生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_歯科用レジン表面分離材
出願番号:2001020756
年次:2011
IPC分類:A61K 6/00


特許情報キャッシュ

常川 勝由 松尾 守 JP 4791638 特許公報(B2) 20110729 2001020756 20010129 歯科用レジン表面分離材 日本歯科薬品株式会社 592150354 小堀 益 100082164 堤 隆人 100105577 常川 勝由 松尾 守 20111012 A61K 6/00 20060101AFI20110921BHJP JPA61K6/00 Z A61K6/00-6/10 特開2000−026224(JP,A) 特表平11−503150(JP,A) 特開平09−268109(JP,A) 特開平02−144069(JP,A) 特開平01−136653(JP,A) 3 2002220313 20020809 8 20071220 辰己 雅夫 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、歯科医院での齲蝕治療において、窩洞形成により露出した形成象牙質面を歯質接着性アクリルレジンにより保護コーティングする際、レジン系仮封材と称する歯科用暫間充填材が接着性アクリルレジンに接着し除去できなくなるのを防ぎ、しかも、仮封材が脱落しない程度の密着性を有する歯科用レジン表面分離材に関する。【0002】【従来の技術】歯科の一般的な臨床において、歯髄が生きている生活歯あるいは非生活歯にかかわらず窩洞形成は頻繁におこなわれる。この窩洞形成を伴う歯科治療では、齲歯の感染した軟化象牙質を削除して窩洞形成をおこなった後、金属インレーなどの永久補綴物を装着するまでの一連の治療期間、窩洞を無菌清浄に保持し、外来刺激を遮断するために一時的に封鎖する目的で使用する暫間的な充填材として仮封材が用いられている。【0003】従来の仮封材には、総山孝夫著「新歯科用セメント」(永山書店 1983発行)p65〜73、p75〜81、J.N.Anderson著、山根・平沢訳「要説歯科材料学」(医歯薬出版 1981発行)p296〜302、柳川ほか接着歯学10巻3号 1992、p247〜249 「保存修復における仮封」等に記載されているように、)熱可塑性樹脂(テンポラリーストッピング)、水硬性仮封材、仮封セメント(ユージノールセメント、脂肪酸セメント、ポリカルボン酸セメント)、アクリルレジン系仮封材などの種類がある。なかでもアクリルレジン系仮封材は、咬合圧などの外力に十分耐え得る強度があること、充填操作が容易であること、除去操作が容易であることなどの理由で近年多用されつつある。【0004】病理組織学では、健康象牙質を削除した歯牙は露髄歯と考えており、現在の鋳造歯冠修復物は嵌合保持形態を必要とするため、この健康象牙質の削除を避けることは不可能である。このことから従来の技法では、健康象牙質面を無菌清浄に保持し、外来刺激を遮断するために壁着性、封鎖性のよいカルボン酸系仮封セメントなどを仮封材として用いていた。ただし、壁着性のよいカルボン酸系セメント類は除去が困難であり、処置が煩雑なものとなっていた。【0005】さらに、「接着歯学」10巻3号 1992、p241〜242 真坂信夫 「生活歯形成面の仮封について」、「接着歯学10巻3号 1992、p250猪越重久 「仮封について:低粘性コンポジット(Protect Liner)を用いた象牙質面保護法」に記載されているように、近年、歯髄にも安全で接着力の強い4−メタクリルオキシエチル トリメリテート アンヒドライド/メタクリル酸メチル、トリ−n−ブチルボラン4META/MMA−TBB)系ボンディング材などの接着性レジンの登場により、窩洞形成直後に形成象牙質面を接着性レジンで被覆、保護する技法が行われるようになった。これにより、充填操作が容易で咬合圧などの外力に十分耐え得る強度があるアクリルレジン系仮封材を用いて仮封することが理想となった。【0006】しかし、形成象牙質面を被覆保護した接着性レジン材料面に直接、アクリルレジン系仮封材を適用すると接着してしまい、除去困難または不可能となることが臨床上の問題とされている。一方、接着性レジン材料面にワセリンなどの油の被膜を形成するものやポリエチレングリコールなどを適用すると、仮封中にアクリルレジン系仮封材が脱落するという欠点がある。また、ポリビニルアルコールやポリ酢酸ビニル、または酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体、あるいは、コーパル樹脂を有機溶媒に溶解した分離材を適用すると、脱落だけでなく被膜除去が困難となり応用できない。【0007】さらに、形成象牙質面を被覆保護した接着性レジン材料面とアクリルレジン系仮封材の分離材としては、特開2000−26224号公報には、ポリエチレングリコール等の水溶性ポリマーと重合禁止剤及び水溶性有機溶媒からなる組成物が開示されている。これは、分離性能にすぐれた分離材とされているが、臨床使用上では塗布量の違いによりアクリルレジン系仮封材が脱落したり、また仮封材の封鎖性能を低下させるなど、密着性に懸念がある。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は、窩洞形成象牙質面を被覆保護した接着性レジン材料とアクリルレジン系仮封材が接着することなく仮封材の除去が容易であり、仮封中にアクリルレジン系仮封材が脱落することなく十分な密着性が得られ、さらには、分離材の被膜がエタノールなどで容易に拭き取り除去できる歯科用レジン表面分離材を提供する。【0009】【課題を解決するための手段】アクリル化合物の重合禁止剤として知られているフェノール系化合物を、ロジンまたはサンダラックのアルコール溶液に添加することにより、サンダラックバーニッシュやロジンのアルコール溶液の単独での使用の際、接着性レジン材料と化学重合型アクリルレジン系仮封材が接着し、仮封材の除去が困難または不可能となる問題を解消できるという認識の下で本発明の歯科用レジン表面分離材を完成するに至った。【0010】すなわち、本発明の歯科用レジン表面分離材は、ロジンまたはサンダラックおよびジブチルヒドロキシトルエンやヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテルなどの重合禁止剤をエタノールおよび/またはアセトン、酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解した混合液体である。【0011】ロジンはマツ属諸種植物の分泌物から精油を除いて得た固形樹脂のことであり、特に限定されず、通常歯科分野で使用しているものが使用できる。ロジンの構成成分は、90質量%の樹脂酸と10質量%の中性物質からなる。樹脂酸の主成分(約90質量%)は加熱により異性化したアビエチン酸であり、ほか成分としてピマール酸、イソピマール酸を含み、精油はほとんど含まない。なお、フランス産のものはピマール酸含有量が高い。【0012】サンダラックは南・北アフリカ、オーストリアを原産地とするヒノキ科の植物の木幹から得られる透明な天然樹脂である。歯科用サンダラックバーニッシュは、アルコール溶液として急性根尖性歯周炎などの感染根管の開放療法時の通気性仮封材として使用されている。すなわち急性症状や排膿が認められる根管を治療する場合、密封してしまうと腐敗ガスや膿の排出ができず、急性症状が悪化することがあるので治療初期の1〜2回は、通気性のあるサンダラックバーニッシュ綿球による通気仮封をおこない、経過観察する目的で使用されている。さらにサンダラックバーニッシュは、石膏と石膏との分離材としての用途もある。すなわち作業用分割模型の作製時、石膏印象に石膏を注入するような場合に用いることもある。【0013】歯科用レジン表面分離材組成中のロジンまたはサンダラックの配合量は、1〜40質量%が有効であり、低濃度では分離材(液剤)の塗布と乾燥の操作を繰り返して皮膜を形成する必要があり、高濃度では皮膜が厚すぎて乾燥しにくくなったり、皮膜にムラが発生したりする。1回の塗布で均質な皮膜が形成できるロジンまたはサンダラックの配合量は、10〜30質量%が好ましい。また、エタノール中にサンダラックを溶解する場合、サンダラックの配合量が40質量%以上では溶解せず、また、結晶等の析出がみられ、実使用上では問題があった。【0014】 本発明に使用できる有機溶剤としては、口腔内で使用できる安全性と溶解性を考慮すれば、エタノール、アセトン、酢酸エチルが挙げられる。エタノールは消毒用アルコールとして日常臨床に使用されているため、最も適切な有機溶剤である。本発明組成中の有機溶剤の配合量は、50〜90質量%である。【0015】重合禁止剤であるフェノール系化合物は、通常歯科用のアクリルレジンモノマーの中に0.005〜0.02質量%(50〜200ppm)程度配合されており、貯蔵中に重合することを防ぐ目的のために添加されている。すなわち貯蔵中に発生したラジカルとすみやかに反応して、アクリルレジンモノマーの重合がさらに進行しないよう、安定した遊離基や中性化合物を生ずることにより重合禁止効果が発揮されている。【0016】本発明組成中のフェノール系化合物の配合量は、0.01〜10質量%が歯科用レジン表面分離材として有効であり、好ましくは0.5〜2質量%である。0.05質量%以下では、接着性レジン材料とアクリルレジン系仮封材が接着して仮封材が除去できなくなり、10質量%以上では、仮封中にアクリルレジン系仮封材が脱落したり、十分な密着性が得られなくなる。【0017】なお本発明のフェノール系化合物としては、芳香環に直結した水酸基を有するもので、前記有機溶剤に溶解するものであればすべて目的を達成することができる。その化合物代表例を挙げると、フェノール、(o−、m−、p−)クレゾール、(o−、m−、p−)チモール、ジブチルヒドロキシトルエン、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、オイゲノール、グアヤコール、(o−、m−、p−)クロロチモール、(o−、m−、p−)ブロモチモール、ピロガロール、タンニンなどである。【0018】【発明の実施の形態】以下、実施例によって、本発明の実施の形態を説明する。【0019】実施例1サンダラック 20質量%ジブチルヒドロキシトルエン 1質量%エタノール 79質量%からなる組成物を用いて封鎖性の指標となる試験である色素漏洩試験及び分離効果の良否を判断する試験である引張り接着強さ試験をおこなった。【0020】色素漏洩試験方法牛歯歯冠部に円筒窩洞を形成し、ライナーボンドII(クラレ社製ボンディング材)を用いコーティング後、上記実施例1を塗布、乾燥後、プラストシール(日本歯科薬品社製アクリルレジン系仮封材)にて仮封した。仮封後、24時間37℃水中に浸漬し、4℃及び60℃の水中に交互に1分間ずつ合計60回浸漬するサーマルサイクリングを行った後、0.2%塩基性フクシン水溶液に24時間浸漬した。浸漬後仮封材を除去し色素漏洩を目視観察した。試料数は8とした。【0021】引張り接着試験方法♯600研磨紙にて研削牛歯唇側象牙質面に色素漏洩試験と同様にコーティング後、上記実施例1を塗布、乾燥後、プラストシール(日本歯科薬品社製アクリルレジン系仮封材)にて仮封し、一週間37℃水中に浸漬した。仮封材撤去後エタノールで清掃し、ボンドA液とB液を混和し塗布して光照射せず、クラパールディーシー(クラレ社製ボンディング材)でシーアールインレー(クラレ社製インレー用複合レジン)の円柱硬化体を接着して、24時間37℃水中浸漬後引張り接着強さを測定した。なお、対象として、上記実施例1を使用せずに仮封した群、仮封せずに1週間37℃水中浸漬した群、コーティング直後接着群も接着強さを測定した。【0022】結果色素漏洩試験試料8個中1個の辺縁部約1mm程の漏洩が認められたが、十分な封鎖性を有しているものと判断できる。【0023】引張り接着強さ試験【表1】これに対して、上記組成物を使用せずに仮封した群では仮封材を撤去することができず、引張り接着強さを測定することができなかった。【0024】実施例2サンダラック 19質量%ジブチルヒドロキシトルエン 3質量%エタノール 78質量%からなる組成物を用いて封鎖性の指標となる試験である色素漏洩試験及び分離効果の良否を判断する試験である引張り接着強さ試験を上記実施例1と同じ要領で行った。【0025】結果色素漏洩試験試料8個中1個の辺縁部約1mm程の漏洩が認められたが、十分な封鎖性を有しているものと判断できる。【0026】引張り接着強さ試験【表2】これに対して、上記組成物を使用せずに仮封した群では仮封材を撤去することができず、引張り接着強さを測定することができなかった。【0027】実施例3サンダラック 18質量%ジブチルヒドロキシトルエン 10質量%エタノール 72質量%の組成のものを用いて、実施例1に記載の要領で封鎖性の指標となる試験である色素漏洩試験及び分離効果の良否を判断する試験である引張り接着強さ試験を行った。【0028】結果色素漏洩試験試料8個中4個の辺縁部約1mm程の漏洩、2個の窩底部までの漏洩が認められた。【0029】引張り接着強さ試験【表3】これに対して、上記組成物を使用せずに仮封した群では仮封材を撤去することができず、引張り接着強さを測定することができなかった。【0030】その他本発明における処方例を表4に記す。何れもが、上記実施例と同様の封鎖性を示した。【0031】【表4】また、本発明以外のものによる対象例を表5に記す。何れもが、上記実施例と比較して、封鎖性に劣るものであった。【0032】【表5】【0033】【発明の効果】形成象牙質表面に4−META/MMA−TBB系ボンディング材を使用してコーティングしたものに、本発明である歯科用アクリルレジン表面分離材を塗布、乾燥し、アクリルレジン系仮封材にて暫間被覆したものは良好な封鎖性能を有し、且つ仮封材除去時には、探針で容易に一塊除去できた。【0034】アクリルレジン系仮封材除去後のボンディング材表面には、仮封材の残渣はなかった。なお本発明表面分離材が若干、残渣として認められたが、エタノール含浸綿球などで容易に拭き取ることができた。【0035】また、その後のレジンセメントなどによる補綴物の接着に悪影響を及ぼすことなく、ボンディング材表面に上記の処置を施さないものに直接接着したものと比較しても接着力に大きな差はなかった。 齲蝕治療において窩洞形成後、形成象牙質を歯質接着性アクリルレジンにより保護コーティングした後、硬化したレジン表面に塗布、乾燥して被膜を形成する歯科用レジン表面分離材であって、 1〜40質量%のロジンまたはサンダラックと、0.01〜10質量%のフェノール系化合物と、50〜90質量%の有機溶剤からなる歯科用レジン表面分離材。 フェノール系化合物がフェノール、クレゾール、チモール、ジブチルヒドロキシトルエン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、オイゲノール、クロロチモール、ブロモチモール、ピロガロール、タンニンからなる群から選ばれてなる請求項1記載の歯科用レジン表面分離材。 有機溶剤がエタノール、アセトン、酢酸エチルからなる群から選ばれてなる請求項1記載の歯科用レジン表面分離材。


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