生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_新規なエピスルフィド化合物
出願番号:2001152347
年次:2011
IPC分類:C07D 331/02,C08G 75/08


特許情報キャッシュ

藤城 光一 緒方 博 梶 正史 JP 4832665 特許公報(B2) 20110930 2001152347 20010522 新規なエピスルフィド化合物 新日鐵化学株式会社 000006644 成瀬 勝夫 100082739 中村 智廣 100087343 佐野 英一 100088203 藤城 光一 緒方 博 梶 正史 20111207 C07D 331/02 20060101AFI20111117BHJP C08G 75/08 20060101ALI20111117BHJP JPC07D331/02C08G75/08 C07D 331/,409/ C08G 56/, 75/ REGISTRY/CAPLUS(STN) 特開2000−129098(JP,A) 特開平07−196800(JP,A) 特開2002−128827(JP,A) 特開平07−138254(JP,A) 特開2001−131286(JP,A) 特開平11−092545(JP,A) 5 2002338564 20021127 11 20080121 深谷 良範 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規なエピスルフィド化合物、その製造方法、該化合物を含む熱硬化性樹脂組成物に関する。本発明によって提供される新規なエピスルフィド化合物、該化合物を含む熱硬化性樹脂組成物は、低温硬化性を有し、硬化速度が大きく、低吸水率、耐熱性及び電気特性に優れた硬化物を与えるので、半導体封止用樹脂、積層板用樹脂、成形材料及び複合材料、電気絶縁材料等として有用である。【0002】【従来の技術】エポキシ樹脂は、成形性、注型性、耐熱性、接着性、耐水性、機械的強度及び電気特性等に優れていることから、様々の分野で使用されている。特に電気・電子分野では、絶縁注型、積層材料、封止材料等として幅広く使用されている。しかし、近年の電気・電子部品の小型化、精密化、高性能化、回路基板の高密度実装の流れに対して、使用されるエポキシ樹脂にもプレッシャークッカーテスト(PCT)や恒温恒湿器で評価されるような高度な耐湿性及び高度の電気特性、例えば高周波での低誘電率(ε)、低誘電正接(tanδ)等が要求されるようになってきた。【0003】近年のエレクトロニクスの急発展に伴い、IC、LSI等の半導体素子は種々の分野で用いられ、低コスト、高集積化の流れは新しい様々な実装形態を産み出し、従来の金型を用いたトランスファー成形によるデュアルインラインパッケージに換わり、ハイブリッドIC、チップオンボード、テープキャリアパッケージ、プラスチックピングリッドアレイ等の金型なしで、ベアーチップのスポット封止によって形成する実装形態へ移行している。そして、これら液状エポキシ樹脂成形材料の硬化剤としては、ジシアンジアミド、ジヒドラジドアミンイミド化合物等のアミン硬化剤や、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイメック酸等の液状酸無水物が用いられている。しかしながら、前者については極性が強く、バイアス物性を低下させ、後者についてはPCT試験での加水分解性が大きいことや吸湿後の接着性劣化が大きいという欠点があった。【0004】特開平9-71580号公報及び特開平9-110979号公報には、新規なアルキルスルフィド型エピスルフィド化合物とその組成物並びに硬化物が提案されている。アミン触媒を用いたアルキルスルフィド型エピスルフィド化合物の硬化物は、100℃以上の軟化点、1.69以上の屈折率、35以上のアッベ数を持つ好適な光学材料となる。硬化剤として1級アミン又は酸無水物を硬化剤とした組成物の説明はあるが、1級アミンを用いた実施例では軟化点が100℃以下と低いという課題がある。【0005】また、特開平11-279173号公報にはビフェニル構造の新規なエピスルフィドが提案されているものの、融点が100〜120℃と高くハンドリングが困難であり、ポリアラルキルフェノールとの反応による硬化系であるため、エピスルフィド単独硬化物の特徴である低温硬化性及び硬化物の低吸水率及び電気特性の発揮については課題があった。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点を解決した、従来品にない硬化性を有し、耐湿性、屈折率、耐熱性のバランスに優れた硬化物を与えることができるエピスルフィド化合物とその製造方法、及び該エピスルフィド化合物を含む熱硬化性樹脂、それらを含む熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。【0007】【課題を解決するための手段】 本発明は、一般式(1)【化3】(式中、R1 〜R8 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜10の数値を示し、Z1 及びZ2 は硫黄又は酸素を示すが、少なくとも一方は硫黄である)で示されるエピスルフィド化合物に、硬化剤又は硬化触媒を配合したことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。【0008】また、本発明は、一般式(2)【化4】(式中、R1 〜R8 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜10の数値を示す)で示されるエポキシ化合物と、硫化剤を該エポキシ化合物のエポキシ基1当量に対し0.05〜2当量の範囲で反応させることを特徴とするエピスルフィド化合物又はこれを含む組成物の製造法である。ここで、硫化剤としては、チオシアン酸塩類又はチオ尿素類が好ましいものとして例示される。【0009】更に、本発明は、前記のエピスルフィド化合物とエポキシ化合物を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。この熱硬化性樹脂組成物に、更に硬化剤又は硬化触媒を配合すること、硬化剤又は硬化触媒がアミン類、イミダゾール類、4級アンモニウム塩類、有機ホスフィン類、ポリメルカプタン類及び酸無水物類、多価フェノール類及びジシアンジアミド類から選ばれる化合物であること、又はエピスルフィド化合物とエポキシ化合物の合計100重量部に対して、硬化剤又は硬化触媒を0.01〜200重量部の割合で配合することは、本発明の好ましい態様の一つである。【0010】【発明実施の形態】本発明のエピスルフィド化合物は、上記一般式(1)で示されるエピスルフィド化合物であり、a) Z1 及びZ2が共に硫黄であるエピスルフィド化合物、b) Z1が硫黄でZ2が酸素であるエピスルフィド化合物及びc) Z1が酸素でZ2が硫黄であるエピスルフィド化合物を包含する。また、式中nは繰り返し数を表す数であり、0〜10の数であるが、好ましくはnの平均値が0〜3の範囲にあることがエピスルフィド化合物の溶融粘度が低下するという面で好ましい。本発明のエピスルフィド化合物は、エポキシ化合物と類似の性質を有し、エポキシ化合物の硬化剤と同様な硬化剤で硬化することができる。【0011】上記エピスルフィド化合物の製造方法には制限はないが、対応するエポキシ化合物を原料として製造する方法が有利である。本発明のエピスルフィド化合物の製造方法は、1分子中にグリシジルエーテル基をもつ公知の一般式(2)で示される芳香族グリシジルエーテル化合物(エポキシ樹脂ともいう)と硫化剤を反応させる方法である。一般式(2)で示されるエポキシ化合物の合成方法は、下記の一般式(3)【化5】(式中、R1 〜R8は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で示されるジフェノール化合物、エピハロヒドリン及び塩基を使用する公知の反応方法で行うことにより得られる。【0012】本発明のエピスルフィド基を有する化合物は、一般式(2)で示されるエポキシ化合物と硫化剤とを反応させて、グリシジル基の一部又は全てをチウロニウム塩に変換して一般式(1)で示されるエピスルフィド化合物を製造する。硫化剤としては、チオシアン酸塩、チオ尿素、トリフェニルフォスフィンスルフィド、3-メチルベンゾチアゾール-2-チオン等のチオ化合物が挙げられる。好ましくはチオシアン酸塩又はチオ尿素である。一般式(2)で示されるエポキシ化合物と硫化剤とを反応させて、グリシジル基の一部又は全てをチウロニウム塩に変換して製造される。硫化剤は量論的にエポキシ基に対して等当量以上使用するが、生成物の純度、反応速度から考えて、幾分の過剰量の使用が好ましい。量論的にエポキシ基に対して等当量とは、エポキシ基1モルに対し、置換可能な硫黄を1個有する硫化剤1モルをいう。等当量であれば、量論的にはエポキシ基の全部がエピスルフィド基に変換される。しかし、現実にはエポキシ基の実質的全部をエピスルフィド基に変換するためには、幾分の過剰量の使用が好ましい。一方、グリシジルエーテル化合物中のグリシジル基の一部をエピチオプロピル基に変換する目的であれば、等モル以下で差し支えない。しかし、本発明のエピスルフィド化合物が主成分となるように製造するには、エポキシ基からエピスルフィド基への変換は50モル%以上が必要であるので、1/2倍モル以上のチオ化合物は必要である。本発明の製造法では、硫化剤の使用量が等モル未満である場合、a) Z1 及びZ2 が共にSである化合物、b) Z1がSであり、Z2 がOである化合物及びc)Z1がOであり、Z2 がSである化合物が生成する他、Z1 及びZ2 が共にOであるエポキシ化合物が残存した組成物となる場合がある。これから本発明のエピスルフィド化合物を分離してもよいし、また、これをそのまま本発明の熱硬化性樹脂組成物用材料として使用してもよい。更に、Z1 及びZ2 が共にOであるエポキシ化合物を少量含む組成物が生じる場合であっても、本発明のエピスルフィド化合物を含有する組成物の製造方法に含まれる他、本発明の熱硬化性樹脂組成物用のエピスルフィド化合物に含まれ、本発明の熱硬化性樹脂組成物用原料として有用である。【0013】エポキシ化合物と硫化剤の反応は、無溶媒あるいは溶媒中のいずれでもよいが、溶媒を使用するときは、チオ化合物あるいは芳香族グリシジルエーテル化合物を溶媒中に細かく分散して不均一系で行うか、又はいずれかが可溶のものを使用することが目的物の収率向上に望ましい。具体例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のヒドロキシエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられ、これらの併用使用、例えば水と芳香族炭化水素類と組み合わせて2相で行うことも可能で、この場合未反応のグリシジルエーテル化合物を同時に洗浄除去可能である。さらに、一般式(2)におけるnの値が0〜3であるエポキシ化合物をエピスルフィド化合物の原料に用いるのが、得られるエピスルフィド化合物の溶融粘度が低下するという面で好ましい。【0014】また、反応液中に酸を反応促進剤として添加することが好ましい。酸の具体例としては、硝酸、硫酸、塩酸、燐酸、酢酸、プロピオン酸等があげられ、これらを併用してもよい。添加量は、反応総液量に対して0.1〜20wt%である。反応温度は、通常20〜100℃で行われ、反応時間は通常20時間以下である。ここで得られる反応中間生成物は通常固体で得られるので、濾過別後、必要に応じて原料芳香族グリシジルエーテル化合物が溶解可能なトルエンなどの溶媒で洗浄して未反応原料化合物を除去し、更に水にて洗浄液のpHが3〜5になるまで洗浄する。得られた中間体を粉砕し、過剰の炭酸ナトリウム水溶液又は炭酸カリウム水溶液中に20〜70℃にて2〜20時間分散させる。得られた反応固形物を水洗、乾燥後、トルエン等の有機溶剤に溶解し、不溶の未反応塩を濾別などして、目的の芳香族エピスルフィド化合物溶液を得る。この溶液から溶剤を除去して芳香族エピスルフィド化合物を得ることができる。【0015】本発明のエピスルフィド化合物は、他の化合物を添加せず単独で使用することができるが、一般のエポキシ化合物、特に液状エポキシを配合して熱硬化性樹脂組成物とすることもできる。使用できる工ポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ、ビフェノール型のエポキシ、ナフタレン型のエポキシ、フェノールノボラックエポキシ、クレゾールノボラックエポキシ、アミノフェノールやジアミノジフェニルメタン等から得られるグリシジルアミン化合物、フタル酸やヘキサヒドロフタル酸から得られるグリシジルエステル化合物、1,4‐ブタンジオ一ルや1,6‐ヘキサンジオ一ル等より得られる脂肪族グリシジルエーテル、水添ビスフェノールA及び2重結合の過酢酸酸化により得られるエポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノールAやブロムフェノール等から得られるブロム化エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン等から得られる多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。【0016】本発明の熱硬化性樹脂組成物には、硬化剤を配合することが有利である。硬化剤としては、公知の酸無水物が使用でき、具体例としてはメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの脂環式酸無水物類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート無水物、グリセロールトリストリメリテート無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などの芳香族酸無水物類、無水ヘット酸、テトラブロモ無水フタル酸などのハロゲン系酸無水物類などを例示できる。本発明のエピスルフィド化合物は、他の化合物を添加せず単独で使用することかできるが、一般のエポキシ化合物(エポキシ樹脂を含む)、特に液状エポキシ化合物を配合して熱硬化性樹脂組成物とすることがよい。【0017】硬化触媒としては、3級アミン類、ホスフィン類、4級アンモニウム塩類、ルイス酸類等が使用される。具体例としては、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、トリ-n-ブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジンなどの3級アミン類、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1‐ベンジル‐2‐メチルイミダゾール等の各種イミダゾール類、1,8-ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4、3、0)ノネン-5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン-7等のアミジン類、あるいはこれらに代表される3級アミン系化合物並びにこれらと有機酸等との付加物、前記アミン類とハロゲン、ルイス酸、有機酸、鉱酸、四フッ化ホウ素酸等との4級アンモニウム塩、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン等のホスフィン類、3フッ化ホウ素、3フッ化ホウ素のエーテラート等に代表されるルイス酸類等である。これらの中で半導体装置の信頼性の観点からは、イミダゾール類、ホスフィン類の使用が好ましく、ポットライフの点からこれらのマイクロカプセル型潜在性硬化剤がより好ましい。また、光学材料とする場合は、硬化物の着色が少ないことから、イミダゾール類、4級アンモニウム塩類の使用が好ましく、4級アンモニウム塩の使用がより好ましい。【0018】本発明の熱硬化性樹脂組成物の好ましい配合組成は次のとおりである。本発明のエピスルフィド化合物の配合量をA、エポキシ化合物の配合量をB、硬化剤の配合量をC及び硬化触媒の配合量をDとする。*エポキシ化合物の配合しない場合:A/(A+B)=100wt%*エポキシ化合物を配合する場合:A/(A+B)=10〜90wt%、好ましくは20〜80wt%*(C+D)/(A+B)=0.01〜200wt%、好ましくは0.1〜20wt%本発明のエピスルフィド化合物中に、未反応の一般式(2)で示されるエポキシ化合物を少量、好ましくは40wt%以下、より好ましくは20wt%以下含む場合もありうるが、この場合の未反応のエポキシ化合物の量は、エポキシ化合物の配合量Bとして計算される。【0019】【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、部は重量部を示す。実施例1撹拌機、冷却器及び温度計を備えた反応容器にて以下の2段階反応を行った。a.チウロニウム硫酸塩合成水4000mlに機械攪拌しながら発熱に注意しつつ、少しずつ353g(7.06eq)の特級硫酸、次にチオ尿素537g(7.06eq)を加えた。次に、攪拌しながらトルエン2kgに溶かしたビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドのジグリシジルエーテル(新日鐵化学社製YSLV−50TE)1kg(5.88eq:エポキシ当量170g/eq)を少しづつ加えたのち、50℃にて6時間反応を行った。水層に生成した塩(白色固体、トルエン不溶)をガラスフィルターで濾過し、濾液のPHが3〜5程度になるまで機械攪拌水洗し、水分をスパチュラにてある程度まで除いた。塩中の未反応原料エポキシを除くためトルエン溶媒で粉砕機械攪拌洗浄し、洗浄の完了確認はTLCにて行い、塩はガラスフィルターで濾過した。【0020】b.ビフェニルスルフィドタイプエピスルフィド合成水6000mlによく粉砕した上述チウロニウム硫酸塩を加え、攪拌しながら少しずつ発泡に注意しつつ、Na2CO3748g(7.06eq、1価のアルカリとして算出)を溶かし、トルエン8000mlを加えて60℃にて6時間反応を行った。反応の進行に伴い、水層中の塩の減少と生成物によるトルエン層の白濁が観察された。未反応の塩を除くために5C濾紙にて濾過し、生成物はトルエン層に溶解しているため分液し、水層をトルエン溶媒にて2回抽出を行った。トルエン層は純水にて2回洗浄後に硫酸マグネシウムで乾燥を行い固形分は濾紙にて分離し、微量の未反応塩を除くためシリカゲルフラッシュカラムで精製濾過し溶媒は減圧除去し、白色固体のエピスルフィド化合物826gを得た。得られたエピスルフィド化合物が目的化合物であるかは、赤外吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル(NMR)により確認した。【0021】赤外吸収スペクトルを図1に示す。図1から914cm-1のエポキシ基が消失し、613cm-1のエピスルフィド基による吸収の増大を確認した。核磁気共鳴スペクトル(プロトン、CDCl3溶媒、TMS基準)から、エポキシ環のメチレンプロトン2.72〜2.75ppm及び2.87〜2.91ppm、メチンプロトン3.30〜3.36ppmが消失し、チイラン環由来のメチレンプロトン2.30〜2.33ppm及び2.59〜2.62ppm、メチンプロトン3.21〜3.29ppmの増大を確認した。また、示差熱量計(DSC)による融点(吸熱ピーク)は74℃であった。【0022】実施例2実施例1によって得られたエピスルフィド化合物100部を100℃にて溶融し脱泡後に、テトラブチルアンモニムクロライド(4級アンモニウム塩触媒)0.2部を添加し、撹拌混合して熱硬化性樹脂組成物とした。次に、上記組成物を型枠に流し込み、160℃1時間、オーブン中で硬化を行って硬化物を得た。この硬化物の物性値を表1に示す。【0023】実施例3実施例1によって得られたエピスルフィド化合物30部とエピコート828(油化シェル製ビスA型液状エポキシ)70部を100℃にて溶融して液状樹脂組成物とし、1,2-ジメチルイミダゾール5部と混合した。これを用いてDSCにて反応追跡したところエピスルフィドの添加により反応温度の低温化を確認し、またゲルタイムの短縮効果が図れた。エピスルフィドの使用割合が液状エポキシに対してこの割合よりも増加すると析出傾向になり、液状組成物の安定性が損なわれた。本発明のエピスルフィド化合物の配合量をA、液状エポキシ化合物の配合量をBとすると、析出を防げる最適な範囲はA/(A+B)=1〜30wt%である。【0024】比較例1ビフェニルスルフィドタイプエポキシYSLV−50TEの100部とテトラブチルアンモニムクロライドを0.2〜5部の範囲で100℃にて溶融混合し、160℃1時間、オーブンで加熱し硬化を試みたが良好な硬化物が得られなかった。【0025】比較例2前記ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドのジグリシジルエーテル100部と1,2-ジメチルイミダゾール5部を100℃にて溶融混合し、160℃1時間、オーブンで加熱したところ良好な硬化物が得られたものの、表1に示すように吸水率や電気特性は実施例2より劣る結果となった。【0026】比較例3エピコート828を100部と1,2-ジメチルジメチルイミダゾール5部を100℃にて溶融混合し、160℃1時間、オーブンで加熱したところ良好な硬化物が得られたものの、比較例2と同様に表1に示すように、吸水率や電気特性は実施例2より劣る結果となった。【0027】【表1】【0028】【発明の効果】本発明によれば、新規なビフェニルスルフィド型構造を有するエピスルフィドが得られ、この樹脂は融点が比較的に低く、良好な硬化性を示す。また、これを配合した硬化性樹脂組成物及びその硬化物は、光学特性、耐湿性及び耐熱性、電気特性のバランスが良く、ICチップをはじめとした半導体の封止や、銅張積層板材料及び電気絶縁材や複合材料等の電気電子材料分野をはじめとした幅広い用途において利用できる。【図面の簡単な説明】【図1】 エピスルフィド化合物の赤外吸収スペクトル 一般式(1)(式中、R1 〜R8 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜10の数値を示し、Z1 及びZ2 は硫黄又は酸素を示すが、少なくとも一方は硫黄である)で示されるエピスルフィド化合物に、硬化剤又は硬化触媒を配合したことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。 硬化剤又は硬化触媒がアミン類、イミダゾール類、4級アンモニウム塩類、有機ホスフィン類、ポリメルカプタン類及び酸無水物類、多価フェノール類及びジシアンジアミド類から選ばれる化合物である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。 更に、エポキシ化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。 エピスルフィド化合物とエポキシ化合物の合計100重量部に対して、硬化剤又は硬化触媒を0.01〜200重量部の割合で配合した請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。 請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。


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