タイトル: | 特許公報(B2)_重合率の測定方法 |
出願番号: | 2001164279 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G01N 33/44,C08F 2/00,C08G 85/00,G01N 25/20 |
豊岡 孝司 小豆澤 誠 新家 香織 奥野 利昭 JP 4771614 特許公報(B2) 20110701 2001164279 20010531 重合率の測定方法 日東電工株式会社 000003964 杉谷 勉 100093056 豊岡 孝司 小豆澤 誠 新家 香織 奥野 利昭 20110914 G01N 33/44 20060101AFI20110825BHJP C08F 2/00 20060101ALI20110825BHJP C08G 85/00 20060101ALI20110825BHJP G01N 25/20 20060101ALI20110825BHJP JPG01N33/44C08F2/00 ZC08G85/00G01N25/20 Z C08F 2/00-2/60 G01N 25/00 G01N 33/44 特開平04−106104(JP,A) 特開平10−265511(JP,A) 特開平01−110511(JP,A) 3 2002356502 20021213 13 20071113 松元 洋 【0001】 この発明は、ポリマーの重合率の測定方法に係り、特に、ポリマーを製造する工程で、重合反応により発生する熱量を利用して重合率を算出し、その結果をリアルタイムにモニタ画面に表示する技術に関する。【0002】【従来の技術】従来、重合反応を伴うポリマーの製造方法として、以下の2通りの方法が提案・実施されている。すなわち、第1の方法は、モノマーとポリマーの混合物に乾燥処理を施すことによってモノマーが気化してポリマーのみが残るという特性を利用し、この乾燥処理によって残ったポリマーの質量から重合率を求めている。【0003】つまり、ポリマーの製造過程で、15〜20分間隔で定期的に攪拌槽よりポリマーを抜き取り、抜き取った時点の混合物の重量(M0)と、重量(M0)を測定した後に乾燥処理を施して残るポリマーの重量(Mp)とを電子天秤などを利用して測定する。そして、混合物の重量(M0)とポリマーの重量(Mp)との比、つまり、重合率=(Mp)/(M0)×100で表される関係式から重合率を求めている。【0004】また、第2の方法は、モノマーが重合反応に伴いポリマーへと変化するに連れて粘度が高くなるとともに重合率が変化する関係を利用し、実験段階でポリマーの合成過程での粘度変化に伴う重合率の変化の相関式を予め求め、この求まった相関式を製造工程で利用している。【0005】つまり、ポリマーの製造工程では、槽に取り付けられた粘度計から槽内の混合物の粘度をインラインによりリアルタイムに検出する。そして、予め求めておいた粘度と重合率との相関式を利用して検出された粘度から重合率を算出するようにしている。【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。すなわち、第1の方法では、重合率の変化を確認する度に装置を一時停止し、槽内から検査用サンプルとしての混合物の抜き取りを行わなければならない。そのため、作業効率の低下を招くといった問題がある。【0007】また、検査用サンプルを定期的に抜き取るため、ポリマーの量が減少してしまうといった不都合もある。【0008】また、第2の方法では、粘度変化は温度や槽内での混合物の撹拌速度の変化に影響され易く、また、粘度計への凝集物の付着などによる測定誤差の発生によって、実際の製造工程では粘度と重合率の相関関係が損なわれてしまう。このため、予め求めた相関式が役に立たたず、正確な重合率が求められないといった問題がある。【0009】そこで、業界および製造現場では、分子量分布が均一なポリマーを製造するために、ポリマーを製造する過程で重合率の変化状態をリアルタイムに確認できることが強く熱望されている。【0010】 この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、重合率の測定方法を提供することを主たる目的とする。【0011】【課題を解決するための手段】 この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。 すなわち、請求項1に記載の発明は、ポリマーを合成する過程で発生する熱量(Qr)を、槽内で発生する熱量を温度調節手段であるジャケットで冷却除去したときにジャケットへ逃げる熱量であるジャケット伝熱量(Qf)と、槽内の内容物の温度上昇に使われる熱量である顕熱量(Qsens)と、内容物の蒸発に使われる熱量である蒸発潜熱量(Qevop)と、前記ジャケット伝熱量(Qf)、顕熱量(Qsens)、および蒸発潜熱量(Qevop)以外の損失熱量(Qloss)とを測定して算出し、以下の式で重合率(Convh)を算出する。 Qr=Qf+Qsens+Qevop+Qloss【数2】【0014】 また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の重合率の測定方法において、前記損失熱量(Qloss)は、重合反応により発生する熱量(Qr)がゼロとなる重合反応開始前の定常状態における前記ジャケット伝熱量(Qf)と、顕熱量(Qsens)と、蒸発潜熱量(Qevop)とを測定して以下の式で算出するものである。 Qloss=−(Qf+Qsens+Qevop)【0015】 また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の重合率の測定方法において、 測定対象ポリマーについて前記熱量(Qr)に基づいて算出した重合率を次のように補完処理する、 (1)測定対象ポリマーと同種の標準ポリマーを利用して予め行った重合反応実験過程で抜き取って得た混合物の質量と、当該混合物を乾燥させて残るポリマーの質量との比から実測して求めた実重合率と粘度の相関関係を求めておくとともに、 (2)前記相関関係を利用して、測定対象ポリマーについて測定した粘度から測定対象ポリマーの重合率を求め、 (3)任意数の標準ポリマーを実測して求めた重合率と、前記相関関係を利用して粘度から求めた重合率との偏差に応じた重み係数を予め求めておき、 (4)前記実重合率(Convh)と、前記相関関係から求めた重合率(Convv)のそれぞれに前記重み係数を乗算し、かつ、加算して重み付け補完処理して重合率を求めるものである。【0017】【作用】請求項1に記載の発明の作用は次のとおりである。すなわち、ポリマーを製造する過程で発生する熱量(Qr)が求められ、この求まった熱量(Qr)から重合率が計算により求められる。【0018】 特に、重合反応に伴って槽内で発生した熱を冷却除去したときに槽に付設したジャケットから逃げる熱量であるジャケット伝熱量(Qf)と、槽内のモノマーとポリマーの混合物である内容物の温度上昇に使われる熱量である顕熱量(Qsens)と、前記ジャケット伝熱量(Qf)および顕熱量(Qsens)以外の損失熱量(Qloss)とが測定され、これらを用いて計算により熱量(Qr)を求めて利用することによって、当該方法が好適に実施される。【0019】 さらに、モノマーとポリマーの混合状態にある内容物の蒸発に使われた熱量である蒸発潜熱量(Qevop)を測定して熱量を計算により求めて利用することによって、当該方法が好適に実施されるとともに、より正確な重合率が求められる。【0020】 また、請求項2に記載の発明によれば、未知数である損失熱量(Qloss)が、重合反応により発生する熱量(Qr)がゼロとなる重合反応開始前の定常状態における前記ジャケット伝熱量(Qf)と、顕熱量(Qsens)と、蒸発潜熱量(Qevop)とが利用されて求められる。【0021】 また、請求項3に記載の発明によれば、測定対象ポリマーと同種の標準ポリマーについて、代表的な相関関係を求めておくとともに、任意数の標準ポリマーを実測して求めた重合率と、先の相関関係を利用して粘度から求めた重合率との偏差に応じた重み係数が予め求められる。 そして、測定対象ポリマーについて実測で得た粘度から粘度と重合率との相関関係を利用し、測定対象の重合率が求められる。 さらに、測定対象のポリマーについて求まった熱量(Qr)に基づいて算出した重合率と、粘度から求めた測定対象の重合率とを重み係数を用いて重み付け補完処理が施される。【0023】【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の一実施例を説明する。図1はこの発明に用いられる一実施形態としてのポリマー製造装置の概略構成を示すブロック図、図2は攪拌機およびその周辺構成を示す構成図である。図1に示すように、実施例に用いられる装置は大きく分けて、攪拌機1と、演算処理部10、制御部20、操作部21、およびモニタ22とから構成されている。【0024】先ず、図2に基づいて攪拌機1およびその周辺構成について説明する。攪拌機1は、底部が椀状をした攪拌槽2と、その中心部の上方から片持ち支持された回転軸3に攪拌翼4(図2では「格子翼」)が取り付けられている。この回転軸3は、図示しない回転駆動部に連接されている。また、攪拌槽2内の重合温度をコントロールするための温度調節手段としてのジャケット5(5a、5b)が攪拌槽2の側部と上蓋のそれぞれに独立して付設されている。また、攪拌槽2の側部には、槽内に存する重合反応阻害要因となる溶存酸素を除去するために窒素を供給する窒素供給管R7が連接されている。また、重合反応に伴って蒸発した水分を冷却して水に戻すとともに、槽内に供給して不要となった窒素を排出させるためのコンデンサ6が上蓋に立設されている。【0025】側部ジャケット5aには、温度調節用流体を供給する供給管R1と、排出する排出管R2とが連接されている。この供給管R1のジャケット連接部の近傍には温度センサS1が、他方排出管R2のジャケット連接部の近傍には温度センサS2と流量計F1とが配備されている。同様に、上蓋ジャケット5bにも、温度調節用流体の供給管R3と排出管R4とが連接されており、供給管R3のジャケット連接部近傍に温度センサS3が、排出管R4のジャケット連接部の近傍には温度センサS4と流量計F3とが配備されている。【0026】つまり、側部ジャケット5aを循環する前の温度調節用流体として冷却水の温度(Tjin)が温度センサS1で、循環後の温度(Tjout)が温度センサS2で逐次検出されると同時に、側部ジャケット5aを循環した冷却水の流量(Wj)が流量計Fから逐次検出されて演算処理部10に送られる。同様に、上蓋ジャケット5bを循環する前の冷却水の温度(Ttin)が温度センサS3で、循環後の温度(Ttout)が温度センサS4で逐次検出されると同時に、上蓋ジャケット5bを循環した冷却水の流量(Wt)が計F3から逐次検出されて演算処理部10に送られるようになっている。【0027】コンデンサ6は、円筒状をしており、その長手方向中央部はハニカム構造となっている。また、側壁内には冷却水が循環するようになっている。また、側部下方に冷却水の供給管R5、側部上方に排出管R6がそれぞれ連接されている。また、上部には、側部ジャケット5aおよび攪拌槽2を貫通した供給管R7から槽内に供給された窒素を排出するための排出管R8が連接されている。【0028】そして、供給管R5のコンデンサ連接部の近傍には温度センサS5と流量計F5とが配備されており、排出管R6のコンデンサ連接部の近傍には温度センサS6が配備されている。【0029】つまり、コンデンサ6を循環する前の冷却水の温度(Tcin)が温度センサS5で、循環後の温度(Tcout)が温度センサS6で逐次検出されると同時に、コンデンサ6の側壁内を循環した冷却水の流量(Wc)が流量計Fで逐次検出されて演算処理部10に送られるようになっている。また、コンデンサ6内のハニカム構造を通過する蒸気は、冷却されて水滴となり攪拌槽2内に戻されるようになっている。【0030】また、攪拌槽2に供給する窒素の供給管R7の攪拌槽近傍に温度センサS7が配備されており、他方排出管のコンデンサ連接部の近傍には温度センサS8と流量計F7とが配備されている。【0031】つまり、攪拌槽2に供給前の窒素の温度(Tnin)が温度センサS7で、コンデンサ6を介して攪拌槽2から排出されるときの窒素の温度(Tnout)が温度センサS8で逐次検出されると同時に、流量計F7から逐次検出された窒素の流量(Wn)とが演算処理部10に送られるようになっている。【0032】さらに、攪拌槽2の底部には、槽内の内容物の温度を検出するための温度計7と、モノマーとポリマーなどからなる内容物の粘度を検出するための粘度計8とが挿通されている。これら、温度計7と粘度計8とから逐次検出される温度(Tp)と粘度(μ)が演算処理部10に送られるようになっている。【0033】次に、本実施例装置の特徴的な構成を有する演算処理部10の構成を演算処理方法の手順に沿って図1を参照しながら説明する。先ず、本実施例の演算処理方法を説明する前に、本実施例方法の原理について説明する。本実施例の場合、重合反応に伴って発生する熱量を測定し、その測定結果に基づいて、ポリマー製造過程における現在の重合率を計算によって求めている。つまり、熱量の計算によって求まる重合率(Convh)は、モノマーの組成に応じて予め求まる熱量(Qr)の総和と、重合反応の開始から現在(時刻t)までの熱量(Qr)の和の比から求めることができる。この関係は、次式(1)で表すことができる。【0034】【数1】【0035】このときの熱量(Qr)は、ジャケットから逃げてゆく熱量であるジャケット伝熱量(Qf)と、槽内の内容物の温度上昇に使われた熱量である顕熱量(Qsens)と、槽内の水分の蒸発に使われた熱量である蒸発潜熱量(Qevop)、およびその他の損失熱量(Qloss)との総和から求めている。つまり、発熱量(Qr)は次式(2)で表すことができる。Qr=Qf+Qsens+Qevop+Qloss ・・・ (2)【0036】さらに、上記式(1)によって求まった重合率の精度を向上させるために、補完処理を施している。つまり、この補完処理は以下の手順に沿って行っている【0037】先ず、所定のポリマーの製造前に、この測定対象ポリマーと同種の標準ポリマーについての粘度と重合率の代表的な相関関係を求めておく。この相関関係の求め方として、例えば、標準ポリマーについて重合反応開始から定期的に抜き取った混合物の質量と、この混合物を乾燥させた後に残るポリマーの質量の比から求まる重合率から求める。【0038】また、代表的な相関関係によって求まった重合率と、実測によって求まる標準ポリマーの重合率のバラツキを確認するために、複数ロットについて上述の方法を利用して実測による重合率を求めるとともに、実測で得た粘度について、先に求めた相関関係を利用して重合率を算出する。【0039】そして、複数ロットの標準ポリマーを実測して求めた重合率と、代表的な相関関係を利用して粘度から求めた重合率との偏差を求めて重み係数αを求める。【0040】なお、求まる重み係数αは、本実施例の場合、0≦α≦1の範囲となっている。そして、この重み係数αは、製造開始前に予めメモリなどに蓄積され逐次読み出されるようになっている。【0041】そして、実際の製造過程において、先に求めた相関関係を利用して測定対象ポリマーについて測定した粘度から重合率を求める。また、この求まった重合率と測定対象ポリマーについて求めた熱量(Qr)に基づいて算出した重合率とに、重み係数αを用いて重み付け補完処理を施すようになっている。以下、上述の原理を実施する手順を上述の装置構成から各センサ類によって検出される結果と図1を用いて説明する。【0042】ジャケット伝熱量算出部11には、側部ジャケット5aに連接された供給管R1に取り付けられた温度センサS1から検出される供給温度(Tjin)と、排出管R2に取り付けられた温度センサS2から検出される排出温度(Tjout)と、流量計F1から検出された冷却水の流量(Wj)とが入力される。同時に、操作部21から入力され予めメモリ16に蓄積されている冷却水の比熱(Cpj)も読み出されて入力される。そして、これら入力された値に基づいてジャケット伝熱量(Qf)が求められるようになっている。【0043】つまり、ジャケット伝熱量演算部11では、排出温度(Tjout)と供給温度(Tjin)との比較により求まる温度偏差と、冷却水の流量(Wj)、および冷却水の比熱(Cpj)の積からジャケット伝熱量(Qf)を求めるようになっている。この関係は次式(3)で表すことができる。Qf=Wj×Cpj×(Tjout−Tjin) ・・・(3)【0044】顕熱量算出部12には、攪拌槽2に取り付けられた温度計7から検出された内容物の温度と、操作部21から予め入力されてメモリ16に蓄積されたモノマーの質量(Mp)とポリマーの比熱(Cpp)とが読み出されて入力される。そして、これら入力された値に基づいて顕熱量(Qsens)が求められるようになっている。【0045】つまり、顕熱量算出部12では、検出時点の内容物の温度とその時点前の検出温度との比較により温度上昇率(ΔTp)が求められるとともに、この求められた温度上昇率(ΔTp)と、内容物の総質量(Mp)、およびポリマーの比熱(Cpp)との積から顕熱量(Qsens)が求められるようになっている。この関係は、次式(4)で表すことができる。Qsens=Mp×Cpp×ΔTp ・・・ (4)【0046】なお、ポリマーの比熱(Cpp)は、演算で求まる重合率の変化に応じて逐次変更される。【0047】蒸発潜熱量算出部13では,上蓋ジャケット5Bから逃げる熱量と,コンデンサ6から逃げる熱量、および槽内から排出される窒素によって逃げる熱量に基づいて蒸発潜熱量(Qevop)が求められるようになっている。【0048】先ず、上蓋ジャケット5bから逃げる熱量を求めるために、冷却水の供給管R3に取り付けられた温度センサS3から検出される供給温度(Ttin)と、排出管R4に取り付けられた温度センサS4から検出された排出温度(Ttout)と、流量計F3から検出された冷却水の流量(Wt)、および操作部21から入力され予めメモリ16に蓄積されている冷却水の比熱(Cpt)とが蒸発潜熱量演算部13に入力されて求められる。【0049】つまり、排出温度(Ttout)と供給温度(Ttin)の比較から求まる温度偏差と、冷却水の流量(Wt)、および冷却水の比熱(Cpt)との積から上蓋ジャケットから逃げる熱量Aが求められるようになっている。この関係は次式(5a)で表すことができる。A=Wt×Cpt×(Ttout−Ttin) ・・・ (5a)【0050】また、コンデンサ6から逃げる熱量を求めるために、冷却水の供給管R5に取り付けられた温度センサS5から検出される供給温度(Tcin)と、排出管R6に取り付けられた温度センサS6から検出される排出温度(Tcout)と、流量計F5から検出される冷却水の流量(Wc)、および予めメモリ16に蓄積された冷却水の比熱(Cpc)とが蒸発潜熱量演算部13に入力されて求められる。【0051】つまり、排出温度(Tcout)と供給温度(Tcin)の比較から求まる温度偏差と、冷却水の流量(Wc)、および冷却水の比熱(Cpc)の積からコンデンサから逃げる熱量Bが求められるようになっている。この関係は次式(5b)で表すことができる。B=Wc×Cpc×(Tcout−Tcin) ・・・ (5b)【0052】また、窒素の排出によって逃げる熱量を求めるために、供給管R7に取り付けられた温度センサS7から検出される供給温度(Tnin)と、排出管R8に取り付けられた温度センサS8から検出される排出温度(Tnout)と、流量計F7から検出された窒素の流量(Wn)、および操作部21から入力され予めメモリ16に蓄積された窒素の比熱(Cpt)とが蒸発潜熱量演算部13に入力されて求められる。【0053】つまり、排出温度(Tnout)と供給温度(Tnin)の比較からもとまる温度偏差と、窒素の流量(Wn)および窒素の比熱(Cpn)の積から窒素の排出によって逃げる熱量Cが求められるようになっている。この関係は次式(5c)で表すことができる。C=Wn×Cpn×(Tnout−Tnin) ・・・ (5c)【0054】そして、上述の式(5a)〜(5c)の和によって蒸発潜熱量(Qevop)が求められるようになっている。すなわち、この関係は次式(5d)で表すことができる。Qevop=A+B+C ・・・ (5d)【0055】損失熱量算出部14では、攪拌機1から逃げるトータルの熱量を実測によって検出することは困難であるので、上述のジャケット伝熱量(Qf)、顕熱量(Qsens)、および蒸発潜熱量(Qevop)の測定箇所以外で発生する熱量の損失を損失熱量(Qloss)として求めている。【0056】すなわち、損失熱量(Qloss)は、重合反応前の熱量(Qr)がゼロの状態で実測により求まったジャケット伝熱量(Qf)、顕熱量(Qsens)、および蒸発潜熱量(Qevop)をそれぞれ求めてそれぞれの値が損失熱量演算部14に入力され、これらの総和から求められるようになっている。つまり、式(2)でQr=0において求められるようになっている。【0057】なお。損失熱量は(Qloss)は、設定重合温度ごとに重合反応開始前に予め求められメモリに蓄積されている。【0058】そして、上述の式(3)〜(5d)によって求まった値および損失熱量(Qloss)が、発熱量算出部15に入力される。そして、発熱量算出部15では、上記式(2)を利用し、各値が代入されて検出時点の総発熱量(Qr)が算出される。この求まった発熱量(Qr)は、発熱量に基づく重合率算出部17に出力される。【0059】発熱量に基づく重合率算出部17では、上記式(1)が利用されて、逐次検出された発熱量に基とづいて重合率が算出される。【0060】同時に相関式よる重合率算出部18には、温度計7で検出された温度と、粘度計8で検出された粘度とが入力される。そして、入力されたこれらの値は、相関式による重合率算出部18に予め入力された重合率を算出する相関式、つまり、製造する所定のポリマーごとに粘度(μ)と温度(Tp)の相関関係を利用して求まる重合率の相関式に代入され重合率が算出されるようになっている。なお、この相関式は、次式(6)で表すことができる。Convv=f(μ,Tp) ・・・ (6)【0061】補完重合率算出部19は、発熱量に基づいて算出された重合率(Convh)の精度を向上させるために補完処理を施すようになっている。つまり、発熱量に基づく重合率演算部17と、相関式による重合率算出部18で算出されたそれぞれの重合率(Convh、Convv)が入力されるとともに、メモリ16に蓄積された重み係数αが読み出されて入力される。そして、各重合率に重み係数αが用いられて重み付けによる補完処理が施され、重合率(Conv)が算出されるようになっている。この関係は次式(7)で表すことができる。Conv=α×Convh+(1−α)×Convv ・・・(7)【0062】補完重合率算出部19で算出された重合率はモニタ22に出力される。【0063】なお、製造過程で実測で得た粘度から求まる重合率が信用できる場合は、重み係数αの値は小さく、逆に、信用できない場合は重み係数αの値が大きくなるようになっている。【0064】メモリ16は、本実施例の演算において予め必要なデータとして、モノマーの組成に応じて予め求まる熱量や、各冷却水の比熱や、粘度と重合率変化から予め求めた代表的な相関関係や、重み係数αなどが操作部21から入力されて予め蓄積されるようになっている。【0065】モニタ22は、演算処理部10で算出された重合率や、各種センサ類から検出される検出結果や、その他の情報類が表示されるようになっている。つまり、モニタ22には、図3の実線で示すように、所定のポリマーごとの理想の重合率変化パターンを基準変化パターンとして表示しておき、製造過程で演算処理部10から逐次算出された重合率が波線で示すように重畳表示される。【0066】すなわち、製造過程にあるポリマーの重合状態がモニタ画面からリアルタイムに監視できるようになっている。なお、本実施例では、同一画面上に設定重合温度も表示されるようになっている。【0067】制御部20は、攪拌機1の重合温度を調節するために各ジャケット5に供給する温度調節用流体の温度や流量、攪拌槽2に供給する窒素量、コンデンサ6に供給する冷却水の温度や流量、演算処理部10、モニタ22の画面表示切り替などを総括的に制御している。【0068】以上のように、測定対象ポリマーおける重合反応時に発生する熱量を測定し、この熱量を利用して計算によって求まる重合率と、粘度から求まる重合率とが、粘度と重合率との相関関係と粘度から求まる重合率との偏差に応じて予め求めた重み係数αを用いて補完処理が施されるので、粘度計によって測定された粘度を粘度と重合率の相関関係に利用して求まる重合率よりも、一層正確な重合率が求められる。【0069】また、演算処理部10で算出された重合率を、予めモニタ画面に表示した基準となる重合率変化パターンに重畳表示することによって、容易に製造過程の重合率を確認することができる。ひいては、重合率をリアルタイムに確認するとによって分子量分布も確認できる。【0070】本発明は、上記実施の形態に限られることなく、下記のように変形実施することができる。本実施例では重合率を監視するために、演算処理部10で求まった重合率をモニタ22の画面に予め表示された基準となる所定のポリマーの重合変化パターンに重畳表示しているが、操作部21を操作することによって、重合率変化パターンの表示のみならず、図4に示すよう側部ジャケット5aを循環する冷却水の水温や、図5に示す上蓋ジャケット5bを循環する冷却水の水温や、図6に示すコンデンサ6に循環させる冷却水の水温などの表示に切り替えて表示するようにしてもよい。なお、図4〜図6に示す温度は、供給管に配備された温度センサから検出される温度が実線(IN)で、排出管に配備された温度センサから検出された温度が点線(OUT)で表示されている。【0071】また、同一画面状に重合率や各冷却水の水温状態などを重畳もしくは分割して表示するようなものであってもよい。【0072】また、本実施例の方法を利用する装置構成は、上記実施装置に限定されるものではない。さらに、ジャケット5に循環させる温度調節用流体は冷却水に限らず、例えば、加熱用の温水なども利用される。【0073】【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、ポリマーの合成する過程で計算により求められた熱量は、粘度のように温度などの他の要因による影響を受けて変化することなく安定しているので、この求まった熱量を利用して重合率を求めることによって、正確な重合率を測定することができる。【0074】また、センシングによって検出された熱量を利用して重合率を演算で求めているので、サンプリングなどによって製造工程を一時停止させる必要が無く、製造効率の向上を図ることができる。【0075】 また、ジャケットから逃げる熱量であるジャケット伝熱量(Qf)、槽内の内容物の温度上昇に使われた熱量である顕熱量(Qsens)、および前記ジャケット伝熱量(Qf)と顕熱量(Qsens)以外に損失した熱量である損失熱量(Qloss)とから熱量が計算され求められる。そして、この熱量を利用することによって、当該方法を好適に実施することができる。【0076】 また、熱量は、さらに内容物の蒸発に使われた熱量である蒸発潜熱量(Qevop)も求められることによって、より正確な熱量および重合率を求めることがことができる。【0077】 また、請求項2に記載の発明によれば、重合反応が開始する前において、ジャケット伝熱量(Qf)、顕熱量(Qsens)、および蒸発潜熱量(Qevop)とを利用して計算により未知数である損失熱量(Qloss)を求めて予め設定し、この設定値も利用してポリマーの製造過程から重合率を求めることによって、一層正確な重合率を求めることができる。【0078】 また、請求項3に記載の発明によれば、測定対象ポリマーと同種の標準ポリマーについて、粘度と重合率から求めた代表的な相関関係を予め求めておき、任意数の標準ポリマーを測定して求めた重合率と、先に求めた相関関係を利用して粘度か求めた重合率との偏差に応じた重み係数が予め求められる。この求まった重み係数を用いて、測定対象ポリマーにおける熱量(Qr)に基づいて算出した重合率と、粘度から求めた測定対象ポリマーの重合率とが補完されるので、精度の向上した重合率を求めることができる。【0080】【図面の簡単な説明】【図1】本実施例の一実施形態として用いられるポリマー製造装置の概略全体構成を示すブロック図である。【図2】本実施例に用いられる攪拌機およびその周辺構成を示す構成図である。【図3】基準となる所定のポリマー重合率変化パターンと、実測により求まった重合率変化状態を重ね合わせて示した図である。【図4】側部ジャケットの入口(IN)および出口(OUT)付近で測定した冷却水の水温変化を示した図である。【図5】上蓋ジャケットの入口(IN)および出口(OUT)付近で測定した冷却水の水温変化を示した図である。【図6】コンデンサの入口(IN)および出口(OUT)付近で測定した冷却水の水温変化を示した図である。【符号の説明】F1〜F5 … 流量計R1〜R8 … 配管(供給管、排出管)S1〜S8 … 温度センサ1 … 攪拌機10 … 演算処理部11 … ジャケット伝熱量算出部12 … 顕熱量算出部13 … 蒸発潜熱量算出部14 … 損失熱量算出部15 … 発熱量算出部16 … メモリ17 … 発熱量に基づく重合率算出部18 … 相関式による重合率算出部19 … 補完重合率算出部20 … 制御部21 … 操作部22 … モニタ ポリマーを合成する過程で発生する熱量(Qr)を、槽内で発生する熱量を温度調節手段であるジャケットで冷却除去したときにジャケットへ逃げる熱量であるジャケット伝熱量(Qf)と、槽内の内容物の温度上昇に使われる熱量である顕熱量(Qsens)と、内容物の蒸発に使われる熱量である蒸発潜熱量(Qevop)と、前記ジャケット伝熱量(Qf)、顕熱量(Qsens)、および蒸発潜熱量(Qevop)以外の損失熱量(Qloss)とを測定して算出し、以下の式で重合率(Convh)を算出することを特徴とする重合率の測定方法。 Qr=Qf+Qsens+Qevop+Qloss 請求項1に記載の重合率の測定方法において、 前記損失熱量(Qloss)は、重合反応により発生する熱量(Qr)がゼロとなる重合反応開始前の定常状態における前記ジャケット伝熱量(Qf)と、顕熱量(Qsens)と、蒸発潜熱量(Qevop)とを測定して以下の式で算出することを特徴とする重合率の測定方法。 Qloss=−(Qf+Qsens+Qevop) 請求項1または請求項2のいずれかに記載の重合率の測定方法において、 測定対象ポリマーについて前記熱量(Qr)に基づいて算出した重合率を次のように補完処理する、 (1)測定対象ポリマーと同種の標準ポリマーを利用して予め行った重合反応実験過程で抜き取って得た混合物の質量と、当該混合物を乾燥させて残るポリマーの質量との比から実測して求めた実重合率と粘度の相関関係を求めておくとともに、 (2)前記相関関係を利用して、測定対象ポリマーについて測定した粘度から測定対象ポリマーの重合率を求め、 (3)任意数の標準ポリマーを実測して求めた重合率と、前記相関関係を利用して粘度から求めた重合率との偏差に応じた重み係数を予め求めておき、 (4)前記実重合率(Convh)と、前記相関関係から求めた重合率(Convv)のそれぞれに前記重み係数を乗算し、かつ、加算して重み付け補完処理して重合率を求める ことを特徴とする重合率の測定方法。