タイトル: | 特許公報(B2)_水素ラジカルの検出方法及び定量分析方法 |
出願番号: | 2001160915 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,G01N31/22,G01N21/78,G01N31/00 |
白畑 實隆 大坪 一道 JP 3657535 特許公報(B2) 20050318 2001160915 20010529 水素ラジカルの検出方法及び定量分析方法 株式会社日本トリム 591201686 白畑 實隆 500457449 深見 久郎 100064746 森田 俊雄 100085132 仲村 義平 100083703 伊藤 英彦 100091409 野田 久登 100098316 白畑 實隆 大坪 一道 20050608 7 G01N31/22 G01N21/78 G01N31/00 JP G01N31/22 122 G01N21/78 Z G01N31/00 C G01N31/00 Z 7 G01N 31/22 122 G01N 21/78 G01N 31/00 特開平 4−168362(JP,A) 米国特許第5622994(US,A) The Journal of Biological Chemistry,1996年,vol.271,p.15498-15503 The Journal of Biological Chemistry,1995年,vol.270,p.16075-16081 6 2002350420 20021204 16 20021101 宮澤 浩 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、水、特に電解還元水または水溶液中の水素ラジカルの検出方法、及び水素ラジカルの濃度を定量分析する方法に関する。【0002】【従来の技術】従来、水酸化ナトリウム等の電解質溶液を電気分解して陰極室で得られる、いわゆる電解還元水は、体内で活性酸素消去活性及びDNA切断抑制活性を有するとされている。これは電解還元水に含まれる活性水素の還元性によるものとされている。【0003】そして、電解還元水等に含まれる水素ラジカルの濃度が体内での活性酸素消去活性に影響する為、水素ラジカルの検出方法とともにその定量分析方法の確立が要請されている。【0004】ここで活性水素とは紫外線照射や放電などの方法によって化学反応を起こしやすくなった水素ラジカルのことであり、金属に酸を作用させたときや、電気分解のときに陰極側から発生する水素も反応性の高い水素ラジカルである。活性水素はアルカリ金属塩から金属を遊離させ、各種金属元素の酸化物、硫化物などを容易に還元して金属とする。またヒ素、燐、酸素、ハロゲン、アンチモン、スズなどとは水素化物を、一酸化炭素及び二酸化炭素とはホルムアルデヒドを作る。また種々の有機化合物と付加、置換、水素原子引き抜き反応を生じ、不飽和有機化合物には水素付加をする。水素ラジカルはそのままでは比較的安定であるが、金属表面に触れると極めて多量の熱を放出して通常の分子に戻る。【0005】2H・→H2+435kJ/molその検出方法としては高濃度の場合は圧力差から、微量の場合は酸化タングステンの変色などが利用されている。しかしこれらは気体中で発生した際の検出方法で水中の水素ラジカルの測定に応用できない。水素ラジカルは水溶性のラジカルトラップ剤でトラップして検出及び定量ができれば電解還元水中に水素ラジカルの存在を証明できるので検出法及び定量法の確立を目指して研究が進められていた。【0006】そこで電子スピン共鳴装置(ESR)を用いて水試料のみや水溶性のラジカルトラップ剤5,5−ジメチル−1−ピロリン−N−オキシド(DMPO)と水溶液試料と反応させ、ESRスペクトルを測定したが水素ラジカルのスペクトルは認められなかった。【0007】またフェントン試薬で水酸化ラジカルを発生させて水溶液試料の還元力による水酸化ラジカルの減少をESRスペクトルで確認することを試みたが明確な差が認められなかった。これらのことから電解還元水中の水素ラジカルの濃度が低いために検出感度が低い方法では検出が困難と考えられた。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は水または水溶液に存在する水素ラジカルを高精度で検出する方法及びその定量分析方法を提供する。発明者は大量の水試料を中和し、ラジカルトラップ剤である3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)と反応させた後、ロータリーエバポレーターで濃縮することを試みた。その結果活性酸素消去活性の認められた電解還元水試料においては橙色の着色が認められた。しかし超純水(Milli Q水)や他のミネラルウォーターや水道水では着色が認められなかった。このことはDBNBSが電解還元水中の活性水素と反応し新たに着色物質を作るからではないかと考えられた。この現象を利用し、水溶液中の水素ラジカルを高精度で検出できると考え、水素ラジカルの検出法及び定量分析の開発を行なった。本発明は上記知見に基くもので、電解還元水等にラジカルトラップ剤として3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)を使用して、水素ラジカルの検出、及び定量分析方法を提供する。【0009】【課題を解決するための手段】本発明は水、または水溶液中の水素ラジカルの検出方法であって、試料に3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)を添加し、水素ラジカルとの反応によりDBNBSアゾ化合物を生成し、その吸収特性に基く着色によって水素ラジカルを検出する方法である。【0010】ここで前記水、または水溶液は電解還元水が好適に用いられる。また前記着色は3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)が水素ラジカルと反応し、DBNBSアゾ化合物を生成する着色反応を利用する。そして、着色は波長が425〜450nmの吸収ピークに起因する。【0011】本発明は、また次の(1)〜(4)の工程よりなる水または水溶液中の水素ラジカルの定量分析方法である。(1) 517nm近傍に吸収を有する1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)の溶液に、白金黒存在下で一定の速度で水素ガスを吹込み、517nm近傍の吸光度の減少と水素ガスの吹込み時間との相関のグラフを求める(検量線Aの作成)。(2) システィンとDPPHを反応させ、DPPHの517nm近傍における吸光度の減少とシスティン濃度との相関のグラフを求める(検量線Bの作成)。なお、ここでシスティンにかえてアスコルビン酸などの還元剤を用いることができる。(3) 3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)の溶液に前記(1)と同一条件で白金黒存在下で一定の速度で水素ガスを一定の時間吹込んだ後、450nm近傍の吸光度を測定し、その吸光度の値と検量線A及び検量線Bより算出した水素ガスの吹込み時間あたりの水素ラジカル発生濃度との相関のグラフを求める(検量線Cの作成)。(4) 試料に3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)を添加し、450nm近傍の吸光度を測定し、その吸光度の値から前記検量線Cを用いて水素ラジカルの濃度を読み取る。【0012】ここで水または水溶液は10〜500倍の水素ラジカル濃度になるように濃縮されることが好ましい。【0013】【発明の実施の形態】本発明で水素ラジカルの検出方法は次の反応に基く、光吸収特性を利用するものである。即ち、3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)が水素ラジカルと反応し、DBNBSアゾ化合物を生成する。そしてDBNBSアゾ化合物は波長が425〜450nmの吸収ピークを有するため、その着色によって水素ラジカルを検出できる。【0014】【化1】【0015】反応式で示すと、DBNBS(式A)は水又は水溶液中の水素ラジカルと反応して、DBNBS−H・(式B)となり、その2分子が反応して二量体(式C)を生成する。その後加熱下で脱水してDBNBSアゾキシ化合物(式D)が生成する。更に1個の酸素がとれて安定なDBNBSアゾ化合物(式E)が生成する。このDBNBSアゾ化合物に由来する425〜450nmの吸収を検出することにより、水素ラジカルの定性分析が可能となる。上記式A〜式Eの一連の反応は発明者によって初めて見出された新規な反応であるが、ニトロベンゼン及びニトロソベンゼンの還元反応によりアゾキシベンゼン及びアゾベンゼンを生じる類似の反応が知られている。(A.Streitwieser,Jr.&C.H.Heathcock:Introduction to Organic Chemistry,pp960-965,Macmillan Publishing co.,Inc.,New York(1976))。アゾキシベンゼンとアゾベンゼンは酸化還元反応により相互に変換されうる。【0016】次に水又は水溶液中の水素ラジカルの定量分析は次の方法による。DPPHは517nmの波長に特異吸収を有する安定なフリーラジカルである。DPPHは水素ラジカルと定量的に反応し、517nmの吸収が消失する。一方、白金黒(粒状白金)は大きな表面積を有し、ガス状の水素分子を水素ラジカル(原子状水素)に変換してそれを保持する。そのため溶液中で白金黒の存在下で水素ガスを吹込むことにより、容易に水素ラジカルを発生させることができる。そこで白金黒存在下で所定濃度のDPPH水溶液に水素ガスを吹込み、その吹込み時間とDPPHの517nmでの吸光度の減少との関係を示す検量線(A)が作成できる。【0017】次に、水素ガスの吹き込み時間あたりの水素ラジカルの発生濃度を算出する為に、定量的に反応することが知られている還元性物質システィンと、DPPHを反応させ、システィン濃度とDPPHの517nm近傍における吸光度の減少との関係を示す検量線(B)を作成する。1モルのシスティンが1モルの水素ラジカルに相当すると仮定して、検量線(A)から水素ガスの吹き込み時間あたりに発生した水素ラジカル濃度を算出する。【0018】一方、前述の如くDBNBS(式A)は水素ラジカルと反応して、式Bのジヒドロキシ中間体(DBNBS−H・)及びその二量体(式C)を経てDBNBSアゾ化合物(式D)を生成する。そしてDBNBSアゾ化合物の450nm近傍における特異吸収を定量分析に使用する。白金黒存在下で水素ガスを吹き込むと水素ラジカルが発生することは前述のとおりであり、したがって、450nm近傍の吸光度と水素ガスの吹込み時間の関係を求めることにより、検量線(A)及び検量線(B)を用いて450nm近傍の吸光度と水素ラジカルの濃度の関係を示す検量線(C)を求めることができる。【0019】そこで試料中の水素ラジカル濃度を求めるには、試料溶液に所定濃度のDBNBSを添加し、DBNBSと水素ラジカルを反応させDBNBSアゾ化合物を生成させた後、その450nm近傍の吸光度を測定し、前記検量線(C)から水素ラジカル濃度を測定する。【0020】試料として電解還元水を用いる場合、これを10〜500倍に濃縮して使用することが好ましい。例えば電解還元水125mlにDBNBS保存液を200μl添加し、攪拌した後、ロータリエバポレーターで60℃の恒温槽にて濃縮乾固する。これを1mlの超純水(Milli Q水)で濃縮乾固物を溶解して回収する。次に60℃恒温槽にて約1時間保温し、氷上に5分間静置し例えば12,000rpmで遠心分離して上清を得る。【0021】【実施例】実施例1: DBNBSを用いた白金黒−水素による水素ラジカル発生の検出1−1 試薬DBNBSはラボテック(株)製を、白金黒は石福金属鉱業(株)製を、水素ガスは大洋サンソ(株)製を使用した。DBNBSは超純水(Milli Q水)に12.5mg/mlの濃度で溶解し4℃に保存し、2週間以内に使い切るようにした。【0022】1−2 白金黒−水素による水素ラジカル発生水素ガスは白金表面上で原子状の水素になる。そこで0.01mg/mlの白金黒を含む2.5mg/mlのDBNBS溶液20mlに45ml/minの吹き込み速度で水素ガスを吹きこんだ。5分、10分、15分、30分、45分、60分後にそれぞれ200μlずつ回収し12,000rpm、5分間遠心分離後、上清を60℃の恒温槽にて1時間保温した。コントロールとしては水素ガスを吹き込ませなかったものを60℃時間保温処理した。【0023】1−3 水素ラジカルの検出反応後のコントロールのDBNBS水溶液をキャリブレーションし、DBNBS自身の吸光度を0とし、各DBNBS試料の350〜600nmの波長をスキャンし差スペクトルを得た。この差スペクトルの測定は白金黒−水素処理によってDBNBSが新たな物質に変化したことを検出するためである。また白金黒−水素処理によって生成する水素ラジカルにDBNBSが特異的に反応するかを調べるために白金黒のみ、水素ガスのみ、窒素ガスのみ、白金黒−窒素ガス処理した試料も行なった。【0024】白金黒−水素反応によって得られたDBNBSアゾ化合物の試料の吸収スペクトルは図1(Pt−H2)に示す如く、425nmから450nmにピークを持つなだらかな可視吸収スペクトルを示した。それらの試料はオレンジ色に着色していた。このことは白金黒−水素処理によってDBNBSが新たなオレンジ色の着色物質であるDBNBSアゾ化合物に変化したことを示す。そしてそのピークの高さは図2に示される如く、吹き込んだ水素ガス量に依存して増加していき、45分間吹き込みにおいて最大となり、その後は減少した。【0025】また白金黒−水素反応特異性を調べるために行なった白金黒のみ、水素ガスのみ、窒素ガスのみ、白金黒−窒素ガス処理した試料では全く着色が認められず、紫外部吸収においても波形に変化が認められなかった。水素ラジカルと反応して得られたものの吸収スペクトルの450nmにおける吸光値を水素ラジカル反応値(AH値)とした。【0026】実施例2: DBNBSを用いた電解還元水中の水素ラジカルの検出2−1 試薬実施例1と同じものを用いた。【0027】2−2 電解還元水0.01%NaCl水を日本トリム社製の電解還元水装置TI−8000でレベル4(5A)で電解還元し、陰極側の電解還元水を得た。【0028】2−3 水素ラジカルの検出電解還元水125mlにDBNBS保存液を200μl添加し、攪拌した後、ロータリエバポレーターで60℃の恒温槽にて濃縮乾固した。1mlの超純水(Milli Q水)で濃縮乾固物を溶解し、回収した。次に60℃恒温槽にて1時間保温し、氷上に5分間静置し、12,000rpmで遠心分離し、上清を得た。コントロールとして上記超純水で同様に行なったDBNBS試料をキャリブレーションし、DBNBS試料の350〜600nmの波長をスキャンして差スペクトルを得た。【0029】実施例1で求めた吸収スペクトルと同様のスペクトルが電解還元水において認められ(図1:電解還元水)、電解還元水中に水素ラジカルが存在することが確認された。【0030】実施例3: 電解還元水の濃度と水素ラジカル反応値の関係及び電解強度と水素ラジカル反応値の関係電解還元水の濃度と水素ラジカル量の相関関係があるかどうかを試験した。電解還元水を超純水(Milli Q水)で希釈して、それぞれ試料の水素ラジカル反応値を測定した。また電解強度と水素ラジカル反応値との関係を調べるためにNaCl濃度が0.0001%から0.01%までの水を用意し、それぞれを電解還元した水の活性水素反応を測定した。電解還元水は日本トリム社製の電解還元水装置TI−8000でレベル4(5A)で電解還元し、陰極側の還元水を得た。【0031】電解還元水の%体積が25、50、75、100%の水を希釈により作成し、水素ラジカル反応値を測定したところ、図3に示す如く電解還元水の濃度とともに水素ラジカル反応値が上昇していたので、この測定系は電解還元水の試料においても定量性があることが明らかとなった。また電気分解で電解還元水を得る際の電解強度を変化させた水溶液を作成するために、水溶液の塩濃度(NaCl濃度)を変えて得られた電解還元水においては図4に示す如く、電解強度(NaCl濃度)とともに水素ラジカル反応値も上昇した。このことは電解強度を強くすることによって水素ラジカルも多く発生することを意味する。【0032】実施例4: 水素ラジカルとDBNBSとの反応過程の解析4−1 試料DBNBSはラボテック(株)製、白金黒粉末Mタイプは石福金属鉱業(株)、水素ガスは大洋サンソ(株)製のものをそれぞれ用いた。【0033】4−2 DBNBSの反応0.01mg/mlの白金黒を含む2.5mg/mlのDBNBS溶液20mlに45ml/minの吹き込み速度で水素ガスを1時間吹き込み、加熱処理しないものと、60℃で1時間加熱処理したものを氷冷し反応を停止させたものを分析試料に用いた。【0034】4−3 分析試料の調整(1) 高速液体クロマトグラム(HPLC)分析試料分析試料をそれぞれ0.45μmのフィルタで濾過し、その2000μlを用いた。【0035】(2) NMR、TOF−MASS分析における分析試料HPLCより、分離した非加熱処理である反応中間体は、無水酢酸(和光純薬(株)製)を用いアセチル化し安定化させたものを用い、加熱処理により分離されたアゾ化合物は、再度HPLC分取することにより分離度を完全なものにして用いた。【0036】(3) 微量元素分析における分析試料非加熱処理の反応中間体はHPLCより分離したもの用い、加熱処理により分離されたアゾ化合物はNMR、TOF−MASS分析と同様のものを用いた。【0037】4−4 機器測定条件(1) HPLCはWaters社のWaters600E、移動相はMilli-QWater、流速は5ml/min、注入量は、Waters717のオートサンプラーで採取した2000μl、カラムはWaters社製Nova-Pak C18 19×300mmを用いた。また検出器にはWaters社のWaters996フォトダイオードアレイ検出器を用い200−600nmの波長領域において1.2nm間隔でデータを取込んだ。スペクトルクロマトグラムによる解析は、コンパックV700パーソナルコンピュータを用いミレニアム32(Waters社)で作成したプログラムで行なった。【0038】(2) TOF−MASS分析計は、Voyager(パーセプティブ、バイオシステム社)を使用した。Voyagerは、窒素レーザ(337nm)を搭載した、加速電圧20kVのレーザイオン化飛行時間型質量分析装置である。加速電圧は、20kVを使用し、飛行モードはリニアモードで分析を行なった。マトリックスは、2−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)−安息香酸(HABA)(アルドリッチケミカル社製)1.3mgを、50:50水・アセトニトリル1mlに溶解し使用した。試料スライドに0.5μlの試料を塗布して自然乾燥した後、同量のマトリックス溶液を添加し、再度自然乾燥してイオン源に導入した。【0039】(3) NMRは、400MHz NMR(JEOL JNM−GSX400NMRシステムスペクトロメータ)を使用し、1H−NMR測定を行なった。溶媒として、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)(和光純薬(株)製)及びデュートリウムオキシド(D2O)(アルドリッチケミカル社製)を使用した。【0040】4−5 解析結果(A) 高速液体クロマトグラム(HPLC)測定結果(i) 分析試料(1)0.01mg/mlの白金を含む2.5mg/mlのDBNBS溶液20mlに45ml/minの吹き込み速度で水素ガスを1時間吹き込み、0.45μmのフィルタで濾過し、その2000μlをフォトダイオードアレイ検出器付きHPLC用いて、非加熱処理の試料を測定した。その測定結果を図5に示す。図5において非加熱処理のDBNBS反応物の保持時間約9.0分に認められるピークは図6にその紫外可視吸収スペクトルを示したように、220nmに吸収ピークを示し、450nmには吸収を示さなかった。これは式Cに示される二量体に相当すると推定された。【0041】(ii) 分析試料(2)0.01mg/mlの白金を含む2.5mg/mlのDBNBS溶液20mlに45ml/minの通気速度で水素ガスを1時間吹き込み、60℃で1時間加熱処理したものを氷冷し反応を停止させたものを0.45μmのフィルタで濾過し、その2000μlをフォトダイオードアレイ検出器付きHPLC用いて、加熱処理の試料を測定した。測定結果を図7に示す。図7において加熱処理のDBNBS反応物の保持時間8.5分に認められるピークは図8にその紫外可視吸収スペクトルに示したように、320nm及び450nmに吸収ピークが認められ、既知のアゾベンゼンに類似した紫外線吸収スペクトルを示した。これは式Eで示されるDBNBSアゾ化合物に相当する。【0042】(B) マススペクトル(MALDI−TOF−MS)の測定結果(i) 分析試料(1)上記HPLC測定において得られた、280nmに吸収を有する非加熱処理DBNBS反応物を、マススペクトル(MALDI−TOF−MS)を用いて測定した。【0043】アセチル化した280nmに吸収を持つ非加熱処理のDBNBS反応物のマススペクトルは図9に示す如くm/z675.449にイオンピークが示され、これは中間体(式C)よりBr及びNaが1つ脱離し、式Cの中間体のヒドロキシル基が1つアセチル化したものと一致した。【0044】(ii) 分析試料(2)上記HPLC測定において得られた450nmに吸収を有する加熱処理DBNBS反応物をマススペクトル(MALDI−TOF−MS)を用いて測定した。【0045】450nmに吸収を有する加熱処理のDBNBS反応物のマススペクトルが図10に示す如くm/z656.329にイオンピークが示され、Naが2つ脱離したDBNBSアゾ化合物(式E)と一致した。【0046】(C) NMR測定結果(i) 分析試料(1)上記HPLC測定において得られた、280nmに吸収を有する非加熱処理DBNBS反応物を、1H−NMRを用いて測定した結果を図11に示す。図11からアセチル化した280nmに吸収を有する非加熱処理DBNBS反応物のスペクトルが示されている。コントロールとしてアセチル化に用いた無水酢酸を同様にHPLC分取により採取したものを測定した。コントロールの無水酢酸のメチル基が2.5ppmにシグナルを示したのに比較して、ケミカルシフト2.0ppmにメチル基の存在が示されたことにより、非加熱処理DBNBS反応物のヒドロキシル基と無水酢酸が直接反応が生じたことを示している。【0047】(ii) 分析試料(2)上記HPLC測定において得られた、450nmに吸収を有する加熱処理DBNBS反応物を、1H−NMRを用いて測定した結果を図12に示す。DBNBSが8.0ppmに1本のシグナルを示したのに比較して、450nmに吸収を有する加熱処理のDBNBS反応物のプロトン、ケミカルシフトは6.6〜6.8ppmであり、6.7575ppm及び6.634ppmのシグナルは左右にさらに1本づつの対称なシグナルに分裂している。これはアゾ基の形成にともなって、メタ位のプロトンが非対称となり、さらにプロトン間にカップリングが生じたことを示している。【0048】(D) 微量元素分析結果(i) 分析試料(1)上記HPLC測定において得られた、220nmに吸収ピークを有する非加熱処理DBNBS反応物を、微量元素分析した。炭素含量19.93%(計算値19.35%)、水素含量1.61%(計算値1.61%)、窒素含量3.76%(計算値3.76%)となった。これは中間体の3水和物より、Naが2つ脱離したものと一致する。【0049】(ii) 分析試料(2)上記HPLC測定において得られた、450nmに吸収を有する加熱処理DBNBS反応物を、微量元素分析した。炭素含量21.53%(計算値21.43%)、水素含量1.73%(計算値1.79%)、窒素含量3.84%(計算値4.17%)となった。これはDBNBSアゾ化合物の4水和物より、Br及びNaが1つずつ脱離したものと一致する。実施例5: 水素ラジカルの定量分析5−1 検量線Aの作成(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)と水素ガス吹込み時間との関係)0.1Mの酢酸緩衝液(pH5.5)1.96mlにエタノール及び0.5mMのDPPH・エタノール溶液1mlと1.0mg/mlの白金黒・酢酸緩衝液0.05mlを加えて全量を5mlとし、45ml/minの速度で水素ガスを吹込み、一定の時間ごとに200μの試料を採取し、DPPHの特異吸収である517nmの吸光度を測定し、吸光度の減少と吹込み時間の関係を示すグラフ(検量線A)として図13を得た。【0050】5−2 検量線Bの作成0〜100μMのシスティンとDPPHを反応させ、DPPHの517nm近傍における吸光度の減少と、システィン濃度との相関のグラフを求めた。検量線Bのグラフとして図14を得た。【0051】5−3 検量線Cの作成(3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩アゾ化合物(DBNBSアゾ化合物)の吸光度と水素ラジカル濃度の関係)0.01mg/mlの白金を含む2.5mg/mlのDBNBS溶液5mlに45ml/minの速度で水素ガスを吹込み、DBNBSと水素ラジカルを反応させながら、一定の時間ごとに200μlの試料を採取し、60℃で1時間加温後、DBNBSと水素ラジカルの反応生成物であるDBNBSアゾ化合物の特異吸収である450nmの吸光度を測定し図15に示す検量線Cを作成した。【0052】5−4 試料中の水素ラジカル濃度の測定(1) 試料調製電解還元水をpH7.0に調製し、その製造条件によりレベル1〜レベル4の試料を調製した。ここで電解還元水は隔膜で隔てられた陰極室と陽極室のそれぞれにNaOHを含む水溶液を導入し、陰極と陽極の間に通電し、前記NaOH水溶液を電気分解し、前記陰極室で得られたものである。これらの酸化還元電位(ORP)及びpHを表1に示す。対照例として超純水(Milli Q水)を用いた。【0053】125mlのMilli Q水、レベル1〜4の電解還元水のそれぞれにDBNBSストック溶液(12.5mg/ml)を200μl加えて、125倍に減圧濃縮した。Milli Q水1mlで濃縮後のナス型フラスコの内壁を洗い、しばらく静置し溶液を回収した。回収後の溶液を60℃湯浴中(遮光)で加熱し、その後氷中で冷却し反応を停止した。回転速度12000rpmで5分間、遠心分離して上澄を採取した。【0054】(2) 吸光度の測定上記試料の周波数450nmの吸光度を測定した。測定は同じ試料について、それぞれ三個の試料を用いて測定し、その平均値を求めた。吸光度の測定結果を表1に示す。HPLCを用いた分析の結果、電解還元水とDBNBSとの反応の結果、生じた着色物質は、白金黒存在下で水素ガスを吹き込んだ際に生成するDBNBSアゾ化合物と同一物質であることが、溶出位置及び紫外線可視吸収スペクトルから同定された。【0055】(3) 水素ラジカル濃度の測定コントロールとして用いたDBNBSのMilli Q水溶液の450nmでの平均吸光度0.0358を各レベルの試料の吸光度を差し引き、その差の吸光度の値から、検量線(C)を用いて、水素ラジカル濃度を求めた。なお125倍に濃縮した電解還元水は水素ラジカル濃度がレベル1〜4で7〜34μM(μmol/l)の範囲である。【0056】【表1】【0057】今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。【0058】【発明の効果】上述の方法を採用すれば、水もしくは水溶液中での水素ラジカルの微量の存在が検出できるとともに、その濃度も正確に測定することが可能となる。特にこの分析手法を採用することで、電解還元水における水素ラジカルの濃度を容易かつ正確に定量することが可能となる。したがってこの分析手法を用いることにより各種製品の用途に応じた水素ラジカル(活性水素)の濃度を調整した電解還元水を製造できる。さらに水素吸蔵合金の性能評価にも利用できる。【図面の簡単な説明】【図1】 DBNBSアゾ化合物の吸収特性を示すグラフである。【図2】 450nmにおける水素ガス吹き込み時間と吸光度の関係を示すグラフである。【図3】 電解還元水と水素ラジカル反応値の関係を示すグラフである。【図4】 塩化ナトリウム濃度と水素ラジカル反応値の関係を示すグラフである。【図5】 DBNBS非加熱処理反応物のHPLC測定結果を示すチャートである。【図6】 DBNBS非加熱処理反応物の紫外可視吸収スペクトルを示すチャートである。【図7】 DBNBS加熱処理反応物のHPLC測定結果を示すチャートである。【図8】 DBNBS加熱処理反応物の紫外可視吸収スペクトルを示すチャートである。【図9】 DBNBS非加熱処理反応物のマススペクトル測定チャートである。【図10】 DBNBS加熱処理反応物のマススペクトル測定チャートである。【図11】 DBNBS非加熱処理反応物のNMRスペクトル測定チャートである。【図12】 DBNBS加熱処理反応物のNMRスペクトル測定チャートである。【図13】 検量線Aを示すグラフである。【図14】 検量線Bを示すグラフである。【図15】 検量線Cを示すグラフである。 水、または水溶液中の水素ラジカルの検出方法であって、試料に3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)を添加し、その着色による試料中の水素ラジカルの検出方法。 水、または水溶液は電解還元水である請求項1記載の水素ラジカルの検出方法。 着色は3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)が水素ラジカルと反応して生成するDBNBSアゾ化合物の吸収ピークによるものである請求項1記載の水素ラジカルの検出方法。 波長が425〜450nmの吸収ピークを検出することを特徴とする請求項1記載の水素ラジカルの検出方法。 次の(1)〜(4)の工程よりなる水または水溶液中の水素ラジカルの定量分析方法。(1) 517nm近傍に吸収を有する1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)の溶液に、白金黒存在下で一定の速度で水素ガスを吹込み、517nm近傍の吸光度の減少と水素ガスの吹込み時間との相関のグラフを求める(検量線Aの作成)。(2) システィンとDPPHを反応させ、DPPHの517nm近傍における吸光度の減少とシスティン濃度との相関のグラフを求める(検量線Bの作成)。(3) 3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)の溶液に前記(1)と同一条件で白金黒存在下で一定の速度で水素ガスを一定の時間吹込んだ後、450nm近傍の吸光度を測定し、その吸光度の値と検量線A及び検量線Bより算出した水素ガスの吹込み時間あたりの水素ラジカル発生濃度との相関のグラフを求める(検量線Cの作成)。(4) 試料に3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)を添加し、450nm近傍の吸光度を測定し、その吸光度の値から前記検量線Cを用いて水素ラジカルの濃度を読み取る。 水または水溶液は10〜500倍に濃縮されている請求項5記載の定量分析方法。