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タイトル:特許公報(B2)_油脂のカルボニル価の測定方法及び該方法において使用する溶剤並びに測定キット
出願番号:2001169439
年次:2008
IPC分類:G01N 31/00,G01N 21/77,G01N 21/78,G01N 31/22,G01N 33/03,G01N 33/28


特許情報キャッシュ

遠藤 泰志 李 昌模 藤本 健四郎 遠藤 美砂子 JP 4059310 特許公報(B2) 20071228 2001169439 20010605 油脂のカルボニル価の測定方法及び該方法において使用する溶剤並びに測定キット 宮城県 591074736 鈴江 武彦 100058479 村松 貞男 100084618 橋本 良郎 100092196 河野 哲 100091351 中村 誠 100088683 遠藤 泰志 李 昌模 藤本 健四郎 遠藤 美砂子 20080312 G01N 31/00 20060101AFI20080221BHJP G01N 21/77 20060101ALI20080221BHJP G01N 21/78 20060101ALI20080221BHJP G01N 31/22 20060101ALI20080221BHJP G01N 33/03 20060101ALI20080221BHJP G01N 33/28 20060101ALI20080221BHJP JPG01N31/00 VG01N31/00 YG01N21/77 BG01N21/78 CG01N31/22 122G01N33/03G01N33/28 G01N31/00〜31/22 G01N21/75〜21/83 G01N33/00〜33/46 CAplus(STN) JMEDPlus(JDream2) 特開昭61−261489(JP,A) 特開昭63−195555(JP,A) The Journal of Biological Chemistry,1992年,vol.267, no.8,p.5442-5445 化学と教育,1990年10月20日,Vol.38 No.5,558-559 J Am oil Chem Soc,2001年,Vol.78, No.10,Page.1021-1024 TAPPI,1982年,Vol.65, No.3,Page.149-150 Holz Roh Werkst,1981年,Vol.39, No.7,Page.253-254 Liebigs Ann Chem,1993年,Vol.1993, No.6,Page.699-700 日本イオン交換学会・日本溶媒抽出学会連合年会講演要旨集,1998年,Vol.14th-17th,Page.65 日本写真学会誌,1986年,Vol.49, No.5,Page.393-403 J Am Oil Chem Soc,1983年,Vol.60,No.2, Page.229-242 10 2002365274 20021218 14 20040715 三木 隆 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、食品、化粧品、機械・装置等の各種の産業分野で利用される動・植物油脂、鉱物油等のカルボニル価の安全な測定方法と、該測定方法において用いる測定キットに関するものである。【0002】【従来の技術】油脂(例えば動物油、植物油、鉱物油)中に存在するカルボニル化合物量は、酸化劣化程度を判定する指標として利用されている。カルボニル価は酸化を通じて生成したカルボニル化合物の量を示す値で、特に食品、フライ油などの加熱を伴う油脂類の劣化程度を示す値として重要である。【0003】油脂中のアルデヒドやケトンなどのカルボニル化合物の測定方法として特に優れているとされるヘニック(Henick)らの方法(J.Am.Oil.Chem.Soc.,31,88(1954))では、カルボニル化合物をベンゼン中で2,4−ジニトロフェニルヒドラジンと反応させ、ヒドラゾン誘導体にして比色定量する。この方法については種々の改良が提案され、基準油脂分析試験法(日本油化学協会)では、過酸化物価が20〜30meq/kgを超える試料については、塩化第一スズで還元した後に、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンと反応させる方法を定めている。しかし、通常過酸化物価が30meq/kgを超えることは少ないため、操作が簡便な熊沢と大山の方法(油化学、14,167(1965))が多用されている。そこでは、カルボニル価は試料に2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを作用させた場合の、440nmにおける吸光度を試料1kgあたりに換算した値として定義され、例えば、弁当及び総菜の衛生規範(昭和54年6月23日環食、第161号)では、揚げ油のカルボニル価は50を超えてはならないとされている。【0004】しかし、上記方法のいずれにおいても肝障害や発ガン性の恐れがあるベンゼンを多量に使用するため、実際に食品工場などの現場では利用されていない。このような有害な溶剤の使用を回避する方法として、アニシジン価(Standard Methods of the Oils and Fats Division of the I.U.P.A.C.,II.D.26)もまた、油脂の熱酸化による劣化度の評価に利用されている。アニシジン価は酢酸の存在下で、アルデヒドがp−アニシジンと反応して生じる黄色を比色する方法で、簡便でかつ有害な溶剤を使用しなくても済むという特徴を有する。しかし、アニシジン価は加熱の初期段階では経時的に増加するものの、ある程度の時間加熱された後では減少する傾向があり、また呈色度がカルボニル化合物量に比例せず、その化学構造によって異なるという欠点を有する。従って、熱劣化型の指標として重要なカルボニル価の代用として用いるには、信頼性が劣っている。【0005】水溶性物質(例えば牛乳、豆乳)のカルボニル価の測定方法として、エタノールを用いる方法(J.Am.Oil.Chem.Soc.,70,881(1993))が知られているが、この方法は油脂類に適用することはできない。【0006】一方、溶剤の使用を伴わない方法として、油脂の誘電率を測定する方法(特公平8−14559号公報及び特公平8−14560号公報)が知られている。油脂のカルボニル価と誘電率は確かに相関性を有するが、装置毎に検出感度が異なり、値が油脂中の水分含量に大きく影響されるため、常に信頼のできる値を示すわけではない。従って、カルボニル価に替わる油脂の劣化指標として用いることはできない。【0007】【発明が解決しようとする課題】従来のカルボニル価の測定方法では、有害な試薬の使用や、カルボニル化合物の構造の相違による測定値のばらつきなど、難点が存在する。しかし、油脂類の加熱劣化指標として、生成したカルボニル化合物量を測定することは重要であり、従来法に替わる方法の開発が切に望まれているのが現状である。【0008】本発明の目的は、有害な試薬を使用せず安全でありかつ簡便で精度の高いカルボニル価の測定方法と、該方法をさらに簡便に実施するために有用な測定キットを提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者等は鋭意検討した結果、特定の試薬が有害なベンゼンに替わる溶剤として有意であることが明らかとなった。そこで、係る特定の試薬を溶剤として用いたカルボニル価の測定方法により上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成したものである。【0017】 すなわち、本発明は、 (1) カルボニル価を測定するための油脂と、炭素数3以上のアルコールからなる溶剤とを含有する反応液に、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを加える工程と、該反応液を酸性にする工程と、酸性にした後加熱する工程と、加熱後アルカリ性にする工程と、アルカリ性にしたことにより生成する沈殿物を除く工程と、カルボニル化合物と2,4−ジニトロフェニルヒドラジンとの反応で生成する色素量を測定する工程と、を具備する油脂のカルボニル価の測定方法であって、前記炭素数3以上アルコールが、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール及びtert−ブタノールから選択される1種又は2種以上の混合物であるカルボニル価の測定方法。 (2) 前記炭素数3以上のアルコールが2−プロパノールである(1)項に記載の測定方法。 (3) 前記炭素数3以上のアルコールが1−ブタノールである(1)項に記載の測定方法。 (4) 前記溶剤に対する油脂中のカルボニル化合物の含有率が、0.005〜500mmol/Lの範囲である、(1)乃至(3)項のいずれか1項に記載の測定方法。【0018】 (5) 前記2,4−ジニトロフェニルヒドラジンの添加量が、反応液の全質量に対して0.0001〜1質量%である(1)乃至(4)項のいずれか1項に記載の測定方法。【0019】 (6) 前記色素量を測定する工程が、分光光度計を用いて波長範囲400〜435nmにおける吸光度を測定することにより色素量を測定する(1)項乃至(5)項のいずれか1項に記載の測定方法。【0020】 (7) 2,4−デカジエナールを検量線作成用標品として用いる(1)項乃至(6)項のいずれか1項記載の方法。【0021】 (8) 前記色素量を測定する工程が、生成する色素の呈色と、標準的な呈色の色見本との比較から色素量を測定する(1)項乃至(5)項のいずれか1項に記載の測定方法。【0022】 (9) (1)項乃至(8)項のいずれか1項に記載のカルボニル価の測定方法に用いられる測定キットであって、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、酸、アルカリ及び2,4−デカジエナールからなる群から選択される少なくとも一種(但し、酸とアルカリ双方が含まれる場合を除く。)と、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール及びtert−ブタノールから選択される1種又は2種以上の混合物である溶剤を混合してなる試薬を含むキット。【0023】 (10) (9)項に記載のカルボニル価の測定方法に用いられる測定キットにおいて、更に、前記沈澱物除去工程において沈澱物を濾別することが可能な1個以上の濾過器と、前記色素量測定工程において色素量の呈色比較に使用する色見本とを含む測定キット、に係わる。【0024】【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明において測定対象となる油脂は、使用による経時変化及び加熱による劣化が問題とされるもので、主としてカルボニル基の生成にその原因がある動植物油、脂肪、脂肪性物質、鉱物油等が挙げられる。具体的には、その構造の主体がトリアシルグリセロールである油脂で動物、植物、微生物起源のもの、またはその構造の主体がハイドロカーボンであるトランスオイル、モーターオイル等の鉱物油が含まれる。【0025】本発明者等は、炭素数3以上のアルコールが、かかる油脂のカルボニル価測定におけるベンゼンに替わる溶剤として極めて有効であることを見出したのである。本発明の測定方法においては、炭素数3以上のアルコールを主成分として含む溶剤(以下、「本発明の溶剤」とも言う。)中にカルボニル価を測定するための油脂を含んでなる反応液を用い、酸性条件下、カルボニル化合物と2,4−ジニトロフェニルヒドラジンとの反応で生成するヒドラゾンを、アルカリ性条件に変化させることにより赤紫色のキノイドイオンにする工程を含む。【0026】【化1】【0027】なお、「本発明の溶剤」は、カルボニル価測定における一連の反応で使用する溶剤を意味する。すなわち、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを反応液に添加する際に使用する溶剤、該反応液を酸性にする際に使用する溶剤、アルカリ性にする際に使用する溶剤も「本発明の溶剤」に含むものとする。【0028】本発明の溶剤に含有されるアルコールとしては、炭素数が3以上のアルコールであれば特に制限はないが、操作性の観点から炭素数3以上5以下のアルコールが好ましい。具体例としては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができ、1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、2−プロパノールは操作性、検出感度、再現性において特に優れており、本発明の溶剤として最も好適に使用することができる。本発明の溶剤は、あらかじめ水素化ホウ素ナトリウムなどで還元することにより、カルボニル化合物を除去してから使用することが好ましい。これによりバックグラウンド値が減少し、より正確な測定値を得ることができる。【0029】ベンゼンを溶剤として用いる従来法においては、カルボニル化合物を溶剤中に、0.05〜5mmol/Lの濃度範囲で希釈し測定する。本発明の方法においては、測定する試料油はあらかじめ本発明の溶剤中に、カルボニル化合物の含有率が好ましくは0.005〜500mmol/L、より好ましくは0.01〜5mmol/Lの濃度範囲になるように溶解しておく。カルボニル化合物含有率が0.005mmol/L未満では検出不可能となり、一方500mmol/Lを超える場合は一定値を示す。カルボニル価が高いと予想される試料油については少量の試料油を、カルボニル価が小さいと予想される試料油については大量の試料油を溶剤に溶解しておけばよい。【0030】酸性条件及びアルカリ性条件の設定は、最も安価かつ一般的な試薬である塩酸、硫酸、酢酸、ギ酸及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどを用いて適切な試薬濃度、試薬添加量及び試薬の添加順序で行う。2−プロパノール等、炭素数3以上の本発明の溶剤を使用することにより生ずる不溶性生成物は、遠心分離などにより取り除くことで、後述する吸光度への影響を完全に排除することができる。【0031】ベンゼンを使用する従来の方法では、反応に用いる呈色試薬である2,4−ジニトロフェニルヒドラジンは反応液全質量に対して0.001%に調整して使用しているが、本発明の方法では、反応液全質量の0.0001〜1%になるように調整することが好ましい。添加量が0.0001%未満ではカルボニル価の値が実際より低くなり、一方1%を超えるとカルボニル価はどの試料でも一定値となる。【0032】油脂から生成するほとんどのカルボニル化合物が、ベンゼンに溶解することは公知の事実である。炭素数3以上のアルコールを用いる本発明の方法を食用油に使用した場合を想定する。一般的な食用油である大豆油はリノール酸が43〜55%、オレイン酸が15〜33%、リノレン酸が5〜11%である。このように大豆油ではリノール酸が主な成分であるが、リノール酸の9−モノヒドロペルオキシドが分解するとメチル末端側からは2,4−デカジエナールが生成し、13−モノヒドロペルオキシドが分解するとn−ヘキサナールが生成する。また、オレイン酸の8−モノヒドロペルオキシドが分解すると2−ウンデセナールが生成し、9−モノヒドロペルオキシドが分解すると2−デセナールが、10−モノヒドロペルオキシドが分解するとn−ノナナールとn−オクタナールが、11−モノヒドロペルオキシドが分解するとn−オクタナールとn−ヘプタナールが生成することが知られている。低分子のカルボニル化合物の揮発性が高いことから熱劣化油には比較的炭素鎖の長いカルボニル化合物が存在するとされる。従って、熱劣化した植物油中に存在するカルボニル化合物は炭素数12以下のものが主である。本発明の方法によれば、油脂中に存在する炭素数3〜12のカルボニル化合物が検出できることは容易に推察できる。【0033】本発明においては、分光光度計を用いて波長範囲400〜435nmにおける吸光度を測定することにより色素量を測定することが好ましい。ベンゼンを用いた従来の方法では約440nmの波長域での分光光度計を用いて吸光度を測定しているが、本発明者等は、本発明の方法を用いて化学構造の異なる各種カルボニル化合物を使用して至適測定条件(測定波長、反応温度、反応時間)を検討した結果、400〜435nmの波長範囲を用いて吸光度を測定することにより、化学構造の違いによる吸光度の影響を受けずに正確に定量することが可能なことを見出した。400nm未満もしくは435nmを超える場合においては、油脂から生成したカルボニル化合物の構造により、吸光度が変化する。また本発明の方法によれば、ベンゼンを使用した従来の測定方法と比較して、試料油の量並びに溶剤の量をおよそ半分に減少させることが可能なため、15mL程度の試験管を用いて操作でき、多検体の処理が可能である。さらに本発明の溶剤は腐食性が少ないため、ディスポーサルのプラスチック試験管の使用も可能となり、洗浄作業などの時間を排除することが可能である。【0034】フライに使用した大豆油、菜種油、コーン油、パーム油、ハイオレイックサフラワー油、サフラワー油、ひまわり油、綿実油、ごま油等およびこれらの混合油のカルボニル価を本発明の方法及び従来法(ベンゼン溶液)で求めた場合、値は極めてよく一致する。また揚げ種が異なる各種の揚げ油についても同様の傾向を示す。このような脂肪酸組成が大きく異なる油脂でも、本発明のカルボニル価の測定方法はベンゼンを溶剤として使用した従来の方法とよく一致した値を与え、尚かつ従来の測定方法において危惧されていた安全性の問題を解消したものであり、より優れたカルボニル価の測定方法といえる。【0035】各種フライ油中で生成したカルボニル化合物には、いずれもリノール酸やオレイン酸由来の2,4−デカジエナール、2−ヘプテナール、2−デセナール、n−ノナナールが含まれるが、検出される化合物のうち、2,4−デカジエナールはいずれの油脂からも最も多く検出される。油脂の脂肪酸組成とは関係なく、リノール酸が最も酸化劣化しやすく、2,4−デカジエナールが生成することから、従来の基準アルデヒドであるn−ヘキサナールではなく、2,4−デカジエナールを検量線を作成するための標品として利用することが最も有効であることもまた、本発明者等は見出した。【0036】本発明の測定方法は、ばらばらの供給源から得られる必要な試薬及び材料のすべてを用いて実施することができるが、それらが測定キットの一部として供給されることが有利である。このようなキットの構成品としては、例えば水素化ホウ素ナトリウムで還元した2−プロパノール、至適濃度の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン/2〜6%酸溶液/2−プロパノール溶液、2〜6%アルカリ溶液/2−プロパノール溶液が挙げられる。至適濃度の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン/2〜6%酸溶液/2−プロパノール溶液については、あらかじめ15mLの蓋付き容器に分注されていることが望ましく、この容器中ですべての反応を行うことができる。他の材料、例えば緩衝剤、コンテナ、および説明書もキットに含めることができる。これらの材料は、必要な安定性、安全性及び取り扱いの簡便さの目的で適宜包装(乾式又は湿式)することができる。【0037】本発明の方法により生成する沈殿物を濾別するための濾過器が、あらかじめその必要量キットに添付されていると便利であり、好ましい。シリンジとフィルターが一体となった加圧濾過器などを用いることができ、1サンプル毎に濾過器を取り替えることが望ましい。【0038】本発明の方法における色素量の測定に関しては、簡易測定を利用することも可能であり、そこでは標準比色板を用いる方法が有効である。比色板はあらかじめ特定のカルボニル価が示す呈色で着色しておき、使用者はその比色板と反応の終了した溶液の色を目視で比較し、おおよそのカルボニル価を知ることができる。かかる簡易測定において利用可能な測定キットの構成品としては、例えば至適濃度の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン/2〜6%酸溶液/2−プロパノール溶液、必要量の濾過器及び標準比色板が挙げられる。該測定キットには更に必要量の試料を簡便に採取できるようなスポイトが含まれていることが好ましく、また2,4−ジニトロフェニルヒドラジン/2〜6%酸溶液/2−プロパノール溶液については、前記と同様、あらかじめ15mLの蓋付き容器に分注されていることが望ましい。【0039】【実施例】次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、実施例は例示のために提示するものであって、どのようにも本発明を限定することを意図するものではない。【0040】[実施例1] カルボニル化合物の測定(1)各種試薬(溶媒)の調製(i)2−プロパノール2−プロパノールは水素化ホウ素ナトリウムで還元し、混在するカルボニル化合物を除去した。以下、実施例において使用する2−プロパノールはすべて脱カルボニル化合物処理されたものである。【0041】(ii)0.05% 2,4−ジニトロフェニルヒドラジン溶液0.05gの2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを100mLの2−プロパノールに溶かした後、3.5mLの濃塩酸を加えた。【0042】(iii)4% 水酸化カリウム溶液4gのKOHを100mLの2−プロパノールに溶解した。【0043】(2)測定方法下記表1に示す各試料の0.5mmol/L 2−プロパノール溶液1mLと、0.05% 2,4−ジニトロフェニルヒドラジン溶液1mLを、15mLのネジ付け試験管に入れた後、40〜60℃で10〜80分間加熱した。反応後、暗所下、室温で冷却した後、4%水酸化カリウム溶液8mLを試験管に入れて発色させた。5分後、2000rpmで5分間遠心分離し、得られた上層を採取して、日本分光Ubest−35型分光光度計で吸光度を測定した。【0044】【表1】【0045】図1に0.5mmol/Lのn−ヘプタナール、2−ヘプテナール、2,4−ヘプタジエナールを上記方法で反応(加熱条件:40℃で30分)させたとき、それぞれ生成したヒドラゾン誘導体の吸収スペクトルを示す。n−ヘプタナールのヒドラゾンは430nm、2−ヘプテナールのヒドラゾンは450nm、2,4−ヘプタジエナールのヒドラゾンは470nmに吸収極大を示した。2重結合の数が1つ増加するごとに吸収極大が20nmずつ長波長に移動した。しかし、400nm〜435nmで吸光度はほぼ一致し、同じ検量線で定量できることがわかった。また、使用する溶剤を1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール及びtert−ブタノールとした場合でも、同様の傾向を示した。【0046】図2に2−ヘプテナールを上記方法で反応温度40℃、50℃、60℃で30分反応させた場合の検量線を示す。温度の違いによる吸光度の変化はほとんどないことがわかる。【0047】図3に0.1mmol/Lのn−ヘキサナールを上記方法で反応温度40℃、反応時間10分、20分、30分、40分、50分、60分、80分で反応させた場合の吸光度を示す。反応時間による吸光度の違いはほとんど見られなかった。【0048】表1に各種カルボニル化合物のヒドラゾン誘導体の410nm、415nm、420nmにおけるモル吸収係数を示す。415nm、420nm及び425nmにおける変動係数((標準偏差)/平均値)×100%)はいずれも10%以下であった。従って、本発明の方法により、油脂中に混在する各種カルボニル化合物をその化学構造に影響されることなく、精度よく定量することができることがわかった。【0049】[実施例2] 食用油への添加試験カルボニル化合物のヒドラゾン誘導体生成に対する油脂の影響を調べるため、大豆油及びモデルフライ大豆油(1mL/minの水を噴霧しながら、180℃で14時間加熱)に既知濃度のn−ヘキサナールを入れた試料のカルボニル価を測定した。試料の2−プロパノール溶液1mLと0.05% 2,4−ジニトロフェニルヒドラジン溶液1mLを15mLのネジ付け試験管に入れた後、40℃で30分間加熱した。反応後、暗所下、室温で冷却した後、4% 水酸化カリウム溶液8mLを試験管に入れて発色させた。5分後、2000rpmで5分間遠心分離し、得られた上層を採取して、日本分光Ubest−35型分光光度計で415nmの吸光度を測定した。その結果、大豆油中での0.1、0.2、0.4nmol/Lのn−ヘキサナールの吸光度はそれぞれ0.62、0.89、1.56、フライ大豆油中での0.1、0.2、0.4nmol/Lのn−ヘキサナールの吸光度はそれぞれ0.64、0.90、1.52であり、油脂の存在の影響は見られなかった。従って、フライ油中のカルボニル価の新しい測定方法として本発明が好適であることがわかった。【0050】[実施例3] フライ油のカルボニル価の測定実際のフライ油にどのカルボニル化合物が存在するかを確認するため、フライ大豆油(カルボニル価=22.6)の吸収スペクトルを調べた。図4に示すように、フライ油の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン反応液の吸収極大が470〜480nmに現れることからアルカジエナールが含まれることが認められた。従って、代表的な脂肪族アルカジエナールである2,4−デカジエナールを用いて実施例2と同様な方法で検量線を作成した。この検量線を図5に示す。【0051】濃度0.01〜0.5mmol/Lの範囲で415nmと420nmにおける吸光度は直線性を示した。次にこの検量線を基にフライした大豆油、コーン油、パーム油、ハイオレイックサフラワー油について本発明の方法にてカルボニル価を測定し、従来法(ベンゼン溶液)の440nmにおけるカルボニル価と比較した。図6及び図7の結果から明らかなように、本発明の方法で求めた値と従来法の値は極めてよく一致し(傾き:0.99〜1.08、相関関係係数:0.972〜0.974)、同じ直線性を示した。従って、脂肪酸組成が大きく異なる油脂でも、本発明の方法は従来法とよく一致した値を与え、尚かつ安全性も有することから、より優れたカルボニル価の測定方法であり代替法として充分であることは明らかである。【0052】[実施例4] 検量線作成用標品食用油脂の熱劣化で生成するカルボニル化合物について検討するために、水噴霧加熱した各種食用油脂試料(大豆油、コーン油、パーム油、ハイオレイックサフラワー油)について、その2,4−ジニトロフェニルヒドラジン反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。各種油脂試料溶液1mLと2,4−ジニトロフェニルヒドラジン溶液1mLを10mLの試験管に加えて密栓混合した後、45℃で30分間加熱した。氷で冷却してポアサイズ0.45μmのフィルターで濾過し、その20μLを高速液体クロマトグラフィーへ注入した。HPLCの分析には、装置として日本分光製880−PU型のポンプ、多波長検出器MD−1515、カラム高温槽860−COを使用した。【0053】HPLC条件は以下の通りである。【0054】カラム Grand pack ODS−5 NK (250mm×4.6mm i.d.)移動相 CH3CN:H2O(80:25;v/v)検出器 UV365nmカラム温度 50℃流速 1.3mL/minHPLC分析の結果、各油脂はいずれも共通して2,4−デカジエナールが主な成分として検出された。従来基準アルデヒドとしてn−ヘキサナールが一般的に用いられてきたが、2,4−デカジエナールを標品に用いることが適当なことが理解される。【0055】[実施例5] カルボニル価測定キットの作成実施例1記載のカルボニル化合物測定に使用された反応液の組成を参考に、本発明の方法によってカルボニル価を測定するためのキットを作成した。キットには0.05%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン/3.5%濃塩酸/2−プロパノール溶液を1mLずつ分注した蓋付きプラスチック試験管、4%水酸化カリウム溶液、水酸化カリウム溶液を4mL採取できるスポイト、加圧式濾過器、標準色相見本を添付した。【0056】【発明の効果】本発明は従来法のように有害な試薬を用いることなく、使用する試薬も安価で、使用量を大幅に減らすことができ、多検体の分析や、食品工場内での分析に利用することが可能である。また油脂試料の脂肪酸組成もしくは生成したカルボニル化合物の化学構造に影響されることもない。従って、従来法の危険で複雑な分析方法に替わり、安全で高い精度と利便性を有するカルボニル価の測定方法が本発明により提供された。【図面の簡単な説明】【図1】 実施例1におけるヒドラゾン誘導体の吸収スペクトルを示す図。【図2】 実施例1における反応温度の違いによる2−ヘプテナールの検量線の変化を示す図。【図3】 実施例1における反応時間の違いによるn−ヘキサナールのヒドラゾンの吸光度の変化を示す図。【図4】 実施例3におけるフライ大豆油のヒドラゾン誘導体の吸収スペクトルを示す図。【図5】 実施例3における2,4−デカジエナールの検量線を示す図。【図6】 実施例3における415nmでの本発明と従来法のカルボニル価の相関を示す図。【図7】 実施例3における420nmでの本発明と従来法のカルボニル価の相関を示す図。 カルボニル価を測定するための油脂と、炭素数3以上のアルコールからなる溶剤とを含有する反応液に、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを加える工程と、該反応液を酸性にする工程と、酸性にした後加熱する工程と、加熱後アルカリ性にする工程と、アルカリ性にしたことにより生成する沈殿物を除く工程と、カルボニル化合物と2,4−ジニトロフェニルヒドラジンとの反応で生成する色素量を測定する工程と、を具備する油脂のカルボニル価の測定方法であって、前記炭素数3以上アルコールが、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール及びtert−ブタノールから選択される1種又は2種以上の混合物であるカルボニル価の測定方法。 前記炭素数3以上のアルコールが2−プロパノールである、請求項1に記載の測定方法。 前記炭素数3以上のアルコールが1−ブタノールである、請求項1に記載の測定方法。 前記溶剤に対する油脂中のカルボニル化合物の含有率が、0.005〜500mmol/Lの範囲である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定方法。 前記2,4−ジニトロフェニルヒドラジンの添加量が、反応液の全質量に対して0.0001〜1質量%である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の測定方法。 前記色素量を測定する工程が、分光光度計を用いて波長範囲400〜435nmにおける吸光度を測定することにより色素量を測定する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の測定方法。 2,4−デカジエナールを検量線作成用標品として用いる請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。 前記色素量を測定する工程が、生成する色素の呈色と、標準的な呈色の色見本との比較から色素量を測定する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の測定方法。 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のカルボニル価の測定方法に用いられる測定キットであって、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、酸、アルカリ及び2,4−デカジエナールからなる群から選択される少なくとも一種(但し、酸とアルカリ双方が含まれる場合を除く。)と、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール及びtert−ブタノールから選択される1種又は2種以上の混合物である溶剤を混合してなる試薬を含むキット。 請求項9に記載のカルボニル価の測定方法に用いられる測定キットにおいて、更に、前記沈澱物除去工程において沈澱物を濾別することが可能な1個以上の濾過器と、前記色素量測定工程において色素量の呈色比較に使用する色見本とを含む測定キット。


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