| タイトル: | 特許公報(B2)_尿酸値低下剤 |
| 出願番号: | 2001015187 |
| 年次: | 2010 |
| IPC分類: | A61K 36/00,A61P 19/06 |
長南 治 高橋 理恵 松原 智史 曽根 春恵 綿貫 雅章 古江 尚 JP 4577998 特許公報(B2) 20100903 2001015187 20010124 尿酸値低下剤 株式会社ヤクルト本社 000006884 特許業務法人 小野国際特許事務所 110000590 小野 信夫 100086324 長南 治 高橋 理恵 松原 智史 曽根 春恵 綿貫 雅章 古江 尚 20101110 A61K 36/00 20060101AFI20101021BHJP A61P 19/06 20060101ALI20101021BHJP JPA61K35/78 BA61P19/06 A61K 36/00 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平02−193907(JP,A) J Chromatogr B ,1997年,vol.693, no.1,p.249-255 3 2002212085 20020731 7 20070219 金子 亜希 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、イチョウ葉抽出物を有効成分とする尿酸値低下剤および当該低下剤を含有することを特徴とする飲食品に関する。【0002】【従来の技術】尿酸代謝異常の最も代表的な疾患である痛風は、すでに古代ギリシャのヒポクラテスの時代から知られている非常に古い疾患である。しかし、痛風の病態と尿酸代謝異常との関係が明らかにされたのは、18世紀の終わりのことであり、それまで痛風は、関節痛発作と同一に捉えられ、コルヒチンが疼痛発作の治療に用いられていた。【0003】現在では、痛風患者の血液中に尿酸が高濃度で存在することが明らかにされ、痛風患者の治療においては疼痛発作のみでなく、血中尿酸値を低下させることが最も重要であると考えられている。このための尿酸値低下剤としては、尿酸排泄促進剤と合成阻害剤が使用されている。その中でも、ヒポキサンチンからキサンチンを経て尿酸にいたる過程に働くキサンチンオキシダーゼの作用を阻害するアロプリノールは、現在知られている唯一の尿酸合成阻害剤として、痛風治療に広く用いられている(日本臨床、日本臨床社、1081−1085頁、1991)。【0004】さらに、高尿酸血症の是正は動脈硬化、心筋梗塞の予防に必要であり、腎不全の増悪を介する高血圧の予防にも意義あることとされている(日本臨床、日本臨床社、989−993頁、1991)。【0005】しかしながら、アロプリノール投与により、発熱、発疹ならびに肝障害、腎機能異常等が認められることや(医療薬日本医薬品集、薬業時報社、157−159頁、2000)、アロプリノールの代謝物であるオキシプリノールは透析患者において、体内に高濃度に蓄積することから血液障害、肝障害をきたすことが報告されている(疾患と治療薬、南江堂、212頁、1996)。【0006】この様な状況から、副作用のない尿酸値低下剤が求められている。また、前記尿酸値低下剤を含有し、高尿酸血症の是正ならびに高血圧症等の合併症の治療や予防に有効で、しかも安全性に優れた飲食品が求められている。【0007】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、新規で副作用のない尿酸値低下剤を見出し、これを含有する、副作用もなく、高尿酸血症の是正ならびに高血圧症等の合併症の治療や予防に有効で、しかも安全性に優れた飲食品を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、イチョウ葉抽出物に優れた尿酸値低下作用があることを見出し、これが尿酸値低下剤や血圧降下剤等として有用であることを見出した。また、イチョウ葉抽出物を含有する食品を摂取することによっても高尿酸血症の是正や高血圧症等の緩和が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。【0009】すなわち本発明は、イチョウ葉抽出物を有効成分とする尿酸値低下剤を提供するものである。【0010】また、本発明は前記尿酸値低下剤を含有することを特徴とする飲食品を提供するものである。【0011】【発明の実施の形態】本発明において尿酸値低下剤として用いられるイチョウ葉抽出物は、例えばイチョウ葉をそのままあるいは細断し、水や有機溶媒(アルコール、エーテル、アセトン等)等により抽出し、酢酸エチルその他の有機溶媒と水との分配、カラムクロマトグラフィー等、植物成分の分離、抽出に利用されている公知の方法を単独であるいは適宜組み合わせて精製することにより容易に得ることができる。また、得られた抽出物を、更にろ過等の手段で不純物を除去後、減圧下で濃縮したもの、あるいはスプレードライや自然乾燥等の手段により乾燥させたものを用いても良い。【0012】特に好ましいイチョウ葉抽出物の製造方法としては、乾燥したイチョウ葉を細断し、3〜10倍量の含水アルコールで抽出し、得られた抽出物を乾燥する方法を挙げることができる。抽出に用いられる含水アルコールとしては、尿酸値低下効果の点から水性エタノールを用いることが好ましく、特に70〜90質量%の水性エタノールの使用が好ましい。【0013】本発明の尿酸値低下剤および当該低下剤を含有する食品としてイチョウ葉抽出物を使用する場合の摂取量は、抽出物の固形物量として、20mg〜360mg/日、特に好ましくは40mg〜120mg/日である。【0014】本発明において使用されるイチョウ葉抽出物は毒性が低いものである。例えば、これをマウスに大量に投与した場合においても、マウス体重kg当り12g投与付近まで死亡例は認められず、LD50値は、マウスで体重kg当り15.3gである。ちなみに、LD50が15.3g/kgというレベルは、食品に使用されている各種添加物などに比較しても、極めて急性毒性は低いといえる。なお、大量投与による死亡例は、消化・吸収の結果というよりは、急激な浸透圧ショックの様相を示し、死亡をまぬがれた個体は、後遺症のような行動は外見上からは、一切認められなかった。以上の結果から、一度に大量摂取した場合の悪影響の可能性は、少ないと判断される。【0015】本発明の尿酸値低下剤で使用されるイチョウ葉抽出物は、後記実施例で明らかにするように、卓越した尿酸値低下作用を有し、且つ安全性も極めて高いものであり、飲食品に添加使用できるほか、当該作用を利用して各種の医薬品としても使用することができるものである。【0016】飲食品に利用する場合には、種々の飲食品にイチョウ葉抽出物を含有させればよい。具体的な飲食品としては、清涼飲料、発酵乳、ケフィア、果汁飲料、スープ、せんべい、クッキー、錠菓等が挙げられ、中でも各種生薬等を含有する飲料は風味面から好ましい。【0017】飲食品の製造は、常法に従い行えば良く、例えば飲料であれば、以下のようにして製造できる。まず、イチョウ葉抽出物とその他の副原料を混合溶解後、均質化し、HTST殺菌機等を用いて加熱殺菌し、容器に充填、密封する。容器は缶、PET容器、瓶、紙等のいずれの容器でも良い。【0018】飲食品の副原料としては、例えば、クコシ、カンゾウ、レイシ、アガリクス、エノキタケ、オタネニンジン、サンシチニンジン、クロレラ、シイタケ、シロマイタケ、ハンピ、プロポリス、マイタケ、ヤマブシダケ、ローヤルゼリー、アメリカニンジン、エキナセア、カキ肉、クマザサ、ゲンチアナ、セイヨウオトギリソウ、チクセツニンジン、トウチュウカソウ、ドクダミ、トチバニンジン、ナメコ、ノコギリヤシ、ハタケシメジ、ヒラタケ、ブナシメジ、マッシュルーム等の生薬類、蔗糖、異性化等、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール類、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア等の高甘味度甘味料、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、ペクチン、ローカストビーンガム等の増粘(安定)剤、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等の酸味料、レモン果汁、オレンジ果汁、ベリー系果汁等の果汁類、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類やカルシウム、鉄、マンガン、亜鉛等のミネラル類、梅エキス等が挙げられる。特に甘味料と、クコシ、カンゾウ、レイシ等の生薬類とを組み合わせた場合には最終製品の風味が良好となるため好ましく、一方で前記糖アルコール類を併用すれば、飲料を製造した場合の安定性が向上するため好ましい。【0019】医薬品として利用する場合には、イチョウ葉抽出物を有効成分とし、これに常用される無機又は有機の担体を加えて、固体、半固体又は液体の形で、経口投与剤のほか、外用剤等の非経口投与剤に製剤化することもできる。【0020】経口投与のための製剤としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、軟・硬カプセル剤、散剤、細粒剤、粉剤、乳濁剤、懸濁剤、シロップ剤、ペレット剤、エリキシル剤等が挙げられる。非経口投与のための製剤としては、注射剤、点滴剤、輸液、軟膏、ローション、トニック、スプレー、懸濁剤、油剤、乳剤、坐剤等が挙げられる。本発明品の有効成分を製剤化するには、常法にしたがえばよく、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張剤その他常用されている補助剤を適宜使用する。【0021】【実施例】以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、これらは何ら本発明を制約するものではない。【0022】参 考 例 1< イチョウ葉抽出物の製造 >細断したイチョウ葉に5倍量の80質量%水性エタノールを加えて60℃で4時間抽出した。得られた抽出物を減圧下で5分の1の量となるまで濃縮した後、ろ過して不純物を除去した。この濃縮物を80℃で30分間滅菌した後、スプレードライヤーで噴霧乾燥してイチョウ葉抽出乾燥粉末2.5kgを得た。【0023】実 施 例 1ヒトにおける血中尿酸値低下および血圧降下作用の測定:イチョウ葉抽出物のヒトにおける血中尿酸値低下および血圧降下作用を次のようにして調べた。【0024】< 試験方法 >試験対象者は、収縮期血圧140mmHgもしくは拡張期血圧85mmHg以上の臨床的に健康な日常生活を営む成人16名として、一群8名の2群に分けた。この試験対象者を2群に分け、それぞれ下記組成のイチョウ葉抽出物飲料、またはこのイチョウ葉抽出物飲料からイチョウ葉抽出物のみを除いた対照飲料を12週間、1日1本飲用してもらった。摂取前、ならびに摂取終了時、12時間以上の空腹状態の後、採血を行い、尿酸値の測定を行った。また、熟練した保健婦による水銀血圧計による血圧測定ならびに心拍数の測定を行った。血圧の測定は、最低5分間の安静後、座位で3回ずつ測定した。個々の血圧は3回の平均値を採用した。【0025】(処方) (g)イチョウ葉抽出物* 0.04炭水化物 16.6ナトリウム 0.011クコシエキス 適量カンゾウエキス 適量レイシエキス 適量梅エキス 適量*:参考例1で製造したもの。【0026】< 評価方法 >降圧効果については、摂取前と、摂取12週後の収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧の差を比較して、「降圧薬の臨床評価方法に関するガイドライン」の降圧度審査基準に基づいて評価した(新薬臨床評価ガイドライン、薬事日報社、308−332頁、1994)。降圧度判定は降圧度を4段階に分類して判定し、収縮期による分類と拡張期による分類が一致しないときは、平均血圧による分類を用いた。【0027】結果はすべて平均値±標準誤差を示した。両群の平均値の差の検定にはt−検定を用いた。さらに、経時的な変動については対応のあるt−検定を用い、摂取前との比較を行った。各統計処理とも、有意水準は5%以下とし、両側検定にて行った。【0028】< 試験結果 >対照飲料群の尿酸値に変化は認められなかったが、イチョウ葉抽出物飲料群の摂取12週後の尿酸値は、摂取前の値に比べ有意な低下が認められた。さらに、摂取12週後の対照飲料群の尿酸値と、イチョウ葉抽出物飲料群の尿酸値を比較してみると、イチョウ葉抽出物飲料群の尿酸値は有意に低い値であった。【0029】【表1】【0030】摂取前と、摂取12週後の収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧の差を比較し、降圧度審査基準に基づいてイチョウ葉抽出物飲料の有効性を評価した。下降ないし下降傾向を示した者を有効とし、その値を求めてみると、対照飲料群の25%に対し、イチョウ葉抽出物飲料群は75%と高い値であった。【0031】【表2】【0032】実 施 例 2清涼飲料の製造:下記処方により、常法に従って各成分を配合し、均質化して清涼飲料を得た。得られた清涼飲料は褐色瓶に充填後、アルミキャップにて封印し、加熱処理を施した。これらは外観・風味ともに良好なものであった。【0033】(処方) (g)イチョウ葉抽出物* 0.8香料 0.8水 55.32還元澱粉糖化物 24果糖 18クコシエキス 0.1カンゾウエキス 0.1レイシエキス 0.1梅エキス 0.1クエン酸 0.3*:参考例1で製造したもの。【0034】実 施 例 3錠剤の製造:下記処方で各種成分を混合して造粒・乾燥・整粒した後に、打錠して錠剤を製造した。【0035】(処方) (mg)イチョウ葉抽出物* 40微結晶セルロース 100乳糖 80ステアリン酸マグネシウム 0.5メチルセルロース 12タルカムパウダー 5*:参考例1で製造したもの。【0036】【発明の効果】本発明のイチョウ葉抽出物を有効成分とする尿酸値低下剤および当該低下剤を含有する飲食品は、高尿酸血症を是正し、ひいては高尿酸血症に伴う痛風、動脈硬化、心筋梗塞、腎不全、高血圧症等の予防又は治療に有効に利用することができる。以 上 イチョウ葉抽出物を有効成分とする尿酸値低下剤。 イチョウ葉抽出物が、イチョウ葉を3〜10倍量の含水アルコールで抽出することにより得られたものである請求項1記載の尿酸値低下剤。 含水アルコールが、70〜90質量%の水性エタノールである請求項2記載の尿酸値低下剤。