タイトル: | 再公表特許(A1)_抗菌ゲル化点眼剤 |
出願番号: | 2001010023 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,A61K31/5383,A61K9/08,A61K47/36,A61P27/02,A61P31/04 |
鈴木 秀一 和田 敬弘 切田 雅信 武内 正史 JP WO2002040028 20020523 JP2001010023 20011116 抗菌ゲル化点眼剤 わかもと製薬株式会社 000100492 安富 康男 100086586 佐藤 明子 100113468 鈴木 秀一 和田 敬弘 切田 雅信 武内 正史 JP 2000350074 20001116 JP 2001150900 20010521 7 A61K31/5383 A61K9/08 A61K47/36 A61P27/02 A61P31/04 JP A61K31/5383 A61K9/08 A61K47/36 A61P27/02 A61P31/04 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,CH,CY,DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,OM,PH,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20040318 2002542401 12 技術分野本発明は、薬物の利用効率が向上し、かつ、副作用の生ずるおそれが少ない、レボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗菌ゲル化点眼剤に関する。背景技術眼に薬物を投与した場合、一般的には、薬物のほとんどが涙液により眼から鼻へ流されてしまう。このため、投与した薬物のうち、有効に利用されるものはほんのわずかにすぎない。そこで点眼剤の粘度を上昇させて少しでも長く薬物を眼表面にとどめる研究が進められている。ジェランガムは、Na+等の陽イオンでゲル化する性質を有する物質として知られている。ジェランガムのこの性質を利用して、ジェランガムをゲル化剤として用い、涙液に含まれるNa+等の陽イオンによりゲル化を図るジェランガム点眼剤が、特開昭62−181228号公報や、特開平4−230631号公報に開示されている。これらジェランガム点眼剤を投与した場合、角膜表面でジェランガムがゲル化し、ゲル内に含まれる薬物の角膜表面における滞留時間が延長され、角膜表面に滞留した薬物が眼内により多く移行することで、薬物の効果が持続される。これにより、点眼剤の投与回数を減らすことができ、また、眼以外の部位での薬物の吸収量を少なくすることができるので、血中へ移行する薬物量を減らすこともでき、全身的な副作用の軽減も期待されている。レボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩は優れた抗菌活性を有する合成抗菌剤として知られており、眼科領域でも点眼剤、眼軟膏剤として使用され、特に、結膜等の外眼部の感染症に対して好適に用いられている。細菌による結膜炎では、細菌は結膜組織だけでなく、涙液中にも存在するので、細菌性の結膜炎を効率よく治療するためには、結膜中の薬物濃度とともに涙液中又は角膜表面における薬物濃度も高いことが好ましい。しかしながら、有効成分としてレボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩を含有する従来の水溶液点眼剤においては、点眼剤中の抗菌剤のうちごく少量がわずかな時間角膜と接触するにすぎない。このため、抗菌剤の角膜表面における滞留時間が長い点眼剤が切望されている。現在までに、上述したジェランガムをゲル化剤として用い、有効成分としてレボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩を含有とする点眼剤は報告されていない。ジェランガムをゲル化剤として用いた点眼剤としては、眼圧下降作用を有する緑内障治療薬として広く用いられているマレイン酸チモロールを有効成分とするマレイン酸チモロール含有ジェランガム点眼液(商品名「チモプトールXE」)が市販されている。通常、点眼された薬物は、角膜から、房水を経由して、虹彩・毛様体に拡散していく。マレイン酸チモロールの作用部位は虹彩・毛様体であり、マレイン酸チモロールは虹彩・毛様体のメラニン色素と結合しやすいことが知られている。0.25%マレイン酸チモロールをジェランガム点眼剤として投与することにより、通常の水溶液点眼剤の形態で投与した場合に比べて、角膜における濃度が4.3倍、房水中における濃度が4.5倍、虹彩・毛様体中における濃度が4.5倍に上昇することが報告されている(チモプトールXEカタログ、萬有製薬社、1999年11月)。レボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩は、マレイン酸チモロール以上に虹彩・毛様体のメラニン色素と結合しやすいことが知られている。いったん虹彩・毛様体のメラニン色素と結合したレボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩は、排泄され難いので、高濃度蓄積することとなる。しかしながら、レボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩の作用部位は、結膜であり、このように、作用部位以外に高濃度の薬物が長期にわたり蓄積することは、副作用の点から好ましくない。発明の要約本発明は、上記現状に鑑み、薬物の利用効率が向上し、かつ、副作用の生ずるおそれが少ないレボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗菌ゲル化点眼剤を提供することを目的とするものである。本発明は、抗菌剤及びジェランガムを含有する抗菌ゲル化点眼剤であって、前記抗菌剤は、レボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記抗菌ゲル化点眼剤を点眼した場合の眼における抗菌剤濃度が、前記抗菌ゲル化点眼剤からジェランガムを除いた組成を有する点眼剤を点眼した場合の眼における抗菌剤濃度に対して、結膜においては3倍以上であり、かつ、房水中においては3倍未満である抗菌ゲル化点眼剤である。好ましくは、結膜における抗菌剤濃度比は10倍以上である。発明の詳細な開示本発明者らは、レボフロキサシン、オフロキサシン、又は、塩酸モキシフロキサシンを有効成分とし、ジェランガムをゲル化剤として用いた抗菌ゲル化点眼剤を調製し、これを家兎に点眼し、その後のレボフロキサシン、オフロキサシン、及び、塩酸モキシフロキサシンの眼内動態を検討した。その結果、上記抗菌ゲル化点眼剤を点眼した場合は、ジェランガムを含有していない市販のレボフロキサシン水溶液点眼剤、オフロキサシン水溶液点眼剤、又は、塩酸モキシフロキサシン水溶液点眼剤を点眼した場合と比較して、投与後1時間経過時で、結膜中又は結膜表面におけるレボフロキサシン、オフロキサシン、及び、塩酸モキシフロキサシンの濃度が10倍以上に上昇することが判明した。一方、房水中のレボフロキサシン、オフロキサシン、及び、塩酸モキシフロキサシンの濃度は約2倍程度にすぎなかった。即ち、レボフロキサシン、オフロキサシン、又は、塩酸モキシフロキサシンを有効成分とし、ジェランガムをゲル化剤として用いた抗菌ゲル化点眼剤は、ジェランガムを含有していない市販のレボフロキサシン水溶液点眼剤、オフロキサシン水溶液点眼剤、又は、塩酸モキシフロキサシン水溶液点眼剤と比較して、抗菌効果がはるかに向上するのに対して、副作用にはほとんど変化がないことが期待される。点眼された薬物は、通常、角膜から、房水を経由して、虹彩・毛様体に拡散していく。従って、結膜における薬物濃度が高ければ、同様に、房水中における薬物濃度も高いことが予想される。また、上述のとおり、レボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩は虹彩・毛様体のメラニン色素と非常に結合しやすいことが知られている。更に、レボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩と同様にメラニン色素と結合しやすいマレイン酸チモロールでは、ジェランガムをゲル化剤として用いることにより、角膜における濃度が4.3倍に上昇し、房水中における濃度も4.5倍に上昇することが報告されている。また、ジェランガムをゲル化剤として用いた場合、結膜表面と結膜中の薬物濃度は大幅に向上するものの、房水中の薬物濃度にはあまり変化が見られないという薬物は他には報告されていない。これらの事実に鑑みると、レボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩を有効成分とする点眼剤において、ジェランガムをゲル化剤として用いることにより、結膜におけるレボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩の濃度は上昇するものの、房水中におけるレボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩の濃度にはほとんど変化がみられないということは、驚くべきことであり、全く予想し得ない事象であるといえる。以下に本発明を詳述する。本発明の抗菌ゲル化点眼剤は、レボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩、及び、ジェランガムを含有するものである。本発明の抗菌ゲル化点眼剤において、レボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩は有効成分であり、ジェランガムはゲル化剤として用いられる。レボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ジェランガムとしては特に限定されず、天然型であっても、そのβ−D−グルコポラノース(β−D−Glcp)残基上の一部がo−アセチル化されているアセチル化型であってもよい。上記アセチル化型のジェランガムとしては、例えば、低アセチル化型である、ゲルライト(Gelrite(登録商標)、メルク社製)等が好適に用いられる。本発明の抗菌ゲル化点眼剤におけるジェランガムの濃度としては、目的に従い適宜選択されればよく特に限定されないが、一般的には0.1〜2.0w/v%の範囲内であることが好ましい。本発明の抗菌ゲル化点眼剤におけるレボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩の濃度としては、目的に従い適宜選択されればよく特に限定されないが、一般的には約0.001〜10w/v%の範囲内であることが好ましい。本発明の抗菌ゲル化点眼剤は、この抗菌ゲル化点眼剤を点眼した場合の眼におけるレボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩の濃度が、上記抗菌ゲル化点眼剤からジェランガムを除いた組成を有する点眼剤を点眼した場合の眼におけるレボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩の濃度に対して、結膜においては3倍以上であり、かつ、房水中においては3倍未満であるという特徴を有する。本発明の抗菌ゲル化点眼剤を点眼した場合の眼におけるレボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩の濃度の、上記抗菌ゲル化点眼剤からジェランガムを除いた組成を有する点眼剤を点眼した場合の眼におけるレボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩の濃度に対する倍率(以下、抗菌剤濃度比ともいう)は、結膜においては3倍以上である。3倍未満であると抗菌効果が充分ではない。好ましくは、10倍以上である。上記抗菌剤濃度比は、房水中においては3倍未満である。3倍以上であると、副作用の生ずる可能性が高くなることがある。本発明の抗菌ゲル化点眼剤のpHとしては、点眼剤として通常許容される範囲内であれば特に限定されないが、pH4.5〜8.3であるのが好ましく、より好ましくはpH5.5〜8.0であり、更に好ましくはpH6.0〜8.0である。本発明の抗菌ゲル化点眼剤は、更に、必要に応じて医薬的に容認し得る塩、pH調整剤、保存剤、緩衝剤、可溶化剤、等張化剤等が添加されてもよい。上記pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸、ホウ酸、リン酸、酢酸等の酸類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の塩基類を挙げることができる。これらのpH調整剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記保存剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム及びグルコン酸クロルヘキシジン等の逆性石鹸類;メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベン等のパラベン類;クロロブタノール、フェニルエチルアルコール及びベンジルアルコール等のアルコール類;ソルビン酸及びソルビン酸カリウム等の有機酸及びその塩類等を挙げることができる。これらの保存剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、界面活性剤やキレート剤を適宜加えてもよい。上記緩衝剤としては、例えば、リン酸、ホウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸及び炭酸等の酸のアルカリ金属塩類;グルタミン酸、イプシロンアミノカプロン酸、アスパラギン酸、グリシン、アルギニン及びリジン等のアミノ酸類;タウリン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等を挙げることができる。これらの緩衝剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記可溶化剤としては、例えば、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、シクロデキストリン等を挙げることができる。これらの可溶化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記等張化剤としては、例えば、ブドウ糖等の糖類;グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、D−マンニトール等のアルコール類等を挙げることができる。これらの等張化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。本発明の抗菌ゲル化点眼剤によれば、レボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩が長時間にわたって作用部位である結膜表面にとどまるので、市販されているレボフロキサシン水溶液点眼剤、オフロキサシン水溶液点眼剤、又は、塩酸モキシフロキサシン水溶液点眼剤より少ない投与回数で、副作用を併発せずに同等以上の抗菌効果を得ることができる。患者にとっても、投与回数が少なくてすむことにより、負担が減り、また、投与し忘れることを減らすこともできる。発明を実施する為の最良の形態以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。<実施例1> レボフロキサシン含有ジェランガム点眼剤の調製90℃の滅菌精製水70mLに4.0gのD−マンニトール(東和化成工業社製)を溶解し、次いで、0.6gのジェランガム(Gelrite(登録商標)、和光純薬工業社製)を添加し、90℃で20分間攪拌分散した。得られた水溶液を室温まで放冷した後、ここに0.5gのレボフロキサシンを添加し、攪拌溶解した。更に、滅菌精製水を添加し全量を100mLにした。<試験例1>レボフロキサシン含有ジェランガム点眼剤又はレボフロキサシン市販点眼剤の家兎結膜表面、結膜及び房水への移行性試験(試験方法)日本白色種家兎(雄性、体重2.3〜2.7kg)に、実施例で調製したレボフロキサシン含有ジェランガム点眼剤(以下、実施例点眼剤という)、及び、市販点眼剤であるクラビット(登録商標)点眼剤(0.5w/v%レボフロキサシンを含有、参天製薬社製、以下、市販点眼剤という)を50μLずつ点眼し、点眼1及び2時間後の結膜中、結膜表面及び房水中のレボフロキサシン濃度を測定した。結膜中のレボフロキサシン濃度は次のように求められた。採取した結膜を生理食塩水の入ったスピッツ管に移し、転倒攪拌することにより結膜を洗浄した。洗浄された結膜をホモジナイズした後、有機溶媒を用いてレボフロキサシンを抽出し、HPLCによる測定を行った。結膜表面のレボフロキサシン濃度は次のようにして求められた。結膜洗浄後の生理食塩水中に溶解しているレボフロキサシンを有機溶媒を用いて抽出し、HPLCによる測定を行った。次いで、結膜洗浄液(生理食塩水)中に溶解していたレボフロキサシン量を算出し、採取した結膜1g当たりに換算して、得られた値を結膜表面のレボフロキサシン濃度とした。房水中のレボフロキサシン濃度は、房水をフィルター濾過した後、濾液をHPLCで分析することにより求められた。得られた結膜中、結膜表面及び房水中のレボフロキサシン濃度を表1に示した。表1の結果より、点眼1時間後の結膜中レボフロキサシン濃度は、市販点眼剤より実施例点眼剤の方が11.8倍高いことが示された。また、点眼2時間後でも4.6倍高いことが示された。点眼1時間後の結膜表面におけるレボフロキサシン濃度は、市販点眼剤より実施例点眼剤の方が10.7倍高いことが示された。また、点眼2時間後でも1.4倍高いことが示された。点眼1時間後の房水中レボフロキサシン濃度は、市販点眼剤より実施例点眼剤の方が2.2倍高いことが示された。また、点眼2時間後で2.6倍高いことが示された。以上の結果から、レボフロキサシンの主作用部位である結膜表面、結膜中においては、実施例点眼剤を投与した場合の方が、市販点眼剤を投与した場合よりも、2時間以上の長時間にわたって、高濃度のレボフロキサシンが残存していることが示された。更に、実施例点眼剤を投与した場合は、市販点眼剤を投与した場合より、投与1時間後の結膜表面及び結膜中におけるレボフロキサシン濃度が10倍以上高かったが、レボフロキサシンの副作用が懸念される房水中におけるレボフロキサシン濃度は約2倍程度にしかならなかった。これにより、実施例点眼剤は市販点眼剤に比べて、抗菌効果ははるかに高いが、副作用はそれほど高くないことが示された。<実施例2> オフロキサシン含有ジェランガム点眼剤の調製90℃の滅菌精製水70mLに4.0gのD−マンニトール(東和化成工業社製)を溶解し、次いで、0.6gのジェランガム(Gelrite(登録商標)、和光純薬工業社製)を添加し、90℃で20分間撹拌分散した。得られた水溶液を室温まで放冷した後、ここに0.3gのオフロキサシンを添加し、撹拌分散させた。この分散液に1NのHClを添加し、pHを6.5とした。水溶液全体が澄明になったことを確認後、更に、滅菌精製水を添加し全量を100mLにした。<試験例2>オフロキサシン含有ジェランガム点眼剤又はオフロキサシン市販点眼剤の家兎結膜表面、結膜及び房水への移行性試験(試験方法)日本白色種家兎(雄性、体重2.0〜2.6kg)に、実施例で調製したオフロキサシン含有ジェランガム点眼剤(以下、実施例点眼剤という)、及び、市販点眼剤であるタリビッド(登録商標)点眼剤(0.3w/v%オフロキサシンを含有、参天製薬社製、以下、市販点眼剤という)を50μLずつ点眼し、点眼1及び2時間後の結膜中、結膜表面及び房水中のオフロキサシン濃度を測定した。結膜中のオフロキサシン濃度は次のように求められた。採取した結膜を生理食塩水の入ったスピッツ管に移し、転倒撹拌することにより結膜を洗浄した。洗浄された結膜をホモジナイズした後、有機溶媒を用いてオフロキサシンを抽出し、HPLCによる測定を行った。結膜表面のオフロキサシン濃度は次のようにして求められた。結膜洗浄後の生理食塩水中に溶解しているオフロキサシンを有機溶媒を用いて抽出し、HPLCによる測定を行った。次いで、結膜洗浄液(生理食塩水)中に溶解していたオフロキサシン量を算出し、採取した結膜1g当たりに換算して、得られた値を結膜表面のオフロキサシン濃度とした。房水中のオフロキサシン濃度は、房水をフィルター濾過した後、濾液をHPLCで分析することにより求められた。得られた結膜中、結膜表面及び房水中のオフロキサシン濃度を表2に示した。表2の結果より、点眼1時間後の結膜中オフロキサシン濃度は、市販点眼剤より実施例点眼剤の方が30.0倍高いことが示された。また、点眼2時間後でも5.3倍高いことが示された。点眼1時間後の結膜表面におけるオフロキサシン濃度は、市販点眼剤より実施例点眼剤の方が47.0倍高いことが示された。また、点眼2時間後でも3.3倍高いことが示された。点眼1時間後の房水中オフロキサシン濃度は、市販点眼剤より実施例点眼剤の方が2.5倍高いことが示された。また、点眼2時間後で2.0倍高いことが示された。以上の結果から、オフロキサシンの主作用部位である結膜表面、結膜中においては、実施例点眼剤を投与した場合の方が、市販点眼剤を投与した場合よりも、2時間以上の長時間にわたって、高濃度のオフロキサシンが残存していることが示された。更に、実施例点眼剤を投与した場合は、市販点眼剤を投与した場合より、投与1時間後の結膜表面及び結膜中におけるオフロキサシン濃度が30倍以上高かったが、オフロキサシンの副作用が懸念される房水中におけるオフロキサシン濃度は2倍程度にしかならなかった。これにより、実施例点眼剤は市販点眼剤に比べて、抗菌効果ははるかに高いが、副作用はそれほど高くないことが示された。<実施例3> 塩酸モキシフロキサシン含有ジェランガム点眼剤の調製90℃の滅菌精製水70mLに4.0gのD−マンニトール(東和化成工業社製)を溶解し、次いで、0.6gのジェランガム(Gelrite(登録商標)、和光純薬工業社製)を添加し、90℃で20分間撹拌分散した。得られた水溶液を室温まで放冷した後、ここに0.32gの塩酸モキシフロキサシンを添加し、撹拌溶解した。水溶液全体が澄明になったことを確認後、更に、滅菌精製水を添加し全量を100mLにした。比較用として、0.32gの塩酸モキシフロキサシンを生理食塩水に溶解後、更に生理食塩水を添加し全量を100mLにした、比較用塩酸モキシフロキサシン含有水溶液を調製した。<試験例3>塩酸モキシフロキサシン含有ジェランガム点眼液又は水性点眼液点眼後の家兎結膜表面、結膜及び房水への移行性試験(試験方法)日本白色種家兎(雄性、体重1.7〜2.1kg)に、実施例で調製した塩酸モキシフロキサシン含有ジェランガム点眼剤(以下、実施例点眼剤という)又は塩酸モキシフロキサシン水性点眼液(以下、比較用水溶液という)を各50μL点眼し、点眼15分、1及び2時間後の結膜中、結膜表面及び房水中の塩酸モキシフロキサシン濃度を測定した。結膜中の塩酸モキシフロキサシン濃度は次のように求められた。採取した結膜を生理食塩水の入ったスピッツ管に移し、転倒撹拌することにより結膜を洗浄した。洗浄された結膜をホモジナイズした後、有機溶媒を用いてモキシフロキサシンを抽出し、HPLC法による測定を行った。結膜表面の塩酸モキシフロキサシン濃度は次のように求められた。結膜洗浄後の塩酸モキシフロキサシンの溶解している生理食塩水をフィルター濾過した後、濾液をHPLCで分析することにより求められた。次いで、結膜洗浄液(生理食塩水)中に溶解していた塩酸モキシフロキサシン量を算出し、採取した結膜1g当たりに換算して、得られた値を結膜表面の塩酸モキシフロキサシン濃度とした。房水中の塩酸モキシフロキサシン濃度は、房水をフィルター濾過した後、濾液をHPLCで分析することにより求められた。得られた結膜中、結膜表面及び房水中の塩酸モキシフロキサシン濃度を表3に示した。表3の結果より、点眼15分後の結膜中塩酸モキシフロキサシン濃度は、比較用水溶液より実施例点眼剤の方が6.5倍高いことが示された。また、点眼1時間後でも7.2倍、点眼2時間後でも6.8倍高いことが示された。点眼15分後の結膜表面における塩酸モキシフロキサシン濃度は、比較用水溶液より実施例点眼剤の方が22.4倍高いことが示された。また、点眼1時間後でも93.0倍、点眼2時間後でも7.6倍高いことが示された。点眼1時間後の房水中塩酸モキシフロキサシン濃度は、比較用水溶液より実施例点眼剤の方が2.3倍高いことが示された。また、点眼2時間後で2.1倍高いことが示された。以上の結果から、結膜表面、結膜及び房水においては、本発明の実施例点眼剤を投与した場合の方が、比較用水溶液を投与した場合よりも、2時間以上の長時間にわたって、高濃度の塩酸モキシフロキサシンが残存していることが示された。これにより本発明の実施例点眼剤は比較用水溶液に比べて、抗菌力がはるかに高いことが示された。更に、実施例点眼剤を投与した場合は、比較用水溶液を投与した場合より、投与2時間後の結膜表面における塩酸モキシフロキサシン濃度が7.6倍以上、結膜中における塩酸モキシフロキサシン濃度が6.8倍以上高かったが、塩酸モキシフロキサシンの副作用が懸念される房水中における塩酸モキシフロキサシン濃度は2倍程度にしかならなかった。これにより、実施例点眼剤は比較用水溶液に比べて、抗菌力がはるかに高いが、副作用はそれほど高くないことが示された。産業上の利用可能性本発明は、上述の構成よりなるので、作用部位である結膜におけるレボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩の濃度が高く、これらの抗菌剤の利用効率は高いものの、房水中における抗菌剤の濃度はあまり上昇せず、副作用の生ずるおそれが少ない抗菌ゲル化点眼剤を提供することができる。更に、本発明によれば、点眼剤の投与回数を減らすことができるので、コンプライアンスの向上も期待される。 抗菌剤及びジェランガムを含有する抗菌ゲル化点眼剤であって、前記抗菌剤は、レボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記抗菌ゲル化点眼剤を点眼した場合の眼における抗菌剤濃度が、前記抗菌ゲル化点眼剤からジェランガムを除いた組成を有する点眼剤を点眼した場合の眼における抗菌剤濃度に対して、結膜においては3倍以上であり、かつ、房水中においては3倍未満であることを特徴とする抗菌ゲル化点眼剤。 レボフロキサシン及びジェランガムを含有する抗菌ゲル化点眼剤であって、前記抗菌ゲル化点眼剤を点眼した場合の眼におけるレボフロキサシン濃度が、前記抗菌ゲル化点眼剤からジェランガムを除いた組成を有する点眼剤を点眼した場合の眼におけるレボフロキサシン濃度に対して、結膜においては3倍以上であり、かつ、房水中においては3倍未満であることを特徴とする抗菌ゲル化点眼剤。 オフロキサシン及びジェランガムを含有する抗菌ゲル化点眼剤であって、前記抗菌ゲル化点眼剤を点眼した場合の眼におけるオフロキサシン濃度が、前記抗菌ゲル化点眼剤からジェランガムを除いた組成を有する点眼剤を点眼した場合の眼におけるオフロキサシン濃度に対して、結膜においては3倍以上であり、かつ、房水中においては3倍未満であることを特徴とする抗菌ゲル化点眼剤。 モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩、及び、ジェランガムを含有する抗菌ゲル化点眼剤であって、前記抗菌ゲル化点眼剤を点眼した場合の眼におけるモキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩の濃度が、前記抗菌ゲル化点眼剤からジェランガムを除いた組成を有する点眼剤を点眼した場合の眼におけるモキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩の濃度に対して、結膜においては3倍以上であり、かつ、房水中においては3倍未満であることを特徴とする抗菌ゲル化点眼剤。 抗菌ゲル化点眼剤を点眼した場合の眼における抗菌剤濃度が、前記抗菌ゲル化点眼剤からジェランガムを除いた組成を有する点眼剤を点眼した場合の眼における抗菌剤濃度に対して、結膜においては10倍以上であることを特徴とする請求の範囲第1、2、3又は4項記載の抗菌ゲル化点眼剤。 本発明の目的は、薬物の利用効率が向上し、かつ、副作用の生ずるおそれが少ないレボフロキサシン、オフロキサシン、又は、モキシフロキサシン若しくはその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗菌ゲル化点眼剤を提供することである。本発明は、抗菌剤及びジェランガムを含有する抗菌ゲル化点眼剤であって、前記抗菌剤は、レボフロキサシン、オフロキサシン、及び、モキシフロキサシン又はその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記抗菌ゲル化点眼剤を点眼した場合の眼における抗菌剤濃度が、前記抗菌ゲル化点眼剤からジェランガムを除いた組成を有する点眼剤を点眼した場合の眼における抗菌剤濃度に対して、結膜においては3倍以上であり、かつ、房水中においては3倍未満である抗菌ゲル化点眼剤である。