タイトル: | 特許公報(B2)_光によるシトラールの減少抑制剤及び減少抑制方法 |
出願番号: | 2001051923 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C11B 9/00,A23L 2/68,A61K 8/33 |
村西 修一 植野 寿夫 清原 進 増田 秀樹 JP 4933700 特許公報(B2) 20120224 2001051923 20010227 光によるシトラールの減少抑制剤及び減少抑制方法 小川香料株式会社 591011410 結田 純次 100127926 高木 千嘉 100091731 西村 公佑 100080355 新井 信輔 100106769 村西 修一 植野 寿夫 清原 進 増田 秀樹 20120516 C11B 9/00 20060101AFI20120419BHJP A23L 2/68 20060101ALN20120419BHJP A61K 8/33 20060101ALN20120419BHJP JPC11B9/00 JA23L2/00 DA61K8/33 C11B9/00 特開平08−231979(JP,A) 特開平04−027374(JP,A) 国際公開第98/058656(WO,A1) 食品と科学,1995年,Vol. 37, No.2,pp. 96-102 ビバリッジ ジャパン,1998年,No. 204 (Vol.21, No.12),pp. 41-43 FFIジャーナル,2000年11月 1日,No. 189,pp. 47-53 FFIジャーナル,2000年11月 1日,No. 189,pp. 53-54 月刊フードケミカル,1998年,1998-9,pp. 51-56 4 2002255778 20020911 21 20080130 特許法第30条第1項適用 平成12年9月1日 発行の「第44回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会 講演要旨集」に発表 中野 孝一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、シトラール又はシトラールを含有する製品に広く適用することができるシトラールの減少抑制剤、並びにシトラールの減少抑制方法に関する。ここで本発明における「シトラールを含有する製品」とは、食品(本発明でいう食品とは特に限定されるものではなく、例えば炭酸飲料、果汁、果汁飲料、乳性飲料、茶類飲料等の飲料、ヨーグルト、プリン、ゼリー、アイスクリーム等の冷菓、キャンディー、水飴等の菓子等が挙げられる);食品素材;或いはフレーバー等の食品添加物;香水、化粧品、洗剤、石鹸、シャンプー、リンス、入浴剤、芳香剤等の香粧品など、シトラールを香味又は香気成分として利用する物の総称である。【0002】【従来の技術】シトラールは、レモン様の特徴的な香気・香味を有する重要なフレーバー成分であるが、光の照射により減少する。すなわち異性化、酸化、分解等によりシトラールの化学構造が変わり、その結果、劣化臭成分に変化することが知られている(R. C. Cookson et al. ; Tetrahedron, 19, 1995(1963))。それ故、シトラールを含有する製品中のシトラール含量は、製品の製造、流通、保存等の各段階で光に暴露されることにより徐々に減少し、本来のフレッシュなシトラス感が失われるとともに劣化臭成分が増加するため製品の品質低下の大きな要因となっている。【0003】従来、光によるシトラールの減少抑制のため、シトラール含有製品には、例えばアルミニウム等の遮光性材料を用いた容器等が使用されてきた。しかし、アルミニウム等は遮光性材料として優れている反面、その使用コストが高いという問題があった。一方、最近では店頭ディスプレイ時に製品のイメージアップを図るため、透明ガラス容器入りの食品や化粧品、透明又は半透明プラスチック容器入りの食品や化粧品および透明袋入りの食品が急増しており、さらにそうした製品をコンビニエンスストア、スーパー等では長時間、蛍光灯又は日光の下に陳列する販売形態が一般的になっている。その結果、シトラールの減少と劣化臭の生成に起因する製品の品質低下や異臭の発生が従来に比べより一層の問題となっている。【0004】そこで光によるシトラールの減少に対して大きな抑制効果をもたらすと同時に安価なシトラールの減少抑制方法が求められ、コストの高い容器の開発よりも、低コストで扱いの簡便な添加剤を用いることによるシトラールの減少抑制方法が要望されている。こうした光起因のシトラールの減少を抑制するための添加剤として、ビタミンCが有効であるという報告(H. Tateba et al. The proceedings of the Eighth Weuruman Flavour Reserch Symposium, held in Reading, UK on 23-26 July 1996. p82-85)がある。これはビタミンCのラジカル消去効果によりシトラールの減少抑制を図るものである。【0005】しかしながら、実際にはビタミンCをシトラール含有製品に使用しても、シトラールの減少抑制効果は十分ではなく、過剰に使用すれば製品本来の香味が損なわれることになる。従って、製品に添加した場合にシトラールの減少抑制効果が高く、しかも安全で経済性に優れ、かつ製品の本来の香味・香気に影響を与えることのない少量の使用で十分な効果を奏する新たなタイプのシトラールの減少抑制剤又は抑制方法が強く要望されている。【0006】【発明が解決しようとする課題】従来技術における問題点に鑑み、本発明はシトラールを含有する製品の製造、流通、保存等の各段階で光を起因とするシトラールの減少と、それに伴うシトラール由来の劣化臭の生成を効果的に抑制でき、また安全性が高く、経済性に優れしかも製品本来の香味又は香気に影響を与えることのないシトラールの減少抑制剤、並びに減少抑制方法を提供することを目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、光によるシトラールの減少について詳細に検討した結果、特定の植物の溶媒抽出物、或いは特定の食品由来の成分をシトラール又はシトラールを含有する製品に配合することにより、シトラールの減少抑制効果に顕著な効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明は、シトラール又はシトラール含有製品の光照射によって発生する異臭が、主としてシトラールの光照射によって生成する特定の光環化反応生成物、すなわちシトラールに由来する特定の化合物による劣化臭であることを解明した研究成果に基づくものである(「第44回 香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会」平成12年9月15日〜17日;主催/日本化学会;共催/日本薬学会・日本農芸化学会)。かかる劣化臭の主要因である光環化反応生成物は、下記のとおりである。【0008】▲1▼ フォトシトラール(photocitral C)(1R*,2S*,5S*)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.0]hexane-2-carboxaldehyde▲2▼ フォトシトラール(photocitral D)(1R*,2R*,5S*)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.0]hexane-2-carboxaldehyde▲3▼ フォトシトラール(photocitral B)(1R*,4S*,5R*)-1,6,6-trimethylbicyclo[2.1.1]hexane-5-carboxaldehyde▲4▼ フォトシトラール(photocitral A)(1S*,2S*,5S*)-2-isopropenyl-5-methylcyclopentan-1-aldehyde、及び▲5▼ 2-(3-methyl-2-cyclopenten-1-yl)-2-methylpropanal【0009】従って、本発明のシトラールの減少抑制剤並びに減少抑制方法は、同時にそれぞれ光によるシトラール由来の劣化臭成分の生成抑制剤、その劣化臭成分の生成抑制方法として機能する。【0010】本発明は、シソ科メンタ(Mentha)属ミントの溶媒抽出物、キク科アルテミシア(Artemisia)属ヨモギの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属オレンジの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属レモンの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属グレープフルーツの溶媒抽出物、カフェー酸(caffeic acid)、フェルラ酸(ferulic acid)、シナピン酸(sinapic acid)、ロズマリン酸(rosmarinic acid)、ジカフェオイルキナ酸(dicaffeoyl quinic acid)類、クマル酸(cumaric acid)類、α−グルコシルルチン(α-glucosyl rutin:酵素処理ルチン)、クエルセチン(quercetin)、ミリシトリン(myricitrin)、クエルシトリン(quercitrin)、γ−オリザノール(γ−orizanol)、カンフェロール(kaempferol)、ヘスペレチン(hesperetin)、クリシン(chrysin)、ルテオリン−7−グリコシド(luteolin-7-glucoside)、6−ヒドロキシフラボン(6-hydroxyflavone)、7−ヒドロキシフラボン(7-hydroxyflavone)、プラトール(pratol)及び7,8−ジヒドロキシフラボン(7,8-dihydroxyflavone)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分であることを特徴とするシトラール又はシトラールを含有する製品中のシトラールの減少抑制剤である。【0011】また、上記減少抑制剤において、シトラール含有製品がシトラス飲料及びデザートから選ばれる食品であることを特徴とし、シトラール含有製品が香粧品であることを特徴とする。【0012】さらに、本発明はシトラール含有製品に、シソ科メンタ(Mentha)属ミントの溶媒抽出物、キク科アルテミシア(Artemisia)属ヨモギの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属オレンジの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属レモンの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属グレープフルーツの溶媒抽出物、カフェー酸(caffeic acid)、フェルラ酸(ferulic acid)、シナピン酸(sinapic acid)、ロズマリン酸(rosmarinic acid)、ジカフェオイルキナ酸(dicaffeoyl quinic acid)類、クマル酸(cumaric acid)類、α−グルコシルルチン(α-glucosyl rutin:酵素処理ルチン)、クエルセチン(quercetin)、ミリシトリン(myricitrin)、クエルシトリン(quercitrin)、γ−オリザノール(γ−orizanol)、カンフェロール(kaempferol)、ヘスペレチン(hesperetin)、クリシン(chrysin)、ルテオリン−7−グリコシド(luteolin-7-glucoside)、6−ヒドロキシフラボン(6-hydroxyflavone)、7−ヒドロキシフラボン(7-hydroxyflavone)、プラトール(pratol)及び7,8−ジヒドロキシフラボン(7,8-dihydroxyflavone)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を1〜500ppm配合することを特徴とするシトラール又はシトラールを含有する製品中のシトラールの減少抑制方法である。【0013】【発明の実施の形態】〔1〕シトラールの減少抑制剤シトラールの減少抑制剤としては人体への安全性の観点から、従来より食品や漢方薬に使用されている植物関連の天然物に由来するものが好ましい。こうした条件を満たすものとして、下記のミント、ヨモギ、オレンジ、レモン、グレープフルーツのそれぞれから溶媒を用いて抽出された各抽出物、若しくは食品中に存在するカフェー酸(caffeic acid)、フェルラ酸(ferulic acid)、シナピン酸(sinapic acid)、ロズマリン酸(rosmarinic acid)、ジカフェオイルキナ酸(dicaffeoyl quinic acid)類、クマル酸(cumaric acid)類、α−グルコシルルチン(α-glucosyl rutin:酵素処理ルチン)、クエルセチン(quercetin)、ミリシトリン(myricitrin)、クエルシトリン(quercitrin)、γ−オリザノール(γ−orizanol)、カンフェロール(kaempferol)、ヘスペレチン(hesperetin)、クリシン(chrysin)、ルテオリン−7−グリコシド(luteolin-7-glucoside)、6−ヒドロキシフラボン(6-hydroxyflavone)、7−ヒドロキシフラボン(7-hydroxyflavone)、プラトール(pratol)及び7,8−ジヒドロキシフラボン(7,8-dihydroxyflavone)から選ばれ、これらを2種以上併用することもできる。【0014】上記の中でミント等の植物の溶媒抽出物については下記の植物種が例示されるがそれに限定されるものではない。▲1▼ミント:ミズハッカ(学名:Mentha aquatica L.)セイヨウハッカ(学名:Mentha piperita L.)ペニロイアルハッカ(学名:Mentha pulegium L.)マルバハッカ(学名:Mentha rotundifolia (L.)Huds.)オランダハッカ(学名:Mentha spicata L)ベルガモットハッカ(学名:Mentha citrata (Ehrh.)Briq.)【0015】▲2▼ヨモギ:ヨモギ(学名:Artemisia princeps)カズザキヨモギ(学名:Artemisia indica Willd. yar. maximowiczii (Nakai) Hara)ヤマヨモギ(学名:Artemisia Montana(Nakai) Pamp.)オトコヨモギ(学名:Artemisia japonica Thunb. ex Murray)ホソバノオトコヨモギ(学名:Artemisia japonica Thunb. ex Murray f. resedifolica Takeda)シロヨモギ(学名:Artemisia steleriana Bess)ヒロハヤマヨモギ(学名:Artemisia stolonifera(Maxim.) Komarov)ヒロハウラジロヨモギ(学名:Artemisia koidzumii Nakai)イヌヨモギ(学名:Artemisia keiskeana Miq.)サマニヨモギ(学名:Artemisia arctica Less)キタダケヨモギ(学名:Artemisia kitadakensis Hara et Kitamura)アサギリソウ(学名:Artemisia schmidtiana Maxim)ヨモギナ(学名:Artemisia lactiflora Wall. ex DC.)ヒメヨモギ(学名:Artemisia feddei Lev. et Vaniot)ヒトツバヨモギ(学名:Artemisia monophylla Kitamura)ミヤマオトヨモギ(学名:Artemisia pedunculosa Miq.)タカネヨモギ(学名:Artemisia sinanesis Yabe)ニガヨモギ(学名:Artemisia absinthium L.)カワラニンジン(学名:Artemisia apiacea Hance)カワラヨモギ(学名:Artemisia capillaries Thunb. ex Murray)クソニンジン(学名:Artemisia annua L.)【0016】▲3▼オレンジ:(学名:Citrus nobikis f.deliciosa)(学名:Citrus nobilis Lour.)(学名:Citrus sinensis L.)(学名:Citrus unshiu Marc.)▲4▼レモン:(学名:Citrus limon Burm. Fil.)▲5▼グレープフルーツ:(学名:Citrus paradisi Macf.)【0017】上記のうちミントについては、茎(枝幹)、葉を原材料として後述の抽出処理に付される。また、ヨモギについては葉を、オレンジ、レモン、グレープフルーツについては果皮を使用することが好ましい。以下にミント、ヨモギ、オレンジ、レモン、グレープフルーツからの溶媒抽出物の製造に用いる溶媒と抽出法の一例を挙げるが、本発明に適用される抽出法は、下記の例に限定されるものではない。【0018】抽出処理に使用する溶媒は、水又は極性有機溶媒であり、有機溶媒は含水物であっても良い。極性有機溶媒としては、アルコール、アセトン、酢酸エチル等が例示される。中でも人体への安全性と取扱性の観点から水またはエタノール、プロパノール、ブタノールのような炭素数2〜4の脂肪族アルコールが望ましく、特に、水又はエタノール又はこれらの混合物が望ましい。【0019】抽出に用いる溶媒の量は任意に選択できるが、一般には上記植物の原材料1重量部に対し溶媒量が2〜100重量部、好ましくは5〜20重量部を使用する。なお、抽出の前処理としてヘキサン等の非極性有機溶媒であらかじめ脱脂処理をし、後の抽出処理時に余分な脂質が抽出されるのを防止してもよい。またこの脱脂処理で結果的に脱臭等の精製ができる場合がある。さらに、脱臭の目的で抽出前に水蒸気蒸留処理を施しても良い。【0020】抽出処理方法としては、抽出の対象となる原材料の種類、量等により種々の方法を採用することができる。例えば前記各種植物を粉砕したものを溶媒中に入れ、浸漬法又は加熱還流法で抽出することができる。なお浸漬法による場合は加熱条件下、室温又は冷却条件下のいずれであってもよい。次いで、溶媒不溶物を除去して抽出液を得るが、溶媒不溶物を除去する方法としては、遠心分離、濾過、圧搾等の各種の固液分離手段を適宜用いることができる。【0021】得られた抽出液はそのままでもシトラールの減少抑制剤成分として使用できるが、例えば、水、エタノール、グリセリン、トリエチルシトレート、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等の液体希釈剤で適宜希釈して使用してもよい。さらに希釈剤等としてデキストリン、シュークロース、ペクチン、キチン等を加えることもできる。これらをさらに濃縮してペースト状の抽出エキスとしても、また凍結乾燥又は加熱乾燥などの処理を行い粉末として使用してもよい。また超臨界抽出による抽出、分画、または脱臭処理したものも使用可能である。 なお、上記抽出物の市販品を使用してもよい。【0022】上記方法で得られた抽出物は、そのままシトラール含有食品に配合することができるが、さらに、脱色、脱臭等の精製処理をすることができる。精製処理には活性炭や多孔性のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる合成樹脂吸着剤などを使用することができる。かかる精製用の合成樹脂吸着剤としては、例えば三菱化学株式会社製「ダイヤイオンHP−20(商品名)」やオルガノ株式会社製「アンバーライトXAD−2(商品名)」等が例示される。【0023】また、上記植物抽出物以外のシトラール減少抑制剤である、カフェー酸(3,4−ジヒドロキシケイヒ酸)、フェルラ酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシケイヒ酸)、シナピン酸(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイヒ酸)、ロズマリン酸、ジカフェオイルキナ酸類、クマル酸類、α−グルコシルルチン(酵素処理ルチン)、クエルセチン、ミリシトリン、クエルシトリン、γ−オリザノール、カンフェロール、ヘスペレチン、クリシン、ルテオリン−7−グリコシド、6−ヒドロキシフラボン、7−ヒドロキシフラボン、プラトール、7,8−ジヒドロキシフラボンは、それ自体既知の化合物であり、試薬又は市販品として入手可能である。これらは精製品でも未精製品でもよく、また、これらの成分を産出する植物、動物、微生物等天然物より得られた粗生成物であってもよく、さらにこれらの成分を含有する抽出物であってもよい。【0024】例えば、フェルラ酸、ロズマリン酸、α−グルコシルルチン(酵素処理ルチン)に関しては、築野ライスファインケミカルズ(株)製の「フェルラ酸」、東洋精糖(株)製の「αGルチンPS又はαGルチンP」(α−グルコシルルチン)、東京田辺製薬(株)製の「RM−21A」(ロズマリン酸)等の市販品を用いることができる。また、クエルセチンはルチン分解物としてアルプス薬品工業(株)から入手可能である。【0025】また、ジカフェオイルキナ酸類、カフェー酸に関しては、以下の抽出法で得ることができる。すなわち、粉砕したコーヒー生豆に10倍重量の含水エタノールを添加し、1〜3時間還流抽出する。冷却後不溶物を濾別し、減圧下で10〜20倍濃縮し、希塩酸を用いてpH2〜3に調製する。調製液を前記多孔性の合成樹脂吸着剤に通液させジカフェオイルキナ酸類、カフェー酸を吸着させる。水で洗浄後、含水エタノールで脱着し、ジカフェオイルキナ酸、カフェー酸等を含有する抽出物を得ることができる。さらに分取高速液体クロマトグラフィーを用いて高純度の、ジカフェオイルキナ酸、カフェー酸を得ることができる。【0026】シトラールの減少抑制剤は、上記のとおり得られた抽出物、又はカフェー酸、フェルラ酸、シナピン酸、ロズマリン酸、ジカフェオイルキナ酸類、クマル酸類、α−グルコシルルチン(酵素処理ルチン)、クエルセチン、ミリシトリン、クエルシトリン、γ−オリザノール、カンフェロール、ヘスペレチン、クリシン、ルテオリン−7−グリコシド、6−ヒドロキシフラボン、7−ヒドロキシフラボン、プラトール及び7,8−ジヒドロキシフラボンの単品化合物を原材料として例えば以下のように調製される。【0027】一般的には各種成分を組み合わせて、例えば水、アルコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、トリエチルシトレート等の(混合)溶剤に適当な濃度で溶解させて(具体的には、水/エタノール、水/エタノール/グリセリン、水/グリセリン等の混合溶剤)液剤とする。また、各種成分の溶液に賦形剤、乳化剤等(デキストリン等)を添加し噴霧乾燥によりパウダー状にすることも可能であり、用途に応じて種々の剤形を採用することができる。【0028】〔2〕シトラールの減少抑制方法本発明のシトラールの減少抑制剤をシトラール含有製品の加工段階で適宜添加することにより、製品中のシトラールの減少を抑制することができる。抽出物であるミント、ヨモギ、オレンジ、レモン、グレープフルーツの添加量については特に制限はなく、使用する劣化抑制剤の成分の純度、あるいは添加対象の種類により異なるが、一般的に1〜500ppmの添加量が適当である。食品の場合には、食品本来の香味・香気にほとんど影響を及ぼさない用量という観点から、抽出物の濃度は1〜100ppm、特に3〜50ppmが好ましい。香粧品の場合には、その香気に影響を与えない用量という観点から、抽出物の濃度は1〜500ppmが好ましい。【0029】また、カフェー酸、フェルラ酸、シナピン酸、ロズマリン酸、ジカフェオイルキナ酸類、クマル酸類、α−グルコシルルチン(酵素処理ルチン)、クエルセチン、ミリシトリン、クエルシトリン、γ−オリザノール、カンフェロール、ヘスペレチン、クリシン、ルテオリン−7−グリコシド、6−ヒドロキシフラボン、7−ヒドロキシフラボン、プラトール及び7,8−ジヒドロキシフラボンの使用量についても特に制限はなく、使用する減少抑制剤の成分の純度、あるいは添加対象の製品の種類により異なるが、純度の高いものでは1〜500ppmが適当である。1〜100ppmの範囲が好ましい。【0030】またシトラール減少抑制剤を2種類以上混合するときの割合は、特に限定されるものではない。混合した減少抑制剤の添加量については、使用する減少抑制剤の成分の純度、あるいは添加対象の製品の種類により異なるが、純度の高いものでは、1〜500ppmが適当である。1〜100ppmの範囲が好ましい。【0031】〔3〕減少抑制剤又は減少抑制方法の適用の対象本発明のシトラール減少抑制剤又は抑制方法を適用しうる製品としては、特に限定はしないが、例えば、食品では店頭陳列される場合が多い炭酸飲料、果汁、果汁飲料等のシトラス飲料、シトラール含有のヨーグルト、ゼリー、アイスクリーム等の冷菓、キャンディー、水飴等の菓子等、各種シトラス風味のドレッシング等が挙げられる。食品以外では、シトラールを含有する香水、化粧品、洗剤、石鹸、シャンプー、リンス、入浴剤、芳香剤等の香粧品が挙げられる。また、食品への適用に当たっては、種々の食品原料(例えば、砂糖、醤油、塩等)及び各種食品添加物(例えば、調味料、酸味料等)に適当な濃度となるように混ぜ込んで使用してもよい。【0032】【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。(1)抽出物抽出物を以下のとおり調製した。【0033】〔抽出例1〕(ミント抽出物)セイヨウハッカの乾燥葉1kgを8リットルのエタノールで2回還流抽出した。次いで、2回の抽出液の合液を、約0.5リットルまで減圧濃縮した。これに50重量%エタノール1.5 リットルを加え、ヘキサン(1リットル×3回)で液−液分配し、含水エタノール層を集めて減圧濃縮し、72g のエキスを得た。このエキスを「ダイヤイオン」(三菱化学(株)製の多孔性樹脂「DIAION HP−20」)のカラムクロマトグラフィー(φ50×300mm )に付し、水、20%(v/v)エタノール、50%(v/v)エタノール、エタノール、アセトン(各4リットル)で順次溶出し、減圧濃縮して各々の溶出物を得た。【0034】以下それぞれ「ミント20%エタノール溶出物」、「ミント50%エタノール溶出物」と呼ぶ。物性は以下の通りであった。a) 「ミント50%エタノール溶出物」の紫外線吸収スペクトルは図1に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.0クエン酸緩衝液)。なお、測定機器は島津製作所製の「分光光度計UV−2100PC」を使用した(以下の各抽出例も同様)。λmax:284,329nmb) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノールに易溶、エタノールに可溶【0035】〔抽出例2〕(ヨモギ抽出物)乾燥ヨモギ葉500gに7.5kgの50重量%エタノールを添加し、1時間還流抽出した。冷却後、残渣を固液分離後、セライトろ過し不溶物を取り除いた。 濾液を減圧下で約2kgに濃縮後、不溶物をセライトろ過した。ろ液を前記多孔性樹脂であるHP20(500ml)に通した後、蒸留水2kgで洗浄した。次に10重量%エタノール1kg、続いて30重量%エタノール4kgで脱着した。減圧下で30重量%エタノール溶出画分を約1kgまで濃縮後、フリーズドライし、淡褐色粉末20.1gを得た。【0036】以下「ヨモギ抽出物」と呼ぶ。物性は以下の通りであった。a) 紫外線吸収スペクトルは図4に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)。λmax:325nmb) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノールに易溶、エタノールに可溶【0037】〔抽出例3〕(オレンジ抽出物、ヘプタメトキシフラボン、タンゲリチン及びノビレチン)オレンジ果皮を圧搾して得られた精油を減圧蒸留してリモネン等の揮発成分を除去した不揮発性のワックス様物質50gに50重量%エタノールを1000g添加し、55℃に達するまで加熱攪拌した。室温まで冷却後、分液し水―エタノール層を分取した。その溶液に活性炭1gを添加し室温で30分間攪拌後、不溶物をセライトろ過し除去した。エバポレーターによりアルコールを減圧除去した後、フリーズドライし10.5gの淡褐色粉末を得た。以下「オレンジ抽出物」と呼ぶ。物性は以下の通りであった。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/0→0/1)にて分離精製し、ヘプタメトキシフラボン、タンゲリチン、ノビレチンをそれぞれ5.1g、2.5g、1.7gの白色結晶を得た。【0038】▲1▼オレンジ抽出物a) 紫外線吸収スペクトルは図5に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)。λmax:254,335nmb) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノールに易溶、エタノールに易溶【0039】▲2▼ヘプタメトキシフラボンa) 紫外線吸収スペクトルは図6に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)。λmax:254,343nmb) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノールに易溶、エタノールに易溶【0040】▲3▼タンゲリチンa) 紫外線吸収スペクトルは図7に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)。λmax:268,330nmb) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノールに易溶、エタノールに易溶【0041】▲4▼ノビレチンa) 紫外線吸収スペクトルは図8に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)。λmax:268,337nmb) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノールに易溶、エタノールに易溶【0042】〔抽出例4〕(レモン抽出物)レモン果皮を圧搾して得られた精油を減圧蒸留して揮発成分を除去した不揮発性のワックス様物質5gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1→1/1)にて分離した。各分画品のうち、シリカゲル薄層クロマトグラフィー上で、ヘキサン/酢酸エチル=1/1で展開した時の移動率(Rf)=0.6に相当する分画分をエバポレーターで溶媒を除去し、ヘキサン/酢酸エチルを用いて再結晶することにより、白色結晶0.1gを得た。以下「レモン抽出物」と呼ぶ。物性は以下の通りであった。【0043】a) 紫外線吸収スペクトルは図9に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:酢酸エチル)。λmax:255,320nmb) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノールに易溶、エタノールに易溶【0044】〔抽出例5〕(グレープフルーツ抽出物)グレープフルーツ果皮を圧搾して得られた精油を減圧蒸留して揮発成分を除去した不揮発性のワックス様物質10gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1→1/1)にて分離した。各分画品のうち、シリカゲル薄層クロマトグラフィー上で、ヘキサン/酢酸エチル=6/1で展開した時の移動率(Rf)=0.375に相当する分画分をエバポレーターで溶媒を除去し、ヘキサン/酢酸エチルを用いて再結晶することにより白色結晶0.7gを得た。以下「グレープフルーツ抽出物」と呼ぶ。物性は以下の通りであった。【0045】a) 紫外線吸収スペクトルは図10に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:酢酸エチル)。λmax:320nmb) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノールに易溶、エタノールに易溶【0046】単品試薬として以下のものを使用した。(1)カフェー酸ナカライテスク(株)製のカフェー酸を使用した。紫外線吸収スペクトルは図12に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)(2)フェルラ酸ナカライテスク(株)製のフェルラ酸を使用した。紫外線吸収スペクトルは図13に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0047】(3)シナピン酸ナカライテスク(株)製のシナピン酸を使用した。紫外線吸収スペクトルは図14に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0048】(4)ロズマリン酸EXTRASYNTHESE社製「ロズマリン酸」を使用した。紫外線吸収スペクトルは図15に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0049】(5)3,5−ジカフェオイルキナ酸コーヒー豆から単離したものを使用した。紫外線吸収スペクトルは図17に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0050】(6)p−クマル酸ナカライテスク(株)製のp−クマル酸を使用した。紫外線吸収スペクトルは図18に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0051】(7)α−グルコシルルチン東洋精糖(株)製のα−グルコシルルチン(酵素処理ルチン)、商品名「αGルチンPS」(以下、αGルチンPSと略す)を使用した。紫外線吸収スペクトルは図20に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0052】(8)クエルセチンナカライテスク(株)製のクエルセチンを使用した。紫外線吸収スペクトルは図21に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)。【0053】(9)ミリシトリンEXTRASYNTHESE(株)製のミリシトリンを使用した。紫外線吸収スペクトルは図22に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:95重量%エタノール)。【0054】(10)クエルシトリンナカライテスク(株)製のクエルシトリンを使用した。紫外線吸収スペクトルは図23に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0055】(11)γ―オリザノールナカライテスク(株)製のγ―オリザノールを使用した。紫外線吸収スペクトルは図25に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:エタノール)【0056】(12)カンフェロールEXTRASYNTHESE(株)製のカンフェロールを使用した。紫外線吸収スペクトルは図26に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:エタノール)【0057】(13)ヘスペレチンEXTRASYNTHESE(株)製のヘスペリチンを使用した。紫外線吸収スペクトルは図27に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0058】(14)クリシンEXTRASYNTHESE(株)製のクリシンを使用した。紫外線吸収スペクトルは図28に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:エタノール)【0059】(15)ルテオリン−7−グリコシドEXTRASYNTHESE(株)製のルテオリン−7−グリコシドを使用した。紫外線吸収スペクトルは図29に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:エタノール)【0060】(16)6−ヒドロキシフラボンEXTRASYNTHESE(株)製の6−ヒドロキシフラボンを使用した。紫外線吸収スペクトルは図30に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0061】(17)7−ヒドロキシフラボンEXTRASYNTHESE(株)製の7−ヒドロキシフラボンを使用した。紫外線吸収スペクトルは図31に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0062】(18)プラトールEXTRASYNTHESE(株)製のプラトールを使用した。紫外線吸収スペクトルは図32に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:エタノール)【0063】(19)7,8−ジヒドロキシフラボンEXTRASYNTHESE(株)製の7,8−ジヒドロキシフラボンを使用した。紫外線吸収スペクトルは図33に示すとおりである(測定濃度:20ppm、希釈溶剤:pH3.5クエン酸緩衝液)【0064】次に、上記シトラール減少抑制剤を添加したモデル飲料を作成し、シトラールの減少抑制効果を評価した。〔試験例1.1〕1/10Mクエン酸−1/5Mリン酸水素二ナトリウムで調整したpH3.5の緩衝溶液に、蔗糖5%、シトラール10ppm添加し酸性シトラール溶液を調整した。この溶液に各種シトラール減少抑制剤を10ppm添加し、50ml容量のガラスバイアル(テフロンキャップ付き)に各50g詰めた。光安定性試験器(東京理化器械株式会社製「LST−300型」)中、15000ルクス(高照度型蛍光灯昼光色:40W×12本)にて14日間、10℃にて光照射した。各酸性シトラール溶液をジクロロメタンで抽出後、ガスクロマトグラフィーにてシトラールの回収量を測定した。表1.1にシトラールの残存率を示した(無添加遮光条件でのシトラール回収量を100%とし相対値であらわした)。【0065】【表1】【0066】上記の表1.1によりカフェー酸、フェルラ酸、シナピン酸、ロズマリン酸、ジカフェオイルキナ酸類(3,5-ジカフェオイルキナ酸)、クマル酸類(p−クマル酸)、α−グルコシルルチン(酵素処理ルチン)及びクエルシトリンを添加することにより、無添加および他の抗酸化物質である(−)−エピカテキンガレート、没食子酸、ビタミンCに比較しシトラールの光による減少抑制を非常に強く抑制した。【0067】〔試験例1.2〕上記試験例1.1の光照射した各酸性シトラール溶液をジクロロメタンで抽出後、ガスクロマトグラフィーにてシトラール由来の劣化臭である(1R*,2S*,5S*)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.0]hexane-2-carboxaldehyde( =photocitral C)、(1R*,2R*,5S*)-2,6,6-trimethylbicyclo[3.1.0]hexane-2-carboxaldehyde(= photocitral D)、(1R*,4S*,5R*)-1,6,6-trimethylbicyclo[2.1.1]hexane-5-carboxaldehyde( =photocitral B)、2-(3-methyl-2-cyclopenten-1-yl)-2-methylpropanal、(1S*,2S*,5S*)-2-isopropenyl-5-methylcyclopentan-1-aldehyde(=photocitral A)の生成量を測定した。表1.2に劣化臭の生成抑制率〔無添加品の光照射条件での劣化臭の生成量をA、生成抑制剤添加品の光照射条件下での劣化臭の生成量をBとし、生成抑制率(%)=100−B/A×100〕で表した。【0068】【表2】【0069】上記の表1.2によりカフェー酸、フェルラ酸、シナピン酸、シナピン酸、ロズマリン酸、ジカフェオイルキナ酸類(3,5-ジカフェオイルキナ酸)、クマル酸類(p−クマル酸)、α−グルコシルルチン(酵素処理ルチン)、クエルシトリン、オレンジ抽出物、ヘプタメトキシフラボン、タンゲリチン及びノビレチンを添加することにより、無添加および他の抗酸化物質である(−)−エピカテキンガレート、没食子酸、ビタミンCに比較し、光によるシトラール由来の劣化臭の生成抑制を非常に強く抑制した。【0070】〔試験例2〕砂糖35g、クエン酸0.35g 及びシトラール1gを含有する65重量%エタノール水溶液を準備した(全量1000ml )。この溶液を透明ガラス容器に入れ、表2に示す各種抽出物および化合物を200ppm添加し、光安定性試験器(東京理化器械株式会社製「LST−300型」)にて光照射を行った。条件は温度10℃、昼白色蛍光ランプ40W×12本(4000ルクス)及び360nm 近紫外線ランプ40W×3本(紫外線強度0.3mW/cm2)で72時間光照射した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて光照射後のシトラール含量を測定した。なお、測定条件は次のとおりである。【0071】(測定条件)装 置:日立製作所製「HITACHI D−7000 HPLCシステム」カラム:ナカライテスク社製「コスモシール 5C18−AR−11 」(カラム温度40℃)溶離液: 0分 アセトニトリル:蒸留水=10:9025分 アセトニトリル:蒸留水=90:10流 速:1ml/分検出波長:254nm表3におけるシトラール残存量(%)は以下の式にしたがって計算した。シトラール残存量(%)= A/B × 100(式中、Aは光照射後の試料中のシトラール含量を表し、Bは光照射前の試料中のシトラール含量を表す。)【0072】【表3】【0073】以上より、ミント、ヨモギ、オレンジ、レモン、グレープフルーツから溶媒抽出された各抽出物、γ−オリザノール、カンフェロール、ヘスペレチン、クリシン、ルテオリン−7−グリコシド、6−ヒドロキシフラボン、7−ヒドロキシフラボン、プラトール、p−クマル酸、シナピン酸、カフェー酸は無添加に比較しシトラールの減少抑制効果が非常に高かった。【0074】〔実施例1〕(ミント抽出物、オレンジ抽出物、レモン抽出物、グレープフルーツ抽出物の実施例:(レモン飲料))グラニュー糖5g、クエン酸0.1g、レモン香料(シトラール含有品)0.1gおよび蒸留水にて全量100gに調整した。これに各種シトラール減少抑制剤であるミント抽出物1%溶液を0.1g添加し均一に攪拌した。同様にヨモギ抽出物、オレンジ抽出物、レモン抽出物、グレープフルーツ抽出物の1%溶液を添加した。それぞれガラス容器に充填し70℃、10分間加熱殺菌し、レモン飲料を作成した。【0075】〔実施例2〕(カフェー酸、フェルラ酸、シナピン酸、ロズマリン酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、p−クマル酸、α−グルコシルルチン(α−GルチンPS)の実施例:(殺菌乳酸菌飲料))発酵乳原液20gに蒸留水を80gにて希釈した。レモン香料0.1gおよびカフェー酸の1%溶液を0.1g適量添加し、ガラス容器に充填後、殺菌(70℃、10分間)し完成した。フェルラ酸、シナピン酸、ロズマリン酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、p−クマル酸、α−グルコシルルチン(α−GルチンPS)についても同様に1%溶液を0.1g添加した。【0076】〔実施例3〕(クエルセチン、クエルシトリン、γ−オリザノール、カンフェロール、ヘスペレチン、クリシン、ルテオリン−7−グリコシド、6−ヒドロキシフラボン、7,8−ジヒドロキシフラボンの実施例(洗口剤))下記の表3の処方により洗口剤を作成した。【0077】【表4】【0078】上記クエルセチン入りの口腔洗浄剤と同様の処方にて、クエルシトリン、γ−オリザノール、カンフェロール、ヘスペレチン、クリスチン、ルテオリン−7−グリコシド、6−ヒドロキシフラボン、プラトール、7,8−ジヒドロキシフラボン入りの洗口剤を作成した。【0079】〔実施例4〕ミント抽出物、オレンジ抽出物、レモン抽出物、グレープフルーツ抽出物の実施例(化粧水)下記の表4の処方により化粧水を調製した。【0080】【表5】【0081】上記ミント抽出物入りの化粧水と同様にオレンジ抽出物、レモン抽出物、グレープフルーツ抽出物入りの化粧水を作成した。【0082】【発明の効果】本発明のシトラールの減少抑制剤をシトラール含有香料、若しくはシトラール含有製品等に使用することにより、光によるシトラールの減少を効果的に抑制することができる。また、本発明のシトラールの減少抑制剤は、光によるシトラール由来の劣化臭の主要因である化合物、フォトシトラールA、B、C及びD等の生成を効果的に抑制することができるので、シトラール由来の劣化臭生成抑制剤として機能する。よって、本発明のシトラールの減少抑制剤をの使用することによって、シトラール含有製品中のシトラールが製造、流通、保存期間中の各段階で光に暴露されることにより徐々に減少することを効率的に抑制でき、その結果、フレッシュ感が維持され且つ劣化臭の無い、長期間安定した品質のシトラール含有製品を提供することが可能となる。また、本発明のシトラールの減少抑制剤は、植物由来の抽出物、或いは入手しやすい成分からなるので安価であり、製品への添加も容易に行うことができるので、シトラールの減少抑制方法として経済性にも優れる。さらに、植物由来の抽出物、或いは元来、食品中に含まれている成分なので安全性が高く、しかも微量の濃度でシトラールの減少の抑制効果があるので食品を始めとする製品本来の香味や香気に影響を与えることもない。【図面の簡単な説明】【図1】抽出例1におけるミント50%エタノール溶出物の紫外線吸収スペクトル図である。【図2】抽出例2におけるヨモギ抽出物の紫外線吸収スペクトル図である。【図3】抽出例3におけるオレンジ抽出物の紫外線吸収スペクトル図である。【図4】抽出例3におけるのヘプタメトキシフラボン紫外線吸収スペクトル図である。【図5】抽出例3におけるタンゲリチンの紫外線吸収スペクトル図である。【図6】抽出例3におけるノビレチンの紫外線吸収スペクトル図である。【図7】抽出例4におけるレモン抽出物の紫外線吸収スペクトル図である。【図8】抽出例5におけるグレープフルーツ抽出物の紫外線吸収スペクトル図である。【図9】カフェー酸の紫外線吸収スペクトル図である。【図10】フェルラ酸の紫外線吸収スペクトル図である。【図11】シナピン酸の紫外線吸収スペクトル図である。【図12】ロズマリン酸の紫外線吸収スペクトル図である。【図13】3,5−ジカフェオイルキナ酸の紫外線吸収スペクトル図である。【図14】p−クマル酸の紫外線吸収スペクトル図である。【図15】α−グルコシルルチン(αGルチンPS)の紫外線吸収スペクトル図である。【図16】クエルセチンの紫外線吸収スペクトル図である。【図17】ミリシトリンの紫外線吸収スペクトル図である。【図18】クエルシトリンの紫外線吸収スペクトル図である。【図19】γ―オリザノールの紫外線吸収スペクトル図である。【図20】カンフェロールの紫外線吸収スペクトル図である。【図21】ヘスペリチンの紫外線吸収スペクトル図である。【図22】クリシンの紫外線吸収スペクトル図である。【図23】ルテオリン−7−グリコシドの紫外線吸収スペクトル図である。【図24】6−ヒドロキシフラボンの紫外線吸収スペクトル図である。【図25】7−ヒドロキシフラボンの紫外線吸収スペクトル図である。【図26】プラトールの紫外線吸収スペクトル図である。【図27】7,8−ジヒドロキシフラボンの紫外線吸収スペクトル図である。 シソ科メンタ(Mentha)属ミントの溶媒抽出物、キク科アルテミシア(Artemisia)属ヨモギの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属オレンジの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属レモンの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属グレープフルーツの溶媒抽出物、シナピン酸、ロズマリン酸、ジカフェオイルキナ酸類、クマル酸類、クエルシトリン、γ−オリザノール、カンフェロール、ヘスペレチン、クリシン、ルテオリン−7−グリコシド、6−ヒドロキシフラボン、7−ヒドロキシフラボン及びプラトールからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分からなる、光によるシトラール又はシトラールを含有する製品中のシトラールの減少抑制剤。 シトラール含有製品がシトラス飲料及びデザートから選ばれる食品である請求項1記載のシトラールの減少抑制剤。 シトラール含有製品が香粧品である請求項1記載のシトラールの減少抑制剤。 シトラール又はシトラールを含有する製品に、シソ科メンタ(Mentha)属ミントの溶媒抽出物、キク科アルテミシア(Artemisia)属ヨモギの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属オレンジの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属レモンの溶媒抽出物、ミカン亜科シトラス(Citrus)属グレープフルーツの溶媒抽出物、シナピン酸、ロズマリン酸、ジカフェオイルキナ酸類、クマル酸類、クエルシトリン、γ−オリザノール、カンフェロール、ヘスペレチン、クリシン、ルテオリン−7−グリコシド、6−ヒドロキシフラボン、7−ヒドロキシフラボン及びプラトールからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を1〜500ppm配合することを特徴とする光によるシトラール又はシトラールを含有する製品中のシトラールの減少抑制方法。