タイトル: | 特許公報(B2)_各種疾患検出用の呼気検査処理方法 |
出願番号: | 2000593240 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 33/497 |
フィリップス, マイケル JP 4415160 特許公報(B2) 20091204 2000593240 20000112 各種疾患検出用の呼気検査処理方法 フィリップス, マイケル 501326517 保科 敏夫 100088029 フィリップス, マイケル US 09/229,020 19990112 US 60/143,242 19990709 US 09/436,798 19991108 20100217 G01N 33/497 20060101AFI20100128BHJP JPG01N33/497 A G01N 33/48-98 特開平08−173401(JP,A) 国際公開第97/038307(WO,A1) 特開平06−047047(JP,A) 特開平09−166587(JP,A) 国際公開第98/024362(WO,A1) 特表平08−510948(JP,A) 17 US2000000707 20000112 WO2000041623 20000720 2002534697 20021015 66 20061206 山村 祥子 【0001】発明の背景発明の分野この発明は哺乳類における疾患の診断に関し、さらに詳しくはヒトにおける特定疾患検出用に呼気検査を用いる処理方法に関する。【0002】関連技術の簡単な説明ヒトの呼気の揮発性有機化合物肺胞気は吸入した空気とは化学的組成が明らかに異なる独特のガスである。揮発性有機化合物(VOC)は吸入した空気より減少するか(人体における分解(degradation)および/または排泄による)、又は代謝生成物として呼気に付加される。この変化の幾つかの特徴は古くから良く理解されて来た。たとえば、酸素は減少し二酸化炭素はグルコースの好気性代謝により付加される(Phillips M.,Breath tests in medicine,Scientific American 1992:267(1):74−79)。Pauling et al.,は1971年にコールド・トラッピングを用いて呼気のVOCを濃縮し、通常のヒト呼気には低濃度で数百種類の様々なVOCが含まれることが分かった(Pauling L.Robinson Ab,Teranishi R and Cary P:Quantitative analysis of urine vapor and breath by gas−liquid partition chromatography,Proc.Nat.Acad.Sci.USA.,1971:68:2374−6)。この知見はその後、徐々に一層高度な高感度のアッセイを用いて別の多数の研究施設で確認された。通常のヒト呼気において低濃度で数百種類を越える様々なVOCが観察された(Phillips M:Method for the collection and assay of volatile organic compounds in breath(呼気の揮発性有機化合物の捕集法及びアッセイ)Analytical Biochemistry 1997;247;272−278)。【0003】反応性酸素種群(ROS)はミトコンドリアにおけるエネルギー生成の際の有毒副産物である。「酸化的(oxidative)ストレス」は酸化的ダメージの定常的集中でROSがDNA、タンパク、脂質及びその他の生物学的に重要な分子を傷つける。Fridovich I.,The biology of oxygen radicals(酸素ラジカルの生物学),Science 201:875−880;1978;Prior,WA:Measurement of oxidative stress status in humans(ヒトにおける酸化的ストレス状態の測定),Cancer Epidemiol.Biomarkers Prev.2(3):289−292;1993(図1)。酸化的ストレスは加齢及び数種の疾患において病理的機構として関連がある。Ashok BT;Ali R:The aging paradox:free radical theory of aging(加齢のパラドックス:加齢のフリーラジカル理論),Exp Gerontol 1999 34(3):293−303;Saretzki G and von Zglinicki T:(Replicative senescence as a model of aging:the role of oxidative stress and telomere shortening――an overview)(加齢モデルとしての複製老齢期:酸化的ストレスとテロメア短縮の役割――その概略)Z Gerontol Geriatr 1999;32(2):69−75;Halliwell B,Gutteridge JMC,Cross CE:Free radicals,antioxidants,and human disease:Where are we now?(フリーラジカル、抗酸化物質、とヒト疾患:今我々はどこに?)J Lab Clin Med 119:598−620;1992.結果として、酸素は有用であると同時に有害であると認識されている:酸化的代謝においては電子の最終的な受容体であるがゆえに哺乳類の生命を維持するには必須だが、この過程においては酸化的ストレスや組織損傷を惹起するものでもある。【0004】疾患マーカーとしての呼気アルカン類吸入大気と肺胞気におけるVOCの分析は臨床医学における潜在的な応用を備えた有用な研究ツールである。呼気の分析は正常な代謝経路に非侵襲的な窓を開け、またこれらの経路が疾患において如何に改変されるかを示す。呼気におけるアルカンは生体内での酸素フリーラジカル(OFR)活性のマーカーである。OFRは脂質の過酸化により生物学的膜を分解し多価不飽和脂肪酸(PUFA)をアルカンに変換して、これが肺から揮発性有機化合物として排泄される(Kneepkens CMF,Ferreira C.Lepage G and Roy CC:The hydrocarbon breath test in the study of lipid peroxidation;principles and practice(脂質過酸化の研究における炭化水素呼気検査:原理と実践),Clin Invest Med 1992;15(2):163−186;Kneepkens CMF,Lepage G and Roy CC:The potential of the hydrocarbon breath test as a measure of lipid peroxidation(脂質過酸化の尺度としての炭化水素呼気検査の可能性),Free Radic Biol Med 1994;17:127−60)(図5)。呼気におけるペンタン増加は乳癌(Hietanen E,Bartsch H,Beireziat J−C,Camus A−M,McClinton S.Eremin O,Davidson L and Boyle P:Diet and oxidative stress in breast,colon and prostate cancer patients:a case control study(乳癌、大腸癌、前立腺癌症例における食事療法と酸化的ストレス:症例対照研究),European Journal of Clinical Nutrition 1994;48:575−586)、心臓移植拒絶反応(Sobotka PA,Gupta DK,Lansky DM,Costanzo MR and Zarling EJ:Breath pentane is a marker of acute cardiac allograft rejection(呼気ペンタンは急性心臓同種移植拒絶反応のマーカーである).J.Heart Lung Transplant 1994;13:224−9)、急性心筋梗塞(Weitz ZW,Birnbaum AJ,Sobotka PA,Zarling EJ and Skosey JL:High breath pentane concentrations during acute myocardial infarction(急性期心筋梗塞における高濃度の呼気ペンタン).Lancet 1991;337:933−35)、精神分裂症(Kovaleva E.S,Orlov O.N,Tsutsul’kovskaia Mia,Vladimirova T.V,Beliaev B.S:Lipid peroxidation processes in patients with schizophrenia(精神分裂症患者における脂質過酸化の過程).Zh Nevropatol Psikiatr 1989:89(5):108−10)、関節リュウマチ(Humad S.Zarling E.Clapper M and Skosey JL:Breath pentane excretion as a marker of disease activity in rheumatoid arthritis(関節リュウマチにおける疾患活性マーカーとしての呼気ペンタン排泄量),Free Rad Res Comms 198;5(2):101−106)、気管支喘息(Olopade CO,Zakkar M,Swedler WI and Rubinstein I:Exhaled pentane levels in acute asthma(急性喘息での呼出ペンタンレベル),Chest 1997;111(4):862−5)。呼気アルケンの分析は潜在的に、これらの疾患の早期検出のための新規かつ非侵襲的な方法を提供し得る(Phillips M:Breath tests in medicine(医学における呼気検査),Scientific American 1992;267(1):74−79)。アルカンはアルキル・アルコールやおそらくはメチル・アルカンなど他のVOCへ分解される(Phillips M:Method for the collection and assay of volatile organic compounds in breath(呼気における揮発性有機化合物の捕集とアッセイの方法),Analytical Biochemistry 1997;247:272−78)。しかし臨床的に有用な疾患マーカーを提供できるような、呼気におけるこうした化合物の排泄に関してはほとんど情報がない。酸化的ストレスのVOCマーカーについての呼気検査は比較的新しい研究分野であり、公表された情報は多数の領域で不足している。第1に、呼気アルカンの研究はそれぞれn−3及びn−6PUFAの分解産物であるエタンとペンタンに専ら関心が集まっている。ヘキサンとオクタンも動物の呼気で観察されているが、正常なヒト呼気での長鎖VOCについてはほとんど情報がない。第2に、大半の研究では、吸入外気におけるアルカンの存在をほとんど又は全く考慮していないが、ほぼ普遍的な汚染物質であるように思われる。CailleuxとAllainは呼気及び吸入大気における濃度がしばしば極めて類似していたことから、ペンタンがヒト呼気の正常な成分であるかどうか疑問視している(Cailleux A & Allain P:Free Radicals Res Commun 1993;18:323−327)。この問題は呼気における濃度と環境大気における濃度の間の差、VOCの肺胞気濃度勾配の決定により解決できる(Phillips M.Sabas M & Greenberg J:Free Radical Res Commun.1994;20:333337)。【0005】乳癌のマーカーとしての呼気アルカン類乳癌は現在米国において女性10人に1人程度が罹患する一般的な病気である。定期的なスクリーニング・マンモグラフィーによる早期発見は死亡率を20〜30%減少できる。しかし、マンモグラフィーは高価であり、しばしば苦痛を伴う胸部圧迫を必要とし、放射線に対する暴露が必須であり、10年の期間にわたってスクリーニングした女性の1/3に偽陽性が見られる(Elmore JG,Barton MB,Moceri VM,Polk S,Arena PJ and Fletcher SW:Ten−year risk of false positive screening mammograms and clinical breast examinations(偽陽性スクリーニング・マンモグラムと臨床的乳癌健診の10年危険率)。少なくともマンモグラフィーと同程度の感度と特異性があるが、簡単、安全で、苦痛が少なく、かつ高価でないスクリーニング検査を乳癌について行なう臨床的必要性がある。チトクロームP450(CYP)系は薬剤やその他の生体異物を代謝する混合機能オキシダーゼ酵素群を含む。この系はまた、たとえばn−ヘキサンを2−および3−ヘキサノールへといったように、アルカンをアルコールへ代謝する(Crosbie SJ,Blain PG and Williams FM:Metabolism of n−hexane by rat liver and extrahepatic tissues and the effect of cytochrome P40 inducers(ラット肝臓及び肝外組織によるn−ヘキサンの代謝とチトクロームP40誘導体の作用).Hum Exp Toxicol 1997;16(3):131−137)。有効なチトクロームP−450インヒビターで処理したラットは10倍のヘキサン及びその他の呼気VOCを示し、肝脂質過酸化の増加が見られなかったことから、VOCクリアランスについてのこの経路の有用性を示している(Mathews JM,Raymer JH,Etheridge AS,Velez Gr and Bucher JR:Do endogenous volatile organic chemicals in breath reflect and maintain CYP2E1 levels in vivo?(呼気における内因性揮発性有機化合物は生体内CYP2E1レベルを反映維持するか?)Toxicol Appl Pharmacol 1997;146(2):255−60)。正常動物における研究では、チトクロームP450代謝によって肝臓が体からのアルカンのクリアランスの主要な部位であることを示した(Burk−RJ;Ludden−TM;Lane JM:Pentane clearance from in spired air by the rat:dependence on the liver(ラットによる吸気からのペンタン・クリアランス).Gastroenterology.1983 84(1):138−42:Daugherty−MS;Ludden−TM;Burk−RF:Metabolism of ethane and pentane to carbon dioxide by the rat(ラットによるエタンとペンタンの二酸化炭素への代謝),Drug−Metab−Dispos.1988;16(5):666−71)。しかし、幾つかの最近の報告によれば、チトクロームP450代謝は肝臓に限られないことが示されている。アルカンからアルコールへの代謝はチトクロームP4502E1又は2B6を示す腎臓、脳、骨格筋のミクロゾームにおいても観察されている(Crosbie SJ,Blain PG and Williams FM:Metabolism of n−hexane by rat liver and extrahepatic tissues and the effect of cytochrome P−450 inducers.(ラット肝臓及び肝外組織によるn−ヘキサンの代謝とチトクロームP−450誘導体の作用)Hum Exp Toxicol 1997;16(3):131−137)。チトクロームP450系はヒト乳房組織にも存在する。Murray et al.は、乳癌及びその他の組織の癌においてチトクロームP−450CYP1B1が発現したことを報告した(Murray GI,Taylor MC,McFadyen MC,McKay JA,Greenlee WF,Burke MD and Melvin WT:Tumor−specific expression of cytochrome P450 CYP1B1(チトクロームP450CYP1B1の腫瘍特異性発現).Cancer Res 1997;57(14):3026−31)。Huang et al.は、ヒト乳房組織におけるチトクロームP450のうち生体異物代謝を行なうCYP1,CYP2,CYP3亜群の活性を検出した(Huang Z,Fasco MJ,Figge HL,Keyomarsi K and Kaminsky LS:Expression of cytochromes P450 in human breast tissue and tumors(ヒト乳房組織及び主要におけるチトクロームP450の発現).Drug Metab Dispos 1996;24(8):599−905)。彼らが見出したのは、「...正常及び腫瘍組織が同一固体に由来する場合、正常組織のほうが高い増幅が見られた...であるから、その場で(in situ)考えられる生体異物の生物学的活性と治療用薬剤の変異の装置はヒト乳房組織に存在している」これらを合わせて考えると、研究によって示されたのは:1.アルカンはチトクロームP450酵素によって生体内で代謝される。2.チトクロームP450酵素は正常及び新生物ヒト乳房組織に存在する。3.乳癌は正常乳房組織におけるチトクロームP450活性の増加を惹起する。4.したがって乳癌はアルカンの代謝増加を惹起する。Hietanen et al.は乳癌の病歴がみられる女性20例と年齢性別の一致する対照群とを研究した(Hietanen E,Bartsch H,Beireziat J−C,Camus A−M,McClinton S.Eremin O,Davidson L and Boyle P:Diet and oxidative stress in breast,colon and prostate cancer patients:a case control study,(乳癌、大腸癌、前立腺癌症例における食事療法と酸化的ストレス:症例対照研究)European Journal of Clinical Nutrition 1994;48:575−586)。癌患者における平均呼気ペンタン濃度(2.6ppb、SD=2.8)は対照群におけるそれより有意に高かった(0.6ppb,SD=1.1,p<0.01)。彼らは周辺大気におけるペンタン濃度を報告しておらず、ペンタンの肺胞気濃度勾配も報告していない。【0006】心筋虚血性疾患のマーカーとしての呼気アルカン類300万以上の患者が毎年米国では胸痛のために入院している。そのコストは急性疾患にかかっていないと分かったものについてだけでも30億ドルを越えている。急性胸痛があるが心筋虚血のない多くの患者は特別なサービスに受け入れられて疼痛の原因を調べられる(Hoekstra JW and Gibler WB;Chest pain evaluation units:an idea whose time has come,(胸痛評価単位:最期が訪れたアイデア)JAMA 1997;278(20):1701−2)。主な目標は不安定狭心症の検出であって、これは潜在的に致命的である。こうした患者の評価はしばしば広範かつ高額であり、心エコー、負荷心電図(ECG)、心筋シンチグラフィー、ホルター心電図など包括的な一連の検査を必要とする。このような一連の検査を用いて、Fruergaard et al.は急性胸痛があるが心筋梗塞のない患者204例を評価した。もっとも一般的な疫学は胃・食道疾患で、これについで虚血性心疾患や胸壁症候群が見られた。全診断例の1/3未満がハイリスク・グループに含まれている(Fruergaard P,Laundbjerg J,Hesse B et al:The diagnoses of patients admitted with acute chest pain but without acute myocardial infarction(急性胸痛で入院したが急性心筋梗塞を伴わない患者の診断).Eur Heart J 1996;17(7):1028−34)。McCullough et al.は胸痛が見られるが基本的には心電図正常の患者の入院の実施はコスト的に好ましからざることであり、1救命あたり170万ドルであることを示した(McCullough PA,Ayad O,O’Neill WW and Goldstein JA:Costs and outcomes of patients admitted with chest pain and essentially normal electrocardiograms(胸痛で入院し基本的に正常心電図の患者のコストと転帰.Clin Cardiol 1988;21(1):22−6)。これらやその他の充分に記載された研究にもかかわらず、急性胸痛があるが心筋梗塞のない患者が共通に入院するのは、不安定狭心症と突然死のリスクがある場合に患者を退院させることに医師が抵抗するためである。したがって、心臓原性胸部痛があり入院が利益となるハイリスク患者と、心臓胸部痛がなく安全に帰宅できて外来患者として評価し得るローリスク患者との間の識別ができるような診断検査には臨床的必要性と経済的必要性が存在する。このような検査は未確認(unrecognized)の心臓疾患からの致命率や罹患率を潜在的に減少し得る一方で、同時に不必要な入院件数を減少することによりヘルスケア・システムにかかるコストを減少することができる。非侵襲的呼気検査がこのような検査を提供し得ると言う新しい証拠がここに存在する。心筋の酸素フリーラジカル活性が虚血性心疾患において増加すると言うますます多くの一連の証拠が存在する。酸化的ストレスも心臓の手術による再潅流の間又は血栓溶解後に増加し、一過性の左心室不全又は昏倒に関連する(Ferrari R;Agnoletti L;Comini L;Gaia G;Bachetti T;Cargnoni A;Ceconi C;Curello S;Visioli O;Oxidative stress during myocardial ischaemia and heart failure(心筋虚血及び心不全の間の酸化的ストレス),Eur Heart J 1998;19Suppl B:B2−11)。昏倒のメカニズムを説明する2大仮説は、酸素フリーラジカル活性のバーストから又はカルシウムに対する収縮フィラメントの感受性喪失から得られると言うものである。これらの仮説は相互に排他的ではなく、また同じ病理生理学的機序の別の側面を表現しているように思われる。心筋原性昏倒は臨床的には様々な条件で発生し、これは心臓が一過性の虚血に暴露される、たとえば不安定狭心症、初期の再潅流が見られる急性心筋梗塞、運動負荷が惹起する虚血、心臓手術及び心臓移植などの場合である(Bolli R:Basic and clinical aspects of myocardial stunning(心筋原性昏倒の基礎と臨床的側面),Prog Cardiovasc Dis 1998;40(6):477−516:Miura H;Morgan DA;Gutterman DD;Oxygen−derived free radicals contribute to neural stunning in the canine heart(酸素誘導フリーラジカルがイヌ心臓における神経性昏倒に関与する),Am J Physiol 1997;273(3 pt 2):H1569−75)。1991年、Weitz et al.は10例の健康な被験者と比較して、急性心筋梗塞のある患者10例で呼気ペンタンが有意に増加したことを報告した(Weitz ZW,Birnbaum AJ,Sobotka PA,Zarling EJ and Skosey JL:High breath pentane concentrations during acute myocardial infarction.(急性期心筋梗塞での高濃度呼気ペンタン)Lancet 1991;337:933−35)。しかし、これらの結果は、急性心筋梗塞の患者15例、安定狭心症のある15例、健康被験者15例の間で呼気ペンタンに有意差がなかったとする同じ研究施設での後続の研究で問題視された(Mendis S.Sobotka PA and Euler DE:Expired hydrocarbons in patients with acute myocardial infarction(急性心筋梗塞患者での炭化水素排出),Free Radic Res 1995;23(2):117−22)。心血管移植を受けようとする5例の患者においてバルーンガス抜きのあとで呼気ペンタンに有意な増加を観察した(Mendis S,Sobotka PA,Leja FL and Euler DE:Breath pentane and plasma lipid peroxides in ischemic heart disease,(虚血性心疾患における呼気ペンタンと血漿過酸化脂質)Free Radic Biol Med 1995;19(5):679−84)。しかし、Kohlmuller and Kochenは呼気ペンタンアッセイにおける基本的な瑕疵を示した:ガスクロマトグラフ(GC)に使用されたカラムが呼気中にもっとも多く含まれる化合物であるイソプレンからペンタンを分離しなかったことである。呼気ペンタンとして研究者が報告したものは呼気ペンタンが恐らくペンタンとイソプレンの混合物だったようである(Kohlmuller D;Kochen W:Is npentane really an index of lipid peroxidation in humans and animals? A methodological reevaluation.(n−ペンタンがヒトや動物における脂質過酸化の指標になり得るか?)Anal Biochem 1993 May 1;210(2):268−76)。この研究で使用されたGCカラムペンタンとイソプレンを互いに分離するものである(Phillips M,Sabas M and Greenberg J:Alveolar gradient of pentane in normal human breath(正常ヒト呼気におけるペンタンの肺胞気濃度勾配).Free Radical Research Communications 1994;20(5):333−337)。【0007】心臓移植拒絶反応のマーカーとしての呼気アルカン類1967年12月、南アフリカ在住の外科医クリスチャン・バーナード医師は最初のヒト心臓移植を実施した。その3日後、ブルックリンの外科チームは米国で最初の心臓移植を実施した。それ以来、米国における約165拠点を含め、世界中の271拠点で36,000例を越える心臓移植が行なわれている。今日、米国において、移植心臓のレシピエントである20,000人近くが元気に生活している。患者選択の改善、外科的技術の改良、新しい抗生物質、よりよい心筋保護、移植片拒絶を識別するため右心室心筋生検の適用により全体としての生存率が向上した。しかし、移植レシピエント管理におけるもっとも有意な変化は1980年代に導入されて商業的に広く入手可能になったシクロスポリンによる。今日、1年生存率は全体として80%を越えており、報告されている5年及び10年生存率は65〜70%に達している。1980年代初頭のシクロスポリン導入により、生命を脅かす急性の移植片拒絶反応の発生は大幅に減少した。残念なことに、シクロスポリンを基剤とする3剤併用免疫抑制療法を受け入れる患者は拒絶反応の末期まで移植片拒絶の生理的病態を示さない。しかし、シクロスポリン導入以前も、移植片拒絶の症状と兆候は極めて非特異的で、一般に倦怠感、疲労感、呼吸困難、浮腫、食欲不振といった微妙な心電図上の変化の範囲だった(Winters GL,Loh E,Schoen FJ:Natural history of focal moderate cardiac allograft rejection(焦点性中程度心臓移植片拒絶反応の自然病歴),Circulation 1995;91:1975.Billingham ME,Cary NRB,Hammond EH et al:A working formulation for the standardization of nomenclature in the diagnosis of heart and lung rejection study group(心臓及び肺拒絶反応研究グループの診断における病名標準化の暫定規則).Heart Transplant 1990;9:587)。拒絶反応を診断する非侵襲的技術たとえば心電図の変化又は拡張期機能不全を示唆する心エコーの指標は比較的低感度であって臨床的には日常的に使用されて来なかった。同様に、タリウムや磁気共鳴イメージングも有用であると証明されていない。したがって、右心室心筋生検が他の技術全てと比較して標準として残ったのである。心臓移植レシピエントにおける右心室心筋生検の主な目的は移植片拒絶反応を同定すること、治療効果の評価、及び感染源の除外である。生検は術後6週間について毎週、術後3か月までは隔週、術後6か月までは毎月施行する。これ以降の間隔は一般に個人別に決定される。残念なことに、右心室心筋生検は頻繁でないとしても血腫、感染、不整脈、心室穿孔、冠動脈右心室瘻の発生などを含む合併症が関連する。安全かつ非侵襲的診断検査による心臓移植片拒絶反応検出の代替法について臨床的必要性が存在する。移植片拒絶反応の早期発見を提供するための呼気検査の生化学的基礎は良く記載されている。炎症によって発生する組織損傷が細胞間の酸素フリーラジカル(OFR)の堆積を伴っており、これが脂質膜の脂質過酸化を惹起する(Kneepkens CMF,Ferreira C,Lepage G and Roy CC:The hydrocarbon breath test in the study of lipid peroxidation:principles and practice(脂質過酸化研究における炭化水素呼気検査:原理と実践).Clin Invest Med 1992;15(2):163−186.Kneepkens CMF,Lepage G,Roy CC.The potential of the hydrocarbon breath test as a measure of lipid peroxidation(脂質過酸化の指標としての炭化水素呼気検査の可能性).Free Radic Biol Med 1994;17:127−60)。この過程は呼気中に排出されるアルカン類の発生をともなう。こうしたアルカンの一つであるペンタンはOFR活性のなかで最も良く記載されているマーカーである。Sobotka et al.は心臓移植片機能が安定している外来患者37例を研究した(Sobotka PA,Gupta DK,Lansky DM,Costanzo MR and Zarling EJ:Breath pentane is a marker of acute cardiac allograft rejection(呼気ペンタンは急性心臓移植片拒絶反応のマーカー).J Heart Lung Transplant 1994;13:224−9)。呼気ペンタンはガスクロマトグラフィーで測定され結果がルーチン・サーベイランスの心筋生検と比較された。拒絶反応と一致する組織病理学的知見が対照の52%において心筋生検に存在していた。軽度の拒絶反応を示す被験者での平均ペンタン排出濃度(4.2nmol/l,SD=2.8)又は中程度の拒絶反応でのそれ(5.4nmol/1,SD=2.6)は拒絶反応を示さなかった被験者で見られた濃度を越えていた(1.7nmol/l,SD=0.9)(p<0.02)。ペンタンのカットオフ値2.43nmol/lは、もっとも高いマイナスの予測値を得られるように選択されたもので、、感度が0.80だった。著者らは呼気ペンタン排出が心臓移植片拒絶反応検出に対して高感度で非侵襲的なスクリーニング検査であると結論した。これらの有望な結果は批判を呼んだ。Holt et al.は分析技術の詳細が不備であると記載した。大半のクロマトグラフィー用カラムがヒト呼気にもっとも多量に含まれる成分のイソプレンからペンタンを分離しないことから本当にイソプレンを検出しなかったのかどうかである(Holt DW,Johnston A and Ramsey JD:Breath pentane and heart rejection(呼気ペンタンと心臓拒絶反応).J Heart Lung Transplant 1994;13:1147−8.Kohlmuller D,Kochen W:Is n−pentane really an index of lipid peroxidation in humans and animals? (n−ペンタンは本当にヒトや動物において脂質過酸化の指標となり得るか?)A methodological reevaluation.Anal Biochem 1993;210:266−76)。【0008】末期腎臓病のマーカーとしての呼気アルカン類末期腎疾患(ESRD)は腎臓移植又は血液透析又は腹膜液透析のいずれかで治療されない限り致命的な状態である。しかし、透析はESRDの治療ではない。米国におけるESRDプログラムでの患者の年次粗死亡率は、1982年の20%から1991年の約24%へと増加し、そのまま継続している(1)。高い死亡率が部分的には症例混合要因たとえばESRDプログラムへ重篤な随伴疾患を持つ古い患者を受け入れたことによる。これにもかかわらず、死亡率がなぜこれほどまでに高いか、またどのような潜在的可逆性因子が関係しているかについての明解な理解がない。慢性腎不全患者と接している臨床医家は古典的な尿毒症性口臭になれている。「魚が腐ったような」「アンモニア臭」「悪臭」などと様々に表現されて来た(2)。Schreiner and Maherは尿毒症のレビューにおいて腐敗した尿の匂いと比較した上でアンモニア臭と表現した(3)。慢性腎不全における早期透析の導入以来、胃潰瘍と細菌の異常増殖による口臭のある衰弱患者はほとんど見られなくなった。しかし、ESRD患者において常に魚の腐ったような匂いは未だ目立っており、口腔内のバクテリアによるものではなく、根源的に全身性のものであることを示唆している。1925年初頭に尿毒症性口臭はトリメチルアミンによるものであるとオスラーの教科書に記載された(4)。1963年には、Simenhoff et al.は、重症尿毒症患者の血中、脳脊髄液中、脳内のジメチルアミンレベルの増加を報告した(5)。彼はGCを使ってこの研究を尿毒症患者の呼気分析まで拡張した(2)。彼は2級と3級アミンである、ジメチルアミン、トリメチルアミンの濃度増加を発見した。両者とも血液透析によっても非吸収性抗生物質による治療によっても有意に減少した。彼はこれらのVOCが一部には尿毒症呼気における古典的な魚の腐ったような匂いの原因であること、又小腸内の細菌異常増殖によって発生することを結論した。腎不全における異常呼気VOCの研究に無負荷呼気検査を使うことは過去20年にわたってほとんど注目されなかったが、無負荷呼気検査を使用する多数の研究が報告されている。Scherrer et al.は鎮痛剤乱用に起因する慢性腎不全の患者における肝細胞ミクロソーム代謝の促進を示すために呼気アミノプリン検査を使用した(6)。Heinrich et al.は放射性標識アミノフェナゾンを用いた同様の研究をESRD患者において行ない、チトクロームP450混合機能オキシダーゼの抑制と透析による有意な復元(reversed)を観察した(7)。Maher et al.は血液透析中にフリーラジカルが介在する肺傷害の潜在的役割を調査した。彼らは血液透析の初めの2時間の間に呼気の過酸化水素を研究したが有意な変化は見られなかった(8)。Epstein et al.は呼気中の放射性標識CO2の排出を研究して慢性腎不全患者におけるαケトイソ吉草酸の脱炭酸の変化を示した(9)。トリクロルエチレンが惹起する腎臓毒性の動物モデルにおいて、Cojocel et al.は呼気中のエタンの増加を発見し、酸素フリーラジカルが誘発する脂質過酸化の役割を示した(10)。さらに、放射標識尿素を用いた呼気検査はESRD患者においてH.pylori感染率の増加を示すために用いられている。【0009】呼気メチル化アルカンの概要Phillips et al.は以前にメチル化アルカンが正常なヒトにおいてと肝癌に罹患したヒトにおいて呼気中の共通成分であることを発見している。Phillips M,Herrera J,Krishnan S,Zain M,Greenberg J and Cataneo RN:Variation in volatile organic compounds in the breath of normal humans(正常なヒト呼気中の揮発性有機化合物の変動).Journal of Chromatography B 629(1−2):75−88;1999;Phillips M,Gleeson K,Hughes JMB,Greenberg J,Cataneo RN,Baker L and McVay WP:Volatile organic compounds in breath as markers of lung cancer:a cross−sectional study(肝癌のマーカーとしての呼気における揮発性有機化合物:横断研究).Lancet 353:1930−33;1999.これらのVOCは酸化的ストレスのさらなるマーカーを提供するように思われる。【0010】発明の要約改良された分析技術を用いて正常なヒト50例の呼気におけるもっとも豊富な揮発性有機化合物(VOC)を測定した。動力学分析を用いてVOC(室内空気の存在比を引いた呼気の存在比)の肺胞気濃度勾配が代謝と排泄によりVOCを体内で合成するレートと体内から排出されるレートの間の差で変化することを示した。人体における酸素フリーラジカル(OFR)活性の新しいマーカーを開発した:呼気アルカンプロファイルである。これはC2からC2Oアルカンまでの範囲の広いスペクトルの肺胞気濃度勾配を炭素鎖長の関数としてプロットしたものを含んだ。呼気における二つのアルカン代謝産物について同様のプロファイルを開発した:アルキル・アルコール類と2メチルアルカン類である。これらのプロファイルは、生体内VOCの合成対クリアランスの相対的優位を示すことによりヒト代謝の新規かつ非侵襲的なプローブを提供する。これらの呼気プロファイルを、乳癌、心臓原性共通、腎疾患、加齢の臨床研究において評価した。対照及び疾病患者の呼気プロファイルは対数回帰分析で比較した。呼気アルカンプロファイルはスクリーニング・マンモグラフィーを受ける女性35例で判定した。10例は生検で乳癌が証明された。呼気アルカンプロファイルは100%の感度及び特異性で乳癌の女性を同定した。呼気アルカンプロファイルは不安定狭心症患者8例においてと既知の心疾患病歴がない正常対照50例において判定した。呼気アルカンプロファイルは100%の感度及び特異性で不安定狭心症患者を同定した。呼気アルカンプロファイルの変化は後続の冠動脈形成術中に悪化した。呼気アルカンプロファイルは病院救急室で急性発症した胸痛患者19例において判定した。10例は不安定狭心症を有し9例は急性心筋梗塞を有していた。心疾患の既知の病歴がない正常対照50例との比較で、呼気アルカンプロファイルは心臓原性胸痛患者を同定し、不安定狭心症と急性心筋梗塞を100%の感度と特異性で識別した。呼気アルカンプロファイルと呼気アルキルアルコール・プロファイルは心臓移植レシピエントの213例の研究で判定した。二人の病理医が心筋内生検を独立して観察し182例では治療が必要ないが、13例で治療が必要であると一致した。呼気アルカンプロファイルと呼気アルキルアルコール・プロファイルの組み合わせは治療を必要とする心臓移植拒絶反応を感度84.6%特異性80.2%で同定した。先進的な新規の呼気検査は高感度高特異性で乳癌や心臓原性胸痛の検査を提供するように思われる。プロファイルは全ての条件で互いに異なっていた。呼気アルカンプロファイルは乳癌患者において下向きに移動したが、虚血性心疾患の患者においては上向きに移動した。呼気アルカンプロファイルと呼気アルキルアルコール・プロファイルが両方とも心臓移植の拒絶反応において上向きに移動した。呼気検査のこれらの結果はこれらの疾患におけるOFRについて記載された病態生理と一致するものである。【0011】この発明のさらなる態様において、体内の酸素フリーラジカル(OFR)活性の新規マーカーを開発した:呼気アルカンプロファイルである。これは呼気アルカンプロファイルである。これはC2からC20アルカンまでの範囲の広いスペクトルの肺胞気濃度勾配を炭素鎖長の関数としてプロットしたものを含んだ。呼気における二つのアルカン代謝産物について同様のプロファイルを開発した:アルキル・アルコール類と2メチルアルカン類である。これらのプロファイルは、生体内VOCの合成対クリアランスの相対的優位を示すことによりヒト代謝の新規かつ非侵襲的なプローブを提供する。この発明の方法においてメチル化アルカン類を呼気アルカンプロファイルと組み合わせて呼気メチル化アルカン輪郭分析(BMAC)という酸化的ストレスの新しい三次元的マーカーを構築した。この技術はメチル化アルカンの肺胞気濃度勾配を決定することとこのデータを三次元プロットに取り込むことにより、この発明において改良された。つまり、肺胞気濃度勾配対n−アルカン類の炭素鎖長がすでにプロットされている場合、第3の次元をプロットに追加し、これがn−アルカンの炭素鎖に沿ったメチル化の部位(あるいはサイト)である。メチル化の部位を同定することで得られた情報は、肺胞気濃度勾配及びn−アルケンの炭素鎖長に加えて、ヒトにおける酸化的ストレスの新規かつユニークな高感度マーカーを作り出している。この明細書に提示したデータにおいて、正常なヒトの検査で収集したデータと心臓移植拒絶反応を起こしている患者において収集したデータから、次のようなことが示される:1.酸化的ストレスは年齢が一致する正常対照においてよりも心臓移植レシピエントにおいて大きかった。2.酸化的ストレスは心臓移植拒絶反応の重症度にしたがって増加した。3.臨床的に有意な拒絶反応について呼気検査は高感度で特異的である。【0012】この発明の好適実施例の詳細な説明前述したように、肺胞気呼気を回収して分析するための方法は当業者に周知である。この発明は分析結果の解釈とこれをプロファイル化してヒトにおける疾患の有無を判定することを含む。この明細書において使用される術語「アルカン」又は「n−アルカン」は以下の式の炭化水素を表わす:CH3|CnH2n|CH3ここでnは1から18までの整数である。以下の例はこの発明を実施するための方法と過程(process)を示し、この発明の実施について、発明者によって意図される好適な態様を記載したものである。【0013】呼気VOC捕集分析のための装置呼気捕集装置(BCA):この装置は前述した(Phillips,前述)。要約すると、BCAは可搬型でマイクロプロセッサ制御の装置であり加熱式呼気タンクを備え、これが水の凝集を防止する。肺胞気呼気は呼気タンクからソルベント・チューブを通って圧送され、活性炭にVOCを捕獲する。本研究においては、200mgのCarbotrapC(20/40メッシュ)と200mgのCarbopackB(60/80メッシュ)(Supelco,Inc,Bellefonte,PA)を内蔵する改質ソルベント・チューブを使用した。呼気サンプルの容積はパネル装着タイマーとフローメータを経由して変更できるようになっており、システムのジオメトリは死腔内の気体で事実上汚染されていない肺胞気呼気をサンプルに含むことを保証している。【0014】呼気サンプルの捕集:使い捨てマウスピースを介して被験者がBCAへ呼気を吹き込む。BCAは内径の広い呼気タンク(直径1.0インチ)が遠位端で大気に開放されているため呼出に対して最小限の抵抗しか示さなかった。サンプルは不快な思いをすることなく高齢者又は寝たきりの患者からでも捕集できた。捕集区間は毎分0.5リットルで2.0分で、二つのサンプルを回収した。ひとつは呼気、もう一つは背景となる室内の大気である。アッセイの器具と手順:VOCはソルベント・チューブから脱着し自動熱デソルバ(ATD 400,Perkin Elmer,Norwalk,CT)へ濃縮し、ガスクロマトグラフで分離してマススペクトロメータ(HP6890およびmass selective detector 5973,Hewlett Packard,Palo Alto,CA)で同定定量した。ソルベント・チューブはカローセルに装着し(容量50)、洩れをチェックしてからヘリウムを1.0分パージして水蒸気と空気を除去した。内部標準(0.25 ml 2 ppm 1−ブロモ−4−フルオロベンゼン,Supelco Inc,Bellefonte,PA)をATD400標準注入アクセサリ経由で追加した。サンプルは300℃で脱着し0℃のコールドトラップへ(ローフローATD400エア・モニタリング・トラップ)へ4分間(ヘリウムフロー毎分50ml、アウトスプリットフロー毎分2.0ml)流した。コールドトラップを急速に300℃まで加熱して脱着したサンプルを石英シリカ輸送管経由で(0.25m.m.ID,200℃、ヘリウムフロー1.25ml/min)でクロマトグラフィーのカラム(SPB−5キャピラリー・カラム,30m×0.25m.m.×0.25ミクロンフィルム厚,Supelco Inc,Bellefonte,PA)へフラッシュした。カラム温度は次のように立ち上げた:0℃で8分間、毎分4℃で138℃まで、0.10分ホールド、毎分10℃で210℃まで、0.10分ホールド、毎分30℃で300℃まで、0.25分ホールド。データ管理:各々のクロマトグラフィー・ピークからのデータは、リテンションタイム、化学的同定(Wiley138 libraryで同定された通り)、曲線下面積(AUC)、適合品質を含め、自動的にスプレッドシートへ(Excel 4.0,Microsoft,Redmond,WA)ダウンロードされ、さらにリレーショナル・データベース(Paradox,Borland,Scotts Valley,CA)へまとめられた。各々のVOCの肺胞気濃度勾配は次のように計算した:(AUC Voc in breath − AUC Voc in air)/AUC internal standard【0015】肺胞気濃度勾配の動態決定因子図3はVOCが体のことなる部分を通る経路を示す。肺胞内での平衡は急速であるから、肺胞気のVOCの濃度は肺動脈血における濃度によって決定され、室内大気におけるVOCの濃度は肺静脈血における濃度を決定する。VOCの体内プールは二つの供給源に由来する:肺からの入力(大気から)と肺以外からの入力(主として体内での合成によるが、食物、薬剤、経皮吸収などのVOCの外因性供給源も関与している)。VOCは二つの経路で体内プールから出て行く:肺からの出力(肺胞気として)又は肺以外からの出力(代謝によるクリアランスおよび/または排泄)である。体内でのVOC動態は共通プールへ又ここからの水の出入りによってモデル化することもできる(図4)。動態分析では、VOCの肺胞気濃度勾配が人体からのクリアランスレートを引いたVOCの合成レート(付録1:肺胞気濃度勾配の決定因子の動態分析を参照)で変化することを示している。肺胞気濃度勾配の極性は二つのプロセスのどちらが有意かを示す。肺胞気濃度勾配がプラスの場合、合成レートがクリアランスレートより大きく、逆に肺胞気濃度勾配がマイナスの場合には、クリアランスレートが合成レートより大きい。一例として、長鎖n−アルカンテトラデカンの平均肺胞気濃度勾配はプラスで、体内合成がクリアランスに優っていたことを示している。逆に、メチルベンゼンの平均肺胞気濃度勾配はマイナスであり、体内合成よりクリアランスが大きかったことを示している。これは代謝と排泄により体内から排出された室内大気の汚染物質としてのメチルベンゼンの経口摂取と一致する。【0016】正常なヒトにおける呼気VOCの組成ペンタンについての多くの研究やその他の呼気VOCについての幾つかの研究にもかかわらず、正常なヒト呼気におけるVOCの組成範囲は充分定義されて来なかった。初期の研究では正常なヒトの小さなグループの間の定性的及び定量的な実質差を報告している:呼気VOCの濃度は広く変化し、多数のVOCがある種の被験者の呼気で検出可能だが他では検出されない(Conkle JP,Camp BJ and Welch BE:Trace composition of human respiratory gas(ヒトの呼吸ガスの微量成分),Arch Environ Health 1975;30:290−295);Barkley J.Bunch J.Bursey JT et al:Gas chromatography mass spectroscopy computer analysis of volatile halogenated hydrocarbons in man and his environment−a multimedia environmental study(ヒトとその環境における揮発性ハロゲン化炭化水素のガスクロマトグラフィーマススペクトロスコープコンピュータ分析――マルチメディア環境研究),Biomedical Mass Spectrometry 1980;7(4):139)−147)。呼気VOCの組成は正常なヒトで調査された(例1)。ヒト被験者:50名の正常なヒト被験者について前述の方法を用いて研究した。これには男性27名(平均年齢38.8歳、SD=12.8)と23名の女性(平均年齢38.65歳、SD=11.4)を含んでいた。VOC数における個人間の変動:各々の呼気サンプルで検出されたVOCの数は157から241の範囲である(平均=204.2,SD=19.8,CV=9.7%)(図1)。3481種のことなるVOCが少なくとも1回検出され、1753種がプラス肺胞気濃度勾配、1728種がマイナス肺胞気濃度勾配であったが、これらのほとんどはただ1人の被験者から観察されたものである。全ての被験者では27種のVOCが検出されただけである(図2)。VOCの頻度と存在比における個人間の変動:VOCは異なる被験者で検出された頻度によって(表1,後述)と、呼気中の相対的存在比によって順位をつけた(表2,後述)。考察:200以上のことなるVOCが大半の呼気サンプルで検出され、3000を越えることなるVOCが少なくとも一回は検出された。このアッセイがソルベントトラップの捕集範囲であるC4からC20のVOCに限定されていたため、これらの数は恐らく正常なヒト呼気におけるVOCの総数を過小評価して表わすものである。これらのVOCのほとんどはただ一回だけ検出された。1人以上の対照で検出された呼気VOCグループのサイズが増加するにつれて急速に落ち込み、また比較的少数の共通に発生するVOCが被験者の大半で一致して検出された。共通に発生するVOCの幾つかはすでに報告されている、たとえばコレステロール合成のメバロン酸経路からのイソプレンや、またOFRが介在する脂肪酸の脂質過酸化からのアルカンのように代謝経路に由来するものだった(Stone BG,Besse TJ,Duane WC,Evans CD and DeMasster EG:Effect of regulating cholesterol biosynthesis on breath isoprene excretion in men(ヒトにおける呼気イソプレン排出に対するコレステロール生合成の調節作用);Lipids 1993;28:705−708,acetone from glucose metabolism(グルコース代謝からのアセトン),Stewart RD and Boettner EA:Expiredair acetone in diabetes mellitus(糖尿病における呼吸ガスアセトン);New England Journal of Medicine,1964;270:1035−1038)。しかし、共通に発生するVOCたとえばナフタレンや1−メチルナフタレンの供給源は未だ分かっていない。これらはステロイドの分解産物かも知れないが、その起原を決定するにはさらに研究が必要である。分子又は質量単位での各々のVOCの実際の濃度は3000以上のことなる標準曲線の作成という非常に重大な作業が必要であったため決定されなかった。その代わり、各々のVOCのクロマトグラフィー・ピークの曲線下面積(AUC)と内部標準のAUCとの比率を求めた。この値は分子濃度の相関であり、呼気と大気の各々のVOCの存在比を推定するために使用した。各々のVOCの相対的存在比はその肺胞気濃度勾配即ち室内大気の存在比を引いた呼気の存在比によって順位をつけた。【0017】本研究の結果(例1)は正常なヒトは呼気VOCの定性的定量的な組成が相互に大幅にことなることでそれまでの報告と一致した。しかし、それまで報告されなかった個人間に見られる二つの類似点も示した:第1に、各個人の呼気VOCの総数は比較的狭い範囲内で広く変化しなかった。第2に、観察された別々のVOCの総数が多かったにもかかわらず、呼気VOCの比較的少数の「共通のコア」が存在していて、これは全ての対種に見られ、また恐らくはほとんどのヒトに共通する代謝経路によって発生している。【0018】正常なヒトにおける呼気アルカンプロファイルこの例2はアルカン属や炭素鎖長がことなるアルカン誘導体の検出可能なスペクトル、これらのVOCの肺胞気濃度勾配における変化、呼気中と大気中の発生頻度を求めるために正常なヒトにおける肺胞気呼気の組成を調査した。材料と方法呼気捕集装置(BCA)とアッセイ:この方法は前述の例1に記載した。ヒト被験者:呼気サンプルは50名の正常なボランティアから捕集したが、これには27名の男性(平均年齢38.8歳、SD=12.8)と23名の女性(平均年齢38.65歳、SD=11.4)を含んでいた。全員を前夜から摂食禁止としてサンプルは午前7時から午後0時の間に回収した。データ分析:呼気又は大気中のVOCの存在比は、AUC voc/AUC internal standardの比から決定した。ここでAUCはクロマトグラムのVOCピークの曲線下面積である。肺胞気濃度勾配は(AUC voc in breath − AUC Voc in air)/AUC iternal standardから求めた。【0019】結果呼気と大気における各VOCの平均存在比とその肺胞気濃度勾配はこれらの値がアルカン類(図6〜7)、アルキルアルコール(図8〜9)、2−メチルアルケン類(図10〜11)の炭素鎖長で変化するものとして示してある。各VOCが呼気サンプルと大気サンプルで観察された頻度も炭素鎖長の関数として図示してある。多重t検定により、男性及び女性においてアルカン類、アルキルアルコール類、2−メチルアルカン類の肺胞気濃度勾配の間に有意差がないことが明らかになった。【0020】考察C2からC10までの範囲のn−アルカン類が室内大気と正常なヒト呼気から検出された。もっと鎖が短いか長いアルカン類の欠如は、恐らく本研究で使用したソルベントトラップの限定された捕集範囲によるものである。独立した又連続した肺胞気濃度勾配プロファイルがことなる鎖長のアルカン類で観察された。平均値はC4からC11までがマイナスで、C13からC20までがプラスだった(図6〜7)。これらの知見は呼気ペンタンの平均肺胞気濃度勾配が正常なヒトでマイナスであるとの従来の知見を確認した(Phillips M.Sabas M. & Greenberg,J.supra.)。この肺胞気濃度勾配プロファイルの有意性は体内のVOC動態の分析から推論できる:肺胞気濃度勾配=C alveolar breath − C roomair=(R synthesis − R clearance)RMVここでR=VOCの移動レート(毎分モル)、C=VOC濃度(モル/l)、RMV=呼吸毎分容積(毎分l)(付録1)である。よって、これらの知見は正常なヒトにおいて、アルカン類のクリアランス・レートがC4からC12のアルケン類での合成レートより大きかったが、合成レートはC12からC20のアルケン類のクリアランス・レートより大きかったと言う結論と一致している。アルカンの合成レートは主としてOFRが介在するPUFAの脂質過酸化によって決定されるが、一方でクリアランスレートはチトクロームP450系を介した分解によって決定される(Crosbie SJ,Blain PG and Williams FM:Metabolism of n−hexane by rat liver and extrahepatic tissues and the effect of cytochrome P−450 inducers(ラット肝臓および肝外組織によるn−ヘキサンの代謝とチトクロームP450誘導体の作用)(Hum Exp Toxicol 1997;16(3):131−137;Scheller U,Zimmer T.Kargel E and Schunck WH:Characterization of the n−alkane and fatty acid hydroxylating cytochrome P450 forms 52A3 and 52A4(n−アルカンと脂肪酸を水酸化するチトクロームP450フォーム52A3と52A4の特性),Arch Biochem Biophys 1996;328(2):245−54)呼気と大気のアルカン類の頻度分布(図6〜7)はヘプタンが室内大気の全サンプルで観察されたが肺胞気呼気サンプルでは0%だったことを示している。もっとも考えられそうな説明は、吸入したヘプタンが代謝と排泄により高能率で体内から排出されることにより、正常対照の90%のは胃動脈と肺胞気呼気において検出できないレベルまで濃度を減少することである。C5,C6,C9からC15アルカン類は室内大気のほとんど全サンプルに存在していた。これらのアルケンは恐らく他のヒトの呼気に由来したものである。これが他の場所の室内大気でも共通する特性かどうかを決定するには、さらに研究が必要である。しかし、当研究所やその他での経験から、充分に高感度のアッセイを使用した場合には室内大気の汚染物質としてペンタンが検出され得ることを示している(Cailleux A and Allain P:Is pentane a normal constituent of human breath?(ペンタンはヒト呼気の正常な構成成分か?)Free Radic Res Commun 1993;18(6):323−7;Phillips M.Sabas M.and Greenberg J:Alveolar gradient of pentane in normal human breath(正常なヒト呼気におけるペンタンの肺胞気濃度勾配),Free Radical Research Communications 1994;20(5):333−337)。C2からC18までの範囲のアルキルアルコール類もまた室内大気と肺胞気呼気から検出されたが、これらはアルカン類より存在比が小さくそれほど頻繁に観察されなかった(図8〜9)。エタノールはほかのどのアルキルアルコールより存在比が大きく肺胞気濃度勾配はプラスだった、よって内因性のエタノール合成はクリアランスを上回っていた。この知見は、代謝又は小腸内の細菌性発酵の産物であるとする呼気における内因性エタノールについての先の知見と一致している(Phillips M and Greenberg J:Detection of endogenous ethanol and other compounds in the breath by gas chromatography with on−column concentration of sample(サンプルのカラム内濃縮を行なうガスクロマトグラフィーによる呼気の内因性エタノール及びその他の化合物の検出),Analytical Biochemistry,1987;163:165−169)。2−メチルアルカン類はC3からC30の範囲で、これも室内大気と呼気で観察された(図10〜11)。これらのVOCの起原は不明である。アルカンのメチル化により誘導されることがあり得る。結論として、これらの知見では、正常なヒト呼気がアルカン類、アルキルアルコール類、2−メチルアルカン類を、以前に報告されている以上に広いスペクトルで含むことが示されている。肺胞気濃度勾配のプロファイルは、C4からC12アルカン類で、クリアランス・レート(主としてチトクロームP450による)が合成レート(PUFAのOFR介在脂質過酸化による)を上回ることを示しており、またC13からC20アルカン類では合成レートがクリアランス・レートを上回ることを示している。これらの知見はヒトにおける酸化的ストレス既知の呼気マーカーのスペクトラムを拡大する。【0021】乳癌における呼気アルカンプロファイルスクリーニング・マンモグラフィーを受けた女性のグループから呼気サンプルを回収した。呼気と大気のサンプルは前述の方法で回収分析した。この非無作意性のサンプルは乳癌にかかっている比較的多数の女性を含むように意図的に歪曲されたものである。マンモグラフィーを施行したのと同じ日に女性35例を研究し、正常なマンモグラムが25例、また初めて乳癌が検出されたのが10例だった。乳癌の診断は全て後日の組織生検により確認した。平均アルカンプロファイルは肺胞気呼気について(図12)、室内大気(図13)、肺胞気濃度勾配(図14)について求めた。3つの曲線全部は乳癌ありとなしの女性で視覚的にことなっており、多数のアルカンでの相違はt検定において統計的有意だった。予想しない又見かけ上矛盾する知見は二つのグループにおける室内大気の組成でマークされる相違だった。しかし、呼気に排出されたVOCは室内大気の組成を変更することがあり、同じ部屋にひどい口臭の人と同席するという日常の経験によって確認され得る。肺胞気濃度勾配曲線(図14)は対数回帰によって分析し、アルケンプロファイルだけに基づいて乳癌の事後確率を各々の女性について求めた(図15)。これで示されたのは偽陽性又は偽陰性の結果なしで二つのグループを明確に分離できたことである。【0022】解釈:肺胞気濃度勾配の呼気アルカンプロファイルは乳癌の女性で下向きに移動した。これは合成よりクリアランスが優勢であることと一致する。しかし、室内大気においてアルカン類の量が増加したのはアルカン類の合成の増加の証拠である。もっとも考えられる説明は、アルカン類の合成とクリアランスの両方が乳癌の女性では増加しているが、クリアランスのほうが広い範囲で増加していることである。呼気アルカンプロファイルの移動は乳癌のある女性とない女性を100%の感度と特異性で識別するのに充分だった。呼気アルカンプロファイルは乳癌の根本的に新しいバイオマーカーを提供するように思われる。呼気検査は乳癌の早期検出のために臨床的に有用な新規な方法を提供し得る。これはマンモグラフィーより簡単、安全、苦痛が少なく高価でないため、集団スクリーニングに使用できる。【0023】虚血性心疾患における呼気アルカンプロファイル(パートA)冠動脈造影によって証明された不安定狭心症の患者8例において呼気検査を施行した。平均呼気アルカンプロファイルは正常対照において観察された平均プロファイルよりも上向きに移動し、アルカン類のクリアランスに対する合成の有意性の増加と一致した。これらの患者の冠動脈形成術中に呼気検査を反復しながらバルーンを膨張させると、同じ変化がもっと顕著な形で見られた(図16)。呼気アルカンプロファイルの間の相違は、100%の感度と特異性で正常対照と不安定狭心症の患者を識別するのに充分なものだった(図17)。(パートB)病院の救急部で急性発症の胸痛を有する患者19例に呼気検査を施行した。全例がその後治療のため肝疾患集中治療室へ入院し、心エコー、負荷心電図、心筋シンチグラフィー、ホルター心電図を含む包括的な一連の検査による評価を受けた。19例の患者での最終診断は10例が不安定狭心症、9例が急性心筋梗塞だった。全症例における呼気検査の結果は、平均呼気アルカンプロファイルが正常被験者で観察される平均プロファイルより上向きに移動しており、アルカン類のクリアランスに対して合成の優位が増大したことと一致していた(図18)。呼気アルカンプロファイル間の差は、100%の感度及び特異性で正常対照と心臓原性胸痛のある患者とを識別するのに充分だった(図19)。さらに、呼気アルケン・プロファイル間の差は100%の感度及び特異性で不安定狭心症及び急性心筋梗塞の患者間の識別に充分なものだった(図20)。【0024】解釈:2つの独立したパイロット研究において、心臓原性胸痛のある患者の呼気検査は同様の結果をもたらした:平均呼気アルカンプロファイルは正常対照で観察された平均プロファイルから上向きに移動して、アルカン類のクリアランスに対して合成の優位が増大したことと一致していた。これは心筋細胞においてOFR活性の増加をもたらす心筋虚血と一致する。呼気アルカンプロファイルの移動は正常対照と心臓原性胸痛のある患者とを100%の感度及び特異性で識別するのに充分なものだった。【0025】心臓移植拒絶反応における呼気アルカンプロファイルと呼気アルキルアルコール・プロファイル実験方法:3箇所の学術プログラム拠点で心臓移植拒絶反応を研究した:ニューアーク・ベス・イスラエル・メディカルセンター(ニュージャージー州ニューアーク)、マウントシナイ・メディカルセンター(ニューヨーク)、およびコロンビア・プレスバイテリアン・メディカルセンター(ニューヨーク)である。通常のスケジュールの心筋生検と同日に心臓移植レシピエントに対して呼気検査を施行した。呼気アルカンプロファイルと呼気アルキルアルコール・プロファイルは前述の方法を用いて全被験者について判定した。心臓移植拒絶反応の「金本位制(gold standard)」は次のように決定した。互いの知見について知識を持たない二人の病理医が、0(拒絶なし)からIa,Ib,II,IIIa(軽度、中程度、重度の拒絶)までの標準等級スケールを用いて、心筋生検における拒絶反応の程度を互いに独立して評価した(Billingham ME,Cary NRB,Hammond ME et al:A working formulation for the standardization of nomenclature in the diagnosis of heart and lung rejection:Heart rejection study group(心臓及び肺拒絶反応研究グループの診断における病名標準化の暫定規則).J Heart Transplantation 1990;9:587−593)。二つの読み値の一致基準は、生検を治療の必要なし(心筋内生検で拒絶反応グレード0,1a、1b)と治療を必要とするもの(心筋内生検で拒絶反応グレードII及びIII)の分類に分けることで両方の病理医が同意見であることとした。二組のデータ――呼気アルカンプロファイルと呼気アルキルアルコール・プロファイル――を組み合わせて対数か域により統計分析を行ない、呼気検査のみに基づいて、患者を治療グループ又は比治療グループに割り当てる確率を決定した。【0026】結果:研究のために採用した全症例はBCAへ呼気サンプルを与えることができ、呼気収集手順で何らかの不快感又は副作用を報告したものはいなかった。要約すると:1.213個の呼気サンプルと心筋内生検サンプルを入手した。2.病理医が心筋内生検195サンプルについて意見が一致した:治療を必要としない182例と治療を必要とする13例。3.呼気アルカンプロファイルは3グループについて図21に図示してある:正常対照(50例)、治療を必要としない心臓移植レシピエント及び治療を必要とする心臓移植レシピエントである。4.同じ3グループについての呼気アルキルアルコール・プロファイルは図22に図示してある。5.正常対照と比較して、呼気アルカンプロファイルと呼気アルキルアルコール・プロファイルの両方が心臓移植レシピエントにおいて有意に上昇していた。6.心臓移植レシピエントのうちで、治療を必要としないグループに比べて治療を必要とするグループにおいて以下のアルカン類が顕著に増加していた:デカン、アンデカン、ペンタデカン(p<0.05,両側t検定)。7.心臓移植レシピエントのうちで、治療を必要としないグループに比べて治療を必要とするグループにおいて以下のアルキルアルコール類が顕著に増加していた:ヘキサデカノールとヘプタデカノール(p<0.01,両側t検定)。8.呼気アルキルアルコール・プロファイルと組み合わせた呼気アルカンプロファイルの対数回帰分析で治療を必要としない心臓移植レシピエントを治療を必要とする心臓移植レシピエントから分離した。レシーバ・オペレーティング特性(ROC)曲線を図23に示す。曲線の肩の部分で、呼気検査は感度84.6%特異性80.2%である。【0027】結論:1.心臓移植レシピエントにおいて、呼気アルカンプロファイルと呼気アルキルアルコール・プロファイルの組み合わせは、治療を必要としない低グレードの拒絶反応と、治療を必要とする高グレードの拒絶反応とを、高感度かつ高特異性で識別した。2.二つのグループの間の差は酸化的ストレスの相対的重篤度における差から得られるように思われた。3.酸化的ストレスは心筋内生検についての拒絶反応活性の状態に関係なく、全ての心臓移植レシピエントで増加するように思われた。【0028】末期腎疾患における呼気アルカンプロファイル臨床研究:ESRDの患者40例で透析の前後に呼気VOCサンプルを回収し、ガスクロマトグラフィーとマススペクトロスコープにより前述した方法を用いてアッセイした。研究はリッチモンド腎臓センター(ニューヨーク州ステトン・アイランド)で行なった。健康な正常対照50例からなる対照グループについても呼気サンプルを研究した(主としてセントビンセント・メディカルセンター(ニューヨーク州ステトン・アイランド)の医師、看護婦、職員)。全被験者は終夜摂食禁止としサンプルを午前7時から午前11時までの間に回収した。【0029】臨床研究の結果:これらの患者においてESRDの病因を表3に示してある。a.アルカンプロファイル:図24は正常対照50例、透析前のESRD患者40例、これらの患者の透析後33例による平均呼気アルカンプロファイル(前述した)である。C5,C7,C8,C9アルカン類の肺胞気濃度勾配は健康被験者よりもESRD患者において有意に高かった。しかし、血液透析前後の値の間でESRD患者のアルカンプロファイルに有意差は見られなかった。b.その他のVOC:表4は正常対照よりESRD患者で有意に高かった38種類のVOCをリストしたものである(p<0.05)。これらのVOCのいずれも血液透析によって有意に減少しなかった。表5は正常対照よりESRD患者で有意に低かった19種類のVOCをリストしてある(p<0.05)。これらのVOCのうち一つだけが血液透析により有意に上昇した。【0029】解釈:a.アルカンプロファイル:アルカンプロファイルは酸素フリーラジカル(OFR)によって惹起された酸化的ストレスのインジケータである(図25)。これらの結果は、酸化的ストレスがESRD患者で増加していることと、血液透析で有意に減少しないことを示している。これらの知見は先行する報告(8,10)と一致する。意義:呼気アルカンプロファイルは酸化的ストレスを惹起している慢性腎不全で基礎にある病態の重症度の新規かつ非侵襲的マーカーを提供し得る。これは腎不全の基礎にある原因を逆転させるように設計された新しい治療の効果をモニターするための臨床的に有用な新しい方法を提供できる。b.ESRDで増加したVOC:幾つかのVOCは透析前のESRD患者で正常被験者と比較して有意に増加していた。アルカンやアルカン誘導体(前述した)を別として、これらのVOCはだいたいがベンゼン誘導体であり、きわめて毒性が高いことが知られている。これらのVOCはESRD患者の死亡率や罹患率の増加において役割を演じている。これらのVOCの起原は分からない。考えられる供給源のひとつは大腸細菌叢である。意義:呼気VOCアッセイは、ESRD患者において、一部で死亡率の高さを説明する有毒なVOCを発見した。呼気検査はこれらの有毒VOCを減少させるように設計された全ての新しい治療の有効性をモニターすることができる。C.ESRDで減少したVOC:幾つかのVOCは正常対照と比較してとう積前のESRD患者で有意に減少していた。これらのVOCの幾つかは恐らく腎実質で合成されたものである。意義:ESRDにおいて減少したVOCについての呼気VOCアッセイは腎機能低下についての新しい非侵襲的マーカーを提供し得る。【0030】加齢を判定するための呼気アルカンプロファイル方法:正常なヒト50例を研究した(年齢範囲23歳から75歳、中央値35歳)。肺胞気呼気における揮発性有機化合物(VOC)をソルベントトラップに捕集しガスクロマトグラフィーとマススペクトロスコープでアッセイした。アルケン類の肺胞気濃度勾配(呼気濃度から環境大気中の濃度を引いたもの)を決定した。結果:C4からC20のアルカン類は呼気と室内大気で観察された。平均肺胞気濃度勾配はC4からC12まででマイナス、C13からC20でプラスだった。グループのうちの高齢者側の平均年齢は若年者側より有意に大きかった(47.56歳に対して29.88歳、p<0.0001)。また4種類のアルカン(C5,C6,C7,C8)の平均肺胞気濃度勾配は高齢者被験者において有意にプラスよりだった(p<0.05)。男性と女性の間に有意差は見られなかった。正常なヒト呼気におけるアルカン類のスペクトルは酸化的ストレスの見かけ上新しいマーカーを含んでいた。平均クリアランスレート(チトクロームP450経由)はC4〜C12で平均合成レート(ROS介在による酸化的ストレス)を越えていた。またC13〜C20アルカンでは合成がクリアランスより大きかった。高齢者被験者において増加したアルカンプロファイルは酸化的ストレスの年齢に関連した増加と一致するが、アルカンクリアランスレートの年齢に関連した減少も関与し得る。酸素は矛盾した元素である:好気性生命体を支持すると同時にきわめて有毒でもある。好気性の生物は4個の電子を追加することで分子状酸素を水へと還元することによって、そのエネルギーの大半を作り出している(1)。この過程はきわめて有毒な副産物である反応性酸素種(ROS)も作り出す。ROSは蛋白質、DNA、脂質膜やその他の生物学的分子に対して過酸化による定常的な連続傷害を作り出す(2〜4)(図26)。この過程は幾つかの病理的過程において細胞の加齢ならびに細胞の損傷に関係している。ROSは体内で一定に作成されて抗酸化スカベンジャーと酵素分解により排出されているが、排泄されないROSによって与えられた損傷は酸化的ストレスと呼ばれる。【0031】正常なヒトにおける呼気メチル化アルカン輪郭分析呼気と大気サンプルの収集:本方法はPhillips M,Gleeson K,Hughes JMB,Greenberg J,Cataneo RN,Baker L and McVay WP:Volatile organic compounds in breath as markers of lung cancer:a cross−sectional study(肝癌のマーカーとしての呼気における揮発性有機化合物:横断研究).Lancet 353:1930−33;1999と、Phillips M:Method for the collection and assay of volatile organic compounds in breath(呼気の揮発性有機化合物の捕集法及びアッセイ)Analytical Biochemistry 1997;247;272−278ならびに、「呼気の収集」と題する米国特許5,465,728号、「各種疾患の検出用呼気検査」と題する米国特許出願第09/229,020号に記載されたもので、これらの文献は全て参照に含まれる。呼気と室内大気における揮発性有機化合物は可搬型でマイクロプロセッサ制御の装置である呼気捕集装置(BCA)にて回収した。被験者はノーズクリップを装着したままで、抵抗が小さい使い捨てマウスピースから遠位端が大気に開放されている内径の広い呼気タンクへと息を吸って吐く。呼気タンクは水の凝集を防止するために加熱した。肺胞気呼気は呼気タンクからソルベント・チューブを通って圧送され、活性炭(200mgのCarbotrapC(20/40メッシュ)と200mgのCarbopackB(60/80メッシュ)(Supelco,Inc,Bellefonte,PA))に呼気VOCを捕獲する。システムのジオメトリは死腔内の気体で事実上汚染されていない肺胞気呼気をサンプルに含むように保証している。捕集区間は毎分0.5リットルで2.0分で、別々の1.0リットルサンプル2個としてVOCが回収された:一方には呼気、他方は背景となる室内の大気である。呼気VOCアッセイ:この方法は、Phillips M,Gleeson K,Hughes JMB,Greenberg J,Cataneo RN,Baker L and McVay WP:Volatile organic compounds in breath as markers of lung cancer:a cross−sectional study(肝癌のマーカーとしての呼気における揮発性有機化合物:横断研究).Lancet 353:1930−33;1999と、Phillips M:Method for the collection and assay of volatile organic compounds in breath(呼気の揮発性有機化合物の捕集法及びアッセイ)Analytical Biochemistry 247;272−278;1997に記載されており、どちらも参照に含まれる。VOCはソルベント・チューブから脱着し自動熱デソルバ(ATD 400,Perkin Elmer,Norwalk,CT,USA)へ濃縮した。ヘリウムのガス流でVOCを0℃に維持した冷蔵ソルベントトラップであるコンセントレータへフラッシュした。濃縮されたVOCのサンプルを300℃に加熱して揮発したVOCをガスクロマトグラフ(GC)で分離し、マススペクトロメータ(MS)で同定定量した。ヒト被験者:呼気サンプルは前夜禁食とした9歳から89歳までの正常なボランティア99名から午前7時から午後0時までの間に回収した。被験者は呼気と大気の回収よりおよそ30分前に着座して、室内大気のVOCと血中VOCの間の平衡ができる時間を取るようにした。ヒトでの研究はセントビンセント・メディカルセンター(ニューヨーク州ステトン・アイランド)の施設内倫理委員会によって承認された。データの分析:各々のアルカン(C4からC20)とメチル化した誘導体の相対的存在比はクロマトグラフィーの曲線下面積(AUC)と内部標準(0.25 ml2 ppm 1−ブロモ−4−フルオロベンゼン,Supelco Inc,Bellefonte,PA)のAUCとの比率によって決定した。各VOCの肺胞気濃度勾配は室内大気における存在比を引いた肺胞気呼気の存在比として決定した。各々の被験者について、炭素骨格長(X軸)とメチル化部位(Z軸)と肺胞気濃度勾配(Y軸)をプロットすることで三次元呼気メチル化アルカン輪郭分析(BMAC)を作成した。【0032】結果中央値年齢を用いてグループを若年者側と高齢者側に分割した(若年者側n=49,範囲9〜40,平均=30.3歳、高齢者側n=50,範囲40〜89,平均68.3歳、p<0.0001)。平均BMACは図2,図3,図4に各々全被験者、若年層被験者、高齢層被験者について図示してある。これらのVOCのうち25例は二つのグループで有意にことなっていた(表1)。喫煙者(n=11)と年齢が一致する非喫煙者とを比較した。平均BMACは各々図5と図6に図示してある。以上から分かったことは、1.BMACはヒトにおける酸化的ストレスの新しいマーカーとして開発された。2.正常なヒトにおける平均BMACは年齢で変化し、25種類のアルカンとメチル化アルカンが高齢者と若年者の被験者間で有意にことなっていた。化合物の大半は高齢被験者で増加したので、これらの相違は次のような原因によると思われる:a.加齢による酸化的ストレスの増加、b.加齢によるチトクロームP450酵素による代謝の減少、又はc.aとbの組み合わせ。これらの知見は正常なヒトにおける加齢による酸化的ストレスと呼気ペンタン濃度の増加の先行報告と一致した。Zarling EJ,Mobarhan S,Bowen P and Kamath S:Pulmonary pentane excretion increases with age in healthy subjects(健康な被験者における加齢による肺ペンタン排泄の増加).Mech Ageing Dev 67(1−2):141−7;1993;Jones M,Shiel N,Summan M,Sharer NM,Hambleton G,Super M and Braganza JM:Application of breath pentane analysis to monitor age−related change in free radical activity(フリーラジカル活性における年齢に関係した変化をモニターするための呼気ペンタン分析の応用).Biochem Soc Trans 21(4):485S;1993.3.正常なヒトにおける平均BMACは喫煙状態で変化する。化合物は喫煙者で増加も減少も起こり、これらの相違は以下の組み合わせによると思われる:a.喫煙が誘発するチトクロームP450酵素によるアルカン類とメチルアルケン類のクリアランスの増加。これはタバコの喫煙がチトクロームP450酵素の潜在的誘発因子であるとする先行の報告と一致する。Zevin S and Benowitz NL:Drug interactions with tobacco smoking(タバコの喫煙と薬物相互作用).An update.Clin Pharmacokinet 1999 36(6):425−38;Pasanen M and Pelkonen O:The expression and environmental regulation of P450 enzymes in human placenta(ヒト胎盤におけるP450酵素の発現と環境調節).Crit Rev Toxicol 1994;24(3):211−29;Nebert DW,Petersen DD and Puga A:Human AH locus polymorphism and cancer:inducibility of CYP1A1 and other genes by combustion products and dioxin(ヒトAHローカス多形性と癌:燃焼性生物とダイオキシンによるCYP1A1やその他の遺伝子の誘導性.Pharmacogenetics 1991;1(2):68−78.b.喫煙による酸化的ストレスの増加、これは恐らく喫煙と酸化的ストレスを連結した先行の報告の観点であると言える。Kalra J,Chaudhary AK and Prasad K:Increased production of oxygen free radicals in cigarette smokers(タバコ喫煙者における酸素フリーラジカル産生の増加).Int J Exp Pathol 1991;72(1):1−7;Bridges AB,Scott NA,Parry GJ and Belch JJ:Age,sex,cigarette smoking and indices of free radical activity in healthy humans(健康なヒトにおける年齢、性、タバコ喫煙とフリーラジカル活性の指標).Eur J Med 1993;2(4):205−8;Church DF and Pryor WA:Free−radical chemistry of cigarette smoke and its toxicological implications(タバコの喫煙のフリーラジカル化学とと毒性学的意味).Environ Health Perspect 1985;64:111−26.【0033】心臓移植拒絶反応における呼気メチル化アルカン輪郭分析心臓移植拒絶反応における酸化的ストレスの検査17,000人以上が米国において移植心臓とともに生活している。出典:臓器共有のための連邦ネットワーク、バージニア州リッチモンド、科学的登録データ。彼らの全部が心臓移植拒絶反応についての定期的なスクリーニングを必要としているが、この条件はしばしば検出が困難である。臨床的な症状たとえば倦怠感、疲労感、呼吸困難、浮腫、食欲不振などは全て相対的に無感覚で非特異的である。心電図、心エコー、タリウムシンチグラフィーや磁気共鳴イメージングなど多くが非侵襲的検査である。よって、右心室心筋生検は他の全ての検査と比較される標準になっている。Hosenpud JD:Noninvasive diagnosis of cardiac allograft rejection(心臓移植片拒絶反応の非侵襲的診断).Circulation 1991;85:368;Duquesnoy RJ,Demetris AJ:Immunopathology of cardiac transplant rejection(心臓移植拒絶反応の免疫病理).Curr Opinion Cardiol 1995;10:155;Winters GL:The pathology of heart allograft rejection(心臓移植拒絶反応の病理).Arch Pathol Lab Med 1991;115:226;Caves BC,Billingham ME,Stinson EB and Shumway NE:Serial transvenous biopsy of the transplanted human heart:improved management of acute rejection episodes(移植ヒト心臓の連続経静脈生検:急性拒絶症状の管理の改善).Lancet 1974;I:821;Winters GL,Loh E,Schoen FJ:Natural history of focal moderate cardiac allograft rejection(焦点性中程度心臓移植片拒絶反応の自然病歴),Circulation 1995;91;1975.心筋生検は移植片拒絶反応又は感染を同定するためと、治療効果を評価するために使用されている。術後生検は一般に最初の6週間について毎週、術後3か月までは隔週、術後6か月までは毎月施行する。これ以降の間隔は一般に個人別に決定される。しかし右心室心筋生検は侵襲的かつ比較的高価な術式で血腫、感染、不整脈、心室穿孔、冠動脈右心室瘻の発生などを含む合併症を発症することがある。これによってたとえば呼気微量分析などの心臓移植拒絶反応に適する代替非侵襲検査へ向けての研究が刺激された(Sobotka PA,Gupta DK,Lansky DM,Costanzo MR and Zarling EJ:Breath pentane is a marker of acute cardiac allograft rejection(呼気ペンタンは急性心臓移植片拒絶反応のマーカー).J Heart Lung Transplant 1994;13:224−9)。心臓移植拒絶反応の呼気検査は二つの所見に基づいている:第1に、移植片拒絶反応は心筋における反応性酸素種(ROS)の産生増加により酸化的ストレスが随伴する(Coles JG;Romaschin AD;Wilson GJ;Mickle DA;Dasmahapatra H;Martell M;Mehra A;Tsao P:Oxygen free radical−mediated lipid peroxidation injury in acute cardiac allograft rejection(急性心臓移植拒絶反応における酸素フリーラジカルが介在した脂質過酸化傷害).Transplantation 1992;54(1):175−8;Roza AM;Pieper G;Moore−Hilton G;Johnson CP;Adams MB:Free radicals in pancreatic and cardiac allograft rejection(膵臓及び心臓移植片拒絶反応におけるフリーラジカル).Transplant Proc 1994 26(2):544−5).第2に、不飽和脂肪酸(PUFA)の脂質過酸化によりROSが細胞膜を分解し、揮発性有機化合物(VOC)として呼気中に排泄されるアルカン類とアルカン誘導体が発生する(Kneepkens CMF,Ferreira C.Lepage G and Roy CC:The hydrocarbon breath test in the study of lipid peroxidation;principles and practice(脂質過酸化の研究における炭化水素呼気検査:原理と実践),Clin Invest Med 1992;15(2):163−186;Kneepkens CMF,Lepage G and Roy CC:The potential of the hydrocarbon breath test as a measure of lipid peroxidation(脂質過酸化の尺度としての炭化水素呼気検査の可能性),Free Radic Biol Med 1994;17:127−60)(図35)。動物による研究でも心臓と肝臓の移植片において酸化的ストレスの増加が示された。Kuo PC;Alfrey EJ;Krieger NR;Abe KY;Huie P;Sibley RK;Dafoe DC:Differential localization of allograft nitric oxide synthesis:comparison of liver and heart transplantation in the rat model(移植片酸化窒素合成の微分局在:ラットモデルにおける肝臓と心臓移植の比較).Immunology 1996 Apr;87(4):647−53;Winlaw DS;Schyvens CG;Smythe GA;Du Zy;Rainer SP;Keogh AM;Mundy JA;Lord RS;Spratt PM;MacDonald PS:Urinary nitrate excretion is a noninvasive indicator of acute cardiac allograft rejection and nitric oxide production in the rat(尿素窒素排泄はラットにおける急性移植片拒絶反応と酸化窒素生成の非侵襲的インジケータである).Transplantation 1994 Nov 15;58(9):1031−6.こうして得られた化学的また解剖学的な膜破壊が進行して細胞機能障害さらに細胞死へ進行する。この過程で発生したVOCはアルカン類(たとえばペンタン)とアルカン誘導体を含み、これらは呼気に排泄されるので酸化的ストレスの臨床的に有用なマーカーを提供できる。呼気メチル化アルカン輪郭分析(BMAC)を用いて心筋生検を受ける心臓移植患者での拒絶反応の呼気マーカーを研究した。【0034】材料と方法ヒト被験者:被験者分布の特徴が表2に図示してある。技術的に満足できる呼気VOCサンプル210個を、通常のスケジュールの心筋生検と同じ日に心臓移植レシピエントから回収した。患者は3箇所で研究した。ニューアーク・ベス・イスラエル・メディカルセンター(ニュージャージー州ニューアーク)(n=24)、マウントシナイ・メディカルセンター(ニューヨーク)(n=37)、およびコロンビア・プレスバイテリアン・メディカルセンター(ニューヨーク)(n=149)である。20例の年齢が一致する正常対照を、ニューヨーク州ステトン・アイランドのセントビンセント・キャンパスにあるシスターズ・オブ・チャリティ・メディカルセンターで研究した摂食禁止正常対照のデータベースから選択した(14)。研究は全ての参加施設の施設内倫理委員会によって承認された。呼気回収とアッセイ:方法はPhillips M,Herrera J,Krishnan S,Zain M,Greenberg J and Cataneo RN:Variation in volatile organic compounds in the breath of normal humans(正常なヒト呼気中の揮発性有機化合物の変動).Journal of Chromatography B 629(1−2):75−88;1999;とPhillips M:Method for the collection and assay of volatile organic compounds in breath(呼気の揮発性有機化合物の捕集法及びアッセイ)Analytical Biochemistry 247;272−278;1997に説明されている。要約すると、可搬型BCAを用いてソルベントトラップへ1.0リットルの呼気中のVOCを捕集した。室内大気1.0リットルのVOCは別のソルベントトラップへ捕集した。被験者はノーズクリップを装着したままで、2.0分間BCAの使い捨てマウスピースで呼吸する。マウスピースのライトフラップ弁が呼吸に低い抵抗を与え、高齢者の患者や肺疾患に罹患している患者でも不快感なしで呼気サンプルを捕集することが可能だった。全部のソルベントトラップはATD/GC/MSによるVOC分析のため研究室へ送付した。拒絶反応の等級付け:二人の病理医によって、0(拒絶の兆候なし)からIa,Ib,II,IIIaまでの標準等級スケールを用いて、心筋生検における拒絶反応の程度を独立して評価した。(Billingham ME,Cary NRB,Hammond ME et al:A working formulation for the standardization of nomenclature in the diagnosis of heart and lung rejection:Heart rejection study group(心臓及び肺拒絶反応研究グループの診断における病名標準化の暫定規則).J Heart Transplantation 1990;9:587)。マスキング手順:ソルベントトラップは病理学的知見に知識を持たない技術アシスタントによって研究室でVOCを分析した。生検標本を観察した病理医は呼気検査の結果についての知識を持っていなかった。データの分析:呼気と大気のクロマトグラム全部をコンピュータ上のスプレッドシートへ、さらにコンピュータ上のリレーショナル・データベースへ自動的にダウンロードした。呼気メチル化アルカン輪郭分析(BMAC)は全被験者において判定された。【0035】結果ヒト被験者と心筋生検:研究のために採用した全てのヒト被験者はBCAへ呼気サンプルを与えることができ、呼気捕集手順で何らかの不快感又は副作用を報告したものはいなかった。心筋生検における拒絶反応を二人の病理医が等級付けした。グレード0:118/210(56.2%)、Ia:48/210(22.9%)、Ib:14/210(6.70%)、II:23/210(10.9%)、IIIa:7/210(3.3%)。年齢の一致する正常対照のうちの1人だけと移植レシピエントの3人が喫煙者であったので、喫煙の潜在的影響については別に分析しなかった。呼気VOC:心臓移植レシピエントと対照の間の差:グレード0拒絶(即ち拒絶反応の組織学的兆候なし)心臓移植レシピエントの平均BMACと年齢が一致する正常対照のそれを図36及び表3に示す。呼気VOC:拒絶反応のグレードが異なる心臓移植レシピエント:グレード0,グレードIa,Ib,グレードII,とグレードIIIa拒絶反応の心臓移植レシピエントの平均BMACは図37と表4に図示してある。感度と特異性の判定:拒絶反応の兆候がない(グレード0)心臓移植レシピエントを何らかの拒絶反応の兆候がある患者(グレードIa,Ib,グレードII,グレードIIIa)における呼気検査の結果を比較するために対数回帰によりBMACを分析した。心臓移植拒絶反応の確率は各々の患者について計算し、散布図に表示した(図38)。呼気検査の感度と特異性はこれらの値から判定した(図39)。BMACは100%の感度と68.6%の特異性でグレードIIIa拒絶反応を同定し、73.9%の感度と64.4%の特異性でグレードII拒絶反応を同定し、75.8%の感度と64.4%の特異性でグレードIa,Ibの拒絶反応を同定した。【0036】研究の結果から、以下の結論を引き出すことができる。1.酸化的ストレスは年齢が一致する正常対照より心臓移植レシピエントで大きかった。2.酸化的ストレスは心臓移植拒絶反応の重症化で増加した。3.呼気検査は臨床的に有意な拒絶反応について高感度特異的だった。1.酸化的ストレスは年齢が一致する正常対照より心臓移植レシピエントで大きかった。年齢の一致する正常対照と比較して、BMACは心筋生検において拒絶反応の顕微鏡的兆候のない心臓移植レシピエントで有意に増加していた。差は正常な非喫煙者と喫煙者の間で観察された差と定性的に類似していた(図5及び図6)。この知見は移植心臓における酸化的ストレスが異常に高レベルであることと一致し、おそらくは不顕性の炎症および/または拒絶反応に由来する。酸化的ストレスは冠動脈疾患の危険因子として提唱されているが、関連性は納得できる程証明されてない。Runge MS:The role of oxidative stress in atherosclerosis:the hope and the hype(粥状硬化における酸化的ストレスの役割:希望とまやかし).Trans Am Clin Climatol Assoc 1999;110:119−29;Hoeschen RJ:Oxidative stress and cardiovascular disease(酸化的ストレスと冠疾患).Can J Cardiol 1997;13(11):1021−5。しかし、現在のところ進行性の冠動脈疾患が1年以上生存した心臓移植レシピエントの主な死因であり(Radovancevic B and Frazier OH:Heart transplantation:approaching a new century(心臓移植:新世紀への到達).Tex Heart Inst J 1999;26(1):60−70;Deng MC,Tjan TD,Asfour B,Roeder N and Scheld HH:Transplant vasculopathy(移植血管疾患).Herz 1998;23(3):197−201)、酸化的ストレスの増加がその進行に役割を演じている。2.酸化的ストレスは心臓移植拒絶反応の重症化で増加した。コエンザイムQ10は移植ヒト心臓で欠乏し、ミトコンドリア内の呼吸鎖機能とエネルギー産生は組織学的な拒絶反応の重症度で変化する(Gvozdjakova A,Kucharska J,Mizera S,Braunova Z,Schreinerova Z,Schramekova E,Pechan I and Fabian J:Coenzyme Q10 depletion and mitochondrial energy disturbances in rejection development in patients after heart transplantation(心臓移植後の患者での拒絶反応の発現におけるコエンザイムQ10の欠乏とミトコンドリア内のエネルギー産生障害).Biofactors 1999;9(2−4):301−6.)、であるから、酸化的ストレスの増加は傷ついたミトコンドリア機能によって惹起される可能性がある。3.呼気検査は臨床的に有意な拒絶反応について高感度特異的だった。大半の心臓移植センターにおいて、グレードIII拒絶反応だけが積極的に治療されている。グレードII及びグレードIII拒絶反応のある心臓移植レシピエントにおいて呼気検査の感度と特異性はさらに評価と治療を必要とする患者を必要としない患者から同定するスクリーニング検査として充分だった。検査は非侵襲的で、安全で、患者に広く受け入れられる。心臓移植レシピエントの呼気検査は毎年施行される心筋内生検の回数を潜在的に減少し得るので、結果として患者死亡率とヘルスケアのコスト減少になる。【0037】BMAC:加齢の新しいマーカー背景:発電所は、生物学的又は人工のものでも、共通して有毒な副産物を生成する。哺乳類の生命はミトコンドリアの発電所で産生されるエネルギーによって維持されているが、ミトコンドリアはまた酸素を有毒で恐らく致命的な副産物へと変換する。酸素は酸化的代謝において電子の最終受容体であるが、電子が反応性酸素種(ROS)の形でミトコンドリアから洩れ出すと酸化的ストレスつまりDNA、蛋白質、脂質やその他の生物学的に重要な分子に対する定常的に連続した酸化的障害を生じる(Butterfield,1998;854:448−62)。酸化的ストレスは加齢と幾つかの疾患において病理メカニズムとして関連しているが、生体内での強度を測定するのは困難であることが分かっている(Pryor,Free Radic Biol Med 1991;10:3−4)。酸化的ストレスの様々なマーカーが提唱されており、これには血液中のマロン酸アルデヒドと共役ジエン類、呼気中の炭化水素や過酸化水素が含まれる(Kneepkens CMF,et al Clin Invest Med 1992;15(2):163)。酸化的ストレスの揮発性マーカーが注目されたのは呼気検査が本質的に非侵襲性で無痛であるためである(Phillips M:Sci Amer1992;267(1):74−79)。呼気アルカン類の増加とくにエタンとペンタンは乳癌、関節リュウマチ、心臓移植拒絶反応、急性心筋梗塞、精神分裂病、気管支喘息において酸化的ストレスの増加を示した(Phillips M et al J Chrom B 1999;729:75−88)。呼気のエタンとペンタンがこれらの疾患のスクリーニングに限られた価値しかないのは、その感度と特異性が低いためである。しかし、酸化的ストレスは呼気において揮発性有機化合物(VOC)として排泄されるその他の分解産物を生成するように思われる(図40)。Phillipsは長鎖アルカン類とメチル化アルカン類が正常なヒトの呼気ならびに肺癌患者において検出できること(Phillips M et al Lancet 1999;353:1930−33)、またC4からC20アルカン類のスペクトルつまり呼気アルカンプロファイルが加齢で有意に増加したこと(Phillips M et al Free Rad Res(発表用に受理))を先に報告している。この研究は呼気アルカンプロファイルを酸化的ストレスの見かけ上のマーカーの新しい3次元表示つまり呼気メチル化アルカン輪郭分析への拡張、および正常なヒトでの加齢によるBMAC変化を記載する。【0038】臨床研究ヒト被験者:呼気サンプルは前夜禁食とした9歳から89歳までの正常なボランティア102名から午前7時から午後0時までの間に回収した。被験者は呼気と大気の回収よりおよそ20分前に着座して、室内大気のVOCと血中VOCの間の平衡ができる時間を取るようにした。ヒトでの研究はシスターズ・オブ・チャリティ・メディカルセンターの施設内倫理委員会で承認された。データの分析:各アルカン(C4からC20)とモノメチル化誘導体との相対的存在比(R.A.)はクロマトグラフィーの曲線下面積(AUC)と内部標準(IS)(0.25 ml 2 ppm 1−ブロモ−4−フルオロベンゼン,Supelco Inc)のAUCとから決定した(R.A.VOC=AUC VOC/AUC IS)。各VOCの肺胞気濃度勾配はR.A.breath−R.A.room air[Phillips,1999#23]として判定した。各々の被験者において、呼気メチル化アルケン輪郭分析(BMAC)は炭素骨格長(X軸)対メチル化部位(Z軸)対肺胞気濃度勾配(Y軸)のプロットによって作成した。結果:被験者は年齢によって4分位に分割した。呼気データは各々の分位の被験者からプールしてアルカンとモノメチル化アルカンの平均肺胞気濃度勾配を決定した。これらの値は各々の分位について平均BMACとして表示された(図41)。分位間の有意差は一方向ANOVAとノイマン・コイルスのpost hoc検定により判定した(表10)。被験者が年齢について一致している場合、喫煙者と非喫煙者の間に有意差は見られなかった。性別による唯一の差は4−メチルオクタン(男性より女性に多い、p<0.05,両側t検定)だった。結論1.C4からC20アルカンとそのモノメチル化誘導体は酸化的ストレスの見かけ上新しいマーカー群を含む。2.BMACは正常なヒトの加齢による漸増的で有意な増加を示し、加齢が酸化的ストレスの増加を伴うと言う先行報告と一致した。【0039】BMAC:虚血性心疾患の新しいマーカー背景:300万以上の患者が毎年米国では胸痛のために入院している。そのコストは急性疾患にかかっていないと分かったものについてだけでも30億ドルを越えている(Roberts RR,Zalenski RJ,Mensah EK et al:JAMA 1997;278(20):1670−6)急性胸痛があるが心筋虚血のない多くの患者は特別なサービスに受け入れられて疼痛の原因を調べられる(Hoekstra JW and Gibler WB;Chest pain evaluation units:an idea whose time has come,(胸痛評価単位:最期が訪れたアイデア)JAMA 1997;278(20):1701−2)。主な目標は不安定狭心症の検出であって、これは潜在的に致命的である。こうした患者の評価はしばしば広範かつ高額であり、心エコー、負荷心電図(ECG)、心筋シンチグラフィー、ホルター心電図など包括的な一連の検査を必要とする。このような一連の検査を用いて、Fruergaard et al.は急性胸痛があるが心筋梗塞のない患者204例を評価した。もっとも一般的な疫学は胃・食道疾患で、これについで虚血性心疾患や胸壁症候群が見られた。全診断例の1/3未満がハイリスク・グループに含まれている(Fruergaard P,Laundbjerg J,Hesse B et al:Eur Heart J 1996;17(7):1028−34)。McCullough et al.は胸痛が見られるが基本的には心電図正常の患者の入院の実施はコスト的に好ましからざることであり、1救命あたり170万ドルであることを示した(McCullough PA,Ayad O,O’Neill WW and Goldstein JA:Clin Cardiol 1988;21(1):22−6)。これらやその他の充分に記載された研究にもかかわらず、急性胸痛があるが心筋梗塞のない患者が共通に入院するのは、不安定狭心症と突然死のリスクがある場合に患者を退院させることに医師が抵抗するためである。心臓原性胸部痛があり入院が利益となるハイリスク患者と、心臓胸部痛がなく安全に帰宅できて外来患者として評価し得るローリスク患者との間の識別ができるような診断検査には臨床的必要性と経済的必要性が存在する。呼気検査は潜在的にこの情報を提供することができるが、これは心筋の酸素フリーラジカル活性が虚血性心疾患で増加するためである。Weitz et al.は健康な対照10例と比較して急性心筋梗塞の患者10例で呼気ペンタンが有意に増加したことを報告した(Weitz ZW,Birnbaum AJ,Sobotka PA,Zarling EJ and Skosey JL:Lancet 1991;337:933−35)。しかし、これらの結果は、急性心筋梗塞の患者、安定狭心症の患者、健康被験者の間で呼気ペンタンに有意差がなかったとする同じ研究施設での後続の研究で問題視された(Mendis S.Sobotka PA and Euler DE:Free Radic Res 1995;23(2):117−22)。臨床研究:この研究はニューヨーク市のセントビンセント・メディカルセンターで行なった。研究は施設内倫理委員会によって承認され、全部の患者から参加する旨の署名のある同意書(signed informed consent)を得た。呼気検査は冠動脈造影で確認された不安定狭心症のある患者30例で行なった。呼気検査は冠動脈形成術の間に同じ患者で反復し名柄バルーンを膨張させた。BMACは前述のとおりに判定し、これらの患者と年齢が一致する38名の正常対照とで比較した。正常対照と不安定狭心症患者のBMACは対数か息で比較して呼気検査だけに基づいて心疾患の発生確率を求めた。結果:年齢が一致した正常対照と不安定狭心症患者(冠動脈形成術の前と術中)での平均BMACを図42に示す。年齢が一致する正常対照と不安定狭心症患者(冠動脈形成術前)にはBMACの成分の平均存在比において有意差が見られた(表11)。BMACの対数回帰分析に基づく不安定狭心症の発生確率は図43に図示した。結論1.不安定狭心症患者と年齢が一致する正常対照とにおいてBMACの成分の間に有意差が見られた。2.これらの差は不安定狭心症における酸化的ストレスの増加と一致した。3.不安定狭心症患者における平均BMACの成分はその後の冠動脈形成術中にさらに増加し、手術中の酸化的ストレス増加と一致した。しかし、この知見は手術中に呼吸する酸素によって影響された可能性がある。4.不安定狭心症患者と年齢が一致する正常対照との間のBMACにおける差は100%の感度と特異性で二つのグループを判別するのに充分だった。5.BMACは心臓原性胸痛患者の同定に臨床的に有用な新規な検査を提供し得るものである。【0040】BMAC:腎不全の新しいマーカー背景:慢性腎不全患者と接している臨床医家は古典的な尿毒症性口臭になれている。「魚が腐ったような」「アンモニア臭」「悪臭」などと様々に表現されて来た。Schreiner and Maherは尿毒症のレビューにおいて腐敗した尿の匂いと比較した上でアンモニア臭と表現した(Schreiner GE and Maher JF:Uremia:Biochemistry,pathogenesis and treatment(尿毒症:その生化学、病因及び治療).Springfield,Illinois,CC Thomas 1961,p 335.)慢性腎不全における早期透析の導入以来、胃潰瘍と細菌の異常増殖による口臭のある衰弱患者はほとんど見られなくなった。しかし、ESRD患者において常に魚の腐ったような匂いは未だ目立っており、口腔内のバクテリアによるものではなく、根源的に全身性のものであることを示唆している。1963年には、Simenhoff et al.は、重症尿毒症患者の血中、脳脊髄液中、脳内のジメチルアミンレベルの増加を報告した(Simenhoff ML,Asatoor ML,Milne MD et al:Clin Sci 1963;25:65−77)。彼らはGCを使ってこの研究を尿毒症患者の呼気分析まで拡張した(Simenhoff ML,Burke JF,Saukkonen JJ,Ordinario AT and Doty R:N Engl J Med 1977;297:132−135.)。彼は2級と3級アミンである、ジメチルアミン、トリメチルアミンの濃度増加を発見した。両者とも血液透析によっても非吸収性抗生物質による治療によっても有意に減少した。彼らはこれらのVOCが一部には尿毒症呼気における古典的な魚の腐ったような匂いの原因であること、又小腸内の細菌異常増殖によって発生することを結論した。さらに多数の最近の研究では血液中の不揮発性マーカーを用いて慢性腎不全における酸化的ストレスの増加が示されている(Hasselwander O,Young IS:Free Radic Res 1998;29(1):1−11,Simic−Ogrizovic S et al:Transpl Int 1998;11 supp 1:S125−9,Fiorillo C et al:Clin Chem Lab Med 1998;36(3):149−53)。我々はESRDにおいて呼気のBMACやその他のVOCが増加するかどうかとこれらの化合物への血液透析の影響を判定するために臨床研究を行なった。臨床研究:定期的な血液透析を必要とする末期腎疾患(ESRD)の患者40例のグループをリッチモンド腎臓センター(ニューヨーク州ステトン・アイランド)で研究した。呼気サンプルは血液透析の前後に回収し、BMACやその他のVOCを判定した。対照グループは年齢が一致する正常被験者を含んでいる。研究はセントビンセント・メディカルセンター(ニューヨーク州ステトン・アイランド)の施設内倫理委員会によって承認され、全部の患者から参加する旨の署名のある同意書(signed informed consent)を得た。正常対照と透析前患者のBMACを対数回帰により比較した。結果:研究した患者のESRDの原因は表12に示してある。年齢が一致する正常対照と、透析前後のESRD患者での平均BMACは図44に図示してある。年齢が一致する正常対照と、透析前のESRD患者での平均BMACの対数回帰分析は高い感度と特異性で二つのグループを分離した。ROC曲線は図45に図示してある。血液透析でBMACの成分の一つだけが有意に変化した(4−メチルノナン、p<0.05)。透析前ESRD患者において(年齢の一致する正常対照と比較して)有意に増減したVOCは表13に図示してある。血液透析により一つだけが有意に変化した(1,1−ビフェニル,2,2’−ジエチル−)。結論:1.平均BMACは透析前ESRD患者において年齢が一致する正常対照より有意に高く、酸化的ストレスの増加の先行報告と一致した。2.BMACは100%の感度と98%の特異性でESRD患者を同定した。3.透析はBMACのうちの一つだけの成分を有意に変化させ、(年齢が一致する正常対照と比較して)ESRD患者や、透析前のESRD患者の酸化的ストレスに対して大きな衝撃とならないことを示差している。4.他の幾つかのVOCは年齢が一致する正常対照より透析前ESRD患者で有意に高いか又は低かった。5.呼気中のBMACとその他のVOCはESRDにより有意に影響されるので慢性腎不全重症度の臨床的に有用な新しいマーカーを提供できる。【0041】BMAC:肺癌の新しいマーカー背景:肺癌:発生率と罹患率肺の原発性癌腫は米国における癌死亡の最大の原因である。毎年、およそ男性100,000人、女性50,000人がこの病気に罹患する。大半は診断から1年医内に死亡する。肺癌の発生ピークは55歳から65歳の間にある。ハイリスク患者(年齢が45歳以上で毎日40本以上喫煙する男性)において、無症候性肺癌の罹患率は1000人あたり4から8例であり、一方フォローアップ・スクリーニングで発見される発生率は毎年1000人あたり新規の肺癌4例である。発生率は増加している:年齢を調節した肺癌は15年毎に倍増した(Minna JD:Chap 90 in Harrison’s Principles of Internal Medicine.14th ed.Eds.Fauci AS,et al.McGraw Hill,New York 1998.)。肺癌の早期発見のために臨床的に有用な検査は目下のところ利用できるものがない。肺癌の大半の奨励は病気が比較的進行してから、限局性又は転移成長による症状を引き起した時でないと発見されない。しかし、肺癌の早期発見が死亡率の減少を支援できると言う証拠がある。転移疾患の患者と比較して、診断時に限局性であると思われる疾患の患者は5年生存率が良好で、男性30%、女性50%である。これらの原発性主要は比較的早い段階で発見されたが、ほとんどの例で臨床的には無活動の見検出転移が存在していた。したがって転移が起こる前のきわめて早い段階で肺癌を検出できるようなスクリーニング検査の早急な臨床的必要性が存在する。残念なことに、頻繁な放射線や喀痰細胞診による前向きスクリーニングは失望する結果しか得られず、年齢45歳又はそれ以上の喫煙男性でスクリーニングを受けたグループとスクリーニングしなかったグループの間の生存率には差がなかった。この従来の技術の失敗により、たとえば呼気検査など肺癌の新規な診断検査へ向けた研究が刺激され、これによれば早期診断が可能で死亡率や疾病率を改善し得る。肺やその他の臓器の癌についての呼気検査の原理は二つの良く知られている現象に基づいている:第1に、反応性酸素種(ROS)が発癌性に関係すること、第2に、ROSは呼気における炭化水素の排泄を促進することである(図40)。したがって、呼気炭化水素は癌が発達する間のOFR活性増加のマーカーを提供できる。以前の研究では呼気における肺癌の見かけ上揮発性マーカーが報告された(Gordon SM,Szidon JP,Krotoszynski BK,Gibbons RD and O’Neill HJ:Clin Chem 1985;31:1278−82.O’Neill HJ,Gordon SM,O’Neill MH,Gibbons RD and Szidon JP:Clin Chem 1988;34(8):1613−1618.Preti G,Labows JN,Kostelc JG,Aldinger S and Daniele R:J Chromatog.Biomed Appl988;432:1−11)。Phillipsは疑わしい胸部X線の評価のため気管支鏡を受ける患者108例において呼気検査のパイロット研究を行ない、高感度高特異性で肺癌を同定した呼気中の22個のVOCの組み合わせを同定した。これらのVOCはベンゼン誘導体、アルカン、メチル化アルカン類の組み合わせを含んでいた(Phillips M,Gleeson K,Hughes JMB,Greenberg J,Cataneo RN,Baker L and McVay WP:Lancet 1999;353:1930−33.)。以下の臨床研究は、これらの知見を確認する目的と、肺癌のマーカーとしてBMACを評価するために行なわれたものである。臨床研究:臨床拠点:5箇所の学術医療センターにある呼吸器サービスから患者を募集した。チャリング・クロス病院(インペリアル・カレッジ、英国ロンドン)、ペン州立ガイジンガー・メディカルセンター(ペンシルバニア州ハーシー)、コロンビア・プレスバイテリアン・メディカルセンター(ニューヨーク州ニューヨーク)、ニューヨーク大学メディカルセンター(ニューヨーク州ニューヨーク)、セントビンセント・メディカルセンター(ニューヨーク州ニューヨーク)である。呼気サンプルは気管支鏡と同日に回収し、前述の方法で分析して各被験者についてのBMACを生成した。全患者からは参加する旨の署名のある同意書(signed informed consent)を得た上、各々の拠点で施設内倫理委員会により研究の承認を得た。患者の募集:研究に含める基準は年齢18歳又はそれ以上、異常胸部X線の既往、さらなる評価のために気管支鏡と生検が予定されていること、また患者は研究に参加する旨の署名のある同意書(signed informed consent)を提出する医師があることだった。研究から排除する基準はいずれかの部位の癌がすでに診断されている既往である。データの分析:患者は二つのグループに分割した:肺癌のある患者と肺癌のない患者で、気管支鏡で得られた生検において示されたとおりである。対数か息を用いて、BMACの成分を分析して各々のグループの患者間で微分し、各個人について肺癌の確率を判定した。さらに、これらのデータは癌のTNMステージングと癌の組織型にしたがって分析した。結果:患者と主要の特徴は表14に示した。肺癌患者と肺癌のない患者の平均BMACは図46に図示した。転移肺癌、小細胞癌、非小細胞癌の患者での平均BMACは図47に図示してある。癌のTNMステージングと癌の組織分類にしたがって呼気検査の感度と特異性を示すレシーバ・オペレーティング特性(ROC)曲線は図48と図49にそれぞれ図示してある。結論:1.肺癌について呼気検査は高感度高特異性だった。2.感度と特異性はステージ1の癌で最高(各々>95%と80%)で、パイロット研究の結果を確認した。3.非小細胞癌で感度と特異性が最高で、これについで小細胞癌、転移癌と続いた。4.BMAC成分の肺胞気濃度勾配は一般に癌患者で低く、代謝クリアランスおよび/または排泄の増加と一致した。これは結果について考えられるメカニズムを示差している:惹起されたチトクロームP450活性によるVOCのクリアランス増加。これは乳癌患者において観察された結果と同様である。【0042】BMAC:乳癌の新しいマーカー背景:乳癌は現在米国において女性10人に1人程度が罹患する一般的な病気である。定期的なスクリーニング・マンモグラフィーによる早期発見は死亡率を20〜30%減少できる(Henderson,chap 319,Harrison’s Principles Int Med,13th ed,McGraw Hill,New York,1994)。しかし、マンモグラフィーは高価であり、しばしば苦痛を伴う胸部圧迫を必要とし、放射線に対する暴露が必須であり、10年の期間にわたってスクリーニングした女性の1/3に偽陽性が見られる(Elmore JG:N Engl J Med 1998;338:1089−96)。少なくともマンモグラフィーと同程度の感度と特異性があるが、簡単、安全で、苦痛が少なく、かつ高価でないスクリーニング検査を乳癌について行なう臨床的必要性がある。乳癌については呼気検査の先行研究が存在する。Hietanen et al.は乳癌の病歴がみられる女性20例と年齢性別の一致する対照群とを研究した(Hietanen et al:Eur J Clin Nutr 1994;48:575−86)。癌患者における平均呼気ペンタン濃度は対照群におけるそれより有意に高かった。彼らは周辺大気におけるペンタン濃度を報告しておらず、ペンタンの肺胞気濃度勾配も報告していない。Ebeler et al.は腫瘍を植え付けた遺伝子組み替えマウスを研究して対照マウスより単位代謝サイズあたりのホルムアルデヒドを有意に多く呼出していることを発見した(Ebeler SE:J Chromatogr B Biomed Sci Appl 1997;702:211−5)。その他の研究はBMAC用呼気検査が乳癌のスクリーニングに可能性のある役割を示している。チトクロームP450(CYP)系は薬剤やその他の生体異物を代謝する混合機能オキシダーゼ酵素群を含む。この系はまた、(たとえばn−ヘキサンを2−および3−ヘキサノールへといったように)、アルカンをアルコールへ代謝する(Crosbie SJ,Blaine PG and Williams FM:Hum Exp Toxicol 1997;16(3):131−7)。有効なチトクロームP−450インヒビターで処理したラットは10倍のヘキサン及びその他の呼気VOCを示し、肝脂質過酸化の増加が見られなかったことから、VOCクリアランスについてのこの経路の有用性を示している(Mathews JM,Raymer JH,Etheridge AS,Velez Gr and Bucher JR:Toxicol Appl Pharmacol 1997;146(2):255−60)。正常動物における研究では、チトクロームP450代謝によって肝臓が体からのアルカンのクリアランスの主要な部位であることを示した(Burk−RJ;Ludden−TM;Lane−JM:Gastroenterology.1983 84(1):138−42)。しかし、幾つかの最近の報告によれば、チトクロームP450代謝は肝臓に限局されないことが示されている。アルカンからアルコールへの代謝はチトクロームP4502E1又は2B6を発現する腎臓、脳、骨格筋のミクロゾームにおいても観察されている(Crosbie SJ,Blain PG and Williams FM:Hum Exp Toxicol 1997;16(3):131−137)。チトクロームP450系はヒト乳房組織にも存在する。Murray et al.は、乳癌及びその他の組織の癌においてチトクロームP−450CYP1B1が発現したことを報告した(Murray GI,Taylor MC,McFadyen MC,McKay JA,Greenlee WF,Burke MD and Melvin WT:Cancer Res 1997;57(14):3026−31)。Huang et al.は、ヒト乳房組織におけるチトクロームP450のうち生体異物代謝を行なうCYP1,CYP2,CYP3亜群の活性を検出した(Huang Z,Fasco MJ,Figge HL,Keyomarsi K and Kaminsky LS:Drug Metab Dispos 1996;24(8):599−905)。彼らが見出したのは、「...正常及び腫瘍組織が同一固体に由来する場合、正常組織のほうが高い増幅が見られた...であるから、その場で(in situ)考えられる生体異物の生物学的活性と治療用薬剤の変異の装置はヒト乳房組織に存在している」。これらを合わせて考えると、研究によって示されたのは:1.アルカンはチトクロームP450酵素によって生体内で代謝される。2.チトクロームP450酵素は正常及び新生物ヒト乳房組織に存在する。3.乳癌は正常乳房組織におけるチトクロームP450活性の増加を惹起する。4.したがって乳癌はアルカンの代謝増加を惹起する。臨床研究:呼気サンプルはRegional Imaging and Therapeutic Radiology Service PC(スタテン・アイランド)でスクリーニング・マンモグラフィーを受ける女性のグループから回収した。全員から署名のある同意書(signed informed consent)を得た上、研究はリッチモンドのセントビンセント・メディカルセンター(ニューヨーク州ステトン・アイランド)の施設内倫理委員会によって承認された。呼気と大気のサンプルは前述の方法で回収分析し、全被験者についてBMACを判定した。この非無作意性のサンプルは乳癌にかかっている比較的多数の女性を含むように意図的に歪曲されたものである。マンモグラフィーを施行したのと同じ日に女性36例を研究し、正常なマンモグラムが23例、また初めて乳癌が検出されたのが13例だった。乳癌の診断は全て後日の組織生検により確認した。結果:乳癌のある女性とない女性での平均BMACは図50に図示してある。平均BMACは癌グループで有意に落ち込んでいた。個々のBMACを対数回帰により分析して呼気検査に基づいた乳癌の発生確率を判定した。図51は乳癌のある女性とない女性での呼気検査によって示された乳癌の発生確率についての散布図を示す。結論:1.呼気検査は偽陽性又は偽陰性の結果なしに乳癌の女性全部を同定した。2.この知見は既知の病理生理学的メカニズムと一致する、即ち乳癌におけるROS活性の増加がアルカン産生を増加させ、これが乳房と肝臓のチトクロームP450活性を誘発した。結果として、環境大気中のアルカン類及びモノメチル化アルカン類のクリアランスが増加し、BMACの抑制が起こった。3.呼気検査は乳癌について高感度で特異性のあるスクリーニング検査を提供できると思われた。BMACは酸化的ストレスの新規かつ高感度マーカーを提供できると思われる。このように、1次スクリーニングで多数の疾患における役割ならびに治療効果をモニターする役割がある。【0043】以下、この研究あるいは発明を理解する上で有用な表および付録を示す。【0044】【表1−1】【0045】【表1−2】【0046】【表1−3】【0047】【表1−4】【0048】【表2】【0049】【表3】【0050】【表4】【0051】【表5】【0052】【表6】【0053】【表7】【0054】【表8】【表9】【表10】【表11】【表12】【表13】【表14】【付録1】【0056】BMAC関連の表の説明:表6:高齢正常対照で有意に増加したアルカン類とメチル・アルカン類。両側t検定で図3と図4に図示した化合物を比較し、若年者と高齢者の正常人の間の統計的有意差を示す。表7:被験者分布の特徴。多数の心臓移植レシピエントが一回以上、別の機会に、少なくとも1か月以上おいて研究された。心臓移植レシピエントと正常対照の年齢間で有意差はなかった。表8:心臓移植レシピエントにおけるアルカン類とメチル・アルカン類。グレード0拒絶反応対年齢の一致する正常対照。両側t検定を用いて図36に示す化合物を比較しグレード0拒絶反応のある心臓移植レシピエントと年齢が一致する正常対照の間の統計的有意差を示す。表9:心臓移植レシピエントにおけるアルカン類とメチル・アルカン類。グレードIIIa拒絶反応対グレード0拒絶反応。両側t検定を用いて図37に示す化合物を比較しグレード0拒絶反応のある心臓移植レシピエントと比較したグレードIIIa拒絶反応のある心臓移植レシピエントの間の統計的有意差を示す。表10:年齢によるBMACの化合物における有意な変化:図41に示す平均BMACを一方向ANOVAとNeuman−Keuls post hoc検定で比較し、分位間の有意差を示す。表11:不安定狭心症のある患者と年齢の一致する正常対照におけるVOCの有意差。VOCは両側t検定の有意差で順位をつけてある。表12:研究患者におけるESRDの原因。表13:年齢の一致する正常対照との比較でESRD(血液透析前)における有意差のあったBMAC以外のVOC。表14:患者と腫瘍の特徴。【図面の簡単な説明】図面と表の簡単な説明【図1】 (先行技術)呼気におけるVOC数の個人差。VOC数の頻度分布は呼気サンプルにおいて観察したもの。【図2】 (先行技術)サンプルのサイズで共有されるVOC数の変化、少なくとも一回は3481種のVOCが観察されており、これにはプラスの肺胞気濃度勾配を有する1753種のVOCとマイナスの肺胞気濃度勾配を有する1728種のVOCを含む。プラスの肺胞気濃度勾配を有する9種のVOCとマイナスの肺胞気濃度勾配を有する18種のVOCが正常ヒト被験者全50例に観察されただけだった。【図3】 (先行技術)人体各部を通るVOCの経路。ガス相及び毛細管VOCは肺胞内で急速に平衡になり、有意なプロセスは呼吸相によって変化する。吸気相では、室内空気VOCが肺静脈血と平衡し一方呼気相では肺動脈血が肺胞内呼気VOCと平衡する。VOCの肺以外からの入力は主として内因性合成に由来するもので、肺以外への出力は主として肝臓での代謝と腎臓における排泄による。【図4】 (先行技術)VOC動態の水流による比喩:VOCは人体プールへ吸気又は体内合成から入って来る(食物中のVOCなどの子細な入力は無視する)。VOCはクリアランス(代謝および/または排泄)によって、又は呼気中へと人体プールから出て行く。VOCが合成もされず人体から排泄もされない場合、呼気中に残る量は吸入した空気から入って来る量と等しくなるはずであり、肺胞気濃度勾配(空気中における量を引いた呼気中の量)はゼロとなる。VOCが人体内で合成されるが排泄されない場合、空気中から吸入するより多くを呼気中に排出することになるので、肺胞内濃度勾配はプラスになる。逆に、VOCが人体から排出されるが合成されない場合、大気から吸入するより少なく呼気に排出されるので、肺胞内濃度勾配はマイナスになる。よって、VOCが人体内で合成され排泄される場合、肺胞気濃度勾配の極性は組み合わせ作用によって変化することになる:合成がクリアランスより多ければプラス、クリアランスが合成より大きければマイナスである。【図5】 (先行技術)アルカン類の代謝。細胞膜中の多価不飽和脂肪酸は酸素フリーラジカルによって介在される脂質過酸化によりアルカン類へと分解され、膜の機能喪失や恐らくは細胞死を招く。揮発性アルカン類は呼気に排泄されるが、さらに代謝を受けてアルキル・アルコールへと変化する。他の分解産物へ又メチルアルカン類への潜在的な代謝経路はまだ不確定である。【図6】 (先行技術)呼気と大気中のアルカン(健常者)。パネル・グラフは呼気と大気におけるアルカン類の存在比、肺胞気濃度勾配、炭素鎖長による変化を示している。【図7】 (先行技術)パネルは呼気と大気(健常者)のサンプルにおけるアルケン類の存在の頻度分布を示す。【図8】 (先行技術)呼気と大気のアルキル・アルコール類。パネルは呼気と大気におけるアルキルアルコールの存在比、肺胞気濃度勾配、炭素鎖長による変化(健常者)を示す。【図9】 (先行技術)パネルは呼気と大気(健常者)のサンプルにおけるアルキル・アルコールの存在の頻度分布を示す。【図10】 (先行技術)呼気と大気中のメチル・アルカン類。パネルは呼気と大気におけるメチルアルコールの存在比、肺胞気濃度勾配、炭素鎖長による変化(健常者)を示す。【図11】 (先行技術)パネルは呼気と大気のサンプルにおけるメチル・アルカン類の存在の頻度分布を示す。【図12】 乳癌の女性と癌がない対照とをグラフで図示する:肺胞気呼気のアルカン・プロファイル。【図13】 乳癌の女性と癌がない対照とをグラフで図示する:室内空気のアルカン・プロファイル。【図14】 乳癌の女性と癌がない対照とをグラフで図示する:肺胞気濃度勾配のアルカンプロファイル。アルカンプロファイルは癌がない対照に比較して乳癌の女性で下向きに移動した。【図15】 乳癌の女性と癌がない対照とをグラフで図示する:乳癌の確率。図14に示すデータを対数回帰により分析した。【図16】 正常対照と不安定狭心症の冠動脈形成術前及び術中患者における呼気アルカンプロファイル:正常対照と比較して、呼気アルカンプロファイルは不安定狭心症患者において上向きに移動した。呼気アルカンプロファイルは冠動脈移植術中にバルーンを膨張させている間さらに上向きに移動した。【図17】 正常対照と不安定狭心症患者における虚血性心疾患の存在確率:図16に図示したデータを対数回帰により分析したもので、冠動脈移植を受ける前の不安定狭心症患者を正常対照と比較した。確率は各々の被験者について呼気アルケンプロファイルが正常グループに属するか又は不安定狭心症グループに属するかを判定した。分類の精度は両グループとも100%だった。【図18】 正常対照と不安定狭心症及び急性心筋梗塞による胸痛患者における呼気アルカンプロファイル:正常対照と比較して、不安定狭心症患者で呼気アルケン・プロファイルが上向きに移動した。急性心筋梗塞患者においてはさらに呼気アルケン・プロファイルが上向きに移動した。【図19】 正常対照と不安定狭心症及び急性心筋梗塞による胸痛患者における虚血性心疾患の発生確率:図18に図示したデータを対数回帰により分析し、心臓原性胸痛の患者と正常対照とを比較した。確率は各々の被験者について呼気アルケンプロファイルが正常グループに属するか又は心臓原性胸痛グループ(即ち不安定狭心症又は急性心筋梗塞のグループ)に属するかを判定した。分類の精度は両グループとも100%だった。【図20】 不安定狭心症及び急性心筋梗塞による胸痛患者における急性心筋梗塞の発生確率:図18に図示したデータを対数回帰により分析し、心臓原性胸痛患者の二つのグループを比較した。発生確率は各々の被験者について呼気アルカンプロファイルが不安定狭心症グループに属するか又は急性心筋梗塞グループに属するかを判定した。分類の精度は両グループとも100%だった。【図21】 正常対照と心臓移植レシピエントでの呼気アルカンプロファイル。心臓移植レシピエントは二つのグループに分けた:治療を必要としないもの(心筋内生検で拒絶反応グレード0,1a、1b)と治療を必要とするもの(心筋内生検で拒絶反応グレードII及びIII)。正常対照と比較し、治療を必要としない心臓移植レシピエントでは呼気アルカンプロファイルが上向きに移動し、治療を必要とする心臓移植レシピエントにおいてはさらに上向きに移動した。【図22】 正常と心臓移植レシピエントにおける呼気アルキルアルコール・プロファイル。心臓移植レシピエントは二つのグループに分けた:治療を必要としないもの(心筋内生検で拒絶反応グレード0,1a、1b)と治療を必要とするもの(心筋内生検で拒絶反応グレードII及びIII)。正常対照と比較し、治療を必要としない心臓移植レシピエントでは呼気アルキルアルコール・プロファイルが上向きに移動し、治療を必要とする心臓移植レシピエントにおいてはさらに上向きに移動した。【図23】 心臓移植拒絶反応についての呼気検査のレシーバ・オペレーティング特性(ROC)曲線。心臓移植レシピエントは二つのグループに分けた:治療を必要としないもの(心筋内生検で拒絶反応グレード0,1a、1b、(n=182)と治療を必要とするもの(心筋内生検で拒絶反応グレードII及びIII)(n=13)。図21及び図22に図示する呼気アルカンプロファイルと呼気アルキルアルコール・プロファイルの組み合わせを用いて二つのグループを対数回帰で比較した。ROC曲線は検査の感度と特異性を示す。曲線の肩で、呼気検査は感度84.6%特異性80.2%だった。【図24】 反応性酸素種(ROS)の発生と影響。ROSは正常な酸化的代謝の有毒副産物である。この図ではROSの発生と、これを排泄する細胞防御機構とが図示されている。酸化的ストレスはROSプールのサイズによって判定される。細胞膜における多価不飽和脂肪酸(PUFA)脂質過酸化によりアルカン類に分解され、膜の機能障害と恐らくは細胞死を招く。PUFAの代謝産物は主としてアルカン類、アルキルアルコール、恐らくはメチルアルカン類からなる揮発性有機化合物(VOC)として呼気に排泄される。【図25】 呼気と大気中のアルカン類。上部パネルは呼気と大気のアルカン類の平均濃度、炭素鎖長による変動を示す。星印は呼気と大気の濃度差が有意なものを表わす(p<0.05)。下側のパネルは呼気と大気サンプルにおける存在の頻度分布を示す。【図26】 反応性酸素種(ROS)の発生と影響。ROSは正常な酸化的代謝の有毒副産物である。この図ではROSの発生と、これを排泄する細胞防御機構とが図示されている。酸化的ストレスはROSプールのサイズによって判定される。細胞膜における多価不飽和脂肪酸(PUFA)脂質過酸化によりアルカン類に分解され、膜の機能障害と恐らくは細胞死を招く。PUFAの代謝産物は種としてアルカン類、アルキルアルコール、恐らくはメチルアルカン類からなる揮発性有機化合物(VOC)として呼気に排泄される(参考文献2と18から改変)。【図27】 呼気と大気中のアルカン類。上部パネルは呼気と大気のアルカン類の平均濃度、肺胞気濃度勾配(大気中濃度を引いた呼気中の濃度)、炭素鎖長による変動を示す。星印は呼気と大気の濃度差が有意なものを表わす(p<0.05)。下側のパネルは呼気と大気サンプルにおける存在の頻度分布を示す。【図28】 呼気アルカンプロファイルに対する年齢の影響。肺胞気濃度勾配のプロファイルは正常対照の若年者と高齢者について図示してある。高齢者対照においてアルカン類の有意な増加は、アルカン類のクリアランス減少が関係しているとしても、酸化的ストレスの増加と一致している。【図29】 酸化的ストレスの発生源と代謝マーカーの生成。【図30】 呼気メチル化アルカン輪郭分析――正常対照99例の平均。この図もn−アルカン類をC1でメチル化されたものとして含んでいることに注意する。たとえば、炭素鎖長=4のアルカン(部短)はC1でメチル化されるとC5アルケンペンタンになる。平均BMACは全ての被験者、若年者被験者、高齢者被験者について3と4に各々図示してある。【図31】 呼気メチル化アルカン輪郭分析――若年者被験者の平均。9歳から40歳の健常者49例の平均BMACが図示してある。【図32】 呼気メチル化アルカン輪郭分析――高齢者被験者の平均。40歳から89歳の健常者50例の平均BMACが図示してある。若年健常者の平均BMACに比べて幾つかのピークが立ち上がっていることに注意する。これらのうちの25例は統計的に有意だった(表1参照)。【図33】 呼気メチル化アルカン輪郭分析――喫煙者の平均。喫煙者11例の平均BMACが図示してある。【図34】 呼気メチル化アルカン輪郭分析――非喫煙者の平均。図33に図示した喫煙者と年齢的に一致した非喫煙者11例の平均BMACが図示してある。【図35】 心臓移植拒絶反応とVOCの間の呼気における関連性。心臓移植拒絶反応は心筋における反応性酸素種(ROS)の形成を顕在化させており、これが不飽和脂肪酸(PUFA)をアルカンやその他の分解産物へ分解する。メチル化アルカンの起原は不明だが、恐らく経路がPUFAの分解又はアルカンのメチル化を含んでいる。アルカン類とメチル化アルカン類は呼気から排泄される揮発性有機化合物(VOC)である。【図36】 呼気メチル化アルカン輪郭分析――移植レシピエントと健常者の差:拒絶反応がグレード0の心臓移植レシピエント(即ち拒絶反応の病歴兆候がない)と、年齢が一致する正常対照の平均BMACが図示してある。健常者で強くマイナスになっている多数のピークが心臓移植レシピエントではそれほど顕著でないことに注意する。有意にことなったVOCが表3に図示してある。【図37】 呼気メチル化アルカン輪郭分析――拒絶反応グレードが異なる心臓移植レシピエント間の差:拒絶反応グレード0,1a、1b、グレードII、グレードIIIaの心臓移植レシピエントの平均BMACが図37に図示してある。拒絶反応グレード0とIIIaの患者において有意にことなったVOCは表4に図示してある。【図38】 全ての対照における拒絶反応の確率の散布図。心臓移植拒絶反応の確率は心臓移植レシピエントを二つのグループに分けて決定した:拒絶反応の兆候がないもの(グレード0)と何らかの拒絶反応の兆候が見られるもの(グレード1a,1b,II、IIIa)二つのグループにおける患者のBMACは対数回帰により比較して拒絶反応の確率を生成した。【図39】 心臓移植拒絶反応の呼気検査の感度と特異性:これらのレシーバ・オペレーティング特性(ROC)曲線は図38に図示した拒絶反応の確率から生成した。検査はグレードIIIa拒絶反応でもっとも高感度高特異性で、グレード1a,1b,IIではそれより低かった。【図40】 酸化的ストレスの起原と代謝マーカーの生成。ROSはミトコンドリアで合成され、細胞質へ洩れ出た電子が酸化的ストレス、DNAや蛋白質と不飽和脂肪酸(PUFA)への定常的な連続傷害を作り出す。この図はPUFAに対する酸化的ストレスの影響を図示してあり、代謝されるか又は呼気へ排泄されるアルカン類やメチル化アルカン類を生成している。【図41】 健常者における呼気メチル化アルカン輪郭分析(BMAC)。平均BMACは年齢4分位で分けた正常なヒト102例について図示してある。図示した化合物は1位でメチル化された直鎖n−アルカンである。この図はn−アルケン類を含み、C1でメチル化されたように図示してある。たとえば炭素鎖長=4のアルカン(ブタン)はC1でメチル化された場合にC5アルカンのペンタンになる。肺胞気濃度勾配は室内大気中の濃度を引いた呼気中の濃度であり、クリアランス率を引いた合成率によって変化する。数種類のメチル化アルカン類でマイナスからプラスの肺胞気濃度勾配への漸増的変化は、年齢とともに発生し、年齢とともに増加する酸化的ストレスと一致している。若年者と高齢者被験者の間の統計的有意差が表1に図示してある。【図42】 BMACについて不安定狭心症と冠動脈形成術の影響。平均BMACは年齢の一致した正常対照、不安定狭心症患者30例、また冠動脈形成術中の同じ患者について図示してある。【図43】 不安定狭心症の確率。対数回帰分析を用いてBMAC単独に基づいた不安定狭心症の確率を、不安定狭心症患者についてと年齢が一致する正常対照について、同定した。二つのグループに重複はなかった。【図44】 年齢が一致した正常対照と透析前後でのESRD患者における平均BMAC。【図45】 ESRDでのBMACの感度と特性。年齢の一致した健常者と透析前のESRD患者における平均BMACを対数回帰分析によって比較した。ROC曲線はBMACが高感度高特異性のESRDマーカーを提供したことを示している。【図46】 肺癌がある患者とない患者での平均BMAC。【図47】 転移肺癌、小細胞癌、非小細胞癌の患者における平均BMAC。【図48】 癌のTNMステージングによる呼気検査の感度と特異性。【図49】 癌の組織学的種類による呼気検査の感度と特異性。【図50】 乳癌のある女性とない女性での平均BMAC。【図51】 BMACに基づいた乳癌の発生確率。 人間を含む哺乳類において疾患の有無又は前記哺乳類の加齢を検出する方法であって、 前記哺乳類から肺胞気呼気の代表的サンプルを捕集するステップと、 環境大気の代表的サンプルを捕集するステップと、 呼気と大気の前記サンプルを分析して2から20個の炭素原子を有するn−アルカンの含有量を判定するステップと、 前記呼気サンプルにおいて前記2から20個の炭素原子を有するn−アルカンの肺胞気濃度勾配を計算して前記アルカンのプロファイルを決定するステップと、 前記アルカンプロファイルを、前記検出しようとする疾患にかかっていないことが分かっている哺乳類について計算した基線アルカンプロファイルと比較するステップと、 前記基線アルカンプロファイルからの前記アルカンプロファイルの差の知見が前記疾患の存在を表わすステップと を含むことを特徴とする方法。 前記疾患が乳癌であることを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記疾患が心臓原性胸痛によって表現されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記哺乳類がヒトであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記疾患が不安定狭心症であることを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記疾患が急性心筋梗塞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記疾患が不安定狭心症であることを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記疾患が腎疾患であることを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記検出が加齢であることを特徴とする請求項1に記載の方法。 呼気と大気の前記サンプルを分析して、もしあれば、3個から20個の炭素原子を有するn−アルカンのメチル化部位を決定するステップと、 前記呼気サンプルにおいて2から20個の炭素原子を有する前記n−アルカンの前記肺胞気濃度勾配を計算して前記アルカンプロファイルの第1の成分を決定するステップと、 前記呼気サンプルにおいて3から20個の炭素原子を有する前記n−アルカンの前記肺胞気濃度勾配を計算して前記アルカンプロファイルの第2の成分を決定するステップと、 前記アルカンプロファイルを、前記検出しようとする疾患にかかっていないことが分かっている哺乳類について計算した基線アルカンプロファイルと比較するステップと、 前記基線アルカンプロファイルからの前記アルカンプロファイルの差の知見が前記疾患の存在を表わすステップと を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記疾患が心臓移植拒絶反応であることを特徴とする請求項10に記載の方法。 前記疾患が虚血性心疾患であることを特徴とする請求項10に記載の方法。 前記疾患が虚血性心疾患であることを特徴とする請求項10に記載の方法。 前記疾患が肺癌であることを特徴とする請求項10に記載の方法。 前記疾患が乳癌であることを特徴とする請求項10に記載の方法。 ヒトにおいて乳癌の存在を検出するための方法であって、 ヒトから肺胞気呼気の代表的サンプルを捕集するステップと、 環境大気の代表的サンプルを捕集するステップと、 前記捕集した呼気と大気のサンプルを分析して、2から20個の炭素原子を有するn−アルカンの含有量を判定するステップと、 前記呼気サンプルにおいて2から20個の炭素原子を有するn−アルカンの前記肺胞気濃度勾配を計算してアルカンプロファイルを判定するステップと、 乳癌にかかっていないことが分かっているヒトについて基線アルカンプロファイルを計算するステップと、 前記アルカンプロファイルと前記基線アルカンプロファイルとを比較するステップと、 前記基線アルカンプロファイルからの前記アルカンプロファイルの下向き移動の知見が乳癌の存在を表わすステップと、 を含むことを特徴とする方法。 ヒトにおいて虚血性心疾患の存在を検出するための方法であって、 ヒトから肺胞気呼気の代表的サンプルを捕集するステップと、 環境大気の代表的サンプルを捕集するステップと、 前記捕集した呼気と大気のサンプルを分析して、2から20個の炭素原子を有するn−アルカンの含有量を判定するステップと、 前記呼気サンプルにおいて2から20個の炭素原子を有するn−アルカンの前記肺胞気濃度勾配を計算してアルカンプロファイルを判定するステップと、 虚血性心疾患にかかっていないことが分かっているヒトについて基線アルカンプロファイルを計算するステップと、 前記アルカンプロファイルと前記基線アルカンプロファイルとを比較するステップと、 前記基線アルカンプロファイルからの前記アルカンプロファイルの上向き移動の知見が虚血性心疾患の存在を表わすステップと、 を含むことを特徴とする方法。