タイトル: | 特許公報(B2)_総蛋白質の定量方法及び定量用試薬 |
出願番号: | 2001163059 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 33/68,G01N 31/00,C12Q 1/34 |
松野永治 小口雄二 JP 4602595 特許公報(B2) 20101008 2001163059 20010530 総蛋白質の定量方法及び定量用試薬 関東化学株式会社 591045677 葛和 清司 100102842 松野永治 小口雄二 20101222 G01N 33/68 20060101AFI20101202BHJP G01N 31/00 20060101ALN20101202BHJP C12Q 1/34 20060101ALN20101202BHJP JPG01N33/68G01N31/00 VC12Q1/34 G01N 33/68 C12Q 1/34 G01N 31/00 特開平10−019898(JP,A) 特開2001−099826(JP,A) 特表2000−512750(JP,A) 12 2002350448 20021204 10 20080418 淺野 美奈 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、臨床検査の分野で用いる検体中の干渉物質の影響を受けることがほとんど無い総蛋白質の定量方法及び定量試薬に関する。【0002】【従来の技術】血清及び血漿中の総蛋白質量は、脱水、網内系疾患、慢性感染症、栄養不良、肝機能障害等の各種疾患時に変化し、その測定は疾患の診断及び治療上重要視されている。従来、臨床検査の分野では、血清及び血漿中の総蛋白質の定量方法として、屈折計法、ケルダール法、ビウレット法等が用いられてきた。【0003】ケルダール法は従来から標準法とされてきたが、操作が複雑であることや蛋白質の種類により窒素量から蛋白質量への換算係数においてかなりの差があることから日常検査法としては充分なものではない。また、屈折計法は定量の精度がやや劣り、専用装置による分析であることから日常検査には適さない。一方、ビウレット法は、操作が簡便で自動分析装置への適応が可能であること、蛋白質の種類に関係なく発色感度が一定であり簡単に比色定量できること、測定感度が血清及び血漿中の総蛋白質量の測定に適していることなどの理由から、日常検査法として広く普及している。【0004】日常検査では、しばしば、乳ビ、溶血、ビリルビンを高濃度に含む検体や、血漿増量薬として使用されるデキストランを含む検体について検査することがあるが、ビウレット法では、これらの干渉物質により測定値に誤差を生じる。このような誤差を補正するために、ビウレット法において、銅を含まない別の試薬で検体盲検を取り演算する、デュマス(Doumas)らの方法が考案されている(Doumas et.al., Clin.Chem. Vol.27、No.10、1642-1650 (1981))。【0005】この方法を現在日常検査に使用されている検体中の総蛋白質を測定するための自動分析装置において実行する場合、自動分析装置では搭載できる試薬の数が限られているため、1つの測定対象に対して2種類の試薬を搭載することは、他の様々な検査のために搭載すべき試薬が搭載できなくなってしまう不都合があり、実用的ではない。また、常に盲検を取るため、1つの検体に対して、2つの測定対象を測定するのと同じだけの時間と試薬が必要となり、検査時間が長く、検査費用が高くなる。【0006】現在臨床検査の分野で普及している自動分析装置は、一般的には1つの測定対象に対し1種類の試薬を搭載し、その試薬は2つに分割することができる(第1試薬、第2試薬)。この方法は2試薬系と呼ばれ、測定に必要な成分を第1試薬と第2試薬に分割して含有させることにより、試薬の保存安定性の確保や、検体中に存在する反応妨害物質の影響の解消に効果を与えている。2試薬系では、検体の第1試薬での反応の吸光度測定と、更に第2試薬を添加した後の吸光度測定を行い、2つの吸光度差を求め目的物質の定量を行う方法が使用することができ、盲検を行うのと同様に検体由来の色、濁りの誤差を緩和することができる。このとき、第1試薬の反応時間は5分、第2試薬の反応時間も5分である(合計10分)。試薬を2つに分割しない場合(1試薬系)、反応時間は10分である。【0007】総蛋白質量測定試薬においてデキストランの影響は沈殿物を生じるため、上記の2試薬系による方法のみでは解消できない。また、検体中のデキストランが与える誤差の防止策として、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)に代表されるキレート剤の添加が効果的であるという報告があり、市販のビウレット法を用いた総蛋白質量測定試薬では広く使用されているが、EDTAに代表される強いキレート剤を使用すると反応速度が遅くなり規定の時間内で反応が終了しないため、2試薬系による方法が使用できず、市販品のほとんどが1試薬系となっている。そのため、デキストランが与える測定値の誤差は解消されているものの、他の妨害物質が与える測定値の誤差については解消できていない。【0008】さらに、2試薬系の試薬において、第2試薬に銅イオンが含まれる場合、第2試薬の添加により、ビリルビンがビリベルジンに変化し( 臨床化学 (20) 補冊2号 51b 1991)、測定波長に吸光度変化を与えるため、ビリルビンの与える誤差は解消できない。それゆえ、ビウレット試薬の成分を2試薬系にするだけでは、デキストランとビリルビンの与える誤差は解消できないとされている。【0009】これらの問題に対し、2試薬系で第1試薬に銅イオンとEDTAに代表される強いキレート剤を含有させ、アルカリ溶液には水酸化リチウムを用いることで、多くの妨害物質の与える誤差を解消できる方法が開示されている(特開平10-19898)。この方法では第1試薬に銅が含まれておりpH13以上になるとビウレット反応を起こしてしまうため、緩衝液を使用してpHを調製している。そのため、同分野で使用されているカルシウム測定試薬、アルカリフォスファターゼ測定試薬と同様に、アルカリ性の緩衝液は、開栓後使用中に大気中の炭酸ガスを吸収してpHが低下してしまい試薬の保存性が低く、測定値が変動し測定精度が悪くなるという問題を抱えている。【0010】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題は、上記問題を解決し、検体中の妨害物質の影響を回避できる、開栓後保存安定性の優れた総蛋白質の定量方法及び定量用試薬を提供することにある。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進める中で、適当なpH範囲でデキストラナーゼにより検体中のデキストランを分解できること、デキストラナーゼは総蛋白質量の測定値に影響を及ぼさないことを見出し、本発明を完成するに至った。【0012】 したがって本発明は、検体中のデキストランによって妨害を受ける総蛋白質の定量方法であって、前記デキストランをデキストラナーゼで分解することを特徴とする、前記方法に関する。 さらに本発明は、総蛋白質の定量が、デキストランにより干渉される呈色反応による、前記の方法に関する。 また本発明は、呈色反応が、ビウレット反応である、前記の方法に関する。 さらに本発明は、総蛋白質の定量が、酵素を含む第1試薬およびアルカリ性の第2試薬を用いる2試薬系ビウレット反応による定量である、前記の方法に関する。 また本発明は、第1試薬がpH3〜10である、前記の方法に関する。 さらに本発明は、第2試薬の各成分濃度が、ビウレット反応に必要な濃度の1倍〜5倍の濃度である、前記の方法に関する。【0013】 また本発明は、検体中のデキストランによって妨害を受ける総蛋白質の定量方法に用いるための、総蛋白質の定量のための試薬セットであって、デキストラナーゼを含む試薬を含むことを特徴とする、前記試薬セットに関する。 さらに本発明は、総蛋白質の定量が、デキストランにより干渉される呈色反応による、前記の試薬セットに関する。 また本発明は、呈色反応が、ビウレット反応である、前記の試薬セットに関する。 さらに本発明は、総蛋白質の定量のための試薬セットが、酸化剤を含む第1試薬およびアルカリ性の第2試薬からなる2試薬系ビウレット反応用試薬セットである、前記の試薬セットに関する。 また本発明は、デキストラナーゼが第1試薬に含まれる、前記の試薬セットに関する。 さらに本発明は、第1試薬がpH3〜10である、前記の試薬セットに関する。【0014】本発明のデキストランを分解する酵素は、ビウレット反応などの総蛋白質の定量方法において、デキストラナーゼのようにデキストランが干渉しない程度に分解し得る酵素であればよく、一般にデキストラナーゼと呼ばれるもの(デキストラン加水分解酵素)に限定されるものではない。これら酵素は、定量方法として2試薬系ビウレット反応を用いる場合、検体の総蛋白質量の定量の直前に第1試薬に混ぜてもよく、既に第1試薬に含まれていてもよい。【0015】本発明に用いる蛋白質の定量方法は、呈色反応であればよく、本発明の趣旨からデキストランにより、該呈色反応が干渉されるような定量方法が含まれる。このような定量方法には、2試薬系ビウレット法、ビウレット法、Lowryらの方法、ビシンコニン酸法などがあげられる。とりわけ自動分析装置に適用可能で、日常検査法として簡便である2試薬系ビウレット法が好ましい。ここでいうところの2試薬系ビウレット法とは、ビウレット反応を用いて定量する際に、定量用試薬を第1試薬と第2試薬とに分けて調製し、保存可能な試薬を用いて行なう方法である。【0016】本発明の第1試薬には、クエン酸、リン酸、コハク酸などの緩衝液を使用することができ、デキストランを分解する酵素が酵素活性を阻害せず、本発明の第2試薬を混合したのちのビウレット反応を阻害しない緩衝液であれば、特に限定されない。【0017】好ましくは、本発明で用いる酵素はデキストラナーゼであって、医薬品成分であるデキストラン40、デキストラン70を分解できるもので、総蛋白質量の測定値に影響を与えないものであればよい。【0018】本発明の第1試薬のpHはデキストラナーゼなどの酵素が安定であり、且つ、活性発現できる領域である3〜10が好ましい。ただし、第2試薬と混合した後のpHが強アルカリ性を呈すものでなければならない。【0019】さらに、本発明の第1試薬には、ビリルビンが与える誤差の回避を目的として、ビリルビンをあらかじめビリベルジンに変換するため、微量の酸化剤を添加していてもよく、酸化剤としてはフェリシアン化物、フェロシアン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、塩素酸塩、ヨウ素酸塩などがあげられる。中でも、試薬中での保存安定性が確保できるとの理由からフェリシアン化カリウムが好ましい。【0020】本発明のビウレット反応に必要な成分とは、硫酸銅、EDTA銅、硝酸銅などの銅(II)イオンを含む化合物と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの塩基性化合物である。また、ビウレット反応を安定に行なうために、本発明のビウレット反応に必要な成分に上記以外の成分を添加することも可能である。【0021】本発明の第2試薬には、ビウレット反応に必要な成分が含まれている。該第2試薬に含まれる各成分濃度は、ビウレット反応に必要な濃度の1〜5倍、好ましくは1.5〜3倍である。1倍濃度のビウレット試薬の処方の1例を表1に示す。ここで、表1の処方は代表的な例であって、本発明で用いられるビウレット試薬の処方は、この処方に限るわけではない。ビウレット反応は、強アルカリ水溶液中の蛋白質が銅(II)イオンと錯体を形成し、赤紫色を呈する呈色反応であることから、銅(II)イオンが溶液中に存在し、強アルカリ性であれば、その処方は任意に改変可能である。【0022】【表1】【0023】本発明において、第1試薬と第2試薬の混合比は、第2試薬のビウレット試薬の成分濃度に依存し、両試薬混合後のビウレット試薬濃度の最終濃度が、1倍濃度に近似することが望ましく、再現性良く測定値を得るためには、第1試薬と第2試薬の比を1:1に近づけることが望ましい。【0024】【実施例】〔実施例1〕表2に示す処方で試薬を調製し、第1試薬と第2試薬の混合比を5:4として自動分析装置を用いて反応妨害物質を含む検体の測定を行った。また、デキストラナーゼ無添加の試薬は、表2に示す処方からデキストラナーゼを除いて調製した。【0025】【表2】【0026】測定方法は以下に示すとおりである。検体量 6μl、第1試薬 200μlを混和し、37℃で5分間反応後、主波長546nm 副波長 700nmで吸光度を測定(1point)し、続いて第2試薬 160μl添加し、37℃で5分間反応後に再度吸光度を測定(2point)する。1pointの測定吸光度の液量補正を行った後、2pointの吸光度から1pointの吸光度を減じ吸光度変化量を求める。あらかじめ、検体に生理食塩水と既知濃度(7.0g/dl)の人血清標準液を用い、上記方法により測定を行い検量線を作成する。次に総蛋白質量を求めたい検体を測定して吸光度変化量を求め、作製した検量線より総蛋白質量を求める。反応妨害物質を含む検体は、各妨害物質をそれぞれ表3左欄に記載の10倍濃度で調製し、血清9容量に対し1容量の割合で添加して調製した。各妨害物質を添加した人血清の測定値は表3に示す。表中の「添加」、「無添加」は、それぞれデキストラナーゼの添加、無添加を示す。【0027】【表3】【0028】表3の結果から、デキストラナーゼを無添加の場合、明らかにデキストランによる測定値への影響が出ており、実際の総蛋白質量(生理食塩水を添加した場合)よりも多くの蛋白質が存在するかのような誤差が生じていることがわかる。したがって、本発明のデキストラナーゼを添加した試薬で行なうビウレット反応はデキストランによる干渉を受けることなく、正確な総蛋白質量を定量することを可能としていることが明らかである。【0029】〔実施例2〕表2に示した処方の試薬と以下の表4に示す特開平10-19898に開示されている処方の試薬を調製し、それぞれの第1試薬、第2試薬を常時開栓した状態で自動分析装置にセットし、5日間放置した後、標準液の測定を行い、得られた吸光度変化量から試薬の安定性を比較した。【0030】【表4】【0031】表2に示した処方の試薬においては、検体量 6μl、第1試薬 200μlを混和し、37℃で5分間反応後、主波長 546nm 副波長 700nmで吸光度を測定(1point)し、続いて第2試薬 160μl添加し、37℃で5分間反応後に再度吸光度を測定(2point)する。1pointの吸光度の液量補正を行った後、2pointの吸光度から1pointの吸光度を減じ吸光度変化量を求めた。表4に示した処方の試薬においては、検体量 5μl、第1試薬 200μlを混和し、37℃で5分間反応後、主波長 546nm 副波長 700nmで吸光度を測定(1point)し、続いて第2試薬 50μl添加し、37℃で5分間反応後に再度吸光度を測定(2point)する。1pointの吸光度の液量補正を行った後、2pointの吸光度から1pointの吸光度を減じ吸光度変化量を求めた。各処方で求めた標準液の吸光度変化量の変動を表5に示す。【0032】【表5】【0033】表5の結果から、特開平10-19898に開示されている処方のビウレット試薬では保存期間が短く、5日間程度の放置によって測定に大きな影響を与え、実際の自動分析装置などでの使用において、実用的に耐え得る保存性が無いことがわかる。一方で、本発明の試薬においては、5日程度の放置によっても、測定値に大きな影響は無く、充分に実用に耐え得るものであることが見出された。【0034】〔実施例3〕表2に示した処方の試薬と、2試薬系ビウレット反応による総蛋白質量の定量用試薬として用いられるTP試薬・B「コクサイ」(国際試薬株式会社製)のそれぞれの第1試薬、第2試薬を常時開栓した状態で自動分析装置にセットし、1ヵ月以上継続して測定を行い、得られた吸光度変化量から安定性を比較した。検体は人血清を小分け凍結保存したものを用い、使用時に融解して使用した。表2に示した処方の試薬においては、検体量 6μl、第1試薬 200μlを混和し、37℃で5分間反応後、主波長 546nm 副波長 700nmで吸光度を測定(1point)し、続いて第2試薬 160μl添加し、37℃で5分間反応後に再度吸光度を測定(2point)する。1pointの吸光度の液量補正を行った後、2pointの吸光度から1pointの吸光度を減じ吸光度変化量を求めた。TP試薬・B「コクサイ」においては、検体量 5μl、第1試薬 200μlを混和し、37℃で5分間反応後、主波長 546nm 副波長 700nmで吸光度を測定(1point)し、続いて第2試薬 50μl添加し、37℃で5分間反応後に再度吸光度を測定(2point)する。1pointの吸光度の液量補正を行った後、2pointの吸光度から1pointの吸光度を減じ吸光度変化量を求めた。各試薬の吸光度変化量の変動を図1に示す。【0035】図1から、明らかなように一般的な市販品の総蛋白質量の定量用試薬が、10日程度で既に定量の精度に大きな影響がでるのに対し、本発明の試薬は、30日以上経ても試薬の劣化がほとんど無く、良好に定量が行なえることが示された。【0036】【発明の効果】以上のように本発明は、検体中の妨害物質の影響、特にデキストランの影響を回避でき、開栓後の保存安定性に優れ、長期間にわたって正確な測定結果を得ることができる総蛋白質の定量方法及び定量用試薬を提供することを可能とした。【図面の簡単な説明】【図1】 開栓後の測定感度の変動を示したグラフである。 検体中のデキストランによって妨害を受ける総蛋白質の定量方法であって、前記デキストランをデキストラナーゼで分解することを特徴とする、前記方法。 総蛋白質の定量が、デキストランにより干渉される呈色反応による、請求項1に記載の方法。 呈色反応が、ビウレット反応である、請求項2に記載の方法。 総蛋白質の定量が、酵素を含む第1試薬およびアルカリ性の第2試薬を用いる2試薬系ビウレット反応による定量である、請求項3に記載の方法。 第1試薬がpH3〜10である、請求項4に記載の方法。 第2試薬の各成分濃度が、ビウレット反応に必要な濃度の1倍〜5倍の濃度である、請求項4または5に記載の方法。 検体中のデキストランによって妨害を受ける総蛋白質の定量方法に用いるための、総蛋白質の定量のための試薬セットであって、デキストラナーゼを含む試薬を含むことを特徴とする、前記試薬セット。 総蛋白質の定量が、デキストランにより干渉される呈色反応による、請求項7に記載の試薬セット。 呈色反応が、ビウレット反応である、請求項8に記載の試薬セット。 総蛋白質の定量のための試薬セットが、酸化剤を含む第1試薬およびアルカリ性の第2試薬からなる2試薬系ビウレット反応用試薬セットである、請求項9に記載の試薬セット。 デキストラナーゼが第1試薬に含まれる、請求項10に記載の試薬セット。 第1試薬がpH3〜10である、請求項10または11に記載の試薬セット。