タイトル: | 特許公報(B2)_高純度四級アンモニウムカルボン酸塩の製造方法 |
出願番号: | 2001029112 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 209/20,C07C 209/84,C07C 211/63 |
岩田 恵一 宗安 邦明 中村 健一 JP 4788044 特許公報(B2) 20110729 2001029112 20010206 高純度四級アンモニウムカルボン酸塩の製造方法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 岩田 恵一 宗安 邦明 中村 健一 20111005 C07C 209/20 20060101AFI20110915BHJP C07C 209/84 20060101ALI20110915BHJP C07C 211/63 20060101ALI20110915BHJP JPC07C209/20C07C209/84C07C211/63 C07C 209/20 C07C 209/84 C07C 211/63 特開平06−329603(JP,A) 特開平06−329604(JP,A) 特開昭62−174036(JP,A) 特開昭63−014759(JP,A) 特公昭48−042603(JP,B1) 3 2002226438 20020814 8 20080205 藤原 浩子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、四級アンモニウムカルボン酸塩の製造方法に関し、詳しくは不純物としてアミド化合物を含まない高純度四級アンモニウムカルボン酸塩の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】四級アンモニウムカルボン酸塩は界面活性剤や医薬品、化粧品などの原料として使用されている。また、四級アンモニウムカルボン酸塩を原料として製造される四級アンモニウム水酸化物は、金属を含まない強アルカリ物質としてLSIデバイスの製造における現像液、或いは洗浄液として利用されている。【0003】四級アンモニウムカルボン酸塩を製造する方法としては、四級アンモニウム水酸化物とカルボン酸を反応させる方法などがあるが、工程が煩雑である、高コストであるなどの理由で実用的な方法ではない。工業的に実用的な方法としては、極性溶媒中で少量の水を添加して三級アミンとカルボン酸エステルを反応させる方法(特開平6−329603号公報)などが挙げられる。四級アンモニウムカルボン酸塩から水酸化物を製造する場合などは、四級アンモニウムカルボン酸塩は水溶液として利用される場合が多く、この場合、四級化工程後に蒸留操作などにより脱溶媒/水置換して水溶液として提供される。【0004】三級アミンとカルボン酸エステルを反応させる方法では、原料三級アミン中に微量含まれる一級アミンや二級アミンとカルボン酸エステルが反応してアミド化合物が生成する。アミド化合物を含む四級アンモニウムカルボン酸塩を原料として界面活性剤や化粧品を製造した場合、副反応が生じ不純物が発生したり、アミド化合物が製品中に不純物として含まれ品質低下を引き起こす。このようなアミド化合物を含む四級アンモニウムカルボン酸塩を中間体として電解により四級アンモニウム水酸化物を製造する場合にも同様な品質低下を引き起こす。問題となるアミド化合物は化学的に比較的安定であり、沸点も高いため、四級アンモニウムカルボン酸塩水溶液の製造工程中における蒸留操作などでも効率的に除去することが困難であった。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は上記の種々の問題点を解決し、高純度で安価な四級アンモニウムカルボン酸塩を製造する方法を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、極性溶媒中で三級アミンとカルボン酸エステルを反応させて一般式[R1R2R3R4N]・R5−COO(R1〜R4は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R1〜R4は同一でも異なっても良い。R5は水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表される四級アンモニウムカルボン酸塩を製造する方法において、得られた反応液に有機アルカリ及び水を添加した後、加熱処理を行うことで、不純物として含有されるアミド化合物を分解除去出来ることを見いだし、本発明に至った。【0007】【発明の実施の形態】以下、本発明について詳述する。【0008】本発明におけるアミド化合物分解処理は四級化工程後の反応液に有機アルカリ及び水を添加して加熱処理が行われる。本発明において用いられる有機アルカリは、加熱処理において塩基として作用することによりアミド化合物をアミンとカルボン酸に加水分解するものである。使用される有機アルカリには高い塩基性のほかにアミド化合物分解工程で揮発、又は分解しにくい化学的性質が要求される。金属系アルカリはアミド化合物の分解には効果があるものの、アミド化合物分解後にアルカリ金属を製品から除去することは難しく、最終的に製品に混入して品質低下を引き起こすため適当でない。【0009】本発明で用いられる有機アルカリの例としては、一級、二級、三級アミン類、窒素、酸素、硫黄原子の中から選ばれた少なくとも1種を含む環状塩基、四級アンモニウム水酸化物、四級アンモニウム炭酸塩、四級アンモニウム炭酸水素塩などの四級アンモニウム化合物が挙げられ、これらの化合物は1種以上組み合わせて使用してもかまわない。これらの内、塩基性が高くアミド化合物分解性に優れ、揮発性が少ないなどの理由で、四級アンモニウム水酸化物、四級アンモニウム炭酸塩、四級アンモニウム炭酸水素塩等が好適である。更に、非常に強い塩基性を有する四級アンモニウム水酸化物が特に好適に使用できる。これらの化合物の具体例としては、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)、トリメチルエチルアンモニウム水酸化物、トリエチルメチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム水酸化物、テトラプロピルアンモニウム水酸化物、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム水酸化物、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム水酸化物、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム水酸化物などの水酸化物、及びこれらの炭酸塩、炭酸水素塩が挙げられる。これら化合物は単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもかまわない。更に好ましくは、製品の純度に影響が少ないことから、一般式[R1R2R3R4N](R1〜R4は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R1〜R4は同一でも異なっても良い。)で表される、製造される四級アンモニウムカルボン酸塩と同一のアンモニウムイオンから構成される四級アンモニウム水酸化物、四級アンモニウム炭酸塩、四級アンモニウム炭酸水素塩から選ばれる1種以上の化合物が特に好ましい。【0010】また、低級アミンであっても、揮発性の低いトリブチルアミン、トリプロピルアミンなどのアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、芳香族系のアミン類、ピリジンなどの環状窒素化合物も好適に使用できる。これら化合物は単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもかまわない。【0011】アミド化合物の分解工程において実用的な効率でアミド化合物を分解処理するための液性はアルカリ性である。pHの適切な値は不純物アミド化合物の含有量、分解処理時間、又はその後の工程での影響を考慮して選択されるが、好ましくはpH8以上、更に好ましくはpH10以上である。【0012】使用する有機アルカリは液性を最適なpH値とするために添加され、その添加量は有機アルカリの種類によって適切な量が選択されるが、一般的には四級アンモニウムカルボン酸塩に対し0.01〜100重量%、好ましくは0.05〜50重量%、更に好ましくは0.1〜20重量%である。有機アルカリ量が0.01重量%より低いと反応液のpHが8以上とならずにアミド化合物分解速度が遅くなり、100重量%より高いと加熱効率や生産性が著しく低下する点で好ましくない。本発明に示される有機アルカリの中では四級アンモニウム水酸化物が著しい塩基性を有しているため極少量で高いアミド化合物の分解能力を得ることができ特に好ましい。【0013】製造する四級アンモニウムカルボン酸塩の種類によっては、四級化工程において原料カルボン酸エステルが未反応分として反応液中に残留しアミド化合物分解処理時に加えた有機アルカリと反応しアルカリ分を消費する。十分なアミド化合物分解能力を得るためには有機アルカリを多量に添加しなければならない場合がある。この様な場合には、四級化工程終了後の反応液に直ちに有機アルカリ及び水を添加するのではなく、未反応カルボン酸エステルを反応液中から除去する予備加熱蒸留を行った後に有機アルカリ及び水を添加してアミド分解処理を行っても良い。予備加熱の温度はカルボン酸エステルによって異なるが、一般的に40〜150℃が好ましく、更に好ましくは80〜120℃である。予備加熱の時間は、10〜120分、好ましくは20〜90分である。また、予備加熱において窒素通気を行っても良い。【0014】アミド化合物分解工程に添加される水の量は、不純物アミド化合物量や使用される有機アルカリによって適切な量が選ばれるが、一般的に四級アンモニウムカルボン酸塩に対し0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、更に好ましくは3重量%以上である。水量が0.5重量%より低いと有機アルカリが塩基として作用する効果が小さくなりアミド化合物分解速度が遅くなるため好ましくない。【0015】アミド化合物分解操作における液温は製造する四級アンモニウムカルボン酸塩により異なるが40〜150℃が好ましく、更に好ましくは80〜120℃である。液温が40℃より低いとアミド化合物の加水分解が不十分となり、150℃より高くなると製造する四級アンモニウムカルボン酸塩の分解が生じたり、装置の保温や材質面でコストが増加するため好ましくない。【0016】四級アンモニウムカルボン酸塩水溶液を製造する場合においては、アミド化合物分解処理は四級化工程後に行われる溶媒置換工程において実施しても良い。溶媒置換工程は四級アンモニウムカルボン酸塩と反応溶媒を含む反応液から反応溶媒を除去し水溶媒に置換して四級アンモニウムカルボン酸塩水溶液を得るものである。溶媒置換操作は運転のし易さ、及び経済性の面において連続又は回分式の蒸留操作が好ましい。溶媒置換操作中の液温は反応溶媒の種類、及び製造しようとする四級アンモニウムカルボン酸塩により異なるが40〜150℃が好ましく、更に好ましくは80〜120℃である。液温が40℃より低いとアミド化合物の加水分解が不十分となり、150℃より高くなると製造する四級アンモニウムカルボン酸塩の分解が生じたり、装置の保温や材質面でコストが増加するため好ましくない。溶媒置換操作圧力は常圧でも減圧下でも良い。【0017】本発明により四級アンモニウムカルボン酸塩に含まれるアミド化合物を分解除去した場合、その後に得られる液は高アルカリ性となる。液性が高アルカリとなることで次工程において装置材質にダメージを与えるなど悪影響がある場合には、アミド化合物分解工程後の反応液にアルカリを中和する物質を添加して反応液のpHを調整してもよい。この場合添加する物質としては、カルボン酸などの有機酸、四級アンモニウム炭酸水素塩などが使用できる。【0018】本発明のアミド化合物の分解除去工程では反応液をアルカリ性として処理を行うため、空気中の炭酸ガスを吸収しない様に雰囲気は窒素など不活性ガスとすることが望ましい。【0019】【実施例】以下、本発明を具体的に説明するために、実施例及び比較例を挙げて説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。【0020】実施例1〜5不純物としてジメチルアミンを700重量ppm含むトリメチルアミン209gとギ酸メチル255g、水6g、及び溶媒(メタノール)565gをオートクレーブに仕込み、反応温度130℃、反応圧力1.1MPaGで8時間、四級化反応を行った。反応後に230重量ppmの不純物ジメチルホルムアミド(以下DMF)、及び痕跡量のトリメチルアミン、ギ酸メチル、及び6gの水を含む38.9重量%のテトラメチルアンモニウムギ酸塩のメタノール溶液1028gが得られた。【0021】得られたテトラメチルアンモニウムギ酸塩のメタノール溶液50gを窒素通気下で70℃、30分間加熱した。その後、表1に示した有機アルカリと水を加え100℃、4時間DMF分解処理を行い、処理後の液中のDMF濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。結果を表1に示す。表に示す有機アルカリ及び水の値は仕込んだテトラメチルアンモニウムギ酸塩に対する割合を重量%で示したものである。表1に示す様に有機アルカリと水を添加して加熱処理を行った結果、テトラメチルアンモニウムギ酸塩中のDMFは極めて低い濃度まで除去されることが判った。【0022】【表1】※: 溶液中の4級アンモニウムカルボン酸塩に対する重量%【0023】 実施例6〜10不純物としてジエチルアミンを500重量ppm含むトリエチルアミン273gとギ酸メチル211g、水5g、及び溶媒(メタノール)432gをオートクレーブに仕込み、反応温度140℃、反応圧力1.5MPaGで10時間、四級化反応を行った。反応後に220重量ppmの不純物ジエチルホルムアミド(以下DEF)、及び痕跡量のトリエチルアミン、ギ酸メチル、及び5gの水を含む43.7重量%のトリエチルメチルアンモニウムギ酸塩のメタノール溶液915gが得られた。【0024】得られたトリエチルメチルアンモニウムギ酸塩のメタノール溶液50gを窒素通気下で70℃、30分間加熱した。その後、表2に示した有機アルカリと水を加え100℃、4時間DEF分解処理を行った。処理後の液中のDEF濃度を測定した結果を表2に示す。表に示す様に有機アルカリと水を添加して加熱処理を行った結果、トリエチルメチルアンモニウムギ酸塩中のDEFは極めて低い濃度まで除去されることが判った。【0025】【表2】※: 溶液中の4級アンモニウムカルボン酸塩に対する重量%【0026】実施例11〜15実施例1〜6で合成した230重量ppmの不純物DMF、及び痕跡量のトリメチルアミン、ギ酸メチル、水を含む38.1重量%のテトラメチルアンモニウムギ酸塩のメタノール溶液50gを窒素通気下で70℃、30分間加熱した。その後水100gと有機アルカリを加え常圧で100℃、4時間の回分式単蒸留を行い、50重量%のテトラメチルアンモニウムギ酸塩の水溶液を得た。その液中のDMFの濃度を測定した結果を表3に示す。表に示す様に有機アルカリと水を添加して加熱処理を行った結果、テトラメチルアンモニウムギ酸塩水溶液中のDMFは極めて低い濃度まで除去されることが判った。また、実施例11でテトラメチルアンモニウム水酸化物によりDMF分解処理を行った後のテトラメチルアンモニウムギ酸塩水溶液50gに、pH調整のため室温にて50重量%のテトラメチルアンモニウム炭酸水素塩水溶液を10g添加した。テトラメチルアンモニウムギ酸塩を含む水溶液のpHは14から12に低下した。【0027】比較例実施例1〜6で得られたテトラメチルアンモニウムギ酸塩のメタノール溶液50gに、有機アルカリを添加しない以外は実施例11〜15と同様に溶媒置換操作を行い、得られた50重量%のテトラメチルアンモニウムギ酸塩水溶液中のDMF濃度を測定した(表3)。DMFは高濃度で検出され、殆ど分解せず製品中に残留した。【0028】【表3】※: 溶液中の4級アンモニウムカルボン酸塩に対する重量%【0029】【発明の効果】本発明の四級アンモニウムカルボン酸塩の製造法によれば、四級化工程で不純物として混入するアミド化合物を効率良く且つ低濃度まで分解除去することができ、高純度な四級アンモニウムカルボン酸塩を製造することが可能となる。 極性溶媒中で三級アミンとカルボン酸エステルを反応させて一般式[R1R2R3R4N]・R5−COO(R1〜R4は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R1〜R4は同一でも異なっても良い。R5は水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表される四級アンモニウムカルボン酸塩を製造する方法において、三級アミンとカルボン酸エステルとの反応終了後、該反応液を予備加熱処理し、その後該反応液に四級アンモニウム水酸化物、四級アンモニウム炭酸塩および四級アンモニウム炭酸水素塩から選ばれる1種以上である有機アルカリ及び水を添加し、pHを8以上に調整した後、加熱処理を行い三級アミンとカルボン酸エステルを反応させた際に生成したアミド化合物を分解除去することを特徴とする高純度四級アンモニウムカルボン酸塩の製造方法。 予備加熱処理が温度40〜150℃および時間10分〜120分である請求項1記載の高純度四級アンモニウムカルボン酸塩の製造方法。 アミド化合物を加熱分解除去する際、回分式または連続式で蒸留することを特徴とする、請求項1記載の高純度四級アンモニウムカルボン酸塩の製造方法。