タイトル: | 特許公報(B2)_光反応型カイラル剤、液晶組成物、液晶カラーフィルタ、光学フィルム、記録媒体、及び液晶の捻れ構造を変化させる方法 |
出願番号: | 2001005740 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C09K 19/54,C07D 493/04,C09K 19/38,G02B 5/20,G02F 1/13,G02F 1/137 |
杉山 武勝 市橋 光芳 林 圭一郎 JP 4287598 特許公報(B2) 20090403 2001005740 20010112 光反応型カイラル剤、液晶組成物、液晶カラーフィルタ、光学フィルム、記録媒体、及び液晶の捻れ構造を変化させる方法 富士フイルム株式会社 306037311 中島 淳 100079049 加藤 和詳 100084995 西元 勝一 100085279 福田 浩志 100099025 杉山 武勝 市橋 光芳 林 圭一郎 JP 2000193142 20000627 20090701 C09K 19/54 20060101AFI20090611BHJP C07D 493/04 20060101ALI20090611BHJP C09K 19/38 20060101ALI20090611BHJP G02B 5/20 20060101ALI20090611BHJP G02F 1/13 20060101ALI20090611BHJP G02F 1/137 20060101ALI20090611BHJP JPC09K19/54 BC07D493/04 101CC09K19/38G02B5/20G02B5/20 101G02F1/13 102G02F1/13 500G02F1/137 C09K 19/54 - 19/56 C07D 493/04 C09K 19/38 G02B 5/20 - 5/28 G02F 1/13 - 1/141 CAplus(STN) REGISTRY(STN) CiNii(NII論文情報ナビゲータ) 特開2002−080478(JP,A) 特開2002−003845(JP,A) T. Sagisaka et al.,"Reversible Control of the Pitch of Cholesteric Liquid Crystals by Photochromism of Chiral Fulgide Derivatives",Bulletin of the Chemical Society of Japan,2000年,Vol.73, No.1,p.191-196 E. Mena et al.,"Camphor and Nopinone Derivatives as New Photosensitive Chiral Dopants",Liquid Crystals,2000年,Vol.27, No.7,p.929-933 Y. Tsurutani et al.,"A Light Induced Change in Cholesteric Pitch by Photoracemization of a Chiral Pyrenyl Sulfoxide",Chemistry Letters,1999年,Vol.28, No.1,p.87-88 8 2002080851 20020322 33 20051216 木村 伸也 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、液晶の構造に変化を起こさせる新規な光反応型カイラル剤、これを含む液晶組成物、光学フィルム、液晶カラーフィルタ及び記録媒体、及び液晶の螺旋の捻れ構造を変化させる方法に関する。【0002】【従来の技術】近年、螺旋構造を有し、該螺旋の捻れ力(捻れ角)により多彩な選択反射色を示すコレステリック液晶等の液晶材料が注目され、しかも該材料がその選択反射性や選択反射光の色純度に優れることから、光学フィルム、液晶カラーフィルタ、あるいは記録媒体等に広く使用されている。例えば、カラー液晶ディスプレー等に用いられるカラーフィルタは、一般に、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各画素と、その間隙に表示コントラスト向上を目的とするブラックマトリクスとが形成されて構成される。このようなカラーフィルタは、従来、樹脂中に顔料を分散させたものや染料を染着させたものが主流であり、その製造方法も、着色樹脂液をスピンコート等によりガラス基板上に塗布して着色レジスト層を形成しフォトリソグラフィ法によるパターニングを行ってカラーフィルタ画素を形成したり、着色画素を基板に直接印刷したりする方法が一般的であった。【0003】しかし、例えば、印刷法による製造方法では、画素の解像度が低く高精細な画像パターンの形成には対応が難しいという欠点があり、スピンコート法による製造方法では材料ロスが大きく、また大面積の基板に塗布する場合の塗布ムラが大きいといった欠点があった。また、電着法による製造方法によると、比較的解像度が高く、着色層のムラも少ないカラーフィルタを得ることができる反面、製造工程が煩雑であり液管理も難しいといった難点を有していた。以上より、カラーフィルタの製造工程としては、材料ロスが少なく高効率に、かつ簡便に高品質なカラーフィルタを製造しうる製造方法が要望されていた。【0004】一方、カラーフィルタの性能としては、透過率、色純度が高いことが求められ、近年、染料を用いた方法では染料の種類や染着樹脂を最適化したり、顔料を用いる方法ではより微細分散した顔料を用いることにより上記要求に対する向上が図られてきた。しかしながら、最近の液晶ディスプレイ(LCD)パネルにおける、カラーフィルタの透過率、色純度に対する要求は極めて高く、特に反射型LCD用カラーフィルタにおいては、ペーパーホワイトの白表示とコントラスト、及び色再現性の両立が難しい一方、従来の製造方法における、樹脂中に染料を染着させ、或いは、顔料を分散させて製造されるカラーフィルタは、いずれも光吸収型のカラーフィルタであるため、透過率の更なる向上による色純度の改善はほぼ限界に達していた。【0005】以上のような状況に対して、コレステリック液晶を主成分とする偏光利用型カラーフィルタが知られている。この偏光利用型カラーフィルタは、一定の光量を反射しそれ以外を透過して画像表示を行うため、光の利用効率が高く、透過率、色純度の点でも光吸収型のカラーフィルタよりも卓越した性能を有する。他方、その製造方法には、均一厚が得られる観点から、スピンコート法等を用いて基板上に成膜する方法が一般に行われてきたが、材料ロスが大きいといった問題がありコストの点で不利であった。【0006】上記問題を解決し、カラーフィルタ膜の色純度等の均一性を確保することができ、しかも製造工程数の低減をも実現しうる手段として、光反応型のカイラル化合物(キラル化合物)を用いる方法が有用である。この方法は、光反応型のカイラル化合物を含む液晶組成物に該カイラル化合物の反応波長の光をパターン状に照射すると、その照射エネルギーの強度に応じてカイラル化合物の反応が進行し、液晶化合物の螺旋ピッチ(螺旋の捻れ角)が変化するので、光量差のあるパターン露光のみにより画素ごとに選択反射色が形成されるという原理を用いている。つまり、カラーフィルタ形成時におけるパターニングの回数は透過光量の異なるマスクを用いた一回のマスク露光で完了しうるといたメリットがある。従って、画像様に光照射してパターニングした後、パターニングされたコレステリック液晶化合物を固定化することにより、カラーフィルタとして機能する膜を形成できる。これは、光学用のフィルムや画像の記録等にも応用できる。【0007】特に、一回のマスク露光によってカラーフィルタを作製する場合などは、B(青色)、G(緑色)、R(赤色)の3原色を一回の露光で色純度良く形成できることが望まれる。しかし、液晶の捻れの変化率が小さい場合には十分な色純度が得られない。したがって、一回の露光で色純度の高い3原色を表示させる観点では、実用的には、用いる光反応型のカイラル化合物として、液晶化合物の螺旋構造の捻れ力を大きく変化させ得る、捻れ変化率の大きいカイラル化合物(カイラル剤)を用いる必要がある。即ち、捻れ変化率の大きいカイラル化合物を用いることにより、その光量変化により選択反射する色相の幅が拡大するのである。【0008】ところで、特開平11−248943号公報には、広帯域の反射型偏光板を構成するカイラル化合物として、イソソルビド骨格をキラル母核に持つ重合性メソゲン化合物を用いることが開示されている。この重合性メソゲン化合物は液晶化合物に作用して液晶の螺旋構造を変えうる。しかしながら、該公報に記載の偏光板の反射波長帯域、即ち、液晶の螺旋構造(螺旋の捻れ力)を所望の選択反射を示すように変化させる場合、その変化の調整は該メソゲン化合物と非カイラル化合物(液晶)との混合割合(使用量)により行われ、光及びその光量は全く関与しない。つまり、該公報においては、液晶の螺旋構造(螺旋の捻れ力)を光量変化によって変化させる旨の示唆は全くされておらず、公報に例示の化合物が光に対する捻れ力の変化率の点で有用である旨の示唆もなされていない。【0009】以上のように、照射する光量により液晶の螺旋ピッチ(捻れ力、螺旋の捻れ角)等の配向構造を変化させ得る光反応性を備え、しかも、例えばネマチック液晶化合物を含むコレステリック液晶相の場合に、選択反射可能な波長領域の幅が広く多彩な選択反射を示し、特に3原色(B、G、R)を色純度高く表示させることができるなど、その螺旋ピッチ(捻れ力)を大きく変化させることの可能な光反応型カイラル剤(光反応型キラル剤)は未だ提供されていないのが現状である。【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、第一に、液晶性化合物の配向を制御し得、かつ光による液晶の捻れ力(捻れ角、螺旋ピッチ)の変化率(以下、「捻れ変化率」ということがある。)が大きく、例えばコレステリック液晶相の場合には、3原色(B、G、R)を含む広範な選択反射が可能で、色純度の高い3原色を表示させ得る光反応型カイラル剤を提供することを目的とする。第二に、光により液晶の捻れ力を変化させ、且つその捻れ変化率の大きい光反応型カイラル剤を含み、光により液晶分子の配向状態を大きく立体的に制御して光学特性を変化しうる液晶組成物、例えばコレステリック液晶の場合には、光照射により3原色を含む広範な選択反射色を示し、しかも色純度に優れた3原色の表示が可能な液晶組成物を提供することを目的とする。【0011】また、本発明は、第三に、捻れ変化率の大きい光反応型カイラル剤を含む液晶組成物に光照射して液晶の捻れ力(捻れ角)を大きく変化させうる、液晶の捻れ構造を変化させる方法を提供することを目的とする。第四に、光照射により液晶の捻れ力を大きく変化させ得る光反応型カイラル剤を含み、色純度の高い液晶カラーフィルタを提供することを目的とする。第五に、光照射により液晶の捻れ力を大きく変化させ得る光反応型カイラル剤を含む非光吸収型の光学フィルム、例えばコレステリック液晶相の場合には、選択反射域が広範で色純度の高い光学フィルムを提供することを目的とする。第六に、光照射により液晶の捻れ力を大きく変化させ得る光反応型カイラル剤を含み、画像様に光量を変化させることにより鮮明な画像を形成し得る記録媒体、例えば液晶相がコレステリック液晶相の場合には、色相が広範で色純度の高い選択反射色よりなる画像を形成し得る記録媒体を提供することを目的とする。【0012】【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、<1> 下記一般式(I)で表される化合物からなり、光照射により液晶の捻れ力を変化させることを特徴とする光反応型カイラル剤である。【0013】【化2】【0014】〔式中、Rは、水素原子、炭素数1〜15のアルコキシ基、総炭素数3〜15のアクリロイルオキシアルキルオキシ基、総炭素数4〜15のメタクリロイルオキシアルキルオキシ基を表す。〕【0015】<2> 一般式(I)で表される化合物において、Rが、総炭素数3〜15のアクリロイルオキシアルキルオキシ基、総炭素数4〜15のメタクリロイルオキシアルキルオキシ基である前記<1>に記載の光反応型カイラル剤である。<3> 一般式(I)で表される化合物において、Rが、水素原子、炭素数1〜15のアルコキシ基である前記<1>に記載の光反応型カイラル剤である。【0016】<4> 前記<1>〜<3>のいずれかに記載の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする液晶組成物である。<5> 光反応型カイラル剤とコレステリック液晶性化合物と界面活性剤とを少なくとも含有する前記<4>に記載の液晶組成物である。前記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましい。【0017】<6> 前記<4>又は<5>に記載の液晶組成物に光照射して液晶の捻れ力を変化させることを特徴とする液晶の捻れ構造を変化させる方法である。<7> 前記<1>〜<3>のいずれかに記載の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする液晶カラーフィルタである。【0018】<8> 前記<1>〜<3>のいずれかに記載の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする光学フィルムである。<9> 前記<1>〜<3>のいずれかに記載の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする記録媒体である。【0019】【発明の実施の形態】以下、本発明について順に説明する。<光反応型カイラル剤>本発明の光反応型カイラル剤は、下記一般式(I)で表される化合物からなり、液晶性化合物の配向構造を制御し得ると共に、光の照射により液晶の螺旋ピッチ、即ち螺旋構造の捻れ力(HTP:ヘリカルツイスティングパワー)を変化させることができる特質を有する。即ち、液晶性化合物、好ましくはネマチック液晶化合物に誘起する螺旋構造の捻れ力の変化を光照射(紫外線〜可視光線〜赤外線)によって起こさせる化合物であり、必要な部位(分子構造単位)として、カイラル部位(キラル部位)と光の照射によって構造変化を生じる部位とを有する。しかも、下記一般式(I)で表される光反応型カイラル剤は、特に液晶分子のHTPを大きく変化させることができる。したがって、例えば、液晶性化合物にネマチック液晶化合物を用いたコレステリック液晶(液晶相)の場合には、B(青色)、G(緑色)、R(赤色)の3原色を含む広範囲の波長領域にわたる選択反射が可能となる。即ち、光の波長の選択反射特性は、液晶分子の螺旋構造の捻れ角により決まるので、その角度が大きく変化するほど選択反射する色幅が広範となり有用となる。【0020】尚、前記HTPは、液晶の螺旋構造の捻れ力、即ち、HTP=1/(ピッチ×キラル剤濃度〔質量分率〕)を表し、例えば、ある温度での液晶分子の螺旋ピッチ(螺旋構造の一周期;μm)を測定し、この値をカイラル剤(キラル剤)の濃度から換算〔μm-1〕して求めることができる。光反応型カイラル剤により光の照度により選択反射色を形成する場合、前記HTPの変化率(=照射前のHTP/照射後のHTP)としては、照射後にHTPがより小さくなる場合には1.5以上が好ましく、更に2.5以上がより好ましく、照射後にHTPがより大きくなる場合には0.7以下が好ましく、更に0.4以下がより好ましい。【0021】次に、一般式(I)で表される化合物について説明する。【化3】【0022】前記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜15のアルコキシ基、総炭素数3〜15のアクリロイルオキシアルキルオキシ基、総炭素数4〜15のメタクリロイルオキシアルキルオキシ基を表す。前記炭素数1〜15のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられ、中でも、炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基が特に好ましい。【0023】前記総炭素数3〜15のアクリロイルオキシアルキルオキシ基としては、例えば、アクリロイルオキシエチルオキシ基、アクリロイルオキシブチルオキシ基、アクリロイルオキシデシルオキシ基等が挙げられ、中でも、炭素数5〜13のアクリロイルオキシアルキルオキシ基が好ましく、炭素数5〜11のアクリロイルオキシアルキルオキシ基が特に好ましい。【0024】前記総炭素数4〜15のメタクリロイルオキシアルキルオキシ基としては、例えば、メタクリロイルオキシエチルオキシ基、メタクリロイルオキシブチルオキシ基、メタクリロイルオキシデシルオキシ基等が挙げられ、中でも、炭素数6〜14のメタクリロイルオキシアルキルオキシ基が好ましく、炭素数6〜12のメタクリロイルオキシアルキルオキシ基が特に好ましい。【0025】前記一般式(I)で表される光反応型カイラル剤の分子量としては、300以上が好ましい。また、後述する液晶性化合物との溶解性の高いものが好ましく、その溶解度パラメータSP値が、液晶性化合物に近似するものがより好ましい。【0026】以下、前記一般式(I)で表される化合物の具体例(例示化合物(1)〜(15))を示すが、本発明においてはこれらに制限されるものではない。【0027】【化4】【0028】【化5】【0029】【化6】【0030】次に、本発明の光反応型カイラル剤(一般式(I)で表される化合物)の合成例を挙げる。尚、光反応型カイラル剤のカッコ内の番号は、前記[化4]〜[化6]に例示した光反応型カイラル剤(例示化合物)の番号を表す。【0031】−光反応型カイラル剤(2)の合成−4−メトキシ桂皮酸(15g,0.084mole)及びジメチルホルムアミド(2〜3滴)をテトラヒドロフラン(100mL)に溶解し、これに更に塩化オキザリル(10mL,0.13mole)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解させたものを滴下し2時間反応させた。反応液中の溶媒及び過剰の塩化オキザリルを減圧留去した後、テトラヒドロフラン(100mL)で希釈し、イソソルビッド(5.5g,0.038mole)を加えた。更に撹拌しながら、テトラヒドロフラン(50mL)に溶解したピリジン(27mL,0.33mole)を滴下し3時間撹拌した。その後、反応液に10%塩酸(100mL)及び酢酸エチル(200mL)を加えて撹拌し、分液した。得られた有機層を飽和食塩水(100mL)で1回、飽和重曹水(100mL)で2回、飽和食塩水(100mL)で2回の順で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。更に有機溶媒を減圧留去した後、n-ヘキサン−酢酸エチル(3:2 v/v)の混合溶液を展開溶媒とするシリカゲルカラムトグラフィーにより精製し、再結晶(n-ヘキサン−酢酸エチル)を行い、無色結晶(9.8g,56%)を得た。【0032】上記より得られた無色結晶を同定した結果(データ)を以下に示す。融点Tm=113.7℃、 [α]D25-158°(c0.50,EtOAc).1H−NMR(CDCl3): δ(in ppm from tetramethylsilane)7.75−7.60(2H,dd),7.50−7.45(4H,dd),6.94−6.88(4H,dd),6.40−6.25(2H,dd),5.36−5.26(2H,m),4.95(1H,t),4.60(1H,d),4.15−3.90(8H,m),3.85(6H,s).【0033】−光反応型カイラル剤(5)の合成−トランス−4−クマル酸(20g,0.12mole)及び炭酸カリウム(33g,0.24mole)をジメチルホルムアミド(100mL)に分散させ、油浴上で加温しながらn−ブロモブタン(50g,0.37mole)を滴下した。3時間の撹拌の後、不溶分を濾別し、酢酸エチル(400mL)で希釈し、飽和食塩水(200mL)で洗浄した。更に有機溶媒を減圧留去した後、エタノール(100mL)及び水酸化カリウム(20g,0.36mole)を水(50mL)に溶解したものを加え、1時間還流させた。反応液を希塩酸にあけ、析出した結晶を濾別し、クロロホルム(500mL)に溶解させた。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。更に有機溶媒を減圧留去した後、再結晶(n−ヘキサン−酢酸エチル)を行い、無色結晶の4−n−ブトキシ桂皮酸(22.7g,84%)を得た。【0034】得られた4−n−ブトキシ桂皮酸(5g,0.023mole)及びジメチルホルムアミド(2〜3滴)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解し、これに更に塩化オキザリル(2.9mL,0.034mole)をテトラヒドロフラン(30mL)に溶解させたものを滴下し、2時間反応させた。反応液の溶媒及び過剰の塩化オキザリルを減圧留去した後、テトラヒドロフラン(50mL)で希釈し、イソソルビッド(1.5g,0.010mole)を加えた。更に撹拌しながら、テトラヒドロフラン(20mL)に溶解したピリジン(11mL,0.14mole)を滴下し、3時間撹拌した。その後、反応液に10%塩酸(50mL)及び酢酸エチル(100mL)を加えて撹拌し、分液した。得られた有機層を飽和食塩水(50mL)で1回、飽和重曹水(50mL)で2回、飽和食塩水(50mL)で2回の順で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。更に有機溶媒を減圧留去した後、n-ヘキサン−酢酸エチル(2:1 v/v)の混合溶液を展開溶媒とするシリカゲルカラムトグラフィーにより精製し、再結晶(n-ヘキサン−酢酸エチル)を行い、無色結晶性粉末(1.4g,25%)を得た。【0035】上記より得られた無色結晶性粉末を同定した結果(データ)を以下に示す。融点Tm=132.4℃、 [α]D25-115.0°(c0.10,EtOAc).1H−NMR(CDCl3): δ(in ppm from tetramethylsilane)7.75−7.65(2H,dd),7.50−7.45(4H,dd),6.90−6.85(4H,dd),6.40−6.26(2H,dd),5.35−5.25(2H,m),4.94(1H,t),4.60(1H,d),4.13−3.95(8H,m),1.94−1.65(4H,m),1.55−1.44(4H,m),0.95(6H,t).【0036】−光反応型カイラル剤(12)の合成−トランス−4−クマル酸(20g,0.12mole)、ヨウ化カリウム(24g,0.14mole)及び炭酸カリウム(85g,0.62mole)を、ジメチルホルムアミド(200mL)及び水(100mL)の混合液に分散させ、油浴で加温しながら6−クロロヘキサノール(68g,0.50mole)を滴下した。3時間撹拌した後、酢酸エチル(400mL)で希釈し、飽和食塩水(400mL)で洗浄した。更に有機溶媒を減圧留去した後、エタノール(200mL)及び水酸化カリウム(20g,0.36mole)を水(50mL)に溶解したものを加え、1時間還流させた。反応液を希塩酸にあけ、析出した結晶を濾別した後に乾燥し、無色結晶性粉末の4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)桂皮酸(22g,64%)を得た。【0037】得られた4−(ヒドロキシヘキシルオキシ)桂皮酸(6g,0.023mole)及びN,N−ジメチルアニリン(6.6g,0.054mole)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解させ、これに更に、室温下でテトラヒドロフラン(20mL)に溶解させた塩化アクロイル(4.4g,0.049mole)を滴下した。滴下後4時間撹拌した後、反応液を10%塩酸にあけ、析出した結晶を濾別した。得られた粗結晶を酢酸エチル(100mL)に溶解させ有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。有機溶媒を減圧留去した後、粗結晶を再結晶(n-ヘキサン−酢酸エチル)し、無色結晶性粉末の4−(6−アクロイルオキシヘキシルオキシ)桂皮酸(3.9g,54%)を得た。【0038】得られた4−(6−アクロイルオキシヘキシルオキシ)桂皮酸(3g,9.4mmole)及びジメチルホルムアミド(2〜3滴)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解し、これに更に微塩化オキザリル(1.2mL,0.014mole)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解させたものを滴下し、2時間反応させた。反応液の溶媒及び過剰の塩化オキザリルを減圧留去した後、テトラヒドロフラン(50mL)で希釈し、イソソルビッド(0.6g,4.1mmole)を加えた。更に撹拌しながら、テトラヒドロフラン(20mL)に溶解したピリジン(4.5mL,0.056mole)を滴下し、一晩撹拌した。その後、反応液に10%塩酸(50mL)及び酢酸エチル(100mL)を加えて撹拌し、分液した。得られた有機層を飽和食塩水(50mL)で1回、飽和重曹水(50mL)で2回、飽和食塩水(50mL)で2回の順で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。有機溶媒を減圧留去した後、n-ヘキサン−酢酸エチル(3:2 v/v)の混合溶液を展開溶媒とするシリカゲルカラムトグラフィーにより精製し、無色結晶性粉末(1.1g,38%)を得た。【0039】上記より得られた無色結晶性粉末を同定した結果(データ)を以下に示す。融点Tm=70.5℃、 [α]D25-103.0°(c0.11,EtOAc).1H−NMR(CDCl3): δ(in ppm from tetramethylsilane)7.75−7.65(2H,dd),7.50−7.45(4H,dd),6.92−6.88(4H,dd),6.45−5.88(8H,m),5.35−5.25(2H,m),4.95(1H,t),4.60(1H,d),4.20−3.85(8H,m),1.94−1.65(4H,m),1.85−1.45(16H,m).【0040】前記一般式(I)で表される光反応型カイラル剤は、液晶の螺旋構造の捻れ力を大きく変化させることができ、また、その構造中に重合性の結合基が1以上導入された構造の場合には、液晶組成物又はこれを含んでなる、例えば液晶カラーフィルタ、光学フィルム等、の耐熱性を向上させることができる。【0041】また、本発明の光反応型カイラル剤は、捻れ力の温度依存性が大きいカイラル化合物など、光反応性のないカイラル剤と併用することもできる。前記光反応性のない公知のキラル剤としては、例えば、特開2000−44451号、特表平10−509726号、WO98/00428、特表2000−506873号、特表平9−506088号、Liquid Crystals(1996、21、327)、Liquid Crystals(1998、24、219)等に記載のキラル剤が挙げられる。【0042】<液晶組成物>液晶組成物は、前記本発明の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を少なくとも含有してなり、更に少なくとも一種の液晶性化合物(好ましくはネマチック液晶化合物)を含む態様が好適であり、前記液晶性化合物は、重合性基を有していても有していなくてもよい。また、必要に応じて、重合性モノマー、重合開始剤や、バインダ樹脂、溶媒、界面活性剤、重合禁止剤、増粘剤、色素、顔料、紫外線吸収剤、ゲル化剤等の他の成分を含んでいてもよい。本発明の液晶組成物は、特に界面活性剤を併用することが好ましい。例えば、塗布液状の液晶組成物を塗布し層形成する場合など、層表面の空気界面における配向状態を立体的に制御でき、より色純度の高い選択反射波長を得ることができる。【0043】(光反応型カイラル剤)光反応型カイラル剤としては、前述の本発明の光反応型カイラル剤を含み、液晶分子の配向構造を立体的に制御すると共に、所望のパターン及び光量で光照射することによって、共存する液晶性化合物、好ましくはネマチック液晶化合物の螺旋構造を変化させる。ネマチック液晶化合物を含む系では、広範な波長領域の選択反射色を発現させることができる。液晶組成物中における光反応型カイラル剤の含有量としては、特に制限はなく適宜選択できるが、2〜30質量%程度が好ましい。【0044】(液晶性化合物)液晶性化合物としては、その屈折率異方性Δnが、0.10〜0.40の液晶化合物、高分子液晶化合物、重合性液晶化合物の中から適宜選択することができる。例えば、スメクティック液晶化合物、ネマチック液晶化合物などを挙げることができ、中でも、ネマチック液晶化合物が好ましい。例えば、液晶性化合物にネマチック液晶化合物を用い、これに前記一般式(I)で表される光反応型キラル剤を併用することによって、コレステリック液晶組成物(コレステリック液晶相)とすることができる。前記液晶性化合物は、溶融時の液晶状態にある間に、例えばラビング処理等の配向処理を施した配向基板を用いる等により配向させることができる。また、液晶状態を固相にして固定化する場合には、冷却、重合等の手段を用いることができる。【0045】前記液晶性化合物の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。【0046】【化7】【0047】【化8】【0048】【化9】【0049】前記式中、nは、1〜1000の整数を表す。前記各例示化合物においては、芳香環の連結基が以下の構造に変わったものも同様に好適なものとして挙げることができる。【0050】【化10】【0051】上記の中でも、十分な硬化性を確保し、層の耐熱性をする観点からは、分子内に重合性基あるいは架橋性基を有する液晶性化合物が好ましい。【0052】前記液晶性化合物の含有量としては、液晶組成物の全固形分(質量)の30〜99.9質量%が好ましく、50〜95質量%がより好ましい。前記含有量が、30質量%未満であると、配向が不十分となることがあり、特にコレステリック液晶の場合には所望の選択反射色が得られないことがある。【0053】(重合性モノマー)本発明の液晶組成物には、例えば膜強度等の硬化の程度を向上させる目的で、重合性モノマーを併用してもよい。該重合性モノマーを併用すると、光照射による液晶の捻れ力を変化(パターニング)させた後(例えば、選択反射波長の分布を形成した後)、その螺旋構造(選択反射性)を固定化し、固定化後の液晶組成物の強度をより向上させることができる。但し、前記液晶性化合物が同一分子内に不飽和結合を有する場合には、必ずしも添加する必要はない。【0054】前記重合性モノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和結合を持つモノマー等が挙げられ、具体的には、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。前記エチレン性不飽和結合を持つモノマーの具体例としては、以下に示す化合物を挙げることができる、但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。【0055】【化11】【0056】前記重合性モノマーの添加量としては、液晶組成物の全固形分(質量)の0.5〜50質量%が好ましい。前記添加量が、0.5質量%未満であると、十分な硬化性を得ることができないことがあり、50質量%を越えると、液晶分子の配向を阻害し、十分な発色が得られないことがある。【0057】(光重合開始剤)本発明の液晶組成物は光重合開始剤を含有させることもでき、該光重合開始剤の併用により重合性基の重合反応を促進し、光照射により液晶の螺旋ピッチ(捻れ力)を変化させた後の螺旋構造を固定化して、固定化後の液晶組成物の強度をより向上させることができる。液晶の螺旋構造の固定化に、重合性の液晶性化合物による重合反応を利用した場合には光重合開始剤を添加することが好ましい。例えば、液晶相がコレステリック液晶相である場合には、所望の螺旋ピッチが安定的に得られ、色純度の高い選択反射色を確保することができる。【0058】前記光重合開始剤としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン/アミン、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等、更にビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等の特開平10−29997号公報に記載のビスアシルホスフィンオキシド類、Lucirin TPO等のDE4230555等に記載のアシルホスフィンオキシド類等が挙げられる。【0059】前記光重合開始剤の添加量としては、液晶組成物の全固形分(質量)の0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。前記添加量が、0.1質量%未満であると、光照射時の硬化効率が低いため長時間を要することがあり、20質量%を越えると、紫外線領域から可視光領域での光透過率が劣ることがある。【0060】(他の成分)更に、他の成分として、バインダー樹脂、溶媒、界面活性剤、重合禁止剤、増粘剤、色素、顔料、紫外線吸収剤、ゲル化剤等を添加することもできる。前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン化合物、メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース樹脂、側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載のメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられる。【0061】アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー及びメタアクリル酸アルキルエステルのホモポリマーも挙げられ、これらについては、アルキル基がメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基等のものを挙げることができる。その他、水酸基を有するポリマーに酸無水物を添加させたもの、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタアクリル酸のホモポリマータ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーの多元共重合体等が挙げられる。【0062】液晶組成物中におけるバインダー樹脂の含有量としては、0〜50質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましい。前記含有量が50質量%を超えると、液晶性化合物の配向が不十分となることがある。【0063】本発明の液晶組成物においては、選択反射する色相の色純度をより向上させる観点から、光反応性カイラル剤及び液晶性化合物と共に界面活性剤を併用することが好ましい。該界面活性剤としては、排除体積効果を及ぼす界面活性剤が好ましい。ここで、排除体積効果を及ぼすとは、例えば塗布により液晶組成物を含む層を形成した際の、該層表面の空気界面での空間的な配向状態を立体的に制御することをいう。具体的には、ノニオン系の界面活性剤が好ましく、公知のノニオン系界面活性剤の中から適宜選択して使用することができる。【0064】前記重合禁止剤は、保存性の向上の目的で添加され得る。例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ベンゾキノン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。該重合禁止剤の添加量としては、前記重合性モノマーに対して0〜10質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましい。【0065】本発明の液晶組成物は、前記各成分を適当な溶媒に溶解、分散して調製でき、これを任意の形状に成形し、あるいは支持体等の上に形成して用いることができる。ここで、前記溶媒としては、例えば、2−ブタノン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられる。【0066】<液晶の捻れ構造を変化させる方法>前述の通り、本発明の液晶組成物は光反応性カイラル剤を含んでなり、本発明の液晶の捻れ構造を変化させる方法においては、前述の本発明の液晶組成物に光量を変えて光照射し液晶の捻れ力を変化させ、液晶の捻れ構造の異なる領域を形成する。即ち、液晶組成物に対して所望の光量で所望のパターン状に光照射することによって、液晶の捻れ構造、即ち、螺旋の捻れの程度(捻れ力;HTP)を変化させることができ、その捻れ力に応じ液晶の示す選択反射色を任意に変化させることができる。【0067】また、特に液晶相をコレステリック液晶相とする場合には、その捻れ力に応じ液晶の示す選択反射色を任意に変化させることができる。この捻れ力の変化率が大きい場合は、液晶が選択反射し得る選択反射色の色幅が拡く、3原色(B,G,R)を含む広範な波長域の選択反射を得ることが可能であり、このことは、特にBGRの3原色を色純度の高く表示させることができる点で重要となる。この点において、特に既述の一般式(I)で表される光反応型カイラル剤は、液晶の螺旋構造の捻れ力を大きく変化させることができるので、該カイラル剤を含む液晶組成物を用いることにより、青(B)、緑(G)、赤(R)の3原色を含む広範な色相を色純度良く表示することができ、しかも色純度に優れた3原色を得ることができる。【0068】具体的には、以下のようにして行える。即ち、液晶組成物にある波長の光を照射すると、その照射強度に応じて共存する光反応型カイラル剤が感応して液晶の螺旋構造(捻れ角)を変化させ、この構造変化により異なる選択反射色を示し画像様のパターンが形成される(パターニング)。コレステリック液晶組成物の場合は、この構造変化により異なる選択反射色を示す。従って、所望の領域ごとに照射強度を変えて光照射すれば、照射強度に対応して配向し(複数色を呈し)、例えば、画像様に光透過率を変えて作成された露光用マスクを介して露光することにより、一回の光照射によって画像を、即ち異なる選択反射をする有色領域を同時形成することができる。【0069】しかも、一般式(I)で表される化合物に依るので、液晶の螺旋ピッチを大きく変化させることが可能で、コレステリック液晶組成物の場合は、形成された有色領域は広範な選択反射色を示し、色純度に優れたBGRの3原色を形成することができる。この光の照射は、露光用マスクによる方法のほか、所望の領域ごとに照射強度を変え得る方法であれば、特に制限なく行える。後述の液晶カラーフィルタ、光学フィルム等を形成する場合には、前述のようにしてある波長の光を画像様に露光してパターニングした後、更に光照射して液晶組成物中の重合性基を光重合させて硬化し、所望の選択反射色に液晶の螺旋構造を固定化する。これらの形成方法の詳細は後述する。【0070】前記一般式(I)で表される光反応型カイラル剤に起因し、光照射により液晶相に誘起する螺旋ピッチの変化率が大きいことを利用して、後述のように、光学フィルムである、円偏光分離膜、立体視用眼鏡、偏光マスク等を形成することができる。また、広帯域のスイッチャブルミラー、光書き込み型の記録媒体などへの応用も可能である。強誘電性液晶、反強誘電性液晶、TGB相へドープすることによる分極状態のパターニング、螺旋ピッチのパターニングが可能となる。また、当然通常の光学活性化合物としての使用も可能であり、STN素子やTN素子における螺旋構造誘起剤への適用も可能である。また、本発明の液晶組成物には、非キラルなアゾ系やスチレン系の、光により異性化する化合物を配合させることもでき、光照射時における螺旋ピッチの変化率を更に増大させることができることがある。【0071】光照射に用いる光源としては、エネルギーが高く、液晶化合物の構造変化及び重合反応が迅速に行える点で、紫外線を発する光源が好ましく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Hg−Xeランプ等が挙げられる。また、光量可変機能を備えることが好ましい。【0072】上記のように、一般式(I)で表されるカイラル剤を含む液晶組成物を用いると、光量に対する液晶の螺旋構造の捻れ力を大きく変化させることができる。したがって、例えば液晶性化合物としてネマチック液晶化合物を用いたコレステリック液晶相の場合には、液晶が呈し得る選択反射色の色幅が拡がり、色純度に優れた青(B)、緑(G)、赤(R)の3原色を得ることができる。【0073】<液晶カラーフィルタ>本発明の液晶カラーフィルタは、前記本発明の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を少なくとも含有してなり、更に少なくとも一種の液晶性化合物を含む態様が好適であり、前記液晶性化合物としてはネマチック液晶化合物が最も好適である。また、必要に応じて、重合性モノマー、光重合開始剤、排除体積効果を及ぼす界面活性剤等の前記本発明の液晶組成物において列挙した他の成分等を含んでなる。前述した液晶の捻れ構造を変化させる方法に基づいて適宜選択された所望のパターン及び光量で光照射することにより作製できる。【0074】以下、液晶カラーフィルタの製造方法の説明を通じて、本発明の液晶カラーフィルタについて詳述する。本発明の液晶カラーフィルタは、前述の本発明の液晶組成物、及び公知の組成物に前記一般式(I)で表される化合物を含んでなるものの中から適宜選択して作製することができる。この場合、前記液晶組成物のみから構成されたシート形態のものであってもよいし、所望の支持体や仮支持体上に液晶組成物含む層(液晶層)が設けられた態様のものであってもよく、更に配向膜や保護膜等の他の層(膜)が設けられていてもよい。後者の場合、液晶層を二層以上積層することもでき、この場合には後述する前記露光工程は複数回設けられる。【0075】前記ネマチック液晶化合物、重合性モノマー、光重合開始剤及び他の成分としては、前記本発明の液晶組成物で使用可能なものと同様のものが使用でき、その含有量、好ましい範囲等も該液晶組成物の場合と同様である。排除体積効果を及ぼす界面活性剤を併用することが好ましい。また、液晶カラーフィルタを構成する液晶組成物中における、前記一般式(I)で表される化合物の含有量も、既述の本発明の液晶組成物と同様である。【0076】本発明の液晶カラーフィルタは、例えば、前記本発明の液晶組成物により好適に作製することができる。また、液晶カラーフィルタを製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、第一の光により画像様に露光してパターニングした後、第二の光により光重合させて硬化する工程(以下、「露光工程」ということがある。)を少なくとも一工程含んでなる製造方法であってもよい。また、選択する製造態様に応じて、適宜液晶組成物との接触面に配向処理を施す工程(配向処理工程)、密着・剥離により液晶層を転写形成する工程(転写工程)、コレステリック液晶組成物を塗布して液晶層を形成する工程(塗布工程)などを経て形成されてもよい。【0077】以下に、前記露光工程を含む製造方法の例として、コレステリック液晶組成物を用いた具体的な一態様を示す。−露光工程−露光工程では、液晶化合物のパターニング及び固定化(重合硬化)のいずれをも光の照射によって行う。即ち、光反応型カイラル剤が高感度に感応しうる波長の第一の光により画像様に露光してパターニングした後、重合開始剤が高感度に感応しうる第二の光により光重合させて硬化し、所望の選択反射色に液晶化合物の螺旋構造を固定化する。【0078】前記第一の光が液晶組成物に照射されると、その照度に応じて、共存する光反応型カイラル剤が感応して液晶化合物の螺旋構造が変化し、この構造変化により異なる選択反射色を示し画像様のパターンが形成される。従って、所望の領域ごとに照射強度を変えて光照射すれば、照射強度に対応して複数色を呈し、例えば、画像様に光透過率を変えて作成された露光用マスクを介して露光することにより、一回の光照射によって画像を、即ち異なる選択反射をする有色領域を同時形成することができる。これに更に、第二の光を照射して硬化(固定化)させることにより液晶カラーフィルタを作製できる。【0079】前記第一の光の波長としては、光反応型カイラル剤の光感応波長域、特に光感応ピーク波長に近接する波長に設定することが、十分なパターニング感度が得られる点で好ましい。また、第二の光の波長としては、重合開始剤の光感応波長域、特に光感応ピーク波長に近接する波長に設定することが、十分な光重合感度が得られる点で好ましい。また、第一及び第二の光の照度(照射強度)には特に制限はなく、パターニング時及び重合硬化時の光感度が十分得られるように、使用する材料に応じて適宜選択できる。前記第一及び第二の光の照射に用いる光源としては、前記液晶組成物の光照射に使用可能なものと同様の光源が使用できる。【0080】更に具体的には、下記第1、第2の態様の製造方法であってもよく、これら2態様によって、より好適に作製することができる。〔第1の態様〕(1)仮支持体上に塗布液状の液晶組成物を設け、液晶層を少なくとも有する転写材料を形成する工程。前記塗布液状の液晶組成物は、各成分を適当な溶媒に溶解、分散して調製できる。ここで、前記溶媒としては、例えば、2−ブタノン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられる。液晶カラーフィルタの作製においては、コレステリック液晶組成物が好ましい。前記液晶層と仮支持体との間には、被転写体上に異物等がある場合など、転写時における密着性を確保する観点から、熱可塑性樹脂等を含んでなるクッション層を設けることもでき、該クッション層等の表面には、ラビング処理等の配向処理(配向処理工程)を施すことも好ましい。(2)前記転写材料を光透過性の基板上にラミネートする工程。前記光透過性の基板のほか、基体上に受像層を有する受像材料を用いてもよい。また、前記転写材料を用いずに、基板上に直接液晶組成物を塗布形成してもよい(塗布工程)。塗布は、公知の塗布方法の中から適宜選択して行える。但し、材料ロス及びコストの点で転写による方法が好ましい。【0081】(3)光透過性の基板から転写材料を剥離して、前記基板上にコレステリック液晶層を形成する工程(転写工程)。該液晶層は、下記(4)を経た後、更に積層して複数層より構成することもできる。(4)コレステリック液晶層に露光マスクを介して画像様に照度ν1の紫外線を照射し選択反射色を示す画素パターンを形成し、これに更に照度ν2の紫外線を照射して層を硬化させる工程(露光工程)。【0082】〔第2の態様〕(1)カラーフィルタを構成する支持体上に直接液晶組成物を設けて液晶層を形成する工程。ここで、液晶層は、上記同様に塗布液状に調製した液晶組成物をバーコーターやスピンコーター等を用いた公知の塗布方法により塗布形成することができる。また、前記コレステリック液晶層と仮支持体との間には、上記同様の配向膜が形成されていてもよい。該配向膜等の表面には、ラビング処理等の配向処理(配向処理工程)を施すことも好ましい。(2)前記第1の態様の工程(4)と同様の露光工程。【0083】液晶カラーフィルタとして機能する液晶層(シート状の液晶組成物)の厚みとしては、1.5〜5μmが好ましい。【0084】更に、図1から図3を用いて以下に説明する。図1〜3は、本発明の液晶カラーフィルタを製造する工程の一形態を示す概略図である。まず、既述の各成分を適当な溶媒に溶解し、塗布液状コレステリック液晶組成物を調製する。ここで、各成分及び溶媒は既述の通りである。【0085】図1−(A)のように、支持体10(以下、「仮支持体」ともいう)を準備し、該支持体10上に、例えばアクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等を塗布形成してクッション層(熱可塑性樹脂層)12を設け、更にポリビニルアルコール等よりなる配向膜14を積層する。この配向膜には、図1−(B)に示すようにしてラビング処理が施される。このラビング処理は、必ずしも必要ではないが、ラビング処理した方がより配向性を向上させることができる。次に、図1−(C)に示すように、前記配向膜14上に、塗布液状のコレステリック液晶組成物を塗布、乾燥しコレステリック液晶層16を形成した後、このコレステリック液晶層16上にカバーフィルム18を設けて、転写材料を作製する。以下、該転写材料を転写シート20と称する。【0086】一方、図1−(D)に示すように、別の支持体22を準備し、該支持体上に上記と同様にして配向膜24を形成し、その表面にラビング処理を施す。以下、これをカラーフィルタ用基板26と称する。【0087】次いで、転写シート20のカバーフィルム18を剥がした後、図2−(E)に示すように、該転写シート20のコレステリック液晶層16の表面と、カラーフィルタ用基板26の配向膜24の表面とが接触するように重ね合わせ、図中の矢印方向に回転するロールを通してラミネートされる。その後、図2−(F)に示すように、転写シート20の配向膜14とクッション層12との間で剥離され、カラーフィルタ用基板上に、コレステリック液晶層が配向膜14と共に転写される。この場合、クッション層12は、必ずしも仮支持体10と共に剥離されなくてもよい。【0088】転写後、図3−(G)に示すように、配向膜14の上方に、光の透過率の異なる領域を複数有する露光マスク28が配置され、このマスク28を介して第一の光をコレステリック液晶層16にパターン状に照射される。コレステリック液晶層16には、光照射量によって螺旋ピッチが異なるように液晶化合物、カイラル化合物等が含まれており、螺旋ピッチが異なる構造が各パターン毎に、例えば、緑色(G)を反射し、青色(B)及び赤色(R)を透過させる領域、青色(B)を反射し、緑色(G)及び赤色(R)を透過させる領域、赤色(R)を反射し、緑色(G)及び青色(B)を透過させる領域を形成するように形成される。【0089】次に、図3−(H)に示すように、コレステリック液晶層16に対して、上記工程(G)における光照射と異なる照射強度で更に紫外線照射して、パターンを固定化する。その後、2−ブタノン、クロロホルム等を用いて、コレステリック液晶層16上の不要部分(例えば、クッション層、中間層等の残存部、未露光部)を除去することにより、図3−(I)に示すように、BGRの反射領域を有するコレステリック液晶層を形成できる。【0090】図1〜3に示す方法は、ラミネート方式によるカラーフィルタの製造方法の一形態であるが、カラーフィルタ用基板上に直接液晶層を塗布形成する塗布方式による製造方法であってもよい。この場合、上記態様に当てはめると、図1−(D)に示すカラーフィルタ用基板26の配向膜24上にコレステリック液晶層を塗布、乾燥した後、上記同様の図3−(G)〜(I)に示す工程が順次実施される。【0091】これらの工程及び使用する転写材料、支持体等の材料については、本発明者らが先に提出した特願平11−342896号及び特願平11−343665号の各明細書に詳細に記載されている。【0092】上記のように、一般式(I)で表される光反応型カイラル剤を含む液晶組成物を用いると、光量に対する液晶の螺旋構造の捻れ力の変化率が大きいので、液晶が呈し得る選択反射色の色幅が拡がり、色純度に優れた青(B)、緑(G)、赤(R)の3原色よりなる液晶カラーフィルタを得ることができる。【0093】<光学フィルム>本発明の光学フィルムは、前記本発明の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を少なくとも含有してなり、更に少なくとも一種の液晶性化合物(好ましくはネマチック液晶化合物)を含む態様が好適であり、広範な波長域から光学波長を任意に設定してなる。また、必要に応じて重合性モノマー、光重合開始剤、及び排除体積効果を及ぼす界面活性剤等の前記本発明の液晶組成物において列挙した他の成分等を含んでなり、前述の「液晶の捻れ構造を変化させる方法」に基づいて適宜選択された所望のパターン及び光量で光照射することにより作製できる。【0094】本発明の光学フィルムは、前述した本発明の液晶組成物、及び公知の組成物に前記一般式(I)で表される化合物を含んでなるものの中から適宜選択して作製することができる。光学フィルムの形態としては、特に制限はなく、前記液晶組成物のみから構成されたシート形態、所望の支持体や仮支持体上に液晶組成物含む層(液晶層)を設けた形態等のいずれであってもよく、更に配向膜や保護膜等の他の層(膜)が設けられていてもよい。【0095】前記液晶性化合物、重合性モノマー、光重合開始剤及び他の成分としては、前記本発明の液晶組成物で使用可能なものと同様のものが使用でき、その含有量も該液晶組成物の場合と同様である。また、光学フィルムを構成する液晶組成物中における、前記一般式(I)で表される化合物の含有量も、既述の本発明の液晶組成物と同様である。【0096】本発明の光学フィルムは、例えば、前記本発明の液晶組成物を用いて好適に作製することができる。また、光学フィルムを製造する方法としては、前記液晶カラーフィルタとほぼ同様の方法により作製でき、前記露光工程を少なくとも一工程含んでなる方法であってもよい。また、選択する製造態様に応じて、前記配向処理工程、転写工程、塗布工程などの工程を経て形成されてもよい。より具体的には、前記第1の態様、第2の態様の製造方法とほぼ同様にして作製することもできる。【0097】上記のように、一般式(I)で表される光反応型カイラル剤を含む液晶組成物を用いると、光量に対する液晶の螺旋構造の捻れ力の変化率を大きく変化させることができ、非光吸収型の光学フィルムを得ることができる。例えば、液晶相をコレステリック液晶相とした場合には、液晶の選択反射する色幅が拡く、多彩な選択反射色よりなる光学フィルム、色純度に優れた原色(B,G,R)の光学フィルムなどを得ることができる。【0098】<記録媒体>本発明の記録媒体は、前記本発明の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を少なくとも含有してなり、更に少なくとも一種の液晶性化合物(好ましくはネマチック液晶化合物)を含む態様が好適である。また、必要に応じて、重合性モノマー、光重合開始剤、及び排除体積効果を及ぼす界面活性剤等の前記本発明の液晶組成物において列挙した他の成分等を含んでなる。【0099】本発明の記録媒体は、その形態に制限はなく、液晶組成物のみからなるシート形態のものであってもよいし、所望の支持体や仮支持体(以下、「支持体等」という)上に光反応型カイラル剤を含有する液晶組成物を含む層(液晶層)が設けられた形態のものであってもよい。ここで、液晶組成物としては、前述した本発明の液晶組成物、及び公知の組成物に前記一般式(I)で表される化合物を含んでなるものの中から適宜選択できる。また更に、配向膜や保護膜等の他の層(膜)が設けられていてもよい。【0100】前記液晶性化合物、重合性モノマー、光重合開始剤及び他の成分としては、前記液晶組成物で使用可能なものと同様のものが使用でき、その含有量も液晶組成物の場合と同様である。また、記録媒体を構成する液晶組成物中における、前記一般式(I)で表される化合物の含有量も、既述の本発明の液晶組成物と同様である。【0101】本発明の記録媒体は、例えば、前述した本発明の液晶組成物を支持体等上に設けることにより、好適に作製することができる。液晶組成物を支持体等上に設ける方法としては、(1)仮支持体上に本発明の液晶組成物を含む液晶層が設けられた転写材料を用いて、支持体上に該液晶層を転写する方法、(2)支持体上に、塗布液状に調製した液晶組成物を直接塗布等する方法、等が挙げられる。前記方法(1)及び(2)において、転写材料や塗布の方法などについては、前記本発明の液晶組成物において例示した態様(第1及び第2の態様)及び図1〜3の説明に準じて適応できる。【0102】上記のようにして作製された本発明の記録媒体は、適宜選択された所望のパターン及び光量で光照射することにより、液晶の捻れ力の変化率に応じて画像を、特にコレステリック液晶の場合には螺旋ピッチの変化率で決まる選択反射色から構成される有色画像を、形成することができる。画像の形成は、例えば、前述の「液晶の螺旋構造を変化させる方法」並びに「液晶の螺旋構造を固定化する方法」に基づいて行ってもよい。【0103】しかも、液晶構造を変化させるカイラル剤として前記一般式(I)で表される光反応型カイラル剤を用いると、光量に対する液晶の螺旋構造の捻れ力の変化率が大きいので、色再現範囲の広い画像を形成することができ、特にコレステリック液晶の場合には、液晶が選択反射する色相幅を拡げることができ、多彩で色純度の高い多色画像を形成することができる。また、捻れ力の変化率の大きいことは、画像形成の際の高感度化(高速化)にも大きく寄与する。また、例えば、重合性の液晶性化合物や重合性モノマーを用いることにより、パターニング後の液晶を固定化することができ、十分な画像安定性に優れた画像を形成することができる。【0104】光照射する光源としては、前記本発明の液晶組成物において使用可能なものと同様の光源を用いて、好適に光記録を行うことができる。また、液晶の固定化のための光照射の場合も同様である。【0105】以上説明したように、液晶分子の螺旋構造を変化させるカイラル剤として、特に前記一般式(I)で表される光反応型カイラル剤を用いることにより、液晶の捻れ力(捻れ角)を大きく変化させることができる。特にネマチック液晶化合物を用いたコレステリック液晶の場合には、光照射により得られる選択反射波長域が拡がり、その結果、BGRの3原色の色純度をもより高めることができる。したがって、液晶の色相の選択性、鮮やかさが向上し、特に液晶カラーフィルタや光学フィルム等においては、クリアで鮮やかなカラー像の表示が可能となり、記録媒体においては、形成する画像の色相を多彩化することができる。【0106】【実施例】以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」及び「%」は、全て「質量部」及び「質量%」を表す。【0107】(実施例1):光照射による螺旋ピッチの変化の測定前述した合成方法(光反応型カイラル剤(2)の合成)により合成した本発明の光反応型カイラル剤(例示化合物(2))2部をネマチック液晶組成物(ZLI−1132,メルク社製)98部と混合し、ポリイミド配向膜で一軸配向処理を施したクサビ型セル(ガラス厚み1.1mm、青色板)に注入した。ここで、偏光顕微鏡を用いて室温での螺旋ピッチを測定したところ、1.14μmであった。これをヘリカルツイスティングパワー(HTP)に換算すると、44μm-1となる。【0108】次いで、上記クサビ型セルに対して高圧水銀ランプから300mW/cm2の照射強度で3分間紫外線を照射した。照射後、上記と同様にして室温での螺旋ピッチを測定したところ、3.6μmに変化していた。これをHTPに換算すると14μm-1となる。従って、HTP変化率は3.14であった。上記のように、紫外線の照射により螺旋の捻れ力(HTP)を大きく変化させることができた。尚、コンタクト法により、紫外線照射前後における捻れの向きを確認したところ、照射の前後とも右捻れであった。【0109】(実施例2):広帯域円偏光反射板の作製(1) 基板の準備ガラス基板上に、ポリイミド配向膜(LX−1400,日立化成デュポン(株)製)塗布液をスピンコーターにより塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥した後、250℃のオーブンで1時間焼成して配向膜を形成した。更に、該膜の表面をラビング処理により配向処理して配向膜付ガラス基板を作製した。【0110】(2) 作製上記より得た配向膜付ガラス基板の該配向膜上に、下記処方にて調製した塗布液をバーコーターにより塗布し、110℃のホットプレート上にて5分間保持した後、該温度下で365nmに光源中心波長を持つバンドパスフィルタを介して、超高圧水銀灯により5分間光照射を行った。尚、下記本発明の光反応型カイラル剤(例示化合物(3))は、既述の合成方法と類似の方法により合成した。【0111】次いで、110℃に維持した状態で暗所に5分間保持し、その後バンドパスフィルタを取り除き、窒素ガスを吹き付けながら上記と同様の超高圧水銀灯により照射エネルギー500mJ/cm2で更に全面を露光し、重合硬化した。以上のようにして、円偏光反射板を作製した。【0112】【化12】【0113】上記より得た円偏光反射板は、450〜630nmに渡る広範な波長領域の選択反射を示し、広帯域円偏光反射板として十分な帯域特性を有していた。しかも、550nmの選択反射波長での右円偏光反射率は98%であった。【0114】(実施例3):液晶カラーフィルタの作製(1) フィルタ基板の準備ガラス基板上にポリイミド配向膜(LX−1400,日立化成デュポン(株)製)塗布液をスピンコーターにより塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥した後、250℃のオーブンで1時間焼成して配向膜を形成した。更に、該膜の表面をラビング処理により配向処理して配向膜付ガラス基板を作製した。【0115】(2)フィルタ層の形成上記より得た配向膜付ガラス基板の該配向膜上に、下記処方にて調製した感光性樹脂層用塗布液をスピンコーターにより塗布し、これを110℃のオーブンで2分間乾燥して感光性樹脂層を形成した。尚、下記本発明の光反応型カイラル剤(例示化合物(2))は、既述の合成方法にしたがって合成した。【0116】【化13】【0117】次いで、ガラス基板の表面で接触するように110℃のホットプレート上に5分間保持し、感光性樹脂層を発色させた。更に、該感光性樹脂層上に、透過率が三段階に異なり(0%、46%、92%)、それぞれの領域が青色画素用、緑色画素用、赤色画素用に対応して配列されたフォトマスクと365nmに中心を持つバンドパスフィルタとを介して超高圧水銀灯を配置し、このフォトマスク及びバンドパスフィルタを通して超高圧水銀灯により照射しパターニングした。このときの照射エネルギーは赤色画素用に対して300mJ/cm2であり、照射強度は30mW/cm2であった。【0118】次に、フォトマスクとバンドパスフィルタとを取り除き、窒素ガスを吹き付けながら上記と同様の超高圧水銀灯により照射エネルギー500mJ/cm2で更に全面を露光し、重合硬化した。更に、フィルタ部(感光性樹脂層)の硬化度を促進するために、220℃のオーブンで20分間焼成し、赤色画素、緑色画素、青色画素パターンが形成されたカラーフィルタを得た。上記パターニング時において、照射によって液晶の螺旋ピッチ(液晶の捻れ力)を大きく変化させることができ、色純度の高い赤色、緑色、青色よりなる画素パターンを形成することができた。【0119】(実施例4):STN素子用光学補償膜の作製厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)上に、ケン化度99.5%のポリエチレンビニルアルコール(PVA)膜をバーコート法により形成し、110℃下で3分間加熱した。該PVA膜上にラビング処理を施し、更に下記処方にて調製した塗布液をバーコーターにより加温塗布し、これを120℃のオーブンで3分間乾燥して成膜した。尚、下記本発明の光反応型カイラル剤(例示化合物(5))は、既述の合成方法にしたがって合成した。【0120】【化14】【0121】次いで、温度100℃の下、前記膜上から高圧水銀ランプを用いて紫外線照射(照射エネルギー1000mJ/cm2)を行って膜を重合硬化させ、STN素子用光学補償膜を作製した(以下、「STN補償膜」と称する。)。この時のSTN補償膜の膜厚を測定したところ5.0μmであった。また、該STN補償膜の偏光透過スペクトルプロファイルから、液晶分子の配向(螺旋構造)が240度で膜厚方向に捻れ、その螺旋の捻れ角(回転角)が240度であることが判った。また、この膜を該膜とは逆向きの捻れ角(−240度)を持つSTN補償膜を用意し、これらを合致した部分の液晶分子が直交するように重ね合わせ、互いに吸収軸が直交する2枚の偏光板の間に挿入して、目視により観察したところ良好な黒色を示した。したがって、上記より形成された膜(STN補償膜)は、STN素子用光学補償膜として作用していることが確認できた。【0122】(実施例5):TN素子用のリバースツイストドメインの発生防止ITO膜付きのガラス基板の該ITO膜上に、ポリイミド配向膜(LX−1400,日立化成デュポン(株)製)塗布液をスピンコーターにより塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥した後、250℃のオーブンで1時間焼成して配向膜を形成した。更に、該膜の表面にラビング処理を施してラビング角度が90度になるように配向処理し、配向膜付ガラス基板を2枚作製した。上記配向膜付ガラス基板の配向膜が互いに対向するように配置し、直径6μmのスペーサビーズを混合した2液性エポキシ樹脂接着剤により貼り合わせ、駆動用セルを形成した。該セルの厚みを光干渉法により測定したところ5.4μmであった。【0123】前記セル中に、下記組成よりなる組成物を注入した。尚、下記本発明の光反応型カイラル剤(例示化合物(2))は、既述の合成方法にしたがって合成した。〔組成物〕・ネマチック液晶組成物(ZLI−1132,メルク社製)・・・99.9%・本発明の光反応型カイラル剤(既述の例示化合物(2))・・・ 0.1%【0124】次に、互いに吸収軸が直交する二枚の偏光板の間に、注入後の駆動用セルを挿入して目視により観察したところ、リバースツイストドメインの発生は認められなかった。したがって、リバースツイストの発生によるコントラストの低下がなく、コントラスト、色純度に優れた画像表示が期待できる。【0125】【発明の効果】本発明によれば、液晶性化合物の配向を制御し得、かつ光による液晶の捻れ力(捻れ角、螺旋ピッチ)の変化率(以下、「捻れ変化率」ということがある。)が大きく、例えばコレステリック液晶相の場合には、3原色(B、G、R)を含む広範な選択反射が可能で、色純度の高い3原色を表示させ得る光反応型カイラル剤を提供することができる。本発明によれば、光により液晶の捻れ力を変化させ、且つその捻れ変化率の大きい光反応型カイラル剤を含み、光により液晶分子の配向状態を大きく立体的に制御して光学特性を変化しうる液晶組成物、例えばコレステリック液晶の場合には、光照射により3原色を含む広範な選択反射色を示し、しかも色純度に優れた3原色の表示が可能な液晶組成物を提供することができる。本発明によれば、捻れ変化率の大きい光反応型カイラル剤を含む液晶組成物に光照射して液晶の捻れ力(捻れ角)を大きく変化させうる、液晶の捻れ構造を変化させる方法を提供することができる。本発明によれば、光照射により液晶の捻れ力を大きく変化させ得る光反応型カイラル剤を含み、色純度の高い液晶カラーフィルタを提供することができる。本発明によれば、光照射により液晶の捻れ力を大きく変化させ得る光反応型カイラル剤を含む非光吸収型の光学フィルム、例えばコレステリック液晶相の場合には、選択反射域が広範で色純度の高い光学フィルムを提供することができる。本発明によれば、光照射により液晶の捻れ力を大きく変化させ得る光反応型カイラル剤を含み、画像様に光量を変化させることにより鮮明な画像を形成し得る記録媒体、例えば液晶相がコレステリック液晶相の場合には、色相が広範で色純度の高い選択反射色よりなる画像を形成し得る記録媒体を提供することができる。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の液晶カラーフィルタを製造する工程の一部を示す概略図である。【図2】 本発明の液晶カラーフィルタを製造する工程の一部を示す概略図である。【図3】 本発明の液晶カラーフィルタを製造する工程の一部を示す概略図である。【符号の説明】10 支持体(仮支持体)12 クッション層(熱可塑性樹脂層)14,24 配向膜16 液晶層(液晶組成物)18 カバーフィルム20 転写シート22 基板26 カラーフィルタ用基板28 露光マスク 下記一般式(I)で表される化合物からなり、光照射により液晶の捻れ力を変化させることを特徴とする光反応型カイラル剤。〔式中、Rは、水素原子、炭素数1〜15のアルコキシ基、総炭素数3〜15のアクリロイルオキシアルキルオキシ基、総炭素数4〜15のメタクリロイルオキシアルキルオキシ基を表す。〕 一般式(I)で表される化合物において、Rが、総炭素数3〜15のアクリロイルオキシアルキルオキシ基、総炭素数4〜15のメタクリロイルオキシアルキルオキシ基である請求項1に記載の光反応型カイラル剤。 一般式(I)で表される化合物において、Rが、水素原子、炭素数1〜15のアルコキシ基である請求項1に記載の光反応型カイラル剤。 請求項1から3のいずれかに記載の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする液晶組成物。 請求項4に記載の液晶組成物に光照射して液晶の捻れ力を変化させることを特徴とする液晶の捻れ構造を変化させる方法。 請求項1から3のいずれかに記載の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする液晶カラーフィルタ。 請求項1から3のいずれかに記載の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする光学フィルム。 請求項1から3のいずれかに記載の光反応型カイラル剤より選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする記録媒体。