タイトル: | 特許公報(B2)_誘電定数測定法 |
出願番号: | 2001022427 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 22/00 |
中山 明 JP 4518680 特許公報(B2) 20100528 2001022427 20010130 誘電定数測定法 京セラ株式会社 000006633 中山 明 20100804 G01N 22/00 20060101AFI20100715BHJP JPG01N22/00 YG01N22/00 J G01N 22/00-22/04 G01R 27/00-27/32 JSTPlus/JST7580(JDreamII) 特開平08−226941(JP,A) 特公昭43−007999(JP,B1) 中山明 他,誘電体円板を装荷した空洞共振器による準マイクロ波帯の複素誘電率測定法,電子情報通信学会技術研究報告,1996年,A・P, アンテナ・伝播 95(537),pp.1-6 清水隆志 他,ミリ波同軸励振空洞共振器法による誘電体平板の複素誘電率測定,電子情報通信学会技術研究報告,1999年,MW, マイクロ波 99(78),pp.73-76 2 2002228600 20020814 8 20071019 田中 洋介 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は誘電定数測定法に関し、特に高周波周波数領域で電子部品として使用する誘電体薄膜の誘電定数測定法に関するものである。【0002】【従来技術】近年においては、マイクロ波の非線形デバイスに高誘電率薄膜を応用する研究が盛んに行われており、その誘電特性の測定法が求められている。高誘電率薄膜の誘電特性は、従来から、高誘電率薄膜と電極から構成されたストリップラインやマイクロストリップライン等の伝送特性や、コンデンサのキャパシタンスから求められてきた。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年においてはより高周波領域で、例えば1GHz以上において正確な高誘電率薄膜の誘電特性が要求されるようになっているが、高誘電率薄膜の誘電特性をストリップラインやマイクロストリップライン等の伝送特性から求める場合には、上記したような高周波領域では線路を構成する導体のロスを完全に分離、除去して誘電体だけの特性を得ることが困難であるため、純粋な誘電体薄膜の評価になっていないことが懸案であった。【0004】又、高誘電率薄膜の誘電特性をコンデンサのキャパシタンスから求める場合には、電極のロスの影響の他に、電極のインダクタンスによるLC共振の効果を補正することが困難であるため、測定精度が低いと言う問題があった。【0005】従って、本発明は上述の技術的課題を解決し、高精度に高誘電率薄膜の比誘電率と誘電正接を測定することができる誘電定数測定法を提供することを目的とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者は上記の課題に対して検討を重ねた結果、二分割した空洞共振器の分割面で、測定試料である誘電体薄膜を形成した誘電体基板を挟持してなる共振器を構成し、該共振器のTEモード、とりわけTE011モードの共振周波数と無負荷Qから、誘電体薄膜の比誘電率と誘電正接を求めることにより、高い精度で誘電体薄膜の比誘電率と誘電正接を測定できることを見いだしたものである。【0007】 則ち、本発明の誘電定数測定法は、開口部を有する一対の有底筒状体間に、かつ、それぞれの開口部に面するように、薄膜が形成された、該薄膜よりも比誘電率が小さい基板を配置して筒型空洞共振器を構成し、該筒型空洞共振器のTEモードの共振周波数と無負荷Qから、測定周波数5GHz以上における前記薄膜の比誘電率と誘電正接を求めることを特徴とする。【0008】本発明に使用する筒型空洞共振器では、図2(c)に示すように円筒型空洞共振器の分割面に測定試料である誘電体薄膜3を形成した誘電体基板5を挿入すると、誘電体薄膜3と誘電体基板5の積層体に電界が集中し、図2(d)に模式的に示すように空洞共振器内の電界は結果として中央でより強く集中するようになり、誘電体基板5に形成された誘電体薄膜3の中にも高い電界が形成される。【0009】TE011モードの共振周波数は、空洞共振器の内寸法、すなわち内径Dと高さH、及び誘電体薄膜3の比誘電率、厚さT1、誘電体基板5の比誘電率、厚さT2、によって決定される。従って、空洞共振器の内径D、高さH、誘電体基板5の比誘電率、厚さT2さらに誘電体薄膜3の厚さT1を予め測定により決定しておけば、TE011モードの共振周波数から誘電体薄膜3の比誘電率を計算して求めることができる。【0010】又、TE011モードの無負荷Qは空洞共振器の内寸法、すなわち内径Dと高さH、空洞共振器の内壁の実効導電率σ、及び誘電体薄膜3の比誘電率ε’1、誘電正接tanδ1、厚さT1、誘電体基板5の比誘電率ε’2、誘電正接tanδ2、厚さT2によって決定される。従って、空洞共振器の内径D、高さH、内壁の実効導電率σ、及び誘電体基板5の比誘電率ε’2、誘電正接tanδ2、厚さT2、さらに誘電体薄膜3の比誘電率(上記より求める)、厚さT1を予め測定により決定しておけば、TE011モードの無負荷Qから誘電体薄膜3の誘電正接tanδ1を計算することができる。【0011】通常誘電体薄膜3の厚さT1は、空洞共振器の内径D、高さHや、誘電体基板5の厚さT2に比べて10―4〜10―3倍の極めて薄いものであるため、その比誘電率と誘電正接が共振周波数と無負荷Qに影響を及ぼしがたいことが予想される。しかしながら、本発明の測定法ではTE011モードの電界は誘電体薄膜3の中で高い強度を持つので、薄膜にも係わらず、誘電体薄膜3の比誘電率と誘電正接が共振周波数や無負荷Qに影響を与えることができ、その結果、TE011モードの共振周波数と無負荷Qの測定値から誘電体薄膜3の比誘電率と誘電正接を測定することが可能となる。【0012】 また、本発明では、薄膜が形成される基板の比誘電率は薄膜よりも小さい。これにより、基板の影響を小さくすることができる。【0013】【発明の実施の形態】図1は、円筒型空洞共振器に測定試料をセットした状態を示す縦断面図である。この図1において、円筒型空洞共振器1は中央で2分割され、測定試料である誘電体薄膜3が形成された誘電体基板5が分割面で挟持されている。即ち、円筒型空洞共振器1は、開口部6a、6bを有する一対の金属製有底筒状体1a、1b間に、それぞれの開口部6a、6bに面するように誘電体薄膜3が形成された基板5を配置して円筒型空洞共振器1が構成されている。【0014】金属製有底筒状体1aの側壁には貫通孔が形成されており、外部から内部に向けて同軸ケーブル9a、9bが挿通しており、その内部側の先端には出力、入力用の一対のループアンテナ11a、11bが設けられている。この出力、入力用の一対のループアンテナ11a、11bにより、この円筒型空洞共振器1は透過形の共振器となる。ループアンテナの位置、特に側壁からループアンテナ11a、11bの距離Lは、測定精度上有利な疎結合共振器とするため、共振周波数での挿入損失が20〜30dBになるように調整されている。【0015】そして、外部の機器、例えばシンセサイズドスイーパーから周波数が掃引された信号を入力ループアンテナ11aにより、円筒型空洞共振器1内部に注入することにより、TE011モード共振電磁界が励振される。共振器1の透過信号は出力用ループアンテナ11bを介して、ネットワークアナライザー等の測定機器に入力され、共振器1の共振周波数及び無負荷Qが測定される。【0016】即ち、本発明に使用する円筒型空洞共振器1は電磁場の共振器として作用し、円筒型空洞共振器1の内部では電磁場は様々な姿態で共振するが、図2(a)に示すような円筒型空洞共振器1では、TE011モードでは、図2(b)に模式的に示すように空洞共振器1の中央で電界が最も大きくなり、空洞共振器1の上下端面で電界はゼロになる。電界は図2(e)に示すように円筒型空洞共振器1の円筒軸に垂直な面内を回転する。【0017】そして、図2(c)に示すように円筒型空洞共振器1の分割面に測定試料である誘電体薄膜3を形成した誘電体基板5を挿入、即ち、有底筒状体1a、1b間に、それぞれの開口部6a、6bに面するように誘電体薄膜3が形成された基板5を配置して円筒型空洞共振器1を構成すると、誘電体薄膜3と誘電体基板5の積層体に電界が集中し、図1(d)に模式的に示すように空洞共振器1内の電界は結果として中央でより強く集中するようになり、誘電体基板5に形成された誘電体薄膜3の中にも高い電界が形成される。【0018】TE011モードの共振周波数は、f0=f(D,H,ε’1,ε’2,T1,T2)の関係式で表され、空洞共振器1の内寸法、すなわち内径Dと高さH、及び誘電体薄膜3の比誘電率ε’1、厚さT1、誘電体基板5の比誘電率ε’2、厚さT2、によって決定される。従って、空洞共振器1の内径D、高さH、誘電体基板5の比誘電率ε’2、厚さT2さらに誘電体薄膜3の厚さT1を予め測定により決定しておけば、TE011モードの共振周波数の測定値から誘電体薄膜3の比誘電率ε’1を計算して求めることができる。【0019】また、TE011モードの無負荷Qは、【0020】【数1】【0021】の式で表される。ただしPe1は誘電体薄膜3内の電界エネルギーの集中率、Pe2は誘電体基板5内の電界エネルギーの集中率,Rsは表皮抵抗、Gは共振器の形状ファクターであり【0022】【数2】【0023】の式で表される。ここで、Eは電界、V1は誘電体薄膜3の体積、V2は誘電体基板5の体積、Vtは共振器全体の体積、Sは空洞共振器内壁の面積、μは空洞共振器1を構成する導体の透磁率、μ0は真空の透磁率、ωは共振器角周波数2πf0を表す。【0024】すなわち、TE011モードの無負荷Qは、空洞共振器1の内寸法、すなわち内径Dと高さH、空洞共振器1の内壁の実効導電率σ、及び誘電体薄膜3の比誘電率ε’1、誘電正接tanδ1、厚さT1、誘電体基板5の比誘電率ε’2、誘電正接tanδ2、厚さT2によって決定される。従って、空洞共振器1の内径D、高さH、内壁の実効導電率σ、及び誘電体基板5の比誘電率ε’2、誘電正接tanδ2、厚さT2、さらに誘電体薄膜3の比誘電率ε’1、厚さT1を予め測定により決定しておけば、TE011モードの無負荷Qから誘電体薄膜3の誘電正接tanδ1を計算することができる。【0025】このようなTE011モードの共振周波数と無負荷Qの測定値から誘電体薄膜3の比誘電率と誘電正接を求める数値計算法として、幾つかの手法が可能であるが、軸対称の有限要素法はそれらの中で有力な方法である。【0026】軸対称の有限要素法によれば、本発明で使用するような軸対称形状の共振器に対して、その寸法、形状、内部の比誘電率、比透磁率から共振電磁界分布や共振周波数を精度良く、しかも短時間で計算できる。従って、これを応用すれば共振周波数や無負荷Qの測定値から、共振器内部の測定試料の誘電率や誘電正接を求めることができる。【0027】通常誘電体薄膜3の厚さT1は0.1〜5μmの範囲にあり、空洞共振器1の内径D、高さHや、誘電体基板5の厚さT2に比べて10-4〜10-3倍の極めて薄いものであるため、その比誘電率ε’1と誘電正接tanδ1が共振周波数と無負荷Qに影響を及ぼしがたいことが予想される。しかしながら、本発明の測定装置ではTE011モードの電界は誘電体薄膜3の中で高い強度を持つので、薄膜にも係わらず、誘電体薄膜3の比誘電率ε’1と誘電正接tanδ1が共振周波数や無負荷Qに影響を与えることができ、その結果、TE011モードの共振周波数と無負荷Qの測定値から誘電体薄膜3の比誘電率ε’1と誘電正接tanδ1を求めることが可能となる。【0028】 本測定法によれば、薄膜3を形成する基板5の比誘電率は薄膜3よりも小さい。これにより、基板5による影響を小さくすることができる。特に、基板5の比誘電率が10以下であり、薄膜3の比誘電率は100以上であることが望ましい。あるいは、薄膜3の比誘電率は基板5の比誘電率の10倍以上であることが望ましい。具体的には基板としては、サファイア、アルミナ焼結体、コージェライト質焼結体等の比誘電率が10以下で低損失な材料が望ましい。基板5の厚みは誘電体薄膜3の厚みの5000倍以下が望ましい。これにより、実用的に充分な精度で誘電体薄膜の比誘電率、誘電正接を5GHz以上の高周波領域で測定することができる。【0029】薄膜3は、例えば、スパッタ法、ゾルゲル法等のどのような方法で作製されたものでも良く、厚ければ厚いほど望ましいが、プロセス上の制約から少なくとも基板の厚みの1/5000以上であることが望ましく、0.1μm以上であることが望ましい。【0030】 本発明の測定法では、周波数が5GHz以上の高周波領域での誘電定数の測定に適しており、特には5〜50GHzでの測定に適している。また、本発明では、TEモードの共振周波数と無負荷から誘電定数を求める方法であるが、TE011モード以外のモードでも、例えば、高次モードであるTE021モードは、空洞共振器の中央でTE011モードと同じように電界が集中するため、TE011モードの代わりに用いても良い。この場合には同じ空洞共振器を使用して、TE011モードより高い周波数の測定が可能になる。【0031】本発明では円筒型空洞共振器を用いたが、円筒以外の四角筒状であっても、本発明と同様の方法で、原理的には誘電体薄膜の比誘電率と誘電正接の測定が可能である。【0032】尚、本発明で用いられる筒型空洞共振器では、金属製の有底筒状体を用いても良いし、セラミックス製の有底筒状体の内壁に導体ペーストを焼き付けた空洞共振器を用いることもでき、筒型空洞共振器として機能するものであれば、上記構造に限定されるものではない。【0033】尚、本発明では、ある周波数での誘電定数を測定する場合には、その周波数で共振するように、共振器の形状を調整する必要がある。【0034】【実施例】2種類の円筒型空洞共振器A、Bを用いて、サファイア基板(c軸に垂直方向の比誘電率9.4)に形成された(Ba1/2Sr1/2)TiO3薄膜(以後BST薄膜とする)の比誘電率、誘電正接を本発明の測定法により求めた。表1に、円筒型空洞共振器A、Bの内径D、内部の空洞高さHの寸法と、内壁の実効導電率を示す。【0035】また、BST薄膜の膜厚は、表2に記載するように変化させ、上記円筒型空洞共振器A、Bの共振周波数、無負荷Qを求め、BST薄膜の比誘電率、誘電正接を求めた。これらの結果を表1、2に記載した。【0036】【表1】【0037】【表2】【0038】これらの表1、2に示すように、測定試料は厚さが0.6μmと1.2μmのBST薄膜であり、それらの比誘電率、誘電正接を約15.5GHと約20.0GHzで測定した。測定ばらつきを考慮すると、比誘電率は150±10、誘電正接は0.07±0.01であり、この測定結果の範囲では周波数、厚さによる違いは殆ど認められないことが判る。【0039】【発明の効果】以上、詳述した通り、本発明の測定法によれば、従来測定が困難であった誘電体薄膜の比誘電率、誘電正接をマイクロ波において精度良く測定できる。これにより、マイクロ波用途の高誘電率薄膜の開発が容易になり、高誘電率薄膜を使用したマイクロ波デバイスの設計も可能となる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の誘電定数測定法に用いられる円筒型空洞共振器の一例を示す縦断面図である。【図2】本発明の誘電定数測定法の測定原理を説明するもので、(a)は円筒型空洞共振器の縦断面図、(b)は(a)に示された円筒型空洞共振器内部の電界の強度分布、(c)は分割面で誘電体薄膜を形成した誘電体基板を挟持した円筒型空洞共振器の縦断面図、(d)は(c)に示した円筒型空洞共振器の電界の強度分布、(e)は(a)(c)の円筒型空洞共振器の横断面図である。【符号の説明】1・・・円筒型空洞共振器1a、1b・・・有底筒状体3・・・薄膜5・・・基板6a、6b・・・開口部 開口部を有する一対の有底筒状体間に、かつ、それぞれの開口部に面するように、薄膜が形成された、該薄膜よりも比誘電率が小さい基板を配置して筒型空洞共振器を構成し、該筒型空洞共振器のTEモードの共振周波数と無負荷Qから、測定周波数5GHz以上における前記薄膜の比誘電率と誘電正接を求めることを特徴とする誘電定数測定法。 前記筒型空洞共振器のTE011モードの共振周波数と無負荷Qから、前記薄膜の比誘電率と誘電正接を求めることを特徴とする請求項1記載の誘電定数測定法。