生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_マトリプターゼ、セリンプロテアーゼおよびその応用
出願番号:2000603721
年次:2011
IPC分類:C07K 16/40,C12N 15/09,A61K 39/395,A61K 51/00,A61P 1/00,A61P 17/00,A61P 35/00,A61P 43/00,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 9/64,C12N 5/10,C12Q 1/37,G01N 33/53,G01N 33/577,C12P 21/08


特許情報キャッシュ

ディクソン、ロバート、ビー リン、チェン − ヨン ジョンソン、マイケル ワン、シャオメン エニエディ、イストバン JP 4778617 特許公報(B2) 20110708 2000603721 20000310 マトリプターゼ、セリンプロテアーゼおよびその応用 ジョージタウン ユニバーシティ 302044498 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 長沼 暉夫 100088926 池田 幸弘 100102897 ディクソン、ロバート、ビー リン、チェン − ヨン ジョンソン、マイケル ワン、シャオメン エニエディ、イストバン US 60/124,006 19990312 20110921 C07K 16/40 20060101AFI20110901BHJP C12N 15/09 20060101ALI20110901BHJP A61K 39/395 20060101ALI20110901BHJP A61K 51/00 20060101ALI20110901BHJP A61P 1/00 20060101ALI20110901BHJP A61P 17/00 20060101ALI20110901BHJP A61P 35/00 20060101ALI20110901BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110901BHJP C12N 1/15 20060101ALN20110901BHJP C12N 1/19 20060101ALN20110901BHJP C12N 1/21 20060101ALN20110901BHJP C12N 9/64 20060101ALN20110901BHJP C12N 5/10 20060101ALN20110901BHJP C12Q 1/37 20060101ALN20110901BHJP G01N 33/53 20060101ALN20110901BHJP G01N 33/577 20060101ALN20110901BHJP C12P 21/08 20060101ALN20110901BHJP JPC07K16/40C12N15/00 AA61K39/395 TA61K49/02 CA61P1/00A61P17/00A61P35/00A61P43/00 101A61P43/00 111C12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N9/64 ZC12N5/00 101C12Q1/37G01N33/53 DG01N33/577 BC12P21/08 C07K 16/40 A61K 39/395 A61K 51/00 A61P 1/00 A61P 17/00 A61P 35/00 A61P 43/00 C12N 15/09 C12N 1/15 C12N 1/19 C12N 1/21 C12N 5/10 C12N 9/64 C12P 21/08 C12Q 1/37 G01N 33/53 G01N 33/577 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 米国特許第05482848(US,A) LIN,C.Y. et al,Purification and characterization of a complex containing matriptase and a Kunitz-type serine protease inhibitor from human milk,J Biol Chem,1999年,Vol.274, No.26,p.18237-42 MOY,L.Y. et al,Cancer Letters,1994年,Vol.85,p.205-210 KENNEDY,A.R.,AMERICAN JOURNAL OF CLINICAL NUTRITION,1998年,Vol.68,p.1406S-1412S KENNEDY,A.R. et al,CANCER RESEARCH,1996年,Vol.56,p.679-682 LIN,C.Y. et al,JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1997年,Vol.272 No.14,p.9147-9152 5 US2000006111 20000310 WO2000053232 20000914 2002539093 20021119 52 20070309 関 景輔 【0001】(政府の権利)本発明は、連邦がスポンサーとなっている研究プロジェクトの下で開発されたものであるため(例えば、NIH助成金No.1R21CA80897、2P50CA58158及びDOD助成金BC980531)、アメリカ政府は本発明において一定の権利を有する。【0002】(発明の分野)本発明は、ヒトの母乳及びその他の正常組織中で検出されるプロテアーゼの分野、及び正常な母乳中、正常な組織中、並びに乳房のガン組織および前ガン組織中、さらに生検により採取されるその他の体組織、そして乳首吸引物からの体液などその他の体液中で検出されるプロテアーゼとその同系の阻害剤との間にある複雑なパターンの区別に関連するものである。【0003】(発明の背景)セリンプロテアーゼとその他のガン関連プロテアーゼ。新生物が進行する際にタンパク質溶解活性が上昇することが示唆されている。腫瘍の進行におけるタンパク質溶解酵素の正確な役割については不明であるが、プロテアーゼはガンの生育および進展のほぼすべての段階に関与している可能性があると考えられる。広く提案されているのは、プロテアーゼが細胞外マトリックス(ECM)の分解及び組織のリモデリングに寄与しており、ガンの浸潤と転移のために必要である、という見解である。数多くの種類のECM分解プロテアーゼが発見されており、これらのうちのいくつかの発現が腫瘍の進行と関連している。そのようなプロテアーゼには、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPS)グループ、プラスミン/ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータシステム及びリソソームププロテアーゼカテプシンDとBが含まれ、Mignatti et al.、Physiol. Rev. 73:161−95(1993)が総説を発表している。プラスミン/ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータシステムはプラスミン、主要ECM分解プロテアーゼ;プラスミノーゲンアクチベータ、uPa;プラスミン阻害剤α2−抗プラスミン、プラスミノーゲンアクチベータ阻害剤PAI−1及びPAI−2;そしてuPaの細胞膜受容体(uPAR)から構成される(Andreasen et al.、Int. J. Cancer 72:1−22(1997))。MMPは亜鉛依存性酵素の一種で、特徴的な構造及び触媒特性を有する。乳ガン及びその他のガンの浸潤過程において重要な役割を果たす可能性が有るとして最も注目されているのは、プラスミン/ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータシステムと、72 kDaゼラチナーゼ(MMP-2)/膜型MMPシステムである。しかし、どちらのシステムも、ガン細胞の表面上にある主要ECM分解プロテアーゼを補充し活性化するために間接的な機序を必要とするようである。例えば、uPaはヒト乳ガン中(in vivo)においてガン細胞に隣接する筋線維芽細胞により産生され(Nielson et al.、Lab. Invest. 74:168−77(1996);Pyke et al.、Cancer Res. 53:1911−15(1993);Polette et al.、Virchows Arch. 424:641−45(1994);及びOkada et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:2730−34(1995))、受容体により媒介される活性化及びガン細胞の表面上での発現のためにガン細胞まで拡散する必要がある。しかし、uPa受容体(uPAR)は、導管性乳ガンの腫瘍病巣に浸潤するマクロファージ中で検出される。MMPグループの大半、例えば72 kDa/ゼラチナーゼA(MMP-2)(Lin et al.、J. Biol. Chem. 272:9147−52(1997))、ストロメリシン−3(MMP-11)(Matsudaira、J. Biol. Chem. 262:10035−38(1987))、MTMMP(MMP-14)は、腫瘍支質の線維芽細胞、あるいは周辺の非ガン組織、またはその両方によって発現される、という点である程度の類似性が見られる。ガン細胞表面の直近におけるゼラチナーゼAの活性化および補充の間接的機序が提案されており、それによると未特定のガン細胞由来のゼラチナーゼAの膜受容体がゼラチナーゼAの膜アンカーとして働き、次に支質細胞から切断されたMT-MMPがガン細胞表面まで拡散してゼラチナーゼAを活性化する。上皮細胞中で主に検出されるMMPはマトリリシン(MMP-7;ポンプ1)だけであると考えられる。【0004】十分に特徴解析されたこれらの細胞外マトリックス分解プロテアーゼが支質由来であることから、ガンの浸潤とは支質−上皮の協同作用に完全に依存するか、あるいは何か他の未知の上皮由来プロテアーゼによってコントロールされるかのどちらかのイベントであることが示唆される。プラスミン/ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータシステムかつ/またはMMPグループと相互作用する可能性のあるこれらの上皮由来タンパク質溶解システムの研究を行うことにより、悪性細胞の浸潤に関して我々の理解の欠如している部分が解明されるであろう。【0005】マトリプターゼは、移動速度がゼラチナーゼA(72 kDa、MMP-2)とゼラチナーゼB(92 kDa、MMP-9)の間である主要ゼラチナーゼとして、T-47Dヒト乳ガン細胞から最初に特定された。乳ガンの転移性浸潤において役割を果たすのではないかと提案されている。(アメリカ特許5、482、848を参照のこと。ここに掲載する参考文献に完全な形で包含されている。)マトリプターゼの主な切断特異性は、アルギニンおよびリジン残基であることが確認されており、トリプシンおよびプラスミンを含めて大半のセリンプロテアーゼと類似している。また、マトリプターゼはトリプシンと同様、切断活性のスペクトルが幅広く、このような活性がそのゼラチン溶解活性に寄与していると考えられる。マトリプターゼはトリプシン様の活性を持つことから、ゼラチン中に最も豊富な(ほぼ3分の1)アミノ酸残基であるグリシン残基の位置でゼラチンを切断すると考えられるゼラチナーゼA及びBと識別できる。【0006】Kunitz型セリンプロテアーゼ阻害剤。肝細胞増殖因子(HGF)アクチベータ阻害剤−1(HAI-1)はKunitz型のセリンプロテアーゼ阻害剤であり、血液凝固因子XII様セリンプロテアーゼであるHGFアクチベータを阻害することができる。このプロテアーゼ阻害剤の成熟型は478個のアミノ酸残基を持ち、分子量は53、319であると計算されている。 推定上の膜通過領域はカルボキシル末端に位置する。HAI-1は2個のKunitz領域を持ち(領域Iは246〜306番目の残基;領域IIは371〜431番目の残基まで)、LDL受容体領域(315〜360番目の残基)によって隔てられている。活性部位断片の推定P1残基は、Kunitz領域Iのアルギニン260と領域IIのリジン385であり、ウシ膵臓トリプシン阻害剤(BPT1、アプロトミン)及びその他のKunitz型阻害剤と一致している。このように、HAI-1はトリプシン型プロテアーゼに対して特異性を有している。HGFアクチベータを発現するのは肝細胞だけであるが、HAI-1は元来ガン細胞の調節培地から40 kDaのダブレット画分として精製されたものであり、提案される成熟した膜結合53 kDa型から精製されたのではなかった(Shimomura et al.、J. Biol. Chem. 272:6370−76(1997))。【0007】セリンプロテアーゼのタンパク質阻害剤は、各種の観点に従って少なくとも10種類のグループに分類することができる。その中で、マスピン(Sheng et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11669−74(1996))のようなセルピン類、及び尿中トリプシン阻害剤(Kobayashi et al.、Cancer Res. 54:844−49(1994))のようなKunitz型阻害剤は、これまでにガン浸潤を抑制することが示唆されてきた。Kunitz型の阻害剤は、ターゲットとなるセリンプロテアーゼと共に非常にしっかり結合しているが可逆的である複合体を形成する。これらの阻害剤の反応部位は固定しており、最適なプロテアーゼ基質を擬態することができる。セリンプロテアーゼとKunitz型阻害剤との間の相互作用は、プロテアーゼと阻害剤との間の相補的で大きい表面接触部位に依存する。プロテアーゼ複合体から回収したKunitz型阻害剤の阻害活性は、常に再構築することが可能である。Kunitz型の阻害剤は同系のプロテアーゼによって切断される場合があるが、このような切断はその阻害活性に必須ではない。一方、セルピン型の阻害剤もまた、プロテアーゼと共にしっかりと結合した安定な複合体を形成し、ほとんどの場合これらの複合体はKunitz型阻害剤が含まれる複合体よりも安定している。阻害のためにはプロテアーゼによるセルピンの切断が必要であり、プロテアーゼ反応から形成される切断された不活性な型の中からセルピンが必ず回収される。このように、セルピンは自殺型基質阻害剤であると考えられ、プロテアーゼに遭遇した後その阻害活性が消失すると思われる。セルピン阻害剤の自殺型の特性によって、in vivoにおいて他の膜結合細胞内受容体を通じて不要なプロテアーゼを直接除去することによりタンパク質溶解活性が調節されている可能性がある(uPa阻害剤の場合)。しかし、Kunitz型阻害剤は単純に生理学的な基質(ECM成分のような)と競合することによって、タンパク質溶解のために機能するプロテアーゼの量を減らすものと考えられる。このような差があるため、これらのプロテアーゼがECM分解およびガン浸潤において果たす機序も異なるのであろう。【0008】Bowman-Birk阻害剤(BBI、Sigma社より)として知られる大豆由来の物質が、モデル系において腫瘍のイニシエーション及び進行を防止することにより抗ガン活性を発揮する可能性のあることが以前に開示された。【0009】【発明の目的および要約】癌、前癌病巣、もしくは他の状態を予防あるいは治療できるマトリプターゼ調節薬剤の用量を投与する段階を含む生物学的サンプルにおいて1本鎖(チモーゲン)および/もしくは2本鎖(活性化された)型のマトリプターゼの存在によって特徴づけられている被験者における癌もしくは前癌状態および他の状態を予防するあるいは治療する方法を提供することが本発明の目的である。【0010】Bowman Birk阻害剤(BBI)もしくは構造的に関連した分子あるいは断片のようなマトリプターゼ阻害剤を提供することが本発明のもう一つの目的である。【0011】 本発明のもう一つの目的はマトリプターゼタンパクまたはそのポリペプチド断片をコードしている核酸分子(配列番号4および26)を提供することである(配列番号5および27)。【0012】 配列番号5もしくはその断片、配列番号27もしくはその断片、1本鎖のマトリプターゼ(チモーゲン)もしくは2本鎖(活性)型のマトリプターゼを認識し結合している1つの抗体あるいは複数の抗体を提供することが本発明のさらなる目的である。好ましい抗体はキメラの、ヒト化のまたはヒトの抗体と同様にモノクロナール抗体およびその断片である。【0013】他の病理学的状態の細胞に腫瘍細胞が発現したチモーゲン型のマトリプターゼの活性もしくは2本鎖(活性型)型のマトリプターゼの活性を阻害あるいは調節する薬剤を投与することによって、腫瘍の始まり、腫瘍の成長および腫瘍侵襲もしくは転移、あるいは他の病理学的状態を阻害する方法を提供することがまた本発明の目的である。1つの選択された薬剤はBBICその断片もしくは構造的に関連した阻害剤(例えば構造的に関連したセリンプロテアーゼ阻害剤)である。【0014】本発明のもう1つの目的は次の段階を構成する1本鎖もしくは2本鎖型のマトリプターゼに特異的に結合する化合物を同定する方法である。その段階は、(A)化合物に1本鎖もしくは2本鎖型のマトリプターゼを曝露すること、(B) 1本鎖か2本鎖型のマトリプターゼのどちらがその化合物に特異的に結合するかを確認すること、(C)1本鎖型マトリプターゼに結合している化合物が2本鎖型のマトリプターゼに対する活性化を阻害するかどうかもしくはその化合物が2本鎖型マトリプターゼに結合し触媒活性を阻害するかどうか確認することである。【0015】in vivoにおいて次の段階を含む被験者において前癌病巣、癌のもしくは他の病理学的状態の存在を診断する方法を開示することが本発明のさらなる目的である。その段階は(A)1本鎖および2本鎖型マトリプターゼに対して認識し、結合する被験者に対し標識された薬剤を投与すること、および(B)標識された薬剤の分布に対するその被験者の画像を描くことである。【0016】in vitroにおいて次の段階を含む被験者において前癌病巣の存在、癌のもしくは他の病理学的状態の存在を診断することが本発明のさらなる目的である。その段階は(A)前癌病巣、癌の他の病理学的状態に対して検査されるべき被験者から得られた生物学的サンプルを採取すること、(B)マトリプターゼの1本鎖型および/もしくは2本鎖型に対して認識し結合する標識された薬剤に生物学的サンプルを曝露すること、および(C)その前述の標識された薬剤が生物学的サンプルに結合したかどうか確認することである。【0017】次の段階を含むマトリプターゼの1本鎖および2本鎖型に対して特異的に結合する化合物を同定する方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。その段階とは(A)化合物がマトリプターゼの1本鎖型の活性部位、マトリプターゼの2本鎖型の触媒部位、マトリプターゼのどちらかの型のClr/Cls領域、もしくはその分子の他の調節領域に対して結合することができたかどうか分子モデリングによって同定すること、(B)その化合物にマトリプターゼの1本鎖型および2本鎖型を曝露すること、(C)化合物が1本鎖型のもしくは2本鎖型の、マトリプターゼに結合するかどうか確認すること、および(D)もし化合物が一つの型のマトリプターゼに結合するならば、化合物が2本鎖型のマトリプターゼに対する1本鎖型のマトリプターゼの活性を阻害するかどうか、化合物が2本鎖型のマトリプターゼに結合し、その触媒活性を阻害するかどうか、化合物がClr/Cls領域に結合するかどうか、それによってそのタンパクの二量化を阻害するかどうか、もしくは化合物がそれによってマトリプターゼの活性化もしくはマトリプターゼ活性を調節しているマトリプターゼのもう1つの調節領域に結合するかどうかさらに決定することである。【発明の説明】【0018】マトリプターゼは2つの調節モジュールをもったトリプシン様セリンプロテアーゼである。その2つのモジュールは補体サブコンポーネントClr/Cls領域の2つの縦列反復およびLDL受容体領域の4つの縦列反復である(LinらJ.Biol.Chem.274:18231-6(1999))。生理学的条件におけるマトリプターゼの役割を評価するために、母乳におけるその発現について試験した。母乳由来マトリプターゼがSDS安定複合体を形成するためにHAI-1の断片と相互に強く作用するということが認められた。【0019】モザイクプロテアーゼはT-47Dヒト乳がん細胞から最初に生成されたトリプシン様活性および2つの調節モジュールによって特徴づけられている(例えばLDL受容体および補体サブコンポーメントClr/s領域)。【0020】乳がん細胞において、マトリプターゼは主に非複合型として検出された。しかしながら低いレベルのマトリプターゼが、煮沸によって解離できたSDS安定、110-および95-kDa複合体において検出された。顕著な対比として、複合体マトリプターゼのみが母乳中に検出された。現在複合体マトリプターゼはイオン交換クロマトグラフィーおよび免疫親和性クロマトグラフィーの組み合わせによって精製されている。マトリプターゼ関連タンパクから得られたアミノ酸配列は、それらが肝細胞成長因子アクチベーターの阻害剤(HAI-1と名づけられた)であるとすでに報告された完全な膜のKunitz型のセリンプロテアーゼ阻害剤の断片であることを示している。さらに、マトリプターゼとその複合体はまた4つの母乳由来SV-40T-抗原−不死化乳腺上皮細胞系において検出された。しかし2つのヒト包皮線維芽細胞においてもHT1080線維肉腫細胞系においても検出されなかった。母乳由来マトリプターゼ複合体はin vivoにおいて授乳中の乳腺の上皮の構成成分によって生成されるようである。またマトリプターゼの活性および機能は授乳中の乳腺を伴った乳がんと比較して同種の阻害剤によって異なる方法で調節される可能性がある。【0021】 A. 定義 「マトリプターゼ」は72-kDaと92-kDaの間の分子量をもったトリプシン様タンパクを意味し、配列番号27に関連し、またはそれはその断片である。それは1本鎖および2本鎖型のタンパクの両方を含む可能性がある。チモーゲン型(不活性型)のマトリプターゼは1本鎖のタンパクである。2本鎖型のマトリプターゼは触媒活性をもった活性型のマトリプターゼである。細胞外マトリックス(ECM)リモデリングは正常および病理学的リモデリングプロセスの両方に必要であるため両方の型のマトリプターゼは母乳およびがん細胞中にある程度認められる。図14は全ての同定された型のマトリプターゼを示している。がん細胞および母乳の両方共、別々の型のマトリプターゼを含有している。しかしながら、母乳においては優位の型がHAI-1にその時結合している活性型のマトリプターゼである。【0022】「マトリプターゼ調節化合物」もしくは「マトリプターゼ調節薬剤」はマトリプターゼの活性(例えば活性2本鎖部分に対するマトリプターゼ1本鎖チモーゲンの切断)もしくは2本鎖型のマトリプターゼの活性を調節、あるいは選択的に阻害する薬剤を意味する。この阻害は転写、翻訳、および/もしくは翻訳後の段階において起こる可能性がある。さらに、マトリプターゼ活性の調節はチモーゲンもしくは活性化型マトリプターゼに対する化合物の結合を通して起こる可能性がある。【0023】「マトリプターゼ発現組織」はあらゆる型のマトリプターゼ、癌の、前癌の、正常な組織、もしくは他の病理学的状態にさらされた組織のいずれかを表現するあらゆる組識を意味する。【0024】「BBI」はBirk(Int.J.Pept,Protein Res.25:113-21(1985))によって述べられたように大豆由来の化合物を含有しているBowman-Birk阻害剤として知られている化合物を意味する。BBIは豆科の植物から分離され約8,000―20,000 Daltonの分子量をもち次のものを制限なしに含む。それは例えばDolichos biflorosおよびMacroryloma uniflorunの種のBBI阻害剤、Torresea cearensisの種のBBI阻害剤、winter peaの種のBBI阻害剤、DgTI、ひまわりの種のBBI様阻害剤である。(Prakashら、J. Mol. Biol. 235:364-6(1994); Tanakaら、Biol. Chem. 378:273-81(1997); QuilienらJ.Protein Chem.16:195-203(1997);Buenoら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 261:838-43(1999)およびLuckettら、J. Mol. Biol. 290: 525-33(1999))。BBI様阻害剤はセリンプロテアーゼ阻害剤のBowman-Birk類のトリプシン反応性ループをもった配列および構造的類似性のある化合物である。BBIsおよびBBI様阻害剤はあらゆるイソ型を含有する可能性がある。【0025】「BBIC」はマトリプターゼ活性を阻害するBBIもしくはその生物学的活性型断片の濃縮物を意味する(例えばプロテアーゼ阻害ループを置換したアミノ酸)。BBIC濃縮物は0.0001から少なくとも約0.1mg/mlの範囲のBBIの総量を選択的に含有している。選択的にBBICは腫瘍の始まりを阻害する方法として、例えば乳頭のアスパラギン酸もしくは他の生物学的液体、もしくは穿刺生検から得られた組織を含めて生検からの組織において、マトリプターゼおよび/もしくはマトリプターゼ複合体の存在によって示されたように乳癌の可能性がある被験者の血中BBI濃度が0.001から1mMになるまで十分投与する。【0026】「悪性」は良性の反対で癌性である新生物もしくは腫瘍を含んだ組織、細胞もしくは器官に関連した意味である。悪性細胞は特色として組織を透過する成長を含む(例えば転移)。「良性」は転移もしくは組織透過によって拡がらない異常な成長を意味する。インスタントの発明の悪性細胞はあらゆる組識の細胞である可能性がある。選択された組織は上皮細胞である。【0027】「腫瘍侵襲」もしくは「腫瘍転移」は初期の腫瘍から遠隔の部位における第2の腫瘍に発展する腫瘍の可能性を意味する。腫瘍転移は特色として局所的侵襲、受動輸送、蓄積および遠隔の部位における増殖が必要であるこのプロセスはまた腫瘍の血管新生の進展すなわち脈管形成と名づけられたプロセスが必要である。それゆえ「腫瘍侵襲」および「転移」によって我々はまた腫瘍血管新生のプロセスを意味する。【0028】「前癌状態」もしくは「前癌病巣」は悪性のもしくは転移性に変化する潜在力をもった細胞あるいは組織、および前述の潜在力をもった上皮細胞を意味する。前癌病巣は制限なしに次のものを含む;それは非典型的な乳房の管の過形成、光線性角化症(AK)、白斑、食道のバレット上皮(柱状の異形成)、潰瘍性大腸炎、結腸大腸の腺腫性ポリープ、ケーラーの紅色肥厚症、ボーエン病、bowenoid丘疹症、外陰部上皮内新形成(VIN)、および頚管に対する非増殖性変化である。【0029】「他の状態」もしくは「病理学的状態」はあらゆる病気の罹患しやすさもしくは診断に関連したあらゆる遺伝的な罹患しやすさもしくは非癌性病理学的状態を意味する。【0030】「腫瘍形成阻害効果量」はマトリプターゼの活性化もしくはマトリプターゼ活性を阻害したり、またヒトのような被験者に投与された時、腫瘍の形成を妨げたり、先在する腫瘍もしくは前癌状態を引きおこしたり、寛解にはいったりすることを特徴とする化合物の量を意味する。これは癌が発生したり、および/もしくは前癌状態が現れたりしないことを確認するために延長された期間ハイリスク患者をスクリーニングすることによって評価される可能性がある。これはまた腫瘍のmassが縮小しているかどうか確認するために腫瘍のある被験者の画像によって評価することが可能である。腫瘍形成を阻害する効果量は被験者に対して苦痛を軽減するための改善を提供する量である。腫瘍形成阻害効果量はまたBBICのような阻害剤の血液循環における作用に基づいて評価することが可能である。BBICのような薬剤の選択された腫瘍形成阻害効果量は1μg/kgから20μg/kg被験者の体重の範囲である。さらに選択された範囲は1μg/kgから10μg/kg被験者の体重である。【0031】「標識剤」とは蛍光標識、酵素標識、放射線標識を含むことを意味する。「放射標識」または「放射線標識」とは、画像診断の目的でヒトに使用する全ての放射性同位元素を意味する。この使用に望ましい放射性同位元素には、67Cu、47Ga、99Te、131I、123I,125I,111In、188Re、180Re、90Yがある。「蛍光標識」とは、試料のスクリーニング(例:組織標本および生検)に使用され蛍光エネルギーを放射するすべての化合物を意味する。望ましい蛍光標識にはフルオレセイン、ローダミン、およびフィコエリトリンがある。【0032】「生体試料」とは対象から得た体液、細胞、または組織等の試料を意味し、対象としてはヒトが望ましい。生体試料には、生検または乳頭吸引により得ることができる細胞を含んでいるか、または上皮細胞が望ましい。試料は、自然に、または人工的方法(例:外科的方法)により悪性細胞または悪性病変前の細胞に接触した体液の場合もある。【0033】「マトリプターゼ発現組織」とは、1つの形または2つ以上の形のマトリプターゼを発現する1細胞あるいは2つ以上の細胞からなる生体試料を意味する。【0034】「対象」は動物を意味し、望ましくは哺乳類で最も好ましいのはヒトである。【0035】本明細書で使用されている「抗体」という語は、無傷の完全抗体とそのFabフラグメントおよびF(ab)2フラグメントを指すことを意味する。無傷の完全抗体には、マウスモノクロナール抗体(mAb)、キメラ抗体、および人化抗体のようなモノクロナール抗体を含む。抗体の産生および無傷の完全抗体や抗体フラグメント(例:FabフラグメントおよびF(ab)2フラグメント)のタンパク質構造、およびこうした分子をコードする遺伝子配列の構造はよく知られており、例えばHarlowらの「抗体:実験マニュアル」Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1988)に記述されている。【0036】「免疫原フラグメント」とは、体液および/または細胞の媒介で免疫を誘導するが免疫寛容は誘導しないマトリプターゼタンパク質の一部を意味する。【0037】「エピトープ」とは、抗体またはその免疫原フラグメントが特異的に結合する抗原分子(例:マトリプターゼ)の領域を意味する。エピトープは、未変化の状態ではタンパク質の折りたたみにより非常に近い位置に並列する、異なるタンパク抗原分子領域の残基から形成された3次元エピトープの場合がある。本明細書で使用する「エピトープ」とは、ペプチドすなわちマトリプターゼのハプテンの一部により創り出されたエピトープを意味し、3次元エピトープのことではない。【0038】 B. 核酸分子 本発明では、さらに、配列番号5または配列番号27を有するタンパク質をコードする核酸分子またはそのフラグメント、および関連するタンパク質を、望ましくは分離体で提供する。本明細書で使用する「核酸」は、上記に定義したようにペプチドをコードするRNAまたはDNAと定義され、あるいは前記ペプチドをコードする核酸配列に相補的であり、または前記核酸とハイブリッド形成して適切で厳重な条件下で安定した結合を維持し、またはペプチド配列でポリペプチドを少なくとも75%の配列同一性、望ましくは少なくとも80%、さらに望ましくは少なくとも85%の配列同一性でコードするRNAまたはDNAである。特に企図しているのはゲノムDNA、cDNA、mRNA、およびアンチセンス分子、並びに代替となる主要素をベースにした核酸、または自然にもしくは合成により誘導された代替塩基をベースにした核酸である。【0039】「厳重な条件」とは、(1)例えば50(Cで0.015M塩化ナトリウム、0.0015Msodium titrate、0.1%のSDSのような洗浄への低イオン強度と高温の使用、または(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドのような変性剤、例えばウシ血清アルブミンと50%(vol/vol)ホルムアミド、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、pH6.5で50mMのリン酸ナトリウム緩衝液と塩化ナトリウム750mM、クエン酸ナトリウム75mMを42(Cで使用するような条件である。その他の例としては、0.2XのSSCおよび0.1%SDS中で42(Cで洗浄し、50%ホルムアミド、5XのSSC(0.75M塩化ナトリウム、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5Xのデンハート液、超音波処理をしたサケ精子DNA(50(g/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸を42(Cで使用するような条件がある。熟練した技術者は厳重な条件を容易かつ適切に確定・変更して、明確で検出可能なハイブリダイゼーション信号を得ることができる。【0040】本明細書で使用する核酸分子は、核酸源から他のポリペプチドをコードする不純物核酸から核酸分子が実質的に分離される場合には「分離した」と言われる。【0041】本発明では、さらにBBI核酸コード配列のフラグメントを提供する。本明細書で使用されているBBI核酸コード配列のフラグメントは全タンパク質コード配列を切断したものを指す。フラグメントの大きさは使用目的により決定される。例えば、タンパク質の活性部分をコードするためにフラグメントが選択された場は、そのフラグメントにはタンパク質の機能領域をコードするに十分な大きさが必要である。核酸のプローブすなわちPCRプライマーとしてフラグメントを使用する場合には、フラグメントの長さとして探索/準備刺激中に偽陽性が比較的少数になるような長さを選択する。【0042】本発明の核酸分子フラグメント(すなわち合成オリゴヌクレオチド)は、ポリメラーゼ連結反応(PCR)のプローブすなわち特異的プライマーとして使用され、あるいは本発明の遺伝子配列をコードするタンパク質の合成に使用されるが、Matteucciらの「ホスホトリエステル法」J. Am. Chem. soc 103:3185-91 (1981)、または自動合成法を用いて化学的技術により容易に合成することができる。さらに、遺伝子の様々な分子セグメントを定義するオリゴヌクレオチド群を合成した後にオリゴヌクレオチドを連結反応させて完全に修飾された遺伝子を構築する等の周知の方法でより大きなDNAセグメントを容易に作成することができる。【0043】本発明のBBI核酸分子は、診断用およびプローブ用に検出可能な標識を含むようさらに修飾される。本技術分野ではこうした種々の標識が知られており、本明細書に記載のコード分子で容易に利用できる。適した標識としてはビオチン、放射標識をしたヌクレオチド等があるがこれだけに限定するものではない。熟練した技術者は、本技術分野で知られた標識のいずれかを使用して標識されたコード核酸分子を得ることができる。【0044】翻訳の間に行われるタンパク質配列に組み込まれたアミノ酸を削除、付加、または変更することによる一次構造の修飾は、タンパク質活性を破壊することなく行うことができる。こうした置換またはその他の変化の結果、タンパク質は核酸によりコードされたアミノ酸配列を有し、本発明で企図した領域に落ち着く。【0045】 C. 他の関連する核酸分子の分離 上述のような配列番号4または配列番号26を有するヒト核酸分子の同定により、熟練した技術者は本明細書に記載したヒト配列に加えてマトリプターゼファミリーの他のメンバーをコードする核酸分子の単離ができるようになる。さらに現在明らかにされている核酸分子により、熟練した技術者は配列番号5および配列番号27を有する公開されたタンパク質に加えてタンパク質マトリプターゼファミリーの他のメンバーをコードする核酸分子を単離できるようになる。【0046】 熟練した技術者は、基本的に、適切な細胞から作成された発現ライブラリをスクリーニングするための抗体プローブ産生用に配列番号5または配列番号27のアミノ酸配列を容易に使用することができる。典型的な例では、精製タンパク質(下記に記述のように)またはモノクロナール抗体で免疫化されたウサギのような哺乳類からのポリクロナール抗血清は、哺乳類cDNAまたはλgtllライブラリ等のゲノム発現ライブラリのプローブに使用して、タンパク質ファミリーのその他のメンバーの適切なコード配列を得ることができる。クローン化cDNA配列は融合タンパク質として発現される場合があり、それ自体のコントロール配列を用いて直接発現させたり、または酵素の発現に使用される特定の宿主に適切な調節配列を用いて構築することにより発現させる場合がある。【0047】あるいは、本明細書に記載のコード配列の1部は合成が可能で、哺乳動物からタンパク質ファミリーのメンバーをコードするDNAを回収するプローブとして使用される。好ましくは約18〜20以上のヌクレオチドを含むオリゴマー(約6〜7のひと配列アミノ酸をコードする)を作成し、ゲノムDNAまたはcDNAライブラリのスクリーニングに使用して、厳重な条件すなわち不適当な偽陽性を排除するに十分な厳重な条件下でハイブリダイゼーションを行う。【0048】さらに、ポリメラーゼ連結反応(PCR)でコード核酸分子を選択的にクローン化する際に使用する1対のオリゴヌクレオチドプライマーを作成することができる。こうしたPCRプライマーを使用するためのPCR変性/アニール/延長サイクルは本技術分野でよく知られており、その他のコード核酸分子を分離する際に容易に適応することができる。【0049】D. 核酸分子を含むrDNA分子本発明では、さらに、コード配列を含む組換えDNE分子(rDNAs)を提供する。本明細書で使用するrDNA分子は、in situで分子操作に供したDNA分子である。rDNA分子の産生法は本技術分野でよく知られており、例えばSambrookら(1989)を参照されたい。好ましいrDNA分子では、コードDNA配列が発現調節配列および/またはベクター配列に操作しやすく連結している。【0050】本発明のマトリプターゼコード配列に操作しやすく連結されるベクターおよび/または発現調節配列の選択は、本技術分野で周知のとおり、タンパク質の発現等の要求する機能特性、および形質転換される宿主細胞に直接的に依存している。本発明で企図するベクターは少なくとも複製および宿主染色体への挿入に向かわせることができ、rDNA分子に含まれる構造遺伝子の発現もできれば望ましい。【0051】操作しやすく連結したタンパク質コード配列の発現調節に使用される発現調節領域が本技術分野で知られており、これには誘導プロモーター、構成プロモーター、分泌信号、およびその他の調節領域があるが、これらに限定されるものではない。誘導プロモーターは、宿主細胞の培地で栄養素に対してよく反応するように、容易に調節されることが望ましい。【0052】1つの実施態様では、コードした核酸分子を含むベクターには、原核生物レプリコン、すなわち自律複製を方向付け、細菌の宿主細胞等、形質転換される原核宿主細胞において染色体外で組換えDNA分子を維持する性能を持つDNA配列が含まれる。このようなレプリコンは本技術分野でよく知られている。さらに、原核生物レプリコンを含むベクターは、その発現により薬剤耐性のような検出可能なマーカーを与える遺伝子も含むと思われる。典型的な細菌の薬剤耐性遺伝子は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに耐性を与える遺伝子である。【0053】原核生物レプリコンを含むベクターには、さらに、大腸菌のような細菌宿主細胞でコード遺伝子配列の発現(転写および翻訳)を方向付けできる原核またはバクテリオファージプロモーターを含有させることができる。プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および転写の発生を可能にするDNA配列で形成された発現調節領域である。細菌宿主と適合性のあるプロモーター配列は、主として本発明のDNAセグメントの挿入に都合のよい制限部位を含むプラスミドベクターで供給される。こうしたベクタープラスミドの典型としては、Biorad Laboratories(カリフォルニア州リッチモンド)から入手可能なpUC8、pUC9、pBR322、pBR329、およびPharmacia(ニュージャージー州Piscataway)から入手可能なpPL、pKK223がある。【0054】真核細胞に適合する発現ベクター、望ましくは脊椎動物に適合する発現ベクターは、コード配列に含まれるrDNA分子の形成にも使用できる。真核細胞発現ベクターは当技術分野でよく知られており、市販製品から得ることができる。一般に、こうしたベクターは要求するDNAセグメントの挿入に都合のよい制限部位を含んで提供される。こうしたベクターの典型としては、pSVLおよびpKSV−10(Pharmacia)、pBPV−1/pML2d(International Biotechnologies, Inc.)、pTDT1(ATCC、#31255)、本明細書に記載のベクターpCDM8、および真核細胞発現ベクターのようなものがある。【0055】本発明のrDNA分子構築に使用される真核細胞発現ベクターには、さらに真核細胞に有効な選択可能なマーカー、望ましくは薬剤耐性選択マーカーを含める場合がある。望ましい薬剤耐性マーカーは、発現の結果、ネオマイシン耐性となる遺伝子、すなわちネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子である(Southern et al., J. Mol. Anal. Genet. 1:327-341 (1982))。別法としては、選択可能なマーカーを別のプラスミドに存在させることが可能で、2つのベクターが宿主細胞の同時形質移入により導入され、選択可能なマーカーに適切な薬剤中で培養することにより選択される。【0056】E. 外因的に供給されたコード核酸分子を含む宿主細胞本発明では、さらに、本発明のタンパク質をコードする核酸分子で形質転換された宿主細胞を提供する。宿主細胞は原核細胞、真核細胞のいずれでもよい。本発明のタンパク質の発現に有用な真核細胞は、その細胞株が細胞培養法に適合性があり、発現ベクターの増殖および遺伝子産生の発現に適合性がある限り、特に限定されない。望ましい真核宿主細胞は、酵母菌、昆虫および哺乳類の細胞で望ましくはマウス、ラット、サルまたはヒト細胞株由来の脊椎動物の細胞であるが、これらに限定されるものではない。望ましい真核宿主細胞には、ATCCからCCL61として入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL1658として入手可能なNIHスイスマウス胚性細胞NIH/3T3、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、および真核組織の培養細胞株(例えば乳房細胞株でないもの)などがある。【0057】本発明のタンパク質をコードするrDNA分子の発現には、どのような原核宿主でも使用できる。望ましい原核宿主は大腸菌である。【0058】本発明のrDNA分子に適切な細胞宿主の形質転換は、典型的には使用するベクターのタイプおよび使用する宿主系に依存する周知の方法で達成される。原核宿主細胞の形質転換に関しては、電気穿孔法および塩処理法が主に用いられるが、その例についてはCohen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69: 2110 (1972) およびManiatis et al.,「分子のクローニング:実験マニュアル」Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1982)を参照されたい。rDNAを含むベクターを有する脊椎動物細胞の形質転換に関しては、電気穿孔法、カチオン脂質または塩処理法が主に用いられるが、その例についてはGraham et al., Virol. 54: 536-9 (1973) およびWigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 1373-6 (1979) を参照されたい。【0059】うまく形質転換された細胞、すなわち本発明のrDNA分子を含む細胞は、選択可能なマーカーの選択等、よく知られた技術で確認することができる。例えば、本発明のrDNAを導入して得た細胞は、単コロニーを産生するようにクローン化することができる。こうしたコロニー由来の細胞は収集して溶解することが可能で、Southern, J. Mol. Biol. 98* 503-17 (1975) で述べられたような方法を用いてrDNAの存在をみるためにDNA含有量を調べたり、あるいはその細胞から産生したタンパク質を免疫法により評価することができる。【0060】F. rDNA分子を用いた組換えタンパク質の産生本発明では、さらに、本明細書に記載した核酸分子を使用して本発明のタンパク質(例:マトリプターゼ)を産生する方法を提供する。一般的に言えば、マトリプターゼタンパク質の組換え型産生は概して以下のステップで行われる:【0061】 最初に、配列番号4または26に示されている核酸分子、あるいは特にマトリプターゼヌクレオチドコード用の、マトリプターゼタンパク質のカルボキシ末端にあるセリンプロテアーゼ触媒ドメインまたはLDLドメイン等、本発明のタンパク質をコードする核酸分子を入手する。コード配列は、イントロンに妨害されないため、いずれの宿主においても、そのままで発現に適している。配列は真核細胞または原核細胞のような宿主細胞に形質移入される。真核宿主には哺乳類細胞(例:HEK293細胞、CHO細胞およびPAE−PDGF−R細胞)、および組換えバキュロウイルスを用いるSf9細胞のような昆虫細胞が含まれる。代わりに、マトリプターゼの1部のみをコードするフラグメントが単独に、あるいは融合タンパク質として発現する場合がある。例えば、セリンプロテアーゼドメインを含むマトリプターゼのC末端がGST−tagまたはHis−tag融合タンパク質として細菌に発現する場合がある。こうした融合タンパク質は、その後精製され、ポリクロナール抗体の生成に使用される。【0062】核酸分子は、次に、望ましくは上述のように適切な調節配列で操作しやすい連結に置かれ、タンパク質の読み枠を含む発現ユニットを形成する。発現ユニットは適した宿主の形質転換に使用され、形質転換された宿主を組換えタンパク質の産生が可能な条件下で培養する。組換えタンパク質を、培地または細胞から任意で分離するが、不純物が許容的である場合には、タンパク質の回収および精製の必要はないと思われる。【0063】前述の各ステップは様々な方法で行われる。例えば、ゲノムフラグメントから望ましいコード配列が得られると、それを直接適切な宿主に使用する。様々な宿主で操作可能な発現ベクターの構築は、上述のように適切なレプリコンおよび調節配列を使用することで達成される。調節配列、発現ベクター、および形質転換法は、遺伝子の発現に使用される宿主細胞の型によって決まるが、これについては先に詳細を論じている。適した制限部位を正常に得られない場合には、これらのベクターに挿入する削除可能な遺伝子を提供すべくコード配列の末端にこれを追加する。熟練した技術者は、組換えタンパク質を産生するために本発明の核酸分子とともに使用する当技術分野で知られたいずれの宿主/発現システムも容易に取り入れることができる【0064】 G. 結合パートナーの同定法 もう1つの態様として、本発明は、マトリプターゼタンパク質の結合パートナーの単離・同定に使用する方法を提供する。詳細には、本発明のタンパク質と、可能性のある結合パートナーまたは細胞の抽出物もしくはフラクションとを、本発明のタンパク質と可能性のある結合パートナーとが会合可能な条件下で混合する。混合後、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または本発明のタンパク質と会合したその他の分子を混合物から分離する。その後、本発明のタンパク質に結合する結合パートナーを除去して、さらに分析する。結合パートナーを同定し単離するために、全てのタンパク質、例えば配列番号5または配列番号27の明らかになっているタンパク質全てを使用する。代わりに、タンパク質フラグメントを使用することもできる。【0065】ここでは、細胞抽出物は、溶解または破砕した細胞から作製された試料または分画をいう。【0066】種々の方法を用いて細胞抽出物を得ることができる。細胞は、物理的または化学的破砕法のいずれかを用いて破砕できる。物理的破砕法の例としては、音波破砕や機械によるせん断などがあるが、これらに限られてはいない。化学的溶解法の例としては、界面活性剤による溶解や酵素による溶解などがあるが、これらに限定されない。熟練した技術者は、本法に用いる抽出物を得るために細胞抽出物を調製する方法を容易に改変できる。【0067】ひとたび細胞の抽出物を調製すれば、その細胞抽出物を本発明のタンパク質と結合相手との結合が起こりうる条件下で、本発明のタンパク質と混合する。種々の条件を用いることができるが、最も望ましい条件はヒトの細胞の細胞質において認められる条件に非常に類似した条件である。用いる細胞抽出物の容量オスモル濃度、pH、温度、濃度等の条件は、本タンパク質と結合相手の結合を至適にするよう変更できる。【0068】適切な条件下で混合した後、結合した複合体を混合物から分離する。種々の手法を用いて混合物を分離することができる。例えば、本発明のタンパク質に特異的な抗体を用いて結合相手との複合体を免疫沈降させることができる。その他に、クロマトグラフィーや密度/沈降物遠心分離法などの標準的な化学分離法を用いることができる。【0069】抽出物中の結合していない細胞構成物を除去した後、一般的な方法を用いて複合体から結合相手を分離することができる。たとえば、混合物の塩濃度またはpHを変えることによって分離することができる。【0070】混合した抽出物からの結合している結合相手との複合体の分離を補助するために、本発明のタンパク質を固形支持体上に固定化することができる。たとえば、本タンパク質をニトロセルロース基質またはアクリルビーズに付着させることができる。本タンパク質またはそのフラグメントを固形支持体へ付着させると、ペプチド/結合相手複合体を抽出物中に認められる他の構成物から分離するために役立つ。同定される結合相手は、単一のタンパク質または2つ以上のタンパク質からなる複合体のいずれかである。【0071】または、本発明の核酸分子をyeast two-hybrid systemにおいて用いることもできる。 yeast two-hybrid systemは、他のタンパク質の相手との複合体を同定するために用いられているが、ここに述べた核酸分子を用いるために容易に適応させることが出来る。【0072】マトリプターゼの望ましいin vitro結合試験では、少なくとも、1つ以上の結合標的または基質の候補に対するマトリプターゼのセリン触媒ドメインを含んだポリペプチドと、1つ以上の結合標的または基質の候補との混合物を形成する。その混合物を適切な条件下でインキュベートした後、マトリプターゼまたは触媒ドメインを含むマトリプターゼのポリペプチドフラグメントが基質候補と結合するかどうかを調べる。細胞を含まない結合試験では、通常、構成要素の1つが標識となるか、または標識と結合している。その標識によって放射能、発光、光学濃度、電子密度等の直接検出、またはエピトープ標識、酵素等の間接検出ができる。標識の性質を利用して標識を検出するため、および他の試験構成要素を検出するために、種々の方法を用いてもよい。たとえば、標識は固形基質に結合させて検出してもよく、または、標識を含む結合した複合体の一部を固形基質から分離した後に標識を検出してもよい。【0073】 H. マトリプターゼをコードする核酸の発現を調節するエイジェントの同定法 本発明は、配列番号5または配列番号27のアミノ酸配列を有するタンパク質等の本発明のタンパク質をコードする核酸の発現を調節するエイジェントを同定する方法も包含する。これらの試験では、本発明の核酸の発現レベルの変化のモニタリングを行うために利用できるあらゆる方法を用いても良い。ここでは、エイジェントは、たとえば配列番号5または配列番号27の配列を有するタンパク質をコードする核酸等の本発明の核酸の発現を調節するものを言うが、ただし、細胞内の核酸の発現を上方または下方に制御できるものとする。【0074】 ある測定フォーマットにおいては、マトリプターゼまたは配列番号4または26のオープンリーディングフレームと何らかの測定可能な融合相手との間のレポーター遺伝子融合を含む細胞株を作製しても良い。発光飛翔昆虫のルシフェラーゼ遺伝子やクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子等の多くの測定可能な融合相手が知られており、容易に入手できる(Alam et al., Anal. Biochem. 188: 245-54(1990))。次に、レポーター遺伝子融合を含んだ細胞株を適切な条件下で適切な時間検査すべきエイジェントに曝露させる。そのエイジェントに曝露させた検体と対照の検体の間のレポーター遺伝子発現の差によって、配列番号5または配列番号27の配列を有するタンパク質または関連のタンパク質をコードする核酸の発現を調節するエイジェントを同定する。【0075】 別の測定フォーマットを用いて、配列番号5または配列番号27を有するタンパク質等の本発明のタンパク質をコードする核酸の発現を調節するエイジェントの能力のモニタリングを行ってもよい。たとえば、本発明の核酸とのハイブリダイゼーションによってmRNA発現を直接モニタリングしてもよい。細胞株を適切な条件下で適切な時間検査すべきエイジェントに曝露させ、トータルRNAまたはmRNAをSambrookらが発表した方法(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL., 2nd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)等の標準法によって単離する。同エイジェントに曝露させた細胞と対照の細胞の間のRNA発現レベルの差を検出するためのプローブは、本発明の核酸から調製してもよい。非常に厳密な条件下で標的の核酸のみとハイブリダイズするプローブを設計することが望ましいが、不可欠ではない。非常に厳密な条件下では相補性の高い核酸ハイブリッドのみが形成される。したがって、測定条件の厳密さは、ハイブリッドを形成するために2種類の核酸鎖間に存在すべき相補性の量を決定する。プローブ:標的ハイブリッドと潜在的プローブ:非標的ハイブリッドの間の安定性の差を最大とするような厳密さを選択すべきである。【0076】プローブは、技術的に既知の方法によって本発明の核酸から設計してもよい。たとえば、プローブのG+C量とプローブの長さは、プローブの標的配列への結合に影響を及ぼしうる。プローブの特異性を最適化する方法は一般的に利用できるので、Sambrook et al.(1989)またはAusubel et al.(CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY. Greene Publishing Co., NY, 1995)等を参照のこと。【0077】 ハイブリダイゼーションの条件は、 Sambrook et al.(1989)およびAusubel et al.(1995)が示した方法等の既知の方法を用いて、各プローブについて必要なように変更する。細胞のトータルRNAまたはポリA RNAに富んだRNAのハイブリダイゼーションは、何らかの利用できるフォーマットで実施することができる。たとえば、細胞のトータルRNAまたはポリA RNAに富んだRNAは固形支持体に付着させ、固形支持体をプローブが特異的にハイブリダイズする条件下で、本発明の配列の少なくとも1つまたはその一部を含む少なくとも1つのプローブに曝露させることができる。または、本発明の配列の少なくとも1つまたはその一部を含む核酸フラグメントは、多孔性のガラスウエファース等の固形支持体に付着させることもできる。次に、付着した配列が特異的にハイブリダイズする条件下で、ガラスウエファースを検体の細胞トータルRNAまたはポリA RNAに曝露させることができる。これらのガラスウエファースとハイブリダイゼーション法は幅広く利用することができ、例としてはBeattieの方法(WO95/11755)等がある。所定のプローブが未処理細胞集団およびエイジェントに曝露させた細胞集団からのRNA検体と特異的にハイブリダイズする能力を検査することによって、 配列番号5または配列番号27の配列を有するタンパク質をコードする核酸の発現を上方または下方に制御するエイジェントが同定される。【0078】I. マトリプターゼの少なくとも1つの活性を調節するエイジェントの同定法 本発明の他の態様として、配列番号5または配列番号27のアミノ酸配列を有するタンパク質等の本発明のタンパク質の少なくとも1つの活性を調節するエイジェントの同定法が提供される。これらの方法または測定では、求められている活性のモニタリングまたは検出を行うあらゆる方法を用いてよい。【0079】1つのフォーマットにおいては、検査すべきエイジェントに曝露させていない対照の細胞集団と比較した時の曝露させた細胞集団における本発明のタンパク質の相対量を測定してもよい(たとえば、乳癌細胞株)。このフォーマットにおいては、特異抗原等のプローブを用いて、異なる細胞集団中のタンパク質の発現の差をモニタリングする。細胞株または細胞集団を検査すべきエイジェントに適切な条件下で適切な時間曝露させる。エイジェントに曝露させた細胞株または細胞集団、および対照の曝露させていない細胞株または細胞集団から、細胞溶解物を調製する。次にプローブを用いて細胞溶解物の分析を行う。【0080】たとえば、マトリプターゼのNおよびC末端フラグメントは細菌において発現し、これらのフラグメントに結合するタンパク質の探索に用いることができる。 マトリプターゼのNまたはC末端領域に対するHis標識またはGST融合等の融合タンパク質をマトリプターゼフラグメントの基質として用いるために作製することができる。これらの融合タンパク質は、グルタチオン−セファロースビーズ等に付着させ、その後細胞溶解物を用いて探査を行うことができる。溶解する前に細胞をマトリプターゼまたはマトリプターゼ上のドメインと相互作用するタンパク質を調節する可能性のある候補エイジェントで処理してもよい。融合タンパクに結合している細胞溶解物タンパク質は、SDS-PAGEによって分離することができ、技術的に既知のタンパクのシークエンシングまたは質量分光法によって単離および同定できる。【0081】抗体プローブは、本発明のペプチド、ポリペプチド、タンパク質が充分な長さであるならば(マトリプターゼタンパク質の4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40もしくはそれ以上連続したアミノ酸)、それらを用いて適切な免疫プロトコールで適切な哺乳類の宿主に免疫することによって作製するが、免疫原性を強化する必要がある場合は、適当な担体と結合させる。ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、または他の担体タンパク質等の担体との免疫原性結合体を作製する方法は、技術的によく知られている。カルボジイミド試薬等を用いた直接結合が効果的な場合もあれば、ハプテンへ付着しやすくするためにPierce Chemical Co., Rockford, IIによって供給されている結合試薬等の結合試薬が必要な場合もある。ハプテンペプチドは、たとえば担体への結合を容易にするため、Cys残基でアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかを延長させるか、またはシステイン残基をちりばめることができる。一般的に免疫抗原の投与は、一般に知られている技術によって、適切な時間をかけ適切なアジュバントを用いて注入することによって実施する。免疫スケジュール中は、抗体形成が充分であるかどうかを調べるために抗体価をチェックする。【0082】抗ペプチド抗体は、たとえばマトリプターゼのカルボキシ末端のアミノ酸に相当する合成ペプチドを用いて作製することが可能である。合成ペプチドは、1−3アミノ酸程度の短いものでも可能であるが、少なくとも4アミノ酸残基以上の長さが望ましい。それらのペプチドは、標準法を用いてKLHと結合させることができ、ウサギまたは有蹄類などの動物に免疫することができる。その後、抗マトリプターゼペプチドポリクローナル抗体は、たとえば共有結合したペプチドを含むActigelビーズを用いて精製することが可能である。【0083】 この方法で作製したポリクローナル抗血清は、いくつかの用途においては充分であるが、医薬品については、モノクローナル抗体の使用が望ましい。Kohler et al.(Nature 256: 495-7(1975))の標準法、または一般的に知られているリンパ球または脾臓細胞の不死化に効果のある変法を用いて、望ましいモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株を作製しても良い。望ましいモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株は、ペプチドハプテンまたはポリペプチドまたはタンパク質を抗原として用いたイムノアッセイによって選別する。望ましい抗体を分泌する適当な不死化細胞培養が同定された時、その細胞はin vitroでの培養またはin vivo腹水中で維持できる。マトリプターゼの触媒ドメイン(たとえば、配列番号5のアミノ酸432-683)を認識するモノクローナル抗体については特に興味が持たれる。【0084】また、コンフォメーションエピトープを認識するモノクローナル抗体を作製するためにマトリプターゼのチモーゲンまたは2本鎖型マトリプターゼを用いることができる。ペプチド指向性モノクローナル抗体に関しては、チモーゲンの2本鎖型マトリプターゼへの活性化を遮断できる抗Clr/Clsドメインモノクローナル抗体を産生させるために、Clr/Clsドメインからのペプチドを用いることができる。このドメインは、1本鎖または2本鎖型のマトリプターゼ上のこれらの選択されたドメインに結合することによってマトリプターゼの活性を変化させるかもしくはその活性化を阻止する他の非抗体化合物に対する基質ともなりうる。【0085】次に、望ましいモノクローナル抗体を培養上清または腹水上清から回収する。免疫学的に重要な部分を含むモノクローナルまたはポリクローナル抗血清のフラグメントをアンタゴニストおよび無傷抗体として使用することができる。F(ab')2のFab、Fab'フラグメントなどの免疫学的に活性なフラグメントの使用が望ましい場合は多く、これらのフラグメントは一般的に完全なイムノグロブリンより免疫原性が低いので、特に臨床においては望ましい。【0086】抗体またはフラグメントは、最近の技術を用いて組換えの手法によって作製してもよい。目的とする受容体領域に特異的に結合する領域は、複数種を起源とするキメラを用いて作製することもできる。【0087】上記の方法で検査するエイジェントは、無作為に選択することも、合理的に選択または設計することもできる。ここでは、本発明のタンパク質の単独でのもしくは関係する基質や結合相手等を伴った結合に関与する特異的配列を考慮することなく無作為にエイジェントを選択した時、エイジェントは無作為に選択したと言う。無作為に選択されたエイジェントの例には、化学ライブラリーまたはペプチド結合ライブラリーの使用、もしくは生物の増殖ブロスがあげられる。【0088】ここでは、エイジェントの作用と共に標的部位の配列および/またはそのコンフォメーションを考慮に入れた無作為ではない方法でエイジェントを選択した時、エイジェントは合理的に選択または設計したという。例として示したように、セリンプロテアーゼに対する結合部位 およびSEQ ID NO: 3またはSEQ ID NO: 4を有するタンパク質中の(触媒)部位を提唱している。エイジェントは、これらの部位を構成するペプチド配列を用いることによって合理的に選択または設計することができる。たとえば、ペプチドエイジェントを合理的に選択する時には、そのアミノ酸配列がATPまたはカルモジュリン結合部位またはドメインと同一のペプチドとすることが可能である。【0089】本発明のエイジェントは、例としてペプチド、小分子、炭水化物である可能性がある。熟練した技術者は、本発明のエイジェントの構造上の特性に関しては限界がないことを容易に認識できる。【0090】本発明のペプチドエイジェントは、技術的に既知の標準の固相(または液相)ペプチド合成法を用いて作製することができる。さらに、これらのペプチドをコードするDNAは、市販のオリゴヌクレオチド合成装置を用いて合成でき、標準的な組換え体作製システムを用いて組換え法により生産できる。遺伝子コードされていないアミノ酸を含めるべき場合は、固相ペプチド合成を用いた生産が必要となる。【0091】本発明のもう1種類のエイジェントは、本発明のタンパク質の重要な位置と免疫反応する抗体である。抗体エイジェントは、その抗体の標的となる目的のタンパク質の部分を抗原領域として含むペプチドで適切な哺乳類を免疫することによって得られる。【0092】J. 医薬品本発明は、さらに、医薬品として製剤化される細胞中のマトリプターゼ活性を調節するエイジェントを含む。本発明の医薬品には、経口剤、座剤、点鼻剤、局所(バッカルおよび舌下を含む)投与剤、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内を含む)投与剤として適したものが含まれる。製剤は、錠剤、徐放カプセル、リポソームなどの単位剤型として便宜を図られるものでもよく、良く知られている薬剤学の技術を用いる何らかの方法によって調剤されるものでもよい。例としてREMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES(18th ed., Mack Publ. Co. 1990)を参照のこと。【0093】このような調剤法は、担体などの投与すべき分子成分と会合させる段階を含み、それによって1つ以上の添加物が加えられる。一般的に配合は、液体担体またはリポソームまたは精巧に分配された固体担体またはこれらの複数のものと活性成分を均一かつ密接に会合させることによって行い、その後必要に応じて製品を形作る。【0094】経口投与に適した本発明の構成要素は、各々が予め決定した量の活性成分を含むカプセル剤、カシェ剤、錠剤等の個別単位としたもの、粉剤または顆粒剤としたもの、水性液体または非水性液体の液剤または懸濁剤としたもの、水中油型液体乳剤または油中水型液体乳剤またはリポソームに封入したもの、巨丸剤としたものなどでもよい。【0095】錠剤は、適宜に1つ以上の添加物を加えて圧縮または成形して作製する。圧縮錠剤は、粉末または顆粒等の流動性の活性成分を結合剤、滑沢剤、不活性の希釈剤、防腐剤、表面活性剤、分散剤と適宜混合して適切な機械中で圧縮して作製することができる。すりこみ錠は、不活性の液体希釈液で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械中で成形して作製することができる。錠剤は、適宜コートしたり刻み目をつけてもよく、錠剤中の活性成分の放出を緩徐にしたもしくは調節した製剤としてもよい。【0096】局所投与に適した複合製剤には、香料を添加した通常ショ糖およびアラビアゴムまたはトラガントである基剤に配合した成分からなる薬用ドロップ、およびゼラチンおよびグリセリン、あるいはショ糖およびアラビアゴムなどの不活性基剤中に配合した活性成分よりなるトローチが含まれる。【0097】非経口投与に適した複合製剤には、投与を意図した患者の血液と等張な処方とする抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および溶質を含有することがある水性および非水性無菌注射液、および懸濁剤と希釈剤を含んでも良い水性および非水性無菌懸濁液を含んでいる。当該処方は密封したアンプルおよびバイアルなどの1回用量あるいは複数回投与容器で提供しても良く、また使用直前に注射用蒸留水などの無菌溶媒を添加するだけの凍結乾燥状態で保存しても良い。即製の注射液および懸濁液は無菌の粉末、顆粒および錠剤によって調製しても良い。【0098】当該部位に適用するために、当該複合製剤は局所に適用されることが多い。注射、カテーテルの使用、トロカール、放射物、プルロニックゲル、ステント、持続薬物放出ポリマー、あるいは体内アクセスにより薬物を供給する他の器具などの当該部位に対象複合製剤を供給するための様々な方法を用いることが可能である。【0099】所与の治療法において複合製剤の現時点で好ましい量が個々に使用される形態、個々に処方された複合製剤、投与形態、個々の投与部位、当該患者の体重、全身の健康状態、性別など、治療を受けている個々の適応症など、および担当医あるいは獣医師を含む当業者により認識されるような要因に応じて変化することは評価されると思われる。所与の投与プロトコルに最適な投与速度は、当業者が従来の用量決定検査を用いることで容易に決定することが可能である。【0100】抗体. 本発明の抗体およびその免疫原性画分は、前記疾患のいずれかの状態を予防あるいは治療するために治療上有効である濃度で投与する。この目的を達成するために技術上周知の許容できる様々な賦形剤を用いて当該抗体を処方してもよい。一般に、当該抗体は静脈内あるいは腹腔内注射で投与するのが望ましい。この投与を実現する方法は普通の当業者に周知である。局所的あるいは経口的に投与できる、あるいは粘膜を通して送達することが可能な複合製剤を得ることも可能である。【0101】患者に投与する前に、当該抗体にフォーミュラント(佐剤あるいは添加物)を追加してもよい。液剤処方が望ましい。例えばこれらのフォーミュラントには油、ポリマー、ビタミン、炭水化物、アミノ酸、塩類、緩衝剤、アルブミン、界面活性剤、あるいは増量剤を含めても良い。望ましい炭水化物には単糖、二糖、あるいは多糖、もしくは水溶グルカン類などの糖類あるいは糖アルコール類が含まれる。糖あるいはグルカンには果糖、デキストロース、乳糖、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、麦芽糖、ショ糖、デキストラン、プルラン、デキストリン、α-およびβ-シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプンおよびカルボキシメチルセルロース、あるいはその混合物を含めることが可能である。ショ糖が最も好ましい。「糖アルコール」は-OH基を有するC4〜C8炭化水素と定義され、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、グリセロール、およびアラビトールを含んでいる。マンニトールが最も好ましい。前述のこれらの糖類あるいは糖アルコール類は単独で使用しても配合して使用してもよい。糖あるいは糖アルコールが水性製剤に溶解する限り一定した使用限度はない。糖あるいは糖アルコールの濃度は1.0 w/v%〜7.0 w/v%の間であることが好ましく、2.0〜6.0 w/v%であればより好ましい。好ましいアミノ酸には左旋型(L)カルニチン、アルギニンおよびベタインが含まれる。しかし他のアミノ酸を添加してもよい。好ましいポリマーには平均で2,000〜3,000の間の分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)、あるいは平均で3,000〜5,000の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。また凍結乾燥前あるいは再溶解後の溶液のpH変化を最小化することを目的として、当該複合製剤に緩衝剤を用いることも好ましい。大部分の生理学的緩衝剤はいずれも使用できるが、クエン酸、リン酸、コハク酸、およびグルタミン酸緩衝剤、あるいはこれらの混合物が好ましい。クエン酸緩衝剤が最も好ましい。濃度は0.01〜0.3モルが好ましい。処方に添加可能な界面活性剤はEP特許出願No.EP 0 270 799およびEP 0 268 110に示されている。【0102】さらに、抗体は血流中の半減期を延長するためにポリマーとの共有結合により化学的に修飾することが可能である。好ましいポリマー、およびペプチドに結合させる方法はU.S.Pat.Nos.4,766,106;4,179,337;4,495,285;4,609,546に示されている。好ましいポリマーはポリオキシエチレン化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは室温で水に可溶であり、その一般式はR(O−CH2−CH2)nO−R、ただしRは水素あるいはアルキルまたはアルカノール基などの保護基が可能である。保護基は炭素数1〜8を有することがが好ましく、メチル基であればより好ましい。記号「n」は正の整数であり、1〜1,000であることが好ましく、2〜500であればより好ましい。好ましいPEGの分子量の範囲は1,000〜40,000であり、2,000〜20,000であればより好ましく、3,000〜12,000が最も好ましい。PEGは1個以上の水素基を有することが好ましい。末端が水素基であればより好ましい。活性化するのが好ましいのはこの水素基である。しかし、本発明においてPEG/抗体の共有結合を達成するために反応性原子団の種類および数を変化させて良いことは理解されるであろう。【0103】水溶性ポリオキシエチレン化ポリマーも本発明において有用である。これらはポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)などを含む。POGが好ましい。その理由の一つは、ポリオキシエチレン化グリセロールのグリセロール骨格が、動物およびヒトなどにおいて自然に生成するモノ−、ジ−、トリグリセリドと同じ骨格であるからである。ゆえに、この分岐は必ずしも体内で異物と見られることはないであろう。好ましいPOGの分子量の範囲はPEGと同じである。【0104】血流中の半減期を延長するもう一つの薬物送達システムはリポソームである。リポソーム送達システムの調製法についてはGabizon et al., Cancer Res. 42: 4734-9(1982); Szoka et al., Annu.Rev.Biophys.Bioeng.9: 467-508(1980); Szoka et al., Meth.Enzymol. 149: 143-7(1987);およびLangner et al., Pol. J. Pharmacol. 51: 211-22 (1999)で論じられている。その他の薬物送達システムは技術上周知である。【0105】液状複合製剤の調整後は、分解を防止して無菌性を保つために凍結乾燥することが望ましい。液状複合製剤の凍結乾燥法は普通の当業者に周知である。当該複合製剤は追加的な成分を含むことができる滅菌溶解液(リンゲル液、蒸留水、あるいは滅菌食塩水)に使用直前に再溶解しても良い。当該複合製剤は再溶解後に当業者に周知の方法を用いて患者に投与することが好ましい。【0106】前述のように本発明の抗体および複合製剤は、先に定義した疾患状態のうちいずれかの予防あるいは治療を目的としてヒト患者を治療すること目的として用いることが好ましい。好ましい投与経路は非経口投与である。非経口投与においては本発明の複合性剤は溶液、懸濁液あるいは乳濁液などの1回用量注射薬の形態で、薬剤学的に許容できる非経口投与溶媒と共に処方されるであろう。こうした溶媒は本質的に無毒かつ治療効果を有さない。これらの溶媒の例としては生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液がある。不揮発製油およびエチルオレイン酸などの非水性溶媒を使用してもよい。好ましい溶媒は5%デキストロース生理食塩水溶液である。当該溶媒は緩衝剤および防腐剤などの等張性および化学的安定性を高める物質などの添加物を少量含んでも良い。【0107】用量および投与形態は個人により異なると思われる。当該複合製剤は通常抗体の用量が1 μg/kg〜20 mg/kgの間となるように投与し、20 μg/kg〜10 mg/kgであればより好ましく、1〜7 mg/kgが最も好ましい。ボーラス投与の4〜6時間後に血流中の濃度が10〜20倍に上昇するようなボーラス投与が望ましい。ボーラス投与後は連続点滴を用いてもよい。この場合、抗体の点滴用量は5〜20 μg/kg/分としても良く、7〜15 μg/kg/分であればより好ましい。【0108】同等に好ましい実地態様によると、本発明は上述の疾患状態のいずれかの診断あるいはin vivo撮影の手段を用意することを目的としたモノクローナル抗体あるいはその誘導体あるいはペプチドの使用に関する。【0109】好ましい実地態様によると、抗体、断片、類似物、およびそれらの誘導体は131I,125I、などのハロゲン放射性同位体、金属放射性同位体である67Cu、111In、67Ga、99Te、131I、123I、188Re、186Re、および90Yなど、アフィニティラベル(ビオチン、アビジンなど)、蛍光標識、常磁性原子などを用いて標識して検出可能とし、感染あるいは炎症部位を確定することを目的として患者に提供する。こうした標識化を実施する方法は当業者に周知である。画像診断における抗体の臨床適用についての総説はLaurino et al., Ann.Clin.Lab.Sci.29:158-66(1999); Unger et al., Invest.Radiol.20: 693-700(1985);およびKhaw et al., Science 209:295-7(1989)に発表されている。【0110】標識して検出可能としたこのような抗体による病巣の検出により、転移性疾患、腫瘍の発症、あるいは転移の可能性のある前悪性腫瘍性病変を示すことができる。実地態様の一つにおいては、この癌検査は組織標本を採取し(生検など)、標識化して検出可能とした抗体の存在下でこのような標本をインキュベーションして実施する。好ましい実施態様では、この方法は磁気共鳴画像撮影(MRI)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)あるいは蛍光撮影法および体外検出法などを用いて非侵襲的な方法で実施する。こうした診断検査は臓器移植のレシピエントにおける早期の組織拒否反応が考えられる徴候の監視に使用してもよい。こうした分析は個人の慢性関節リウマチあるいはその他の慢性炎症性疾患の傾向を判定するために実施してもよい。【0111】もう一つの実施様体によると、アテローム硬化症の診断およびin vivo撮影法の準備のために先に定義したように、本発明はモノクローナル抗体、あるいはその誘導体の使用に関する。【0112】K. マトリプターゼと結合する化合物の同定を目的とした分子モデリングマトリプターゼ調節化合物および選択的マトリプターゼ阻害物質を同定する方法の一つは、分子モデリングを用いるものである。分子モデリングはマトリプターゼの単鎖あるいは二本鎖のX線結晶構造を用いて、あるいはタンパク質配列により得られる立体配座の情報に基づいて実施することが可能である。具体的には、マトリプターゼが他のトリプシン様分子と相同な配列を有しているため、他の分子(具体的にはトリプシン)の結晶構造をマトリプターゼのドメインのモデリングに使用することが可能である。さらに阻害物質の標的となる個々の部位を分子モデリングプログラムを用いて研究することが可能である。好ましい部位には、(1)マトリプターゼ上のClr/Cls 二量体化ドメイン、(2)結合して二本鎖形マトリプターゼを形成する単鎖形マトリプターゼ上の活性化部位、および(3)マトリプターゼの触媒ドメインが含まれるが、これに限定されない。【0113】分子は、マトリプターゼ上の好ましい部位の一つに嵌合可能であるか否かを判定することを目的とした分子モデリングプログラムにより試験することが可能である。少なくとも分子モデリングにより分子が好ましいドメインに結合することが確認されれば、ALCHEMY-III(Tripos Associates Inc.; St.Louis, Mo.)と呼ばれるプログラムなどの三次元分子モデリングコンピュータソフトウェアの補助によって当該分子を新たに便宜的にデザインすることが可能である。ペプチド化合物の場合、現在では磁気共鳴スペクトル測定法および分子モデリングなどの手段を用い、既知の抗原、抗体あるいは受容体と結合もしくは既知の結合配列あるいはリガンドに類似させた個々のペプチドのデザインおよび合成を可能にしながら、個々のアミノ酸残基の受容体あるいは抗原結合に対する影響および相対的な重要性を判定することが可能である。【0114】生物学的機能ドメイン. 当該構成体の生物学的機能ドメインは、当該の生物学的標的と結合する当該分子内の構造体であり、単鎖マトリプターゼからマトリプターゼ活性体である二本鎖マトリプターゼ形成への活性化阻害、あるいはマトリプターゼ活性体である二本鎖体の正常基質との結合を阻害してもよい。受容体が生物学的標的とならないリガンドおよび受容体対を形成することが可能なペプチド類については、特に生物学的系に限定されていなければ生物学的機能ドメインに関する議論を適応する。ペプチドの生物学的機能ドメインには、ドメインがマトリプターゼの活性化部位、あるいは活性状態のマトリプターゼである二本鎖体のタンパク質分解活性化部位などと立体的に結合するように配列した様々なアミノ酸側鎖などが含まれる。生物学的機能ドメインは、Schwyzner, Biopolymers 31:875ー792(1991)に一般的に論じられている概念であるシクノロジカル(構造的要素が連続的配列にある)、あるいはレグニロジカル(構造的要素が不連続的配列にある)のいずれでも良い。【0115】精製、結晶化、および分離した後対象となる結晶は当業者に周知である手法により分析することができる。代表的な分析法により、ペプチドに関する構造的、物理的および機械論的情報が得られる。先に論じたように、X線結晶学によりペプチド内の原子の三次元配列に到達するための広汎に入手できる分子モデリングプログラムと共に用いることのできる構造的情報が得られる。【0116】ペプチドのモデリングは対象ペプチドの活性を変化させることのできる様々な薬剤のデザインに使用することが可能である。例えば活性部位の三次元構造を用い、マトリプターゼの生物学的活性の阻害を目的として、相補性構造を有するマトリプターゼ作動物質および拮抗物質をデザインすることが可能である。さらに、マトリプターゼの構造に付いての情報は、マトリプターゼとその基質のとの間で接触する残基に関する知識に基づいて、タンパク質性あるいは非タンパク質性マトリプターゼ調節物質のデザインを方向付ける上で有用である。【0117】コンピュータによるモデリングは例4の説明のように、あるいは核磁気共鳴(NMR)またはX線法を用いて実施することも可能である(Fletterick et al., eds.,"Computer Graphics and Molecular Modeling", in Molecular Biology (Cold Spling Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.,1986)の最新号。模範的なモデリングプログラムにはBiosym社(San Diego, Calif.)の「Hemology」、BioDesign社の「Biograph」、Oxford Molecular社の「Nemesis」、Tripos Associates社の「SYBYLTM」および「Composer」、Polygen社(Waltham, MA)の「CHARM」、カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校の「AMBER」およびMolecular Design、Ltd.社の「MM2」および「MMP2」が含まれる。【0118】例例1マトリプターゼおよびクンツ型セリンプロテアーゼ阻害物質を含有する複合体の精製および判定これらのデータは、Lin et al.,J.Biol.Chem.274(26):18237-42(1999)に記載されたように、分化および授乳などの生理的条件下におけるマトリプターゼの役割を研究したものである。【0119】細胞株および培養条件: 4種類の乳汁由来の不死化した乳管上皮細胞株(MTSV-1.1B,MTSV-1.7,MRSV-4.1およびMRSV-4.2)はJ.Taylor-Papadimitriou博士(ICRF,London)より寄贈され(Bartek et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88: 3520-24 (1991))、10%ウシ胎児血清(GIBCO)、ウシインスリン10 μg/ml、ヒドロコルチゾン(Singa) 5 μg/mlおよび抗生物質を添加した改変Iscove最小培地(Biofluides, Rockville, MD)中で保存した。ヒト包皮繊維芽細胞および繊維肉腫細胞株HT-1080 (American Type Culture Collection, ATCCより)は10%ウシ胎児血清(GIBCO)を添加した改変Iscove最小培地で保存した。細胞調整培地を集めるために、これらの細胞の単層を集めてリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、血清を加えずにインスリン/トランスフェリン/セレンを添加した改変Iscove最小培地(Biofluids)中で2日間培養した。【0120】ヒト乳汁由来のマトリプターゼ関連プロテアーゼの同定および部分的な分離:マトリプターゼ関係プロテアーゼを分離するために、Georgetown 大学医学センター乳汁バンクからの凍結ヒト乳汁1.5リットルを解凍し、乳脂肪および不溶性の残骸を除去するために遠心分離した。硫酸アンモニウム粉末を連続的に攪拌しながら乳汁に加えて40%飽和溶液とし、冷蔵室で2時間以上沈殿させた。5,000×gで20分間遠心分離してタンパク質沈殿物を採取した。ペレットを保存し、上清に硫酸アンモニウム粉末を加えて60%飽和溶液としてさらに沈殿させた。タンパク質ペレットを水に溶解し、DEAEクロマトグラフィ用にpH 8.0の20 mMトリス塩酸溶液、あるいはCMクロマトグラフィ用にpH 6.0の10 mMリン酸緩衝液で透析した。不溶性の残骸は遠心分離により除去し、上清を5バッチに分割した。各バッチはDEAEセファロースFFカラム(2.5×20 cm) (Pharmacia;Piscataway,NJ)に加え、pH 8.0の20 mMトリス塩酸溶液で平衡とした。カラムをカラム容積の10倍の平衡化緩衝液で洗浄した。結合した物質は総容積500 mlの0.1 M NaCl DEAE平衡緩衝液溶液からリニアグラジエントで溶離した。画分(14ml)を集めてmAb 21-9を用いたイムノブロット法で分析した。CMクロマトグラフィを実施するために、DEAEクロマトグラフィ由来の95-kDa画分あるいは硫酸アンモニウム沈殿により直接得た沈殿物をpH 6.0の10 mMリン酸緩衝液で透析した。不溶性の残骸を遠心分離で除去し、上清をCMセファロースFFカラム(2.5×20 cm) (Pharmacia; Piscataway, NJ)に加え、10 mMリン酸緩衝液pH 6.0で平衡化させた。カラムをカラム容積の10倍量の平衡緩衝液で洗浄した。結合した物質は総容積500 mlの0〜0.5 mM NaCL 10-MMリン酸緩衝液pH 6.0溶液よりリニアグラジエントで溶離させた。14ml の画分をmAb 21-9 を用いたイムノブッロト法で分析した。【0121】免疫親和性クロマトグラフィー:mAb 21−9をセファロース4Bに結合した(ビーズ1ml当たり5mgのIgG)免疫親和性カラムの調製は、既に記載されている(リン(Lin)ら、J.Biol.Chem.272:9147−52(1997))ように、CNBr活性化セファロース4Bを使用して行った。DEAEまたはCMクロマトグラフィーから部分的に精製した95kDaマトリプターゼ(matriptase)複合体を、流速7ml/時間で1mlのカラムにのせた。カラムを、PBS中1% トリトンX−100で洗浄した。次に、結合したプロテアーゼを0.1Mグリシン−HCl(pH2.4)を使用して溶出した。画分を直ちに2Mトリズマ(Trizma)塩基で中和した。【0122】免疫とハイブリドーマ融合:2匹の6週令の雌のBALB/cマウスを、マトリプターゼ複合体(1回の投与当たり10μg)で2週間置きに免疫した。最初の免疫には完全フロイントアジュバントを使用し、追加免疫には不完全アジュバントを使用した。2回目の追加免疫の3日後、尾静脈から血清を採取し、免疫ブロットで免疫応答を測定した。最後の追加免疫は、尾静脈注入により、アジュバントの非存在下でマトリプターゼ複合体で行った。脾臓細胞を採取し、ポリエチレングリコール(PEG)法によりマウスミエローマ細胞(SP2またはNS1)と融合し、成功したハイブリドーマ細胞をHAT培地により選択した(キルマルチン(Kilmartin)ら、J.Cell.Biol.93:576−82(1982))。【0123】ハイブリドーマスクリーニング:1次スクリーニングは、無傷の95kDaマトリプターゼ複合体、解離したマトリプターゼ、および結合タンパク質の混合物を含有する標的を使用して、ウェスタンブロットにより行った。1次スクリーニングでは、100個を超える陽性クローンが選択された。3つの抗マトリプターゼmAb(M32、M92、およびM84)と2つの抗結合タンパク質mAbs(M19とM58)を、詳細に選択し解析した。【0124】モノクローナル抗体調製:mAbを産生するために、ハイブリドーマ株を、徐々に血清補足培養培地に適応させ、次にタンパク質不含ハイブリドーマ培地(ギブコ(Gibco))に適合させた。モノクローナル抗体を採取し、硫酸アンモニウムで50%飽和にして沈殿させた。DEAEクロマトグラフィー法を使用してさらに精製した。【0125】免疫ブロット解析:免疫ブロットは、既に記載されている(リン(Lin)ら、(1997))ように行った。タンパク質を10% SDS−PAGEにより分離し、フッ化ポリビニリデン(PVDF)に移し、記載のようにmAbとプローブ結合させた。ペルオキシダーゼ標識第2抗体とECL検出系(アマシャム社(Amersham Corp);アーリントンハイツ、イリノイ州)を使用して免疫反応性ポリペプチドを視覚化した。【0126】ダイアゴナルSDS−PAGE:95kDaマトリプターゼ(matriptase)複合体調製物を、非沸騰条件下でSDS−PAGEにより分離し、ゲルストリップの切片に切り、1×SDS試料緩衝液中で沸騰させ、ウェルの無いSDSアクリルアミドゲル上に置き、1次元ゲルと同じ条件下で電気泳動した。タンパク質バンドは、銀染色で観察された陰性画像のために、コロイド性クマシー(Colloidal Coomassie)(ニューホフ(Neuhoff)ら、Electrophoresis 9:255−62(1988))により染色した。【0127】40kDaおよび25kDa結合タンパク質のアミノ酸配列分析:40kDaおよび25kDa結合タンパク質を、前述のように精製した。これらのタンパク質のアミノ酸末端配列を決定した(マツダイラ(Matsudaira)、J.Biol.Chem.262:10035−8(1987))。得られた12個(40kDaタンパク質から)と7個(25kDaタンパク質から)のアミノ酸残基は、肝細胞増殖因子アクチベーターインヒビターI(HAI−1)の推定アミノ酸配列と同一であった(シモムラ(Shimomura)ら、J.Biol.Chem.272:6370−6(1997))。HAI−1に対する結合タンパク質の本体をさらに確認するために、40kDaタンパク質ダブレットからの大きいバンドを、ゲル消化し、次にイェール大学のHHMIバイオポリマーラボラトリー・アンド・ダブリュー・エム・ケックファウンデーション・バイオテクノロジーリソースラボラトリー(HHMI Biopolymer Laboratory & W.M. Keck Foundation Biotechnology Resource Laboratory)で、マトリックスアシスティッド脱着イオン化質量スペクトル法(MALDI−MS)により分析した。【0128】 COS−7細胞中でのHAI−1の発現:HAI−1がマトリプターゼの結合タンパク質をコードすることを証明するために、我々は、MTSV1.1B不死化ヒト管腔乳房上皮細胞からのmRNAを使用して、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によりHAI−1 cDNA断片を単離した。HAI−1のプライマー配列(5’−GGCCCGCGCTCTGAAGGTGA−3’(配列番号28)と5’−TTGGCAAGCAGGAAGCAGGG−3’(配列番号29))は、公表されている配列から得た。アドバンテージ(Advantage)RT−PCRキット(クロンテク(Clontech):パロアルト、カリホルニア州)を使用して標準的RT−PCRを行い、生成物をTAクローニングによりpCR2.1(インビトロゲン(Invitrogen):カールスバード(Carlsbad)、カリホルニア州)に結合させた。RT−PCR生成物の配列は、標準的方法により得られ、公表されているHAI−1配列で確認した(ミヤザワ(Miyazawa)ら、J.Biol.Chem.268:10024−8(1993))。市販のpcDNA3.1ベクター(インビトロゲン(Invitrogen):カールスバード(Carlsbad)、カリホルニア州)を使用して、真核生物発現ベクターを作製した(pcDNA/HAI−1)。HAI−1 cDNAを含有する1.6kbのEcoRI断片を、pcDNA3.1のEcoRI部位にクローン化した。この作製体は、CMVプロモーターに指令されるHAI−1の読みとり枠(ORF)を含有する。HAI−1 cDNAの正しい挿入は、制限マッピングにより証明した。トランスフェクションは、スーパーフェクト(SuperFect)トランスフェクション試薬(キアゲン(Quiagen):バレンシア、カリホルニア州)を使用して製造業者のハンドブックに記載のように行った。48時間後、HAI−1でトランスフェクションしたCOS−7細胞を、20mMトリス−塩酸(pH7.4)中の1%トリトンX−100で抽出した。【0129】ヒトの乳汁の中のマトリプターゼ関連プロテアーゼ:すでにマトリプターゼは、1つの大きな非複合体形成型、または分子量110kDaと95kDaを有する2つの小さなSDS安定な(リン(Lin)ら、(1997))複合体形成型として存在することが観察された。マトリプターゼ結合タンパク質は同定されなかった。これらの結合領域を同定するために、我々は、ヒトの乳汁の中に存在するマトリプターゼ複合体を調べた。我々の仮説は、結合タンパク質はプロテアーゼインヒビターであり、その発現は、特定の生理学的状態(例えば、分化または乳汁分泌)に関連しているかも知れないというものであった。ヒトの乳汁では、95kDaと110kDaのサイズの2つの免疫反応性バンド(ただし、複合体を形成していない)マトリプターゼが、抗マトリプターゼmAb 21−9により非沸騰および非還元条件下で検出された(図1)。95kDaタンパク質は、主要な分子種であり、より小さい110kDaのバンドは、異なるバッチの乳汁の間で変動した(図1、AとB)。ヒトの乳癌細胞(リン(Lin)ら、(1997))で以前同定された95kDaの免疫反応性マトリプターゼ複合体と同様に、乳汁由来の95kDaの免疫反応性分子種を、還元剤の非存在下で沸騰後、より小さい免疫反応性バンドに変換した。このバンドはサイズが、既に記載された乳汁癌からの非複合体形成マトリプターゼに対応する(図1C)。すなわちマトリプターゼは、乳癌細胞でも乳汁の中でも、95kDa複合体の成分のようであった。乳癌細胞中のほとんどのマトリプターゼは複合体を形成していないが、乳汁中ではその反対である。【0130】乳汁中の小さい110kDaの免疫反応性ポリペプチドのほとんどを、硫酸アンモニウムの40%飽和により沈殿させた。次にこのバンドを、DEAEクロマトグラフィーにより主要な95kDaマトリプターゼ複合体から分離した(図1A)。95kDaマトリプターゼ複合体と比較して、乳汁由来の110kDaの免疫反応性ポリペプチドは、沸騰後のSDS−ポリアクリルアミドゲル上で泳動速度が低下した(図1、パネルC)。これらの結果は、この乳汁由来の110kDaの免疫反応性ポリペプチドが、プロテアーゼ複合体ではない可能性を示している。乳癌細胞からの110kDa分子種を沸騰させて、マトリプターゼと別の未同定の分子種に変換した(リン(Lin)ら、(1997))。この乳汁由来の110kDa分子種は、乳癌T−47D細胞から以前単離された110kDaマトリプターゼ複合体とは明確に異なっていた。【0131】ヒトの乳汁からのマトリプターゼ複合体の精製:抗マトリプターゼmAb−21−9免疫親和性カラムを使用して、乳汁由来の95kDaマトリプターゼ複合体を単離した。この高度に精製した95kDaマトリプターゼ複合体は、見かけの分子量40kDaを有するタンパク質ダブレットの見かけとともに、沸騰後マトリプターゼに変換することができる(リン(Lin)ら、J.Biol.Chem.274:18231−6(1999))。あるバッチの乳汁では、95kDa複合体以外に、見かけの分子量が85kDaの他のプロテアーゼ複合体ダブレットも観察された(図2、レーン1)。95kDaと85kDaのマトリプターゼ複合体の両方を、沸騰後マトリプターゼに変換した。マトリプターゼ以外に、40kDaと25kDaのタンパク質バンドが観察された(図2、レーン2)。【0132】40kDaおよび25kDaバンドがマトリプターゼ複合体の成分であることを証明するために、生化学的および免疫学的アプローチが行われている。我々の生化学的アプローチでは、95kDaマトリプターゼ複合体調製物(これはまた、低レベルの非複合体マトリプターゼを含有する)について、非沸騰/沸騰ダイアゴナルゲル電気泳動を行った。このゲル電気泳動系では、沸騰によりSDSポリアクリルアミドゲル上の泳動速度が変化しないタンパク質が、対角線上に見られる。これに対して熱感受性複合体は、その成分サブユニットに解離し、同じ電気泳動経路で対角線の下に見られる;沸騰により配向が変化して泳動速度が遅くなるタンパク質が、対角線の上に見られる。試料をまず、SDS−PAGEにより分離して、ゲルのストリップを切片にした。切片にしたゲルストリップを、還元剤の非存在下で1×SDS試料緩衝液中で沸騰させ、第2のSDS−ポリアクリルアミドゲル上に置き、電気泳動した(図3)。95kDaマトリプターゼ複合体の場合、40kDaタンパク質ダブレットとマトリプターゼの両方が、対角線の下および同じ電気泳動経路上に観察された(図3)。従ってこの結果は、マトリプターゼと40kDaダブレットが、95kDaプロテアーゼ複合体の成分であることを確認した。一方、非複合体形成マトリプターゼが、対角線上に見られた(図3)。【0133】免疫学的アプローチでは、免疫原としてマトリプターゼ複合体を使用してmAbのパネルが得られた(図4)。新しい抗マトリプターゼ、抗体mAb M92は、非沸騰条件下で95kDaと85kDaのマトリプターゼ複合体の両方を認識する(図4A、レーン5)。このmAbは、非複合体形成マトリプターゼを認識するが、沸騰後の40kDaと25kDaバンドは認識しない(図4A、レーン6)。モノクローナル抗体M19は、非沸騰条件下で両方のマトリプターゼ複合体を認識する(図4A、レーン3)が、沸騰条件下では非複合体形成マトリプターゼを認識しない(図4A、レーン4)。しかしM19は、沸騰後40kDaと25kDaバンドの両方を認識する(図4A、レーン4)。【0134】第3の抗体タイプであるmAb M58もまた選択された。このmAbは、非沸騰条件下で95kDaマトリプターゼ複合体のみを選択的に認識し、85kDa複合体を認識しない(図4A、レーン1);mAb M58は、沸騰後の40kDaバンドのみを認識するが、25kDaバンドは認識しない(図4A、レーン2)。これらの結果は、図2の結果と一緒にすると、95kDaマトリプターゼ複合体が、マトリプターゼと40kDa成分とからなることを示唆する。85kDaマトリプターゼ複合体は、マトリプターゼと25kDa成分とからなる。25kDa成分は、40kDa成分の分解産物である可能性が高い。mAb M19により認識されるエピトープは、40kDaと25kDa成分上に存在するが、mAb M58により認識されるエピトープは、40kDa成分上にのみ存在する。図4パネルBで我々は、95kDaと85kDaのマトリプターゼ複合体の構造およびこれらのmAbとの相互作用を要約する。【0135】マトリプターゼの結合タンパク質はクニッツ(Kunitz)型セリンプロテアーゼインヒビターの断片である:40kDaと25kDa結合タンパク質のアミノ酸配列を決定した時、40kDa結合タンパク質の配列(例えば、GPPPAPPGLPAG)は、クニッツ型セリンプロテアーゼインヒビターの配列(シモムラ(Shimomura)ら、J.Biol.Chem.273:6370−76(1997))と同一であることがわかり、これは、肝細胞増殖因子アクチベーターインヒビターI(HAI−1)としてすでに同定されていた(シモムラ(Shimomura)ら、(1997));25kDa結合タンパク質のN末端から得られたアミノ酸残基(例えば、TQGFGGS)は、HAL−1の残基154〜残基160の配列(シモムラ(Shimomura)ら、(1997))と同一である。マトリプターゼの結合タンパク質がHAL−1として同定されることをさらに確認するために、40kDaダブレットからの大きいバンドを、ゲルトリプシン消化に付した。トリプシン消化物を、マトリックスアシスティッド脱着イオン化質量スペクトル法(MALDI−MS)により分析した。トリプシン消化物からの12個のユニークなペプチドは、結合タンパク質からHAL−1への観察されたMALDI−MSを探索することにより、HAL−1配列と一致した(図5)。これらの12個のペプチドは、残基135〜310にまたがる87残基をカバーする。これらの結果は、マトリプターゼの結合タンパク質がHAL−1の断片であることを示している。【0136】別の研究で、抗結合タンパク質mAbと、HAL−1によりトランスフェクションしたCOS−7細胞により発現されたHAL−1との免疫反応性(図6)。抗結合タンパク質mAb M19は、HAL−1でトランスフェクションされたCOS−7細胞の細胞溶解物(図6、レーン2)中、およびT−47Dヒト乳癌細胞の2M KClで洗浄した膜画分(図6、レーン4)中で見かけのサイズが55kDaのバンドを検出したが、マトリプターゼでトランスフェクションしたcos−7細胞中では検出されなかった(図6、レーン1)。抗結合タンパク質mAbとHAL−1遺伝子産物との免疫反応性は、マトリプターゼの結合タンパク質がHAL−1である好適な第2の証拠を提供する。このサイズの免疫反応性55kDaバンドは、成熟した膜結合HAL−1の計算された分子量(53,319Da)に近いため、および膜画分とのその結合は充分強く、2M KClで洗浄することによる解離に抵抗できるため、この55kDaバンドは、成熟した無傷のHAL−1である可能性が考えられる。【0137】マトリプターゼとクニッツ型プロテアーゼインヒビターの乳房上皮産生:マトリプターゼとその複合体を放出する可能な細胞タイプを調べるため、我々は、4つの乳汁由来のシミアンウイルス40のラージ腫瘍抗原不死化管腔上皮細胞株(乳汁細胞)(バレック(Barrek)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:3520−24(1991))、2つの培養ヒト包皮繊維芽細胞、および繊維肉腫細胞株HT−1080中での発現を調べた(図7)。乳房管腔上皮細胞についての陽性結果(図7、レーン4〜11)、および繊維芽細胞とHT−1080繊維肉腫細胞についての陰性結果(図7、レーン1〜3)は、プロテアーゼとその結合タンパク質が、乳汁を分泌している乳腺の上皮成分により産生されることを示唆する。乳汁と比較して、不死化した乳房管腔上皮細胞は、検出可能な複合体を形成していないマトリプターゼと110kDa複合体を発現した。この110kDa複合体分子種は、乳汁中では検出されなかったが、T−47D乳癌細胞(リン(Lin)ら、(1997))中で検出された。【0138】例2マトリプターゼの分子クローニングと性状解析本例は、リン(Lin)ら、J.Biol.Chem.274:18231−6(1999)により開示されたマトリプターゼタンパク質とこれをコードする遺伝子のさらなる単離を説明する。【0139】細胞株と培養条件:COS−7細胞を、5%胎児牛血清(ライフテクノロジーズ社(Life Technologies Inc.))を補足した改変イスコブ最少基本培地(ビオフルーイッズ社(Biofluids Inc.);ロックビル、メリーランド州)中で維持した。【0140】マトリプターゼの精製:アミノ酸配列決定のための充分なマトリプターゼを得るために、この酵素をヒトの乳汁から単離した(リン(Lin)ら、J.Biol.Chem.274:18237−42(1999))。簡単に説明すると、ジョージタウン大学メディカルセンターミルクバンクからのヒト乳汁を、硫酸アンモニウムを40〜60%飽和で加えて、沈降させ採取した。マトリプターゼは、CMセファロースと免疫親和性クロマトグラフィーを組合せて精製した。【0141】アミノ酸配列分析:内部アミノ酸配列を得るために、精製したマトリプターゼをSDS−PAGEにより分離し、クマシーブルーで軽く染色し、タンパク質バンドを切り出した。次に、マトリプターゼをゲル消化に付し、イェール大学のHHMIバイオポリマーラボラトリー・アンド・ダブリュー・エム・ケックファウンデーション・バイオテクノロジーリソースラボラトリー(HHMI Biopolymer Laboratory & W.M. Keck Foundation Biotechnology Resource Laboratory)でアミノ酸配列決定を行った。アミノ末端配列は、既に記載されている(マツダイラ(Matsudaira)ら、J.Biol.Chem.262:10035−8(1987))ように決定した。簡単に説明すると、タンパク質をSDS−PAGEで分離し、フッ化ポリビニリデン膜に移し、クマシーブルーで軽く染色した。タンパク質を切り出し、アミノ末端配列決定を行った(フロリダ州立大学化学部、タラナセック(Tallanassec)、フロリダ州)。得られた2つの短い配列は、SNC19と呼ぶ推定アミノ酸配列(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号U20428)と同一であった。【0142】 T−47D乳癌細胞からのSNC19 cDNAの増幅:T−47Dヒト乳癌細胞からのmRNAを使用して、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により、SNC19 cDNAクローンを作成した。SNC19のプライマー配列(5’−CCTCCTCTTGGTCTTGCTGGGG−3’(配列番号30)および5’−AGACCCGTCTGTTTTCCAGG−3’)(配列番号31)は、公表されている配列から得られた。アドバンテージ(Advantage)RT−PCRキット(クロンテク(Clontech):パロアルト、カリホルニア州)を使用して標準的RT−PCRを行った。生成物を0.8%アガロースゲルで分析し、予測された生成物サイズに対応する得られた約2.8kbのバンドをゲルから切り出し、精製し、TAクローニング(pCR−SNC19)によりpCR2.1(インビトロゲン(Invitrogen)、カールスバード(Carlsbad)、カリホルニア州)中に連結させた。【0143】配列決定:DNA配列決定は、パーキン・エルマー・アプライド・バイオシステム(Perkin-Elmer Applied Biosystem)自動377DNAシーケンサー(フォスターシティ、カリホルニア州)で、標準法を使用して、ロンバルディ・シーケンシング・アンド・シンセシス・シェアド・リソース(Lombardi Sequencing and Synthesis Shared Resource)の助けを借りて行った。配列を組み立て、ウィンドウズ(登録商標)用ラセルジーン(Lasergene)ソフトウェア(DNAスター社(DNA Star Inc.);マジソン、ウィスコンシン州)を用いて解析した。予測したタンパク質配列を、ブラスト(BLAST)ネットワークサーバーを使用して、ナショナルセンター・フォア・バイオテクノロジー・インフォメーション(National Center for Biotechnology Information)のスイスプロット(Swiss-Prot)(登録商標)データベース中の配列と比較した。【0144】COS−7細胞中のSNC19の発現:SNC19がマトリプターゼ遺伝子をコードすることを証明するために、我々は、市販のpcDNA3ベクター(インビトロゲン(Invitrogen);サンジエゴ、カリホルニア州)を使用して、真核生物発現ベクターを作製した(pcDNA/SNC19)。pCR−SCN19をを消化し、pcDNA3のEcoRI部位にクローン化して、SNC19 cDNAを含有する2.83kbのEcoRI断片を作成した。この作製体は、CMVプロモーターに指令されるSNC19の読みとり枠を含有する。SNC19 cDNAの正しい挿入は、制限マッピングにより証明した(データは示していない)。トランスフェクションは、スーパーフェクト(SuperFect)トランスフェクション試薬(キアゲン(Quiagen):バレンシア、カリホルニア州)を使用して製造業者のハンドブックに記載のように行った。48時間後、マトリプターゼでトランスフェクションしたCOS−7細胞と対照COS−7細胞(これは、トランスフェクション効率を追跡するために、LacZでトランスフェクションした)を、20mMトリス−塩酸(pH7.4)中の1%トリトンX−100で抽出した。【0145】免疫ブロッティング分析:免疫ブロットは、既に記載されている(リン(Lin)ら、J.Biol.Chem.272:9147−52(1997))ように行った。タンパク質を100%SDS−PAGEで分離し、フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜に移し、次に抗マトリプターゼモノクローナル抗体(mAb)M32とプローブ結合させた。ペルオキシダーゼ標識第2抗血清とECL検出系(アマシャム社(Amersham Corp);アーリントンハイツ、イリノイ州)を使用して、免疫反応性ポリペプチドを視覚化した。【0146】ゼラチンザイモグラフィ:ゼラチンザイモグラフィを、既に記載されている(ブラウン(Brown)ら、Biochem.J.101:214−228(1966))ように行った。基質としてゼラチン(1mg/ml)を、通常のSDS−ポリアクリルアミドゲルと共重合させた。電気泳動は、15mAの一定電流で行った。ゼラチンゲルを、2%トリトンX−100含有PBSで3回洗浄し、PBS中で37℃で一晩インキュベートした。【0147】合成基質の切断:マトリプターゼのトリプシン様活性を証明するために、アルギニンまたはリジンをP1部位として有する種々の蛍光性プロテアーゼ基質を、ヒトの乳汁からの精製マトリプターゼを用いて試験した。マトリプターゼは、20mMトリス緩衝液(pH8.5)中で25℃で、190μlにし、次に10μlの2mM基質溶液を加えた(最終濃度0.1mM)。これらの基質は、t−ブトキシカルボニル(Boc)−Gln−Ala−Arg−7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)、Box−ベンジル−Glu−Gly−Arg−AMC、Boc−Leu−Gly−Arg−AMC、Boc−ベンジル−Asp−Pro−Arg−AMC、Boc−Phe−Ser−Arg−AMC、Boc−Val−Pro−Arg−AMC、スクシニル−Ala−Phe−Lys−AMC、Boc−Leu−Arg−Arg−AMC、Boc−Gly、Lys−Arg−AMC、およびBoc−Leu−Ser−Thr−Arg−AMCである。これらの基質は、シグマ(Sigma)から購入した。各基質の切断速度は、日立F−4500蛍光分光光度計を用いて、経時的に測定した。【0148】結果:さらなる試験でおよび図8を参照して、イオン交換クロマトグラフィーからの部分精製95kDaマトリプターゼ複合体を、mAb 21−9セファロースカラムにのせた。結合したタンパク質を、グリシン緩衝液(pH2.4)により溶出し、2Mトリズマ塩基を加えて中和した。溶出したタンパク質を、1×SDS試料緩衝液中で還元剤の非存在下で、室温(レーン1、各パネル、沸騰−)または95℃(レーン2、各パネル、沸騰+)で5分インキュベートした。試料をSDS−PAGEで分離し、コロイド性クマシーで染色(パネルA)したか、mAb 21−9を使用して免疫ブロット分析(パネルB)したか、またはゼラチンザイモグラフィに付した(パネルC)。この親和性カラムから95kDaマトリプターゼ複合体を主要なタンパク質(パネルA、レーン1)として溶出した;これは、mAb 21−9(パネルB、レーン1)により認識され、これはまたゼラチン分解活性を示した(パネルC、レーン1)。95kDaマトリプターゼ複合体を沸騰させてマトリプターゼに変換した(パネルA、レーン2)。95kDaプロテアーゼのゼラチン分解活性は、沸騰することにより破壊されたが、低レベルのゼラチン分解活性が残存し、マトリプターゼに変換された(パネルC、レーン2)。低レベルの非複合体形成マトリプターゼを、親和性クロマトグラフィーにより95kDaマトリプターゼ複合体とともに精製した(パネルA、レーン1);これはまた、ゼラチン分解活性を示した(パネルC、レーン1)。免疫ブロット分析は、非複合体形成マトリプターゼのシグナルを増強させ、その存在を再確認した(パネルB、レーン1)。いくつかの他のポリペプチドも見られた(パネルA、レーン1と2)。これらのいくつかは、X線フィルムに長時間暴露させるとmAb 21−9により認識されたため、プロテアーゼの分解産物である。40kDaタンパク質ダブレットは、非沸騰試料(パネルA、レーン1)中で低レベルで見られたが、沸騰後そのレベルが上昇した(パネルA、レーン2)。この40kDaダブレットは、mAb 21−9により認識されなかった(パネルB)。我々は、これらの2つのポリペプチドは、マトリプターゼの結合タンパク質であることを提唱している。図においてMWは、分子量マーカーを示し、そのサイズは記載した通りである。【0149】 40kDa結合タンパク質の配列分析は、これがセリンプロテアーゼインヒビター(後述)であることを証明したが、95kDaマトリプターゼ/インヒビター複合体について、いくらかの残存ゼラチン分解活性が観察された(図8C)。マトリプターゼとその結合タンパク質をN末端配列決定に付すと、比較的低い回収率でマトリプターゼから11個のみのアミノ酸残基(VVGGTDADEGE)(配列番号32)が得られ、40kDa結合タンパク質のアミノ末端からは12個のアミノ酸残基(GPPPAPPGLPAG)(配列番号2)が得られた。マトリプターゼからの11個のアミノ酸残基は、SNC19(受け入れ番号U20428)と呼ぶ2.9kbのcDNAからの推定アミノ酸配列と同一であった。この寄託されたSNC19配列中に多くの停止コドンが観察され、いくつかの小さな予測された翻訳産物が得られた。すなわち、SNC19の配列に基づく2つのプライマーを使用する逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応により、2,830bpのcDNA断片が得られた。我々の配列とSCN19の配列の間には、大きな差(132塩基)がある。【0150】SNC19 cDNAコード化マトリプターゼの証明:SNC19の部分によるマトリプターゼの配列同定に加えて、SNC19がマトリプターゼをコード化するかどうかを証明するために、SNC19遺伝子産生物に対するアンチマトリプターゼmAb類の免疫反応性を調べた。SNC19 cDNAを真核性発現ベクターpcDNA3.1に挿入し、そしてCOS-7サルの、マトリプターゼを発現しない腎臓線維芽細胞に形質移入した。アンチマトリプターゼmAb M32で検出されるT-47Dヒト乳癌細胞由来の同じ大きさのマトリプターゼを有する強う免疫反応性バンドがSNC-19形質移入COS-7細胞に観察されたが、対照COS-7細胞には観察されなかった。【0151】 マトリプターゼcDNAクローンのヌクレオチドおよび予測アミノ酸配列:マトリプターゼのヌクレオチド(配列番号4)およびアミノ酸配列(配列番号5)が図9に示される。逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応に用いられたプライマー(5’末端における20個の塩基および3’末端における18個の塩基)には下線が付けられている。5’末端プライマーを越える33個の塩基および3’末端プライマーを越える92個の塩基がSNC19 cDNAから取られ、組み込まれた。このcDNA配列はオープンリーディングフレームで5番目のATG(Met)コドンから翻訳された。ヌクレオチドとアミノ酸の数は左側に示されている。二重下線は、マトリプターゼから得られた内部配列と一致した配列を示す。His-484、Asp-539およびSer-633は箱に入れられたが、それらはマトリプターゼの推定触媒三つ組であることを示す。潜在的なN−グリコシル化部位はΔで示される。RGD配列はで示される。【0152】 マトリプターゼcDNAは、SNC19由来の5’末端の33個の塩基と3’末端の92個の塩基がRT-PCRフラグメント(塩基対の長さ2,830)に付加されたときは、塩基対の長さが2,955となる可能性がある。翻訳開始部位は、配列GTCATGGが有利なコザク合意配列(Kozak consensus sequence)(Kozak等のNucl. Acid. Res.,12:857-72(1984))に合っているので、5番目のメチオニンコドンに割り当てられた。このメチオニンの後に4個の正に帯電したアミノ酸、および推定シグナルペプチドである14個のアミノ酸の長さの疎水性領域(Ser-18-Ser-31)が続いている。このメチオニンコドンがイニシエーターであると仮定すると、オープンリーディングフレームは塩基対の長さが2,049であることを示し、従ってそれより推定されるアミノ酸配列は683個の残基から構成され、その計算された分子質量は75,626であった。マトリプターゼから得られたアミノ酸配列の2つのストレッチ(stretch)(DYVEINGEK(配列番号33)およびVVGGTDADEGE(配列番号32))はアミノ酸228−236として、およびアミノ酸443−453として存在している;従って翻訳フレームは正しい可能性がある。基準のAsn-X-(Ser/Thr)およびRGD配列を有する3つの潜在的なN−グリコシル化部位が存在する。細胞外基質の蛋白質に由来するRGD配列は、インテグリン類との相互作用を媒介することが見いだされた(Ruoslahti等のScience,238:491-7(1987))。【0153】 マトリプターゼ触媒ドメインの構造:Swiss-ProtTMデーターベースでのBLASTによる推定アミノ酸配列の相同性に関する研究は、(1)マトリプターゼの残基位置432−683(配列番号5)におけるカルボキシル末端は他のセリンプロテアーゼと相同であること;(2)マトリプターゼは不変触媒三つ組を含んでいること;(3)マトリプターゼは特性ジスルフィド結合パターンを含んでいること;およびマトリプターゼは総配列類似性を有していることを明らかにしている。図9を参照して説明すると、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応に用いられたプライマー(5’末端における20個の塩基(配列番号30)および3’末端における18個の塩基(配列番号31))には下線が付けられている。5’末端プライマーを越える33個の塩基および3’末端プライマーを越える92個の塩基がSNC19 cDNAから取られ、組み込まれた。このcDNA配列はオープンリーディングフレームで5番目のATGコドンから翻訳された。ヌクレオチドとアミノ酸の数は左側に示されている。二重下線は、マトリプターゼから得られた内部配列と一致した配列を示す。His-484、Asp-539およびSer-633は箱に入れられ、それらはマトリプターゼの推定触媒三つ組であることを示した。潜在的なN−グリコシル化部位はΔで示される。RGD配列はで示される。【0154】原型セリンプロテアーゼであるキモトリプシン(Hartley等のBiochem. J.,101:229-311(966);およびBrown等のBiochem. J.,101:214-28(1966))、その他のセリンプロテアーゼを比較すると、3種のアミノ酸(His-483、Asp-539およびSer-633)はキモトリプシノゲン中のアミノ酸(His-57、Asp-102およびSer-195)に相当する可能性があり、かつ触媒活性に不可欠である可能性がある(Hartley等のNature,207:1157-9(1965))。触媒ポケット(catalytic pocket)を安定化する3つの分子内ジスルフィド結合を形成するのに必要とされる6つの最大保存システインは、他のキモトリプシン関連プロテアーゼの中に確認された。マトリプターゼ中の最も可能性の高いシステイン対合は次のとおりである:Cys-469-Cys-485、Cys-604-Cys-618およびCys-629-Cys-658。マトリプターゼは、また、エンテロペプチダーゼ(Kitamoto等のProc. Natl. Acad. Sci. USA,91:7588-92(1994))、ヘプシン(Leytus等のBiochemistry,27:1067-74(1988))、血漿カリクレイン(Chung等のBiochemistry,25:2410-17(1986))、血液凝固因子XI(Fujikawa等のBiochemistry,25:2417-24(1986))、およびプラスミノゲン(Forsgren等のFEBS Lett.,213:254-50(1987))のような2本鎖プロテアーゼ中で利用されているが、トリプシン(Emi等のGene(Amst.),41:305-310(1986))またはキモトリプシン(Tomita等のBiochem. Biophys. Res. Commun.,158:569-75(1989))中では利用されていないものに相当する2つの追加システイン(Cys-432-Cys-559)も含んでいる(図10)。【0155】 図10を参照してさらに具体的に説明すると、マトリプターゼの(アミノ酸431−683)C−末端領域(配列番号6)が、ヒトトリプシン(配列番号13)、ヒトキモトリプシン(配列番号14)、ヒトエンテロペプチダーゼの触媒鎖(配列番号7)、ヒトヘプシン(配列番号10)、ヒト血液凝固因子XI(配列番号11)およびヒトプラスミノゲン(配列番号12)、並びに2種の膜内外セリンプロテアーゼ、ヒトTMPRSS2(配列番号8)およびショウジョウバエ属スタブル−スタブロイド(Stubble-stubbloid)遺伝子(Sb-sbd)(配列番号9)と比較される。残基は1文字コードで表現される。触媒三つ組(マトリプターゼHis-484、Asp-539およびSer-633)中の残基で示される相同性を最大化するギャップは、箱に入れられ、◆で示された。保存活性化モチーフ(conserved activation motif)(R/KVIGG)(配列番号34)は箱に入れられて、その蛋白分解性活性化部位が示された。4つの分子内ジスルフィド結合を形成するのに必要とされる8つの保存システインは箱に入れられているが、その可能性のある対合は次のとおりである:Cys-469-Cys-485、Cys-604-Cys-618、Cys-629-Cys-658およびCys-432-Cys-559)。ジスルフィド結合(Cys-432-Cys-559)は2本鎖セリンプロテアーゼ中に観察されるが、トリプシンおよびキモトリプシン中には観察されない。基質ポケット中の残基(Asp-627、Gly-655およびGly-665)は箱に入れられて、で示される。基質ポケットの底に位置する残基が、マトリプターゼを含むトリプシン様プロテアーゼ中ではAspであるが、キモトリプシン中ではSerであることは明らかである。【0156】 Arg-Val-Val-Gly-Gly(RVVGG)(配列番号35)のモチーフ中におけるマトリプターゼの推定蛋白分解活性化部位(Arg-442)は、他のセリンプロテアーゼ類中の特性RIVGG(配列番号36)モチーフと同様である。しかしIle残基はVal残基により置換されている。この置換はまれではあるが、プラスミノゲン中に観察される。前記のように、保存分子内ジスルフィド結合は、1本鎖チモーゲンとして合成されるそれらセリンプロテアーゼ中に見いだされ、そして蛋白分解式で活性化されて活性な2本鎖形態になる。このジスルフィド結合は活性触媒フラグメントをそれらの非触媒N−末端フラグメントと共に保持し、従って蛋白質−蛋白質相互作用ドメインとして役立つことが提案される。この保存分子内ジスルフィド結合はマトリプターゼ中でも観察された(Cys-432-Cys-559)。これらの配列分析は、マトリプターゼは1本鎖チモーゲンとして合成することができ、そして蛋白分解式で2本鎖形態に活性化されるようになることを示唆している。これが事実であるならば、T-47D乳癌細胞の調整培地中におけるマトリプターゼの大部分はチモーゲンである可能性があり;活性な2本鎖マトリプターゼは小割合を占めるに過ぎず、それは還元条件下で80−kDaという見掛けの大きさを示すT-47Dヒト乳癌細胞由来の精製マトリプターゼと一致する。この結論は、また、マトリプターゼの触媒鎖に対する提案されたN−末端配列は、マトリプターゼがN−末端配列決定(sequencing)に付されたときに非常に低い回収率で得られたアミノ酸配列(VVGGTDADEGE)(配列番号37)のストレッチと同一であるという観察結果によっても支持される。【0157】 マトリプターゼの基質特異性(S1)ポケットはその底に位置するAsp-627から構成され、そのネックにGly-655およびGly-665を有している可能性がある。このことは、マトリプターゼが典型的なトリプシン様セリンプロテアーゼであることを示している。正に帯電した側鎖を有するアミノ酸残基の場所での、予測される優先的切断は、P1部位としてArg残基およびLys残基を持つ各種合成基質により確認された。具体的に説明すると、マトリプターゼは、次のとおり、最も速いものから最も遅いものまでその順に与えられる次の基質を切断することができた:Boc-Gln-Ala-Arg-AMC、Boc-ベンジル-Glu-Gly-Arg-AMC、Boc-Leu-Gly-Arg-AMC、Boc-ベンジル-Asp-Pro-Arg-AMC、Boc-Phe-Ser-Arg-AMC、Boc-Leu-Arg-Arg-AMC、Boc-Gly-Lys-Arg-AMCおよびBoc-Leu-Ser-Thr-Arg-AMC。[Boc=t−ブチルオキシカルボニル;AMC=7−アミノ−4−メチルクマリン;LDL=低密度リポ蛋白質]。これは、マトリプターゼはP2部位としてAlaおよびGlyのような小さい側鎖を含んでいるアミノ酸残基を有する基質の方を好むという見解を支持するものである。これらの結果は、マトリプターゼは、トリプシンに似て、広範囲の切断特異性を示すことを示唆している。この広範囲の切断活性は、そのゼラチン分解(gelatinolytic)活性の説明となっている可能性がある。そのトリプシン様活性は、最も豊富な(ほとんど1/3までの)ゼラチン中アミノ酸残基であるグリシン残基の所でゼラチンを切断することができるゼラチナーゼAおよびBとは性質が異なるように思われる。【0158】 マトリプターゼの非触媒領域の構造モチーフ:マトリプターゼの非触媒領域は、他の蛋白質との相互作用のための調節および/または結合ドメインとしての役割を果たすことができる2組の反復配列を含んでいる。6個の保存システイン残基を含む約35個のアミノ酸の4個の直列反復(図11A)が、そのセリンプロテアーゼドメインのアミノ末端領域(アミノ酸280-430)の所に見いだされた。それらはLDL受容体(Sudhof等のScience,228:815-22(1985))および関連蛋白質(Herz等のEMBO J.,7:4119-27(1988))のシステイン含有反復と相同である。これらシステイン残基は全てジスルフィド結合中に含まれている可能性がある。LDL受容体において、相同の7個の反復配列は配位子結合用ドメインとしての役割を果たす。類推によって、4個の直列システイン含有反復も、他の巨大分子との相互作用部位となることができるだろう。加えて、このシステイン含有LDL受容体ドメインは、エンテロペプチダーゼ(Matsushima等のJ. Biol. Chem.,269:19976-82(1994);およびKitamoto等のProc. Natl. Acad. Sci. USA,91:7588-92(1994))のような他のプロテアーゼ中にも見いだされた。【0159】 図11Aを参照して説明すると、マトリプターゼのシステインに富む反復(アミノ酸280-314、アミノ酸315-351、アミノ酸352-387およびアミノ酸394-430)(配列番号15)が、ヒトLDL受容体(配列番号16);LDL受容体関連蛋白質(LRP)(配列番号17);ヒトパーレカン(perlecan)(配列番号18);およびラットGP-300(配列番号19)の合意配列と比較されている。この合意配列は箱に入れられている。図11Bにおいては、マトリプターゼのC1r/sタイプ配列(アミノ酸42-155およびアミノ酸168-268)(配列番号20および21)がヒト補体サブ成分C1r(アミノ酸193-298)(配列番号22)、C1s(アミノ酸175-283)(配列番号23)、Ra−反応因子(RaRF)(アミノ酸185−290)(配列番号24)およびカルシウム依存性セリンプロテアーゼ(CSP)(アミノ酸181-289)(配列番号25)の選択されたドメインと比較されている。ほとんどの合意配列は箱に入れられている。【0160】 マトリプターゼのアミノ末端領域(アミノ酸42-268)(配列番号20および21)は、内部相同性を持つもう2個の直列セグメントを含んでいる。これらのセグメントは、元々は補体サブ成分C1r(Leytus等のBiochemistry,25:4855-63(1986);およびJournet等のBiochem. J.,240:783-7(1986))、および同C1s(Mackinnon等のEur. J. Biochem.,169:547-53(1987);およびTosi等のBiochemistry,26:8516-24(1987))において同定された部分配列に似ている。このC1r/sドメインは、また、Ra−反応因子、C4/C2−活性化成分、エンテロペプチダーゼ、トリプシノゲンの活性化因子(Matsushima等(1994);Kitamoto等(1994)、および細胞外基質を分解させることができるカルシウム依存性セリンプロテアーゼを含めて他のセリンプロテアーゼ中でも見いだされた。これらのC1r/s−含有セリンプロテアーゼは、プロテアーゼ活性化カスケードまたは細胞外基質分解のいずれかにおいて伴われると思われる。さらに、このC1r/sドメインを含んでいることが見いだされた、亜鉛メタロプロテアーゼのアスタシン亜族(subfamily)の内の少なくとも6つの員子が存在する。これらは、骨形態形成蛋白質−1(Wozney等のScience,242:1528-34(1988))、およびショウジョウバエ属トロイド(tolloid)遺伝子、背側−腹側パターン化用蛋白質(Shimell等のCell,67:469-81(1991))、卵殻基質の分解においてある役割を果たし得るウズラの1,25−ジヒドロキシビタミンD3誘発アスタシン様メタロペプチダーゼ、(外胚葉系列の分化とそれに続く胎芽のパターン化に関わり得ると思われる)海ウニ胞胚プロテアーゼ−10、発生段階のマーカーであるアフリカツメガエル胚蛋白質UVS.2.、並びに発生の極く初期の胞胚段階中に空間制限パターンで発現される海ウニVEB遺伝子を含む。これらのC1r/s−含有アスタシンメタロプロテアーゼの大半は、蛋白質−蛋白質相互作用および胚の発生においてある役割を果たしていると思われる。C1r/sドメインは、また、非プロテアーゼ蛋白質にも見いだされた。これらを挙げると、神経系で発生的に発現されるカルシウム独立・細胞接着分子であるニューロピリン(neuropilin)(A5蛋白質)、および炎症および腫瘍形成中に細胞−細胞間および細胞−基質間相互作用に関わりがあり得るだろうヒアルロネート結合性蛋白質である腫瘍壊死因子−誘発性蛋白質TSG-6がある。【0161】図12はマトリプターゼの構造の模式図を与えるものである。このプロテアーゼは683個のアミノ酸より成り、その蛋白質産生物は75,626という計算質量を有する。このプロテアーゼは2個の直列補体サブ成分1rドメインおよび1sドメイン(C1r/s)と、4個の直列LDL受容体ドメインを含んでいる。そのセリンプロテアーゼドメインはカルボキシル末端にある。【0162】アミノ酸の疎水性領域はアミノ末端において同定された。この領域はシグナルペプチドとして役立つようである。【0163】実施例3マトリプターゼを診断用指示薬として使用する方法前記のように、ニップル吸引液、組織生検、アーカイバル組織、穿針生検からの液体、または細胞若しくは生物体液を含む任意の生物学的試料も、細胞中におけるマトリプターゼの存在を同定する手段として使用することができる。マトリプターゼの存在は、また、授乳乳腺中以外の組織(例えば、上皮細胞)中にも検出することができる。原形質膜の局在化、RCM-分解活性およびマトリプターゼの乳房細胞中での発現を仮定すれば、蛋白質およびマトリプターゼ−蛋白質錯体の形のものが癌の逆位および転移を含めて癌の発症および進行に関わっているだろう。従って、癌の発症および進行、または他の異常な状態の発症および進行を阻害するために、マトリプターゼの活性または発現を調節する試剤を用いることができる。【0164】1つのそのような化合物は、大豆誘導ボーマン−バーク・インヒビター(BBI)である(BirkのMethods Enzymol.,45:700-7(1976))。BBIはセリンプロテアーゼの阻害剤であって、モデル系において、腫瘍の開始と進行を妨げることで抗癌活性を有すると従来から述べられている(例えば、Kennedy等のCancer Res.,56:679-82(1996)を参照されたい)。組織中のマトリプターゼは、ヒトの乳汁中に見いだされる完全形態中におけるマトリプターゼの発見とは異なる意義を有するという知見は、マトリプターゼをして、そのような阻害剤から恩恵を受ける人を確認するのを可能にする。例えば、乳房の悪性腫瘍および前悪性腫瘍状態を治療する方法は、(1)乳房組織または乳房からの体液中にマトリプターゼが存在するかどうかを確認し、そしてそのようなマトリプターゼが見いだされたならば、腫瘍形成−阻害有効量のBBIを投与することを含む。BBI濃厚物、即ちBBICは、ニップル吸引液、または穿針生検からの組織を含めて生検からの組織におけるマトリプターゼの存在により示されるように、乳癌に罹りやすい人の腫瘍開始を阻害する手段として、血液中に0.001〜1mM濃度のBBI血中レベルを達成するのに十分な用量で投与することができる。BBIは、腫瘍開始および進行モデル系での蛍光性基質検定法およびチモグラフィー(zymography)により示されるように、マトリプターゼ活性を用量依存性様式で低下させることができる。BBIはマトリプターゼ上のセリンプロテアーゼ活性部位と直接相互作用する。【0165】実施例4マトリプターゼの諸形態の分子モデリングこの実施例では、マトリプターゼの錯体化形態および非錯体化形態と相互作用することができる分子(例えば、ペプチドおよび小さい化合物)を同定する方法が説明される。本明細書に記載されるプログラムを用い、または他の入手可能なプログラムを用いる分子モデリングを利用することによって、マトリプターゼの活性部位に、またはC1r/C1sのようなマトリプターゼ上の他の適切な部位に結合する化合物を同定することができる。【0166】T-47D細胞中の主要な非錯体化マトリプターゼの差次的発現の分子基礎を理解するために、本発明者は授乳乳腺中の主要錯体化形態と比較した。錯体化マトリプターゼと非錯体化マトリプターゼとの構造の相違を比較し、そしてマトリプターゼのセリンプロテアーゼドメインの、HAI-1の両クニッツドメインとの相互作用を3次元モデリングすることによって、マトリプターゼとHAI-1との間の相互作用を調べた。これらの結果は、錯体化マトリプターゼはその活性化された2本鎖形態となっていること、およびHAI-1のクニッツドメイン1は酵素の阻害ドメインである可能性があることを明らかにした。【0167】材料および方法。mAb類の給源:ラット誘導アンチマトリプターゼmAb 21-9は、従来説明されたように(Lin等の1997、およびそれに関連する、1997年10月7日に出願されたDickson等の米国特許出願第08/957,816号明細書を参照されたい)、T-47D乳癌細胞から単離されたマトリプターゼを免疫原として用いて製造された。マウス誘導アンチマトリプターゼmAb M32およびアンチ-HAI-1 mAb M58およびM19は、実施例1に記載したように、95-kDaマトリプターゼ/HAI-1錯体を免疫原として用いて製造された。【0168】ヒトの乳汁、T-47D乳癌細胞、およびMTSV 1.1B乳汁誘導乳房上皮細胞に由来するマトリプターゼの精製----マトリプターゼは授乳乳腺により、SV40T抗原−不死化(immortalized)乳房管腔上皮細胞により、およびヒト乳癌細胞により発現される。この酵素は乳汁中に錯体化形態で検出されたが、それはMTSV 1.1B中では錯体化形態と非錯体化形態との混合物であり、またT-47D細胞中ではそれは主として非錯体化形態で存在していた。錯体化マトリプターゼを精製するために、ヒト乳汁をCM-セファロースクロマトグラフィーで分別し、次いで95−kDaのマトリプターゼ錯体画分を、前記実施例1に記載したように、アンチマトリプターゼmAb 21−9−セファロース・イミュウノアフィニティーカラム上に装填した。結合蛋白質をpH2.4の0.1Mグリシン緩衝液で溶離し、この低pH状態で貯蔵した。非錯体化マトリプターゼを精製するために、錯体化マトリプターゼおよびHAI-1を、まず、血清を含まないT-47D細胞−調節培地をアンチ-HAI-1 mAb M58-セファロースカラムを通過させることによって消耗させた。非結合画分(流通画分)をさらに21−9−セファロースカラム上に装填し、そして結合蛋白質を、従来説明されたように(Lin等の1997)、pH2.4の0.1Mグリシン緩衝液で溶離した。この溶離された蛋白質をそれらの分解を防ぐために低pH状態で貯蔵した。非錯体化マトリプターゼと錯体化マトリプターゼとの混合物はMTSV 1.1B細胞−調節培地からアンチマトリプターゼ21−9−セファロース・イミュウノアフィニティークロマトグラフィーで精製した。【0169】対角線ゲル電気泳動:非煮沸/煮沸および非還元/還元の2つの異なる対角線ゲル電気泳動を行った。非煮沸/煮沸対角線ゲル電気泳動は、実施例1に記載されたように、マトリプターゼ/HAI-1の構成成分、およびマトリプターゼとHAI-1との間の非共有結合性相互作用を調べるために用いられた。簡単に述べると、第一相において、マトリプターゼ錯体を、還元剤の非存在下において、非煮沸条件下でのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。ゲルのストリップをスライスし、還元剤の非存在下においてSDS試料緩衝液中で煮沸し、そして第二SDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させた。構成成分とそれらの共有結合性相互作用を調べるために、異なる給源からのマトリプターゼ試料を非還元/還元対角線ゲル電気泳動にかけた。第一相において、マトリプターゼを還元剤の非存在下においてSDS試料緩衝液中で煮沸し;第二相においてゲル化ストリップを還元剤の存在下で煮沸した。【0170】マトリプターゼの45−および25−kDaのフラグメントのアミノ酸配列分析:乳汁誘導95−kDaのマトリプターゼ錯体を、前記のように、CM−セファロース・クロマトグラフィーおよびアンチマトリプターゼmAb 21−9−セファロース・イミュウノアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。マトリプターゼの45−および25−kDaの両フラグメントを前記のように非還元/還元対角線電気泳動で分離し、次いでポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移した。これら2つのフラグメントのアミノ酸配列を、エール大学(Yale University)のHoward Hughes Medical Institute Biopolymer LaboratoryおよびW. M. Keck Foundation Biotechnology Resource Laboratoryにおいて、従来説明されたようにして(MatsudairaのJ. Biol. Chem.,262:10035-38(1987))測定した。【0171】トリプシン基質であるBOC-Gln-Ala-Arg-AMCの開裂により求められるマトリプターゼの蛋白質分解活性:P1部位としてアルギニンまたはリシンを持つ各種の蛍光性プロテアーゼ基質は、実施例2に記載したように、マトリプターゼにより開裂され得る。これらの基質の内で、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)-Gln-Ala-Arg−7−アミノ−4−メチルクマリン(Sigma;St. Louis、MO)が最良のものであると思われる。この基質を用いて、マトリプターゼを、pH8.5の20mMトリス(Tris)緩衝液中で、25℃において、総容量200μLで検定した。最終基質濃度は0.1mMであった。開裂速度は蛍光分光光度計(Hitachi、F-4500)で測定した。【0172】免疫ブロット法:蛋白質試料を、示したとおり、10%SDS-PAGEで分離し、PVDFに一晩かけて移動させ、続いてmAb類によりプローブした。免疫反応性のポリペプチドを、HRP-標識第二抗体およびECL検出系(Pierce、Rockford、IL;NEN、Boston、MA)を用いて可視化した。【0173】M58−セファロースカラムの調製およびイミュウノアフィニティークロマトグラフィー:mAb M58/モルのCNBR−活性化セファロース4B・5mgをメーカー指示書(Pharmacia;Piscataway、NJ)に明記されるとおりカップリングさせることによってイミュウノアフィニティーマトリックスを調製した。そのイミュウノアフィニティーカラムをPBSで平衡化し、そして1mLのカラム上にT-47Dヒト乳癌細胞からの濃縮媒体を7mL/時の流量で装填した。そのカラムを10mLのPBS中1%トリトン(Triton)X-100で、次いで10mLのPBSで洗浄した。次に、結合蛋白質を0.1Mグリシン−HCl(pH2.4)で溶離し、そして直ちに各画分を2Mトリズマ(Trizma)塩基で中和した。【0174】HAI-2のノーザン解析:T-47D細胞からの総RNA(10μg)を変性し、そして電気泳動させ、それからナイロン膜に移した。この膜を、記述されるように(Kawaguchi等のJ. Biol. Chem.,272:27558-64(1997))、32P−標識HAI-2フラグメントとハイブリッド形成させた。【0175】モデリング:MODELLER(Sali等のPROTEINS:Structure Function & Genetics,23:318-26(1995))で実行された相同性モデリングを選択して、マトリプターゼのセリンプロテアーゼドメイン(B鎖)の3次元構造、およびHAI-1の2つのクニッツドメインの3次元構造を構築した。プログラム・BLAST(Altshul等のNucleic Acids Res.,25:3389-3402(1997))を用いて、マトリプターゼおよびHAI-1と同様のアミノ酸配列を有する既知の構造を持つ鋳型蛋白質について蛋白質データーバンク(Protein Databank:PDB)(Bernstein等のJ. Mol. Biol. Chem.,112:535-42(1977))を調査した。全ての構造を目標配列と合わせるためにBLASTも使用した。PDBからのエントリー(entry)1hxeのトロンビンは一致度(identities)34%、確度(positives)53%および懸隔度(gaps)6%であって、マトリプターゼの良好な鋳型であることが見いだされた。PDB由来エントリー1aapの、アルツハイマー病β−アミロイド蛋白質前駆体のプロテアーゼ阻害剤ドメインは一致度45%および確度56%であって、HAI-1のクニッツドメインの良好な鋳型であることが見いだされた。一致度45%および確度62%を持つ同じ鋳型・1aapが、HAI-1のクニッツドメイン2の構造を構築するのに用いられた。CHARMMプログラム内でオプションのHBUILD(Brunger等のPROTEINS:Structure Function & Genetics,4:148-56(1988))を用いて水素を割り当てた。次に、このプログラム・CHARMM(Brooks等のJ. Comput. Chem.,4:187-217(1983))を、全原子パラメーターセット・CHARMM22(Mackerell, Jr.等のJ. Phys. Chem.,102:3586-16(1997))と共に用いて全ての構造を正確化した。全構造を、まず、最急降下ステップ数(Steepest descent steps)50および選定基準ニュートン‐ラフソンステップ数(Adopted-basis Newton-Raphson steps)500により最小化した。分子動力学、即ちMDのシミュレーションを用いてどの構造についてもさらに正確化した。MDシミュレーションにおいては1fsの時間ステップと300Kの温度が用いられた。CHARMMで実行されたホエニグ(Hoenig)溶媒和モデル(Sharp等のBiochem.,30:9686-97(1991))を用いて溶媒和の効果を現した。プロテアーゼ−阻害剤錯体は、その阻害剤をP1残基、クニッツドメイン1中のArg-260およびクニッツドメイン2中のLys-385によりマトリプターゼのS1部位の方向に向けることによって作られた。B鎖ナンバリング法(B chain numbering)を用いての、S1部位からの、P1残基とAsp-185との間の初期距離は17〜19Åであった。従来のMD法よりもはるかに良好な配座調査効率を有することが示された自己誘導分子動力学シミュレーション(Self-guided molecular dynamics simulation:SGMD)(Wu等のJ. Chem. Phys.,110:9401-10(1999))を用いて、マトリプターゼのセリンプロテアーゼドメインとHAI-1のクニッツドメインとの間の錯体の平衡構造を得た。HAI-1のP1残基のグアニジノ基またはアミノ基とマトリプターゼからのAsp-185のカルボキシル基との間の距離を徐々に減少させるために、抑制ポテンシャルを適用した。2つの残基間の最終距離は、PDBでのエントリー1avw(Bernstein等の1977)の大豆トリプシン阻害剤とのトリプシン錯体のX−線構造で観察される2.2〜6.0Åと設定された。マトリプターゼは、初めの100〜280psがコンピューター時間を節約するようにするために固定された。この後に100psのSGMDがマトリプターゼを束縛することなく行われた。【0176】結果:錯体化マトリプターゼは活性化された2本鎖形態であるが、その非錯体化酵素の大部分は1本鎖の酵素原形態をしている:実施例1および2において、マトリプターゼは、ヒト乳汁中のHAI-1の40−kDaフラグメントとの95−kDa錯体と比較して、T-47D細胞中に主として非錯体化形態として検出された。マトリプターゼとHAI-1との間の強い相互作用は、これを、還元剤の非存在下における煮沸後に解離させることができた。HAI-1は、また、T-47D細胞中でも主として非錯体化形態で検出されたので、マトリプターゼとHAI-1との間には相互作用は生じないようであった。ウシ膵臓トリプシン阻害剤(Ruhlmann等のJ. Mol. Biol.,77:417-36(1973))およびカボチャの種のプロテアーゼ阻害剤(Zbyryt等のBiol. Chem. Hoppe Seyler,372:255-62(1991))のようなある種のセリンプロテアーゼ阻害剤は、トリプシノゲンのような、セリンプロテアーゼの潜在形態に結合することができる。しかし、セリンプロテアーゼのほとんどで、セリンプロテアーゼ阻害剤に対するそれらの結合には、基質結合ポケットの適正な形成をもたらす、標準的な活性化モチーフにおける酵素の開裂が必要とされる。従って、T-47D細胞由来マトリプターゼとHAI-1との間の相互作用不足は、T-47D細胞によって産生されたマトリプターゼの大部分が1本鎖酵素原形態となっているという事実の結果である可能性がある。これに対して、ヒト乳汁から単離された錯体化マトリプターゼは、その活性化された2本鎖形態をしている可能性がある。さらに、マトリプターゼは、MTSV 1.1Bの乳汁誘導されたSV40T不死化乳房上皮細胞中では錯体化形態と非錯体化形態との混合物の形で検出された(実施例1を参照されたい)。これは、これらの細胞により産生された潜在的な活性化されたマトリプターゼの混合物に由来する可能性がある。この仮説をさらに検証するために、本発明者は3種の給源からマトリプターゼを単離し、そしてこれら3種のマトリプターゼ試料を非還元/還元対角線ゲル電気泳動に付した。この電気泳動アッセイでは、多重ジスルフィド結合成分を含んでいる蛋白質はそれらの構成成分に解離され、そして同じ電気泳動路上に現れる。これに対して、1本鎖蛋白質は解離されない。(乳汁からの)錯体誘導マトリプターゼは、45−kDa(A鎖)および25−kDa(B鎖)という見掛けの大きさを有する2つの群のポリペプチドに転化された。これに対して、(T-47D細胞からの)非錯体化マトリプターゼは、この対角線ゲル電気泳動系で70−kDaという見掛けの大きさを有する1本鎖として観察された。MTSV 1.1B細胞から単離された試料の場合は、常に、1本鎖マトリプターゼと2本鎖マトリプターゼとの混合物が観察された。これらの結果は、錯体化マトリプターゼは2本鎖プロテアーゼであるが、これに対して非錯体化マトリプターゼは1本鎖蛋白質であることを示唆している。【0177】 マトリプターゼの2本鎖形態生成のための切断部位の位置を決めるために、45−kDaおよび25−kDa成分を各々N−末端アミノ酸配列分析に付した。25−kDaのB鎖から得られたアミノ酸残基はVVGGTDADEGEWP(配列番号37)であった。この配列は、多分マトリプターゼ中の活性化モチーフ内の切断部位から始まる。45−kDaのA鎖(2つの主要スポットと1つの副次的スポットを含む)を配列させたとき、2つの部分的に重なり合っている配列(SFVVTSVVAFPTDSKTVQRT(配列番号38);TVQRTQDNSCSFGLHARGVE(配列番号39))が得られ、そしてその両者はマトリプターゼのアミノ末端に近い配列に合った。これら2つの異なるアミノ末端配列はマトリプターゼA鎖の2つの主要スポットに由来し、そしてこの2成分の異なる移動速度は異なるアミノ末端に由来することを示唆している。【0178】HAI-1との相互作用によるマトリプターゼの阻害:HAI-1、2つのプロテアーゼ阻害ドメイン(Kunitz ドメイン)を含むタンパク質は最初、マトリプターゼの結合タンパク質として同定された。しかしながら95-kDaマトリプターゼ/HAI-1複合体については、実施例2に記載のようにゼラチン分解活性が観察された。Kunitz 阻害剤は可逆的および競合的な様式でセリンプロテアーゼに結合し、それを阻害することが知られていることから、95-kDaマトリプターゼ/HAI-1複合体のゼラチン分解活性はザイモグラフィーの条件下に過剰なレベルの基質(1 mg/ml ゼラチン)により生じた可能性が考えられた。したがって、HAI-1がマトリプターゼ活性の阻害剤であることを証明するために、本発明者らは、セリンプロテアーゼとKunitz 型阻害剤の間にある相互作用は、酸感受性で可逆的であるという事実を利用した。マトリプターゼおよびHAI-1の両者を人乳から免疫親和性クロマトグラフィーにより共精製し、グリシン緩衝液、pH 2.4中それらの非複合体化状態に維持した。このマトリプターゼ/HAI-1プレパレーションをpH 8.0にして37℃でインキュベートすると、5分という短いインキュベーション時間ののちに、マトリプターゼHAI-1の間の相互作用(95 kDa 複合体における)が起こるのが観察された。インキュベーション30および60分後には、イムノブロットでは非複合体化マトリプターゼは検出でなかった(図13A)。非複合体化マトリプターゼについてゼラチンザイモロジーで観察された強力なゼラチン分解活性(図13B)は、95-kDa 複合体で観察されたゼラチン分解の痕跡量とは対照的である。さらに合成蛍光基質のマトリプターゼによる切断速度は複合体の形成後には低下した(図13C)。これらの結果は、HAI-1がマトリプターゼの阻害剤であり、これらの2分子の相互作用は酸感受性で可逆的な接触阻害を招くことの直接的な証拠である。【0179】HAI-1の異なるフラグメントとマトリプターゼの結合から異なるマトリプターゼ/HAI-1生じる:実施例1においては、2つのマトリプターゼ/HAI-1複合体が人乳から精製された。すなわち、(1)マトリプターゼとHAI-1の40-kDaフラグメントおよびマトリプターゼと(2)HAI-1の25-kDaフラグメントである。これに反して、T-47D乳癌細胞においては、見かけのサイズ 95- および 110-kDaの2つのマトリプターゼ複合体が抗-マトリプターゼmAbによって検出された(Linら, 1997)。これらの2つの複合体は抗-HAI-mAbによっても検出され、これはT-47D細胞-由来 110- および 95-kDa複合体はHAI-1を含有することが示唆される。しかしながら、110-kDa複合体の成分は明らかではない。したがって、これらの2複合体の成分を検討するため、抗-HAI-1mAb M58-Sepharoseおよびノンボイルドボイルド対角線電気泳動を使用する免疫親和性精製の組み合わせを実施した。期待されたように、110- および 95-kDa複合体の両者が抗-HAI-1mAb M58-Sepharoseによって精製された。これらの複合体に加えて、見かけのサイズ50-kDaおよび95-kDaの複合体を有する2つの主要なHAI-1フラグメントならびにそれらの間に小さなフラグメントが免疫親和性クロマトグラフィーによって精製され、イムノブロットで確証された、精製された110- および 95-kDa複合体の両者が還元剤の不存在下に煮沸によって解離し、マトリプターゼはこれらの2つの複合体から放出されるようであった。【0180】50- および40-kDa HAI-1フラグメントがそれぞれ110- および 95-kDa複合体の構成サブユニット(単数または複数)であるか否かをさらに検討するため、両サンプルをノンボイルドボイルド対角線電気泳動に付した(図4)。95-kDa複合体を煮沸し、マトリプターゼ、およびHAI-1の40-kDaと同じ移動速度を示す40-kDaタンパク質に変換した。110-kDa複合体を煮沸し、マトリプターゼ、およびHAI-1の50-kDaと同じ移動速度を示す50-kDaタンパク質に変換した。110- および 95-kDa複合体はいずれも固定化抗-HAI-1 mAb M58(免疫クロマトグラフィー)によって捕獲され、他の抗-HAI-1 mAb M19を用いたウムノブロット分析によって検出されるので、これらの50- および40-kDaタンパク質は抗-HAI-1 mAbと相互作用するHAI-1フラグメントであると思われる。この観察は、癌細胞由来の95-kDaマトリプターゼ複合体は、実施例1に記載したように以前単離された複合体に類似し、HAI-1の40-kDaフラグメントに結合したマトリプターゼを含有することを示唆する。110-kDa複合体はHAI-1の50-kDaフラグメントを含有する。【0181】分子モデリングにより推定されたマトリプターゼB鎖の三次元構造:マトリプターゼとHAI-1の2つのKunitz ドメイン間相互作用をよりよく理解するために、本発明者らはマトリプターゼのセリンプロテアーゼドメイン(B鎖)およびHAI-1の両Kunitz ドメインの三次元構造を描くためのホモロジーモデリングを用いた。マトリプターゼの鋳型タンパク質としてはヒトのトロンビンを使用した。マトリプターゼとヒトトロンビンの間の配列同一性および類似性はそれぞれ34%および53%であるから、マトリプターゼの3D構造は正確にモデルすることができる。HAI-1のKunitzドメイン1および2に対する鋳型タンパク質としては、アルツハイマー病アミロイドβ-タンパク質のプロテアーゼ阻害ドメインを使用した。Kunitzドメイン1および2とアルツハイマー病アミロイドβ-タンパク質の配列同一性は45%であり、モデルされた構造は、残基の90%について1Åという低い主鎖RMS誤差を有することが期待される(Sali, Curr .Opim. Biotech. 6: 37-51, 1995)。【0182】マトリプターゼとトリプシン、トロンビンおよび第Xa因子間の高い配列同一性に基づいて、本発明者らは保存的Cys残基が保存的ジスルフィド結合を形成するに違いないことを提案する。すなわち、マトリプターゼのセリンプロテアーゼドメイン(B-鎖)は3個のジスルフィド結合:Cys-27およびCys-43, Cys-162およびCys-166, Cys187およびCys216を有する可能性がある(残基番号はB-鎖自体に基づいて命名された)残基Ser-191 His-42およびAsp-97は触媒三つ組センターを形成し、これらは酵素の表面に位置する。Cys-27およびCys-43の間のジスルフィド結合は、トリプシンの場合のようにHis-42の位置を安定化する。負に荷電した残基Asp-185はS1結合部位の底部に配置され、これは、マトリプターゼのP1位置における正に荷電した残基Arg/Lysとの基質優先性を示す実験的データと一致する(実施例2)。Cys-216およびCys-187の間のジスルフィド結合ならびにAsn-220およびSer-188の間の水素結合はトリプシンの場合と同様、Asp-185の位置を安定化する。Gly-215, Gly-216, Ala-217およびGln-218はS1結合ポケットの入口に位置する。S1のポケットは、疎水性結合部位を形成するLeu-18, Ala-20, Leu-21, Ile-26およびTrp-58によって表示される。Cys-27およびCys-43の間のジスルフィド結合はIle-26の位置を安定化する。之は結合部位の幾何学に重要である。これらの特徴に加えて、マトリプターゼはAsp-46, Asp-47およびAsp-91によって形成される負に荷電した結合部位を有する。【0183】マトリプターゼに関しても同じアプローチを用いて、HAI-1のKunitzドメイン1および3におけるジスルフィド結合をアサインした。Kunitzドメイン1の3つのジスルフィド結合はCys-275とCys-296, Cys-250とCys-300, Cys283とCys-259の間にある。Cys-250とCys-300の間のジスルフィド結合はこのドメインの末端部分を架橋し、Cys-259とCys-283の間のジスルフィド結合はArg-260(P1残基)、Arg-258およびLeu-284(P1' 領域)を安定化する。【0184】HAI-1のKunitzドメイン2の構造も3つのジスルフィド結合、Cys375-Cys-425, Cys-384-Cys-408, Cys400-Cys-421を有する。Cys-375とCys-425の間のジスルフィド結合はKunitzドメイン2の末端部分を架橋する。Cys-384とCys-408はLys-385(P1残基)およびLeu-383(推定P1' 領域)を安定化する。Leu-383の位置はKunitzドメイン1からのArg-258の位置に相当することを銘記すべきである。この残基はKunitzドメイン1からのLeu-284に相当する残基はTyr-409である。これら2つの構造上の変化がKunitzドメイン2のマトリプターゼへの結合に影響する可能性がある。【0185】分子モデリングによって決定されたマトリプターゼとHAI-1の両Kunitzドメインの相互作用:Kunitzドメイン1とマトリプターゼの間の平衡化構造から、両タンパク質の間の主要な結合力は塩の架橋であることが分かる。Asp残基に結合するArg-258とArg-260は約20Å離れていることに留意するのが重要である。HAI-1のArg-260はマトリプターゼのS1部位に結合するが、これに対しHAI-1のArg-258はマトリプターゼの負に荷電した部位に結合する。類似の結合様式が、大豆トリプシン阻害剤と複合体化したトリプシンのX-線構造において以前に観察されている(Bernsteinら, 1977)。いずれの場合も、大豆トリプシン阻害愛ではIleにより、HAI-1ではCysにより分離された2つのArg残基がプロテアーゼ内の離れたAsp残基に結合する。塩架橋に加えて、HAI-1のLeu-284とマトリプターゼのAla-20, Ile-26およびTrp-58によって形成される疎水性ポケットの間には疎水性相互作用が観察された。これは、マトリプターゼが疎水性のP1' 残基を有する基質を好み、その残基のサイズはそのS1' 部位のサイズによって決定されることを示唆する。【0186】マトリプターゼとHAI-1のKunitzドメイン2間の複合体では、逆に荷電した基の間の二座配位相互作用は単座配意位相互作用よりも安定であることが知られているので、P1' 残基、Lys-385はKunitzドメイン1からのArg-260より弱く結合している。これは一連のトロンビン阻害剤で以前に観察されている。たとえば、P1残基としてArgをもつDuP714はP1残基としてLysをもつ類縁体よりも6倍Ki値を有する(Weberら, Biochem. 34: 3750-7, 1995)。Kunitzドメイン2のP1部位(Lys-385)とマトリプターゼB-鎖S1部位との間の弱い相互作用に加えて、Kunitzドメイン2におけるP1残基の隣の負に荷電した残基(Glu-386)もS1部位に対するLys-385の結合を低下させる。これに反し、Kunitzドメイン1における相当する残基は非荷電の最少の残基であるGly-261である。他の多分重要な残基はLeu-383である。この残基は推定S1' 部位に弱く結合し、この部位の基質認識のための重要性を示唆する(S1部位に加えて)。この残基はHAI-1のKunitzドメイン1からのArg-258に相当し、Kunitzドメイン2が歪みのある方向性でマトリプターゼに結合することが示唆され、これはKunitzドメイン1に比較してマトリプターゼに対するその親和性はさらに低下させるものと思われる。Tyr-409は推定S1' 結合部位のトップに結合する。Tyr-409はCys-384-Cys-408ジスルフィド結合を介してLeu-383に連結し、したがって、2つの残基の位置は相互に連結するので、Leu-383が推定S1' 部位と適切に相互作用することはできない。要約すると、本発明者らの結果は、HAI-1 Kunitzドメイン1は、HAI-1 Kunitzドメイン2よりもマトリプターゼとはるかに良好な相互作用を有する。【0187】実施例2においては、マトリプターゼは、アルギニン残基におけるその一次切断およびP2部位におけるかなりルーズな基質選択性の2つの意味でペプシン様の活性を示すことが観察された。マトリプターゼのゼラチン分解活性には、このスペクトルの広い切断活性が寄与するものと思われる。したがって、マトリプターゼの強力なタンパク分解活性が調節される正確な機構には、望ましくないタンパク分解を防止するために要求されるように思われる。大部分の他のセリンプロテアーゼ阻害剤にみられるように、マトリプターゼは一本鎖ザイモゲンちして合成され、その同族の阻害剤、HAI-1に対する結合親和性を欠いている。マトリプターゼの活性化の考えられる気候は、活性化モチーフにおける切断による一本鎖マトリプターゼの二本鎖型への変換である。したがって、マトリプターゼのタンパク分解的活性化は可逆的過程と考えられ、この酵素のそのKunitz型阻害剤との相互作用は望ましくないタンパク分解を防止するために重要な阻害剤のコントロールを提供する可能性がある。この仮説を支持するものは、大部分のマトリプターゼが未複合体化一本鎖またはその阻害剤に強固に結合して観察された二本鎖型のいずれかに検出されたという事実である。【0188】哺乳時に哺乳動物の基底膜の再モデリングが上昇し(Beckら, Biochem. Bio phys. Res. Commun. 190: 616-23, 1993)、この過程でプロテアーゼが関与している(Talhoukら, Development 112: 439-49, 1991)。ヒト乳汁中におけるマトリプターゼの同定はこの酵素が、組織再モデリングおよび哺乳の他の態様で重要な役割を果たしている可能性を示唆する。この仮説は、人乳中ではマトリプターゼがとくに活性化された2鎖型で同定される事実によってさらに確認され、プロテアーゼの活性化は哺乳時に増強されることが示唆される。マトリプターゼは哺乳中の乳腺では活性化されるが、HAI-1への結合により阻害される。これらの結果は、マトリプターゼがザイモゲンとして合成され、適切な時期に適切な場所でのみ活性化され、ついで望ましくないタンパク分解を防止するためにHAI-1により阻害され、最終的にはマトリプターゼ/HAI-1複合体として乳汁中に放出されると思われることを示唆するものである。【0189】T-47D乳癌細胞においては、一本鎖マトリプターゼがプロテアーゼの主要な型であり、その複合体(110- および95-kDa)もイムノブロットにより容易に検出することができる。にもかかわらず、マトリプターゼは初期にはこの細胞型に、ゼラチンザイモグラフィーでアッセイし(Shiら, Canc. Res. 53: 1409-15, 1993)主要なゼラチン分解活性として同定された。これらの結果は、一本鎖マトリプターゼは酵素的に活性であるか、またはT-47D細胞によって発現される一本鎖マトリプターゼに類似のサイズを有する痕跡量の二本鎖の活性なマトリプターゼが存在することを示唆する。一本鎖マトリプターゼの活性三つ組部位および基質結合ポケットが十分に形成されていない場合に、高レベルの一本鎖マトリプターゼおよびHAI-1がそれらの非複合体化型で共存することから、後者の可能性は考え難い。T-47D細胞中に見出されたゼラチン分解に寄与する低レベルの二本鎖マトリプターゼの存在が考えやすい。一本鎖マトリプターゼが完全に潜伏性であることを証明する本発明者らの実験を行うためには、二本鎖マトリプターゼの夾雑のない一本鎖マトリプターゼをもつことが必要である。活性化部位に点突然変異を有するマトリプターゼの発現は、二本鎖マトリプターゼの夾雑のない一本鎖マトリプターゼを得る最も説得性のある方法である。【0190】HAI-1は、55-kDa、完全な膜タンパク質として、そのC末端における推定膜貫通ドメインに基づいて合成される(Shimomuraら, J. Biol. Chem. 272: 6370-6, 1997)。これは、膜結合阻害剤の見かけのサイズが55-kDa であり、膜分画との阻害剤の会合は2M KClの洗浄に抵抗し、完全膜タンパク質の特徴があることの観察によって支持される。HAI-1の50-kDa フラグメントはHAI-1の切断型であるらしい。切断部位は、50-kDaフラグメントがT-47D細胞の条件付けメジウム中阻害剤の主要な型として検出されたことから、膜ドメインに近いと考えられる。50-kDa HAI-1はKunitzドメインおよびLDL受容体ドメインの両者を有し、マトリプターゼと相互作用して110-kDa複合体を形成できるものと考えられる。【0191】50-kDa HAI-1 フラグメントの更なる分解も、C末端、多分Kunitzドメイン内で起こる可能性があり、40-kDa フラグメントを発生すると思われる。40-kDa フラグメントのアミノ末端配列はGPPPAPPGLPAGであることが同定された(実施例2および Shimomuraら, 1997)ので、このフラグメントは全Kunitzドメイン2をカバーするのに十分大きくはない(Shimomuraら, 1997)。したがって、40-kDa HAI-1 フラグメントは無傷な唯一のKunitzドメイン(Kunitzドメイン1)およびLDL受容体ドメインを含有するものと思われる。この40-kDa HAI-1フラグメントはまたマトリプターゼと複合体化して95-kDa種を形成することもできる。依然としてマトリプターゼに対する結合親和性を示す実施例1で考察した25-kDa フラグメントは、最初の7つのアミノ酸残基が阻害剤の残基154から160をまたぐ配列と同一であることから、HAI-1のArg-153における40-kGa阻害剤フラグメントの切断によって発生したものと思われる。40-kDa フラグメントと共通して、25-kDa フラグメントはKunitzドメイン1とLDL受容体ドメインのみを含有し、マトリプターゼと相互作用して85-kDa複合体を形成できる。これらの観察は。Kunitzドメイン2ではなくKunitzドメイン1がマトリプターゼの阻害性ドメインであるらしいことを示唆する。マトリプターゼおよびその阻害剤、ならびにそれらの相互作用を図14に要約する。【0192】HAI-1のKunitzドメイン1がマトリプターゼの阻害に関与できるドメインであるとの仮説は、さらにコンピューターモデリングからの観察により支持される。Kunitz 1ドメインおよびKunitz 2は両者とも、正に荷電したP1残基(Arg-260ドメイン1およびドメイン2中のLys-385)を含有するので、それらはそれぞれトリプシン様セリンプロテアーゼたとえばマトリプターゼを、それらの残基を基質結合ポケットにはめるために用いて阻害する可能性をもっている。Kunitzドメイン1では、第二の塩架橋が複合体を安定化するばかりでなく、基質が活性部位に接近するのを遮断するように阻害剤を方向づける。この相互作用はKunitzドメイン2との複合体には欠けている。したがって、Kunitzドメイン1はマトリプターゼとの安定な複合体の形成に関与するドメインであるように思われる。この示唆は、阻害剤の40-kDaおよび25-kDaフラグメントがマトリプターゼと安定な複合体を形成できることの観察と一致する。【0193】第二のの塩架橋は、マトリプターゼの陰イオン性部位に架橋する、阻害剤のArg-258と同一であった。可能性のある抗-トリプシン様セリンプロテアーゼKunitzドメイン(P1部位におけるArgまたはLys)を含有するタンパク質の検索はGenBankにおいて実施した。本発明者らは、ヒトにおけるHAI-1のArg-238に相当する位置にArg残基を含有する第二のKunitz型阻害剤を同定した。別のグループで同定されたこのタンパク質はGeneBankにおける受入番号(ABOO 6534; U78095; およびAF027205)を有し、胎盤ビクニン(Marlorら, J. Biol. Chem. 272: 12202-8, 1997)またはHGFアクティベーターインヒビター2(FAI-2)(Kawaguchiら, J. Biol. Chem. 272: 27558-64, 1997)と命名された。HAI-1と同様にHAI-2は、MKN 45ヒト胃癌細胞から同定され、HGFアクティベーターの阻害剤であることが示された(Kawaguchiら, 1997)。HAI-2はその膜貫通ドメインおよびその2つのKunitzドメインで類似する。HAI-2はまたヒト胎盤からも単離されている。それが2個のKunitzドメインを含有することから、それは胎盤ビクニンとも命名されている(2つのKunitzドメイン)。それのHGFアクティベーターの遮断に加えて、胎盤ビクニンはヒト胎盤、ヒト組織カルクレイン、ヒト血漿カリクレインおよびヒトXIa因子の強力な阻害を示す(Delariaら, J. Biol. Chem. 272: 12209-14, 1997)。【0194】マトリプターゼとKunitzドメイン1の間に同定される第三の重要な結合力は、阻害剤のLeu-284とマトリプターゼ中の、Leu-18, Ala-20, Ile-26およびTrp-58によって限界を定められた疎水性ポケットの間の疎水性相互作用である。胎盤ビクニン/HAI-2のKunitzドメイン1におけるこのLeu-284に相当する残基は、負に荷電された残基Asp-72であり、これは、マトリプターゼが胎盤ビクニン/HAI-2に遭遇したときにはこの疎水性相互作用は起こらないことを示唆する。したがってマトリプターゼはその同種阻害剤(HAI-1)に比較して胎盤ビクニン/HAI-2と弱い相互作用をする。この考え方は、マトリプターゼ阻害剤(HAI-1)および胎盤ビクニン/HAI-2の両者がノーザンビロットにより測定されるように、T-47D細胞およびMTSV 1.1B細胞によって発現されることの観察により支持される。HAI-1のみがマトリプターゼの複合体中に同定された。【0195】110- および95-kDaマトリプターゼ/HAI-1複合体の成分の化学量論は直接決定されていないが、測定されたマトリプターゼ(70-kDaの見かけ上のサイズおよびHAI-1(40- および50-kDaフラグメント)は、それらのサイズおよび生成した複合体のサイズに基づいて互いに 1:1 のモル比で結合するように思われる。本発明者らは、マトリプターゼに対して少量の40-kDa HAI-1フラグメントのみが煮沸によって95-kDaマトリプターゼから解離したことに注目する。この比較的少量の40-kDa タンパク質の出現は、その小さなサイズおよび多分、クーマッシーブルーに対する弱い親和性から生じることができたものと思われる。マトリプターゼとHAI-1の間の結合は、これらの2つのよりコンパクトなコンフィギュレーションを生じるように思われ、したがってゲル電気泳動上ではマトリプターゼ/HAI-1複合体の見かけのサイズはそれらの成分の総和よりも小さい。【0196】マトリプターゼおよびその同種阻害剤は完全な膜タンパク質として生合成されるものと思われる。「TM」は膜貫通ドメインの位置を指示する。「I」はKunitzドメインドメイン1を、「II」はKunitzドメインを2、「L」はLDL受容体ドメインである。両タンパク質の提案された処理工程は実施例4に記載する。【0197】実施例5活性な二本鎖マトリプターゼに特異的に向けられたmAbの産生マトリプターゼの活性化を検討するために、本発明者らは二本鎖マトリプターゼを特異的に認識するが、一本鎖型は認識しない2つの抗-マトリプターゼmAbを得た(図17)。他のセリンプロテアーゼと同様に、マトリプターゼの活性化には標準の活性化モチーフでの一本鎖特異的ペプチド結合の切断が要求される。この切断は不活性セリンプロテアーゼを触媒的に活性型に転換しないのみでなく、別個の高度に局在するコンフォーメーション変化も誘発しない。したがって、これらの活性化関連コンフォーメーションの変化に向けられたmAbは理論的に、活性なマトリプターゼをその潜伏型から識別できる。本発明者らの以前の研究では、免疫原として95-kDa マトリプターゼ/KSP1 複合体を用いて80以上のハイブリドーマクローンを発生させた。ハイブリドーマは95-kDa マトリプターゼ/KSP1 複合体をノンボイルド条件下に認識可能で、非複合体化マトリプターゼは煮沸後に認識できるmAbについて選択した。これらの抗-マトリプターゼmAbはT-47D乳癌細胞を用いて、複合体化したマトリプターゼ(たとえば、二本鎖型)を不複合体化マトリプターゼ(たとえば、一本鎖型)から識別できるmAbを選択するために条件付けメジウムを使用してさらに試験した。T-47D細胞の細胞条件付けしたメジウム中では、マトリプターゼは不複合体化一本鎖型および2つのマイナーな見かけのサイズ110- および95-kDaのマトリプターゼ/KSP1複合体として優先的に発現した。不複合体化の活性なマトリプターゼも存在するようで、ゼラチンザイモロジーによる主要なゼラチン分解活性として検出された。これらの抗-マトリプターゼmAbはここではmAb M130と表示され(図17, レーン1)、マトリプターゼは主として複合体型および煮沸後に解離した2つの複合体型(110- および95-kDa)中に検出された(図17, レーン2)。これに反し、mAb M123(IgG1)は95- および110-kDaマトリプターゼ複合体(図17, レーン3)ならびにmAb M130を認識するが、mAb M123は不複合体化マトリプターゼを弱いバンドによって示されるように(図17, レーン3)mAb M130 より弱く認識した。110- および95-kDaのマトリプターゼ複合体の免疫活性シグナルは煮沸後にマトリプターゼに変換された(図17, レーン4)。さらにmAbおよびM69(IgG1)を特徴づけるために、二本鎖マトリプターゼに対して特異的な他のmAb(M32)を選択した。本発明者らは、ヒト乳汁から精製された二本鎖マトリプターゼおよびT-47D細胞から精製された一本鎖マトリプターゼを用いて抗体の免疫反応性を比較した。乳汁由来およびT-47D由来マトリプターゼはいずれも抗-マトリプターゼmAb M32によって認識された(図17, それぞれレーン5および6)が、mAb M123(図17, それぞれレーン7および8)およびmAb M69(図17, レーン9および10)はマトリプターゼの二本鎖型を認識するのみであった。さらに、マトリプターゼの二本鎖型はマトリプターゼの一本鎖型よりも遅い移動速度を有するように思われた(図17, レーン5をレーン6と比較)。【0198】本発明を上記実施例を参照しながら詳細に説明したが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な改変が可能であることを理解すべきである。この出願に引用されたすべての特許および刊行物はその全体を引用により本明細書に導入する。以下の1999年3月12日に出願された関連米国特許出願および特許、すなわち米国特許出願一連番号60/124,006, および1999年1月9日に発行された米国特許5,482,848(Dicksonら)、ならびに1997年10月27日出願のU.S.S.N.08/957,815(Dicksonら)はそれらの全体が引用により本明細書に導入される。【図面の簡単な説明】【図1】 (抗マトリプターゼmAb 21-9に対して免疫活性のある110‐と95‐kDaタンパクの同定および母乳からの部分的精製)母乳タンパクは硫酸アンモニウムを加えることによって2つのプール、40%プール(A)および40−60%プール(B)、に分画した。両方の分画はさらにDEAEクロマトグラフィ−を用いて精製した。DEAE分画は癌細胞由来のマトリプターゼと反対方向に誘導されるmAb 21-9を用いた免疫ブロット解析によって測定した。95-および110-kDaの2つのバンドを指示されたように検出し、非複合体マトリプターゼは検出しなかった。Cにおいては、プールされた110-kDa(レーン1と2)および95-kDa(レーン3と4)の両方の分画は室温(煮沸なし)もしくは95℃(煮沸あり)で5分間SDS-PAGEに先だって還元剤なしで1×SDSサンプル緩衝液の中でインキュベートした。またこれはmAb-21-9を用いたウエスタンブロット法にかけた。110-kDaタンパクは煮沸後泳動の速度が減少した。しかしながら、95-kDaタンパクは煮沸後非複合体のマトプリターゼに変換された。【図2】 (マトリプターゼ複合体の免疫親和性精製)イオン交換クロマトグラフィー(図1参照)で部分的に精製されたマトリプターゼ複合体はmAb 21-9-セファロースカラム上に充填した。結合タンパクはpH2.4のグリシン緩衝液で溶出し、2Mトリズマの追加によって中和した。溶出タンパクは室温(レーン1、煮沸なし)もしくは95℃(レーン2、煮沸あり)で5分間還元剤なしで1×SDSサンプル緩衝液内でインキュベートした。サンプルはSDS-PAGEによって溶解し、コロイドクーマシーで染色した。数バッチの精製で例の中に記載したように、95-kDaマトリプターゼ複合体は主要バンドとして検出した。この95-kDa複合体は煮沸後に非複合体のマトリプターゼおよび40-kDaのダブレットに変換されることが可能であった。他の数バッチにおいては、95-kDa複合体に加えて、識別できるサイズの85-kDaを含有したより小さい複合体もまた検出した(レーン1)。この85-kDaマトリプターゼ複合体はまた煮沸の不完全マトリプターゼおよび25-kDaバンドに変換されることが可能であった(レーン2)。分子量マーカーを示している。それはそれぞれBP‐40およびBP-25、40-および25-kDa結合タンパクである。【図3】 (この複合体が40-kDa結合タンパクダブレットに関連した非複合体マトリプターゼに一致するという証拠を示している95-kDaマトリプターゼ複合体の対角線ゲル電気泳動法)母乳由来の95- kDaマトリプターゼ複合体は対角線ゲル電気泳動にかけた。1次元(D)において、煮沸処理しない95-kDaマトリプターゼ複合体はSDS-PAGEを用いて分解した。その後ゲルの細片をスライスし、5分間還元剤なしで1×SDSサンプル緩衝液中で煮沸した。また第2のSDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動を行なった。タンパクはコロイドクーマシーを用いて染色した。この手順の後、95-kDaマトリプターゼ複合体は対角線系から消失しマトリプターゼおよび40-kDa結合タンパクダブレット(BP-40)に変換された。非複合体マトリプターゼは予想されたように、対角線系で観察され、泳動の速度が煮沸によって変化しなかったことを示唆している。【図4】 (マトリプターゼおよびその結合タンパクの反対方向に誘導されるモノクロナール抗体によるマトリプターゼ複合体の構造的キャラクタライゼーション)A、1パネルのmAbsが免疫原として母乳由来マトリプターゼ複合体を用いて生成した。これらのmAbsは図2の凡例の中に記載した95-および85-kDaマトリプターゼ複合体の両方を含有した標本を用いた免疫ブロット解析によって特徴づけた。マトリプターゼ標本は還元剤なしで1×SDSサンプル緩衝液内で溶解し、室温(レーン1、3および5、煮沸なし)もしくは95℃(レーン2、4、および6、煮沸あり)で5分間インキュベートした。これらのmAbsの間に、抗マトリプターゼmAb(M92)および2つの抗結合タンパクmAbs(M58およびM19)が認められた。mAb M92は煮沸なしの条件下で95-および85-kDaマトリプターゼ複合体を認識し(レーン5)、煮沸後解離したマトリプターゼと相互に作用した(レーン6)。しかし煮沸後40-および25-kDaバンドとは相互に作用しなかった。抗結合タンパクmAb M19は煮沸なしの条件下で95-および85-kDa複合体の両方を(レーン3)、煮沸後40-および25-kDaバンドの両方を認識した(レーン4)。もう一方のmAb M58は煮沸なしの条件下で95-kDaマトリプターゼ複合体のみを認識した(85-kDa複合体は認識しなかった) (レーン1)。このmAbによって40-kDaバンドが検出されたが、25-kDaバンドもしくは解離したマトリプターゼは検出されなかった(レーン2)。図のBはこれらの複合体およびそのサブユニットと反対方向に誘導されたマトリプターゼ含有複合体およびmAbsの構造の要約である。それらはそれぞれBP-40およびBP-25、40-および25-kDa結合タンパクである。【図5】 (結合タンパクとヒト肝細胞成長因子アクチベータ阻害剤(HAI-1)のアミノ酸配列比較) アミノ酸末端の12アミノ酸(GPPPAPPGLPAG)(配列番号2)および7アミノ酸(TQGFGGS)(配列番号3)配列がそれぞれ40-kDa結合タンパクダブレットおよび25-kDa結合タンパクから得られた。またHAI-1のアミノ酸36-47および154-160に一致した。さらに40-kDa結合タンパクダブレットのより大きいバンドのトリプシン分解物から得られた12の固有のペプタイドをMALDI-MSを用いてHAI-1(配列番号1)と比較した。これらのペプタイドは位置135-310もしくは17%の完全なHAI-1をスパンした87残基で構成された。2筋のアミノ末端タンパク配列には2重のアンダーラインを引き、またMALDI-MSを用いて同定された残基135-143、154-164、165-172、173-182、173-190、183-190、194-199、203-214、204-214、288-301、および302-310(配列番号1)を含む12ぺクタイドにアンダーラインを引いている。【図6】 (抗結合タンパクmAb M-19を用いたCOS-7細胞において発現したHAI-1タンパクのウェスタンブロット解析)逆転写酵素ポリメラーゼ鎖切除によって生成された、および完全なコード化領域を含むHAI-1cDNA分画を発現ベクターpcDNA3.1内に挿入し、COS-7細胞内に移入した。HAI-1を移入したCOS-7細胞(レーン2)、COS-7細胞(レーン3)、およびマトリプターゼを移入したCOS-7細胞(レーン1)、および2M KClで洗浄したT-47Dヒト乳がん細胞の膜分画(レーン4)から得られた細胞溶解産物は抗結合タンパクmAb M19を用いたウェスタンブロット解析にかけた。【図7】 (ヒト包皮線維芽細胞、線維肉腫および不死化した乳腺上皮細胞におけるマトリプターゼおよびその複合体の発現解析)それぞれの細胞系の血清を含有しないの条件の培養液中に遊離された総タンパクを収集し、濃縮した。総タンパク(3μgのタンパク/レーン)を室温(煮沸なし)もしくは95℃(煮沸あり)還元剤なしで1×SDSサンプル緩衝液内でインキュベートした。SDS-PAGEにかけポリビニリデンフルオライド(PVDF)膜に移入し抗マトリプターゼmAb 21-9を用いて精査した。レーン1(HS27)および2(HS68)はヒト包皮線維芽細胞である。レーン3はHT-1080線維肉腫細胞である。レーン4-11は4個の母乳由来SV40-不死化乳腺上皮細胞である。それらはMTSV-1.1B(レーン4と5)、MTSV-1.7(レーン6と7)、MRSV-4.1(レーン8と9)およびMRSV-4.2(レーン10と11)である。非複合体マトリプターゼに加えて、マトリプターゼの増加に関連して種々のレベルの95-および110-kDa複合体が煮沸しないサンプルにおいて認められたが、煮沸処理によって消失した。【図8】 (母乳由来の95-kDa複合型におけるマトリプターゼの精製)イオン交換クロマトグラフィーを用いて得られた部分的に精製された95-kDaマトリプターゼ複合体はmAb 21-9-セファロースカラム上に充填した。結合タンパクはpH2.4のグリシン緩衝液で溶出し、2Mトリズマを加えて中和した。溶出されたタンパクは室温(レーン1、煮沸なし)もしくは95℃(レーン2、煮沸あり)5分間還元剤なしで1×SDSサンプル緩衝液の中でインキュベートした。サンプルはSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて溶解し、コロイドクーマシー(A)を用いて染色するか、もしくはmAb 21-9(B)あるいはゲラチンザイモグラフィー(C)を用いた免疫ブロット解析にかけた。95-kDaマトリプターゼ複合体は主なタンパクとしてこの親和性カラムから溶出した(A、レーン1)。それはmAb 21-9によって認識した(B、レーン1)。またゼラチン溶解活性を示した(C、レーン1)。95-kDaマトリプターゼ複合体は煮沸によってマトリプターゼに変化した(A、レーン2)。95-kDaプロテアーゼのゼラチン溶解活性は煮沸によって消失し、しかし低いレベルのゼラチン溶解活性が残り、マトリプターゼに変化した(C、レーン2)。低いレベルの非複合体マトリプターゼが親和性クロマトグラフィーを用いて95-kDaマトリプターゼ複合体とともに副精製された(A、レーン1)。それはまたゼラチン溶解活性を示した(C、レーン1)。免疫ブロット解析により非複合体マトリプターゼのシグナルが亢進され、その存在を再確認した(B、レーン1)。数種の他のポリペプタイドがまた認められた(A、レーン1と2)。それらの中には長くX線フィルムに曝露された後mAb 21-9を用いて認識されたためプロテアーゼの分解生成物である可能性のあるものもあった。40-kDaタンパクダブレットは煮沸しないサンプルにおいて低いレベルで認められた(A,レーン1)が、そのレベルが煮沸後上昇した(A、レーン2)。この40-kDaダブレットはmAb 21-9によって認識されなかった(B)。我々はこれら2つのポリペプタイドがマトリプターゼの結合タンパク(BPs)である可能性があったということを述べている。分子量マーカーの大きさが示されている。【図9】 (マトリプターゼcDNAクローン(配列番号4)のヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列) 逆転写酵素ポリメラーゼ鎖反応として用いられるプライマー(5'末端における20塩基および3'末端における18塩基)にアンダーラインを引いている。5'終末のプライマーを超えた33塩基および3'終末プライマーを超えた92塩基はSNC19 cDNAから得られ、組み込まれた。cDNA配列(配列番号4)がオープンリーディングフレーム内の第5ATGコドンから翻訳された。ヌクレオタイドおよびアミノ酸数は左に示している。マトリプターゼから得られた内部配列に一致する配列は2重のアンダーラインを引いている。His-484、Asp-539、およびSer-633がボックスされ、マトリプターゼの推定触媒性トリアドを示している。潜在性Nグリコシル化部位を示している(△)。RGD配列を示している【図10】 (トリプシン、キモトリプシンを含有した、また他のセリンプロテアーゼの触媒性領域を含有したマトリプターゼのC末端領域のアミノ酸配列の比較) マトリプターゼのC末端領域(アミノ酸431-683)(配列番号6)をヒトトリプシン(配列番号13)(Emiら、Gene(Amst)41:305-10(1986))、ヒトキモトリプシン(配列番号14)(TomitaらBiochem.Biophys.Res.Commun.158:569-75(1989))、ヒトエンテロペプチダーゼ(配列番号7)の触媒性鎖(Kitamotoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:7588-92(1994))、ヒトヘプシン(配列番号10)(Leytusら、Biochemistry 27:1067-74(1988))、ヒト血液凝固因子XI(配列番号11)(Fujikawaら、Biochemistry 25:2417-24(1986))、およびヒトプラスミノーゲン(配列番号12)、および2つの経膜セリンプロテアーゼのセリンプロテアーゼ領域、ヒトTMPRSS2(配列番号8)(Paoni-Giacobinoら、Genomics 44:309-20(1997))およびDrosophila Stubble-stubbloid遺伝子(Sb-sbd)(配列番号9)(Appelら、Proc.Natl.Acad,Sci.USA 90:4937-41(1993))と比較した。相同関係を最大にするギャップをダッシュで示している。触媒性トリアド(マトリプターゼHis-484、Asp-539、およびSer-633)における残基をボックスし、示している(▲)。保存活性モチーフ((R/K)VIGG) (配列番号34)がボックスされ、タンパク分解活性部位を示している。4個の分子内ジスルフィド結合を形成するために必要な8個の保存シスチンがボックスされた。推定される対は次の通りである。それはCys-469-Cys-485、Cys-604-Cys-618、Cys-629-Cys-658、およびCys-432-Cys-559である。ジスルフィド結合はCys-432-Cys-559である。ジスルフィド結合Cys-432-Cys-559は2本鎖セリンプロテアーゼにおいて認められた。しかしトリプシンおよびキモトリプシンでは認められなかった。基質ポケットにおける残基(Asp-627、Gly-655、およびGly-665)がボックスされ示されている基質ポケットの底部に位置した残基はキモトリプシン内のSer以外に、マトリプターゼを含有したトリプシン様プロテアーゼ内のAspであるということが明白である。【図11】 (他のタンパクにおける相同領域の配列を伴った非触媒性領域の部分的配列のアラインメント) A、マトリプターゼのシステインリッチ反復(アミノ酸280-314、315-351、352-387および394-430)(配列番号15)をヒトLDL受容体(配列番号16)(SudhofらScience:815-22(1988))、LDL受容体関連タンパク(LRP)(配列番号17)(Herzら、EMBO J.7:4119-27(1988))、ヒトパーレカン(perlecan)(配列番号18)(Murdochら、J.Biol.Chem.267:8544-57(1992))、ラットGP-300(配列番号19)(Raychowdhuryら、Science 244:1163-65(1989))の共通配列と比較する。共通配列がボックスされている。B、Clr/s型の配列のマトリプターゼ(Mt; アミノ酸42-155および168-268)(配列番号20及び21)をヒト補体サブコンポーネントClr(アミノ酸193-298)(配列番号22)(Leytusら、Biochemistry 25:4855-63(1986): Jurnet. Biochem J.240:783-87(1986))、Cls(アミノ酸175-283) (配列番号23)(Machinnonら、Eur. J. Biochem. 169:547-53(1987)、Tosiら、Biochemistry 26:8516-24(1987))Ra反応性因子(RaRF)(アミノ酸185-290) (配列番号24)(Takadaら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 196:1003-9(1993); SatoらInt. Immunol. 6:665-9(1994))、およびカルシウム依存性セリンプロテアーゼ(CSP)(アミノ酸181-289) (配列番号25)(Kinoshitaら、FEBS Lett.250:411-5(1989))の選択領域と比較する。一致した配列はボックスされている。【図12】 (マトリプターゼの領域構造を示す)マトリプターゼの構造を図で示している。プロテアーゼは683のアミノ酸より成り、タンパク生成物は75,626Daの算出された質量をもっている。プロテアーゼは2つの縦列補体サブコンポーネントClrとCls領域および4つの縦列LDL受容体領域を含む。セリンプロテアーゼ領域はカルボキシル末端に存在する。【図13】 (HAI-1によるマトリプターゼの阻害)マトリプターゼおよびHAI-1は例1で述べたように抗マトリプターゼmAb 21-9免疫親和性クロマトグラフィーを用いて母乳より分離した。またpH2.4の0.1Mグリシン溶出緩衝液内で非複合体状態で維持した。この標本はpH8.5に調整し、0、5、30、および60分間37℃でインキュベートした。また抗マトリプターゼmAb 21-9(パネルA)、ゼラチンザイモグラフィー(パネルB)を用いた免疫ブロット法にかけた。また合成蛍光基質BOC-Gln-Ala-Agr-7アミド4メチルクマリン(パネルC)を用いた切断速度検定にかけた。0分で、マトリプターゼは非複合型の中に検出し、強いゼラチン溶解活性(パネルB)、および急速な可溶基質切断(パネルC)を示した。37℃5分のインキュベーションのあとで、マトリプターゼは非複合体および複合体の両方において検出した(パネルA)。非複合体マトリプターゼはゼラチン溶解活性を示し、一方複合体マトリプターゼでは非常に弱い活性が認められた(パネルB)。蛍光基質の切断速度は18%まで有意に減少した。30および60分のインキュベーションの後、マトリプターゼを主に複合型において検出した(パネルA)。ゼラチンザイモグラフィー(パネルB)によってまた蛍光基質の切断によってごくわずかな活性が認められた。マトリプターゼおよびHAI-1の複合体ではない母乳由来マトリプターゼ関連110kDaプロテアーゼ(パネルAに示したように)およびSDSゲルにおけるその泳動が煮沸後減少した(例1を参照)。【図14】 (マトリプターゼおよびその同系酵素阻害剤のプロセシングおよび相互作用の図式表示)マトリプターゼおよびその同系物質の阻害剤の両方が完全な膜タンパクとして生合成されるようである。「TM」は経膜領域の配置を示している。「I」はクニッツ領域1、「II」クニッツ領域2および「L」はLDL受容体領域を表す。【図15】 (ヒトマトリプターゼの核酸配列(配列番号26)) 配列番号26は、切断型のマトリプターゼをコードする配列番号4と比較してコード化されたタンパクのアミノ酸末端に位置した最初の172のアミノ酸をコード化している追加的核酸配列を含む。配列番号26はマトリプターゼをコード化している核酸の標準の長さを示している。一方配列番号4は切断型である。その配列はGenBank Accession No.AF18224で認められる。【図16】 (ヒトマトリプターゼのアミノ酸配列(配列番号27)) この配列はLinらJ.Biol.Chem.274:18231-6(1999)(配列番号5)で述べられた配列より大きい855のアミノ酸を含有する。配列番号27はマトリプターゼタンパクの標準の型である。一方配列番号5はアミノ酸末端において172のアミノ酸が欠乏している切断されたマトリプターゼタンパクである。そのタンパク配列はGenBank Accession No.AAD42765で認められる。【図17】 (活性2本鎖マトリプターゼの反対方向に特異的に誘導されたmAbsの生成)このウエスタンブロット法はモノクロナール抗体M130(レーン1と2)、M123(レーン3、4、7と8)、M32(レーン5と6)および、M69(レーン9と10)の親和性を異なる型のマトリプターゼと比較する。 ヒトの二本鎖(活性)型マトリプターゼに特異的に結合し、ヒトの一本鎖(チモーゲン)型マトリプターゼには結合しない、モノクローナル抗体または免疫学的に活性なそのフラグメントであって; 該免疫学的に活性なフラグメントはscFv、Fab、Fab’、及びF(ab’)2からなる群から選択され; 該ヒトの二本鎖(活性)型マトリプターゼは、 配列番号27の1−614番目のアミノ酸配列で表されるサブユニットAと、 配列番号27の615−855番目のアミノ酸配列で表されるサブユニットBからなり、 該サブユニットAとBは、サブユニットAのアミノ酸C604とサブユニットBのアミノ酸C731の間のジスルフィド結合により、結合しており;及び 該ヒトの一本鎖(チモーゲン)型マトリプターゼは配列番号27の1−855番目のアミノ酸配列で表される; モノクローナル抗体または免疫学的に活性なそのフラグメント。 前記一本鎖型マトリプターゼが配列番号4のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを含み、かつ前記二本鎖型マトリプターゼが前記一本鎖型マトリプターゼの切断によって産生される、請求項1に記載のモノクローナル抗体または免疫学的に活性なそのフラグメント。 二本鎖型ヒトマトリプターゼが肝細胞増殖因子アクチベーターインヒビターI(HAI−1)又はそのフラグメントを含む複合体に存在する、請求項1に記載のモノクローナル抗体または免疫学的に活性なそのフラグメント。 悪性腫瘍、前悪性腫瘍状態、又は二本鎖型マトリプターゼの発現を特徴とする患者における病理学的状態の治療用の請求項1−3のいずれか1項に記載の抗体または免疫学的に活性なそのフラグメント。 悪性腫瘍、前悪性腫瘍状態、又は二本鎖型マトリプターゼの発現を特徴とする患者における病理学的状態の治療用の薬剤の製造のための請求項1−4のいずれか1項に記載の抗体または免疫学的に活性なそのフラグメントの使用。配列表


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