タイトル: | 特許公報(B2)_抗原賦活化法及びその抗原賦活剤 |
出願番号: | 2001160424 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 33/48 |
並松 茂樹 JP 3797418 特許公報(B2) 20060428 2001160424 20010529 抗原賦活化法及びその抗原賦活剤 並松 茂樹 501213734 渡邊 薫 100112874 並松 茂樹 20060719 G01N 33/48 20060101AFI20060629BHJP JPG01N33/48 P G01N33/48-33/98 CA,REGISTRY Experimental Parasitology,Vol.64(1987)p111−119 Eur.J.Immunol.,Vol.1,No.5(1971)p323−329 3 2002350430 20021204 6 20010613 2004016476 20040806 鐘尾 みや子 櫻井 仁 秋月 美紀子 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、組織切片の免疫染色の前処理に用いる抗原賦活剤及び抗原賦活法に関する。特に、本発明は、スライドグラスに貼付された組織及び細胞を免疫組織化学的に染色する際に、抗原性を露出(賦活化、アンマスキング、Retrieval)するために改良された方法、及びそのための試薬に関する。【0002】【従来の技術】現在、免疫染色のため用いられる加熱・加圧処理を併用する抗原賦活化に用いられる抗原賦活剤は、主にクエン酸塩緩衝液、トリス塩緩衝液加尿素溶液、EDTAの3つがある。また、抗原賦活化方法としては次のようなものがある。(1)pH6.0、濃度0.01mol、クエン酸緩衝液を使って電子レンジ、オートクレーブ、電気ポット、恒温槽、煮沸による加圧または加熱若しくは加温して賦活化する方法。(2)pH7.0、濃度0.01mol、クエン酸緩衝液をオートクレーブを使って加圧加熱して賦活化する方法。(3)pH9.5、濃度0.1mol、Tris−HCl緩衝液に5%の尿素を溶かした溶液を使って電子レンジ、オートクレーブ、電気ポット、恒温槽、煮沸で加圧または加熱若しくは加温して賦活化する方法。(4)pH8.0、濃度0.01mol、EDTA溶液を電子レンジ、オートクレーブ、電気ポット、恒温槽、煮沸で加圧または加熱若しくは加温して賦活化する方法。これらが現在用いられている主な技術である。【0003】以下、参考文献を引用する。1)Shi S.R., Key, M.E., "Kalra, K.L.: Antigen retrieval in formalin-fixed, paraffin-embedded tissues: An enhancement method for immunohistochemical staining based on microwave ovenheating of tissue sections. J Histochem Cytochem 39: 741-748, 19912)Shi SR. Cote RJ. Young L. Imam SA. TaylorCR.:Use of pH9.5 Tris‐HCl buffer containing 5% urea for antigen retrieval immunohistochemistry. Biotechnic & Histochemistry. 71(4): 190-6, 1996 Jul.3)Cattoretti, G., Becker, M.H.G., Key G., et al.: Monoclonal antibodies produced against recombinant parts of the Ki-67 molecule (MIB-1 to -3) stain proliferating cells in formalin fixed, paraffin-embedded, microwave processed tissues. Histochem J 24:611,1992 (Abstr)4)Shin, R W., Iwaki, T., Kitamono, T., et al.: Hydrated autoclave pretreatment enhances tau immunoreactivity in formalin-fixed normal and Alzheimer's disease brain tissues. Lab Invest64:693-702, 19915)濱川真治:抗CD4モノクロナール抗体を用いる酵素抗体法染色の加熱処理抗原賦活化の検討(病理と臨床 1999,17(11):1201-1205)6)濱川真治:EDTA液に代わる抗原賦活化液の検討(病理技術 1999.60:10-14)【0004】【発明が解決しようとする課題】 現状では、対象とする抗原によってこれらの賦活剤を使い分けているが、作業が煩雑である上、抗原の賦活化も不完全であり、また再現性が非常に乏しい。本発明の目的は、組織切片の免疫染色の前処理である抗原賦活化(アンマスキング)を再現よくかつ簡便に行うための方法及び試薬を提供することである。【0005】【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成すべく本発明は、CCAが組織切片の免疫染色の前処理である抗原賦活化(アンマスキング)に有効であることを発見し、賦活化に最も有効な濃度の溶液を発明したものである。CCAとは、体系名シトラコン酸無水物(2−メチルマレイン酸無水物)、慣用名メチル無水マレイン酸(Citraconic anhydride)であり、化学式は次の通りである。【0006】【化1】【0007】本発明は、従来の各賦活剤でのアンマスキングと同等、若しくはそれ以上の効果を全ての対象抗原に対してCCA一剤で行うものである。【0008】 具体的には、組織切片の免疫染色を行う上で、組織上の抗原の抗原性がアルデヒドでマスキングされた組織細胞を賦活化(アンマスキング)するための方法を提供する。この方法は、次の工程からなる。組織細胞の切片を貼付したスライドガラスをCCA溶液に浸し、電気ポット、オートクレーブ、電子レンジ、煮沸及び恒温槽の中から選択されるいずれかを用いて加熱を行い(オートクレーブの場合は加圧も含む)、賦活化するために十分な時間の間組み合わせる。CCA溶液は、0.0001%〜100%、pH1.0〜pH12.0のCCA水溶液であることが好適である。CCA溶液に対して、pH調節用の20%〜4%NaOH(水酸化ナトリウム)水溶液を加えることが好適である。【0009】【発明の実施の形態】 本発明は、一般に組織切片の免疫染色において有用である。組織切片の免疫染色手順を行う前に、アルデヒド固定でマスキングされた組織細胞内の抗原性を賦活化・アンマスキングし、抗原抗体反応が起こりやすくなるように改良された賦活法の工程を提供する。その結果、従来染色されにくかった抗原と抗体がより強く反応するようになる。【0010】 CCAを溶かす水は、不純物を含まない水でなければならない。またスライド上に残留物を残すおそれがある要素を含むべきではない。したがって、水は蒸留水または、好ましくは脱イオン水であることが望まれる。水は免疫染色の応用において不純物を含まない水溶液として有用であるが、CCAの濃度は約0.0001〜100%、好ましくは0.001%〜10%、より好ましくは0.01%〜1%、最も好ましくは0.05%である。【0011】 水素イオン濃度は、酸性から中性ないしはアルカリ性のpH、例えばpH1.0〜pH12、好ましくはpH約5.0〜pH10.0、より好ましくはp H約7.0〜8.0を有する。最も好ましくはpH7.4である。組織細胞のダメージを防ぐためpHは酸性、アルカリ性より生体に近い7.4が好ましい。pHを調節する塩は20%〜4%水酸化ナトリウム水溶液が最も好ましい。溶液の濃度範囲はここに論ずる範囲から変化しない。組織切片の免疫染色に対する予備処理として賦活化を行う。これはパラフィンに埋め込んだ、アルデヒド固定した組織細胞の切片に適用する。抗原を認識させるような、組織細胞の処理の操作を、抗原のアンマスキングまたはアンマスキングと呼ぶ。これを必要とする抗原は、実験的に決定され、そして文献に報告されている。CCA溶液は、一次抗体の適用の前に、そして好ましくは、内因性ペルオキシダーゼ処理の直後に適用する。【0012】切片を以下のごとく処理する。処理に用いる反応時間の範囲は、細胞組織及び抗原が破壊されない限り、アルデヒドによる架橋を崩壊させるために十分なものとする。必要な時間は、温度、CCA濃度、組織の厚さ及びアルデヒド中での時間の長さに依存する。適当な時間は容易に決定することができる。【0013】電気ポット(市販のもの)を用いる場合、80℃〜100℃において60分〜45分の加熱、好ましくは100℃において45分の加熱が、本発明の好適方法において有効である。【0014】オートクレーブを用いる場合、121℃において15分〜20分び加圧及び加熱、好ましくは121℃において20分の加圧及び加熱が、本発明の好適方法において有効である。【0015】電子レンジを用いる場合、98℃〜100℃において15分〜20分の加熱、好ましくは100℃において20分の加熱が、本発明の好適方法において有効である。【0016】ガスレンジ煮沸を用いる場合、95℃〜100℃において30分〜45分の加熱、好ましくは100℃において45分の加熱が、本発明の好適方法において有効である。【0017】恒温槽を用いる場合、60℃〜70℃において一夜(16時間)の加熱、好ましくは60℃において一夜の加熱が、本発明の好適方法において有効である。【0018】本発明の方法によれば、CCAが、アルデヒド(例えばホルマリン)固定の工程の間になされた損傷から、組織、細胞を救うことが発見された。アルデヒドの固定は、組織細胞の抗原をマスキングする架橋結合を生じ、これにより抗原が抗体を認識することを阻害する。その結果、抗原−抗体免疫染色が起こるのを妨げる。これは間違った陰性の判断を生ずることがあり、その結果、組織細胞の試料の評価に誤りを導くことがある。CCAは、アルデヒドの架橋結合を乱させ組織細胞のアミノ酸に修飾的役割を果たす。その結果、組織の抗原反応基のアミノ酸を抗体と反応するように標識する試薬に暴露する。非特異的染色は結果に誤解を引き起こし、これは結果的に診断を誤診に導くことがある。【0019】【実施例】1)組織片の切り出し、固定ヒト及び各種動物から得られた臓器を、例えばリンパ節を最大割面にて厚さ1〜2cmの組織塊に切り出す。2)切り出された組織塊を公知の如く、アルデヒド固定液、例えば20%ホルマリン溶液/緩衝液中で固定する。3)公知の如く、固定された組織塊をアルコールにて脱水する。4)公知の如く、脱水された組織塊をキシレンにて透徹する。5)公知の如く、透徹された組織塊を熱で溶解したパラフィン液中に浸漬し包埋する。6)公知の如く、パラフィン包埋した組織塊を冷却し固体にする。7)公知の如く、ミクロトームで2〜5ミクロンに薄切りにして剥離防止剤のついた、例えばシランをコーティングしたスライドに貼付する。8)公知の如く、薄切りしたパラフィンのついた切片をキシレンで脱パラフィンし組織を露出させ、アルコールを通して水洗いする。9)標本を付けたスライドグラスを、0.05%pH7.4のCCA溶液に浸けよく親和させる。例えば、CD4抗原の場合は、電気ポットにCCA溶液を満たし、切片を貼付したスライドグラスをかごごと入れ、強力沸騰を選んで45分間通電し行う。電気ポットは市販のものを利用できる。加熱賦活化を必要とする他の抗原も同様に行うことができる。また、切片が剥がれやすい場合や、高い温度処理に弱い組織の場合は、恒温槽において60℃で一夜(16時間)加熱処理する。10)処理の終わった後、組織切片の貼付したスライドグラスを取り出し、緩衝液中に浸す。11)公知の如く、酵素抗体染色法を行う。【0020】【発明の効果】従来の賦活剤に比べて本発明による賦活剤は、強力に賦活化すると共にアンマスキングされた抗原を安定化する結果、抗原抗体反応が鋭敏になり、使用する抗体の濃度を薄くすることができ、抗体の使用量を減らすことができる。試薬の使用量の削減化に加えて、賦活化抗原の安定化による高再現性により、失敗の回数が減ることでコストの削減になる。 組織切片の免疫染色の前処理に用いる、CCAを含有する抗原賦活剤。 前記組織切片は、アルデヒド固定後パラフィンに埋め込んだ組織細胞の切片であることを特徴とする請求項1記載の抗原賦活剤。 組織切片の免疫染色の前処理にCCAを含有する抗原賦活剤を用いる抗原賦活方法。