タイトル: | 特許公報(B2)_第一級アミンラセミ体の酵素触媒作用による分割 |
出願番号: | 2000566455 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12P 41/00 |
ヌーブリング,クリストフ ディトリッヒ,クラウス ドゥリー,クリスチャン JP 4493851 特許公報(B2) 20100416 2000566455 19990813 第一級アミンラセミ体の酵素触媒作用による分割 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア 508020155 BASF SE 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 ヌーブリング,クリストフ ディトリッヒ,クラウス ドゥリー,クリスチャン DE 198 37 745.2 19980820 20100630 C12P 41/00 20060101AFI20100610BHJP JPC12P41/00 H C12P 41/00 CA/BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII) PubMed 特表平09−503658(JP,A) 6 EP1999005958 19990813 WO2000011203 20000302 2002523055 20020730 11 20060712 福間 信子 【0001】本発明は、アルコキシ置換された第一級アミンのラセミ体を分割する方法に関する。該方法は、該ラセミ体をリパーゼの存在下でエステルと反応させた後、生成した光学活性なアミドを未反応の光学活性なアミンから分離することによるものである。この後、適切な場合には、光学活性なアミドを加水分解し、加水分解により生成した光学活性なアミンをエステル由来の酸から分離し、不要なアミンエナンチオマーをラセミ化して再循環し、また酸をエステル化して再循環する。【0002】WO 95/08636には、加水分解酵素、特にリパーゼの存在下でエステルと反応させることによる第一級および第二級アミンのラセミ体を分割する方法が記載されている。好ましいアミンは、第一級アリールアルキルアミンである。WO 96/23894には、加水分解酵素、特にリパーゼの存在下でエステルと反応させることによる第一級および第二級ヘテロ原子置換アミンのラセミ体を分割するプロセスが記載されている。好ましいアミンは、O-保護アミノアルコールである。これらの出願双方に好ましいエステルとして記載されているのは、C1〜4-アルコキシ酢酸のC1〜4-アルキルエステルである。【0003】DE 196 03 575およびDE 196 37 336には、Candida antarcticaに由来するリパーゼの存在下で、対応するラセミ体をエステルと反応させることにより光学活性なアミンを製造する方法が記載されている。好ましいアミンは、アルコキシ置換アルキルアミン、特に、2-アミノ-1-メトキシプロパン、および置換フェニルエチルアミン、特に、4-クロロフェニルエチルアミンである。好ましいエステルは、C1〜6-アルカン酸エステルおよびC1〜8-アルコキシアルカン酸エステル、特に、メチルメトキシアセテートである。最後に、DE 196 21 686には、加水分解酵素の存在下で対応するラセミ体をエステルと反応させることにより光学活性なアミンを製造する方法が記載されており、この方法では、置換フェニルエチルアミン、特に、4-クロロフェニルエチルアミン、およびC1〜4-ハロアルカン酸エステル、特に、エチルクロロアセテートが好ましい。【0004】この度、驚くべきことに、長鎖アルコール残基を有するエステルを使用した場合、冒頭に記載のプロセスを特に有利に実施することができることを見いだした。【0005】本発明のアミンラセミ体の分割方法は、リパーゼの存在下で、一般式1【化6】[式中、mは、0または1であり、R1は、6〜20個の主鎖原子を有する分枝状または非分枝状のC6〜C20-アルキルまたはヘテロアルキルであり、R2は、C1〜C8-アルキルまたはフェニルであり、R3は、HまたはC1〜C4-アルキルである]で表されるエステルを、一般式2【化7】[式中、nは、0または1であり、R4、R5は、互いに独立して、H、C1〜C8-アルキル、またはフェニルであり、R6は、C1〜C6-アルキルまたはベンジルである]で表されるアルコキシまたはベンジルオキシ置換第一級アミンと反応させて、一般式3【化8】[式中、n、m、R2、R3、R4、R5、およびR6は、先に記載の意味を有する]で表されるアミド(一方の光学異性体が過剰に含まれている)を生成する場合に特に有利に行われる。【0006】好ましくは、(R)アミドが生成し、特に好ましくは、50% eeを超える、特に80% eeを超える、とりわけ90% eeを超える高いエナンチオマー過剰率でエナンチオ選択的アシル化が行われる。未反応のアミンには、好ましくは50% eeを超える、特に90% eeを超える、とりわけ99% eeを超える過剰の(S)アミンが含まれる。(R)アミドまたは(R)アミンとは、アミノ基が存在する炭素において(R)配置を有する光学活性なアミンまたはアミドを意味する。同様の記述法を(S)アミンまたは(S)アミドにも適用できる。【0007】加えて、出発原料を乾燥させることが有利であることを見いだした。これは、原理上、当業者に周知の任意の方法によって、例えば、共沸乾燥によって、あるいは硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、KOH、五酸化リン、モレキュラーシーブ、シリカゲル、またはアルミナのような乾燥剤を介して行うことができる。【0008】更に、酸の含まれない出発原料を使用することが有利であることを見いだした。酸は、原理上、当業者に周知の任意の方法によって、例えば、適切な場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化カルシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を用いて、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、またはN,N-ジメチルアニリンのようなアミンを用いて、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸カルシウムのような炭酸塩を用いて、あるいはイオン交換体を用いて予め中和した後、抽出または蒸留によって除去することができる。【0009】本発明に係るプロセスにおいて、多数のリパーゼを使用することが可能である。微生物リパーゼが好ましい。具体的には、Amano PまたはPseudomonas spec. DSM 8246に由来するリパーゼなどのBacillus属またはPseudomonas属などの細菌に由来するリパーゼ、あるいはAspergillusのような菌類またはCandidaのような酵母に由来するリパーゼが挙げられる。更に好ましいリパーゼは、例えば、リパーゼSP 523、SP 524、SP 525、SP 526、およびNovozym(登録商標)435であり、これらは、Humicola、Mucor、またはCandida antarcticaのような菌類から得られ、Novo Nordiskから市販されている。このほか、リパーゼChirazyme L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、およびL8を使用することも可能であり、これらは、Boehringer Mannheimから市販されている。リパーゼは、天然の形態または固定化された形態で使用することができる。固定化リパーゼは、マイクロカプセル化、プレポリマーを用いた乳化および重合、二官能性物質(オリゴマー、アルデヒドなど)を用いた架橋、あるいはCelite、Lewatit、ゼオライト、多糖、ポリアミド、またはポリスチレン樹脂のような無機または有機の担体材料への結合によるものであり得る。特に好ましいリパーゼは、Novozym 435およびChirazyme L2である。【0010】酵素触媒作用によるラセミ体分割は、プロトン性または非プロトン性の溶剤中で行うこともできるし、溶剤なしで行うこともできる。好適な溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、またはトルエンのような炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテル、tert-アミルメチルエーテル、またはTHFのようなエーテル、アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル、tert-ブタノール、3-メチル-3-ペンタノールのようなアルコール、およびメチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素が挙げられる。【0011】リパーゼを用いた反応は、一般的には、大気圧下で、適切な場合には、窒素またはアルゴンのような不活性ガス下で行われる。しかしながら、高圧下で行うこともできる。【0012】エステルとラセミ体アルコキシ置換アミンとの反応の温度は、通常は0〜90℃、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは20〜50℃である。【0013】ラセミ体アミン1モルあたり0.5〜2.0モル、好ましくは0.5〜1モルのエステルが使用される。酵素の必要量は、酵素調製物の活性およびアミンの反応性に依存し、予備試験によって容易に設定できる。一般的には、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の固定化酵素調製物(ラセミ体アミンを基準にして)が使用される。1-プロパノールによるラウリン酸のエステル化において、Novozymは、約7000 U/gの活性を有する。【0014】反応の経過は、GCやHPLCのような従来の方法によって容易に追跡できる。所望の転化率に達したとき、好ましくは、触媒を除去することによって、例えば、(担体に結合された)酵素を濾別することによって、反応を停止させる。また、反応は、例えば、酸またはアルカリのような酵素分解性物質を添加することによって、あるいは加熱することによって、停止させることもできる。連続的な手法では、酵素のローディングによって、すなわち、単位時間あたりに酵素反応器中にポンプ送液されるアミンの量によって、転化率を制御することができる。工程は、好ましくは、連続的に行うことができるが、バッチ方式または半連続的に行うこともできる。【0015】酵素触媒作用によるラセミ体分割を行うと、最終的には、アシル化アミンエナンチオマーと、未反応アミンエナンチオマーと、アシル化の際にエステルから放出されたアルコールと、恐らく、利用した過剰のエステルとの混合物が得られる。蒸留および抽出プロセスは、この混合物を分離するのに特に好適である。この場合、低沸点のアミンは、反応混合物から直接に留去可能である。その後アミドを、アルコールおよび適切な場合にはエステルから、蒸留または抽出によって分離し、次に、酸または塩基のいずれかを用いて従来の方法によって、例えば、硫酸または水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムの溶液を用いて煮沸することによって加水分解することができる。また、その際、ラセミ化と共に行うこともできるしラセミ化させずに行うこともできる。加水分解は、大気圧下で行うことができる。また、適切な場合には、反応を促進すべく圧力を増大させて高温で行うこともできる。加水分解で生成した第二のアミンエナンチオマーは、適切な場合にはアンモニウム塩から遊離させた後、蒸留または抽出によって単離することができる。加水分解で生成した酸は、適切な場合に加水分解溶液を酸性化した後、好ましくは抽出によって回収することができる。酸は、従来の方法によって、例えば、共沸的にまたは抽出を介してエステル化し、ラセミ体溶液工程に戻すことができる。【0016】アミンの一方のエナンチオマーだけが必要な場合、他方をラセミ化してラセミ体を工程に戻すことが可能である。このようにして、理論的にはすべてのラセミ体を所要のエナンチオマーに変換することが可能である。このようなラセミ化は、例えば、アルコールまたはケトンからアミンを製造する場合(「還元的アミノ化」)と同じ条件下で行うことができる。【0017】本発明に係る方法に好適な、式1【化9】で表されるエステルは、以下の条件を満足する化合物である。【0018】mは、0または1、好ましくは0である。【0019】R1は、6〜20個の主鎖原子を有する分枝状または非分枝状のC6〜C20-アルキルまたはヘテロアルキルである。このアルキル基またはヘテロアルキル基は、互いに独立して1〜5個のハロゲン原子、好ましくはFもしくはCl、および/またはオキソ基によって置換されていてもよい。ヘテロアルキルとは、1、2、もしくは3個の非隣接-CH2-基が-0-、-S-、-NH-と入れ替わっているか、または1もしくは2個の非隣接CH基がNと入れ替わっていることを意味する。1もしくは2個のCH2基の入れ替えが好ましい。好ましいヘテロ原子はOである。R1の例は、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2-エチル-1-ブチル、1-ヘプチル、2-ヘプチル-、3-ヘプチル-、2-メチル-1-ヘキシル、3-メチル-1-ヘキシル、2-エチル-1-ヘキシル、3-エチル-1-ヘキシル、2-メチル-1-ヘプチル、3-メチル-1-ヘプチル、1-オクチル、2-オクチル-、3-オクチル-、1-ノニル、2-ノニル-、3-ノニル、1-デシル、2-デシル、3,7-ジメチル-1-オクチル、1-ウンデシル、1-ドデシル、1-トリデシル、1-テトラデシル、1-ペンタデシル、1-ヘキサデシル、1-ヘプタデシル、および1-オクタデシル、2-メトキシアセトキシエチル、2-メトキシアセトキシブチル、2-メトキシアセトキシヘキシル、2-メトキシアセトキシデシル、クロロアセトキシブチル、クロロアセトキシヘキシル、クロロアセトキシデシル、トリクロロアセトキシブチル、トリクロロアセトキシヘキシル、トリクロロアセトキシデシルであり、好ましくは、6〜18個の主鎖原子を有する分枝状または非分枝状のC6〜C18-アルキルまたはヘテロアルキル、例えば、1-ヘキシル、1-ヘプチル、2-エチル-1-ヘキシル、1-オクチル、1-デシル、1-ドデシル、1-テトラデシル、1-ヘキサデシル、および1-オクタデシル、2-メトキシアセトキシエチル、2-メトキシアセトキシブチル、2-メトキシアセトキシヘキシル、2-メトキシアセトキシドデシル、クロロアセトキシブチル、クロロアセトキシヘキシル、クロロアセトキシデシルであり、特に好ましくは、6〜14個の主鎖原子を有する分枝状または非分枝状のC6〜C14-アルキルまたはヘテロアルキル、例えば、1-ヘキシル、2-エチル-1-ヘキシル、1-オクチル、1-デシル、および1-テトラデシル、2-メトキシアセトキシエチル、2-メトキシアセトキシブチル、2-メトキシアセトキシヘキシル、2-メトキシアセトキシドデシルである。【0020】R2は、C1〜C8-アルキル、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、1-ペンチル、2-ペンチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、1-ヘプチル、2-エチルヘキシル、および1-オクチル、好ましくは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、および1-ブチル、特に好ましくは、メチルおよびエチルであるか、あるいはフェニルである。【0021】R3は、H、C1〜C4-アルキル、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、および1-ブチル、好ましくは、H、メチル、およびエチルである。【0022】式1で表されるエステルとしては、例えば、以下の好ましい化合物が挙げられる。【0023】【化10】【0024】本発明に係るプロセスは、下記の一般式2で表されるアルコキシ置換第一級アミンのラセミ体を分割するのに好適である。【0025】【化11】[式中、nは、0または1、好ましくは0である。【0026】R4、R5は、互いに独立して、H、C1〜C8-アルキル、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、1-ペンチル、2-ペンチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、1-ヘプチル、2-エチルヘキシル、および1-オクチル、あるいはフェニルである。好ましくは、H、C1〜C4-アルキル、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、および1-ブチル、特に好ましくは、H、メチル、およびエチルである。【0027】R6は、C1〜C6-アルキル、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、1-ペンチル、2-ペンチル、1-ヘキシル、および2-ヘキシル、あるいはベンジルである。好ましくは、メチル、エチル、およびベンジルである]【0028】以下の化合物は、式2で表されるアミンの好ましい例として挙げられる。【0029】【化12】【0030】実施例11モル当量の2-アミノ-1-メトキシプロパンと1モル(ジエステルの場合は0.5モル)当量の特定のメトキシ酢酸エステルとの混合物を、5重量%(アミンを基準にして)のNovozym 435と混合し、室温で24時間振とうした。ガスクロマトグラフィーにより転化率を測定した。測定値は表1にまとめられている。【0031】表1: 種々のメトキシ酢酸エステルによる2-アミノ-1-メトキシプロパンのアシル化の速度の比較【表1】【0032】実施例22gのNovozym 435を特定のエステル中の懸濁液としてガラス管(内径:1cm)に導入し、60℃まで加熱した。2-アミノ-1-メトキシプロパンと特定のエステルとの等モル混合物を、モレキュラーシーブ(4Å)で予め脱水してから、一定速度で酵素床にポンプ送液した。これにより得られた転化率および反応性の低い方のエナンチオマー[(S)-1-アミノ-2-メトキシプロパン]のエナンチオマー過剰率が表2にまとめられている。【0033】表2: 種々のメトキシ酢酸エステルによるラセミ体1-アミノ-2-メトキシプロパンのラセミ体分割に関する転化率およびエナンチオマー過剰率の比較【表2】【0034】(ローディングは、1グラムのNovozym 435に1時間あたり、酵素床を通してポンプ送液されたアミン/エステル混合物の量に相当する。) リパーゼの存在下で、式2[式中、 n=0または1、 R4、R5=互いに独立して、H、C1〜C8-アルキル、またはフェニル、 R6=C1〜C6-アルキルまたはベンジル]で表される第一級アミンを、下記の化合物:からなる群より選択されるエステルと反応させることによりアシル化する方法。 a) リパーゼの存在下で、式2[式中、 nは、0または1であり、 R4、R5は、互いに独立して、H、C1〜C8-アルキル、またはフェニルであり、 R6は、C1〜C6-アルキルまたはベンジルである]で表される第一級アミンを、請求項1に記載のエステルでエナンチオ選択的にアシル化し、 b) エナンチオ選択的にアシル化されたアミンと未反応の光学活性なアミンとの混合物を分離する、請求項1に記載の方法。 ステップb)に続いて、 c) アシル化されたアミンを加水分解することによって、アミンの他方のエナンチオマーを得る、請求項2に記載の方法。 ステップb)またはc)に続いて、不要なエナンチオマーをラセミ化するかまたはラセミ化と共に加水分解して工程に戻す、請求項2または3に記載の方法。 前記第一級アミンが2-アミノ-1-メトキシプロパンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 アミノ炭素において、アシル化されたアミンが(R)配置を有し、未反応のアミンが(S)配置を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。