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タイトル:特許公報(B2)_アセチレンの製造装置及びその製造方法
出願番号:2001158438
年次:2006
IPC分類:C10H 21/00,C07C 7/11,C07C 7/148,C07C 7/17,C07C 11/24


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黒谷 伸一 JP 3829917 特許公報(B2) 20060721 2001158438 20010528 アセチレンの製造装置及びその製造方法 信越化学工業株式会社 000002060 小島 隆司 100079304 西川 裕子 100103595 黒谷 伸一 20061004 C10H 21/00 20060101AFI20060914BHJP C07C 7/11 20060101ALI20060914BHJP C07C 7/148 20060101ALI20060914BHJP C07C 7/17 20060101ALI20060914BHJP C07C 11/24 20060101ALI20060914BHJP JPC10H21/00C07C7/11C07C7/148C07C7/17C07C11/24 C10H 1/00-21/16 C07C 7/11 C07C 7/148 C07C 7/17 C07C 11/24 特開昭52−19602(JP,A) 特開平7−2704(JP,A) 特開昭52−39606(JP,A) 6 2002348580 20021204 12 20030522 山本 昌広 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、水とカルシウムカーバイドを原料にして湿式精製法によってアセチレンを製造するに際し、その精製装置から排出される有害物質を含む排水を装置外に排出させず、効率的かつ安全にアセチレンを製造することができるアセチレンの製造装置及び製造方法に関する。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】アセチレンは、溶解アセチレンとして圧縮酸素と併用することにより金属の溶接、切断、スカーフィング等の金属加工に用いられるほか、酢酸合成、合成樹脂、合成繊維、合成ゴムの原料及びレッペ反応による広範囲な有機化合物の合成や、合成アセチレンブラック、ガス増熱用燃料、金属アセチリドの原料等の用途に使用される基礎有機化学品製品の一つである。【0003】アセチレンの製造方法としては、水とカルシウムカーバイドを反応させて、消石灰とアセチレンを得るカーバイド法のほか、天然ガスを含む石油系炭化水素を原料とする蓄熱式熱分解法、部分燃焼法、完全燃焼法、電弧法等が既に知られている(13700の化学商品、化学工業日報社(2001))。【0004】このうち、カーバイド法は、原料となる水とカルシウムカーバイドが比較的安価に得られること、反応機構が単純で製造装置が安価に建設できること、及び製造条件が他の方法に比較して緩やかで高い温度を用いなくても済むこと等の利点があり、古典的な方法ながらアセチレンの製造方法として広く一般的に行われている。【0005】ここで、カーバイド法によるアセチレン発生器には、以下のような方式がある。(1) 投入式発生器水を入れたタンクの中にカルシウムカーバイドの塊を投入し、アセチレンを発生させる形式で、副生する消石灰と化学量論的に過剰分の水の混合物が発生し、泥乳状を呈する。(2) 乾式発生器投入式発生器より水の投入量を少なくして、粉末状の消石灰が排出されるように注水を加減する形式である。(3) 浸漬式発生器カルシウムカーバイドを入れた籠を水に浸す構造をもつものである。(4) 注水式発生器ガスを発生させるときに必要な水をカルシウムカーバイドに注ぐ構造をもつものである。【0006】以上のように、カーバイド法は、全て以下の反応式によって水(H2O)とカルシウムカーバイド(CaC2)を原料にアセチレン(C2H2)と消石灰(Ca(OH)2)を得る方法であって、カルシウムカーバイドの全量を効率よく消費しつくすためには、一方の原料である水を化学量論的に過剰に加えることが望ましいことは言うまでもない。CaC2+2H2O→C2H2+Ca(OH)2【0007】故に、消石灰と水の混合物は、いかなる形式によっても発生し、副成物として処理されるか、有価原料として売却される等の処分が必要となる。【0008】ここで、カーバイド法で発生させた粗アセチレンは、原料の一つであるカルシウムカーバイドに含まれる不純物に由来する燐化水素や硫化水素等の物質を含み、これらの物質はアセチレンガスの主用途である金属加工や有機合成の際に不都合を及ぼすため、これらを除去するための精製装置の併設が必要となる。【0009】この精製装置には、当該粗アセチレンガスを塩素水と接触させて燐化水素及び硫化水素を取り除く清浄塔と、清浄塔の次に配され、清浄塔を経たガスと水酸化ナトリウム水溶液を接触させて塩素を取り除く洗浄塔を組み合わせる湿式精製法のほか、濃硫酸、塩化第二鉄、塩化銅、塩化水銀等を配合して珪藻土に含浸させたものと接触させる方法や、銅を含む触媒と接触させる方法が知られている(溶解アセチレンの消費に関する基準、高圧ガス保安協会(1971))。【0010】湿式精製法は、装置構造が単純で安価に制作可能な上、動作の確実性もあり、従来から多用されてきた方法であるが、清浄塔、洗浄塔及びそれらの付帯機器としてのポンプ、タンク等からの排水が発生することが欠点となり、近年は上記の湿式精製法以外の方法に置き換わりつつある。また、清浄塔から排出される排水(以下、「清浄塔排水」という)には、粗アセチレンガス中の有機物と塩素が反応して副成する有機塩素化合物も混入することがあり、特にポリクロロジベンゾ−パラ−ジオキシン(Polychlorinated Dibenzo−p−Dioxins)、ポリクロロジベンゾフラン(Polychlorinated Dibenzofurans)、コプラナーポリクロロビフェニル(Coplanar−Polichlorinated Biphenyl)(以下、総称して「ダイオキシン類」という)が混入することが懸念されている。【0011】ダイオキシン類は、その有害性から、排水系に流出した場合、環境影響が甚大であり、かつ、排出にあたっては各種の規制が定められていることから(ダイオキシン類対策特別措置法、平成11年7月16日、法律第105号ほか)、このダイオキシン類の副成は、湿式精製法の欠点として挙げられるものである。【0012】この対策として、ダイオキシン類等の有害な有機塩素化合物を含む排水を処理し、無害化した後に排出することが求められるが、従来知られている処理方法では、焼却、熱分解、脱塩素化、活性炭吸着等の大規模な装置を必要とし、これらの複雑かつ高価な装置を付加することにより、カーバイド法と湿式精製法を組み合わせた簡便で安価であるアセチレン製造方法の利点を活かされなくなるため、ダイオキシン類の処理装置及び運転を簡便かつ安価にする方法が求められていた。【0013】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、清浄塔排水に含まれるダイオキシン類を効率よくかつ安価に無害化することが可能であるアセチレンの製造装置及びその製造方法を提供することを目的とする。【0014】【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明は上記目的を達成するため鋭意検討した結果、清浄塔排水を発生器に供給される水の一部又は全部として使用することにより、清浄塔排水に含まれるダイオキシン類を効率よくかつ安価に無害化させることができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。【0015】従って、本発明は、下記のアセチレン製造装置とその製造方法を提供する。(I)(i)原料として水とカルシウムカーバイドを投入し、アセチレンを発生させ、残査として消石灰と水の混合物を排出する形式のアセチレン発生器、(ii)この発生器の後段に、発生器で発生したガスを次亜塩素酸化合物水溶液と接触させて不純物を取り除く清浄塔を含むアセチレン製造装置において、上記清浄塔に接続されて清浄塔から排出される排水が流れる排水管を上記発生器に連結して、清浄塔から排出される排水を発生器に供給される水の一部又は全部として利用することを特徴とするアセチレン製造装置、(II)更に、清浄塔において処理したアセチレンガスをアルカリ水溶液と接触させる洗浄塔を有する(I)記載のアセチレン製造装置、(III)清浄塔から排出される排水中に含まれる物質が、ダイオキシン類、燐化合物、硫化物から選ばれる一種又はそれ以上の物質であることを特徴とする(I)又は(II)記載のアセチレン製造装置、(IV)清浄塔において使用する次亜塩素酸化合物が、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸カルシウムから選ばれる一種又はそれ以上の物質であることを特徴とする(I)乃至(III)のいずれか1記載のアセチレン製造装置。(V)(i)アセチレン発生器において水とカルシウムカーバイドを反応させる工程、(ii)発生したガスを次亜塩素酸化合物の水溶液に接触させる精製工程を含むアセチレンの製造方法において、上記精製工程から排出される排水を発生器で使用される水の全部又は一部として利用することを特徴とするアセチレンの製造方法。(VI)(ii)の精製工程の後に、更にアルカリ水溶液に接触させる精製工程を含む(V)記載のアセチレンの製造方法。【0016】本発明のアセチレン製造装置は、上述のようにその清浄塔から排出される排水が発生器に導かれ、原料の一つである水として再利用され、上記ダイオキシン類を含む排水が外部に排出されない構造をなしている。【0017】ここで、発生器からは、反応副成物たる消石灰と化学量論的に過剰に投入される水の残分が、混合した残査(以下、「消石灰スラリ」と称する)として排出される。本発明者は、本発明の構造をもつアセチレン発生器及び精製装置の操業に際し、各部の詳細かつ精密な物質収支を取得した結果、装置内でダイオキシン類が副成するとともに排水に混入することを確認し、それを発生器に導き、原料の一つである水として再利用することにより、この排水に含まれるダイオキシン類が発生器内で反応により無害化されるか消石灰スラリに吸着されて不溶出化されることにより、ダイオキシン類を含む排水が装置外部に排出されないことを発見したものである。【0018】すなわち、従来の湿式精製法においては、清浄塔排水は、公共用水域に排出されるに際し、残留する次亜塩素酸化合物や燐酸塩化合物等に対する処理として中和、沈降、濾過等を行うことが一般的であったが、近年、ダイオキシン類に関する知見が明らかとなり、ダイオキシン類が有害かつ難分解性の物質であることが知られるようになると、有機化合物であるアセチレンと次亜塩素酸化合物を接触させる湿式精製法においてもダイオキシン類が生成する疑いが持たれるに至った。【0019】この疑問に対する調査研究の結果、湿式精製法の清浄塔内部におけるダイオキシン類の副成を確認し、従来技術ではこのダイオキシン類を含む排水を安全に公共用水域に排出することが困難であることが判明した。従って、商業生産の継続のためには、ダイオキシン類をも処理できる処理装置を新たに設置するか、又はこの排水そのものを公共用水域に排出せず産業廃棄物として専門業者に処理委託するかのいずれかの選択を迫られることとなる。【0020】このうち、ダイオキシン類を無害化処理できる方法としては、凝集沈殿、清澄ろ過、膜ろ過、活性汚泥法、生物膜法、促進酸化法、触媒酸化法、超臨界水酸化法等の方法が知られている(公害防止の技術と法規ダイオキシン類編,公害防止の技術と法規編集委員会,丸善,(2000))。しかし、何れの方法も、ダイオキシン類の有害性、難分解性はもとより、処理目的物たるダイオキシン濃度がpg/l単位の極低濃度でしかないこと等から、装置が複雑化し設置費用が高価にならざるを得ない。また、その運転には高度な操業技術を要することは言うまでもない。【0021】一方、この排水そのものを産業廃棄物として専門業者に委託処理する方法は、新規の設備投資を伴わずとも商業生産が継続できる利点はあるが、委託相手先が上記ダイオキシン類の処理装置のほか、焼却、熱分解等の方法によって処理を行うので、発生元であるアセチレン製造側は、適正な運賃や処理実費を合算した高額な処理費用を支払わねばならない欠点がある。【0022】以上のように、従来知られている技術ではアセチレン湿式精製法で排出される排水を、安全で、しかも簡易かつ安価に処理できる装置及び方法は見い出されていなかった。【0023】これに対して、本発明のアセチレン製造装置は、清浄塔排水を発生器に供給して水として再利用することにより、この排水をなくすことができるだけでなく、排水中に含まれるダイオキシン類を発生器内部の反応又は消石灰スラリへの吸着により不溶出化させることで、無害化することができるものである。【0024】本発明は、その実施にあたり、上述の凝集沈殿、清澄ろ過、膜ろ過、活性汚泥法、生物膜法、促進酸化法、触媒酸化法、超臨界水酸化法等の方法のほか、燃焼、熱分解、脱塩素化、吸着、触媒分解、オゾン酸化等のダイオキシン類処理装置を導入する場合に比べ、コストが少なく済むことは無論のこと、その装置構成が既存施設の小改造で済むことから構造単純で運転管理も容易である。【0025】以下、本発明につき図面を参照して詳述する。図1は、本発明のアセチレン製造装置の一例を示すもので、図中10はアセチレン発生器を示し、このアセチレン発生器10に水(H2O)1とカルシウムカーバイド(CaC2)2を投入して接触混合せしめることにより、アセチレン(C2H2)と消石灰(Ca(OH)2)を得る反応を利用してアセチレンガスを得るものである。この反応は次式によって表される。CaC2+2H2O→C2H2+Ca(OH)2この際、カルシウムカーバイドの全量を効率よく消費させ、消費し尽くす目的で、反応原料としての水を化学量論的に過剰になるように投入量を設定するのが一般的である。【0026】本発明の特徴は、水の一部又は全部を後述する清浄塔排水で賄い、不足する分だけの水を供給するものである。【0027】このアセチレン発生器10の底部には、副生する消石灰スラリ3を排出するための配管12が設けられており、消石灰スラリ3を貯蔵し、処理先へ送り出すためのピット(図示せず)に接続されている。なお、図中14は、冷却用外套であり、この中を冷却材4が流れて、上記アセチレン発生器10内で適切な温度(10〜80℃)に保持するようになっている。アセチレン発生器10の頂部には、アセチレン発生器10において発生させた粗アセチレンが流れる粗アセチレン配管16の一端が連結され、この粗アセチレン配管16の他端は、ダストセパレータ18及び冷却塔20を順次介して清浄塔22に連結されており、上記アセチレン発生器10からの粗アセチレンは、ダストセパレータ18にて随伴するダストが分離除去された後、冷却塔20にて水5によって5〜40℃程度まで冷却された後、上記清浄塔22に導入され、この清浄塔22内にて上記粗アセチレンガスが次亜塩素酸化合物水溶液(清浄液6)と接触して、粗アセチレンガス中の燐化水素等の不純物が除去されるものである。【0028】また、上記清浄塔22は、配管24により洗浄塔26と接続されており、上記清浄塔22において清浄処理されたアセチレンガスは、次いで洗浄塔26内において洗浄液(アルカリ水溶液)7と接触し、塩素等の不純物が除去される。【0029】ここで、次亜塩素酸化合物としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸カルシウム等が挙げられ、これら次亜塩素酸化合物の該水溶液中における濃度は、有効塩素濃度として0.1〜0.2重量%とすることが好ましい。【0030】また、上記アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液が挙げられ、その濃度は、水酸基イオン濃度として4〜20重量%とすることが好ましい。なお、以上の工程は、公知の方法、条件に基づく常法によって行うことができる。【0031】このように、清浄塔22及び洗浄塔26を経て精製が終わったアセチレンガスは、精アセチレン8として次工程である貯蔵施設や使用先へと送気される。【0032】本装置においては、上記冷却塔20とアセチレン発生器10とが冷却塔排水管28によって連結され、粗アセチレンガスを冷却した後の排水が上記発生器10内に導入されてアセチレン製造用原料としての水として使用されると共に、上記清浄塔22とアセチレン発生器10とが清浄塔排水貯槽30を介して清浄塔排水管32によって連結され、これによって粗アセチレンガスを清浄処理した後の清浄塔排水(次亜塩素酸化合物水溶液排水)が上記清浄塔排水貯槽30に貯められた後、適宜量が上記アセチレン発生器10内に導入されて、原料水として利用されるようになっている。なお、本発明のアセチレン製造装置を含む設備における好ましい物質収支は以下の表1の通りである。【表1】ここで、上記清浄塔排水には、上述したように、粗アセチレン中に含まれる燐化水素由来の燐化合物を含むほか、次亜塩素酸化合物の過剰分やダイオキシン類等が含まれているものである。【0033】このうち、ダイオキシン類の挙動に着目した物質収支をみると、清浄液として予め製造された次亜塩素酸カルシウム水溶液に比して、清浄塔において使用され排出された使用後の清浄液(清浄塔排水)のダイオキシン類濃度が上昇し、清浄塔内部においてダイオキシン類が副生することが確認された。【0034】これに続けて、清浄塔排水を発生器において使用する水として再利用したところ、発生器から排出される消石灰スラリ3のダイオキシン類濃度は、清浄塔排水から発生器に供給された量に比して非常に低いものであることが確認された。発生器の他方の排出側は、上述のごとく精製装置に接続される粗アセチレンを送出する粗アセチレン配管16であり、ダイオキシン類の蒸気圧が2,3,7,8−四塩素化パラジオキシンで5.8×10-7Paと相当程度低く、気相部にはほとんど存在し得ないことから、粗アセチレンに同伴して発生器外に流出することは考えられない。【0035】従って、清浄塔排水中に存在し、発生器に供給されたダイオキシン類は、発生器内部で反応により他の物質に化学変化したか、又は消石灰スラリ中の固形物に強く吸着され、所定のダイオキシン類の分析方法によってしても溶出しない程度まで不溶出化したことが確認される。【0036】この発生器内の反応又は消石灰スラリへの吸着の詳細な原理や機構は、現在のところダイオキシン類の物理化学的挙動が解明され尽くしていないため不明であるが、このことは本発明が上述のカーバイド法によるアセチレン製造方法にとって、重要かつ深刻な課題である清浄塔排水中の有害物を排出させない方法として、有効であることを何ら否定するものではない。【0037】なお、本発明のアセチレン製造装置を用いてアセチレンを製造する場合、上述のような回分操作を例に述べているが、各原材料及び副資材を連続的に投入する連続操作を行うことも可能である。また、図1では説明の簡略のために主要なる構成機器及び配管のみを示しているが、実施例の装置において実際にはポンプ、ブロワ、貯槽、弁、補助配管、計器、制御機器等の補器類が付帯している。【0038】更にまた、上述のごとく、湿式精製法では精製塔のほか、発生器から発生するアセチレンを水と接触させて冷却する冷却塔や清浄塔の後段でアセチレンとアルカリ水溶液を接触させて精製を行う洗浄塔や、それらの付帯機器としてのポンプ、タンク等からの排水も発生するが、これらの排水を清浄塔排水と共に発生器に導き、原料である水として使用する事は、排水量の削減の方法として有効であり、本発明の効果を阻害するものではない。【0039】【実施例】以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。【0040】[実施例1]図1に示す構造のアセチレン製造装置を使用し、下記条件でアセチレンを発生させるとともに精製を実施した。【0041】(1) 装置概要発生器:横置き円筒型、冷却用外套付き、鋼製ダストセパレータ:竪置き円筒型、鋼製冷却塔:スプレー塔式、鋼製ゴムライニング清浄塔:磁性ラシヒリング充填塔式、鋼製ゴムライニング洗浄塔:磁性ラシヒリング充填塔式、鋼製ゴムライニング【0042】(2) 原料及び副資材の使用量及び供給量水投入量:280重量部/バッチ清浄塔排水投入量:280重量部/バッチ冷却塔排水:280重量部/バッチカルシウムカーバイド投入量:100重量部/バッチ冷却塔の水供給量:150重量部/バッチアセチレン発生量:30重量部/バッチ消石灰スラリ発生量(内、消石灰):920重量部/バッチ※ 回分操作の一回分を“バッチ”と表記する【0043】(3) 副資材の組成清浄液:次亜塩素酸カルシウムを水に溶解させ、有効塩素0.15重量%に調整し、塩酸によって水素イオン濃度指数7〜7.5としたもの洗浄液:水酸化ナトリウムを水に溶解させ、10〜20重量%に調整したもの【0044】(4) 運転方法所定量の水と清浄液を投入した発生器にカルシウムカーバイドを投入し、発生する粗アセチレンガスを冷却塔に導き、水と接触させて冷却する。冷却塔で冷却された粗アセチレンガスを清浄塔に導き、清浄液と接触させて燐化水素等の不純物を除去する。冷却塔及び清浄塔から排出される排水は貯槽に導き、次回の発生作業の前に水とともに発生器に投入する。清浄塔で処理したガスを更に必要に応じて洗浄塔に導き、洗浄液と接触させて清浄塔で混入する塩素を除去する。洗浄液は循環して使用し、所定の間隔で交換する。洗浄塔で処理したガスは精アセチレンガスとして貯蔵又は消費される。【0045】(5) 分析方法排水の分析方法は、JIS K 0312 工業用水・工場排水中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法を参考に分析した。固形物の分析方法は、ダイオキシン類に係る底質調査暫定マニュアル(環境庁水質保全局、1998年7月)及びJIS K 0311 排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法を参考に分析した。なお、ダイオキシン類の濃度には、各同族体及び異性体濃度を相対的な毒性の強さを表す毒性等価係数で換算して得られた数値を用い、この毒性等価係数にはWHO−TEF[WHO/ICPS,1997]を適用した。【0046】(6) 物質収支表2に物質収支を示す。【表2】表2に示すように、清浄液には次亜塩素酸カルシウムに由来するダイオキシン類が含まれているが、清浄塔から排出される排水に比べ少量であり、清浄塔内部での粗アセチレンガスと清浄液の接触によりダイオキシン類が副成することが明らかである。この排水は循環使用されず、次回の発生器への水供給の際に使用されるため、発生器へ供給される清浄塔からの排水は、毎回同程度のダイオキシン類を含む。発生器からの出口は気相部であるダストセパレータへ接続される配管のほか、スラリピットに消石灰スラリを排出する液相部の配管の2系統があるが、ダイオキシン類はその蒸気圧が低いため、気相部にはほとんど移行せず、ほぼ全量が液相部に含まれる。液相部の消石灰スラリを分析したところ、ダイオキシン類濃度が非常に低かった。【0047】(7) 結論清浄塔排水から相当濃度のダイオキシン類が検出されたことより、清浄塔内部におけるダイオキシン類の副成が確認された。また、発生器に相当程度のダイオキシン類が供給されたにも拘らず、消石灰スラリからは非常に低濃度のダイオキシン類が検出されたに留まったことより、発生器内部における反応においてダイオキシン類が無害化されるか、又は消石灰スラリ中に強く吸着されて上記分析方法では検出不可能となるほどに不溶出化することが確認された。一方、清浄塔排水を無処理で流出させるようなことは勿論、中和処理に代表されるようなダイオキシン類を処理できない処理方法で公共用水域等の一般環境に流出させた場合、その有害性や環境影響が甚大であることは明らかである。また、上述した通り、ダイオキシン類を処理するための従来技術による装置を導入する場合、その複雑で高価な装置の付加が、カーバイド法と湿式精製法の利点である簡便で安価なることを阻害するものであることは言うまでもない。【0048】【発明の効果】本発明によれば、カーバイド法によるアセチレンの製造において湿式精製を行う際、その精製装置から排出される有害物質を含む排水を設備の外部に排出することなく、安価かつ安全に処理することが可能である。【0049】【図面の簡単な説明】【図1】本発明のアセチレン製造装置を含む設備の概略を記した工程流れ図である。【符号の説明】1. 水2. カルシウムカーバイド3. 消石灰スラリ4. 冷却材5. 水6. 清浄液(次亜塩素酸化合物水溶液)7. 洗浄液(アルカリ水溶液)8. 精アセチレン10. アセチレン発生器12. 配管14. 冷却用外套16. 粗アセチレン配管18. ダストセパレータ20. 冷却塔22. 清浄塔24. 配管26. 洗浄塔28. 冷却塔排水管30. 清浄塔排水貯槽32. 清浄塔排水 (i)原料として水とカルシウムカーバイドを投入し、アセチレンを発生させ、残査として消石灰と水の混合物を排出する形式のアセチレン発生器、(ii)この発生器の後段に、発生器で発生したガスを次亜塩素酸化合物水溶液と接触させて不純物を取り除く清浄塔を含むアセチレン製造装置において、上記清浄塔に接続されて清浄塔から排出される排水が流れる排水管を上記発生器に連結して、清浄塔から排出される排水を発生器に供給される水の一部又は全部として利用することを特徴とするアセチレン製造装置。 更に、清浄塔において処理したアセチレンガスをアルカリ水溶液と接触させる洗浄塔を有する請求項1記載のアセチレン製造装置。 清浄塔から排出される排水中に含まれる物質が、ダイオキシン類、燐化合物、硫化物から選ばれる一種又はそれ以上の物質であることを特徴とする請求項1又は2記載のアセチレン製造装置。 清浄塔において使用する次亜塩素酸化合物が、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸カルシウムから選ばれる一種又はそれ以上の物質であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のアセチレン製造装置。 (i)アセチレン発生器において水とカルシウムカーバイドを反応させる工程、(ii)発生したガスを次亜塩素酸化合物の水溶液に接触させる精製工程を含むアセチレンの製造方法において、上記精製工程から排出される排水を発生器で使用される水の全部又は一部として利用することを特徴とするアセチレンの製造方法。 (ii)の精製工程の後に、更にアルカリ水溶液に接触させる精製工程を含む請求項5記載のアセチレンの製造方法。


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