タイトル: | 特許公報(B2)_(メタ)アクリル酸クロリドおよびその製造方法 |
出願番号: | 2001062434 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07C 51/60,C07C 55/36,C07C 67/14,C07C 69/54,C07D 307/33 |
長野 慎哉 井上 慶三 中井 康人 JP 4916051 特許公報(B2) 20120203 2001062434 20010306 (メタ)アクリル酸クロリドおよびその製造方法 株式会社ダイセル 000002901 後藤 幸久 100101362 長野 慎哉 井上 慶三 中井 康人 20120411 C07C 51/60 20060101AFI20120322BHJP C07C 55/36 20060101ALI20120322BHJP C07C 67/14 20060101ALI20120322BHJP C07C 69/54 20060101ALI20120322BHJP C07D 307/33 20060101ALI20120322BHJP JPC07C51/60C07C55/36C07C67/14C07C69/54C07D307/32 Q C07C 55/36 C07C 51/60 CA/REGISTRY(STN) 特開2000−229911(JP,A) 特開平06−063407(JP,A) 特開2001−048931(JP,A) 特開昭59−108736(JP,A) 特開2002−187868(JP,A) 特開平05−331122(JP,A) 4 2002265413 20020918 10 20070926 天野 宏樹 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はエステル化反応を円滑に進めることが可能な品質を有する(メタ)アクリル酸クロリドおよびその製造方法と、さらにはその(メタ)アクリル酸クロリドを使用する(メタ)アクリル酸エステルの製造に関する。【0002】【従来の技術】(メタ)アクリル酸クロリドは(メタ)アクリル酸エステルを製造するための有用な化合物である。(メタ)アクリル酸エステルは通常、相応するアルコール類と(メタ)アクリル酸から酸などの触媒の存在下脱水縮合して合成される。また、簡便な方法としてアルコール類と(メタ)アクリル酸クロリドより有機アミン類などの脱塩酸剤の存在下低温でしかも短時間で合成される。特にアルコール類や合成された(メタ)アクリル酸エステルが分解しやすかったり、またアルコール類の構造が立体的に障害多く、エステル化の速度が非常に遅い時など、(メタ)アクリル酸クロリドを使用した(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は大変に有用な手段といえる。【0003】最近、次世代の半導体でArFエキシマレーザーを使用した開発において新規なレジスト樹脂が注目を浴びている。この分野で使用する樹脂組成物は、酸によりエステル基が脱離しアルカリ可溶になる性質、及びエッチング工程での基盤を保護するための耐エッチング機能などを必要としているため、その樹脂組成物の主体である高分子化合物の構造は多環脂環式構造を有し、しかも酸の作用によりエステル基は分解しやすい性質を有している。従って高分子化合物の原料となる重合性モノマーは同様に、多環脂環式構造を有し、しかも酸の作用によりエステル基は分解しやすい性質を有している。このモノマーを製造するためには多環脂環式構造を有するアルコール類と(メタ)アクリル酸との反応が考えられるが、多環脂環式構造を有するアルコール類は立体障害のため反応速度が著しく遅くなることが多く、またエステル化には通常酸触媒を使用するが、その酸触媒のためにせっかく合成されたモノマーが分解し、収率を極度に下げている。この場合、(メタ)アクリル酸クロリドを使用して低温でしかも選択性良く製造することが経済性において優位である。【0004】しかし、(メタ)アクリル酸クロリドを使用した反応においても、高収率を再現性よく実現されていない。その原因についての解明もなされていない。(メタ)アクリル酸クロリドを合成する方法としてはいくつかあるが、特開2000−229911号公報には(メタ)アクリル酸クロリドをベンゾイルクロリドまたは三塩化リンと(メタ)アクリル酸から合成した場合において良い結果が得られている。しかし、再現性が得られているわけではなく、同一の製法においても品質の異なる(メタ)アクリル酸クロリドが得られるため、エステルの合成においても再現性は得られない。【0005】また、特開平10−182552号公報には2−アダマンタノンなどのケトン化合物と(メタ)アクリル酸クロリドとを、有機金属化合物の存在下で反応させて、対応する(メタ)アクリル酸エステルを得ることが開示されているが、(メタ)アクリル酸クロリドの品質による目的物の収率への影響に関しては何ら記載されていない。【0006】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、(メタ)アクリル酸エステルの合成において再現性よく高収率となるような品質の(メタ)アクリル酸クロリドを開発することにあり、またそのような品質の(メタ)アクリル酸クロリドの製法を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意検討の結果、(メタ)アクリル酸クロリドに含まれる不純物として硫黄原子を含む化合物がエステル化反応において副反応を誘発することを発見し、それを極力除くことにより(メタ)アクリル酸エステルが高収率で得られることを見出し、本発明を完成した。【0008】 すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸と塩化チオニルから(メタ)アクリル酸クロリドを製造する方法であって、(i)(メタ)アクリル酸と塩化チオニルとを反応させて(メタ)アクリル酸クロリドを生成させる反応工程と、(ii)前記反応工程で得られた反応生成物を蒸留精製するとともに、該反応生成物を、50〜120℃の加熱下で、減圧処理又は常圧での不活性ガスバブリング処理に付して残存ガスを追い出すことにより、(メタ)アクリル酸クロリド中に不純物として含まれる硫黄原子含有化合物の含有量を硫黄原子として200ppm以下にする精製工程とを含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸クロリドの製造方法を提供する。【0013】 本発明は、また、上記の製造方法により、不純物としての硫黄原子含有化合物の含有量が硫黄原子として200ppm以下である(メタ)アクリル酸クロリドを製造し、この(メタ)アクリル酸クロリドと1以上の水酸基を有する化合物とを反応させることにより(メタ)アクリル酸エステルを製造することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供する。【0014】 この製造方法において、前記(メタ)アクリル酸エステルは、酸の作用により構造変化し、アルカリ可溶となる性質を有する化合物であってもよい。【0015】 この製造方法において、前記(メタ)アクリル酸エステルが、下記式(2)、(3)、(4)または(5)【化1】(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、同一または異なって、水素原子または炭化水素基を示す。R2、R3、R4、R5、R6、R7は、互いに結合して、隣接する炭化水素と共に脂環式炭化水素基を形成していてもよい。R8はアルキル基を示し、Aは連結基を示す。mは0または1、nは1〜3の整数、pは0〜5の整数を示す。)で表される化合物であってもよい。【0017】 なお、本明細書では、上記の発明のほか、分子中に硫黄原子を含有する化合物の含有量が硫黄原子として300ppm以下であることを特徴とする下記式(1)【化2】(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸クロリドについても説明する。【0018】【発明の実施の形態】本発明の(メタ)アクリル酸クロリドは前記式(1)に示したが、具体的なのものとしてアクリル酸クロリドおよびメタクリル酸クロリドがある。本発明においてアクリル酸とメタクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸と呼ぶ。【0019】(メタ)アクリル酸クロリドに含まれる硫黄分としては300ppm以下である。好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下である。【0020】(メタ)アクリル酸クロリドの製法としては、(メタ)アクリル酸と各種の塩化物との反応により製造される。その塩化物としては、塩化チオニル、ホスゲン、三塩化リン、五塩化リン、塩化ベンジル等が挙げられる。特に、入手のし易さ、及び取り扱いの簡便さ、また経済性においても塩化チオニルが好まれて使用される。【0021】(メタ)アクリル酸と各種の塩化物との反応により製造された(メタ)アクリル酸クロリドは、通常蒸留等の精製手段を用いて精製し、次工程のエステル化に用いられる。特に、(メタ)アクリル酸クロリドは長期間保存すると2量化を起こしやすく、使用前に蒸留精製することは効果的である。また、(メタ)アクリル酸と塩化チオニルなどの塩化物による反応後、加熱し、残存ガスなどを追い出し、その後に蒸留することは特に好ましい方法と言える。(メタ)アクリル酸と塩化物とのモル比は特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸/塩化物で表すと、0.2〜5であり、好ましくは0.4〜4、特に好ましくは0.6〜2である。【0022】(メタ)アクリル酸と塩化物による反応温度は、高すぎると生成物の分解を招くし、低すぎると経済的な反応速度が得られず、−50〜100℃が好ましく、−30〜80℃がより好ましい。反応終了後の加熱温度は30〜120℃の範囲が好ましく、50〜100℃がより好ましい。加熱する時間については加熱する温度によるため特に限定されるものではない。また、残存ガスの追い出しは、減圧でもよく、また常圧で不活性なガスを流通させることでも可能である。【0023】(メタ)アクリル酸と塩化物による反応は、無溶媒でも実施できるし、活性水素を持たない溶媒も使用可能である。溶媒としては、ベンゼンやトルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランやジオキサンなどの複素環化合物、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、炭素数5から16程度の炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられ、これらを混合して使用してもかまわない。【0024】前記式(2)、(3)、(4)または(5)で示された(メタ)アクリル酸エステルにおいて、連結基Aとしては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ジメチルメチレン、ジアルキルメチレン、トリメチレン等の2価の脂肪族炭化水素基、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、パーヒドロナフタレン(デカリン)環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環などの脂環式環(単環または架橋環)に対応する2価の脂環式炭化水素、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族炭化水素環に対応する2価の芳香族炭化水素基、これらの基を複数個、酸素原子やエステル基等を介してまたは介することなく連結した基(単結合)などが挙げられる。Aで示される連結基としては、単結合、または2価の脂環式炭化水素基、特に2価の架橋炭化水素基が好ましい。【0025】前記式(2)で示される式中、R2、R3、R4における炭化水素には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの基を複数個連結した基が含まれる。前記脂肪族炭化水素基として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、アリル基などの炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基)などが挙げられる。【0026】脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環などの、およそ炭素数4〜20員環の単環の脂環式炭化水素環に対応する基、ピナン環、ボルナン環、ノルピナン環、ノルボルナン環、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)、パーヒドロナフタレン(デカリン)環、パーヒドロインデン環などの2環式炭化水素環、ホモブレダン環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデンカン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロフェナレン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などの多環の脂環式炭化水素環(架橋環式炭化水素環)に対応する基(架橋環式炭化水素環)などが挙げられる。上記の環には、芳香族炭素環または芳香族又は非芳香族複素環(酸素原子含有複式環など)が縮合していてもよい。【0027】芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基などのC6-14芳香族炭化水素基などが挙げられる。また、異種の炭化水素基が複数個連結した基として、例えば、ベンジル、2−フェニルエチルキなどのC7-16アラルキル基などが例示される。前記炭化水素基は置換基を有してもよい。【0028】R2、R3、R4のうち2〜3個の基が互いに結合して、隣接炭化原子と共に形成する脂環式環としては、上記の単環の脂環式炭化水素環、多環の脂環式炭化水素環(架橋環式炭化水素環)が挙げられる。これらの環には芳香族炭化水素環または、芳香族または非芳香族複素環(酸素原子含有複素環など)が縮合していてもよい。R2、R3、及びR4のうち少なくとも1つは、式(1)中に示される3級炭素原子の隣接位の炭素原子が水素原子を有しているのが好ましい。【0029】前記式(3)で示される式中、R5、R6、R7における炭化水素には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの基を複数個連結した基が含まれる。前記脂肪族炭化水素基として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、アリル基などの炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基)などが挙げられる。【0030】脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環などの、およそ炭素数4〜20員環の単環の脂環式炭化水素環に対応する基、ピナン環、ボルナン環、ノルピナン環、ノルボルナン環、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)、パーヒドロナフタレン(デカリン)環、パーヒドロインデン環などの2環式炭化水素環、ホモブレダン環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデンカン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロフェナレン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などの多環の脂環式炭化水素環(架橋環式炭化水素環)に対応する基(架橋環式炭化水素環)などが挙げられる。上記の環には、芳香族炭素環または芳香族又は非芳香族複素環(酸素原子含有複式環など)が縮合していてもよい。【0031】芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基などのC6-14芳香族炭化水素基などが挙げられる。また、異種の炭化水素基が複数個連結した基として、例えば、ベンジル、2−フェニルエチルキなどのC7-16アラルキル基などが例示される。前記炭化水素基は置換基を有してもよい。【0032】R5、R6、R7のうち2〜3個の基が互いに結合して、隣接炭化原子と共に形成する脂環式環、または複素環を含む脂環式環としては、上記の単環の脂環式炭化水素環、多環の脂環式炭化水素環(架橋環式炭化水素環)が挙げられる。これらの環には芳香族炭化水素環または、芳香族または非芳香族複素環(酸素原子含有複素環など)が縮合していてもよい。R5、及びR6のうち少なくとも1つは、式(3)中に示される3級炭素原子の隣接位の炭素原子が水素原子を有しているのが好ましい。【0033】式(5)中のR8におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの炭素数1〜10程度のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基には炭素数1〜4のアルキル基が含まれ、中でもメチル基又はエチル基が好ましい。なお、式(5)において、γ−ブチロラクトン環を構成する炭素原子のうちα位の炭素原子は水素原子を有しているのが好ましい。【0034】式(2)、(3)、(4)、(5)に示される化合物の例として、式(2)では、(メタ)アクリル酸t−ブチル、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン、1−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン、5−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン、1−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン、5−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン、1−t−ブトキシカルボニル−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン、1−ヒドロキシ−3−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン、1−(1−エチル−1−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アダマンタン、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルプロピル)アダマンタン、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2−ジメチルプロピル)アダマンタンなどがあり、式(3)として1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエトキシ)アダマンタンがあり、式(4)として2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロフラニル(メタ)アクリレート、1−(2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタン、1−(2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニル)−3−(メタ)アクリロイルオキシアダマンタンなどがあり、式(5)には、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ―ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α―ジメチル−γ―ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ,γ―ジメチル−γ―ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α,β―トリメチル−γ―ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β,γ,γ―トリメチル−γ―ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−α,α,β,γ,γ―ペンタメチル−γ―ブチロラクトンなどがある。しかし、これらに限定されるものではない。【0035】前記した(メタ)アクリル酸エステルを生成可能なアルコールと(メタ)アクリル酸クロリドとの反応は、通常、塩基の存在下で行われる。塩基としては、例えば、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の芳香族含有した3級アミン、ピリジン等の含窒素芳香族複素環化合物などの有機塩基;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩基などを使用できる。反応はハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン等の重合禁止剤の存在下で行ってもよい。【0036】また、塩基として、メチルリチウム、n−ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物;メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミドなどの有機マグネシウム化合物(グリニヤール試薬など);ジメチルジイソプロポキシチタンなどの有機チタン化合物(有機チタンのアート錯体など)などの有機金属化合物を用いることもできる。生成した(メタ)アクリル酸エステルのエステル基が、例えば、式(1)においてR2、R3、R4の何れか1つが架橋環式基であったり、R2、R3、R4の少なくとも2つが互いに結合して隣接する炭素原子と共に脂環式環(特に架橋環)を形成している場合など、嵩高い基を有する(メタ)アクリル酸エステルを生成させるためには、原料のアルコールは当然同様の基を有し、その嵩高い基による障害のため反応速度が著しく遅くなる。そのような場合には、塩基として上記有機金属化合物を用いることにより反応速度を大きく向上させることができる。【0037】反応は有機溶媒中で行ってもよい。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;これらの混合溶媒などが挙げられる。【0038】反応温度は、反応成分の種類などにより、例えば−100℃〜150℃程度の範囲内で適宜選択できる。例えば、脱塩酸剤である塩基として有機リチウム化合物を使用した場合には、反応温度は、例えば−100℃〜30℃程度である。また、塩基として有機塩基や無機塩基を使用した場合には、反応温度は、例えば0℃〜150℃程度、好ましくは20℃〜100℃程度である。反応は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。【0039】反応終了後、必要ならば水等でクエンチした後、例えば、濾過、濃縮、抽出、洗浄、蒸留、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段を用いることにより、目的の(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。【0040】硫黄含量の測定はICP質量分析装置(セイコー・インスツルメンツ社製)を使用して行った。実施例の中では、ICPと称している。【0041】【発明の効果】本発明による(メタ)アクリル酸クロリドを使用することにより、(メタ)アクリル酸エステルの製造において、特に酸脱離性の(メタ)アクリル酸エステルを高収率で製造する事が出来る。【0042】【実施例】 以下に実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。なお、実施例1は参考例として記載するものである。【0043】製造例1 (ホスゲンによるメタクリル酸クロリドの製造)滴下ロート、凝縮器、ガス仕込みライン及び攪拌機を備えたフラスコに、ハイドロキノンモノメチルエーテルを500ppm含んだメタクリル酸101.5g(1.18mol)を仕込み、40℃において、ボンベよりホスゲンガスをガス仕込みラインを通じてフラスコ内に導入し、穏やかにバブリングさせた。5時間後、内容物を冷却し、ロータリーエバポレーターにて、20kPaの減圧下で残存するガスを除去した。さらに、常圧下、浴温度110〜120℃で蒸留精製を行うことで、メタクリル酸クロリド50g(0.48mol)を得た。収率は40.7%であった。ICP分析により、得られたメタクリル酸クロリド中の硫黄原子含有量は60ppmであった。【0044】製造例2 (塩化チオニルによるメタクリル酸クロリドの製造)滴下ロート、凝縮器、ガス仕込みライン及び攪拌機を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、ハイドロキノンモノメチルエーテルを500ppm含んだメタクリル酸を加え攪拌し、これに塩化チオニル163g(1.37mol)を1時間かけて滴下した。これを80℃まで昇温し、2時間攪拌した後、室温まで冷却し、20kPaの減圧下で副生した酸性ガスを除去した。さらに、常圧下、浴温度110〜120℃で蒸留精製を行うことで、メタクリル酸クロリド60g(0.57mol)を得た。収率は48.7%であった。ICP分析により、得られたメタクリル酸クロリド中の硫黄原子含有量は380ppmであった。【0045】製造例3 (製造例2の硫黄原子の除去)製造例2で得られたメタクリル酸クロライドに、窒素ガスを150ml/minでバブリングさせながら、70℃で1.2時間加熱した。冷却後、ICP分析により、得られたメタクリル酸クロライド中の硫黄原子濃度は90ppmであった。【0046】実施例1滴下ロート、冷却菅、攪拌器、温度計を備えた500mlフラスコに、窒素雰囲気下、2−メチルー2−アダマンタノール30.0g(0.18mol)、トリエチルアミン63.9g(0.63mol)、トルエン261gを加え攪拌し、これを50℃に温度制御しながら、製造例1で得られたメタクリル酸クロライド47.2g(0.45mol)を1時間かけて滴下した。これを50℃で22時間攪拌したものを、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、目的の2−メタクリロイルオキシー2−メチルアダマンタンが収率96%で生成していた。原料の転化率は97%であった。【0047】実施例2メタクリル酸クロライドとして、製造例3で製造したメタクリル酸クロライドを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応後の液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、目的の2−メタクリロイルオキシー2−メチルアダマンタンが収率92%で生成していた。原料の転化率は96%であった。【0048】比較例1メタクリル酸クロライドとして、製造例2で製造したメタクリル酸クロライドを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応後の液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、目的の2−メタクリロイルオキシー2−メチルアダマンタンの収率は13%であり、原料の転化率は95%であった。主生成物は、脱水物である2−メチレンアダマンタンであった。【0049】 (メタ)アクリル酸と塩化チオニルから(メタ)アクリル酸クロリドを製造する方法であって、(i)(メタ)アクリル酸と塩化チオニルとを反応させて(メタ)アクリル酸クロリドを生成させる反応工程と、(ii)前記反応工程で得られた反応生成物を蒸留精製するとともに、該反応生成物を、50〜120℃の加熱下で、減圧処理又は常圧での不活性ガスバブリング処理に付して残存ガスを追い出すことにより、(メタ)アクリル酸クロリド中に不純物として含まれる硫黄原子含有化合物の含有量を硫黄原子として200ppm以下にする精製工程とを含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸クロリドの製造方法。 請求項1記載の製造方法により、不純物としての硫黄原子含有化合物の含有量が硫黄原子として200ppm以下である(メタ)アクリル酸クロリドを製造し、この(メタ)アクリル酸クロリドと1以上の水酸基を有する化合物とを反応させることにより(メタ)アクリル酸エステルを製造することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。 前記(メタ)アクリル酸エステルが、酸の作用により構造変化し、アルカリ可溶となる性質を有する化合物である請求項2記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。 前記(メタ)アクリル酸エステルが、下記式(2)、(3)、(4)または(5)(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、同一または異なって、水素原子または炭化水素基を示す。R2、R3、R4、R5、R6、R7は、互いに結合して、隣接する炭化水素と共に脂環式炭化水素基を形成していてもよい。R8はアルキル基を示し、Aは連結基を示す。mは0または1、nは1〜3の整数、pは0〜5の整数を示す。)で表される化合物である請求項2記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。