生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ソフトコンタクトレンズ用点眼剤
出願番号:2001121619
年次:2012
IPC分類:A61K 31/133,A61L 2/18,A61P 27/02,G02C 13/00,A61L 2/16


特許情報キャッシュ

小高 明人 石井 玲子 JP 4905616 特許公報(B2) 20120120 2001121619 20010419 ソフトコンタクトレンズ用点眼剤 ライオン株式会社 000006769 小島 隆司 100079304 西川 裕子 100103595 小高 明人 石井 玲子 20120328 A61K 31/133 20060101AFI20120308BHJP A61L 2/18 20060101ALI20120308BHJP A61P 27/02 20060101ALI20120308BHJP G02C 13/00 20060101ALI20120308BHJP A61L 2/16 20060101ALN20120308BHJP JPA61K31/133A61L2/18A61P27/02G02C13/00A61L2/16 Z A61K 31/133 A61L 2/18 A61P 27/02 G02C 13/00 A61L 2/16 CAplus(STN) 特開平10−203960(JP,A) 特開平10−072342(JP,A) 特開2002−244089(JP,A) 6 2002316926 20021031 9 20080201 瀬下 浩一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、コンタクトレンズ使用者に適用する眼科用組成物(以下、コンタクトレンズ用眼科用組成物)に関し、更に詳しくは、トロメタモールを配合することにより、カチオン系界面活性剤の防腐剤を配合しなくても、眼に安全でしかも優れた防腐効果を奏することができるコンタクトレンズ用眼科用組成物及びコンタクトレンズ用点眼剤、コンタクトレンズ装着液又はコンタクトレンズ用洗眼剤の適用時の眼刺激性の緩和方法に関するものである。【0002】【従来の技術】コンタクトレンズ用点眼剤などの眼科用組成物に配合する防腐剤の条件としては、(1)有効性(細菌,真菌に対する殺菌作用を有する)、(2)安定性(薬物や添加剤との配合変化を起こさない、防腐剤自身が長期保存に対して安定である)、(3)安全性(眼組織に刺激や障害を与えない、コンタクトレンズの物性への影響がない)の高いことが望まれる。【0003】日本における市販点眼剤では、防腐力の高い塩化ベンザルコニウムを代表とするカチオン系界面活性剤を用いているものが61.8%(塩化ベンザルコニウムが60.5%、グルコン酸クロルヘキシジン1.3%)と半数以上を占めている(日本コンタクトレンズ学会誌35 p238〜241,1993年)。【0004】しかし、これらの防腐剤を配合した点眼剤を頻回点眼したり、角膜に障害がある人が点眼すると、角膜障害を助長するなどの副作用を生じることがあり(眼科31 p43〜48 1989年、眼科33 p533〜538 1991年)、安全性が懸念される。【0005】特にコンタクトレンズ装着者は、角膜が傷つきやすい状態にあり、防腐剤による影響を受けやすい。しかも、防腐剤は角膜とコンタクトレンズの間に長時間滞留するため、より眼刺激が生じやすくなる。また、ソフトコンタクトレンズの場合では、防腐剤がレンズに吸着しやすいため刺激がさらに助長されるだけでなく、レンズの曇りなどの劣化を生じる。【0006】カチオン系防腐剤をシクロデキストリンに包接させることによりソフトコンタクトレンズへの吸着を抑制する方法が開示されているが(特開平08−175974号公報)、シクロデキストリンの包接作用により、成分の種類によっては、効果への影響が懸念される。【0007】また、ノニオン界面活性剤等の吸着抑制剤と併用する方法では、防腐力が低下するなどの問題があった。【0008】従って、コンタクトレンズ適用者にも好適で、しかも防腐力に優れた眼科用組成物が求められていた。【0009】更に、点眼剤、コンタクトレンズ装着液、洗眼剤には、通常、薬物が配合されているが、薬物の種類によっては、点眼時やコンタクトレンズ装着時に眼刺激が感じられる場合があり、特にソフトコンタクトレンズ装着時に点眼したり、ソフトコンタクトレンズを装着する場合には、その刺激性が顕著に感じられる場合があり、このような薬物による眼刺激性の緩和が望まれていた。【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、コンタクトレンズ装用者への刺激が少なく、レンズへの影響が抑制され、しかも優れた防腐効果を持つコンタクトレンズ用眼科用組成物及びコンタクトレンズを装着する際、コンタクトレンズ装着時に点眼又ははずした後に洗眼する際に、コンタクトレンズ用眼科用組成物に含有された薬物による眼刺激性を緩和する眼刺激の緩和方法を提供することを目的とする。【0011】【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、トロメタモールを含有する水溶液が、優れた防腐力を維持し、更に、コンタクトレンズ装用時に使用しても、優れた安全性を持つことを見い出した。更に驚くべきことに、トロメタモールが薬物の眼刺激性を緩和することを見い出し、本発明を完成するに至った。【0012】 即ち、本発明は、トロメタモールと、エデト酸ナトリウム及び/又はジブチルヒドロキシトルエンと、ホウ酸又はその塩とを含有し、カチオン系防腐剤を含有しない、ソフトコンタクトレンズ用点眼剤を提供する。また、トロメタモールを防腐剤として含有することを特徴とするコンタクトレンズ用眼科用組成物を提供する。【0013】以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物は、トロメタモールを含有するものである。ここで、本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物において、トロメタモールの含有量は、特に制限されるものではないが、通常、組成物全量に対して、好ましくは0.1〜5質量/容量%(以下、w/v%)、より好ましくは0.5〜5w/v%、更に好ましくは1〜5w/v%である。この範囲で本発明の目的とする防腐力が良好で、しかも眼刺激がない組成物を容易に得ることができる。【0014】本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物は、トロメタモールを含有することによって、カチオン系界面活性剤の防腐剤を配合しなくても優れた防腐力を維持することができるので、カチオン系殺菌剤の配合量を好ましくは0〜0.001w/v%、より好ましくは0〜0.0005w/v%、特に好ましくはカチオン系殺菌剤を無配合とすることが可能である。ここで、上記カチオン系殺菌剤として、より具体的には、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。【0015】更に、本発明において、コンタクトレンズ用点眼剤、コンタクトレンズ装着液又はコンタクトレンズ用洗眼剤として使用されるコンタクトレンズ用眼科用組成物に薬物が含有されている場合、トロメタモールの併用によって、上記薬物の眼刺激性を緩和することもできる。このような薬物として、より具体的には、例えば、充血除去剤(塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリン等)、消炎・収斂剤(メチル硫酸ネオスチグミン、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸亜鉛、塩化リゾチーム等)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イソチペンジル、マレイン酸クロルフェニラミン等)、水溶性ビタミン類(活性型ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12)、脂溶性ビタミン類(ビタミンA類(例えば酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール)、ビタミンE類(酢酸トコフェロール(例えば、酢酸d−α−トコフェロール))、アミノ酸類(L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等)、サルファ剤、殺菌剤(イオウ、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等)、局所麻酔剤(リドカイン、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン等)を適宜配合することができる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。本発明の場合、これらの中でも、特にε−アミノカプロン酸、マレイン酸クロルフェニラミン等が含有されている場合に、特に眼刺激性を緩和するという点で効果的である。【0016】本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物における上記薬物の含有量は、特に制限されるものではないが、通常、組成物全量に対して、0.001〜10w/v%、好ましくは0.003〜5w/v%、より好ましくは0.005〜4w/v%であると好適である。含有量が少なすぎると、十分な薬効が得られない場合があり、多すぎると薬物による眼刺激性を十分に緩和することが困難となる場合がある。また、同様の理由により、トロメタモールに対する含有割合は、トロメタモール:薬物(質量比)=5000:1〜1:20、好ましくは1000:1〜1:10、より好ましくは500:1〜1:8であると、好適である。【0017】本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分の他に、点眼剤、装着液、洗眼剤などの眼科用組成物の調製に通常使用する全ての緩衝剤、溶解補助剤、等張化剤、安定化剤、粘稠剤、キレート剤、pH調整剤、清涼化剤等の各種の添加剤などを通常使用量において配合することができる。【0018】緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸一水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、各種アミノ酸類(イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム等)又はそれらの組み合わせが挙げられる。特にホウ酸又はその塩はトロメタモールの防腐効力を高めるので好ましい。【0019】溶解補助剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(p=60)硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(p=20)ソルビタンモノオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステルなどの界面活性剤、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。好ましくは多価アルコールを用いる。等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。【0020】安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、シクロデキストリン、亜硫酸塩、クエン酸又はその塩、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。特にエデト酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエンはトロメタモールの防腐効力を高めるので好ましく、エデト酸ナトリウムであれば、組成中に0.001〜0.5w/v%配合すると好適であり、より好ましくは0.01〜0.2w/v%の範囲である。また、ジブチルヒドロキシトルエンであれば通常、0.001〜0.1w/v%配合すると好適であり、より好ましくは0.001〜0.01w/v%の範囲である。【0021】粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。【0022】pH調整剤としては、例えば、塩酸、クエン酸又はその塩、ホウ酸又その塩、リン酸又はその塩、酢酸又はその塩、酒石酸又はその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、クロロブタノール、エタノール等が挙げられる。【0023】本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物のpHは、眼科的に許容される範囲であれば特に制限はなく、通常pH5〜9の範囲であり、好ましくはpH6〜8.5、より好ましくはpH6.5〜8である。【0024】本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物の浸透圧は、通常の方法により、0.5〜5圧比に調整すると好適であり、0.8〜2圧比に調整するのがより好ましい。【0025】本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物は、コンタクトレンズ用点眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用洗眼剤として使用される。特に、ソフトコンタクトレンズ用点眼剤、ソフトコンタクトレンズ装着液、ソフトコンタクトレンズ用洗眼剤等のソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物として有用である。【0026】本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物は、その調製方法が特に制限されるものではなく、点眼剤、コンタクトレンズ装着液、洗眼剤の常法に準じて調製することができる。【0027】本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物の投与量、使用量は、眼科的に許容される範囲であれば特に制限はないが、例えば点眼剤として用いる場合、1回量1〜3滴を1日4〜6回投与することが好ましい。【0028】【発明の効果】本発明によれば、コンタクトレンズ装用者への刺激が少なく、レンズへの影響が抑制され、しかも優れた防腐効果を持つコンタクトレンズ用眼科用組成物が得られ、特にコンタクトレンズを装着する際、コンタクトレンズ装着時に点眼する際、又はコンタクトレンズをはずした後に洗眼する際に、コンタクトレンズ用眼科用組成物に含有された薬物による眼刺激性を緩和することができる。従って、本発明のコンタクトレンズ用眼科用組成物は、特にソフトコンタクトレンズ用点眼剤、ソフトコンタクトレンズ装着液、ソフトコンタクトレンズ用洗眼剤等のソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物として有用である。【0029】【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。【0030】[実施例1、2及び比較例1〜3]表1に示す組成(配合量:g/100mL、pH7.0)で、常法に準じてコンタクトレンズ用点眼剤を調製し、以下に示す試験1〜3を行なった。結果を表1に併記する。【0031】【表1】【0032】<試験1> 防腐効力試験表1に示す組成に対して、第13改正日本薬局方・参考情報の保存効力試験法に従って防腐効力試験を実施した。即ち、表1に示す組成に対して、下記細菌及び真菌を1mLあたり105〜106個になるように加え、25℃に静置し、14日後及び28日後に菌を接種した溶液1mLのそれぞれを培養した後、生菌数を測定し、接種菌数に対する生存率を算出した。【0033】【0034】防腐効力の判定基準は、14日後の生存率が細菌では接種菌数の0.1%以下、真菌では接種菌数の同レベルもしくはそれ以下、28日後の生存率が細菌では14日後のレベルと同等もしくはそれ以下、真菌では接種菌数の同レベルもしくはそれ以下となることである。この判定基準を全て満たしたものを○、一つでも満たさないものは×とした。【0035】なお、培養は細菌に対してはSCDLP寒天培地(Soybean Casein Digest Agar with Lercthin & Polysorbate80)(日本製薬(株)製)、真菌にはGPLP寒天培地(Glucose Peptone Agar with Lercthin & Polysorbate80)(日本製薬(株)製)の各種培地を使用した。結果を表2に示す。【0036】【表2】【0037】表2の結果から明らかなように、実施例1のトロメタモールを含有する水溶液には優れた防腐力があり、また実施例2では薬物や高分子化合物を配合しても高い防腐力を維持している。一方、防腐剤を配合しない比較例1では、十分な防腐力を得られず、判定基準に達することができなかった。【0038】<試験2>使用感の評価表1の各組成に対し、ソフトコンタクトレンズを装着した男女各3名をパネラーとし、点眼したときの眼刺激性を下記評価基準に基づいて評価した。その結果、実施例1及び2では刺激を感じた人が全くいなかったのに対し、防腐剤としてグルコン酸クロルヘキシジン(比較例2)、塩化ベンザルコニウム(比較例3)を使用した場合は刺激を感じることを示した。【0039】<評価基準>○:眼刺激性を感じた人が0名×:眼刺激性を感じた人が1名以上【0040】<試験3>レンズの物性(曇り)表1の各組成に対し、ソフトコンタクトレンズの物性への影響を評価した。ソフトコンタクトレンズをリゾチーム(涙液中の主要タンパク質)を混合した生理食塩水に1時間浸漬し、更に各組成に1時間浸漬した後、煮沸洗浄を行なった。この操作を10回繰り返した後のレンズの変化を観察した。その結果、表1に示すように実施例1,2及び比較例1ではレンズに影響がなかったのに対し、比較例2、3ではレンズの変色が観察された(影響があったものは×、なかったものは○として示した)。【0041】 [参考例1〜7] 表3に示す組成の点眼剤を常法に準じて調製し、上記試験1〜3の評価を行ったところ、いずれも良好な結果が得られた。【0042】【表3】 トロメタモールと、エデト酸ナトリウム及び/又はジブチルヒドロキシトルエンと、ホウ酸又はその塩とを含有し、カチオン系防腐剤を含有しない、ソフトコンタクトレンズ用点眼剤。 トロメタモールを防腐剤として含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ用点眼剤。 さらに、ε−アミノカプロン酸又はマレイン酸クロルフェニラミンを含有する、請求項1又は2記載のソフトコンタクトレンズ用点眼剤。 カチオン系防腐剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム又はグルコン酸クロルヘキシジンである請求項1〜3のいずれか1項記載のソフトコンタクトレンズ用点眼剤。 トロメタモールの含有量が、組成物全量に対して0.1〜5w/v%である請求項1〜4のいずれか1項記載のソフトコンタクトレンズ用点眼剤。 防腐力を有する請求項1〜5のいずれか1項記載のソフトコンタクトレンズ用点眼剤。


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