タイトル: | 特許公報(B2)_9,10−ジフェニルアントラセンの製造法 |
出願番号: | 2001040463 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 1/32,C07C 15/60,C07B 61/00 |
岡本 訓明 栗田 富正 佐野 淳典 JP 4719988 特許公報(B2) 20110415 2001040463 20010216 9,10−ジフェニルアントラセンの製造法 和光純薬工業株式会社 000252300 岡本 訓明 栗田 富正 佐野 淳典 JP 2000059985 20000306 20110706 C07C 1/32 20060101AFI20110616BHJP C07C 15/60 20060101ALI20110616BHJP C07B 61/00 20060101ALN20110616BHJP JPC07C1/32C07C15/60C07B61/00 300 C07B 31/00-63/04 C07C 1/00-409/44 CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN) 特開平10−017531(JP,A) 特開2000−053676(JP,A) 特開平08−231454(JP,A) 特開平09−278676(JP,A) 特開平08−012600(JP,A) CASREACT[online]. Retrieved from:STN International, USA. Accession No. 125:221330. 9 2001322952 20011120 9 20071218 高橋 直子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料又は電子写真材料として有用な9,10-ジフェニルアントラセンの製造法に関する。【0002】【従来の技術】9,10-ジフェニルアントラセンは、有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料、又は電子写真材料として広く知られている。9,10-ジフェニルアントラセンの製造法としては、▲1▼ベンゾフェノンと水素化カルシウムを反応させて目的物を得る方法(Ber. (1928) 61, 1675)、▲2▼9,10-ジクロロアントラセンを無水マレイン酸と反応させた後、塩化アルミニウムと反応させ目的物を得る方法(Ber. (1931) 64, 2194)、▲3▼ベンゾイルヒドラジド(C6H5CONHNH2)とベンゾイルギ酸(C6H5COCOOH)を反応させた後、更にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いて脱水縮合反応させ、次いでベンザインを用いてDiels-Alder反応させた後目的物を得る方法(Synthesis (1977) 252)、▲4▼o-クロロトリフェニルメタンをシアン化銅と反応させニトリル化した後、ハロゲン化フェニルマグネシウムによりグリニャール反応させ、次いで臭化水素と酢酸を反応させ目的物を得る方法(Am. Soc. (1943) 65, 451)等が知られているが、何れの方法も、反応温度が高い、工程数が多い、反応時間が長い、廃棄物(例えば、▲1▼ではCa(OH)2、▲2▼ではAl、▲3▼ではジシクロヘキシル尿素等。)がでる等の問題点を有しており、これらの方法により得られる目的物は、何れも純度が低く、且つ収率も50%以下と低い為、工業的な製造法とは言い難いものであった。以上のことから、9,10-ジフェニルアントラセンの簡便且つ工業的な製造法の開発が望まれている現状にある。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、簡便且つ工業的に9,10-ジフェニルアントラセンを製造し得る方法を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】 本発明は、クロスカップリング反応用金属触媒の存在下、9,10-ジハロゲノアントラセンと金属又は半金属フェニル化合物とをクロスカップリング反応させることを特徴とする、9,10-ジフェニルアントラセンの製造法、の発明である。【0005】即ち、本発明者等は、9,10-ジフェニルアントラセンを簡便且つ工業的に製造する方法を見出すべく鋭意検討の結果、9,10-ジハロゲノアントラセンと金属又は半金属フェニル化合物とをクロスカップリング反応させることにより、従来の製造法に於ける上記した如き問題を解決して、1又は2工程で目的の9,10-ジフェニルアントラセンを工業的に製造し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。【0006】本発明に係る9,10-ジハロゲノアントラセンとしては、例えば、9,10-ジクロロアントラセン、9,10-ジブロモアントラセン、9,10-ジヨードアントラセン、9-ブロモ-10-クロロアントラセン、9-ブロモ-10-ヨードアントラセン、9-クロロ-10-ヨードアントアラセン等が挙げられ、中でも9,10-ジクロロアントラセン、9,10-ジブロモアントラセン、9,10-ジヨードアントラセンが好ましい。【0007】本発明に係る金属又は半金属フェニル化合物としては、フェニル基が直接金属又は半金属原子と結合した化合物が挙げられ、例えば一般式[1]【0008】【化2】【0009】(式中、Mは金属又は半金属原子を表し、Xはハロゲン原子又は水酸基を表し、nは0〜2の整数を表す。)で示される化合物等が挙げられる。【0010】一般式[1]に於いて、Mで示される金属原子としては、例えばリチウム原子、マグネシウム原子、アルミニウム原子、銅原子、亜鉛原子、スズ原子等が挙げられ、中でも好ましくはリチウム原子、マグネシウム原子、亜鉛原子、より好ましくはマグネシウム原子が挙げられる。【0011】Mで示される半金属原子は、非金属原子であって金属の傾向を有するものであり、そのような具体例としては、ホウ素原子、ケイ素原子等が挙げられ、中でもホウ素原子が好ましい。【0012】Xで示されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。【0013】これら金属又は半金属フェニル化合物の具体例としては、例えば臭化フェニルマグネシウム,塩化フェニルマグネシウム,ヨウ化フェニルマグネシウム等のマグネシウム−炭素結合を有するフェニル化合物(Grignard試薬)、例えば臭化フェニル亜鉛,塩化フェニル亜鉛等の亜鉛−炭素結合を有するフェニル化合物、例えばフェニルリチウム等のリチウム−炭素結合を有するフェニル化合物、例えばフェニルボロン酸等のホウ素−炭素結合を有するフェニル化合物等が挙げられ、中でも臭化フェニルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、ヨウ化フェニルマグネシウム、フェニルボロン酸が好ましい例として挙げられる。【0014】本発明の9,10-ジフェニルアントラセンの製造法は、具体的には、以下のようにして実施される。【0015】即ち、9,10-ジハロゲノアントラセンと金属又は半金属フェニル化合物とを、適当な溶媒中、要すれば、クロスカップリング反応用金属触媒の存在下反応させればよい。【0016】尚、9,10-ジハロゲノアントラセンと金属フェニル化合物とをクロスカップリング反応させる場合には、予め調製した金属フェニル化合物を9,10-ジハロゲノアントラセンと反応させてもよいが、金属フェニル化合物の合成原料である金属及びハロゲン化フェニルの両者を、一挙に9,10-ジハロゲノアントラセンと反応させてもよい。後者の場合は、反応系で、一旦、本発明に係る金属フェニル化合物が生成し、次いでこの反応生成物が9,10-ジハロゲノアントラセンとクロスカップリング反応し、目的物が得られる。【0017】予め調製した金属フェニル化合物と9,10-ジハロゲノアントラセンとを反応させて、目的物である9,10-ジフェニルアントラセンを製造する方法を下記式[2]に示す。【0018】【化3】【0019】(式中、M’は金属原子を表し、X及びnは前記と同じ。)【0020】また、金属とハロゲン化フェニルの両者を、一挙に9,10-ジハロゲノアントラセンと反応させ、目的物を得る方法を下記式[3]に示す。【0021】【化4】【0022】(式中、M’、X及びnは前記と同じ。)【0023】金属又は半金属フェニル化合物の使用量は、反応させる9,10-ジハロゲノアントラセンの種類等によって異なるが、9,10-ジハロゲノアントラセンに対して、通常1〜4当量、好ましくは1〜2当量である。【0024】反応溶媒としては、例えばトルエン,キシレン,ベンゼン等の芳香族炭化水素類、例えば酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類、例えばジエチルエーテル,テトラヒドロフラン,ジオキサン,ジメトキシエタン,ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、例えば塩化メチル,クロロホルム,ジクロロメタン、ジクロロエタン,ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素類、例えばアセトン,メチルエチルケトン等のケトン類、例えばジメチルホルムアミド等のアミド類、例えばアセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは夫々単独で用いても、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。【0025】クロスカップリング反応用金属触媒としては、このような作用を有するものであれば特に限定されないが、例えばパラジウム系触媒、ニッケル系触媒、鉄系触媒、コバルト系触媒、ルテニウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられ、好ましくは、例えばパラジウムブロマイド,パラジウムクロライド,パラジウムヨージド,パラジウムシアニド,パラジウムアセテート,パラジウムトリフルオロアセテート,パラジウムアセチルアセトナト[Pd(acac)2],ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(OAc)2(PPh3)2],テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)4],トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム[Pd2(C6H5CH=CHCOCH=CHC6H5)3],ジクロロジアミンパラジウム[Pd(NH3)2Cl2],ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム[Pd(CH3CN)2Cl2],ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム[Pd(PhCN)2Cl2],ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム[Pd(dppe)Cl2],ジクロロ[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム[Pd(dppf)Cl2],ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム〔Pd[P(C6H11)3]2Cl2〕,ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)2Cl2],ジクロロビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム〔Pd[P(CH3C6H4)3]2Cl2〕,ジクロロビス(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム[Pd(C8H12)2Cl2],ジクロロビスアセトニトリル(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)(CH3CN)2Cl2]等の0価又は2価のパラジウム系触媒、例えばニッケルブロマイド,ニッケルクロライド,ニッケルフルオライド,ニッケルヨージド,ニッケルヒドロキシド,ニッケルアセテート,ニッケルヒドロキシアセテート,ニッケルアセチルアセトナト[Ni(acac)2],ニッケルトリフルオロアセチルアセトナト[Ni(CF3COCHCOCH3)2],ニッケルヘキサフルオロアセチルアセトナト[Ni(CF3COCHCOCF3)2],ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)ニッケル[Ni(C11H19O2)2],ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル[Ni(C5H5)2],ビス(エチルシクロペンタジエニル)ニッケル〔Ni[(C2H5)C5H4]2〕,ビス(i-プロピルシクロペンタジエニル)ニッケル〔Ni[(C3H7)C5H4]2〕,ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ニッケル〔Ni[(CH3)4C5H]2〕,ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ニッケル〔Ni[(CH3)5C5]2〕,ビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケル[Ni(C8H12)2],ニッケルシクロヘキサンブチレート〔Ni[OOC(CH2)3C6H11]2〕,ニッケルジメチルグリオキシム[Ni(HC4H6N2O2)2],ニッケル2-エチルヘキサノエート〔Ni[OOCCH(C2H5)C4H9]2〕,テトラキス(トリフルオロホスフィン)ニッケル[Ni(PF3)4],ジカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル[Ni(PPh3)2(CO)2],ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル[Ni(PPh3)2Br2],ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル[Ni(PPh3)2Cl2],ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル[Ni(dppe)Cl2],ジクロロ[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル[Ni(Ph2PCH2CH2CH2PPh2)Cl2],ジクロロビス(2-エチルヘキサノエイト)ニッケル〔Ni[OOCCH(C2H5)C4H9]2Cl2〕,ヘキサアミンニッケルクロライド〔[Ni(NH3)6]Cl2〕,ヘキサアミンニッケルヨージド〔[Ni(NH3)6]I2〕,ニッケロセン等の0価又は2価のニッケル系触媒、例えば塩化第二鉄,フェロセン等の2価の鉄系触媒、例えばコバルトクロライド,コバルトブロマイド,コバルトアセテート,コバルトアセチルアセトナト[Co(acac)2],コバルトセン等の2価のコバルト系触媒、例えば塩化銅等の2価の銅系触媒、例えばジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム[RuCl2(PPh3)3]等の2価のルテニウム系触媒、例えばクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム[RhCl(PPh3)3]等の1価のロジウム系触媒等が挙げられ、より好ましくは、0価又は2価のパラジウム系触媒、0価又は2価のニッケル系触媒が挙げられる。これらの触媒は、多孔質担体、架橋されていてもよい高分子等に担持されたものを用いてもよく、該多孔質担体としては、例えばカーボン、アルミナ、ゼオライト、シリカ、セライト等が挙げられる。【0026】クロスカップリング反応用金属触媒の使用量は、使用する9,10-ジハロゲノアントラセンや金属又は半金属フェニル化合物の種類等によって異なるが、9,10-ジハロゲノアントラセンに対して、通常0.00001〜1倍モル、好ましくは0.0001〜0.3倍モルである。【0027】反応温度は、高すぎると反応の制御が困難になり、低すぎると反応速度が遅くなり反応に時間を要するため、通常0〜200℃、好ましくは20〜150℃である。【0028】反応時間は、反応温度や金属又は半金属フェニル化合物及びクロスカップリング反応用金属触媒等の種類等により異なるが、通常1分〜12時間、好ましくは10分〜1時間である。【0029】上記以外の反応操作及び後処理等は、通常行われる同種反応に準じて行えばよい。【0030】尚、本発明に係る金属又は半金属フェニル化合物は、市販品を用いても或いは常法により適宜製造したものを用いてもよい。【0031】上記の如く、本発明は、1又は2工程で、高収率に、且つ高純度な9,10-ジフェニルアントラセンを製造する方法であり、従来法と比較して、反応温度、反応時間等の反応条件が工業的に適しており、且つ廃棄物が少ないという利点を有する。【0032】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。【0033】【実施例】実施例1.Mg 49.8g(2.04mol)、THF 1.0Lの懸濁液に、還流下、ブロモベンゼン 321.4g(2.04mol)を滴下し、Grignard試薬を調製した。調製したGrignard試薬を、9,10-ジブロモアントラセン 286g(0.85mol)、THF 566mL、Pd(PPh3)2Cl2 0.6g(0.00085mol)の混液に、撹拌下、30〜60℃で、30分間かけて滴下した。次いで、同温度で1時間撹拌させた後、反応液に希塩酸300mlを添加し、トルエン3Lで目的物を抽出した。得られた有機層を、飽和食塩水で洗浄した後、総液量 750mLになるまで濃縮した。析出した結晶を濾過、分取し、70℃で1時間乾燥し、9,10-ジフェニルアントラセン229.5gを得た。(収率 81.7%、HPLC純度 97.7%)【0034】実施例2.Mg 49.8g(2.04mol)、THF 1.0Lの懸濁液に、還流下、クロロベンゼン 229.6g(2.04mol)を滴下し、Grignard試薬を調製した。調製したGrignard試薬を、9,10-ジクロロアントラセン 210g(0.85mol)、THF 566mL、Pd(PPh3)4 1.0g(0.00085mol)の混液に、撹拌下、30〜60℃で、30分間かけて滴下した。次いで、同温度で1時間撹拌させた後、反応液に希塩酸300mLを添加し、トルエン3Lで目的物を抽出した。得られた有機層を、飽和食塩水で洗浄した後、総液量 750mLになるまで濃縮した。析出した結晶を濾過、分取し、70℃で1時間乾燥し、9,10-ジフェニルアントラセン 246.6gを得た。(収率 87.8%、HPLC純度 98.4%)【0035】実施例3.9,10-ジブロモアントラセン 286.6g(0.85mol)、ブロモベンゼン 321.4g(2.04mol)、THF 1.5Lの混液にMg 49.8g(2.04mol)、Pd(PPh3)2Cl2 0.6g(0.00085mol)を加え、還流するまで加温した。次いで、同温度で1時間撹拌させた後、反応液に希塩酸300mLを添加し、トルエン3Lで目的物を抽出した。得られた有機層を、飽和食塩水で洗浄した後、総液量 750mLになるまで濃縮した。析出した結晶を濾過、分取し、70℃で1時間乾燥し、9,10-ジフェニルアントラセン 207.3gを得た。(収率 73.8%、HPLC純度95.2%)【0036】実施例4.9,10-ジブロモアントラセン 286.6g(0.85mol)、Pd(PPh3)4 29.9g(0.0255mol)、ベンゼン3Lの混液に2M Na2CO3水溶液 1.5L、フェニルボロン酸 228.6g(1.87mol)のエタノール溶液 1.2Lを加え、6時間加熱還流させた。次いで、反応液に30%H2O2 200mLを加えて反応を停止し、有機層を分取した。得られた有機層を水洗、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濾過し、得られた濾液を総液量 750mLになるまで濃縮した。析出した結晶を濾過、乾燥し、9,10-ジフェニルアントラセン 212.0gを得た。(収率 75.5%、HPLC純度 97.6%)【0037】実施例5.実施例1.と同様に調製したGrignard試薬を、9,10-ジブロモアントラセン 286g(0.85mol)、THF 566mL、Ni(acac)2 0.24g(0.00085mol)の混液に、撹拌下、30〜60℃で、30分間かけて滴下した。次いで、同温度で1時間撹拌させた後、反応液に希塩酸300mLを添加し、トルエン3Lで目的物を抽出した。得られた有機層を、飽和食塩水で洗浄した後、総液量 750mLになるまで濃縮した。析出した結晶を濾過、分取し、70℃で1時間乾燥し、9,10-ジフェニルアントラセン 213.2gを得た。(収率:75.9%、HPLC純度:97.0%)【0038】実施例6.実施例1.と同様に調製したGrignard試薬を、9,10-ジブロモアントラセン 286g(0.85mol)、THF 566mL、Ni(dppe)Cl2 0.4g(0.0085mol)の混液に、撹拌下、30〜60℃で、30分間かけて滴下した。次いで、同温度で1時間撹拌させた後、反応液に希塩酸300mLを添加し、トルエン3Lで目的物を抽出した。得られた有機層を、飽和食塩水で洗浄した後、総液量 750mLになるまで濃縮した。析出した結晶を濾過、分取し、70℃で1時間乾燥し、9,10-ジフェニルアントラセン 229.5gを得た。(収率:81.7%、HPLC純度:97.7%)【0039】実施例7.実施例1.と同様に調製したGrignard試薬を、9,10-ジクロロアントラセン 210g(0.85mol)、THF 566mL、Ni(PPh3)2Br2 0.6g(0.0085mol)の混液に、撹拌下30〜60℃で、30分間で滴下した。次いで、同温度で1時間撹拌させた後、反応液に希塩酸300mLを添加し、トルエン3Lで目的物を抽出した。得られた有機層を、飽和食塩水で洗浄した後、総液量 750mLになるまで濃縮した。析出した結晶を濾過、分取し、70℃で1時間乾燥し、9,10-ジフェニルアントラセン 228.6gを得た。(収率:81.4%、HPLC純度:98.2%)【0040】実施例8.9,10-ジブロモアントラセン 286.6g(0.85mol)、ブロモベンゼン 321.4g(2.04mol)、THF 1.5Lの混液にMg 49.8g(2.04mol)、Ni(acac)2 0.024g(0.0085mol)を加え、還流するまで加温した。次いで、同温度で1時間撹拌させた後、反応液に希塩酸300mLを添加し、トルエン3Lで目的物を抽出した。得られた有機層を、飽和食塩水で洗浄した後、総液量 750mLになるまで濃縮した。析出した結晶を濾過、分取し、70℃で1時間乾燥し、9,10-ジフェニルアントラセン 247.2gを得た。(収率 73.5%、HPLC純度94.7%)【0041】【発明の効果】以上述べた如く、本発明は、簡便且つ工業的に9,10-ジフェニルアントラセンを製造し得る方法を提供するものであり、本法によれば、1又は2工程で収率良く9,10-ジフェニルアントラセンを製造することが可能であり、また得られる目的物の純度は、従来法によって得られるものよりも高いため、本発明は、より工業的な9,10-ジフェニルアントラセンの製造法として極めて有用である。 クロスカップリング反応用金属触媒の存在下、9,10-ジハロゲノアントラセンと金属又は半金属フェニル化合物とをクロスカップリング反応させることを特徴とする、9,10-ジフェニルアントラセンの製造法。 クロスカップリング反応用金属触媒が、鉄系触媒、コバルト系触媒、ニッケル系触媒、銅系触媒、ルテニウム系触媒、ロジウム系触媒又はパラジウム系触媒である、請求項1に記載の製造法。 金属又は半金属フェニル化合物が、一般式[1](式中、Mは金属又は半金属原子を表し、Xはハロゲン原子又は水酸基を表し、nは0〜2の整数を表す。)で示される化合物である請求項1又は2に記載の製造法。 Mがリチウム原子、マグネシウム原子、アルミニウム原子、銅原子、亜鉛原子、スズ原子、ホウ素原子又はケイ素原子である、請求項3に記載の製造法。 9,10-ジハロゲノアントラセンが9,10-ジブロモアントラセン、9,10-ジクロロアントラセン、9,10-ジヨードアントラセン、9-ブロモ-10-クロロアントラセン、9-ブロモ-10-ヨードアントラセン又は9-クロロ-10-ヨードアントラセンである、請求項1〜4の何れかに記載の製造法。 金属又は半金属フェニル化合物が、臭化フェニルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、ヨウ化フェニルマグネシウム、臭化フェニル亜鉛、塩化フェニル亜鉛、フェニルリチウム又はフェニルボロン酸である、請求項1〜5の何れかに記載の製造法。 クロスカップリング反応用金属触媒が、パラジウム触媒又はニッケル触媒である、請求項1〜6の何れかに記載の製造法。 9,10-ジハロゲノアントラセンが9,10-ジクロロアントラセン又は9,10-ジブロモアントラセンであり、金属又は半金属フェニル化合物が塩化フェニルマグネシウム又は臭化フェニルマグネシウムである、請求項1〜7の何れかに記載の製造法。 9,10-ジハロゲノアントラセンが9,10-ジクロロアントラセン又は9,10-ジブロモアントラセンであり、金属又は半金属フェニル化合物が塩化フェニルマグネシウム又は臭化フェニルマグネシウムであり、クロスカップリング反応用金属触媒がニッケル系触媒又はパラジウム系触媒である、請求項1に記載の製造法。