生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ポリフェノールの測定方法
出願番号:2001054533
年次:2008
IPC分類:G01N 27/416,C12Q 1/26,C12Q 1/28,G01N 27/327


特許情報キャッシュ

植松 宏彰 中島 隆 佐藤 憲正 広本 光雄 JP 4178357 特許公報(B2) 20080905 2001054533 20010228 ポリフェノールの測定方法 東洋紡績株式会社 000003160 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 小原 健志 100086427 中川 博司 100090066 舘 泰光 100094101 斎藤 健治 100099988 藤井 淳 100105821 関 仁士 100099911 中野 睦子 100108084 植松 宏彰 中島 隆 佐藤 憲正 広本 光雄 20081112 G01N 27/416 20060101AFI20081023BHJP C12Q 1/26 20060101ALI20081023BHJP C12Q 1/28 20060101ALI20081023BHJP G01N 27/327 20060101ALI20081023BHJP JPG01N27/46 301GC12Q1/26C12Q1/28G01N27/30 353J G01N 27/416 C12Q 1/26 C12Q 1/28 G01N 27/327 特開平11−235515(JP,A) 特開平08−050111(JP,A) 特開2000−321234(JP,A) 特開2001−041920(JP,A) 特開平01−237446(JP,A) 特開平07−260737(JP,A) 特開平07−209248(JP,A) 特開平03−205548(JP,A) 特開平06−109691(JP,A) 特表平03−502240(JP,A) 5 2002257781 20020911 11 20060113 黒田 浩一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アスコルビン酸を含む試料液中のポリフェノールなどの抗酸化物質を電気化学的に測定する上で、アスコルビン酸の影響を除外し、ポリフェノールなどの抗酸化物質を正確且つ簡易にまた敏速に測定する方法に関する。【0002】【従来の技術】ポリフェノールを代表とする天然の抗酸化物質は、植物には必ずといっていいほど含まれている成分の一つで、体内の活性酸素を減らし、ガンや動脈硬化などの生活習慣病の予防、老化防止などに効果があるとの報告があり、近年、たいへん注目されている。【0003】従来、ポリフェノールの測定方法として、リンタングステン−モリブデン酸の還元に伴う発色の強度を比較するフォーリン・デニス法(J.Biol.Chem.、73、627(1927))や、フォーリン.チオカルト法が主として用いられている。しかしながら、この方法では、試料液中の濁度や色の影響が問題となることに加え、試料液中に含まれる還元物質の影響を受けることが問題であった。これら還元物質の中でも、食品、飲料に多量に含まれるアスコルビン酸は、ポリフェノールの測定で正の誤差を与える要因であることが考えられていた。これまでは、試料中のアスコルビン酸濃度をHPLCやインドフェノール法(酵素法)で測定し、アスコルビン酸による影響を補正せざるを得なかった。よって、ポリフェノールの測定においては、常に併せて、アスコルビン酸を測定しなければならず、その濃度から、測定したポリフェノール濃度を再度補正し、時間的にも、手法的にも煩雑であった。【0004】このことから、試料中のポリフェノールの濃度をアスコルビン酸等の影響を受けずに正確、容易、且つ迅速に測定する方法が求められていた。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、アスコルビン酸を含む試料液中のポリフェノールなどの抗酸化物質を電気化学的に測定する上で、アスコルビン酸の影響を除外し、ポリフェノールなどの抗酸化物質を正確且つ簡易にまた敏速に測定する方法を提供することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、既に過酸化水素、過酸化水素を分解する酵素、及び試料液を反応槽中に添加し、一定時間経過後の過酸化水素の減少を電気化学的に測定することにより、試料中のポリフェノールを測定する方法を開発したが、更なる研究において、反応槽中で、ポリフェノールとアスコルビン酸が反応し、ポリフェノール測定において、正誤差を与えていたことを発見した。【0007】即ち、本発明者らは、過酸化水素、過酸化水素を分解する酵素、緩衝液及びポリフェノールを含む試料液を混合し、一定時間経過後の過酸化水素の減少を電気化学的に測定することにより、試料中のポリフェノールを測定する方法において、アスコルビン酸含有試料測定での正誤差の要因を解析した。本測定方法は、ペルオキシターゼなどの酸化還元型酵素により、ポリフェノールが1分子酸化されれば、同時に過酸化水素が1分子還元される原理に基づく(図1)。よってポリフェノールの濃度を過酸化水素の還元量、つまり過酸化水素の減少量で見ている。この系において、試料液のかわりに一定濃度のアスコルビン酸を添加しても、電気化学的な変化はない。しかしながら、ポリフェノールの代表的な成分であるカテキンと、一定濃度のアスコルビン酸を混合し、試料液として添加すると、ポリフェノールの測定において正誤差を与えることを見出した。これにより、アスコルビン酸を含む試料液の測定では、ペルオキシターゼなどの酸化還元型酵素でポリフェノールが酸化されても、再度ポリフェノールとアスコルビン酸の間で、酸化還元が繰り返され、還元型ポリフェノールが再生される為、正誤差を与えていたことが判明した(図2)。【0008】また、同様な電気化学検出方法において、高濃度のポリフェノールサンプルでは、過酸化水素を分解する酵素を添加しなくても、ポリフェノールと、過酸化水素間で、酸化還元が起こり、過酸化水素の還元量を電気化学的に測定することも可能であることを見いだしている。【0009】本発明者らは、ポリフェノールとアスコルビン酸の間での反応を抑制して、正確なポリフェノール量を測定する方法を提供するべく、鋭意研究を重ねた結果、上記反応系にアスコルビン酸を分解するクエンチャーを添加し測定することで、アスコルビン酸の影響を受けずにポリフェノールを測定することができることを見いだし、本発明を完成させるに至った。【0010】すなわち、本発明は、以下のような構成からなる。項1. 過酸化水素、過酸化水素を分解する酵素、緩衝液及びポリフェノールを含む試料を混合し、一定時間経過後の過酸化水素の減少を、電気化学的に測定することにより、試料中のポリフェノールを測定する方法において、該混合液がアスコルビン酸を分解するクエンチャーを含むポリフェノールの測定方法。【0011】項2. 試料中のポリフェノールを電気化学的に測定する方法であって、(a)過酸化水素、アスコルビン酸を分解するクエンチャー、緩衝液及びポリフェノールを含む試料を混合し、試料中に含まれるアスコルビン酸を分解させ、(b)その後、該混合液に過酸化水素を分解する酵素を添加し、一定時間経過後の過酸化水素の減少を測定する上記項1に記載の方法。【0012】項3. 過酸化水素、緩衝液及びポリフェノールを含む試料を混合し、一定時間経過後の過酸化水素の減少を、電気化学的に測定することにより、試料中のポリフェノールを測定する方法において、該混合液がアスコルビン酸を分解するクエンチャーを含むポリフェノールの測定方法。【0013】項4. 試料中のポリフェノールを電気化学的に測定する方法であって、(a)アスコルビン酸を分解するクエンチャー、緩衝液及びポリフェノールを含む試料を混合し、試料中に含まれるアスコルビン酸を分解させ、(b)その後、該混合液に過酸化水素を添加し、一定時間経過後の過酸化水素の減少を測定する上記項3に記載の方法。【0014】項5. クエンチャーがアスコルビン酸オキシダーゼである上記項1〜4のいずれかに記載の測定方法。【0015】項6. 過酸化水素を分解する酵素が、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼまたはチロシナーゼである上記項1または2に記載の測定方法。【0016】項7. 電気化学的過酸化水素センサーを用いて測定する上記項1〜6のいずれかに記載の測定方法。【0017】項8. (1)過酸化水素(2)アスコルビン酸を分解するクエンチャー(3)緩衝液を含むポリフェノール測定用キット。【0018】項9. 更に(4)過酸化水素を分解する酵素を含む項8に記載のキット。【0019】【発明の実施の形態】(1)測定本発明の方法では、緩衝液、過酸化水素、ポリフェノールを含む試料を混合する。または、さらに過酸化水素を分解する酵素を加えても良く、この酵素は例えば、固定化酵素でもよい。該方法においては、図1(図1中の上図)に示すように、還元型のポリフェノールがペルオキシダーゼのような過酸化水素を分解する酵素を介して酸化され、それと同時に還元された該酵素は過酸化水素を還元することで酸化型となる。【0020】本発明においては、図2に示すように、酸化されたポリフェノールを再度還元して酸化型にする機能を有するアスコルビン酸を、上記反応の前にアスコルビン酸を分解するクエンチャーを添加することで分解し、アスコルビン酸による正誤差を解消した。【0021】試料液中のポリフェノールの種類や濃度によっては、該酵素は必ずしも必要ないが(図1中下の図)、試料液中のポリフェノールの量が少ない場合には、該酵素を作用させることが必要である。酵素が必要とされない場合のポリフェノール濃度は、試料液中の濃度として1000ppm〜10000ppm程度であり、それ以下の濃度では酵素を用いるのが好ましい。【0022】該酵素を添加する場合には、アスコルビン酸の分解反応が終了した後に、該酵素を添加するのが好ましく、該酵素を添加しない場合には、アスコルビン酸の分解反応が終了した後に、過酸化水素を添加するのが好ましい。より具体的な測定方法は以下に示す。【0023】上記のように、ポリフェノールは試料中のアスコルビン酸の影響をうけることなく、過酸化水素を消費することにより酸化され、この酸化反応の際に消費される過酸化水素量(減少量)を過酸化水素電極で測定することにより、ポリフェノール量を測定することができる。(2)各成分(i)緩衝液本発明で使用される緩衝液のpHは、4〜9程度、好ましくは5〜8程度である。緩衝液の具体例として、リン酸緩衝液、Tris-HCl緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などが挙げられる。これらの緩衝液には、電位の安定化のために塩化カリウム等を加えることができる。緩衝液の好ましい濃度範囲としては、10〜100mMである。【0024】(ii)過酸化水素過酸化水素の濃度は、10〜10000ppm程度、好ましくは100〜4000ppm程度である。過酸化水素の濃度及び添加量は、測定される試料中のポリフェノール量に応じて変化させる。【0025】過酸化水素は、混合液中の濃度が0.3〜10ppm程度になるように濃度を調節するのが好ましい。【0026】(iii)過酸化水素を分解する酵素該酵素としては、基質の還元と過酸化水素の分解を触媒するものであり、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼまたはチロシナーゼなどが挙げられるが、ペルオキシダーゼが特に好ましい。なお、該酵素は、フェノール類を基質とする酸化還元酵素として、鉄イオン、銅イオンなどの金属イオンを含む酵素であれば特に限定されず、またその起源についても限定されない。【0027】ペルオキシダーゼの由来としては、西洋わさびなどの植物、動物、酵母、細菌などが挙げられ、その中にはアスコルビン酸、グアヤコール、プロトヘムなどを酸化する西洋わさびペルオキシダーゼなどの狭義のペルオキシダーゼ(EC1.11.1.7)、シトクロムcペルオキシダーゼ、唾液ペルオキシダーゼ、塩化物ペルオキシダーゼ、ヨウ化物ペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、NAD+ペルオキシダーゼが挙げられる。【0028】酵素の使用量は、試料液中のポリフェノール量にもよるが、ポリフェノール700ppmに対して、50〜5000U/ml程度となるように適宜調製する。具体的には、混合液中で 0.1〜10U/ml程度となるように調整する。【0029】該酵素は、溶液状態で加えても良く、固定化しておいてもよい。【0030】(iv)アスコルビン酸を分解するクエンチャー該クエンチャーとしては、アスコルビン酸を酸化するものであるようなものであれば、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸オキシダーゼ、アスコルビン酸分解試薬(例えば、アスコルビン酸分解用合成試薬(例えば同仁化学製アスコルビン酸クエンチャー 品名 AAQ))等が例示できる。好ましくは、アスコルビン酸オキシダーゼである。【0031】アスコルビン酸オキシダーゼの使用量は、試料液中のアスコルビン酸量にもよるが、アスコルビン酸1000ppmに対して、200〜2000U/ml程度となるように適宜調製する。具体的には、混合液中で 0.5〜5U/ml程度となるように調整する。 該酵素は、溶液状態で加えても良く、固定化しておいてもよい。【0032】(v)ポリフェノールを含む試料測定対象となる試料としては、ポリフェノールが存在していると考えられるものであれば特に限定されない。尚、本発明は、ポリフェノール以外の抗酸化物質であるTrolox、DL−α−トコフェロール、β−カロチン、BHTなどの測定にも応用できる。【0033】ポリフェノールとしては、具体的には、アントシアニン、カテキン、フラボノイド類;イソフラボノイド類;ネオフラボノイド類;ガロタンニン類およびエラゴタンニン類;DL−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンまたはDL−DOPAのようなカテコールおよびその誘導体;ドーパミンのようなカテコールアミン類;フロログルシノール;カフェー酸、ジヒドロカフェー酸、プロトカテク酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ゲンチシン酸、ホモゲンチシン酸、没食子酸、ヘキサヒドロキシジフェン酸、エラグ酸、ロスマリン酸もしくはリソスフェルム酸のようなフェノール性酸;フェノール性酸誘導体、特にそれらのエステルまたはヘテロシド;クルクミン;ポリヒドロキシル化クマリン;ポリヒドロキシル化リグナンもしくはネオリグナン;またはシリマリンなどの植物ポリフェノールが例示される。【0034】ポリフェノールを含む食品・飲料などの試料としては、ほとんどの食物が対象である。例えば、大麦、小麦、トウモロコシ、イモ、大豆、タマネギ、セロリ、キャベツ、トマト、リンゴ、イチゴ、梅、バナナ、キウイ、カカオが例示でき、各種果物の皮も含まれる。赤ワイン、レモン、ミカン、リンゴ、ブルーベリー、大豆、ブドウ、茶(緑茶、ほうじ茶、煎茶、番茶、紅茶、抹茶、ウーロン茶等)など、或いはその抽出物、果汁などが挙げられる。【0035】チョコレート、ココア、カシューナッツなどの固形物のポリフェノール量を測定する場合には、ヘキサンで脱脂し、50%メチルアルコールで還流抽出などの前処理を行ってから測定するのが好ましい。【0036】試料がにごっていたり不溶物を有する場合には、試料を予め濾過するか、試料注入口などにフィルターを設けて不溶物等を除去するのが好ましい。【0037】試料液中に含まれるポリフェノールの量は、50〜3000ppm程度が好ましく、試料液中の該濃度が非常に大きい場合には、試料液を予め希釈しておくのが好ましい。試料の希釈剤としては、上記緩衝液が例示できる。混合液中のポリフェノールの濃度としては、0.2〜10ppmとなるように調製するのが好ましい。【0038】(3)具体的手段・過酸化水素を分解する酵素を使用する場合(a)まず、過酸化水素、アスコルビン酸を分解するクエンチャー、緩衝液及びポリフェノールを含む試料を混合し、15〜40℃で0.5〜5分間反応させることによってアスコルビン酸を分解させる。該混合液中での各成分の濃度は、過酸化水素(0.3〜10ppm)、アスコルビン酸を分解するクエンチャー(例えば、アスコルビン酸オキシダーゼの場合、0.5〜5U/ml)、試料中のポリフェノール及びアスコルビン酸の濃度(各々0.1〜7.5ppm、0.025〜2.5ppm)となるように適宜調整する。アスコルビン酸の濃度については上記範囲をはずれていても、反応時間を適宜変更すればよい。(b)次に、該混合液に過酸化水素を分解する酵素を、例えば、混合液中で0.125U〜12.5U/mlとなるような量添加し、一定時間経過後(2〜20分程度)の過酸化水素の減少を測定する。【0039】具体的には、本発明においては、過酸化水素の減少量を検出する過酸化水素センサーを用いて電気化学的に過酸化水素の減少量を測定する。該センサーは、ペルオキシターゼ酵素、電子メディエータなどを用いた酵素膜型過酸化水素センサーや、白金と銀で構成されるソリッド型過酸化水素センサーなどが例示できるが、特に限定されるものではない。例えば、特開2000−321234に記載のポリフェノールセンサーを利用することができる。【0040】・過酸化水素を分解する酵素を使用しない場合(a)まず、アスコルビン酸を分解するクエンチャー、緩衝液及びポリフェノールを含む試料を混合し、15〜40℃で0.1〜1時間反応させることによってアスコルビン酸を分解させる。該混合液中での各成分の濃度は、過酸化水素(0.3〜10ppm)、アスコルビン酸を分解するクエンチャー(例えば、アスコルビン酸分解試薬の場合には、0.25〜25ppm)、試料中のポリフェノール及びアスコルビン酸の混合液中の濃度が(各々2.5〜25ppm、0.025〜2.5ppm)となるように適宜調整する。アスコルビン酸の濃度については上記範囲をはずれていても、反応時間を適宜変更すればよい。【0041】(b)次に、該混合液に過酸化水素を0.3〜10ppmの濃度となるように添加し、一定時間経過後(5〜20分程度)の過酸化水素の減少を測定する。電気化学的な測定方法は上述の通りである。【0042】キット本発明のキットとしては、(1)過酸化水素、(2)アスコルビン酸を分解するクエンチャー及び(3)緩衝液を含む。各成分については上述したとおりである。更に、(4)過酸化水素を分解する酵素を含んでいてもよい。【0043】(2)アスコルビン酸を分解するクエンチャーや(4)過酸化水素を分解する酵素は、粉末(凍結乾燥品など)の状態で、使用時に緩衝液や水を加えることによって調製してもよいし、溶液の状態であってもよい。また、(1)過酸化水素は通常、過酸化水素水の状態で提供される。これら各成分は、キット中有効量含まれ、当業者であればその各成分の有効量を設定することができる。【0044】【発明の効果】上述のごとく、本発明は、アスコルビン酸を含有する試料中のポリフェノールを、正確に、敏速に測定しうるポリフェノールの測定方法を提供する。本発明は、試料中のアスコルビン酸濃度を測定し、補正するなどの面倒な作業を必要としない、サンプルの前処理工程としてアスコルビン酸分解処理も必要のない、優れたポリフェノール測定方法である。【0045】【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例により特に限定されるものではない。参考例1:フォーリン.チオカルト法によるアスコルビン酸の影響ポリフェノールの代表的な成分であるカテキン700ppmに各濃度のL−アスコルビン酸を加えたサンプルを調製した。アスコルビン酸添加量は、最大1000ppmまで順次増やした。フォーリン.チオカルト法は、以下の手順で測定した。【0046】すなわち、ミリQ水3.5mlを入れた15ml容の容器中に、カテキン標準液又は各サンプル50μlを正確に添加した。次にフォーリン,チオカルト試薬を0.5ml添加し、室温で1分間攪拌し、静止1分後に20%炭酸ナトリウム溶液を0.5ml添加し、直ちにミリQ水を0.45ml加えた。【0047】1分間程度攪拌後1時間室温で静止した。その後、分光光度計にて765nmの吸光度を測定した。但し測定前にミリQ水のブランクを測定し、ブランク値を求めておいた。【0048】結果を図3に示す。結果より、サンプル中に含まれるアスコルビン酸濃度に比例し、吸光度(ポリフェノール濃度)も増加しており、アスコルビン酸の影響を受けていることがわかる。【0049】参考例2:電気化学的検出法によるアスコルビン酸の影響の検出電気化学的検出方法として、ペルオキシターゼ酵素、及び電子メディエータを含有してなる過酸化水素センサーを用い、一定濃度の過酸化水素と試料液を反応槽に添加し、その後ペルオキシターゼ酵素を添加することで、過酸化水素濃度の減少を電気化学的に測定することで、試料液中のポリフェノール濃度を測定する方法を採用した。又、ポリフェノールの代表的な成分であるカテキン700ppmに各濃度のL−アスコルビン酸を加えたサンプルを準備した。アスコルビン酸添加量は、最大1000ppmまで順次増やした。【0050】すなわち、過酸化水素センサーの製造及び測定は、以下の手順で実施した。【0051】過酸化水素センサーの製作は、フェロセン、液体パラフィン及びグラファイトを4:20:40の重量比で混合して十分練った後、カーボンペースト(1)の凹部(内径2.5mm)に詰め、表面をパラフィン紙にこすりつけて滑らかにし、その表面にペルオキシターゼ酵素を固定した酵素膜(2)を被覆し、Oリング(4)で止めた。(図4)上記のように製作された過酸化水素センサー(a)、参照電極(b)、及び対極(c)のそれぞれをポテンショスタット(f)に接続し、測定緩衝液に浸漬して測定セル(h)とした。(図5)測定セルに緩衝液(100mM りん酸緩衝液、pH6.9)20mlを入れ、過酸化水素センサー、電極を浸漬した後、印加電圧をかけた(0.1v vs. Ag/Agcl)。一定濃度の過酸化水素(400ppmの濃度の水溶液を50μl(終濃度1ppm))とサンプル50μlを測定セルに添加し、過酸化水素濃度を測定した。出力電流値が安定した時点で、ペルオキシターゼ酵素を(濃度500U/mlのものを50μl)添加し、過酸化水素の減少量を測定した。【0052】最終安定値を読みとり、カテキンで作成した検量線より、サンプル中のポリフェノール濃度を求めた。【0053】電気化学的検出法の結果を図6に示す。結果よりサンプル中に含まれるアスコルビン酸濃度に比例し、ポリフェノール濃度も増加しており、電気化学的な測定方法においてアスコルビン酸の影響を受けていることがわかる。【0054】実施例1:本発明の測定方法によるポリフェノールの測定(アスコルビン酸オキシターゼ添加の効果)上記電気化学的検出法での測定において、混合液中にアスコルビン酸オキシターゼを添加することによる効果を検討した。【0055】▲1▼アスコルビン酸オキシターゼASO−312(東洋紡績製 111U/mg)を100mMリン酸バッファー(pH6.9)で、5mg/Lとなるよう溶解した。【0056】▲2▼次に、700ppmのカテキン溶液に1000ppmのL−アスコルビン酸を添加したサンプルを調製した。【0057】測定前に▲1▼で調製したアスコルビン酸オキシターゼ溶液を緩衝液中に添加し、室温で 1分間反応させた後、サンプルのポリフェノール濃度を測定した。具体的には、参考例2で作製した過酸化水素センサーを用いて、アスコルビン酸オキシダーゼを緩衝液に添加する以外は、参考例2と同様に過酸化水素の減少量を測定した。【0058】(a)即ち、過酸化水素(400ppm)を0.05ml、アスコルビン酸オキシダーゼ(0.555U/ml)を含む上記緩衝液20ml及びポリフェノール及びアスコルビン酸を含む試料0.05mlを混合し、25℃で1分間反応させることによってアスコルビン酸を分解させた後、過酸化水素濃度を測定した。(b)次に、ペルオキシターゼ酵素を(濃度500U/mlのものを50μl)添加し、一定時間経過後(5分程度)の過酸化水素の減少を測定した。【0059】結果を図7に示す。図7より、▲1▼で調製したアスコルビン酸オキシターゼ溶液を10U/20ml以上添加すれば、サンプル中に含まれる1000ppmのアスコルビン酸は、完全に分解され、ポリフェノール測定に影響しないことがわかる。【0060】実施例2:本発明の測定方法による市販の緑茶中のポリフェノール濃度の測定(アスコルビン酸オキシターゼ添加による効果)アスコルビン酸オキシターゼを添加した緩衝液を準備し、実施例1に従って市販の緑茶を測定した。参考の為、緩衝液中にアスコルビン酸オキシターゼ(ASO-312)を添加しないで測定した結果と比較した。結果を表1に示す。尚、通常量とは、アスコルビン酸オキシダーゼを反応液中0.555U/ml添加した濃度であり、2倍量は 1.11U/ml添加した濃度である。結果より、アスコルビン酸オキシターゼ添加の効果を把握できる。【0061】【表1】【図面の簡単な説明】【図1】 本発明のポリフェノール測定の原理を示す図である。【図2】 ポリフェノールの電気化学的検出方法におけるアスコルビン酸影響の要因を説明する図である。【図3】 フォーリン.チオカルト法によるアスコルビン酸の影響を示す図である。【図4】 本発明の過酸化水素センサーの一例を示す図である。【図5】 本発明の電気化学的検出装置の一例を示す図である。【図6】 本発明の電気化学的検出方法によるポリフェノール測定において、アスコルビン酸の影響を示す図である。【図7】 本発明によるアスコルビン酸オキシターゼ添加量の検討結果を示す図である。【符号の説明】1 カーボンペースト2 酵素膜3 銀線4 Oリングa 過酸化水素センサーb 参照電極c 対極d 温度センサーe スターラf ポテンショスタットg データ処理h 測定セル 過酸化水素、過酸化水素を分解する酵素、緩衝液及びポリフェノールを含む試料を混合し、一定時間経過後の過酸化水素の減少を、電気化学的に測定することにより、試料中のポリフェノールを測定する方法において、該混合液がアスコルビン酸を分解するクエンチャーを含み、(a)過酸化水素、アスコルビン酸を分解するクエンチャー、緩衝液及びポリフェノールを含む試料を混合し、試料中に含まれるアスコルビン酸を分解させ、(b)その後、該混合液に過酸化水素を分解する酵素を添加し、一定時間経過後の過酸化水素の減少を測定することを特徴とするポリフェノールの測定方法。 過酸化水素、緩衝液及びポリフェノールを含む試料を混合し、一定時間経過後の過酸化水素の減少を、電気化学的に測定することにより、試料中のポリフェノールを測定する方法において、該混合液がアスコルビン酸を分解するクエンチャーを含み、(a)アスコルビン酸を分解するクエンチャー、緩衝液及びポリフェノールを含む試料を混合し、試料中に含まれるアスコルビン酸を分解させ、(b)その後、該混合液に過酸化水素を添加し、一定時間経過後の過酸化水素の減少を測定することを特徴とするポリフェノールの測定方法。 クエンチャーがアスコルビン酸オキシダーゼである請求項1または2記載の測定方法。 過酸化水素を分解する酵素が、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、またはチロシナーゼである請求項1に記載の測定方法。 電気化学的過酸化水素センサーを用いて測定する請求項1〜4のいずれかに記載の測定方法。


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