タイトル: | 特許公報(B2)_地熱蒸気中の不凝縮ガス測定方法 |
出願番号: | 2001031683 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 31/00,B01L 3/02,B01L 5/02,G01N 1/22,G01N 31/02,G01N 31/12 |
塚原 千幸人 椿崎 仙市 馬場 恵吾 高野 武 JP 4256594 特許公報(B2) 20090206 2001031683 20010208 地熱蒸気中の不凝縮ガス測定方法 三菱重工業株式会社 000006208 奥山 尚一 100099623 有原 幸一 100096769 松島 鉄男 100107319 塚原 千幸人 椿崎 仙市 馬場 恵吾 高野 武 20090422 G01N 31/00 20060101AFI20090402BHJP B01L 3/02 20060101ALI20090402BHJP B01L 5/02 20060101ALI20090402BHJP G01N 1/22 20060101ALI20090402BHJP G01N 31/02 20060101ALI20090402BHJP G01N 31/12 20060101ALN20090402BHJP JPG01N31/00 PG01N31/00 YB01L3/02 AB01L5/02G01N1/22 PG01N1/22 EG01N31/02G01N31/12 Z G01N31/00〜31/22 G01N1/00〜1/34 B01L3/02 B01L5/02 CAplus(STN) JSTPlus(JDreamII) 特開平05−306984(JP,A) 実開昭61−040647(JP,U) 特開平11−326310(JP,A) 特開平07−035027(JP,A) 特開平03−125970(JP,A) 特開昭62−222140(JP,A) 北海道立地下資源調査所報告,1990年,No.62,Page.141-144 Trans Geotherm Resour Counc,1981年,Vol.5,Page.333-335 Geotherm Energy,1983年,Vol.11, No.6,Page.9-14 Indian Foundry J,1995年,Vol.41, NO.6,Page.25-29 1 2002236117 20020823 8 20050711 三木 隆 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、地熱蒸気中の不凝縮ガス測定方法に関し、特に、地熱発電プラントにおいて好適に用いられる不凝縮ガスのガス測定方法に関する。【0002】【従来の技術】地熱発電プラントでは、地下500m〜4000mから取り出した蒸気を使用してタービンを回し発電機で、例えば1〜50MW程度の発電量を得ることができる。地熱発電に使用するガスは、通常、温度が100〜250℃程度、圧力が4〜18kg/cm2程度であり、低圧力である。よって、タービンに入ってくる蒸気で効率よく発電しようとすると、タービンの後流側の背圧を低下させておくことが効果的である。これによりタービンの前後で生じる差圧分だけ、タービンが回しやすい状況になるからである。よって、入口側から導入される蒸気を復水器で冷却し凝縮させて、容積を減少させ、その体積減少分だけ圧力も低下させる。このように地熱発電プラントでは、タービン前後で圧力差を設けてタービンを回転し易くしている。【0003】しかしながら、生産井地下からの蒸気中には、復水器等で冷却しても凝縮しない不凝縮ガスが含まれている。すなわち、蒸気中には地層からの溶解成分(硫化物、鉄化合物、シリカ、塩化ナトリウム、炭酸塩など)、および、腐食性のガス成分(硫化水素、塩化水素、フッ化物、炭酸ガスなど)が多く含まれている。これらの中で、炭酸ガスや腐食性の硫化水素ガスが不凝縮ガスとなるため、ガスタービンの背圧を十分に低下させることができず、タービンの性能に悪影響を与えたり、あるいはタービン内部のスケーリングの原因物質の1つになっている。【0004】したがって、これらの不凝縮ガスの成分を分析することは、地熱蒸気をタービンの運転に利用する上で重要である。ところが、市販の分析装置(オルザットガス分析計)は、測定対象が大気やボイラなどの燃焼排ガス測定用に製造されているために、地熱関連のガス測定には全く使用できないという問題を有している。つまり、第一に地熱ガス特有の硫化水素の測定ができない。第二に、ガスの組成で炭酸ガスの濃度が地熱の場合、80〜95%存在しているが、上記市販の分析装置内臓のガスビューレットを用いる分析装置では、構造上読み取り部位の目盛りが非常に粗く、ガスの測定値を精度良く読み取ることが不可能であった。【0005】一方、ガスクロマトグラフのような精密分析装置を用いれば、正確な組成分析が可能である。しかし、このような大型の分析装置を、地熱蒸気の発生する場所に設置することは容易でない反面、地熱蒸気を分析器のある研究所等に運搬するのでは時間的、コスト的にロスがあると同時に、運搬中に組成を保つことが困難であり、却って再現性のあるデータが得られないという不都合が生じる。【0006】【発明が解決しようとする課題】 本発明者らは、上記問題点に鑑み、硫化水素の測定と炭酸ガス、酸素の正確な読み取りが可能であって、現場での分析に適した簡易な測定方法を開発すべく、鋭意検討した。その結果、本発明者らは、硫化水素の捕集に際して開放型硫化水素吸収ビンを用いること、および、高濃度二酸化炭素に対応して逆ビューレット構造を採用することによって、かかる問題点が解決されることを見い出した。本発明は、かかる見地より完成されたものである。【0007】【課題を解決するための手段】 すなわち、本発明は、地熱蒸気中の少なくとも硫化水素ガスと二酸化炭素ガスを測定する方法であって、地熱蒸気を冷却して、地熱蒸気中の水蒸気成分を凝縮水とし、凝縮水と不凝縮ガスとに分離する工程と、その後、該不凝縮ガスの成分分析にて、開放型の硫化水素吸収ビン内の硫化水素吸収液で不凝縮ガス中の硫化水素ガスを吸収し、これにより前記硫化水素吸収ビンの内部に硫化物の沈殿を生じさせた後、この硫化水素吸収ビンを切り離して硫化水素の測定を行う工程と、二酸化炭素吸収ビン内の二酸化炭素吸収液で不凝縮ガス中の二酸化炭素ガスを吸収し、目盛りを有する細管部を上部に配置して太管部を下部に配置したガスビュレットで、不凝縮ガスの体積減少量から二酸化炭素の濃度の測定を行う工程とを含むことを特徴とする地熱蒸気中の不凝縮ガス測定方法を提供するものである。ここで、硫化水素吸収液には、酢酸カドニウムや硫酸カドニウム等を含む溶液が好ましく用いられる。【0009】 ここで、本発明が対象とする不凝縮ガスには、硫化水素(H2S)ガスや二酸化炭素(CO2)の他、酸素(O2)、窒素(N2)などが含まれている。また、場所によってはメタン(CH4)や水素(H2)等も含まれている。地熱蒸気を発電プラントに用いるような場合には、この不凝縮ガスが、蒸気中にどの程度の割合を占めるのかを測定することが必要であり、また、不凝縮ガス中の成分はどのような組成なのかを調べることも必要になる。本発明の測定法は、これらの不凝縮ガスの分析を簡易な方法によって正確に行うものである。本発明の測定法では、二酸化炭素、酸素、窒素の濃度が0.1%以上、硫化水素の濃度が0.05%以上のガスに適用できる。【0010】 地熱ガスの分析において、一般にはガス分析に広く用いられるオルザット分析法(JIS K 0301)を採用することが考えられるが、基本的に酸素と二酸化炭素を測定する方法であり、硫化水素を測定する手法ではない。また、このオルザット分析法では、燃焼排ガスの場合にはある程度精度良く成分分析できても、地熱ガス中の酸素と二酸化炭素の量について精度良く測定することが困難である。そこで、本発明者らは、硫化水素を測定できると同時に、精度良く酸素や二酸化炭素も測定できる方法として、上記測定方法を開発したものである。【0011】【発明の実施の形態】本発明に係る方法を実施するための具体的な形態について、添付図を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。【0012】一般に地熱発電プラントでは、生産井(蒸気井)から、不凝縮ガスを含む蒸気と熱水が取り出され、気水分離器(サイクロン)に送られる。該気水分離機では、蒸気と熱水とを分離して、蒸気成分のみを蒸気溜めに送る。該蒸気溜めにおいて、さらに気液分離された蒸気は、スケールセパレータに送られて、錆等の異物が取り除かれる。その蒸気が蒸気タービンに送られて、タービンを回転させて、発電機で発電する。この際、タービン後流では(コンデンサー)により蒸気を液化(腹水)することによって、タービンの背圧が低下するので、入口と出口の差圧が生じて、効率よくタービンを回転させることができる。本発明の測定法によって、不凝縮ガスの量やそのガス組成を明らかにすることで、最終的にはタービン自体の性能を評価することなどができる。【0013】生産井からのガス成分は、約99.0〜99.9%が不凝縮ガス以外の蒸気であり、残りの0.1〜1.0%が不凝縮ガスである。この不凝縮ガスの成分を分析すると、一般には、二酸化炭素、硫化水素、メタン、水素などから構成されており、それ以外にはアンモニアや酸素、窒素などが含まれることもある。これらの成分の中で、生産井の現場で測定する必要が多く生じるのは二酸化炭素と硫化水素である。そして成分の組成(%)を分析すると、生産井の国、地域による差はあるが二酸化炭素が最も多く存在しており約70%〜97%を占めており、続いて多いのが硫化水素であり約1〜20%含有する。【0014】図1に、地熱ガスから不凝縮ガスを採取して濃度を測定する装置の概略構成を示す。以下、この装置に基づいて説明する。蒸気は蒸気管10を流通しており、その流路に設けられたサンプリングノズル1から蒸気の一部が採取される。サンプリングノズル1は、例えば蒸気管10内の同じ高さ(位置)に2以上設けられていてもよい。サンプリングノズルとしては、例えば図2に示すような形態のものが好適に用いられ、複数のノズル口11が蒸気の流れてくる上流側に向いていて、蒸気がサンプリングされる。この際、ノズル口11のサンプリングポートは必ず上流側に向けるとともに、上流側に少なくとも蒸気配管径の約10倍以上の直線部分を有することが好ましい。また、サンプリングノズル1取り付け位置からサンプリングクーラー5までの配管は、出来るだけ短い方が望ましい。【0015】サンプリングノズルの形状は特に限定されるものではなく、蒸気の流量・流速等を考慮して適宜定められるが、蒸気を主とする試料を採取するため、通常、試料採取速度は等速吸引とする。したがって、サンプリングノズル11については、等速吸引可能な開孔面積(穴の面積×個数)を有するものであれば良い。一般的には、ノズル口11の径aは通常1〜5mm、好ましくは2〜4mm程度である。ノズル口の個数は通常2〜5つ程度設けられ、例えば図2のように4つ設ける態様が挙げられる。【0016】サンプリングされた蒸気は、ライン12からサンプリングクーラー5に送られて、冷却される。サンプリングクーラー5によって冷却された蒸気は、クーラー後流では気液混合の状態になり、冷却による凝縮水と不凝縮ガスとの混合流体が不凝縮ガス採取装置20に送られる。不凝縮ガス採取装置20は予め凝縮水で満たされており、不凝縮ガス成分16は、ガス採取ビン17に採取される。そして、不凝縮ガスと凝縮水に相当する体積の水が装置20外に、排出水として排出され、水準ビン19に送って容積を測定する。このように採取された不凝縮ガスについて、図3に示すような本発明のガス成分分析装置を用いて測定する。【0017】不凝縮ガスのガス成分分析装置には、酸素の吸収液、二酸化炭素の吸収液、硫化水素の吸収液、を含んでいる各吸収ビンが設けられている。測定では先ず、飽和の食塩水で満たされたガスビュレット中に50cm3〜100cm3の試料ガスをサンプリングして採る。次いで、H2S吸収液によりH2Sを吸収する。CO2吸収液によりCO2とH2Sの一部を吸収した後、O2吸収によりO2量を測定する。ここで、残りのガスはN2等である。ここで、上述したように地下からの蒸気を凝縮水として分離した不凝縮ガスは一般のガスと異なり、硫化水素や二酸化炭素が多い。下記表1に、大気、重油等の燃焼排ガス、および地熱不凝縮ガスの各組成を例として示す。【0018】【表1】なお、残部は便宜上窒素ガスまたは、その他として表示する。【0019】したがって、従来のような太管部が上部にある形状を有するガスビュレットでは、不凝縮ガスを各吸収液と接触させながら装置に導入すると、不凝縮ガスは二酸化炭素等を吸収液に吸収され、ガス容積が著しく減少するので、直径の太い目盛りのない部分に液面が達してしまい、測定不能となってしまう。そこで、図3に示すように、目盛りを有する細管部を上部に配置して、太管部を下部に配置したガスビュレット25(通常のオルザット分析装置のビュレットを逆の形状で配置させた逆ビュレット構造)を用いる。これによって、地熱不凝縮ガスであっても、二酸化炭素や酸素等のガスについては測定可能となる。【0020】そして本発明の装置では、硫化水素も測定できるようにするため、酢酸カドニウムや硫酸カドニウム等を含む硫化水素吸収液22が使用される。具体的には、例えば約4〜6gの酢酸カドニウムと約2〜4mlの酢酸を水に溶解して100mlの溶液としたもの、あるいは、約4〜6gの硫酸カドニウムと約2〜4mlの硫酸を水に溶解して100mlの溶液としたもの、などを好適に用いることができる。このような吸収液22を、開放型の硫化水素吸収ビン28に入れてガスを吸収させる。これによって、吸収ビン22中では、地熱不凝縮ガスの流通によって硫化水素と酢酸カドニウムとの反応により、硫化カドニウム(CdS)の沈殿を生成する。開放型硫化水素用吸収ビン28は、出し入れ可能な構造を有しており、外部の形状と内部のガス導入管部分とは切り離しが可能となっている。よって、内部に沈殿した物については、取り出すことが可能であり、さらに分析することができる。硫化水素濃度の測定においては、ヨウ素溶液(例えば0.05mol/l)によって溶解してから、澱粉溶液(例えば約1%)を指示薬として、チオ硫酸ナトリウム溶液(例えば0.1mol/l)によって滴定することによって分析することができる。【0021】硫化水素吸収液22の吸収ビン28以外には、通常、酸素吸収液23を入れた酸素吸収ビン29、および、二酸化炭素吸収液24を入れた二酸化炭素吸収ビン30が設けられている。これらの吸収ビンは、通常外部の形状と内部の導入管とが一体になった構造である。酸素吸収液23には、水に水酸化カリウムを溶解させた溶液と、水にピロガロールを溶かした溶液と、を等体積ずつ混合したものを用いることができる。具体的には、例えば水100mlに水酸化カリウム約50〜70gを溶解した溶液と、水100mlにピロガロール約10〜14gを溶解した溶液とを、混合した溶液を好適に用いることができる。二酸化炭素吸収液24には、通常、水に水酸化カリウムを溶かした溶液を用いる。具体的には、例えば水100mlに水酸化カリウム約20〜40gを溶解した溶液を好適に用いることができる。二酸化炭素の濃度については、ガス成分分析装置に試料ガスを導入し、二酸化炭素吸収液で吸収させて、試料ガスの体積減少量から求めることができる。また、二酸化炭素吸収後のガスビューレット内の試料ガスを、酸素吸収液で吸収させて、試料ガスの体積減少量から酸素濃度を求めることができる。以上、本発明を実施の形態に基づき詳細に説明してきたが、本発明の範囲はこれらの実施の形態によって何ら限定されるものではない。【0022】【発明の効果】本発明によれば、従来のオルザットガス分析装置では測定できなかった硫化水素の測定が可能になると同時に、炭酸ガスや酸素の正確な濃度測定が可能になる。また、本発明によれば、地熱発電プラント等の現場において、大型の装置を使用しなくても分析に適した簡易な測定方法もしくは装置を提供できる。【図面の簡単な説明】【図1】地熱蒸気から不凝縮ガスを採取して濃度を測定する装置の概略構成を示す図である。【図2】本発明の測定方法で用いるのに好適なサンプリングノズルの構造を示す断面図である。【図3】本実施の形態における不凝縮ガスのガス成分分析装置の構成を示す図である。【符号の説明】1 サンプリングノズル5 サンプリングクーラー10 蒸発管11 ノズル口12 サンプリングライン13、27 ゴム管14 T字管15 ストッパー弁16 不凝縮ガス17 ガス採取ビン18 温度計19 水準びん20 不凝縮ガス採取装置21 ゴム容器22 H2S吸収液23 O2吸収液24 CO2吸収液25 ガスビュレット28 H2S吸収ビン29 O2吸収ビン30 CO2吸収ビン 地熱蒸気中の少なくとも硫化水素ガスと二酸化炭素ガスを測定する方法であって、 地熱蒸気を冷却して、地熱蒸気中の水蒸気成分を凝縮水とし、凝縮水と不凝縮ガスとに分離する工程と、その後、該不凝縮ガスの成分分析にて、 開放型の硫化水素吸収ビン内の硫化水素吸収液で不凝縮ガス中の硫化水素ガスを吸収し、これにより前記硫化水素吸収ビンの内部に硫化物の沈殿を生じさせた後、この硫化水素吸収ビンを切り離して硫化水素の測定を行う工程と、 二酸化炭素吸収ビン内の二酸化炭素吸収液で不凝縮ガス中の二酸化炭素ガスを吸収し、目盛りを有する細管部を上部に配置して太管部を下部に配置したガスビュレットで、不凝縮ガスの体積減少量から二酸化炭素の濃度の測定を行う工程と を含むことを特徴とする地熱蒸気中の不凝縮ガス測定方法。