タイトル: | 特許公報(B2)_長波長吸収バクテリオクロリンアルキルエーテル類似体 |
出願番号: | 2001116889 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07D 487/22,A61K 31/409,A61P 35/00,A61P 43/00,G01N 33/483,G01N 33/50,G01N 33/58 |
ラヴィンドラ ケイ パンデー トーマス ジェイ ドハティ ウィリアム アール ポター JP 4976618 特許公報(B2) 20120420 2001116889 20010416 長波長吸収バクテリオクロリンアルキルエーテル類似体 ヘルス リサーチ インコーポレイテッド 593108772 Health Research,Inc. 青山 葆 100062144 岩崎 光隆 100067035 ラヴィンドラ ケイ パンデー トーマス ジェイ ドハティ ウィリアム アール ポター US 09/592150 20000612 20120718 C07D 487/22 20060101AFI20120628BHJP A61K 31/409 20060101ALI20120628BHJP A61P 35/00 20060101ALI20120628BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120628BHJP G01N 33/483 20060101ALI20120628BHJP G01N 33/50 20060101ALI20120628BHJP G01N 33/58 20060101ALI20120628BHJP JPC07D487/22A61K31/409A61P35/00A61P43/00 105G01N33/483 CG01N33/50 ZG01N33/58 Z C07D,A61K,G01N CAplus/REGISTRY(STN) 国際公開第99/067249(WO,A1) 9 2002020389 20020123 13 20080402 田村 聖子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、光力学的方法を用いた腫瘍などの過剰増殖組織の治療及び検出のための化合物に関する。生物体に注入した場合、これらの化合物は優先的にそのような組織に集まる能力を有し、光を吸収して、例えばその破壊によって組織の増殖を減少し、又はその組織からエネルギーの放出を生じ、組織の位置を検出できる。光力学性化合物を用いたそのような減少及び検出は、光力学的治療としてここで一括して参照される。【0002】【従来の技術】光力学的治療(PDT)は、種々の固体腫瘍の治療に対する比較的新しい物理療法である。多くのポルフィリン及び対応する感光性化合物は、静脈内注射の後、腫瘍性組織に優先的に集積する能力を示し、組織を光照射に敏感にする。可視光(光ファイバーを通ったレーザーにより照射される)による感光剤の活性化は、結果として細胞障害剤を生成する。一重項酸素(活性化した光増感剤から直接的又は間接的にエネルギー変換により酸素分子から形成される)の生成により腫瘍ホメオスタシス及び観察される腫瘍の破壊が起こると現在認められている。光の吸収に続いて、光増感剤はその基底一重項状態(P)から短命の励起一重項状態(1P*;τ〜10-6 sec.)を経て電子的励起三重項状態(3P*;τ〜10-2 sec.)に変換される。励起三重項は、無輻射失活を起こし、又生物学的基質の電子遷移過程に関与して、ラジカル及びラジカルイオンを形成し、そのラジカルイオンは、酸素分子(O2)と相互作用した後、一重項酸素及び超酸化物(O2-)を生成できる。一重項酸素は、PDTにおける細胞及び組織破壊を引き起こすキー物質であり、対象組織(T)を酸化させる。又、超酸化物イオンを含んでもよいことを証明している。【0003】 1978年に、ヘマトポルフィリン誘導体(HpD)と光の組合せが、患者25人の腫瘍113個のうち111個で、部分的な又は完全な腫瘍の壊死を引き起こす効果のあることが報告された。精製したHpD であるフォトフリン(Photofrin:登録商標)によるPDTは、膀胱癌及び食道癌用としてカナダで、初期及び進行段階の食道癌用としてオランダ及びフランスで、初期段階の肺癌、食道癌、胃癌及び頚椎癌用として日本で、進行段階の食道癌及び肺癌用として合衆国で、認可された。世界中で、10,000人以上の患者が光の影響を受けやすい多様な腫瘍(皮膚癌、肺癌、膀胱癌、頭部癌及び頚部癌、乳癌及び食道癌を含む)についてPDTの治療を受けている。現在市販されている感光性薬剤のフォトフリンが有する望ましい特性としては、優れた効力、水溶性、一重項酸素の高い収率及び容易な製造である。しかし、フォトフリンはいくつかの不利な性質を有している。(i)ポルフィリンダイマー及びエーテル、エステル及び/又は炭素-炭素結合により結合した高次のオリゴマーの複雑な混合物であり、従って、研究するのが困難である。(ii)投与した後4〜6週間、患者の皮膚で光毒性を示す。(iii)赤色領域(630nm)で、その比較的弱い吸収のために、組織を通過した透過光の欠乏が、現在、PDTにおけるフォトフリンの臨床的適用を、治療用光源から4mm未満の癌組織の破壊に制限している。【0004】組織による光の吸収及び散乱の両方が波長の減少に伴って増加することが証明されている。従って、組織の透過は波長の増加に伴って増加する。組織内のヘムプロテインが可視領域の光吸収のほとんどを占め、組織内で、光の透過は550nm未満で急激に減少する。しかし、550〜630nmの透過は明らかに増加し、700nmでは透過はさらに二倍に増加する。波長が800nmへ移動すると組織内の透過は10%増加する。理想の波長を700〜800nmとした他の理由はこの領域の光源の入手可能性である。現在630nmで使用されている入手可能なレーザ光は、高価であり、臨床上容易に扱えない。より良い回答はダイオードレーザの使用である。ダイオードレーザの利点としては、低コスト、無視できるランニングコスト、高い信頼性、小型化及び携帯できることである。ダイオードレーザは、現在630nmのものを入手可能であるが、700〜800nmの範囲の吸収を持つ光増感剤は、なお深い位置にある腫瘍の治療用として望まれている。すべてのこれらの因子は、有効な光増感剤の最適吸収波長として700〜800nm以上を認識している。前述の特性以外にも、優先的な腫瘍の集中、安定性、一重項酸素の生成の効率、安定性、低毒性及び好適な注射用溶液の溶解性が、有効なPDT薬剤の開発において考慮されるその他の重要な因子である。近年、幾つかの長波長(>650nm)吸収光増感剤が、最大組織透過に達する可能性のある候補として報告されている。そのような化合物の中で、幾つかの自然に発生するバクテリオクロロフィルが、in vitro及びin vivoの予備研究において有効な光増感剤として報告されている。しかし、760〜780nmで吸収を有する自然に発生するバクテリオクロリンの多くは、酸化に対して特に敏感であり、その結果、660nm未満で最大吸収を有するクロリン状態に急激に変化する(図1参照)。さらに、レーザがin vivoでバクテリオクロリンの励起に使用された場合、酸化はレーザウインドの外に吸収を持つ新しい発色団の形成を生じ、光増感性の効力を減少させるかもしれない。PDTをより一般的に腫瘍の治療に適用可能とするために、長波長吸収光増感剤、例えば安定で、通常の組織に対して相対的に高い濃度で腫瘍部に集中可能なバクテリオクロリンが必要である。【0005】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、過剰増殖組織に優先的に吸収され、約700〜約850nmの波長で効果的に光を吸収する安定な光増感剤を開発することである。さらに、本発明の目的は、そのような安定な光増感剤を使用した光力学的治療の方法を提供することである。【0006】【課題を解決するための手段】本発明に従って、過剰増殖組織に優先的に吸収され、約700nm〜約850nmの範囲の波長で効果的に光を吸収し、又はそのような吸収化合物の中間体として作用する新規化合物が提供される。より詳しくは、本発明の化合物は下記構造式を有する。【0007】【化4】【0008】式中、R1、R5、R9及びR10は独立して炭素原子数1〜3個の低級アルキルであるが、R1、R5、R9及びR10の少なくとも3つはメチルであり、R2は-OH、-OR11、-NHR11、アリール又はアミノ酸であり、R3及びR4は独立して-COR11又は一緒になって下記構造式を表し、【0009】【化5】【0010】R6及びR7は独立して炭素原子数1〜3個の低級アルキルであり、R8は炭素原子数1〜約12個(通常、炭素原子数1〜8個)のO-アルキル、炭素原子数1〜約12個(通常、炭素原子数1〜8個)のS-アルキル、アリール又は炭素原子数5又は6個の複素環であり、R11は炭素原子数1〜6個のアルキルであり、及び、R12は炭素原子数1〜約12個の低級アルキル、アリール又は炭素原子数1〜8個のアミノアルキルである。但し、R8、R11及びR12の少なくとも1つは疎水性であり、R8、R11及びR12は全体として少なくとも10個の炭素原子を含む。【0011】【発明の実施の形態】本発明の特に好適な吸収化合物は、充分に疎水性である少なくとも1つのペンダント基を有し、化合物を過剰増殖組織に入り込ませる。そのようなペンダント基は、通常、少なくとも2個の炭素原子を有し、主として疎水性部として作用する場合には、通常少なくとも7個の炭素原子の脂肪族又は芳香族構造を含む。化合物は1以上のペンダント疎水性基を有してもよい。優先的に過剰増殖組織に集まることができる特定構造としては、R2は-OR11であり、R11は炭素原子数3〜約10個のn-アルキル、例えばn-プロピルであるそれらの化合物、R3及びR4が一緒になって下記構造式を表すそれらの化合物【0012】【化6】【0013】(式中R12は炭素原子数3〜約10個のアルキルであり、例えばn-ヘキシルである)、及びR8が炭素原子数3〜約10個のアルキル、例えばn-ヘプチルであるそれらの化合物が挙げられる。本発明の好ましい化合物においては、R1、R5、R7、R9及びR10がすべてメチルであり、R6がエチルである。又、本発明は、700nm〜850nmの範囲の波長で光を充分に照射して組織の増殖を検出し、又減少させるために効果的である量の本発明の吸収化合物で組織を曝すことによって、腫瘍などの過剰増殖組織の治療方法及び検出方法を含む。好ましい実施態様において、本発明はさらに、バクテリオプルプリン-18-N-アルキルイミドの調製及びカルボン酸、エステル又はアミド官能基を有する対応する3-デアセチル-3-アルキルエーテル類似体へのそれらの変換及びバクテリオクロリンp6の調製及びカルボン酸、エーテル又はアミド官能基を有する一連のアルキルエーテル類似体へのその変換のための容易な方法を含む。又、本発明は、光力学的治療による癌又はその他の非腫瘍学的疾病の治療のために、これらの新規バクテリオクロリンの使用を含む。【0014】 本発明の化合物は、それらがバクテリオクロリンであること、即ちそれらが対角線上に縮合還元ピロール環(diagonally opposite fused reduced pyrrol rings)(環b及びd)を有し、“a”縮合ピロール環と結合したアルキルエーテル基を有する点で独特である。本発明の化合物は、約700から約850nmの範囲、通常750から825nmの範囲の波長に光吸収ピークを有する。化合物は、さらに“c”縮合ピロール環と結合した電子吸引性基の存在のために安定である点で独特である。電子吸引性基は安定な6員縮合イミド環又はラジカル-COR4であるのが好ましい。ここで、R4は-OH、炭素原子数1〜約10個の-O-アルキル、炭素原子数1〜約12個の-NH-アルキル、アリール(結合位置で電子吸引性)又はアミノ酸ラジカルである。又、過剰増殖組織への優先的な蓄積のために、哺乳類への注入に好適な本発明の化合物は、化合物を過剰増殖組織に入り込ませることを補助する少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのペンダント疎水性基を有する。 ここで用いられる“過剰増殖組織”は抑制なく増殖し、腫瘍及び黄斑変性症に関する年齢で見られる血管増殖などの抑制のない管増殖を含む組織を意味する。【0015】光力学的治療を目的とした本発明の化合物の使用において、化合物は、通常診断又は治療すべき哺乳類、例えば人に注入される。注入のレベルは、通常体重の約0.1から約0.5μmol/kgの範囲である。治療の場合には、治療すべき範囲に所望する波長及びエネルギー、例えば約100〜200J/cm2の光を照射する。検出の場合には、所望する波長の光を照射して蛍光を測定する。検出で用いられるエネルギーは蛍光を発すれば充分であり、通常治療で必要とするよりも明らかに低い。本発明は、本発明の化合物を複雑で非能率的な合成工程を必要としないで調製するための方法を含む。バクテリオプルプリン 1(図2)の調製で、バクテリオクロロフィル-a(λmax 774nm)を含むRb スファエロイダス(Sphaeroides)のn-プロピルアルコール抽出物は、直接KOH/n-プロパノールで、空気の存在下で反応させる。それはすぐにHCl又はH2SO4(pH 2〜3)で処理され、バクテリオプルプリン-18プロピルエステル及びH2SO4/n-プロパノールとの反応において、対応するプロピルエステル類似体 1に変換される対応するカルボン酸 2を生成した。自然に発生するバクテリオクロロフィル-aと比較して、縮合無水環系 2(813nm)を有するバクテリオプルプリンは室温で非常に安定であることを見出した。しかし、in vivoでは不安定であった。【0016】縮合無水環系と比較して、その他の化合物のなかで縮合イミド環系を有する化合物はin vivoで安定であることを示した。例えば、非ポルフィリン系の中で、アモナフィド(amonafide)、イミド誘導体及びそれらの構造類似体が、in vivoと同様in vitroで非常に安定な抗腫瘍性薬剤として報告された。非ポルフィリン系をどのように適用すればよいかわからなかったが、バクテリオクロリン系におけるそのような環式構造の効果を研究した。初めに、我々自身の方法論をプルプリン-18-N-アルキルイミドの調製に展開した(米国特許第5,952,366号は参考文献としてここに組み込まれる)。残念ながら、この方法は複雑な反応混合物を生成した。このため、改良した方法では、最初にバクテリオプルプリン-a 2をアルキルアミン(例えば、n-ヘキシルアミン)と反応させた。中間体アミドの形成は分光測光法及び薄膜クロマトグラフィ分析によりモニターした。2つの異性体の混合物として得られた中間体アミド類似体3をジアゾメタンと反応させ、溶媒を真空下で除去した。このようにして得た残留物をテトラヒドロフランに再溶解させ、溶媒を蒸発させた。765nmの吸収が消失し、822nmの新しいピークが出現するまで、この手続きを数回繰り返した。このようにして得たバクテリオクロリン-N-ヘキシルイミドは“理想”の光増感剤として必要な、要求される分光特性を有し、in vitro及びin vivoで安定であったが、残念ながら、in vivoでいかなるPDT効力も示さなかった。【0017】非バクテリオクロリン系において、しばしば腫瘍の局在化を高める同様の置換が、例えば米国特許第5,459,159号及び第5,952,366号に示されているため、我々の次のステップは、一連のバクテリオクロリンにおいてアルキルエーテル置換の効果を研究することであった。これらの両方は参考文献としてここに組み込まれる。末端部に様々なアルキルエーテル置換基を導入するために、位置 3にアセチル基を有するバクテリオプルプリンイミド 4を、最初に対応する3-(1-ヒドロキシエチル) 5に硼水素化ナトリウムと反応させることにより非常によい収率で還元した。o-ジクロロベンゼン中で還流により、5分間脱水して、ビニル類似体 6を>80%の収率で生成した。所望するアルキルエーテル類似体の調製のために、ヒドロキシ類似体 6をHBr/酢酸で処理し、中間体ブロモ-誘導体をすぐに種々のアルキルアルコールと反応させ、対応するアルキルエーテル類似体(例えば7)を収率約70%で単離した。同様の反応条件で、ビニルバクテリオプルプリン-イミドでも所望するアルキルエーテル誘導体を生成できたが、低い収率であった(図2)。又、本発明ではバクテリオプルプリン p6及びそのアミド誘導体(λmax 760nm)のアルキルエーテル類似体の合成も提供する。これら化合物の調製のために、バクテリオプルプリン-18メチルエステル 7を炭酸ナトリウム水溶液又は水酸化ナトリウム/THF溶液と反応させた。縮合無水環系の分裂により得られたジカルボキシル基誘導体 8をジアゾメタンと反応させて対応するメチルエステル 9に変換した。9と硼水素化ナトリウムとの反応及び続くHBr/酢酸及び種々のアルキルアルコールでの処理は所望するアルキルエーテル誘導体を生成するだろう(図3)。プロピオン酸エステル官能基の対応するカルボン酸への位置特異的な(regiospecic)加水分解及び続く種々のアミドへの変換は一連のアミド類似体を生成できた(図4参照)。【0018】以下の実施例は具体例を提供するが、本発明を限定しない。融点は補正されておらず、Fisher Johns融点装置で測定した。電子的吸収スペクトルはGenesis 5分光光度計で測定した。MassスペクトルはDepartment of Molecular及びCellular Biophysics, RPCI, Buffaloで測定した。NMRスペクトルはNMR研究所の400MHz Brucker装置で得た。サンプルをCDCl3に溶解し、ケミカルシフトは7.258ppmのCHCl3に関しδppmで表した。薄膜クロマトグラフィ分析を用いて、反応をモニターし、Merckのカットした小板又はWhatman silica gel 60F254でプレコートしたプラスチック製ベークドシート上で(厚さ0.25mm)、所望する化合物の純度をチェックした。カラムクロマトグラフィのために、シリカゲル(70〜230 mesh)を一般的な重力カラムとして用いた。使用前に、テトラヒドロフラン(THF)をナトリウム上で蒸留し、ジクロロメタンを水素化カルシウム上で蒸留した。相を乾燥し、ろ過し及び蒸発することは、硫酸ナトリウムで乾燥し、ガラスウールを通してろ過し、次いでBuchi ロータリーエバポレータを用いて、室内真空及びオイルポンプを用いた高真空下で溶媒を蒸発させることを意味する。【0019】(実施例1)3-アセチル-バクテリオプルプリン-18-プロピルエステル 1の調製Rb スファエロイダス(350グラム)をエーテル(200ml)及びピリジン(10ml)に溶解した。n-プロパノール(100ml)に溶解した水酸化ナトリウム(12g)を加え、空気の流れを溶液に通して、2時間撹拌した状態で泡立たせた。エーテル層を除去し、H2SO4を加えて水相のpHを2.5に調整した。溶媒を真空下で除去した。このようにして得た残留物をTHFに再溶解し、蒸発させた。765nmのピークを消失し、804nmの新たなピークを出現するまで、この工程を数回繰り返した。溶媒を除去した後、残留物が2つの化合物の混合物であることを見出し、カラムクロマトグラフィにより分離した。早く移動する帯は表題の生成物と同定し、ゆっくり移動する帯は対応するカルボン酸類似体として特徴付けられ、5%の硫酸/n-プロパノールで処理して、対応するプロピルエステルを生成した(収量:250mg)。【0020】(実施例2)3-アセチル-バクテリオプルプリン-18-N-ヘキシルイミド 4の調製バクテリオプルプリン-18プロピルエステル 1(200mg)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、n-ヘキシルアミン(0.5ml)を加えた。室温で一晩撹拌し、反応させた。反応はTLC及び分光測光法(804nmのピークの消失及び765nmの新しいピークの出現)でモニターした。溶媒を高真空で除去し、残留物をジクロロメタンに再溶解した。次いで、ジアゾメタンで処理し、カルボン酸官能基を対応するメチルエステルに変換した。次いで、THFを加え、760nmのアミドピークの強度を10%に減少させ、表題の化合物の形成による新しいピークを822nmに出現させるまで、溶媒を真空下で除去した。次いで、溶離剤として2%アセトン/ジクロロメタンを用いて、シリカカラムクロマトグラフィにより精製した。溶媒を蒸発させた後、得られた残留物をジクロロメタン/ヘキサン混合液で沈殿させた(収量:112mg)。NMR(δppm, CDCl3):9.31(s, 1H, 5-H);8.80(s,1H, 20-HO);5.29(d, 1H, 17-H);4.42(t, 2H, ヘキシルイミド-a-CH2);4.29(m, H, 3-H);4.09(m, 3H, CO2CH2及び18-H);3.94(m, 2H, 7-H及び8-H);3.70(s, 3H, 12-Me);3.55(s, 3H, 2-Me);3.17(s, 3H, 3-Me);2.68(M, 1H, 17b-H);2.41(m, 5H, CH2CH2CH3+8a-CH2+7b'H);2.04(m, 4H, 17a-H,17a'-H及びb, c-N-ヘキシル-CH2);1.70, 1.67(各 d, 3H, 18-Me及び7-Me);1.32(m, 4H, d,e-ヘキシルイミド-CH2);1.14(t, 3H, 3-b Me);0.93(t, 3H, CH2CH2CH3);-0.53及び-0.75(各 br s, 2H, 2NH)。C42H53N5O5のMass計算値:707。実測値:707.9(M+1)。長波長吸収λmax 822nm。【0021】(実施例3)3-デアセチル-3-(1-ヒドロキシエチル)バクテリオプルプリン-18-N-ヘキシルイミド 5の調製前述のバクテリオプルプリンイミド 4(100mg)をジクロロメタン(10ml)及びメタノール(5ml)に溶解した。硼水素化ナトリウム(30mg)を、0℃で撹拌した状態でゆっくり(30分以内で)加えた。反応はTLC及び分光測光法(786nmの新しいピークの出現)によりモニターした。次いで、ジクロロメタンで希釈した。有機層を5%酢酸で洗浄し、水で再洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を蒸発させて、所望する生成物を得た(80mg)。NMR(δppm, CDCl3):8.81(d, 1H, 5-H);8.00(s, 1H, 20-H);8.25(d, 1H, 17-H);6.18(q, 1H, CH(OH)CH3);4.42(t, 2H, ヘキシルイミド-a-CH2);4.29(m, H, 3-H);3.94(m, 7H及び8-H);3.82(m, 3H, CO2CH2及び18-H);3.60及び3.20(各s, 3H, 3-Me);2.68(m, 1H, 17b-H);2.41(m, 5H, CH2CH2CH3+8a-CH2+7b'H);2.04(m, 4H, 17a-H, 17a'H及びb, c-N-ヘキシル-CH2);2.10(d, 3H, 18-Me);1.80(m, 2H, 8-CH2CH3)及び1.75-1.30(m, 4H, d,e-ヘキシルイミド-CH2);1.10、0.93及び0.759(全9H: t, 3H, 3-b Me)、(t, 3H, CH2CH2CH3);-0.03及び-0.45(各br s, 2H, 2NH)。C42H55N5O5のMass計算値:709。実測値:709.9(M+1)。長波長吸収λmax 786nm。【0022】(実施例4)3-デアセチル-3-ビニル-バクテリオプルプリン-18-N-ヘキシルイミドプロピルエステル 6の調製ヒドロキシ類似体 5(20mg)をo-ジクロロベンゼン(5ml)に加えて還流し、溶液を5分間撹拌した。次いで、室温に冷却した。溶液をシリカカラムに通して、最初にヘキサンで溶離してo-ジクロロベンゼンを除去し、次いで2%アセトン/ジクロロメタンで溶離した。主帯を蒸発させて残留物を得、ジクロロメタン/ヘキサンから結晶化した(収率70%)。NMR(δppm, CDCl3):8.61(d, 1H, 5-H);8.42(s, 1H, 20-H);8.38(d, 1H, 17-H);7.75(m, 1H, CH=CH2);6.18、6.08(各d, 1H, CH=CH2);4.42(t, 2H, ヘキシルイミド-a-CH2);4.29(m, H, 3-H);3.94(m, 2H, 7-H及び8-H);3.82(m, 3H, CO2CH2及び18-H);3.60(s, 3H, 3-Me);3.22(s, 3H, CH3);2.62(m, 1H, 17b-H);2.31(m, 5H, CH2CH2CH3+8a-CH2+7b'H);2.04(m, 4H, 17a-H, 17a'H及びb, c-N-ヘキシル-CH2);1.78及び1.62(各d, 3H, 18-Me及び7-Me);1.80(m, 2H, 8-CH2CH3)及び1.65-1.30(m, 4H, d,e-ヘキシルイミド-CH2);1.10、0.93及び0.80(全9H:t, 3H, 3-b Me)、(t, 3H, CH2CH2CH3);-0.03及び-0.40(各brs, 2H, 2NH)。C42H53N5O4のMass計算値:691。実測値:691.7(M+1)。長波長吸収λmax 788nm。【0023】(実施例5)3-デアセチル-3-(1-ヘプチルオキシエチル)-バクテリオプルプリン-N-ヘキシルイミドプロピルエステル 7の調製前述のバクテリオプルプリン 6(30mg)を30%HBr/酢酸(1.5ml)と室温で2時間反応させた。溶媒を高真空で除去した。こうして得られた残留物を乾燥ジクロロメタン(5ml)に溶解し、すぐにn-ヘプタノール(1ml)と反応させた。不活性ガス中で45分間室温で反応を進める前に、少量の無水炭酸カリウムを加えた。次いで、ジクロロメタンで希釈した。標準検査の後、残留物をシリカカラムクロマトグラフィにより精製した(収量20mg)。NMR(δppm, CDCl3):8.82(d, 1H, 5-H);8.62(s, 1H, 20-H);8.30(d, 1H, 17-H);5.60(q, 1H, CH(O-ヘプチル)CH3);5.25(m, H, 17-H);4.42(t, 2H, ヘキシルイミド-a-CH2);4.20(m, 3H, CO2CH2及び18-H);3.94(m, 2H, 7-H及び8-H);3.80(m, ヘプチルエーテル鎖のO-CH2);3.65(s, 3H, 3-Me);3.25(s, 3H, CH3);2.62(m, 1H, 17b-H);2.31(m, 5H, CH2CH2CH3+8a-CH2+7b'H);2.00-0.75、幾つかの多重線:(m, 4H, 17a-H, 17a'H及びb, c-N-ヘキシル-CH2);1.80及び1.52(各d, 3H, 18-Me及び7-Me);1.80(m, 2H, 8-CH2CH3)及び1.65-1.30(m, 4H, d,e-ヘキシルイミド-CH2及びO-ヘプチル側鎖の8H);1.10、0.93及び0.80(全12H:t, 3H, 3-b Me及びO-ヘプチル-Me)及び(t, 3H, CH2CH2CH3);-0.03及び-0.40(各brs, 2H, 2NH)。C49H69N5O5のMass計算値:807。実測値:808.3(M+1)。長波長吸収λmax 786nm。又、表題の化合物を以下と同様の方法によりビニル類似体 6から得た。しかし、所望する生成物は低収率で得られた。【0024】(実施例6)バクテリオプルプリンp6トリメチルエステルの調製バクテリオプルプリン-18-メチルエステル(50mg)を無水THF(20ML)に溶解した。水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムの水溶液を加えた。804nmの親ピークが消失するまで、反応は室温で撹拌して行った。次いで、pHをゆっくり5に調整し、ジクロロメタン/THF混合液で抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発させた。残留物をジアゾメタンと反応させて、対応するメチルエステルに変換し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した(収量40mg)。NMR(δppm, CDCl3):9.70、8.72、8.60(各s, 1H, 3-メソH);5.00(d, 1H, 17-H);4.20(m, 1H, 18-H);3.95(m, 2H, 7-H及び8-H);4.12、4.10、3.60、3.58、3.50、3.20(各s, 3H, 3 CO2Me, 2Me及びCO2Me);2.50-2.00(m, 6H, 12-CH2CH2CO2Me及び8-CH2CH3);1.80及び1.70(各d, 3H, 7-Me及び18-Me);1.20(t, 3H, CH2Me);-90及び-85(各s, 1H, 2NH)。長波長吸収λmax 760nm。【0025】(実施例7)生物学的研究光増感剤を既知数のTween 80(Aldrich)界面活性剤に溶解し、5%ブドウ糖水溶液で10倍に希釈し、1%濃度の最終Tween 80を調製した。次いで、溶液をシリンジフィルタを通してろ過した。溶液の濃度は、光増感剤の長波長吸収の吸光係数に基づいて決定した。動物に薬剤を注入する前に、材料の純度をHPLCで確認し、SP8 700溶媒配送システム、波長アンテナ405nm又は786nmに固定したKratos 757吸収検出器を結合したSpectra-Physicsシステムを用いて実行した。2つの溶媒系をHPLC解析で用いた。溶媒Aは無水二塩基燐酸ナトリウム(1.0g)を水400mlに溶解して調製した。これにHPLCグレードメタノール(600ml)を加えた。溶液のpHを燐酸で7.5に調整した。(ii)溶媒Bは無水二塩基燐酸ナトリウム(0.3g)を水100mlに溶解して調製し、これにメタノール(900ml)を加え、pHを燐酸で7.5に調整した。溶媒A及びBを傾斜モードで使用した(0-10分A、10-40分A-B、40-50分B、50-60分Aに戻る)。ある場合に、溶媒Bをisocraticモードで使用した(逆相カラムC-8、流速1.5ml/min)。照射の前に、増殖した腫瘍を覆う下毛及び腫瘍の周りの下毛を電子クリッパーで除去した。薬剤を注入した後24時間マウスを注文製アルミニウムホルダーに配置した。チューナブル色素レーザから135J/cm2の全入射光量のために、30分間の標準光量75mW/cm2は790nmの最大赤色吸収ピークに変えた(in vivo反射率分光により決定されるin vivo吸収)。レーザ出力はパワーメータで測定した。【0026】光照射に続いて、マウスを5/cageのグループにし、ペレット状食料及び水を任意に与えた。腫瘍サイズ、及び腫瘍及び覆っている皮膚の両方の外観を、光照射の後、これら動物の早期の犠牲を必要とする非応答性腫瘍の増殖なしに、90日間毎日モニターした。上記のバクテリオプルプリン-イミド 5-7をマウス腫瘍モデル系(RIF腫瘍)でin vivo研究において評価した。結果を表1にまとめた。これらの結果から、テストした化合物の中で、3-デアセチル-3-(1-ヘプチルオキシエチル)プルプリンイミド-18 7が0.47μmol/kgの投与量で明らかな光増感活性を示すことがわかった。薬剤を注入した後24時間後、マウスを光(790nm、135J/cm2)で処理した(21日で80%腫瘍が治癒し、90日で60%が治癒した)。より高い薬剤投与量で(1.0μmol/kg)、光治療の後、すべてのマウスは死亡したことは(6/6)、薬剤がかなり強いことを示唆している。又、薬剤の効力は薬剤量及び光量を変えることで決められる。例えば、薬剤量を0.2μmol/kgに減少させ、光量を同じにすると(135J/cm2)、どのようなPDT効力も示さないが、より高い光量(175J/cm2)では、6匹のうち4匹のマウスが90日で腫瘍がなくなった。同様の治療条件でバクテリオクロリン 5及び6はどのようなPDT効力も示さなかった。【0027】【表1】表1 RIF腫瘍(C3Hマウス)に対するバクテリオプルプリンイミドのin vivo光増感効力【0028】腫瘍摂取及びバクテリオプルプリン-イミド 7の長波長吸収のin vivoでのシフトはin vivo反射率分光により決定した。バクテリオプルプリンイミド 7は、薬剤の注入の後1日よりも5日で明らかに高い腫瘍摂取を有した。in vitro吸収と比較して、in vivo長波長吸収は790nmで観測され、約5nmのレッドシフトを示した。このように、腫瘍にその特定波長で光を照射した。又、この実験は縮合イミド環系が光増感剤の注入後5日間もin vivoでかなり安定であることを示した。異なる治療条件におけるこれらの及びその他のバクテリオクロリン類似体のin vivo研究は現在進められている。【0029】遷延性皮膚感光性(prolonged cutaneous photosensitivity)は、フォトフリン投与の深刻な副作用であり、我々は、マウスの足組織に3-デアセチル-3-(1-ヘプチルオキシエチル)バクテリオプルプリン-18-N-ヘキシルイミド 7の光毒性及び治療薬剤量及び光量をテストした。マウスに0.47mmol/kgの薬剤を注入した(I.V.)。足を790nmで135J/cm2のレーザ光を1、2、3、4及び5日間照射した(図5)。足の反応を以下の任意スケールでグレード付けた。0, 通常から変化なし、0.1, ごくわずかな浮腫、0.3, わずかな浮腫、0.5, 中程度の浮腫、0.75, 大きな浮腫、1, 滲出液を伴う大きな浮腫、1.2, わずかなうろこ状又は皮殻質の出現を伴う中程度の赤み、1.65, つま先のわずかな損傷、1.75, つま先の一定の損傷又はわずかな融着、2.0, ほとんど融着したつま先、2.5, つま先のないほとんど無形の足、3, 足の痕跡のみ。図5に見られるように、足に注入後5日照射した場合、バクテリオプルプリン-イミド 7はどんな毒性も示さなかった。これらの結果は、長期間皮膚光毒性を示したフォトフリンと異なり、この化合物がマウスの足組織から急激に取り除かれる可能性を示している。【図面の簡単な説明】【図1】バクテリオクロリンからクロリンへの光反応である。【図2】化合物1から7の化学構造である。【図3】化合物8から11の化学構造である。【図4】化合物7を含むRIF腫瘍の吸収スペクトルである。【図5】薬剤7の光毒性テストの結果である。 下記構造式を有することを特徴とする環式テトラピロール化合物。(式中、R1、R5、R6、R7、R9及びR10は独立して炭素原子数1〜3個の低級アルキルであるが、R1、R5、R9及びR10の少なくとも3つはメチルであり、R2は炭素原子数1〜6個のアルキルであり、R3及びR4は一緒になって下記構造式を表し、R8は水素又は炭素原子数1〜12個のアルキルであり、R12は炭素原子数1〜12個の低級アルキルである。但し、R2、R8及びR12の少なくとも1つは疎水性であり、R2、R8及びR12は全体として少なくとも10個の炭素原子を含む。) 化合物が750nmから850nmの範囲の光波長に光吸収ピークを有することを特徴とする請求の範囲第1項記載の化合物。 R1、R5、R9及びR10がすべてメチルであることを特徴とする請求の範囲第2項記載の化合物。 R2がn-プロピルであることを特徴とする請求の範囲第3項記載の化合物。 R3及びR4が一緒になって下記構造式を表し、R12がヘキシルであることを特徴とする請求の範囲第4項記載の化合物。 R6がエチルであり、R7がメチルであることを特徴とする請求の範囲第5項記載の化合物。 R8がヘプチルであることを特徴とする請求の範囲第6項記載の化合物。 過剰増殖組織治療用薬剤であって、組織を充分な量の請求の範囲第2項から第7項のいずれか1項に記載の化合物に曝し、ピーク吸収波長の光を照射して組織の増殖を減少させることを特徴とする、請求の範囲第2項から第7項のいずれか1項に記載の化合物を含む薬剤。 請求の範囲第2項から第7項のいずれか1項に記載の化合物を含む、過剰増殖組織の存在を検出するための薬剤であって、組織を充分な量の請求の範囲第2項から第7項のいずれか1項に記載の化合物に曝し、ピーク吸収波長の光を組織に照射してピーク吸収波長と異なる波長で組織から検出可能な光を放出させることによって過剰増殖組織の存在を検出するために使用される、薬剤。