タイトル: | 特許公報(B2)_口紅組成物 |
出願番号: | 2001038362 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 8/25,A61K 8/26,A61K 8/70,A61Q 1/04 |
柴田 雅史 依田 恵子 JP 4456771 特許公報(B2) 20100212 2001038362 20010215 口紅組成物 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 浅野 康隆 100089048 的場 ひろみ 100101317 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 柴田 雅史 依田 恵子 20100428 A61K 8/25 20060101AFI20100408BHJP A61K 8/26 20060101ALI20100408BHJP A61K 8/70 20060101ALI20100408BHJP A61Q 1/04 20060101ALI20100408BHJP JPA61K8/25A61K8/26A61K8/70A61Q1/04 A61K 8/00-8/99 A61Q 1/00-99/00 特開平04−300811(JP,A) 特開平11−181329(JP,A) 特開平07−316016(JP,A) 特開平07−316017(JP,A) 特開平08−295614(JP,A) 特開平07−053329(JP,A) 特開2000−191442(JP,A) 2 2002241232 20020828 7 20070725 福井 美穂 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、経時的に、あるいは急激な温度変化が起きても、フッ素基含有油剤の分離が起こりにくく、かつ塗布時のつやが高い口紅組成物に関する。【0002】【従来の技術】フッ素基含有油剤を使用することで、食器、衣服等への色移りが起こりにくい口紅が得られる(例えば、特開平7−277927号公報、特開平9−77652号公報)。しかしながら、フッ素基含有油剤は、口紅組成物中に配合した場合、他の油剤と混和しにくいので、油剤が分離し、シミ出しを生じることがある。そこで、微粒子シリカ等の粉体とフッ素基含有油剤とを同時に配合すること(特開平8−26935号公報)、フッ素基含有油剤を乳化すること(特開平4−100534号公報、特開平7−33622号公報、特開平7−17831号公報)等でフッ素基含有油剤を安定に配合することが提案されている。また、多孔質微小球の外面を過フッ素化油によって被覆する方法(特開平5−309260号公報)も提案されている。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの方法では、口紅に求められる塗布時のつやが損なわれ、また、1時間に20℃以上の温度変化といったような急激な温度変化が起きたときに、フッ素基含有油剤が分離する問題が発生している。本発明の目的は、塗布時のつやが損なわれることなく、かつ急激な温度変化が起こっても油剤が分離しにくい口紅組成物を提供することにある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者は、粒子内部に空洞を有する高吸油性粉体を基材粒子として、これにフッ素基含有油剤を包蔵させた粉体を、口紅組成物中に含有させることにより、塗布時のつやが損なわれることなく、かつ急激な温度変化が起こってもフッ素基含有油剤が分離しにくい口紅が得られることを見出した。本発明は、内部に空洞を有し、吸油量が200〜1000mL/100gである基材粒子にフッ素基含有油剤を包蔵させた粉体を含有する口紅組成物を提供するものである。ここで、「包蔵」とは、フッ素基含有油剤が基材粒子の空洞内、粒子間等に保持された状態をいう。【0005】【発明の実施の形態】本発明で基材粒子に包蔵させるのに用いるフッ素基含有油剤としては、例えば、パーフルオロデカリン、パーフルオロアダマンタン、パーフルオロブチルテトラハイドロフラン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロペンタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカン、パーフルオロアルキル基で変性されたシリコーン、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。【0006】フッ素基含有油剤としては、パーフルオロポリエーテルが好ましく、特に一般式(1)【0007】【化1】【0008】(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一又は異なって、それぞれフッ素原子、パーフルオロアルキル基又はオキシパーフルオロアルキル基を示し、p、q及びrは分子量が500〜100,000となる0以上の整数を示す。ただし、p=q=r=0となることはない)で表されるパーフルオロポリエーテルが好ましい。なお、ここで括弧内に示される各パーフルオロアルキレンオキシ基はこの順で並んでいる必要はなく、それらの結合の仕方はランダムでもブロックでもよい。【0009】市販のパーフルオロポリエーテルとしては、例えば、一般式(2)【0010】【化2】【0011】(式中、m及びnは分子量が500〜10,000となる数を示し、n/mは0.2〜2である)で表される、FOMBLIN HC−04、同HC−25、同HC−R(以上、アウジモント社製)等や、次の一般式(3)【0012】【化3】【0013】(式中、lは4〜500の数を示す)で表されるデムナムS−20、同S−65、同S−100、同S−200(ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。【0014】フッ素基含有油剤は、2種以上を併用してもよい。口紅からフッ素基含有油剤が分離しないで安定に保持される点から、基材粒子1重量部に対し、フッ素基含有油剤は0.0001〜3重量部、特に0.1〜1重量部、更には0.2〜0.7重量部の割合で処理し、基材粒子に包蔵させるのが好ましい。本発明の効果は、フッ素基含有油剤を特定基材粒子に包蔵させた粉体を用いることによって得られ、口紅組成物中にフッ素基含有油剤と該基材粒子を別々に含有させても得られない。【0015】本発明で使用する粉体の基材粒子は、粒子内部に空洞を有する中空構造を持ち、高い吸油性を有するもので、例えばケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸金属塩;炭酸カルシウム、炭酸コバルト等の炭酸金属塩;タングステン酸カルシウム等のタングステン酸金属塩;酸化コバルト、α−酸化鉄等の金属酸化物;水和酸化鉄等の金属水酸化物;ナイロンパウダー、セルロースパウダー、コーンスターチ、ポリスチレンビーズ等の有機粉体;シリカ、シリカゲル、ハイドロキシアパタイト、アルミナ、シリカアルミナ複合酸化物が挙げられ、シリカ、アルミナ又はシリカアルミナ複合酸化物が好ましい。【0016】基材粒子の吸油量は、口紅中でのフッ素基含有油剤の安定性、軽い使用感を得る点で、JIS K5101に記載の方法で測定した値が200〜1000mL/100gであることを要するが、特に200〜700mL/100gであるのが好ましい。高い吸油量をもつ基材粒子は、その内部に空洞を有する中空構造を持つことが、温度変化が起きてもフッ素基含有油剤が分離しないという本発明の効果を発現する上で重要である。中空でない、単なる多孔質粒子ではかかる効果は充分に発現しない。このような中空構造であることは、粒子を割断して走査型電子顕微鏡で観察することにより確認できる。そして該空洞の容積は、電子顕微鏡写真における空洞部の面積から見積もることができ、粒子全体積の3分の1以上であることが好ましい。【0017】このような構造をもつものとしては、一次粒子が三次元的に結合した二次粒子が挙げられる。例えば、長径が短径の3倍以上ある棒状、柱状あるいは針状のシリカ、アルミナ又はシリカアルミナ複合酸化物等が球状又は擬球状に3次元的に凝集したものであって、少量の結合剤を介して3次元的に結合していてもよい。結合剤としては、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、でんぷん、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの高分子のほか、水ガラスなどの無機物も用いられる。これらの結合剤は一部又は大部分が燃焼等により除去されてもよい。基材粒子中に残存する結合剤の量が多いと塗布後の感触が低下する傾向があるので、基材粒子中に残存する結合剤の量は体積比で粒子全体の30%以下、特に20%以下が好ましい。【0018】当該基材粒子は、例えば適当な結合剤のエマルション中に1次粒子を分散させることによって調製可能である。また、1次粒子を合成すると同時に、ほぼ球状に2次凝集させる手法を用いると、均一な球状粒子を作る上で特に好ましい。ほぼ球状に2次凝集させるためには、水熱合成時に攪拌を行ったり、原料濃度を高めたりするのが好ましい。【0019】本発明で用いる基材粒子としては、球状又は擬球状(回転楕円体、多面体等)の形状が好ましい。【0020】フッ素基含有油剤を基材粒子に包蔵させる方法としては、例えばフッ素基含有油剤、揮発性溶剤及び基材粒子を混合し、攪拌しながら、揮発性溶剤を蒸発除去させる方法が、フッ素基含有油剤を基材粒子中に均一かつ安定に包蔵させることができ好ましい。【0021】揮発性溶剤としては、室温で揮発性の炭化水素、シリコーン又はこれらの混合物が好ましい。【0022】使用される揮発性の炭化水素として、C3からC20のイソパラフィン、例えば、イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン等が挙げられる。【0023】揮発性のシリコーンとしては、例えば、線状のシリコーン構造の側鎖又は末端に炭素原子数3〜10のアルキル基を持つシリコーン類で、ヘキシルヘプタメチルトリシロキサン、オクチルヘプタメチルトリシロキサン等が挙げられる。また、ケイ素原子数2〜6の線状シリコーン類、例えば、ヘキサメチルジシロキサンのようなメチルポリシロキサン類、メチルフェニルポリシロキサン類、ケイ素原子数3〜6の環状シリコーン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、又はそれらの混合物が挙げられる。【0024】フッ素基含有油剤と揮発性溶剤との相対重量比は、フッ素基含有油剤:揮発性溶剤=5:95〜80:20、特に10:90〜50:50が好ましい。【0025】本発明で使用する粉体は、口紅中でのフッ素基含有油剤の安定性、違和感のない塗布感を得る点で、平均粒径が0.5〜50μmであることが好ましく、特に1〜30μmであるのが好ましい。ここで平均粒径は、レーザー回折/散乱法で測定した値をいう。【0026】本発明の口紅組成物中には、上記粉体は0.1〜50重量%、特に0.1〜20重量%含有するのが好ましい。【0027】本発明の口紅組成物には、フッ素基含有油剤を吸着させた粉体以外に、リンゴ酸ジイソステアリル、スクワラン、ホホバ油、ラノリン等の油剤を含有させると、唇の保湿効果の点が更に改善され好ましい。【0028】本発明の口紅組成物は、これら成分のほか、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類、着色顔料、白色顔料、パール顔料等の適宜使用される成分とともに混合し、皿へ流し込み又はスティック状の口紅に加工される。【0029】【実施例】粉体調製調製例1中空球状微粒子シリカであるシリカマイクロカプセル(粒径12μm、吸油量510mL/100g、日本インシュレーション(株)製)と揮発性の環状シリコーンオイル(SH244、東レダウコーニング社製)、フッ素基含有油剤(FOMBLIN HC−04)を混合し、その後環状シリコーンオイルを蒸発除去させることで、中空球状シリカ粉体にフッ素基含有油剤を包蔵させた。フッ素基含有油剤はシリカ1重量部に対して0.5重量部となるように調製した。【0030】調製例2多孔質球状シリカであるサンスフェアH121(粒径12μm、吸油量150mL/100g、旭硝子(株)製)と揮発性の環状シリコーンオイル(SH244)、フッ素基含有油剤(FOMBLIN HC−04)を混合し、その後環状シリコーンオイルを蒸発除去させることで、多孔質球状シリカ粉体にフッ素基含有油剤を包蔵させた。フッ素基含有油剤はシリカ1重量部に対して0.5重量部となるように調製した。【0031】実施例1表1に示す色材原料以外の基材原料を、加熱融解して均一に混合してから、色材原料を添加し加熱状態でディスパーザーで均一に分散した後、脱泡し型に流し込んで口紅を製造した。【0032】【表1】【0033】製造した口紅を次の評価方法で評価した結果を、表1にあわせ示す。▲1▼油剤分離:口紅を20℃に6時間静置した後、40℃の恒温槽に移し30分後の表面の状態を観察した。表面に油剤のシミ出しがないものを○、一部シミ出しがみられたものを△、表面全体にシミ出しがみられたものを×と評価した。▲2▼塗布つや:唇に塗布した後、1時間経過した時の光沢値を光沢度計(ミノルタ製マルチグロス268)で光沢度を測定した。▲3▼カップへの色移り:口紅を唇に塗布し、1時間後にコーヒーを飲んだ時のカップ上についた口紅の濃さを目視評価した。口紅のあとがわずかにしか着かないものを○、口紅のあとが明瞭に着いたものを△、唇の形状そのままに口紅が着いたものを×と評価した。【0034】本発明の口紅は、塗布のつやが高く、かつ油剤の分離の起こりにくいものであった。【0035】【発明の効果】本発明の口紅組成物は、急激な温度変化が起きても、フッ素基含有油剤の分離が起こりにくく、かつ塗布時のつやが高い。 一次粒子が三次元的に結合した二次粒子であって、内部に空洞を有し、吸油量が200〜1000mL/100gである基材粒子に、フッ素基含有油剤を包蔵させた粉体を含有する口紅組成物。 基材粒子が、シリカ、アルミナ又はシリカアルミナ複合酸化物である請求項1記載の口紅組成物。