は影響を受けなかった。従って、変異F64L/M153T/V163A/S175Gの導入は、Cl-感受性を排除するのに有効であった。変異のうちV163Aは重要であると考えられる。なぜなら、Val163の側鎖がYFPの変異体のアニオン結合空隙の整列に関与していることが示されているからである(Wachter, R.M.,他 (2000) J. Mol. Biol. 301, 157-171)。【0071】pHの低減によってYFPの511 nmにおける吸光度が低くなる。また、Cl- によって、Φに影響を及ぼすことなくYFPの吸光度は低減した。Cl- によるYFP蛍光の衝突(collisional)消光の証拠は全くない(Wachter, R.M.,他 (2000) J. Mol. Biol. 301, 157-171)。YFPは、FRETのアクセプターとして、ドナーとしてのCFPと組み合わせて使用されることが多い(Tsien, R.Y. 他 (1998) Science 280, 1954-1955)。アクセプターの吸光度はFRET効率を決定する重要な因子の1つであるため、YFPのpHおよびCl- 感受性は、FRETの信頼性のあるシグナルを獲得するために最小限に抑える必要がある(Miyawaki, A.他 (2000) Methods Enzymol. 327, 472-500)。成熟効率は別にしても、VenusはEYFPよりもFRET受容体として適切である。【0072】即ち、Venusは、2種の変異(すなわち、i)変異F46Lによる37℃における発色団の改良された成熟;並びに、ii)1つの変異セットF64L/M153T/V163A/S175Gによる、37℃における改良された折りたたみと、H+およびCl- による消光の低減)により、最も一般的なYFPであるEYFPよりも輝度が高い。【0073】Venusを用いたPC12細胞における分泌性高密度コア顆粒の蛍光標識分泌性オルガネラは酸性環境を有し、大部分が高密度コア蛋白質マトリックスである。従って、GFPによるオルガネラの蛍光標識は比較的難しい。改善された光学特性および成熟特性を有するGFP変異体、例えばEGFP(増強GFP, Clontech)は、PC12細胞の高密度コア分泌顆粒(Lang, T., 他 (1997) Neuron 18, 857-863)およびINS-1β細胞の巨大高密度コア分泌小胞(Tsuboi, T.,他 (2000) Curr. Biol. 10, 1307-1310)にターゲティングしたが、GFPの蛍光とオルガネラに対する特異的ないくつかのマーカーとの共局在性は不完全であった。これは、オルガネラ中の組換え蛍光蛋白質のターゲティングに誤りが生じていたり、該蛋白質が非蛍光性であることを示唆している。【0074】本実施例では、神経ペプチドY(NPY)のC末端に融合させたVenusをコードする哺乳動物発現プラスミドを構築し、NPY-Venusを産生した。このキメラ蛋白質の機能は、次の2つの観点に従ってNPY-EGFPの機能と比較して調べた。第1は、NPY融合蛋白質はどの程度特異的に分泌性高密度コア顆粒にターゲティングするかであり、第2は、正確にターゲティングされたNPY-融合蛋白質はどの程度効率的に蛍光を発するかである。【0075】トランスフェクトしたPC12細胞は、神経成長因子(NGF)による処理により、分化させ神経突起を伸長させた。図2Aは、NPY-Venusを発現する6つの細胞の広視野の蛍光顕微鏡写真を示す。典型的な高倍率画像を図2Bに示す。NYP-Venusからの光輝かつ点状の蛍光は、高密度コア顆粒に富む神経突起に濃縮されていることが観察され、このことはNPY-Venusの正確なターゲティングを示している。カバースリップ上でNPY-Venusを発現する蛍光細胞のほとんど全てが類似の蛍光パターンを示したことに留意すべきである。対照的に、NPY-EGFPを発現するPC12細胞は3つの別個のパターンを示した。約60%の蛍光細胞が、輝く神経突起(図2C;中央の細胞)を有し、点状の蛍光パターンは高倍率顕微鏡写真(図2D)により確認された。残りの40%の細胞は、輝く網様のスポット(図2C、矢印で示す;図2E)または管状物(図2F)の、細胞質ゾル全体に渡るぼんやりとした蛍光を示した。これは、NPY-EGFPのターゲティングの誤りを示している。おそらくEGFPの異常な折りたたみが、神経ペプチドの適切なプロセシングに影響を及ぼしている。【0076】正確にターゲティングされたNPY-EGFPによって検出可能な蛍光が得られたが、その強度はNPY-Venusの蛍光よりも約10倍低く、画像を得るための露出時間は図2Bに関しては100ミリ秒および図2Dに関しては1.0秒であった。NPY-Venusを含有する顆粒の輝度は、改善されたVenusの成熟率または顆粒中のNYP-Venusの存在量のいずれかに起因するものであった。この2つの可能性を区別するために、高密度コア顆粒に正確にターゲティングした組換え蛋白質の量を免疫組織化学的に定量化した。pVenus-N1-NPYおよびpEGFP-N1-NPYを用いてトランスフェクトしたPC12細胞を固定化し、抗GFP抗体およびAlexa562結合2次抗体を用いて免疫染色法を行った。VenusおよびEGFPからの緑色蛍光シグナルは、GFP観察のための一般的なフィルターセットを用いて捕捉し(それぞれ図2Gおよび2J)、Alexa562の赤色蛍光は別のフィルターセットを用いて検出した(図2Hおよび2K)。図2Gおよび2Jまたは図2Hおよび2Kの画像は、同じ光学条件下で撮り、同じグレースケールで示す。同量の組換え蛋白質(図2Hおよび2K)にも関わらず、Venusの蛍光は明確に可視化された一方(図2G)、EGFPの蛍光はほとんど検出されなかった(図2J)。組換え蛋白質1分子当たりの蛍光強度は、擬色比画像において示し(図2Iおよび2L)、これは緑色蛍光シグナルを免疫蛍光シグナルで割ることにより得た。これらの結果は、Venusが成熟して、高密度コア顆粒においてEGFPよりも効率的に蛍光を発しうることを示している。【0077】NPY-Venusの分泌に関する効率的モニタリングおよび動的な可視化NPY-Venusによって、PC12細胞の高密度コア顆粒のエキソサイトーシスを理解するための2つの実験が可能となった。先ず、NPY-Venusの脱分極により誘導される分泌を、培地の蛍光増大ならびに細胞性蛍光の消失を測定することによりモニタリングした(図3A)。これは、NPY-Venusによって、培養したPC12細胞の大集団の高密度コア顆粒の特異的かつ強力な標識が得られるためである。このような集団アッセイは、既報のプロインスリン-GFPの使用ではほとんど不可能である。通常の生化学または電気生理学的アプローチ(Angleson, J. K.他 (1997) Trends Neurosci. 20, 281-187)とは対照的に、培地中に分泌されたNPY-Venusの蛍光測定によって、PC12細胞のエキソサイトーシスの簡便、迅速かつ効率的なモニタリングが可能となる。脱分極の30分後に、分泌されたNPY-Venusの量は合計の約40%に達し、この分泌は、細胞外および細胞内の両方のCa2+がEGTAおよびBAPTA-AMによりキレート化された場合に妨げられた(図3B)。分泌の時間プロフィールも容易に取得され、これにより分泌の50%が最初の5分以内で起こったことが明らかとなった(図3C)。【0078】第2に、小さな単一蛍光高密度コア顆粒の動特性を、エバネッセント波顕微鏡を使用し、時間的および空間的に高解像で、NGF処理PC12細胞中で観察した。同様のエバネッセント波場蛍光画像化を、ヒトクロモグラニンBに融合させたGFP突然変異体(GFPmut2)を用いて行った(Lang, T., 他 (1997) Neuron 18, 857-863)。しかし、それらの画像は、未分化のPC12細胞中で0.5 Hzにて大きな顆粒(直径約0.5μm)を観察したにすぎない。対照的に、本実施例においては、顆粒をサイズが低減した高密度コア顆粒(直径約0.2μm)になるよう分化させた。NPY-Venusによる鮮明な標識のおかげで、通常の冷却CCDカメラを用い、ビニングなしの場合は10Hzで、ビニング2の場合はビデオレート(30Hz)で、このような小顆粒を見ることができた。図3D〜Fは、脱分極により誘導された単一のエキソサイトーシス事象を示す連続的画像である。原形質膜におけるドッキング後に、高密度コア顆粒中のNPY-Venusの蛍光(図3Dにて矢印で示す)は、培地中に噴出し(図3E)、続いて消滅した(図3F)。【0079】CFPとVenusとの間のFRETのシグナルの直接検出GFPを用いたFRETのために、アクセプターGFPがドナーGFPよりも効率的に成熟することが好ましい。そうでないと、過剰なドナー分子によって、FRETに関与しないドナーからの発光によるFRETシグナルの希釈が生じる。黄色カメレオン(Yellow cameleon;YC)は、CFP、カルモジュリン、グリシルグリシンリンカー、ミオシン軽鎖キナーゼのカルモジュリン結合ドメイン(M13)、およびYFPから構成されるCa2+指示蛋白質である(Miyawaki, A., 他 (1997). Nature 388, 882-887)。ドナーおよびアクセプターの化学量論比は遺伝子レベルでは1:1であるが、YC3.1のアクセプターであるEYFP-V68L/Q69Kは37℃または特定のオルガネラにおいてほとんど成熟しない(Miyawaki, A., 他 (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 2135-2140)。YCのシグナルを全ての状況において効率的に獲得するために、YC3.1のEYFP-V68L/Q69KをVenusで置換することによりYC3.12を作製した。YC3.12およびYC3.1を産生する細菌サンプルを37℃で増殖させ、それらの435nmでの励起による発光スペクトルを比較した(図4A)。産生されたYC3.12の発光スペクトルは、完全成熟形態の黄色カメレオンのスペクトルと等しく、このことはYC3.12蛋白質がCa2+指示物質として作用する能力があることを示している。対照的に、YC3.1は37℃において成熟 EYFP-V68L/Q69Kを有しなかった。YC3.12 におけるVenusの効率的な成熟は、YC3.1におけるEYFP-V68L/Q69Kの成熟と比較した場合にHeLa細胞においても確認された(図4Bおよび4C)。Venusは遺伝子トランスフェクションの開始5時間後に強力な蛍光を発した。次に、YC3.12のCa2+シグナルがどの程度の時間で検出可能となるかに関心を持った。cDNAおよびSuperfect(Qiagen)試薬と一緒に5.0時間HeLa 細胞をインキュベートした後、大きな動的範囲でヒスタミン誘導性Ca2+を観察することができ(図4D)、これは黄色カメレオンの通常の性質と十分に一致している(Miyawaki, A.,他(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 2135-2140)。対照的に、YC3.1は同条件下でほんのわずかなシグナルしか示さなかった(図4E)。YC3.12の使用によって、時間的制約を免れることができ、例えば、遺伝子銃を用いた遺伝子導入後にマウスまたはラットの脳から即座にとった切片の新鮮なニューロン細胞からの、Ca2+シグナルの迅速な検出が可能となる。【0080】【発明の効果】本発明により、良好な成熟効率を有し、またpHおよびCl-の両方に対する感受性を低減させた新規なGFP又はYEP変異体が提供されることになった。【0081】【配列表】【0082】【0083】【0084】【0085】【0086】【図面の簡単な説明】【図1】図1は、YFP変異体の蛍光特性の比較特性評価を示す。(A)37℃において大腸菌で産生されたラシオメトリックペリカム(rペリカム)の蛍光発光スペクトルを示す。(B)37℃において大腸菌で産生されたYFP変異体:すなわちEYFP、EYFP-F46L、SEYFP、SEYFP-F46L(Venus)の蛍光発光スペクトルを示す。(CおよびD)4つのYFP変異体の、それらの変性状態(C)および変性/還元状態(D)からの蛍光回復の時間経過を示す。EYFP(上向き三角)、EYFP-F46L(菱形)、SEYFP(下向き三角)およびSEYFP-F46L(=Venus)(丸)の蛍光のpH感受性(E)および塩化物感受性(F)を示す。【図2】図2は、NPY-Venus(AおよびB)ならびにNPY-EGFP(C〜F)を発現するPC12細胞の蛍光顕微鏡写真を示す。低倍率の顕微鏡写真は、NPY-Venusを発現する蛍光細胞が全て神経炎において鮮明な蛍光を発した(A)のに対し、NPY-EGFPの蛍光はいくつかの細胞中のサイトゾルまたは核周辺領域において検出された(C、矢印で示す)ことを示す。正確にターゲティングされたNPY-Venus(B)およびNPY-EGFP(D)、ならびに誤ってターゲティングされたNPY-EGFP(EおよびF)を有する細胞の高倍率の顕微鏡写真を示す。NPY融合蛋白質の正確なターゲティングを示している典型的な細胞においては、それぞれNPY-VenusおよびNPY-EGFPからの緑色蛍光シグナル(GおよびJ)ならびに赤色免疫蛍光シグナル(HおよびK)が検出された。画像の緑色と赤色との比は、NPY-Venus(I)およびNPY-EGFP(L)に対する擬色で示される。スケールバー=10μm。【図3】図3は、エキソサイトーシス事象の観察を示す。(A)脱分極(高K+)刺激を与えるかまたは与えない場合における培養PC12細胞(黒塗りの棒)および培地(白抜きの棒)から回復したNPY-VenusまたはNPY-EGFPの蛍光強度を示す。(B)脱分極刺激により誘導されるNPY-Venus分泌のCa2+依存性を示す。(C)脱分極刺激を与えるかまたは与えない場合における、培地中のNPY-Venusの蓄積の時間経過を示す。(D〜F)NPY-Venusにより可視化された単一高密度コア顆粒の分泌を示す(Dにおいて矢印で示す)。画像は、100ミリ秒毎に連続的に捕獲した。スケールバー=10μm。【図4】図4は、YC3.12(Venusを含む黄色カメレオン)の性能を示す。(A)37℃にてYC3.12およびYC3.1を産生する細菌サンプルの蛍光発光スペクトルを示す。(BおよびC)それぞれYC3.12およびYC3.1の受容体であるVenus(B)およびEYFP-V68L/Q69K(C)の蛍光発生を示す。これらの画像は、トランスフェクション試薬の添加の5時間後に励起フィルター490DF10および発光フィルター535DF25を用いて取得した。スケールバー=10μm。(DおよびE)5.0時間にわたる、YC3.12(D)およびYC3.1(E)を発現するHeLa細胞におけるサイトゾル非含有Ca2+濃度の測定を示す。535nmと480nmでの発光比は、5秒毎にサンプリングした。右側の縦座標がRmax(矢印)およびRmin(矢じり)を示す。 オワンクラゲ由来の緑色蛍光蛋白質又は黄色蛍光蛋白質のアミノ酸配列において46番目のフェニルアラニン残基がロイシン残基に、64番目のフェニルアラニン残基がロイシン残基に、153番目のメチオニン残基がトレオニン残基に、163番目のバリン残基がアラニン残基に、そして175番目のセリン残基がグリシン残基に置換していることを特徴とする、蛍光蛋白質。 配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。 請求項1又は2に記載の蛍光蛋白質をコードするDNA。 請求項3に記載のDNAを有する組み換えベクター。 請求項3に記載のDNA又は請求項4に記載の組み換えベクターを有する形質転換体。 請求項1又は2に記載の蛍光蛋白質と他の蛋白質とから成る融合蛍光蛋白質。 他の蛋白質が細胞内に局在する蛋白質である、請求項6に記載の融合蛋白質。 他の蛋白質が細胞内小器官に特異的な蛋白質である、請求項6又は7に記載の融合蛋白質。 請求項6から8の何れかに記載の融合蛋白質を細胞内で発現させることを特徴とする、細胞内における蛋白質の局在または動態を分析する方法。 請求項1又は2に記載の蛍光蛋白質をアクセプター蛋白質又はドナー蛋白質として用いてFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)法を行うことを特徴とする、生理活性物質の分析方法。 請求項1又は2に記載の蛍光蛋白質、請求項3に記載のDNA、請求項4に記載の組み換えベクター、請求項5に記載の形質転換体、又は請求項6から8の何れかに記載の融合蛋白質を含む、細胞内成分の局在の分析及び/又は生理活性物質の分析のためのキット。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る