生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ゼラチン用架橋剤
出願番号:2001099758
年次:2011
IPC分類:C08G 59/28,A61K 9/48,A61K 9/70


特許情報キャッシュ

古川 徹 上辻 利之 永友 茂美 JP 4759157 特許公報(B2) 20110610 2001099758 20010330 ゼラチン用架橋剤 新田ゼラチン株式会社 000190943 大鹿香料株式会社 592060950 小林製薬株式会社 000186588 角田 嘉宏 100065868 古川 安航 100106242 古川 徹 上辻 利之 永友 茂美 20110831 C08G 59/28 20060101AFI20110811BHJP A61K 9/48 20060101ALI20110811BHJP A61K 9/70 20060101ALI20110811BHJP JPC08G59/28A61K9/48A61K9/70 401 C08L 63/00-63/10 C08G 59/00-59/72 A61K 9/48-9/66 A61K 9/70 特開2002−293879(JP,A) 特開2000−192011(JP,A) 特開平01−297484(JP,A) 特開平09−070428(JP,A) 特表平09−501734(JP,A) 4 2002293875 20021009 9 20080321 赤澤 高之 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規のゼラチン用架橋剤、特に、透明性および耐熱保型性に優れ、かつ人体および環境に対する安全性を具備した組成物をもたらすゼラチン用架橋剤に関する。【0002】【従来の技術および発明が解決しようとする課題】ゼラチンとは、ウシの骨や皮あるいはブタの皮などに含まれるコラーゲンを、温水での加熱・抽出の工程を含む処理工程を経て得られる動物性のタンパク質であり、また、トリプトファンを除くすべての必須アミノ酸を含む18種類のアミノ酸を含み、アミノ酸バランスに優れている。 ゼラチンの溶解温度は、概ね20〜30℃であるため体温や室温下でも溶解してしまうが、弾力性を有し、保水力も高く、しかも、その透明性を維持しつつ、その水分や包含成分を徐々に溶出・放出する性質を具備している。【0003】これら性状に着目して、ゼラチンは、テーブルゼリー、グミ、ムース、ババロア、マシュマロ、ヨーグルトなどの食品や、医薬品用・健康食品用カプセル、それに貼付剤に至る、数々の食品や医薬品用途において利用されており、非常に安全性の高い天然物であると認識されている。 また、ゼラチンは、これら食品・医薬品用途以外にも、写真用フィルム、印画紙の分野でも応用されている。【0004】ところで、近年の生活スタイルの多様化や、環境や人体に対する世間の関心の高まりが進むに伴い、食品のみならず、ゼラチンの上掲の性質を利用して構成した組成物を利用した日常生活用品にまで安全性が求められている。 これら商品開発における主たる課題は、常温下でのゼラチンの溶解耐性を改善し、さらに、ゼラチンが形成する組成物を透明ならしめ、かつその保型性(ゼリー強度)を安定ならしめることにある。【0005】これら問題点を克服するために、ゼラチン用架橋剤として、トランスグルタミナーゼ(特開平9−70428号)、オレフィン−無水マレイン酸共重合体(特開平1−297484号)、それに、ゼラチンとエチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体(架橋剤)とのアンモニア反応物(特開2000−192011号)などが、これまでに提案されている。【0006】しかしながら、トランスグルタミナーゼを用いた場合、ゼラチンとの反応の進行が、約30〜約60分という短時間の内に終了してしまうため、工業生産における化学反応の管理が難しい上に、反応産物内に未反応のトランスグルタミナーゼが混在してしまい品質管理の観点からして好ましくない。 また、これら残存トランスグルタミナーゼの酵素活性を失活させるためには、架橋処理後にさらに別途の加熱処理を行わなくてはならず、余分の処理設備が必要となる上に、この加熱処理によって、ゼラチンや反応産物の構成成分の変性を招きかねないなどの問題点がある。【0007】オレフィン−無水マレイン酸共重合体でも、ゼラチンとの反応の進行が、1時間以内に終了してしまうため、トランスグルタミナーゼの場合と同様に、工業生産における化学反応の管理が難しい点が未解決のままである。【0008】また、エチレン性不飽和化合物−無水マレイン酸共重合体(架橋剤)とのアンモニア反応物によっても、ゼラチンとの反応が短時間の内に終了する点は解決されておらず、加えて、反応産物から独特のアンモニア臭を呈する。 このアンモニア臭が故に、揮散性化合物(例えば、香料)とこの反応産物との組み合わせは、実用に不向きであり、その用途は自ずと限定されるものであった。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来のゼラチン用架橋剤において認識されていた上掲の問題点に鑑みて鋭意研究を行った。 特に、ゼラチン用架橋剤の検索において、ゼラチンの溶解耐性を改善し、しかも、ゼラチンの透明度を維持しつつ、かつその保型性を安定ならしめる架橋剤にたどり着き、本発明を完成するに至ったのである。【0010】すなわち、本発明の要旨とするところは、ゼラチンを架橋し、かつ保型性を具備した透明な組成物を生成するポリアミドエポキシ樹脂を含むゼラチン用架橋剤にある。 本発明のゼラチン用架橋剤でのこの構成によって、ゼラチンが本質的に具備している弾力性や保水力を損なわずに、しかも、ゼラチンが形成する組成物を透明ならしめ、かつその保型性、特に、熱安定性を改善することができる。【0011】【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明する。【0012】本発明のゼラチン用架橋剤で架橋されるゼラチンとは、動物の骨、皮、靱帯または腱を、酸処理またはアルカリ処理して得られるコラーゲンを熱変性したものすべてを含み、好ましくは、食用ゼラチン、日本薬局方ゼラチンおよびその規格に準ずるものであればいずれも適用可能である。 また、ゼラチンの形状としては、塊状、粒状、粉状、板状、シート状などのいずれの形態のものも使用できる。 また、所望の透明度や保型性を獲得する観点からして、ゼラチンは、JIS K-6503に従った、約50〜約350gのゼリー強度のものを利用する。【0013】本発明のゼラチン用架橋剤の活性成分(架橋促進成分)として、本発明者らは、分子鎖長や分子鎖の構成、エポキシ基の数の異なる種々のエポキシ化合物を調製した。 これらエポキシ化合物の中でも、グリコールのジグリシルエーテル、ポリオールのポリグリシルエーテルなどでは、ゼラチンの架橋が認められて、透明な粘性産物の生成に至ったが、その保型性が乏しかった。 これら経験を踏まえてさらに検討を行った結果、ポリアミドエポキシ樹脂、特に、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂が、ゼラチンを架橋せしめて、目的とする透明度や保型性を具備した組成物の生成に至ることを見出したのである。【0014】ところで、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂とは、化粧品種別配合成分規格(厚生労働省)成分コード:522052および522053、規格コード:42に記載されている樹脂である。 また、この樹脂は、すべての化粧品(口紅、口腔、アイラインを除く)に配合規制無しに使用でき、発癌性指標である「エームス試験(微生物を用いる変異原性試験)」が陰性であるなど、人体に対する高い安全性が証明されている。 このポリアミドエピクロルヒドリン樹脂としては、紙力剤WS547(湿潤紙力増強剤:日本PMC株式会社)が市販されており、これは本発明において好適に利用することができる。【0015】ゼラチンとポリアミドエポキシ樹脂に対して水を加え、架橋反応を進行せしめることによって保型性を具備した透明な組成物が得られる。【0016】本発明のゼラチン用架橋剤には、その用途に応じて、様々な成分を加えることができる。 例えば、消臭剤や芳香剤を得る目的で、消臭性および/または芳香性物質と組み合わせて使用することができる。 消臭性物質としては、当該技術分野で周知のものであれば、いずれも利用可能であるが、例えば、イネ、マツ、ヒノキ、ササなどの植物での植物抽出物、酸性水溶液、アルカリ性水溶液などの希釈液などが本発明において利用できる。 同様に、芳香性物質も、当該技術分野で周知のものであれば、いずれも利用可能であり、例えば、天然香料や合成香料が挙げられ、これらを必要に応じて希釈、乳化したものなどが本発明において利用できる。【0017】また、香料の揮散性を制御するために、本発明のゼラチン用架橋剤に、香料の可溶化助剤として機能する可溶化溶剤、または香料の揮散性を制御する揮散調整溶剤をさらに含めることができる。 このような溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、エチレングリコールアルキルエーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、プロピレングリコールアルキルエーテル類などの水溶性溶剤、またはこれらの組み合わせからなる混合溶剤がある。【0018】さらに、本発明のゼラチン用架橋剤に、香料を可溶化するための界面活性剤を加えることができる。 これら界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルまたはアルキルアリール硫酸塩などの陰イオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの非イオン性界面活性剤などの1つ以上を利用することができる。【0019】あるいは、本発明のゼラチン用架橋剤の存在下で、ゼラチン含量を50重量%程度の高含量に調整し、かつ濃グリセリンや水などを配合してなる混合物を加熱融解することでゼラチン皮膜が形成され、これをカプセルの製造材料に利用することもできる。【0020】さらに、本発明のゼラチン用架橋剤の他に、水、l−メントール(清涼剤)、それに、ポリアクリル酸ナトリウム(基材成分)などを配合してなる混合物を加熱条件下で混合し、次いで、放冷することでパップ剤等の貼付剤を得ることも可能となる。【0021】ゼラチンと本発明のゼラチン用架橋剤との混合比率は、ゼラチン:本発明のゼラチン用架橋剤=0.001:1〜1:0.001の重量比率で混合する。 これはすなわち、ゼラチンの量がこの値域より小さい量では、生成する組成物の硬度が弱くなりすぎ、また、ゼラチンの量がこの値域より大きい量では、水分や揮発成分が飛散した後の組成物での残存ゼラチンの量が多くなり得られる組成物の美観上好ましくないことによる。 また、ゼラチン用架橋剤の量がこの値域から逸脱すると、ゼラチンとの架橋反応が円滑に進行しない。【0022】これらゼラチンと本発明のゼラチン用架橋剤とを、水の存在下で、常温下、好ましくは、約20〜約40℃で、pH約4〜約9、好ましくは、pH約4.5〜約8の反応条件下で架橋反応せしめる。 この架橋反応によれば、ゼラチンが架橋するまでの反応も緩慢に進行し、その製造管理が容易となる。【0023】【実施例】以下に、本願発明の実施例を具体的に説明するが、本願発明はこれら実施例の開示によって限定的に解釈されるべきものではない。【0024】実施例A:ゼラチン用架橋剤の利用ゼラチン(FYB−250S:新田ゼラチン社製)、架橋剤(WS547:日本PMC株式会社製)、香料(OSK−1:大鹿香料社製)、界面活性剤(TWEEN80:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)およびエタノールを準備した。 これら材料を、下記表1に記載の配合量に従って混合し、精製水で100gの最終重量にした。 なお、架橋剤の配合量は、純分換算値で表示してある。 また、架橋剤の量を極端に減らした事例を対照とした。 次いで、調製された混合物を、30℃で、24時間放置した。【0025】そして、24時間放置した後に、11例の各組成物の透明度、強度、保型性および50℃での耐熱性について評価を行い、それらの結果も、表1に併せて記載した。【0026】【表1】【0027】表1に記載の結果から明らかなように、対照の組成物では耐熱性が付与されず、かつ組成物の形成に至らなかったのに対して、本発明のゼラチン用架橋剤を用いて製造された組成物は、ゼラチンが本質的に具備している弾力性を損なわずに、しかも、ゼラチンが形成する組成物を透明ならしめ、かつ熱安定性に優れていることが確認された。【0028】比 較 例:従来のゼラチン用架橋剤実施例Aでの架橋剤を、デコナールEXシリーズ(ナガセ化成工業株式会社製)またはグリオキサール(日本合成化学株式会社製)に代え、下記表2に記載の配合量に従って混合した以外は、実施例Aと同様の手順に従って、組成物を製造した。 なお、デコナールEX-512での使用成分は、ポリグリセロールポリグリシルエーテル(n=2)、デコナールEX-521での使用成分は、ポリグリセロールポリグリシルエーテル(n=3)、デコナールEX-810での使用成分は、エチレングリコールジグリシルエーテル、そして、デコナールEX-530での使用成分は、ポリエチレングリコールジグリシルエーテル(n=9)であった。 そして、5例の各組成物の透明度、強度、保型性および50℃での耐熱性について評価を行った。【0029】それらの結果も、表2に併せてとりまとめた。【0030】【表2】【0031】表2に記載の結果から明らかなように、いずれの組成物においても所望の透明度および強度を兼ね備えた組成物は得られなかった。 つまり、本発明のゼラチン用架橋剤による架橋効果が、本発明特有のものであることが明らかとなったのである。【0032】実施例B:ゼラチン用架橋剤の利用例1.カプセル製剤まず、カプセルの外皮を構成する材料として、50重量%のゼラチン(FYB−150S:新田ゼラチン社製)、1重量%(純分換算値)の架橋剤(WS547:日本PMC株式会社製)、15重量%の濃グリセリン、および残余のイオン交換水を70℃の温度下で混合して、ゼラチンを溶解して真空脱泡した。 こうして得られた混合液を不織布に展延し、約60℃の温度下で一晩放置した。【0033】これとは別途に、カプセル内に収容される内容物を調製すべく、4重量%のスクワラン、1重量%の香料、および残余の流動パラフィンを混合した。 このように混合して得た内容物を、ロータリ法によってカプセル化した。 すなわち、ポンプから射出された内容物を、一対のゼラチンシートの間に注入し、次に、その表面に半球状の凹部が複数設けられた一対のダイロール間にそのゼラチンシートを通し、その後、打ち抜きネットによってシートから、カプセルを個別に分離した。 得られたカプセルを乾燥してカプセル製剤を得た。 なお、最終的に得られたカプセル製剤の外皮での水分量は、約10%であった。【0034】2.貼付剤5重量%のポリアクリル酸ナトリウム(ビスコメート:昭和電工株式会社製)、15重量%の濃グリセリン、5重量%のゼラチン(FYB−200S:新田ゼラチン社製)、1重量%(純分換算値)の架橋剤(WS547:日本PMC株式会社製)、2重量%の界面活性剤(Tween80)、1重量%のl−メントール、および残余のイオン交換水を、70℃の温度下で混合した。 こうして得られた混合液を不織布に展延し、約60℃の温度下で一晩放置することで、ゼラチン入りのパップ剤を得た。 本実施例でのパップ剤は、耐熱性に優れ、冷却用シートタイプの貼付剤の用途への応用が期待される。【0035】【発明の効果】このように、本発明によると、所期の目的であった、ゼラチンが本質的に具備している弾力性や保水力を損なわずに、しかも、ゼラチンが形成する組成物を透明ならしめ、かつその保型性、特に、熱安定性が改善される。 ゼラチンを架橋し、かつ保型性を具備した組成物を生成するポリアミドエポキシ樹脂を含むゼラチン用架橋剤であって、前記ポリアミドエポキシ樹脂は、前記組成物全量に対し0.75〜5.0重量%の範囲で配合される、ゼラチン用架橋剤。 前記ポリアミドエポキシ樹脂が、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂である請求項1に記載のゼラチン用架橋剤。 ゼラチン、水、および請求項1または2に記載のゼラチン用架橋剤を含む原料から得られるカプセルであって、前記ポリアミドエポキシ樹脂は、前記原料全量に対し0.75〜5.0重量%の範囲で配合される、カプセル。 ゼラチン、水、および請求項1または2に記載のゼラチン用架橋剤を含む原料から得られる貼付剤であって、前記ポリアミドエポキシ樹脂は、前記原料全量に対し0.75〜5.0重量%の範囲で配合される、貼付剤。


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