タイトル: | 特許公報(B2)_3”−α−モノグルコシルナリンジン含有組成物、その製造方法およびその利用方法 |
出願番号: | 2001160817 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12P 19/18,A23L 1/22,A23L 1/226,A23L 1/302,A23L 3/3562,A61K 8/60,A61K 47/26 |
三 宅 俊 雄 湯 本 隆 JP 3967563 特許公報(B2) 20070608 2001160817 20010529 3”−α−モノグルコシルナリンジン含有組成物、その製造方法およびその利用方法 株式会社林原生物化学研究所 000155908 東洋精糖株式会社 591061068 鈴木 俊一郎 100081994 牧村 浩次 100103218 高畑 ちより 100107043 鈴木 亨 100110917 三 宅 俊 雄 湯 本 隆 JP 2000158227 20000529 20070829 C12P 19/18 20060101AFI20070809BHJP A23L 1/22 20060101ALI20070809BHJP A23L 1/226 20060101ALI20070809BHJP A23L 1/302 20060101ALI20070809BHJP A23L 3/3562 20060101ALI20070809BHJP A61K 8/60 20060101ALI20070809BHJP A61K 47/26 20060101ALI20070809BHJP JPC12P19/18A23L1/22 CA23L1/226 HA23L1/302A23L3/3562A61K8/60A61K47/26 C12P 19/18 A23L 1/00 A23L 3/00 A61K 8/00 A61K 47/00 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus(JDream2) JMEDPlus(JDream2) PubMed 秋山卓美 外,食品添加物酵素処理ナリンジンの構成成分の構造,日本農芸化学会誌,日本,2000年 3月,Vol.74, 臨時増刊号,66 9 2002199896 20020716 17 20041007 森井 隆信 【0001】【発明の技術分野】本発明は、3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物、その製造方法およびその利用方法に関する。さらに詳しくは、すっきりした強い苦味を呈し、抗酸化能を有する3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物、その製造方法およびその利用方法に関する。【0002】【発明の技術的背景】ナリンジン(naringin)は、下記式[I]:【0003】【化1】【0004】で示されるように、ナリンゲニン(5,7,4'-トリヒドロキシフラバノン)の7位の水酸基に、L-ラムノシル-(α1→2)-グルコースがβ-結合したものをいう。このナリンジンは柑橘類の未熟な果皮に含まれ、毛細血管の強化、出血予防、血圧調整、コレステロール低下等の生理作用のほか、生体の恒常性を維持するTNFの誘導活性も有することが見出されている。ナリンジンの用途は、苦味剤、抗酸化剤、ビタミンP強化剤等として飲食物などに使用され、循環器系疾患等の予防剤として医薬品に用いられ、また抗酸化剤、紫外線吸収剤等として化粧品に配合されている。【0005】しかしながら、このナリンジンはアルカリ性水溶液には可溶であるが、水、酸に難溶であり、室温では、1リットルの水に僅かに1g(約0.1W/V%)程度しか溶けないため、その利用分野が限定される。そこで、ナリンジンの水溶性を高めるための種々の方法が提案されており、例えば、特開平4-13691号公報には、澱粉部分分解物(α-グルコシル糖化合物)共存下でナリンジンに糖転移酵素(α-グルコシル転移活性を有する酵素、例えば、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)など)を作用させて、下記式[II]で示されるα-グルコシルナリンジンを生成させ、これを分取することによる、α-グルコシルナリンジンの製造方法が開示されている。【0006】【化2】【0007】かかる酵素処理により得られるα-グルコシルナリンジンについては、これまで式[I]で示されるナリンジンのグルコースの3"位の位置にグルコース(G)がα-1,4結合していることが確認されていた(THE FIRST INTERNATIONAL CONGRESS ON "VITAMINS AND BIOFACTORS IN LIFE SCIENCE" Kobe, September 19,1991, Oral Session, 4-IV-5)。【0008】また、通常の酵素反応では、上記式[II]に示されるように、ナリンジンのグルコースの3"位の位置にグルコース(G)がα-1,4結合で順次n個(n=1〜20個)結合した化合物、またはこれらグルコース結合数の異なるα-グルコシルナリンジンの混合物(「酵素処理ナリンジン」とも言われる。)が生成していると考えられていた。【0009】しかしながら、最近、このようにして得られた酵素処理ナリンジンには、3" -α-グルコシルナリンジンの他に、新規配糖体として、その4'位もα-グルコシル化された3",4'-α-グルコシルナリンジンや、ナリンジンの4'位のみがα-グルコシル化された4'-α-グルコシルナリンジンが含まれており、これら4'位がα-グルコシル化された化合物は、酵素処理ナリンジン全体の12%(モル比)ほど含有されていることが報告された(日本農芸化学会大会講演要旨集、2000年度、66頁)。【0010】本発明者らは、上記α-グルコシルナリンジン含有物の苦味、性質などについて鋭意研究を重ねたところ、上記酵素処理ナリンジンに含まれる成分のうち、3"-α-モノグルコシルナリンジンは、元のナリンジンに比べてその苦味が著しく強化されており、ナリンジンと同様に抗酸化能も示すのに対して、上記新規配糖体の3",4'-α‐グルコシルナリンジンならびに4'-α-グルコシルナリンジンは、苦味の増強が認められず、また、抗酸化能もほとんど示さないことを見出した。さらに澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られる、主成分の3"-α-グルコシルナリンジンと、3",4'-α-グルコシルナリンジン、4'-α-グルコシルナリンジン、未反応ナリンジンなどとを含有する溶液に、α-グルコシダーゼ、あるいはα-グルコシダーゼとグルコアミラーゼとを作用させれば、3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含み、すっきりした強い苦味を呈し、抗酸化能を有する3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物が、簡単かつ収率よく調製できることなどを見出して本発明を完成するに至った。【0011】【発明の目的】本発明は、上述のように抗酸化能を保持するとともに、水への溶解性が改良され、苦味がさらに増強された新規なナリンゲニン配糖体組成物を提供し、ナリンジンまたはその誘導体の利用・用途を拡大することを目的とする。すなわち、3"-α-モノグルコシルナリンジンの含量を高めることによって、すっきりした強い苦味を呈し、抗酸化能を有する3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を提供することを目的としている。【0012】また本発明は、上記酵素処理ナリンジンに、さらに別異の簡単な酵素処理を施すことにより、3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含み、すっきりした強い苦味を呈し、抗酸化能を有する3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を簡単かつ収率よく調製できる、3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法を提供することを目的としている。【0013】さらに本発明は、上記3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の利用方法を提供することを目的としている。【0014】【発明の概要】本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、ナリンゲニン配糖体を含む組成物であって、ナリンゲニン配糖体全量のうち、60重量%以上が、3"-α-モノグルコシルナリンジンであり、3",4'-α-グルコシルナリンジンおよび4'-α-グルコシルナリンジンの合計量が10重量%以下であることを特徴としている。【0015】上記組成物の好ましい態様においては、3"-α-モノグルコシルナリンジンがナリンゲニン配糖体全量の60重量%以上であり、ナリンジンが10重量%〜30重量%、3",4'-α-グルコシルナリンジンおよび4'-α-グルコシルナリンジンの合計量が10重量%以下であることが望ましい。さらに、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、3"-α-モノグルコシルナリンジンを主成分とするナリンジン配糖体組成物の示す苦味が、同一重量%濃度のナリンジンと比較して増強されていることを特徴としている。【0016】本発明に係る上記3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法は、澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られるα-グルコシルナリンジン配糖体含有溶液に、α-グルコシダーゼ活性またはグルコアミラーゼ活性を有する酵素を添加して作用させて3"-α-モノグルコシルナリンジンを得ることを特徴としている。【0017】上記組成物のより好ましい製造方法は、澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られるα-グルコシルナリンジン配糖体含有溶液に、α-グルコシダーゼ活性を有する酵素とグルコアミラーゼ活性を有する酵素とを添加して作用させて3"-α-モノグルコシルナリンジンを得ることを特徴としている。【0018】上記組成物のさらに好ましい製造方法は、澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られるα-グルコシルナリンジン配糖体含有溶液に、α-グルコシダーゼ活性を有する酵素、あるいはこのα-グルコシダーゼ活性を有する酵素とグルコアミラーゼ活性を有する酵素とを添加して作用させることにより得られる3"-α-モノグルコシルナリンジンを含有する酵素処理液を、多孔性吸着樹脂と接触させて3"-α-モノグルコシルナリンジンを含有する配糖体混合物を該樹脂に吸着させ、次いで、有機溶媒で3"-α-モノグルコシルナリンジンを溶出して3"-α-モノグルコシルナリンジンを得ることを特徴としている。【0019】本発明による飲食物または医薬品の風味の改良方法は、上記の3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を、飲食物または医薬品に添加することを特徴としている。また、本発明による色素あるいは色素含有物の褪色防止方法は、上記3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を、色素あるいは色素含有物に添加することを特徴としている。【0020】さらに本発明による飲食物、医薬品または化粧品の酸化防止方法は、上記3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を、飲食物、医薬品または化粧品に含有させることを特徴としている。本発明によれば、3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含み、すっきりした強い苦味を呈し、抗酸化能を有する3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物が提供される。【0021】また本発明によれば、いわゆる酵素処理ナリンジンに、さらに別異の簡単な酵素処理を施すことにより、3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含み、すっきりした強い苦味を呈し、抗酸化能を有する3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物が、簡単かつ収率よく調製できる。また本発明によれば、上記3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の利用方法が提供される。【0022】【発明の具体的説明】以下、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物、その製造方法およびその利用方法について具体的に説明する。本明細書では、「酵素処理ナリンジン」とは、ナリンジンおよび澱粉部分分解物、例えばデキストリンとを含有する液に糖転移酵素、例えば、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)を作用させることにより得られるものを言い、ナリンジンの3"位置にグルコースが複数個付加した生成物である3"-α-グルコシルナリンジンを主成分として含み、その他に、その4'位もα-グルコシル化された3",4'-α-グルコシルナリンジンや、ナリンジンの4'位のみがα-グルコシル化された4'-α-グルコシルナリンジンをも含むことが多い。【0023】また、「酵素処理モノグルコシルナリンジン」とは、上記「酵素処理ナリンジン」の溶液をさらに別異の酵素(例:α-グルコシダーゼ、グルコアミラーゼ)で処理して得られるものを言い、主成分の3"-α-モノグルコシルナリンジンと、少量の未反応ナリンジンとを含有し、3",4'-α-グルコシルナリンジンまたは、4'-α-グルコシルナリンジンをほとんど含まない。この「酵素処理モノグルコシルナリンジン」は、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物に包含される。【0024】[3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物]本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、ナリンゲニン配糖体を含む組成物であって、ナリンゲニン配糖体全量のうちの60重量%以上が、3"-α-モノグルコシルナリンジンであり、3",4'-α-グルコシルナリンジンおよび4'-α-グルコシルナリンジンの合計量が、ナリンゲニン配糖体の10重量%以下であることを特徴としている。【0025】上記組成物の好ましい態様においては、3"-α-モノグルコシルナリンジンがナリンゲニン配糖体全量の60重量%以上であり、ナリンジンが10重量%〜30重量%、3",4'−α-グルコシルナリンジンおよび4'-α-グルコシルナリンジンの合計量が10重量%以下であることが望ましい。本発明の上記組成物において、具体的にはナリンゲニン配糖体全量のうちの60重量%以上、好ましくは70重量%以上が3"-α-モノグルコシルナリンジンであることがとくに望ましい。【0026】また、このような3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物では、3"-α-グルコシルナリンジンの4'位がα-グルコシル化された成分である3",4'-α-グルコシルナリンジンおよびナリンジンの4'位がα-グルコシル化された成分である4'-α-グルコシルナリンジンの量が、ナリンゲニン配糖体の10重量%以下であることが望ましい。換言すると、上記組成物では、3"-α-モノグルコシルナリンジンが、3"-α-グルコシルナリンジン、3",4'-α-グルコシルナリンジンおよび4'-α-グルコシルナリンジンの合計量の90重量%以上を占め、好ましくは95〜100重量%を占めている。【0027】本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含み、しかもすっきりしたその苦味が強化されている。すなわち、本発明に係る組成物は、3"-α-モノグルコシルナリンジンを主成分とするナリンジン配糖体組成物の示す苦味が、同一重量%濃度のナリンジンと比較して1.3〜1.5倍に増強されている。【0028】さらに詳説すると、本発明者らの研究結果によれば、3"-α-モノグルコシルナリンジンが、元のナリンジンに比べて苦味をきわめて強く呈し、ナリンジンと同様に抗酸化能も示す。これと対照的に、上記酵素処理ナリンジンに含まれる成分の新規配糖体の3",4'-α-グルコシルナリンジンまたは4'-α-グルコシルナリンジンは、苦味の増強が認められず、また、抗酸化能もほとんど示さないことが見出されている。本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物において、これら3",4'-α‐グルコシルナリンジンおよび/または4'-α-グルコシルナリンジンの含有割合が多いと、組成物の単位重量当りに示す苦味の程度および抗酸化能は、著しく低下することになる。したがって、ナリンジン誘導体組成物の有用性をさらに増すには、ナリンジンの生理的諸作用および抗酸化能を保持するとともに、水などへの溶解性が改良され、しかも強化されたさわやかな苦味を発揮させる配合を有する組成物が好適であり、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物がこの目的に適うものと言える。【0029】このため、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、組成物の具える諸特性に基づき、多様な用途に利用することが可能である。例えば、苦味料、飲食物(健康食品、機能性食品等も含む)および医薬品の風味改善剤、色素の退色防止剤、感受性疾患の予防剤、治療剤(抗感受性疾患剤)、美肌剤、美白剤等の用途に好適に使用できる。【0030】上述した知見のもとに完成された本発明に係る上記3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物(すなわち、上記「酵素処理モノグルコシルナリンジン」を包含する組成物)を以下、別の観点から説明する。本発明の組成物には、主成分の3"-α-モノグルコシルナリンジンと、少量の未反応ナリンジンとが含まれている。したがって、従来の酵素処理ナリンジンと比べると、本発明の組成物中に含まれるナリンゲニン配糖体の種類は少なく、分子組成が比較的一様であることも特徴である。すなわち、この組成物に高含量で含有される3"-α-モノグルコシルナリンジンは、ナリンジンの7-O-ネオヘスペリドシドのグルコース3"位にのみにグルコースが1個だけ付加したもので、ナリンゲニンの4'位はフェノール性水酸基である(式[II]において、Gがn=1に相当)。このために、3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、抗酸化作用や苦味を示すのであろうと考えられる。これに対して、上記3",4'-α-グルコシルナリンジンや4'-α-グルコシルナリンジンでは、何れも、ナリンジンの4'位のOH基がグルコシル基により塞がれているために抗酸化能を示さないのであろうと考えられる。【0031】また、従来の酵素処理ナリンジン、すなわち、ナリンジンとデキストリンなどとを含有する液に糖転移酵素のCGTaseなどを作用させて得られるものは、種々の糖鎖からなる配糖体(3"-α-グルコシルナリンジンなど)の混合物であるのに対して、本発明に係る組成物の主成分である3"-α-モノグルコシルナリンジンは単一化合物であるために、その物理的化学的性質を利用しやすく、産業利用の観点から好都合である。【0032】[3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法]次に、このような本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法について説明する。本発明において使用する原料および酵素標品の規格、性状ならびに使用量、酵素反応の条件、酵素処理後の精製法などにより、得られる組成物の組成、収量などは大きく変化する。とくに未反応物として残存するナリンジン量、抗酸化能のない3",4'-α-グルコシルナリンジン量、4'-α-グルコシルナリンジン量などをなるべく少なくするような製造工程の設計と管理が望ましい。【0033】本発明においては、上記3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を製造するに際して、澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られる溶液(酵素処理ナリンジン溶液)に、α-グルコシダーゼ活性を有する酵素、またはグルコアミラーゼ活性を有する酵素を添加して作用させ、あるいは、α-グルコシダーゼとグルコアミラーゼの各活性を有する酵素類を同時にまたは別々に作用させている。【0034】その際に用いられる「酵素処理ナリンジン」についてまず始めに説明する。<酵素処理ナリンジン>α-グルコシダーゼなどの酵素処理の対象となる溶液としては、通常、澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られる溶液(酵素処理ナリンジン溶液)が用いられる。このような酵素処理ナリンジンは、主成分の3"-α-グルコシルナリンジンを含有し、さらに3",4'-α-グルコシルナリンジンおよび/または4'-α-グルコシルナリンジン、未反応ナリンジンなどを含有していることが多い。本発明では、このような成分すなわち3"-α-グルコシルナリンジンを含有し、さらに必要により3",4'-α-グルコシルナリンジンおよび/または4'-α-グルコシルナリンジン、未反応ナリンジンなどを含有するものであれば、その含量比、濃度などは特に限定されない。好ましくは、処理すべき溶液中の3"-α-グルコシルナリンジン濃度が、0.1〜30重量%、好ましくは1〜10重量%であり、ナリンジン濃度が、0.02〜15重量%、好ましくは0.2〜5重量%であり、3"-α-グルコシルナリンジン/ナリンジン(重量比)が、10〜1500/1〜750、好ましくは5〜50/1〜25であるものが望ましい。【0035】上記3"-α-グルコシルナリンジンなどを含有する溶液としては、例えば、次に示すものが挙げられる。特開平4-13691号公報に記載されているように、ナリンジンに澱粉部分分解物(α-グルコシル糖化合物)共存下で糖転移酵素(α-グルコシル転移活性を有する酵素)を作用させてなり、α-グルコシルナリンジン(3"-α-グルコシルナリンジン、3",4'-α-グルコシルナリンジン、あるいは4'-α-グルコシルナリンジン)と未反応のナリンジンとを含有しているもの、すなわち、「酵素処理ナリンジン」の溶液である。<グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼの各活性を有する酵素類>グルコアミラーゼ活性を有する酵素(3"-位のグルコースを切断する酵素)としては、具体的には、例えば、グルコアミラーゼ(グルクザイムNL4,2,天野製薬(株)製)、セルラーゼA<アマノ>3[天野製薬(株)製]、グルコチーム(長瀬産業(株)製)、ユニアーゼ30((株)ヤクルト製)、ナリンギナーゼ(田辺製薬(株)製)等のように、α-1,4グルコシル結合をグルコース単位で切断しうる酵素が挙げられる。【0036】α-グルコシダーゼ活性を有する酵素(ナリンジンの主に4'-位のグルコースを切断する酵素)としては、具体的には、例えば、セルラーゼA<アマノ>3、トランスグルコシダーゼ、<アマノ>(天野製薬(株)製)等が挙げられる。これらの酵素のうちグルコアミラーゼ活性を有する酵素、例えば、グルコチームは、上記「酵素処理ナリンジン」溶液中のα-グルコシルナリンジン100重量部当たり、好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.2〜1重量部程度の量で用いられる。【0037】またα-グルコシダーゼ活性を有する酵素、例えばトランスグルコシダーゼ<アマノ>は、上記「酵素処理ナリンジン」溶液中のナリンジン100重量部当たり、好ましくは0.001〜10重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部程度の量で用いられる。また、これらの酵素を、上記「酵素処理ナリンジン」溶液中のα-グルコシルナリンジンなどに作用させるには、通常、pH3〜7、好ましくはpH4〜5で、通常40〜70℃、好ましくは50〜60℃の温度で、通常0.5〜48時間、好ましくは6〜24時間程度保持すればよい。【0038】α-グルコシルナリンジンは、グルコアミラーゼ活性を有する酵素の加水分解作用を受けて、このα-グルコシルナリンジンのナリンゲニン骨格7位にβ−結合しているグルコース基の3"位にさらにα-1,4結合でn個順次結合(n=1〜20個)しているグルコースが、3"位の1個を残して加水分解され、上記式[II]中、n=1の3"-α-モノグルコシルナリンジンになる。【0039】α-グルコシダーゼをα-グルコシルナリンジン(モノグルコシルナリンジンも含む。)に作用させても、その3"位にα−結合しているグルコースのうち、3"位の1個目のグルコースはほとんど加水分解されない。しかし、α-グルコシダーゼは、酵素処理ナリンジンに少量成分として含有されている4'位にグルコースがα−結合したα-グルコシルナリンジンの当該グルコースを加水分解する。またモノグルコシルナリンジンにおいてナリンゲニン骨格の7位にβ−結合しているグルコースを加水分解することはない。【0040】本発明では、上記「酵素処理ナリンジン」溶液への上記各酵素の作用は、α-グルコシダーゼ、グルコアミラーゼのいずれかを単独で作用させてもよく、またα-グルコシダーゼとグルコアミラーゼの両者を作用させてもよい。このようにα-グルコシダーゼとグルコアミラーゼの両者を作用させる場合には、グルコアミラーゼとα-グルコシダーゼを任意の順序に、または各活性を有する酵素を同時に添加してもよい。またこれらの各酵素は一度にあるいは少量ずつ添加することができる。本発明では、これらのうち、グルコアミラーゼとα-グルコシダーゼの各活性を有する酵素を、同時に、上記「酵素処理ナリンジン」溶液に添加する方法が、酵素処理効率が高い上に、簡便で好ましい。【0041】なお、グルコアミラーゼ活性、α-1,2-ラムノシダーゼ活性、α-グルコシダーゼ活性のうち2つ以上の活性を有する酵素(例:セルラーゼA<アマノ>3[天野製薬(株)製])も用いることができる。<精製>本発明では、上述した方法で得られる3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物をそのまま使用することもできるが、多孔性吸着樹脂を用いて3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物から、3"-α-モノグルコシルナリンジン以外のα-グルコシル糖化合物などの夾雑成分を除いて用いてもよい。さらにイオン交換樹脂(H型、OH型)などで脱塩、脱色して用いてもよい。【0042】これらの方法を適用することにより、上記組成物において、さわやかな苦味を強く呈する3"-α-モノグルコシルナリンジンの比率が高められる。また、上記3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物から、例えばクロマトグラフィーによって分離するなどの公知方法によって3"-α-モノグルコシルナリンジンを分取してもよい。すなわち、多孔性吸着樹脂に3"-α-モノグルコシルナリンジンとナリンジンを吸着させた後、溶出させる含水アルコール等の含水溶出剤の溶剤含有率を変えて、3"-α-モノグルコシルナリンジンとナリンジンを分離する方法などにより3"-αーモノグルコシルナリンジン含有組成物から3"-α-モノグルコシルナリンジンを分取して用いてもよい。このように3"-α-モノグルコシルナリンジンを純粋に近い状態にまで精製することも可能であるが、その精製に要するコストと実際の利用上の要件との兼ね合いにより選択されるであろう。【0043】[組成物の利用態様]上記の製造方法により得られた3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、水難溶性のナリンジンと同等の抗酸化能を有するとともに、水への溶解が良好であり、しかもさわやかな苦味がナリンジンよりも強化されている特徴を有する。そうした特徴は、上記組成物が、ナリンジンと同等の苦味を呈するが抗酸化能を発揮しない3",4'-α-グルコシルナリンジン、あるいは4'-α-グルコシルナリンジンをきわめて低い含量としていることに基づく。【0044】この組成物が有する性質、とくにすっきりした苦味、抗酸化能などに着目して、多方面において種々の利用形態が可能である。以下、このものが最も有用に利用される態様を例として挙げるが、該組成物の用途がこれらに限定されるわけではない。3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物中の3"-α-モノグルコシルナリンジンは、食品等から体内に摂取吸収されると生体内酵素の作用を受けて元のナリンジンに戻り、ビタミンPとしての諸機能を発揮することができる。したがって、例えば、ビタミンP強化剤、循環器系疾患、感受性疾患等の予防剤、治療剤(抗感受性疾患剤)などの医薬品に、ナリンジンに代わって3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を利用することができる。さらに3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、コレステロール低下作用、血圧低下作用、抗アレルギー作用などを有するので、健康食品あるいは機能性食品等に3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を利用することができる。【0045】また、ナリンジンが示す苦味は、ラムノースとグルコースとの1→2結合の点にあると言われる。3"-α-モノグルコシルナリンジンは、ナリンジンに比較してすっきりとした苦味をさらに強く呈する。後述するように、同一モル濃度において3"-α-モノグルコシルナリンジンは、ナリンジン、3",4'-グルコシルナリンジン、4'-α-グルコシルナリンジンよりも約2倍の苦味を示すことが本発明者らの本研究により明らかとなった。本発明に係る組成物においては、3"-α-モノグルコシルナリンジンをナリンゲニン配糖体全量の60重量%以上に相当する量を含む。したがって、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の示す苦味は、同一重量%濃度のナリンジンと比較して1.3〜1.5倍に増強されている。このため苦味料として飲食物に添加することにより、その味覚に深みを与えて洗練された風味とすることができ、しかもナリンジンを用いる場合に比べより少量ですむ。したがって、3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含む組成物は、飲食物(健康食品、機能性食品等を含む)、あるいは医薬品など人や動物が経口摂取するものに少量添加することにより、飲食物、医薬品などの苦味を補強したり、また酸味、塩から味、渋味、青臭み、エグ味を低減するなどして、風味を大きく改善できる。【0046】例えば、上記組成物をマーマレード、ジャム、果汁飲料などの飲食物に適量添加することによりさわやかな苦味を付与できる。さらに苦味を賞味する飲食物のみならず、柑橘系のゼリー、ジュース、アイスクリーム、ジャム、缶詰等に添加することによりその本物らしさを高めることができる。また、甘味料に少量の本組成物を併用すれば、飲食物に平板な甘味ではなくまろやかな甘味を付与する効果がある。【0047】本発明に係るこの組成物は、上記したように、飲食物(健康食品、機能性食品等を含む)、あるいは医薬品など広範に使用することができるが、該組成物中に高含量で含まれる3"-α-モノグルコシルナリンジンが有する抗酸化能が、これらの配合された物品の品質保持にも有用である。たとえば、経口投与される医薬品などの食味改善と抗酸化性の強化にも使用できる。そのような医薬品としては、たとえば、経腸栄養剤、補助栄養剤、水薬、シロップ剤などが挙げられる。さらに、飲食物(健康食品、機能性食品等を含む)などにおいても、その添加により脂質の酸敗、香料または色素の酸化変質、光による劣化変質などに対して防止する効果を発揮することが期待される。【0048】本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、医薬部外品、外用医薬品、化粧品などに配合すれば、抗酸化作用の発揮が期待できる。すなわち、この3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を、色素に添加して用いることにより、あるいは染料、画材、香料、食品、ペンキなどの色素含有物に添加(配合)して用いることにより、例えばこの色素で染色された衣料などの退色を防止できる。【0049】ナリンジンは特有の紫外部吸収スペクトルを持ち、可視部に目立った吸収がないためほとんど無色であり、従来から、紫外線で退色の起きやすい色素、とくに天然色素の退色防止に利用が試みられてきたが、ナリンジンは水への溶解度が低いために使いづらいという欠点があった。これに対して本発明に係る、3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含む組成物は、沈澱を生じにくい水溶性のものであるため、色素の退色防止に幅広く利用できる。特にパプリカ、クチナシ、β-カロチン、アスタキサンチン等のカロチノイド系色素に有効であるが、赤キャベツ、ムラサキイモ等のアントシアニン色素、ブドウ果皮、ベニバナ黄、ベニバナ赤、赤ダイコン等のフラボノイド色素、ビートレッド、ウコン色素、クチナシ青、紅麹色素等にも効果的に使うことができる。【0050】このような3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含む組成物を色素の退色防止に用いる場合、色素で着色された試料重量当たり、0.001〜0.2重量%、好ましくは0.005〜0.1重量%、より好ましくは0.01〜0.05重量%の量で使用することが望ましい。この場合、酵素処理ルチン、酵素処理ヘスペリジン、L-アスコルビン酸(またはL-アスコルビン酸ソーダ)の何れか1つまたは2つ以上を使用することにより、上記色素の退色防止に相乗効果が得られる。天然物由来の本組成物は、色素を使用する幅広い組成物、製剤に添加することができるが、色素を使用する化粧品にも好適である。 たとえば、口紅、歯磨き、リップクリーム、白粉、香水などに好ましく使用することができる。【0051】また、このように3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含む本発明の組成物は、特有の紫外部吸収特性を持つとともに、色が極めて薄いなどの特質を持つため、たとえばUVカット剤などの化粧品においては、特に有用である。【0052】【発明の効果】本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含むため、ナリンジンと同様に抗酸化能を有するとともに、ナリンジンに比べて、さわやかな苦味が著しく強化され、水溶性に優れ、白濁(結晶析出)が生じにくいなどナリンジンの諸特性が改善されている。【0053】また、本発明による3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法によれば、かかる優れた特性を有する3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物が、前記「酵素処理ナリンジン」から収率よく簡単に得られる。さらに、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、飲食物、医薬品、化粧品、添加物などに広範に使用できる。本組成物は、増強された苦味を活かして飲食物などの風味を改善することのほか、ナリンジンと同様、添加された色素や香料の酸化による品質劣化または光による劣化を防止する効果を発揮する。【0054】本発明の組成物は、飲食物、医薬品、化粧品などにおいて天然物由来の添加物として位置付けられるので、生体親和性が高く安全であり、しかも製造コストは、上昇しないなどの利点も有する。【0055】【実施例】以下、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法について実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、このような実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の例において、「%」は、特にその趣旨に反しない限り「重量%」の意味である。【0056】【実施例1】ナリンジン50.0gとDE8のデキストリン200gを500mLの水に加熱溶解し、2N水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、バチルス・ステアロサーモフィルス由来のシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(株式会社 林原生物化学研究所製)をデキストリン1g当たり15単位加えて、68℃で48時間反応させた。反応終了後、酵素を加熱失活させてから、ろ過して「酵素処理ナリンジン溶液」(A液)を得た。【0057】A液を下記条件にてHPLC分析し、次式に基づいて計算すると、ナリンジンの反応率は74%であり、未反応のナリンジンは、26%であった。HPLCクロマトグラムを図1に示す。【0058】【数1】【0059】<HPLC分析条件>カラム:C18溶離液:水/アセトニトリル=80/20(v/v)検出:280nm温度:40℃流速:1.0mL/分<グルコアミラーゼ反応>A液の一部をpH4.5に調整しグルコアミラーゼ(グルコチーム(天野製薬(株)製))を1.0g加えて、55℃で24時間反応させた。反応終了後、酵素を加熱失活させてから、ろ過してグルコアミラーゼ処理ナリンジン溶液(B液)を得た。B液を上記条件にてHPLCによる分析をおこなった。HPLCクロマトグラムを図2に示す。【0060】この図2によれば、A液をグルコアミラーゼ反応処理することにより、図1の酵素処理ナリンジンのピーク群は、3"‐α-モノグルコシルナリンジンと未反応ナリンジンおよび3",4'-α-ジグルコシルナリンジンと4'-α-モノグルコシルナリンジンのピークに集約されていることが分かる。したがって、B液にはこれらの配糖体が含まれており、3"位置に2個以上のグルコースが付加した配糖体は実質的に含まれない。【0061】なお、モノグルコシルナリンジンの確認は、該ピークのクロマトグラフィー分取画分について酸性条件下で加水分解し、ナリンゲニンと単糖とのモル比が1:3であることを確認することで行った。<α-グルコシダーゼ反応>B液の一部をpH4.5に調整し、α-グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL<アマノ>)を1mL加えて、55℃で24時間反応させた。反応終了後、酵素を加熱失活させてから、ろ過して「酵素処理モノグルコシルナリンジン」の溶液(C液)を得た。C液を上記条件にてHPLC分析した。HPLCクロマトグラムを図3に示す。【0062】この図3によれば、B液をα-グルコシダーゼ反応処理することによって、図2のグルコアミラーゼ処理ナリンジンのピーク群中に存在していた3",4'-α-ジグルコシルナリンジンと4'-α-モノグルコシルナリンジンのピークはほぼ消失しており、モノグルコシルナリンジンと未反応ナリンジンとの2ピークに集約されていることが分かる。このC液は、「酵素処理モノグルコシルナリンジン」の溶液に相当するものであり、C液中の混合物は、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物に包含されるものである。【0063】A液、B液、C液について行ったHPLCクロマトグラムのピークの濃度比から求めた配糖体骨格のナリンゲニン比の分析結果を表1に示す。この表1の値とナリンジン配糖体のそれぞれの分子量から算出したA液、B液、C液のナリンゲニン配糖体比を表2に示す。さらに、表1から算出したB液、C液のナリンジン配糖体比の結果を表3に示す。【0064】【表1】【0065】【表2】【0066】【表3】【0067】【苦味試験1】上記のA液(「酵素処理ナリンジン」の溶液に相当)およびC液(「酵素処理モノグルコシルナリンジン」の溶液に相当)を凍結乾燥してそれぞれ粉末にした後に、各0.10%水溶液を調製した。パネル8名にてこの2つの水溶液の苦味強度を比較したところ、全員がA液からの調製液に較べ、明らかにC液からの調製液の方が苦味が強いと判定した。【0068】【苦味試験2】上記B液から3"-α-モノグルコシルナリンジン、3",4'-α-ジグルコシルナリンジン、4'-α-モノグルコシルナリンジン画分を分取し、試薬ナリンジンを対照にして同一モル濃度にてパネル8名による苦味の官能検査を行った。その結果、もとのナリンジンと比較して、3"-α-モノグルコシルナリンジンは、苦味度がほぼ2倍に増強されていた。これに対して、3",4'-α-ジグルコシルナリンジン、4'-α-モノグルコシルナリンジン画分には苦味の増強は見られなかた。【0069】【実施例2】実施例1と同様に「酵素処理ナリンジン」溶液(A液相当)を調製し、pH4.5に調整後、グルコアミラーゼ(グルコチーム(天野製薬(株)製))1.0gおよびα-グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL<アマノ>)1mL加えて、55℃で24時間反応させた。反応終了後、酵素を加熱失活させてから、ろ過して「酵素処理モノグルコシルナリンジン」の溶液(C液相当)を得た。【0070】次いで、1.5Lの中間極性多孔性吸着樹脂(XAD−7)が充填され、高濃度のエタノール水溶液で活性化しておいたカラムに上記酵素処理モノグルコシルナリンジン溶液(C液相当)を通過させ、次いでカラム容量の2倍量の水で洗浄してから50%(v/v)エタノール水溶液3Lで樹脂への吸着成分を溶離させた。溶離液のエタノールを除いてから、乾燥し酵素処理モノグルコシルナリンジン58gを得た。本品を実施例1と同様の条件でHPLC分析したところ、含まれている成分は3"-α-モノグルコシルナリンジンとナリンジンのみで、その他の成分はほとんど検出されなかった。本品は、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物に包含されるものである。【0071】【実施例3】実施例2で調製した酵素処理モノグルコシルナリンジンを用いて、表4に示した配合組成の低カロリータイプのグレープフルーツジュース(配合品A)を調製した。なお、対照として、この酵素処理モノグルコシルナリンジンを配合しなかった以外は配合品Aと同様であるグレープフルーツジュース(比較品)も調製した。【0072】酵素処理モノグルコシルナリンジンを加えた配合品Aは、比較品に較べてグレープフルーツ本来の苦味が保たれており、味に深みがあり好ましい風味であった。【0073】【表4】【0074】【実施例4】野菜ジュース(人参、レタス、パセリ、セロリ、水がらし、キャベツ、ほうれん草)100gに対し、実施例2で調製した「酵素処理モノグルコシルナリンジン」を20mg(0.02%)添加混合し(試験区)、無添加のジュース(対照区)と呈味比較した。【0075】対照区と比較して、試験区は青くさ味が少なくなるとともに、ほど良いさわやかな苦味が全体の味をまとめ上げ、スッキリした味になり、飲みやすくなっていた。【0076】【実施例5】0.05重量%のクチナシ黄色素溶液(クエン酸緩衝液、pH3.3)に、酵素処理モノグルコシルナリンジン(実施例2で得られた「酵素処理モノグルコシルナリンジン」)を最終含有量が0.02〜0.04重量%となるように添加してから、表5に示すような酵素処理ルチン(成分組成:α-モノグルコシルルチン77.5重量%、イソケルシトリン14.5重量%、糖類5.2重量%、水分2.8重量%含有、商品名「αGルチンPS」東洋精糖株式会社製)、およびL-アスコルビン酸のいずれか一方、または両方を同時に添加した。次いで、密閉容器中で加熱殺菌処理をした後、5℃、蛍光灯照射(照度7,000ルクス)下で保持し、一日おきにクチナシ黄色素の残存率(%)を、分光光度計で442nmの波長にて色素溶液の吸光度を測定することにより算出した。【0077】試験条件およびその結果を表5に示した。なお、無添加の区を対照区(試験番号9)として、併せて表5に示した。また、酵素処理ルチンのみ添加した区を試験番号10とし、L-アスコルビン酸のみ添加した区を試験番号11として、併せて表5に示した。表5によれば、酵素処理モノグルコシルナリンジンをクチナシ黄色素溶液に添加することにより、クチナシ色素残存率は大幅に向上したことが分かる。また、酵素処理モノグルコシルナリンジンとともに酵素処理ルチン、L-アスコルビン酸のいずれか一方を単独で用いるか、あるいは両方を併用することにより相乗効果が得られたことが分かる。【0078】【表5】【図面の簡単な説明】【図1】図1は、実施例1で得られた酵素処理ナリンジン溶液(A液)のHPLCクロマトグラムである。横軸は溶出時間(分)を表す。【図2】図2は、実施例1で得られたグルコアミラーゼ処理ナリンジン溶液(B液)のHPLCクロマトグラムである。横軸は溶出時間(分)を表す。【図3】図3は、実施例1で得られた酵素処理モノグルコシルナリンジン溶液(C液)のHPLCクロマトグラムである。横軸は溶出時間(分)を表す。 ナリンゲニン配糖体を含む組成物であって、ナリンゲニン配糖体全量のうち、60重量%以上が3"-α-モノグルコシルナリンジンであり、3",4'-α-グルコシルナリンジンおよび4'-α-グルコシルナリンジンの合計量が、10重量%以下であり、該組成物の示すさわやかな苦味は同一重量%濃度のナリンジンと比較して増強され、飲食物または医薬品の風味を改善する添加物として、あるいは飲食物、医薬品または化粧品の品質保持のための添加物として、使用されることを特徴とする3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物。 3"-α-モノグルコシルナリンジンがナリンゲニン配糖体全量の60重量%以上であり、ナリンジンが10重量%〜30重量%、3",4'-α-グルコシルナリンジンおよび4'-α-グルコシルナリンジンの合計量が10重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物。 酸化防止、退色防止および水溶性に優れることを特徴とする、請求項1または2に記載の3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物。 澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られるα-グルコシルナリンジン配糖体含有溶液に、α-グルコシダーゼ活性またはグルコアミラーゼ活性を有する酵素を添加して作用させて3"-α-モノグルコシルナリンジンを得ることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法。 澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られるα-グルコシルナリンジン配糖体含有溶液に、α-グルコシダーゼ活性を有する酵素とグルコアミラーゼ活性を有する酵素とを添加して作用させて3"-α-モノグルコシルナリンジンを得ることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法。 澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られるα-グルコシルナリンジン配糖体含有溶液に、α-グルコシダーゼ活性を有する酵素、あるいはこのα-グルコシダーゼ活性を有する酵素とグルコアミラーゼ活性を有する酵素とを添加して作用させて得られる3"-α-モノグルコシルナリンジンを含有する酵素処理液を、多孔性吸着樹脂と接触させて3"-α-モノグルコシルナリンジンを含有する配糖体混合物を該樹脂に吸着させ、次いで、有機溶媒で3"-α-モノグルコシルナリンジンを溶出して3"-α-モノグルコシルナリンジンを得ることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法。 請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を、飲食物または医薬品に添加することを特徴とする飲食物または医薬品の風味改良方法。 請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を、色素あるいは色素含有物に添加することを特徴とする色素あるいは色素含有物の褪色防止方法。 請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を、飲食物、医薬品または化粧品に含有させることを特徴とする飲食物、医薬品または化粧品の酸化防止方法。