生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_コラーゲン分解促進剤
出願番号:2001126159
年次:2011
IPC分類:A61K 38/43,A61P 21/00


特許情報キャッシュ

佐熊 誠 宮内 聡 藤井 教尚 JP 4778629 特許公報(B2) 20110708 2001126159 20010424 コラーゲン分解促進剤 生化学工業株式会社 000195524 遠山 勉 100089244 松倉 秀実 100090516 川口 嘉之 100100549 佐熊 誠 宮内 聡 藤井 教尚 20110921 A61K 38/43 20060101AFI20110901BHJP A61P 21/00 20060101ALI20110901BHJP JPA61K37/48A61P21/00 A61K 38/43 A61K 9/00 A61P 21/00 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed 特開平11−236336(JP,A) 特開2002−322089(JP,A) 2 2002322087 20021108 10 20080311 安藤 公祐 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はコンドロイチナーゼの新規な用途に関する。より詳細には、コンドロイチナーゼを含有するコラゲナーゼ産生促進剤に関する。【0002】【従来の技術】コンドロイチナーゼは、コンドロイチン硫酸(以下、「CS」ともいう)の分解を触媒する酵素である。コンドロイチナーゼには種々の種類が知られており、例えばコンドロイチナーゼABC(chondroitinase ABC)〔EC 4.2.2.4〕は、哺乳動物軟骨由来のコンドロイチン硫酸A、鮫軟骨由来のコンドロイチン硫酸C及び哺乳動物皮膚由来のコンドロイチン硫酸B(デルマタン硫酸)の分解を強力に触媒し、ヒアルロン酸(以下「HA」ともいう)の分解を弱く触媒する酵素である。【0003】一方、椎間板ヘルニアは、椎間板内の髄核の突出等に起因する疾患であり、突出した髄核が付近の神経を刺激するために、腰痛等の症状が現れる。近年、コンドロイチナーゼを椎間板に投与して突出した髄核を融解して椎間板ヘルニアを治療する方法が試みられている〔米国特許4696816号明細書、Clinical Orthopaedics, 253,301-308(1990)〕。【0004】Spine(1996年)第21巻、第2405−2411頁には、コンドロイチナーゼABCを椎間板に注入して髄核を融解し、融解前後の組織の乾燥重量を比較したところ、「融解処理による組織の減少量」が「組織に含有されるCS等の重量」を上回るという現象が観察され、タンパク質分解の可能性が示唆されることが記載されている。ところがカゼインの分解活性によりタンパク質分解を評価したところ、これを裏付ける結果は得られず、結局その原因は不明のままである旨が記載されている。【0005】また、Spine(1997年)第22巻、第1065−1073頁には、椎間板の変性やヘルニアに、マトリックスメタロプロテイナーゼが関与している旨が記載されている。さらに、コラゲナーゼはマトリックスメタロプロテイナーゼの一種であることが知られている。【0006】しかしコンドロイチナーゼがコラゲナーゼの産生を促進することについては知られていない。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、コンドロイチナーゼ、特にコンドロイチナーゼABCの新規な用途、具体的にはコラゲナーゼ産生促進剤を提供することを課題とする。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、コンドロイチナーゼを含有するコラゲナーゼ産生促進剤(以下、「本発明促進剤」ともいう)、及び本発明促進剤からなる医薬(以下、「本発明医薬」ともいう)を提供するに至った。【0009】すなわち本発明は、以下のとおりである。(1)コンドロイチナーゼを含有する、コラゲナーゼ産生促進剤。(2)コンドロイチナーゼが、コンドロイチナーゼABCである、(1)に記載の促進剤。(3)(1)又は(2)に記載の促進剤からなる医薬。(4)椎間板又は脊髄硬膜外腔投与用の(3)に記載の医薬。【0010】【発明の実施の形態】<1>本発明促進剤に用いるコンドロイチナーゼ本発明促進剤に用いることができるコンドロイチナーゼは、CSを分解する酵素である限りにおいて特に限定されるものではない。コンドロイチナーゼとして、具体的には、コンドロイチナーゼABC(Proteus vulgaris由来;特開平6−153947号公報、T. Yamagata, H. Saito, O. Habuchi, S. Suzuki,J. Biol. Chem., 243, 1523(1968)、S. Suzuki, H. Saito, T. Yamagata, K. Anno, N. Seno, Y. Kawai, T. Furuhashi, J. Biol. Chem., 243, 1543(1968))、コンドロイチナーゼAC(Flavobacterium heparinum由来;T. Yamagata, H. Saito, O. Habuchi, S. Suzuki, J. Biol. Chem., 243, 1523(1968))、コンドロイチナーゼACII(Arthrobacter aurescens由来;K. Hiyama, S. Okada, J. Biol.Chem.,250, 1824 (1975)、K. Hiyama, S. Okada, J. Biochem.(Tokyo), 80, 1201(1976))、コンドロイチナーゼACIII(Flavobacterium sp. Hp102由来;宮園博文、菊池博、吉田圭一、森川清志、徳安清親、生化学、61、1023(1989))、コンドロイチナーゼB(Flavobacterium heparinum由来;Y. M. Michelacci, C. P.Dietrich, Biochem. Biophys. Res. Commun.,56, 973(1974)、Y. M. Michelacci, C. P. Dietrich, Biochem. J., 151, 121(1975)、前山賢一、多和田明、上野暁子、吉田圭一、生化学、57, 1189(1985))、コンドロイチナーゼC(Flavobacterium sp. Hp102由来;宮園博文、菊池博、吉田圭一、森川清志、徳安清親、生化学、61、1023(1989))等が知られており、これらのコンドロイチナーゼのいずれをも用いることができる。また、特開平9−168384号公報に記載されているヒト由来のコンドロイチン硫酸分解酵素や、コンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼ(chondroitin sulfate ABC exolyase; A. Hamai, N. Hashimoto, H. Mochizuki, F. Kato, Y. Makiguchi, K. Horie and S. Suzuki, J. Biol. Chem.,272, 9123-9130(1997))等のコンドロイチナーゼも、本発明促進剤に用いることができる。【0011】これらの各種コンドロイチナーゼはあくまで例示であり、本発明促進剤で用いることができるコンドロイチナーゼはこれらに限定されるものではない。なお、本発明促進剤において用いるコンドロイチナーゼは、1種類のコンドロイチナーゼであってもよく、あるいは複数種のコンドロイチナーゼの組み合わせであってもよく、本明細書において単に「コンドロイチナーゼ」といった場合には、これら両方の意味を包含する。【0012】本発明促進剤に用いるコンドロイチナーゼとして、コンドロイチナーゼABCを用いることが極めて好ましい。また、コンドロイチナーゼABCの中でも、特に、Proteus vulgaris由来のコンドロイチナーゼABCを用いることが好ましい。【0013】ここでコンドロイチナーゼの由来とは、当該コンドロイチナーゼをコードする遺伝子を元来保有する生物を起源とすることをいう。従って、例えばProteus vulgaris由来のコンドロイチナーゼABCとは、Proteus vulgarisが元来保有する遺伝子によって産生されるコンドロイチナーゼABCを意味する。よって、Proteus vulgaris由来のコンドロイチナーゼABCには、Proteus vulgaris自体により産生されるものはもちろん、Proteus vulgarisから取得されたコンドロイチナーゼABC遺伝子を利用して他の細胞で産生させたもの等も含まれる。【0014】本発明促進剤に用いるコンドロイチナーゼの純度は特に限定されず、使用の目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明促進剤を後述の「本発明医薬」とする場合には、用いるコンドロイチナーゼは、医薬として使用できる程度に精製され、医薬として混入が許されない物質を実質的に含まない酵素であることが好ましい。【0015】例えば本発明促進剤に用いるコンドロイチナーゼは、300U/mg蛋白以上の比活性を有する精製されたコンドロイチナーゼであることが好ましく、300U/mg蛋白以上の比活性を有し、エンドトキシンを実質的に含まず、核酸、プロテアーゼ含量が検出限界以下である精製されたコンドロイチナーゼがより好ましく、このような特性をもつ精製されたコンドロイチナーゼABCが特に好ましい。【0016】なお、本明細書においてコンドロイチナーゼの1U(単位)は、至適pH及び至適温度付近の条件において、CSから1分間に1マイクロモルの反応生成物を遊離させる酵素量である。念のため、以下に各種コンドロイチナーゼの1Uの定義を示す。【0017】コンドロイチナーゼABCの1Uとは、pH8.0、37℃で1分間にコンドロイチン 6-硫酸から1マイクロモルの不飽和二糖を遊離させる酵素量と定義される。またコンドロイチナーゼAC(Flavobacterium heparinum由来)の1Uとは、pH7.3、37℃で1分間にコンドロイチン 6-硫酸から1マイクロモルの不飽和二糖を遊離させる酵素量と定義される。【0018】また、コンドロイチナーゼACII(Arthrobacter aurescens由来)の1Uとは、pH6.0、37℃で1分間にコンドロイチン 6-硫酸から1マイクロモルの不飽和二糖を遊離させる酵素量と定義される。【0019】また、コンドロイチナーゼB(Flavobacterium heparinum由来)の1Uとは、pH8.0、30℃で1分間にデルマタン硫酸から1マイクロモルのヘキスロン酸残基に相当するUV吸収物質を遊離させる酵素量と定義される。【0020】例えば、比活性が300U/mg蛋白以上であるコンドロイチナーゼABCを使用することにより、本発明促進剤を本発明医薬(後述)として生体内に投与した際にも目的部位のプロテオグリカン(CSやHAを含む)を効率的に分解することができ、かつ、コラゲナーゼ産生を効果的に促進することができる。このようなコンドロイチナーゼABCは、例えば、特開平6−153947号公報に記載の方法で得ることができる。【0021】<2>本発明促進剤の形態等本発明促進剤は、上記のようなコンドロイチナーゼを、コラゲナーゼの産生を促進するために有効な量含有する。ここで「コラゲナーゼの産生を促進するために有効な量」とは、コラゲナーゼの産生の促進を検知可能な程度とすることができる量を意味する。この量は、用いるコンドロイチナーゼの種類、コラゲナーゼの産生を企図する細胞や組織等(以下、単に「組織等」という)の種類や状態、組織等が由来する哺乳動物の種類や症状等によっても異なるものであり、当業者が適宜決定することができるが、例えばコンドロイチナーゼとしてコンドロイチナーゼABCを用い、健常なウサギから摘出した椎間板組織においてコラゲナーゼの産生を促進せしめる場合には、当該組織を0.01〜1000U/ml程度の酵素溶液に接触させることによって、コラゲナーゼの産生を促進することができる。【0022】例えば、1回の投与に用いられる本発明促進剤中のコンドロイチナーゼABCの含量としては5U以上が例示され、5〜400U程度がより好ましく、5〜200U程度がさらに好ましい。【0023】本発明促進剤は、コンドロイチナーゼ以外に、さらに医薬的あるいは試薬的に許容される担体を含有していてもよい。このような担体としては、慣用の賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤等、通常医薬あるいは試薬に用いられる成分が例示され、使用の目的や、本発明促進剤の形態(剤型等)に応じて適宜選択することができる。例えば本発明促進剤は、溶液状態、凍結状態、乾燥形態のいずれの形態であってもよいが、保存安定性等の面では乾燥形態、特に凍結乾燥形態が好ましい。【0024】本発明促進剤中に含有させることができる担体としては、特開平11−236336号公報に記載されているものを採用することが好ましい。本発明促進剤の調製は、コンドロイチナーゼと所望の担体を用い、製剤学的に公知の方法により行なうことができる。【0025】<3>本発明促進剤の使用方法等本発明促進剤は、組織等のコラゲナーゼの産生促進を目的として使用することができる。かかる使用目的が意図される限りにおいて、本発明促進剤の具体的な用途は限定されず、試薬用途・医薬用途のいずれにも使用することができる。また具体的な用途に応じて、使用方法等を適宜決定することができる。【0026】試薬用途として使用する場合には、例えば、生体から分離された組織等に本発明促進剤を接触させ、コラゲナーゼの産生を促進せしめることができる。また医薬用途として使用する場合については、後述の「本発明医薬」において詳細に説明する。【0027】<4>本発明医薬本発明医薬は本発明促進剤からなる医薬であり、本発明促進剤を医薬用途に応用したものである。本発明医薬は、本発明促進剤の医薬用途への使用が意図される限りにおいて、その具体的な使用方法等も限定されず、具体的な目的に応じて適宜決定することができる。【0028】本明細書中で「医薬」とは、医療に用いられる薬品を意味する。従って、医療に用いられる薬品である限りにおいては、名称の如何にかかわらず、ここでいう「医薬」に包含される。【0029】本発明医薬は、コラゲナーゼの産生の促進が望まれる組織等に投与することにより、本発明医薬に含有されるコンドロイチナーゼの作用が発揮され、当該組織及び周辺組織のコラゲナーゼの産生を促進することができる。【0030】本発明医薬は、ヒトを含む哺乳類全般に投与することができるが、ヒトに投与されるものであることが特に好ましい。本発明医薬が投与される組織等は、コラゲナーゼの産生促進を所望する組織である限りにおいて特に限定されないが、産生されたコラゲナーゼの作用によるコラーゲン等のタンパク質分解が望まれる組織であることが好ましく、産生されたコラゲナーゼの作用によるタンパク質分解に加えてコンドロイチナーゼ本来の作用によるCS及び/又はHAの分解が望まれる組織であることが好ましい。【0031】このような組織等として好ましいのは、椎間板ヘルニアに罹患した哺乳動物の椎間板組織、あるいは硬膜外遊走型椎間板ヘルニアや経靭帯性脱出型椎間板ヘルニア等の、突出や遊離等によって髄核が脊髄硬膜外に存在するタイプの椎間板ヘルニアに罹患した哺乳動物の脊髄硬膜外腔である。従って本発明医薬は、椎間板又は脊髄硬膜外腔投与用とすることが好ましい。【0032】本発明医薬をこのような椎間板組織等に投与することにより、コンドロイチナーゼ本来の作用によって髄核中のCSやHAが分解され、髄核中のCS量、HA量及びこれらによって保持されていた水分量が減少し、その結果として髄核自体の体積を減ずることができるのみならず、コンドロイチナーゼによって産生が促進されたコラゲナーゼの作用によって髄核自体やその周辺部位のコラーゲン等のタンパク質の分解を促進することができることから、髄核自体の体積をさらに減ずることができ、加えて髄核が納まるスペースをも増加させることができる。この結果、突出した髄核による神経への刺激を速やかに除去することができ、腰痛等の椎間板ヘルニアの諸症状を効果的に改善することができる。尚、後記実施例に示した結果では、コンドロイチナーゼABCの投与によるコラゲナーゼ産生促進は、髄核組織よりも線維輪組織において顕著であったが、髄核にコンドロイチナーゼを投与した場合であっても、コンドロイチナーゼは線維輪にも拡散し、線維輪内でコラゲナーゼ産生が促進され、この産生されたコラゲナーゼが髄核にも拡散して、髄核の融解が促進されると考えられる。【0033】従って本発明医薬は、椎間板ヘルニアの処置(症状の改善、悪化防止、治療等)のために用いられるものであることが好ましい。また本発明医薬はコラゲナーゼの産生を促進することから、線維症等のコラーゲン増加に起因する疾患の処置にも用いることができる。【0034】このような本発明医薬は、コンドロイチナーゼを含有する注射用製剤として主に使用される。本発明医薬を溶液状態の注射用製剤として提供する場合には、溶液状態の本発明医薬を、アンプル、バイアル、注射用シリンジ等の適当な容器に充填・密封し、そのまま流通させあるいは保存し、注射剤として投与に供することができる。また凍結状態の注射用製剤として提供する場合には、アンプル、バイアル、注射用シリンジ等の適当な容器中に凍結状態の本発明医薬を密封状態で保持させて、流通させあるいは保存し、投与前に融解させて注射剤として投与に供することができる。また、本発明医薬を乾燥形態の注射用製剤として提供する場合には、アンプル、バイアル、注射用シリンジ等の適当な容器中に乾燥状態の本発明医薬を密封状態で保持させて、流通させあるいは保存し、投与前に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液又はソルビトール水溶液等で溶解し、注射剤として投与に供することができる。乾燥形態の本発明医薬は、溶解用の溶媒とセットで提供してもよい。このような種々の形態の注射用製剤の中でも、乾燥形態、特に凍結乾燥形態のものが好ましい。すなわち、本発明医薬は注射用凍結乾燥製剤の形態であることが特に好ましい。【0035】本発明医薬の投与量は、用いるコンドロイチナーゼの種類、投与される哺乳動物の種類や症状等、投与対象となる組織等の種類やその状態等によって個別に設定されるべきものであり、特に限定されないが、例えばコンドロイチナーゼとしてコンドロイチナーゼABCを用い、成人の椎間板ヘルニア症患者の椎間板1箇所に投与する場合、1回あたりコンドロイチナーゼABCの量として概ね0.1〜200U程度、好ましくは0.5〜100U程度、特に好ましくは0.5〜 50U程度を投与することができる。【0036】【実施例】以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかしながら、これらにより本発明の技術的範囲が限定されるべきものではない。【0037】以下の実施例では、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の一種であるゼラチナーゼ(MMP-2、MMP-9)及びコラゲナーゼの産生に対するコンドロイチナーゼABC(C−ABC)の効果を、インビトロで検討した。【0038】C−ABCがインビボで椎間板内注射されると、椎間板細胞は、周囲のマトリックス内でのCSの分解という変化によって活性化されることが知られている(Clin Orthop, 253, 301-308(1990))。以下の実施例では、培養組織中の細胞を活性化してよりインビボに近い細胞状態を再現するための刺激剤として、IL−1を用いた。【0039】<1>椎間板組織の培養(1)組織の調製新鮮な線維輪及び髄核を、6匹の雌の日本白ウサギ(3.8〜4.4Kg)の腰椎椎間板(L1−L2及びL5−L6間)から切開して得た。各ウサギから得た椎間板組織は、異なる群に割り当てた。各群それぞれ6つの線維輪又は髄核を用いた。25mg/mlのアスコルビン酸及び10%のウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地(日水製薬、東京、日本)を、完全培地として用いた。各組織を生理的食塩水で洗浄し、完全培地(線維輪:2ml、髄核:1ml)で満たされたカルチャープレート(線維輪:12ウェルプレート、髄核:24ウェルプレート)の各ウェルに入れた。【0040】(2)培養手順用意された組織は、37℃で5% CO2ガス中で、培地を毎日交換する4日間の予備培養及び3日間の連続培養でからなる7日間の培養を行った。高純度精製医薬品グレードのC−ABC(生化学工業株式会社製;比活性380U/mg蛋白、エンドトキシンを実質的に含まず、核酸、プロテアーゼ含量は検出限界以下)、及び市販の組み換えヒトインターロイキン−1b(IL−1b)(R&Dシステムズ、ミネアポリス、ミネソタ、米国)を、培地への添加物として使用した。各組織は、1日目は完全培地のみで培養した。以下に示すC−ABC群及びIL−1+ABC群においては、2〜4日目に20U/mlの濃度でC−ABCを添加した。【0041】続いて、各組織をリン酸緩衝生理食塩水及び上記血清フリー培地ですすいだ。培地を各々、何も含まない(コントロール群)、20U/ml濃度のC−ABCを含む(C−ABC群)、10ng/ml濃度のIL−1を含む(IL−1群)、又は10ng/ml濃度のIL−1及び20U/ml濃度のC−ABCを含む(IL−1+C−ABC群)無血清培地に交換した。さらに、各組織を72時間培養した後、培地及び組織を採収した。【0042】<2>採収した組織の乾燥重量の統計学的分析採収した組織を凍結乾燥し、乾燥重量を測定した。ダンネットの多重比較検定(Dunnett's multiple comparison test)を用いて、コントロール群及び他の群との間の統計学的分析を行った。【0043】結果を表1に示す。各群間で統計学的な有意差はなかった。したがって、コラゲナーゼの値を乾燥重量によって標準化して差し支えない。【0044】【表1】【0045】<3>マトリックスメタロプロテイナーゼの検出(1)培地中のゼラチナーゼの検出ゼラチナーゼは、ザイモグラフィー法を用いて、以下のように検出した。培地の一部を用いて、0.1%のゼラチンを含むポリアクリルアミドゲルを用いて非還元条件下でSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。電気泳動後、ゲルを2.5%のTriton−X 100で洗浄し、CaCl2及びZnCl2を含むTris−HCl緩衝液(pH 7.5)中で22時間、37℃でインキュベートした。その後、ゲルをクマシーブリリアントブルーR−250で染色し、ゼラチン分解性のバンドを可視化した。スタンダードとして、ヒトのproMMP−2(MMP−2の前駆体)及びproMMP−9(MMP−9の前駆体)(ノヴァス モレキュラー、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)を、同じゲルの1レーンに添加した。【0046】結果を図1に示す。線維輪については、いずれの群においても同程度proMMP−2(66kDa)の産生が見られた。IL−1は高分子量のゼラチン分解性の産物(107kDa、上部矢印)を誘導した(IL−1群)。しかしながら、C−ABCではその誘導は見られず、低分子量のゼラチン分解性の産物(56kDa、下部矢印)を誘導した(IL−1+C−ABC群)。高分子量及び低分子量のゼラチン分解性のバンドが何であるかは不明であるが、後者はMMP−1及びMMP−3の可能性がある(Dev Biol, 147, 425-439(1991); J Clin Invest, 92, 179-185(1993))。髄核においては、C−ABCは単独でproMMP−2を若干誘導した(C−ABC群)。しかしながら、IL−1は、C−ABCの存在下又は非存在下で、proMMP−2産生を減少させた(IL−1群及びIL−1+C−ABC群)。proMMP−9(88kDa)は、両組織のどの群でも若干検出されるだけであった。【0047】還元条件下で98又は100kDaに泳動するC−ABCに相当するバンド(J Biol Chem, 272, 9123-9130(1997); Carbohydr Res, 255, 145-163(1994))は、C−ABC群及びIL−1+C−ABC群において、94kDaの分子量の位置に観察された。これらのゼラチン分解活性の産生は、各グループの他の3つの組織から得られた培地を用いた場合にも、再現性よく観察された。【0048】また、線維輪におけるC−ABCを伴うIL−1刺激下でのゼラチン分解プロファイルは、IL−1単独によるIL−1刺激下でのプロファイルとは明らかに異なる。したがって、C−ABC処理は、線維輪のマトリックスにおける浸透性に関連したIL−1効果を単に促進するものではないと考えられる。【0049】(2)培地中のコラゲナーゼ活性の検定椎間板によるMMP産生に対するC−ABCの効果をさらに検討するために、培地中のコラゲナーゼ活性を検定した。【0050】コラゲナーゼの検定は、アイソトープ標識基質の代わりにフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識I型コラーゲン(ヤガイ、山形、日本)を用いて、以前に報告されている方法に準じて行った(Anal. Biochem., 99, 340-345(1979))。FITC標識コラーゲンを、潜在的な酵素前駆体の活性化処理を行った培地、及びCaCl2とZnCl2を含むTris−HCl緩衝液(pH 7.5)で20時間、37℃でインキュベートした。反応を、o−フェナンスロリンで停止し、反応液の上清の蛍光強度をマイクロプレートフルオロメーター(Fluoroskan II、ラボシステムズ、ヘルシンキ、フィンランド)を用い、96−ブラックウェルマイクロプレートで測定した。培地中のコラゲナーゼ活性は、市販のMMP−1(ヤガイ)を用いて作成した標準曲線から検量した。【0051】結果を図2に示す。なお、図2中の*は、IL−1群に対してp<0.05(スチューデントのt−検定)で有意差があることを示す。線維輪において、C−ABC及びIL−1は、それぞれコラゲナーゼ産生を若干増加させた(IL−1群及びC−ABC群)。さらに、IL−1+C−ABC群は、コラゲナーゼ産生を顕著に増加させ、それはIL−1群よりも有意に高かった。髄核においては、各群におけるコラゲナーゼ産生のプロファイルは、proMMP−2(図1)のプロファイルに似た傾向を示した。すなわち、IL−1は、C−ABCの存在下又は非存在下でコラゲナーゼ産生を減少させた(IL−1群及びIL−1+C−ABC群)。【0052】(3)結果以上のように、C−ABCがMMPの一種であるコラゲナーゼの産生を有意に促進させることが明らかにされた。産生されたMMPにより、C−ABCが、コラーゲンを間接的に分解することが示唆された。【0053】【発明の効果】本発明により、コラゲナーゼ産生促進剤が提供される。本発明のコラゲナーゼ産生促進剤は、試薬として、又は椎間板若しくは脊髄硬膜外腔投与用の医薬、具体的には例えば椎間板ヘルニアの処置用の医薬として有用である。【図面の簡単な説明】【図1】 ウサギ椎間板の線維輪組織(上)及び髄核組織(下)の培養後の培地のザイモグラフィー分析を示す図である。【図2】 線維輪及び髄核による培地中へのコラゲナーゼ産生を示す図である。 コンドロイチナーゼABCを含有する、線維輪組織におけるコラーゲン分解促進剤。 コンドロイチナーゼABC及びインターロイキン−1を含有する、線維輪組織におけるコラーゲン分解促進剤。


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