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タイトル:特許公報(B2)_生体用ジルコニアセラミックスとその製造方法
出願番号:2001169431
年次:2011
IPC分類:C04B 35/48,A61C 8/00,A61L 27/00,A61K 6/027


特許情報キャッシュ

増田 真吾 野田 岩男 北野 宏幸 中西 健文 池田 潤二 JP 4771616 特許公報(B2) 20110701 2001169431 20010605 生体用ジルコニアセラミックスとその製造方法 京セラ株式会社 000006633 増田 真吾 野田 岩男 北野 宏幸 中西 健文 池田 潤二 20110914 C04B 35/48 20060101AFI20110825BHJP A61C 8/00 20060101ALI20110825BHJP A61L 27/00 20060101ALI20110825BHJP A61K 6/027 20060101ALN20110825BHJP JPC04B35/48 CA61C8/00 ZA61L27/00 FA61K6/027 C04B 35/42〜35/51 JSTPlus(JDreamII) 特開平07−017766(JP,A) 特開2000−191372(JP,A) 特開平11−116328(JP,A) 特開平02−074561(JP,A) 特開平09−268055(JP,A) 特開平08−337473(JP,A) 3 2002362972 20021218 7 20080303 相田 悟 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、医療分野における、生体用ジルコニアセラミックスとその製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】ジルコニアセラミックスは、一般的なアルミナセラミックスに比べて高強度であり、又、生体適合性や摩耗特性はアルミナセラミックスと同等であることから、近年生体用の材料として人工関節、人工歯根などへの応用が拡大している。【0003】しかし、一般に用いられている正方晶安定化ジルコニアセラミックス(以下TZPと云う)は、室温〜数百℃の比較的低温領域に置いて正方晶から単斜晶への相転移により強度などの特性が低下することが知られている。【0004】生体用のTZPについて、完全に相転移を抑制することは不可能であったが、近年いくつかの改善技術が提案されている。例えば、特開平11−116328号には、水の存在する環境下での相転移の少なく、安定した強度を有するジルコニアセラミックスを提供する技術として、4.4〜5.4重量%の、Y203含むジルコニアセラミックスであって、0.1〜1.5重量%のAl2O3及び0.03〜0.5重量%のTiO2を含むことを特徴とするジルコニアセラミックスが記載されている。【0005】なお、この従来技術において、焼成温度は1500℃と非常に高かった。【0006】【発明が解決しようとする課題】特開平11−116328号の発明ではそれ以前のジルコニアセラミックスに比較して単斜晶への相転移は抑制されているものの、加速劣化試験(121℃,10時間または150℃,5時間)後の単斜晶割合は、20%程度となっている。【0007】しかしながら、単斜晶割合が20%程度では、表面粗さの劣化を十分に抑制すること、例えば、人工股関節に関する国際規格ISO−7206−2:1996(Implants for surgery Partial and total hip joint prostheses Part 2: Articulating surfaces made of metallic, ceramic and plastic materials)における表面仕上げ(surface finish)規定値(requierment 4.1.2)である表面の算術平均粗さRaを0.02μm以下にすることはできない。したがって、このようなジルコニアセラミックスを生体内に長期間使用した場合に、表面が粗くなり、機械的特性、特に、摺動性が大きく低下する懸念がある。【0008】そこで、本発明は、生体内で長期間使用しても表面荒れがほとんど起こらず、また、機械的特性を維持することができる生体用ジルコニアセラミックスとその製造方法を提供することを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明の生体用ジルコニアセラミックスは、国際規格ISO13356:1997を満足し、121℃、0.20MPaの飽和水蒸気中で152時間の条件で行う加速劣化試験後の表面の算術平均粗さRaが0.02μm以下であることを特徴とする。【0010】上記国際規格ISO13356:1997は、“Implant for surgery Ceramic materials based on yttria-stabilized tetragonal zirconia(Y-TZP)"というタイトルのものであり、生体用インプラントとして安全なものの規格である。【0011】加速劣化試験(121℃の飽和水蒸気中)については、牧野内等の文献(牧野内謙三ら、ジルコニアセラミックスの純水中及び生理食塩水中での曲げ強度の経時変化, 生体材料, vol.12,No.3,112−118(1994))があり、そこで、正方晶から単斜晶への相転移は、温度によって加速され、その活性化エネルギーは、23.3kcal/molと計算されているが、この算出した活性化エネルギーの値によれば、121℃、0.20MPa(所謂2気圧に相当する)の飽和水蒸気中での152時間の条件で行う加速劣化試験は、少なくとも約40年間、生体内に埋入されることに相当するものである。【0012】したがって、上記本発明の構成による生体用ジルコニアセラミックスによれば、長年生体内に埋入しても、表面の荒れが、上記国際規格ISOの規定値である表面の算術平均粗さRaが0.02μm以下という条件を満足するという、極めて優れた表面滑性を維持することが可能なものである。また、この生体用ジルコニアセラミックスは長年生体内に埋入しても、単斜晶割合が極めて少ない、すなわち、機械的特性に優れたものである。したがって、人工骨や人工関節に好適に用いることができ、とくに、人工関節の摺動部分に用いた場合、上記長年に亘る良好な摺動特性により、耐久性の高い人工関節が実現する。【0013】次に、本発明の製造方法は、上記生体用ジルコニアセラミックスの製造方法として、原料粉末の成形体を、その成形体について焼成後の開気孔率が0.1%以下となる温度条件の下限温度から+100℃の範囲の温度で1次焼成を行い、熱間等方圧プレス処理を上記下限温度に対して−10〜+100℃の範囲で行い、且つ、セラミックスの平均結晶粒径(ASTM Designation :E 112-96 Standard Test Method for Determining Average Grain Sizeを用いて測定する)を0.2μm以下とすることを特徴とする。【0014】この製造方法において、上記国際規格ISO13356:1997に適合するような原料粉末を用い、予めバインダーなどを加えて造粒した原料粉末を、1〜3ton/cm2の冷間静水圧プレスによって成形体とし、次いで、切削加工によって、希望する形状に加工する。【0015】造粒した原料粉末を、プレスによって成形体とする場合は、1〜3ton/cm2の冷間静水圧プレスで行う。1ton/cm2より圧力が小さいと、大気中での1次焼成によって、焼成後の嵩密度を十分に上げることができない場合がある。プレス圧は、3ton/cm2以上でも差し支えないが、これ以上高圧にしても成形体に対して何ら効果が無い。【0016】大気中での1次焼成の条件は、焼成挙動が原料粉末の僅かな組成や粒子サイズの変動によって変化するため、先行テストを実施して決定する必要がある。その指針としては、1次焼成後の開気孔率(アルキメデス法で測定する)が0.1%以下となる温度条件の下限温度から+100℃の範囲である。【0017】この1次焼成温度が上記温度条件の下限温度より+100℃を超える場合、上記加速劣化試験後に単斜晶割合が大きく増加し、表面粗さも劣化する恐れがある。なお、市販のジルコニア原料粉末10数ロットに対して先行テストを実施した結果、上記下限温度は、1250℃〜1350℃の範囲であった。【0018】熱間当方圧プレス処理(HIP処理)の条件は、鋭意調査の結果、上記1次焼成温度に対して−10〜+100℃の範囲で、かつ101.4MPa〜202.7MPaの圧力下で行い、さらに、その際、セラミックスの平均結晶粒径を0.2μm以下とすることで、最終的なジルコニアセラミックスの特性として、上記加速劣化試験後の表面の算術平均粗さRaを0.20μm以下とすることができる。上記平均結晶粒径が0.2μmより大きい場合、上記加速劣化試験後に単斜晶割合が大きく増加し、表面粗さも劣化する恐れがある。【0019】また、上記製造方法によれば、嵩密度を6.07g3/cm以上、単斜晶割合が1%以下とすることができる。【0020】なお、HIP処理温度が上記温度条件の下限値に対して−10℃より低い場合、または圧力が低すぎた場合は焼結が進まず、密度が低くなるため好ましくない。またHIP処理温度が上記温度条件の下限値に対して+100℃より高い場合、結晶粒径が増大し、単斜晶への相転移が加速され、また、上記加速試験後の表面粗さも劣化する恐れがあり、好ましくない。【0021】上記圧力は202.7MPaを超えても差し支えないがこれ以上高圧にしても焼結体に対して何ら効果が無い。【0022】【実施例】以下に実施例を示すが、本発明の範囲は、以下の例に限定されるものではない。(実施例1)Y2O3を3mol%含有する正方晶安定化ジルコニアセラミックス原料粉末(東ソー株式会社製.型番TZ−3YSB)の1ロット(この原料ロットをロットAと云う)を、3ton/cm2の冷間静水圧プレスによって成形体とした。【0023】なお、この材料の組成(重量%)は、Y2O3が5.15%±0.20%,Al2O3が0.1%以下、SiO2が0.02%以下、Fe2O3が0.01%以下、HfO2が2%以下、残部がZrO2である。また、比表面積は6.9m2/gである。【0024】次いで、切削加工によって、概略直径24mm,厚さ6mmの円盤状に加工した。また、強度の確認用としてJIS R1601に規定された抗折強度試験片を同時に作製した。【0025】次いで、大気中での1次焼成を1275℃から1375℃まで毎5℃の各温度、保持時間2時間の条件で実施し、開気孔率が0.1%以下となる下限値として1300℃を得た。さらに、表1に示す試料No.1〜5として示すように、1275℃、1300℃、1325℃、1350℃、1375℃で1次焼成を行ったものについて、嵩密度を測定したところ、試料No.1を除き、理論密度の95%以上の値を得た。【0026】【表1】【0027】次いで、試料No.1〜5について、HIP処理を表1に示す温度、202.7MPa、保持時間1時間の条件で実施した。【0028】このように作製したジルコニアセラミックスの試料の1面を平面研削盤にて研削し、次いでラップ盤にてダイヤモンド砥粒を用いて研磨仕上げを行い、表面の算術平均粗さRaが0.01μm程度の鏡面仕上げとした。また、X線回折による単斜晶割合の測定を行った(測定限界は約0.5%)。【0029】これら試料No.1〜No.5の試料に対して、加速劣化試験(121℃、0.20MPaの飽和水蒸気中で152時間)を行い、単斜晶割合と表面粗さを試験後に再度測定した。その結果、1次焼成後の開気孔率が1%であったNo.1は、加速劣化試験(エージング)によって表面が崩壊し、測定が不可能であった(本発明範囲外)。No.2〜4では加速劣化試験による変化は実質上見られなかった。【0030】また、No.5では、単斜晶割合が急激に増加し、表面粗さも劣化していた(本発明範囲外)。この試料は、平均結晶粒径が0.25μmであったため、単斜晶への相転移が十分に抑制されなかったものである。【0031】なお、No.2〜4の3点曲げ試験による抗折強度は、いずれも約1450MPaという高値であった。(実施例2)上記原料粉末の異なるロット (この原料ロットをロットBと云う)を、3ton/cm2の冷間静水圧プレスによって成形体とした。この原料ロットBは、原料ロットAに対し、比表面積が8.2m2/gである点が異なる。【0032】実施例1と同様に、試料を作製し、また、同様な方法で開気孔率が0.1%以下となる下限値として1280℃を得た。【0033】このうち、1次焼成温度が1280℃であった試料No.6と1375℃であった試料No.7について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。【0034】表1に示すように、試料No.6は、加速劣化試験後も表面粗さの実質的劣化がなく、また、単斜晶割合も1%と少なかった。さらに、No.6の3点曲げ試験による抗折強度は、約1500MPaという高値であった。これに対して、試料No.7は、単斜晶割合が急激に増加し、表面粗さも劣化していた(本発明範囲外)。この試料は、平均結晶粒径が0.24μmであったため、単斜晶への相転移が十分に抑制されなかったものである。(実施例3)Y2O3を3mol%含有する正方晶安定化ジルコニアセラミックス原料粉末(東ソー株式会社製.型番TZ−3YB)の1ロット(この原料ロットをロットCと云う)を、3ton/cm2の冷間静水圧プレスによって成形体とした。【0035】この材料の組成(重量%)は上記TZ−3YSBと同等であり、Y2O3が5.15%±0.20%,Al2O3が0.1%以下、SiO2が0.02%以下、Fe2O3が0.01%以下、HfO2が2%以下、残部がZrO2である。また、比表面積は14.8m2/gである。【0036】次いで、切削加工によって、概略直径24mm,厚さ6mmの円盤状に加工した。また、強度の確認用としてJIS R1601に規定された抗折強度試験片を同時に作製した。【0037】次いで、大気中での1次焼成を1200℃から1375℃まで毎5℃の各温度、保持時間2時間の条件で実施し、開気孔率が0.1%以下となる下限値として1250℃を得た。さらに、表1に示す試料No.8〜12として示すように、1200℃、1250℃、1300℃、1350℃、1375℃で1次焼成を行ったものについて、嵩密度を測定したところ、試料No.8を除き、理論密度の95%以上の値を得た。【0038】次いで、試料No.8〜12について、HIP処理を表1に示す温度、202.7MPa、保持時間1時間の条件で実施した。【0039】このように作製したジルコニアセラミックスの試料の1面を平面研削盤にて研削し、次いでラップ盤にてダイヤモンド砥粒を用いて研磨仕上げを行い、表面の算術平均粗さRaが0.01μm程度の鏡面仕上げとした。また、X線回折による単斜晶割合の測定を行った(測定限界は約0.5%)。【0040】これら試料No.8〜No.12の試料に対して、加速劣化試験(121℃、0.20MPaの飽和水蒸気中で152時間)を行い、単斜晶割合と表面粗さを試験後に再度測定した。その結果、1次焼成後の開気孔率が2.3%であったNo.8は、加速劣化試験(エージング)によって表面が崩壊し、測定が不可能であった(本発明範囲外)。No.9〜11では加速劣化試験による変化は実質上見られなかった。【0041】また、大気焼成温度およびHIP処理温度が下限値+100℃を超えたNo.12では、単斜晶割合が急激に増加し、表面粗さも劣化していた(本発明範囲外)。【0042】なお、No.9〜11の3点曲げ試験による抗折強度は、いずれも約1500MPaという高値であった。【0043】【発明の効果】上述のように、本発明の生体用ジルコニアセラミックスは、国際規格ISO13356:1997を満足し、121℃、0.20MPaの飽和水蒸気中で152時間の条件で行う加速劣化試験後の表面の算術平均粗さRaが0.02μm以下であるので、長年生体内に埋入しても、表面の荒れがほとんど起こさないものであり、また、この生体用ジルコニアセラミックスは長年生体内に埋入しても、単斜晶割合が極めて少ない、すなわち、機械的特性に優れたものである。 国際規格ISO13356:1997を満足し、121℃、0.20MPaの飽和水蒸気中で152時間の条件で行う加速劣化試験後の表面の算術平均粗さRaが0.02μm以下であることを特徴とする生体用ジルコニアセラミックス。 上記加速劣化試験後の単斜晶割合が1%以下であることを特徴とする請求項1記載の生体用ジルコニアセラミックス。 原料粉末の成形体を、その成形体について焼成後の開気孔率が0.1%以下となる温度条件の下限温度から+100℃の範囲の温度で1次焼成を行い、熱間等方圧プレス処理を上記下限温度に対して−10〜+100℃の範囲で行い、且つ、セラミックスの平均結晶粒径を0.2μm以下とすることを特徴とする請求項1記載の生体用ジルコニアセラミックスの製造方法。


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