タイトル: | 特許公報(B2)_高純度アルカンスルホン酸の製造方法 |
出願番号: | 2001141623 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 303/16,C07C 309/08 |
小林 宏充 清水 正晶 仁藤 浩久 JP 4824194 特許公報(B2) 20110916 2001141623 20010511 高純度アルカンスルホン酸の製造方法 株式会社ADEKA 000000387 曾我 道治 100110423 池谷 豊 100071629 古川 秀利 100084010 鈴木 憲七 100094695 梶並 順 100111648 小林 宏充 清水 正晶 仁藤 浩久 20111130 C07C 303/16 20060101AFI20111110BHJP C07C 309/08 20060101ALI20111110BHJP JPC07C303/16C07C309/08 C07C 303/00-303/46 C07C 309/00-309/89 特開平10−204052(JP,A) 特開昭51−101917(JP,A) 7 2002332273 20021122 9 20080407 小川 由美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アルキルメルカプタンと過酸化水素の反応によるアルカンスルホン酸の製造方法に関し、詳しくは高純度のアルカンスルホン酸を、安全に且つ低コストで製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】アルカンスルホン酸は種々の用途に用いられている物質であり、例えばヒドロキシアルカンスルホン酸、就中2−ヒドロキシエタンスルホン酸はイセチオン酸とも称され、そのアクリル酸やメタクリル酸とのエステルは、反応性乳化剤として使用されており、またその単独重合体やビニルモノマーとの共重合体は、凝集剤、分散剤、増粘剤、さらには難燃化剤等として使用されている。また長鎖アルキルカルボン酸とのエステルは、界面活性化剤としても優れた作用をもつことから、洗浄剤、化粧品の分野でも広く用いられている。さらに最近では、塩基性色素定着剤、接着剤、錫及びハンダメッキ電解浴のための添加剤として期待される等、その用途分野は広範囲に及んでいる。【0003】2−ヒドロキシエタンスルホン酸(イセチオン酸)を典型例とするアルカンスルホン酸類を製造する方法としては、従来から種々の方法が提案されている。例えば、BaumstarkらのChem.Ber.,1867,586頁には、エチレンをクロロスルホン酸の様なスルホン化剤で処理する方法や、エチレンオキシドを亜硫酸ガスで処理する方法が提案されている。【0004】しかしながら、これら方法によって製造されるアルカンスルホン酸は、有機塩素化物や硫酸、有機硫酸塩の様な好ましくない不純物を混入しており、界面活性剤や高分子添加剤向け等、多くの応用分野に不向きな製品であることが判明している。その為、不純物含有量の少ないアルカンスルホン酸類を製造すべく多くの研究がなされることとなった。【0005】例えば、Koenigらは、米国特許第2,892,852号で有機チオエーテル又はチオ酢酸エステルを、酢酸溶媒中で過酢酸と反応させることにより相当するスルホン酸を製造する方法を、またJornal Praktiche Chemie,(4),(2),vol.27,(1955),241−242頁では酸化剤としてオゾン又は過マンガン酸塩を用いる方法を提案している。しかしこれらの方法では酸化剤が高価であると共に到達収率が低い等の問題があり、工業的には殆ど利用されていない。【0006】また、Longleyらによる米国特許第4,499,028号や、伊藤らによる特開平2−32049号には、エチレンオキシドと重硫酸アルカリ塩とを公知の方法によって反応させて得られる純度の高いイセチオン酸アルカリ塩に、アルコールの様な水溶性溶媒中で無水塩化水素を接触させる方法が提案されている。しかしこの方法は腐食性のガスを使用すると共に、副生する無機塩を除去する手間が掛かる欠点を有しており、工業的に不利な方法である。【0007】また米国特許第2,727,920号には、メチルメルカプタンを電解酸化するか又は硝酸酸化する方法が提案されているが、前者は収率が低く、後者は加速度的に上昇する反応温度を制御しなければならず、工業的に不向きである。【0008】一方、過酸化水素は他の多くの酸化剤に比べ、安価に入手できること、安全に取り扱えること及び反応後には水しか副生しないこと等の好条件を有している為、上記の方法に加え、メルカプタンのスルホン化反応に利用する方法の検討も多く行なわれてきた。【0009】例えば、Showellらは、Journal of Organic Chemistry,vol.27,(1962),2853−2858頁で、有機過酸を生成するのに充分な量の有機酸を含有させた系に於いて過酸化水素を用いることによってメルカプタンを酸化し、スルホン酸を製造する方法を提案している。しかしこの方法で得られる生成物には残存カルボン酸及び過カルボン酸を共存している。【0010】また、アルカンスルホン酸、特にイセチオン酸は、各種溶剤への溶解度、沸点、極性等の固有の物性の為、こうした不純物を除去するのに用いられる溶媒抽出法や蒸留法といった汎用の分離技術を使用して精製することも困難である為、工業的に上記の様なInsitu過酸酸化を行なうのは非常に不利である。【0011】Deschrijverらは、フランス特許第2,616,786号で、モリブデンやタングステンの誘導体である触媒を使用し、アルキルメルカプタンを過酸化水素で酸化することによってアルカンスルホン酸を製造する方法を提案している。しかしこの方法では、共存させた触媒によって、製品が着色するという問題がでる他、後の応用分野への利用を妨げる結果となる。【0012】McGeeらは、米国特許第4,910,330号及び第4,987,250号に於いて、上記記載の問題点、例えば有機酸や触媒を混入させずにアルキルメルカプタンを過酸化水素で酸化してアルカンスルホン酸を製造する方法を提案している。【0013】McGeeらの方法は、製品を汚染する様な好ましくない添加剤を混入することなくアルカンスルホン酸を製造できるという点に於いて優れているが、激しい反応熱の除去を目的として、先ず濃過酸化水素水を水で希釈(例えば約30重量%まで)し、続いて減圧下でその希釈水(及び反応で副生する水)を留去することによって温度制御を行う等、手間の掛かる工程を要する。【0014】また原料と酸化剤の接触にあっては、反応に要する過酸化水素の一部を張り込んだものに、原料のアルキルメルカプタンに対して化学量論量により近似した極めて限られた範囲の過剰量の中で、常時H2O2が過剰になるように流量調整をすべく厳密な分析を行ってアルキルメルカプタンと過酸化水素を同時にフィードしなければならず、非常に反応工程が複雑である為、その結果得られる製品の収率及び純度共にばらつきが多い欠点を有している。【0015】更には、実質上60℃を越える反応温度で酸化を行っている為、硫酸や有機酸の様な好ましくない不純物の副生も多く、またアルキルメルカプタンに対し理論的に若干過剰量の過酸化水素を使用しているものの、上記の様な反応条件下において、アルキルメルカプタンの酸化を完結させる為には過酸化水素の使用量が事実上不足している為、ジスルフィドの様な反応中間体の残存もあり、製品を汚染しているのが現状である。この為、この方法で製造された製品は、一般的なアルカンスルホン酸、特にヒドロキシエタンスルホン酸の用途に使用するには、製品純度が不十分である。この様に、米国特許第4,910,330及び第4,987,250号に記載の方法は、大型設備による生産を行うには上記のような致命的な問題を抱えており、工業的には決して満足のいく方法ではなかった。【0016】【発明が解決しようとする課題】上記に鑑み、特開平10−204052号公報には、高濃度の過酸化水素にアルキルメルカプタンを、温度の制御のみの比較的簡素な操作で高純度のアルカンスルホン酸を得る方法が記載されている。しかし、この方法では、高濃度の過酸化水素を全量仕込むため不慮の発火、爆発、暴走反応などの危険性をもちあわせていた。また、上記公報に記載の発明においても、工業的に十分に高純度なアルカンスルホン酸を得るには陰イオン交換樹脂による精製処理を要し、低コストでアルカンスルホン酸を得るには問題があった。【0017】従って本発明の目的は、上記の問題点を解決し、工業的に十分に高純度のアルカンスルホン酸を、安全に、且つ低コストで製造する方法を提供することにある。【0018】【課題を解決するための手段】 本発明者らは上記に鑑みて鋭意研究の結果本発明に到達した。即ち、本発明は、一般式R−SH(式中、Rは1個又は複数の水酸基によって置換されていても良い、炭素原子数1〜7の直鎖又は分岐のアルキル基である)で表されるアルキルメルカプタン(A)と、過酸化水素とを反応させ、一般式R−SO3H(式中、Rは前記R−SHのRと同じ)で表されるアルカンスルホン酸(B)を製造する方法であって、 (1)アルカンスルホン酸(B)及び過酸化水素を含有する初期仕込液を用意し、 (2)該初期仕込液に、アルキルメルカプタン(A)及び50重量%以上の濃度の過酸化水素水を、アルキルメルカプタン(A)1モル当たり過酸化水素の量が3.10モル以上(初期仕込液中の過酸化水素及び初期仕込液に添加する過酸化水素の合計)となる量で添加し反応させ、 (3)次いで反応液を熟成させ、 (4)還流加熱し反応を完結させる、ことを含む高純度アルカンスルホン酸の製造方法であって、初期仕込液中の過酸化水素の濃度が10〜25重量%である、製造方法である。【0019】 好ましくは、初期仕込液中のアルカンスルホン酸(B)の濃度が、25重量%以上であること、30〜90℃の温度で反応液を熟成させることが好ましい。 また、アルキルメルカプタン(A)が、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジール、1−メルカプト−2−プロパノールあるいは2−メルカプト−1−プロパノールである場合、特に有効である。【0020】以下、本発明について更に詳細に説明する。本発明に使用する出発物質は、上記一般式R−SHで表されるアルキルメルカプタン(A)である。式中、Rは1個又は複数の水酸基によって置換されていても良い、炭素原子数1〜7の直鎖又は分岐のアルキル基である。Rとしては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、i−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、1−メチル−2−ヒドロキシエチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、ビス(ヒドロキシメチル)メチル基等を挙げることができる。【0021】これらの中でもRとして2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基を有するアルキルメルカプタンを出発物質とする場合、本発明の効果をより顕著に得ることができるので好ましい。【0022】本発明は、上記アルキルメルカプタン(A)と過酸化水素を反応させて、上記アルキルメルカプタンに対応する一般式R−SO3Hで表されるアルカンスルホン酸(B)を得るものである。【0023】(初期仕込液)本発明においては、アルキルメルカプタン(A)と過酸化水素の反応に当たり、まず生成物に相当するアルカンスルホン酸(B)及び過酸化水素を含有する初期仕込液を用意する。【0024】初期仕込み液に使用するアルカンスルホン酸(B)は、極力高純度のアルカンスルホン酸を使用することが好ましい。また、初期仕込み液に使用するアルカンスルホン酸(B)は、本発明における生成物に相当するので、例えば、バッチ式に繰り返してアルカンスルホン酸を製造する場合などは、前バッチで生成したアルカンスルホン酸を含有する反応液の一部を反応容器中に残存させて次バッチの初期仕込み液とすることもできる。【0025】さらに、連続的にアルカンスルホン酸(B)を製造する場合においても同様に、反応で生成したアルカンスルホン酸(B)を残存させ(アルカンスルホン酸が存在する状態で)、初期仕込み液として用いてもよい。初期仕込み液に使用するアルカンスルホン酸(B)は、収率及び低副生成物生成の点で、初期仕込み液中の濃度として25重量%以上、好ましくは30〜80重量%、さらに好ましくは35〜70重量%とすることが好ましい。【0026】アルキルメルカプタン(A)と反応させる過酸化水素は、該アルキルメルカプタン(A)1モル当たり3.10モル以上(過酸化水素が不足すると副生成物の生成率が増加してしまう)、好ましくは3.10〜3.50モル、さらに好ましくは3.12〜3.20モルの範囲とすると副生成物生成がより少なく実用的である。該過酸化水素は初期仕込み液に添加しておく分(以下、仕込み分という)と、アルカンスルホン酸(B)及び過酸化水素を含有する初期仕込液に添加する分(以下、添加分という)の2つに分割して使用するものである。【0027】 仕込み分の過酸化水素は、初期仕込み液中濃度として10〜25重量%、好ましくは10〜20重量%とすることが、高収率、低副生成物含量の点で好ましい。【0028】初期仕込み液中のアルカンスルホン酸(B)と過酸化水素の割合は、上記濃度範囲であれば特に限定されないが、例えば、過酸化水素:アルカンスルホン酸(B)の重量比が概ね1:1〜6であれば、高収率、低副生成物含量の点で好ましく使用することができる。【0029】(添加)本発明は、上記初期仕込み液に対し、上記アルキルメルカプタン(A)及び上記添加分の過酸化水素を添加する。過酸化水素水により過酸化水素を添加する。過酸化水素水の濃度は50重量%以上、好ましくは50〜90重量%であるが、安全性、入手のし易さから、工業的には60〜70重量%が最も好ましい。添加する過酸化水素の量は前述のように、仕込み分と添加分との合計がアルキルメルカプタン(A)1モル当たり3.10モル以上、好ましくは3.10〜3.50モル、さらに好ましくは3.12〜3.20モルの範囲とする。アルキルメルカプタン(A)の量は任意であり、アルキルメルカプタン(A)量に応じて添加分の過酸化水素を上記条件に従い用いればよいが、好ましくは、アルキルメルカプタン(A)重量:初期仕込み液重量=1:0.5〜4、より好ましくは1:1〜2であることが、反応収率、生産性、安全性の点で好ましい。【0030】アルキルメルカプタン(A)及び添加分の過酸化水素の添加方法について特に制限はないが、反応液中において化学量論的に常に過酸化水素が過剰な状態となるように添加することが、高収率、低副生成物含量の点で好ましい。【0031】また、アルキルメルカプタン(A)及び添加分の過酸化水素の添加速度は特に制限されないが、アルキルメルカプタン(A)と過酸化水素の反応は発熱反応であり添加速度が速いほど反応系の温度は上昇することになるので、反応装置の冷却能力に応じて、好ましくは反応系の温度が60℃を超えない温度に維持できる添加速度とすることが良い。換言すると、アルキルメルカプタン(A)及び添加分の過酸化水素の添加に当たり反応系の温度は60℃未満となるように制御することが、高収率、低副生成物含量の点で好ましい。【0032】アルキルメルカプタン(A)及び添加分の過酸化水素の添加を終えた反応液は、熟成を行い、次いで還流条件下で加熱し反応を完結させるものである。(熟成)反応液の熟成は、通常の熟成でよく、実質的に未反応の原料がなくなるように行えばよい。これは原料化学種やその量、温度などによって条件が異なるので、熟成の目的が達せられるように適宜条件を選択すればよいが、例えば30〜90℃、好ましくは40〜60℃の温度下に熟成を行うと効果的であり、この場合概ね1時間以上、好ましくは2時間以上熟成を行えば良い。【0033】(還流加熱)熟成を終えた反応液は、還流条件下で加熱し反応を完結させればよく、例えば100〜120℃で1〜7時間、好ましくは2〜4時間加熱すれば良い。これにより好ましくない残存する反応中間体を目的生成物へと転化し高純度の目的生成物を得ることができる。【0034】上記還流条件下での反応完結加熱処理の間、反応系内に空気、水蒸気、窒素ガス、アルゴンガスなどのような不活性ガスから選ばれた少なくとも一つの気体を吹き込んで(フラッシング)還流し、蒸気の一部を系外に留去することが好ましい。これは、より高濃度の目的生成物を得るために有効であり、特に反応液中に存在する低沸点の副生成物を排除することができるものである。【0035】本発明によって、以上のようにして高純度アルカンスルホン酸を製造することができるが、所望により若干含有されている硫酸やスルホ酢酸等を更に除去したい場合は、得られた高純度アルカンスルホン酸を陰イオン交換体、好ましくは弱塩基性イオン交換体と接触させることにより、これらを除去することも可能である。【0036】【実施例】以下に実施例を挙げ本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。〔実施例1〕(初期仕込み液)内部冷却器、攪拌装置、溶媒留去のための開閉コックの付いた還流冷却器及び二つの試料導入口を備えたガラス製反応装置に、あらかじめ用意した55重量%のイセチオン酸水溶液170gを仕込み、ここに60重量%の蒸留過酸化水素水57g(1.0モル)を添加して初期仕込み液とした。(初期仕込み液中の過酸化水素濃度は15重量%、過酸化水素(重量):イセチオン酸(重量)=1:2.7)【0037】(添加)初期仕込み液を攪拌しつつ、60重量%の蒸留過酸化水素水300g(5.3モル)を2ミリリットル/分の添加速度で、かつ、2−メルカプトエタノール156g(2モル)を0.9ミリリットル/分の添加速度で夫々別々の試料導入口より同時に添加した。この間、反応液温度は内部冷却器への冷却水量を調節して45℃を保持した。【0038】(熟成、還流加熱)次いで、50℃の温度で2時間保持して反応液を熟成させた後、還流温度で4時間加熱した。還流加熱の間、反応系内に窒素ガスを吹き込み蒸気の一部を系外に除去した。【0039】得られた生成物は、55重量%イセチオン酸水溶液であり、初期仕込み液に使用した分を除いて、生成したイセチオン酸の純分は247g(1.96モル)であり、収率は98%であった。尚、生成物の高純度イセチオン酸水溶液中には、硫酸0.83重量%、スルホ酢酸0.06重量%以外の副生成物は確認されなかった。【0040】〔実施例2〕(初期仕込み液)内部冷却器、攪拌装置、溶媒留去のための開閉コックの付いた還流冷却器及び二つの試料導入口を備えたガラス製反応装置に、あらかじめ用意した61重量%のスルホプロパンジオール水溶液170gを仕込み、ここに60重量%の蒸留過酸化水素水を113g(2.0モル)を添加して初期仕込み液とした。(初期仕込み液中の過酸化水素濃度は25重量%、過酸化水素(重量):スルホプロパンジオール(重量)=1:1.5)【0041】(添加)初期仕込み液を攪拌しつつ、60重量%の蒸留過酸化水素水244g(4.3モル)を2ミリリットル/分の添加速度で、かつ、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール216g(2モル)を0.9ミリリットル/分の添加速度で夫々別々の試料導入口より同時に添加した。この間、反応液温度は内部冷却器への冷却水量を調節して55℃を保持した。【0042】(熟成、還流加熱)次いで、75℃の温度で2時間保持して反応液を熟成させた後、還流温度で4時間加熱した。還流加熱の間、反応系内に窒素ガスを吹き込み蒸気の一部を系外に除去した。【0043】得られた生成物は、61重量%スルホプロパンジオール水溶液であり、初期仕込み液に使用した分を除いて、生成したスルホプロパンジオールの純分は305g(1.96モル)であり、収率は98%であった。尚、生成物の高純度スルホプロパンジオール水溶液中には、硫酸0.70重量%、1−ヒドロキシ−2−スルホプロピオン酸0.14重量%以外の副生成物は確認されなかった。【0044】〔実施例3〕(初期仕込み液)内部冷却器、攪拌装置、溶媒留去のための開閉コックの付いた還流冷却器及び二つの試料導入口を備えたガラス製反応装置に、あらかじめ用意した58重量%の2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸水溶液170gを仕込み、ここに60重量%の蒸留過酸化水素水を85g(1.5モル)を添加して初期仕込み液とした。(初期仕込み液中の過酸化水素濃度は20重量%、過酸化水素(重量):2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(重量)=1:1.9)【0045】(添加)初期仕込み液を攪拌しつつ、60重量%の蒸留過酸化水素水272g(4.8モル)を2ミリリットル/分の添加速度で、かつ、1−メルカプト−2−プロパノール184g(2モル)を0.9ミリリットル/分の添加速度で夫々別々の試料導入口より同時に添加した。この間、反応液温度は内部冷却器への冷却水量を調節して55℃を保持した。【0046】(熟成、還流加熱)次いで、85℃の温度で2時間保持して反応液を熟成させた後、還流温度で4時間加熱した。還流加熱の間、反応系内に窒素ガスを吹き込み蒸気の一部を系外に除去した。【0047】得られた生成物は、58重量%2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸水溶液であり、初期仕込み液に使用した分を除いて、生成した2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸の純分は274g(1.96モル)であり、収率は98%であった。尚、生成物の高純度2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸水溶液中には、硫酸0.83重量%以外の副生成物は確認されなかった。【0048】〔実施例4〕(初期仕込み液)内部冷却器、攪拌装置、溶媒留去のための開閉コックの付いた還流冷却器及び二つの試料導入口を備えたガラス製反応装置に、あらかじめ用意した58重量%の1−ヒドロキシ−2−プロパンスルホン酸水溶液170gを仕込み、ここに60重量%の蒸留過酸化水素水を85g(1.5モル)を添加して初期仕込み液とした。(初期仕込み液中の過酸化水素濃度は20重量%、過酸化水素(重量):1−ヒドロキシ−2−プロパンスルホン酸(重量)=1:1.9)【0049】(添加)初期仕込み液を攪拌しつつ、60重量%の蒸留過酸化水素水272g(4.8モル)を2ミリリットル/分の添加速度で、かつ、2−メルカプト−1−プロパノール184g(2モル)を0.9ミリリットル/分の添加速度で夫々別々の試料導入口より同時に添加した。この間、反応液温度は内部冷却器への冷却水量を調節して55℃を保持した。【0050】(熟成、還流加熱)次いで、85℃の温度で2時間保持して反応液を熟成させた後、還流温度で4時間加熱した。還流加熱の間、反応系内に窒素ガスを吹き込み蒸気の一部を系外に除去した。【0051】得られた生成物は、58重量%1−ヒドロキシ−2−プロパンスルホン酸水溶液であり、初期仕込み液に使用した分を除いて、生成した1−ヒドロキシ−2−プロパンスルホン酸の純分は275g(1.96モル)であり、収率は98%であった。尚、生成物の高純度1−ヒドロキシ−2−プロパンスルホン酸水溶液中には、硫酸0.79重量%、スルホプロピオン酸0.06重量%以外の副生成物は確認されなかった。【0052】【発明の効果】本発明によれば、工業的に十分に高純度のアルカンスルホン酸を、安全に且つ低コストで製造することができる。 一般式R−SH(式中、Rは1個又は複数の水酸基によって置換されていても良い、炭素原子数1〜7の直鎖又は分岐のアルキル基である)で表されるアルキルメルカプタン(A)と、過酸化水素とを反応させ、一般式R−SO3H(式中、Rは前記R−SHのRと同じ)で表されるアルカンスルホン酸(B)を製造する方法であって、 (1)アルカンスルホン酸(B)及び過酸化水素を含有する初期仕込液を用意し、 (2)該初期仕込液に、アルキルメルカプタン(A)及び50重量%以上の濃度の過酸化水素水を、アルキルメルカプタン(A)1モル当たり過酸化水素の量が3.10モル以上(初期仕込液中の過酸化水素及び初期仕込液に添加する過酸化水素の合計)となる量で添加し反応させ、 (3)次いで反応液を熟成させ、 (4)還流加熱し反応を完結させる、ことを含む、高純度アルカンスルホン酸の製造方法であって、初期仕込液中の過酸化水素の濃度が10〜25重量%である、該製造方法。 初期仕込液中のアルカンスルホン酸(B)の濃度が、25重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の高純度アルカンスルホン酸の製造方法。 30〜90℃の温度で反応液を熟成させることを特徴とする請求項1または2に記載の高純度アルカンスルホン酸の製造方法。 アルキルメルカプタン(A)が、2−メルカプトエタノールである請求項1〜3のいずれかに記載の高純度アルカンスルホン酸の製造方法。 アルキルメルカプタン(A)が、3−メルカプト−1,2−プロパンジールである請求項1〜3のいずれかに記載の高純度アルカンスルホン酸の製造方法。 アルキルメルカプタン(A)が、1−メルカプト−2−プロパノールである請求項1〜3のいずれかに記載の高純度アルカンスルホン酸の製造方法。 アルキルメルカプタン(A)が、2−メルカプト−1−プロパノールである請求項1〜3のいずれかに記載の高純度アルカンスルホン酸の製造方法。