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タイトル:特許公報(B2)_カチオン界面活性剤による酵素の安定化
出願番号:2000556016
年次:2005
IPC分類:7,C12N9/12,C12N9/96


特許情報キャッシュ

シュルツ,ジョン,ダブリュ. フアン,フェン JP 3673175 特許公報(B2) 20050428 2000556016 19990623 カチオン界面活性剤による酵素の安定化 プロメガ・コーポレイシヨン 500122994 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 シュルツ,ジョン,ダブリュ. フアン,フェン US 60/090,539 19980624 US 09/338,174 19990622 20050720 7 C12N9/12 C12N9/96 JP C12N9/12 C12N9/96 7 C12N 9/00-9/99 C12N 15/00-15/90 PubMed BIOSIS/WPI(DIALOG) JSTPlusファイル(JOIS) 米国特許第5210036(US,A) Biochemical and Biophysical Research Communications, 1972, Vol.49, No.4, p.1093-1099 信沢孝一編,「蛋白質・核酸・酵素 臨時増刊号 遺伝子操作 1990」,日本,共立出版株式会社,1990年10月10日 19 US1999014217 19990623 WO1999067371 19991229 2004500005 20040108 26 20010515 佐久 敬 【0001】発明の利用分野本発明は、タンパク質の安定化、特にカチオン界面活性剤による水溶液中のポリメラーゼの安定化に関するものである。【0002】発明の背景酵素の安定化は長期保存と、多くの生化学的方法やバイオテクノロジーの手法での利用にとって必要である。熱変性に対して安定な酵素は好熱生物から単離されてきた。しかし、こうした高度に熱安定性の酵素でさえ、化学薬品、プロテアーゼ類または環境変化によって不活化されることがある。熱安定性酵素や他の酵素の利用には、高温、最適以下の濃度の補因子や基質を含む水性環境、酵素の最大安定性に対して最適以下のpHをはじめとする変性条件の同時使用がしばしば必要となる。【0003】数多くの安定化方法が公知である。これらの方法として、固相支持体上への酵素の固定化、酵素の化学的修飾、酵素の遺伝子工学的操作、安定化剤の添加などがある。界面活性剤は酵素を安定化することが分かっている添加剤の1グループである。界面活性剤は、活性型の酵素とそれらを取り巻く液体環境との界面を安定化させる表面活性化合物である。【0004】例えば、非イオン性界面活性剤は酵素活性のある各種タンパク質(例えば、cAMP依存性プロテインキナーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、酸化窒素シンターゼ、トリプトファンヒドロキシラーゼ、サツマイモのβ-アミラーゼ)の溶液安定性を高めることがいろいろ分かってきている。さらに、TRITON X-100やTween 20のような非イオン性界面活性剤は、DNAポリメラーゼの活性を安定化することが明らかにされた(例えば、Biochem., 14: 789-95 [1975] 参照)。欧州特許出願第776,970 A1号(参照によりここに組み入れる)には、ポリオキシエチル化ソルビタンモノラウレート(Tween 20)およびエトキシル化アルキルフェノール(NP-40)を使用してTaq熱安定性DNAポリメラーゼの活性を安定化させることが開示されている。【0005】アニオン界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を低濃度で用いると、酵素活性を安定化できることが知られている。しかし、溶液中でSDSが最適濃度を上回る場合は協同的結合が起こり得るため、タンパク質安定化におけるSDSの使用は制限される。しかしながら、多くのカチオン界面活性剤は、SDSなどの強いアニオン界面活性剤ほど強力にタンパク質と結合しないことが知られている(例えば、Nozakiら, J. Biol. Chem., 249:4452-59 [1974]参照)。その上、大部分のタンパク質はアニオン結合部位よりカチオン結合部位の方が少ない。【0006】DNAポリメラーゼのような酵素の有用性は、しばしば、溶液中での該ポリメラーゼの安定性により制限される。したがって、溶液中の酵素の安定性を高める添加剤、特に安定性を向上させるだけでなく、現在使用されている界面活性剤の欠点を回避する添加剤の必要性が存在している。【0007】発明の概要本発明は、タンパク質の安定化、特にカチオン界面活性剤による水溶液中のポリメラーゼの安定化に関するものである。【0008】いくつかの実施形態において、本発明は、酵素活性のあるタンパク質とカチオン界面活性剤との混合物を含む組成物を提供する。本発明は何らかの特定の酵素に限定されるものではない。実際、様々な酵素の安定化が考えられる。ある好ましい実施形態において、タンパク質はポリメラーゼ(例:大腸菌DNAポリメラーゼI、Taqポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼII、SP6 RNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、AMV逆転写酵素、MMLV逆転写酵素など)である。他の実施形態において、酵素は好ましくはキナーゼ、ホスホリラーゼ、またはホスファターゼ(例:ウシ腸ホスファターゼ)である。【0009】同様に、本発明は特定のカチオン界面活性剤に限定されるものではない。実際、様々なカチオン界面活性剤が考えられる。いくつかの実施形態において、カチオン界面活性剤は約10〜17の親水性親油性バランス(HLB)指数を有する。ある好ましい実施形態において、カチオン界面活性剤のHLB指数は約11〜16である。他の実施形態では、カチオン界面活性剤はポリエトキシル化アミンである。特に好ましい実施形態では、ポリエトキシル化アミンは下記の構造:を有する。いくつかの実施形態において、zは約15〜20の整数、最も好ましくは18である。他の実施形態において、x+yの平均値は約5〜15であり、その結果としてHLB指数は約11〜16となる。いくつかの好ましい実施形態では、x+yの平均値は5または15である。ある実施形態において、窒素はリン、硫黄またはヒ素ラジカルで置換されてもよい。さらに他の実施形態において、カチオン界面活性剤は約0.0005〜1.0体積%の濃度で溶液または混合物中に存在する。【0010】いくつかの実施形態においては、該混合物または溶液が緩衝試薬を含む。本発明は特定の緩衝試薬に限定されない。実際、各種の緩衝試薬が考えられる。ある実施形態では、緩衝試薬をMOPS、HEPESまたはTrisバッファーとすることが好ましい。他の実施形態では、溶液中のバッファーの濃度を約10〜70mMとする。いくつかの実施形態では、pHを約7.0〜9.2とする。【0011】他の実施形態においては、該溶液または混合物が1価の塩および/または2価の塩を含む。本発明はどのような特定の塩にも限定されない。実際、NaCl、KCl、MgCl2およびCaCl2を含むがこれらに限らない各種の塩が考えられる。いくつかの実施形態では、2価カチオンが約0.1〜10mMの濃度で存在する。他の実施形態では、1価カチオンが約1〜100mM の濃度で存在する。【0012】さらなる実施形態において、該溶液または混合物はキレート化剤および/または還元剤を含む。本発明は特定のキレート化剤と還元剤に限定されない。実際、各種のキレート化剤および還元剤が考えられる。好ましいキレート化剤としてはEDTAとEGTAがあるが、これらに限らない。好ましい還元剤にはジチオトレイトールとβ-メルカプトエタノールが含まれるが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、キレート化剤が約0.01〜10mMの濃度で存在する。他の実施形態では、還元剤が約0.1〜20mMの濃度で存在する。【0013】いくつかの実施形態においては、本発明は酵素活性のあるタンパク質を安定化する方法を提供する。ある実施形態では、酵素活性のあるタンパク質(例:ポリメラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、またはホスホリラーゼ)とカチオン界面活性剤が用意される。好ましい実施形態において、カチオン界面活性剤は約10〜17のHLB指数を有する。特に好ましい実施形態において、カチオン界面活性剤は上記のようなポリエトキシル化アミンである。他の実施形態においては、酵素活性のあるタンパク質とカチオン界面活性剤とを組み合わせることにより、該酵素の活性がカチオン界面活性剤の不在下での酵素活性と比べて安定化されるようにする。【0014】定義本発明を理解しやすくするために、いくつかの用語を以下に定義する。【0015】本明細書中で用いる「酵素」とは、化学的および生物学的反応を触媒することに関与する分子または分子集合体をさす。かかる分子は典型的にはタンパク質であるが、短いペプチド、RNA、リボザイム、抗体および他の分子を含んでいてもよい。化学的および生物学的反応を触媒する分子を「酵素活性のある」または「触媒活性のある」分子と呼ぶ。【0016】本明細書中で用いる「安定化」、「安定化する」および「安定化した」とは、酵素活性に関して用いる場合、酵素活性(経時的に測定されることが多い)を維持する、増強する、さもなくば酵素活性の減少または低下をくい止める物質の能力をいう(すなわち、安定化剤の存在下では、酵素が、安定化剤の存在しない酵素よりも長期間にわたってその活性を保持する)。また、「酵素活性の安定化」とは、最適以下の温度またはpH条件下で酵素活性を維持する物質の能力をさす。他の例として、「酵素活性を安定化する」とは、「安定化」化合物または物質の存在しない酵素活性と比べて、最適以下の条件下で酵素活性を増大させる物質の能力をいう。【0017】「ポリメラーゼ」とは、リボヌクレオシド三リン酸またはデオキシヌクレオシド三リン酸から核酸鎖(例:RNAまたはDNA)を合成する酵素をさす。【0018】「ポリメラーゼ活性」とは、酵素がリボヌクレオシド三リン酸またはデオキシヌクレオシド三リン酸から核酸鎖(例:RNAまたはDNA)を合成するその能力をさす。DNAポリメラーゼはDNAを合成し、一方RNAポリメラーゼはRNAを合成する。【0019】「界面活性剤」とは、水による溶媒和の方を強く好む極性ヘッド基と、水によって容易に溶媒和されない疎水性テイルの両方をもつあらゆる分子をさす。「カチオン界面活性剤」とは、カチオン性ヘッド基をもつ界面活性剤のことである。「アニオン界面活性剤」とは、アニオン性ヘッド基をもつ界面活性剤のことである。【0020】「親水性親油性バランス指数」および「HLB指数」とは、界面活性剤分子の化学構造をその表面活性と関連させるための指数をいう。HLB指数は、Meyers(Meyers, Surfactant Science and Technology, VCH Publishers Inc., New York, pp. 231-245 [1992];参照によりここに組み入れる)に記載されるような、いろいろな実験式により計算することができる。本明細書で用いる界面活性剤のHLB指数は、McCutcheon's Volume 1: Emulsifiers and Detergents North American Edition, 1996(参照によりここに組み入れる)中でその界面活性剤に対して指定されたHLB指数である。市販の界面活性剤のHLB指数は0〜約70の範囲である。水への溶解度が高く可溶化特性を有する親水性界面活性剤はこの指数の高い方にあり、一方水への溶解度が低く油中水の良好な可溶化剤である界面活性剤はこの数値の低い方にある。【0021】「ポリエトキシル化アミン」とは、疎水性アルキル側鎖と1個以上の長鎖ポリオキシエチレン基を含むあらゆる界面活性剤をさす。【0022】「バッファー」または「緩衝剤」とは、溶液に添加したとき、溶液がpHの変化に抵抗するようになる物質をさす。【0023】「還元剤」および「電子供与体」とは、第2の物質に電子を供与することにより1個以上の第2の物質の原子の酸化状態を還元する物質をさす。【0024】「1価の塩」とは、金属(例:Na、K、Li)が溶解状態で1+の実効電荷をもつ(すなわち、電子よりもプロトンが1個多い)あらゆる塩をさす。【0025】「2価の塩」とは、金属(例:Mg、Ca、Sr)が溶解状態で2+の実効電荷をもつあらゆる塩をさす。【0026】「キレーター」または「キレート化剤」とは、金属イオンへの結合に利用できる孤立電子対をもつ原子が2個以上ある物質をさす。【0027】「溶液」とは、水性または非水性混合物をさす。【0028】「緩衝溶液」とは、緩衝試薬を含む溶液のことである。【0029】「反応バッファー」とは、酵素反応を行なうための緩衝溶液をさす。【0030】「保存バッファー」とは、酵素を保存するための緩衝溶液をさす。【0031】「増幅」は、鋳型特異性を伴う核酸複製の特殊な事例である。これは非特異的な鋳型複製(すなわち、鋳型依存性であるが特定の鋳型に依存しない複製)と対照をなす。鋳型特異性はここでは複製の忠実度(つまり、適正なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボ−またはデオキシリボ−)特異性と区別される。鋳型特異性はしばしば「標的」特異性という語で記載される。標的配列は、それが他の核酸から選別するために探し求められるという意味で「標的」である。増幅技術は主としてこの選別のために設計されたものである。【0032】鋳型特異性はほとんどの増幅法では酵素の選択によって達成される。増幅酵素は、それが使用される条件下で、不均質な核酸混合物中の特定の核酸配列のみを処理する酵素である。例えば、Qβレプリカーゼの場合には、MDV-1 RNAがこのレプリカーゼの特異的鋳型となる(Kacianら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:3038 [1972])。その他の核酸はこの増幅酵素によって複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素はそれ自身のプロモーターに対して厳格な特異性をもっている(Chamberlinら, Nature 228:227 [1970])。T4 DNAリガーゼの場合、この酵素は連結点でオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質と鋳型の間にミスマッチがあると、これら2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを連結させない(Wu and Wallace, Genomics 4:560 [1989])。最後に、TaqおよびPfuポリメラーゼは、高温で作用しうるという理由で、プライマーによって挟まれ規定された配列に高い特異性を示すことが見いだされた。高温は非標的配列とのハイブリダイゼーションではなく標的配列とのプライマーハイブリダイゼーションに好都合となる熱力学的条件をもたらす(Erlich (ed.), PCR Technology, Stockton Press [1989])。【0033】本明細書中で用いる「増幅可能な核酸」とは、あらゆる増幅法で増幅しうる核酸に関して用いられる。「増幅可能な核酸」は通常「サンプル核酸」からなると考えられる。【0034】本明細書中で用いる「サンプル鋳型」とは、「標的」(下記で定義)の存在について分析されるサンプルに由来する核酸のことである。これに対して、「バックグラウンド鋳型」は、サンプル中に存在するまたは存在しないサンプル鋳型以外の核酸に関して用いられる。バックグラウンド鋳型はほとんど不注意から生じることが多く、キャリーオーバー(持ち越し)の結果であるか、サンプルから除去されるべき核酸汚染物質の存在によるものである。例えば、試験サンプル中には検出すべき核酸以外の生物由来の核酸がバックグラウンドとして存在しうる。【0035】本明細書中で用いる「プライマー」とは、精製した制限消化物のように天然に存在しようと、合成的に製造されたものであろうと、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下に(すなわち、ヌクレオチドとDNAポリメラーゼのような誘導剤の存在下で適切な温度およびpHに)置いたとき、合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーは増幅効率を最大とするために一本鎖であることが好ましいが、二本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、最初にプライマーを処理してその二本鎖を分離してから伸長産物の生産に使用する。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは誘導剤の存在下で伸長産物の合成を開始させるに足る長さのものでなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマー源、その方法の用途を含めた多くの要因に左右されるだろう。【0036】本明細書中で用いる「プローブ」とは、精製した制限消化物のように天然に存在しようと、合成法、組換え法またはPCR増幅法で製造されたものであろうと、対象とする別のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を意味する。プローブは一本鎖でも二本鎖でもよい。プローブは特定の遺伝子配列の検出、同定および単離に有用である。好ましい実施形態においては、本発明で用いるプローブを任意の「レポーター分子」で標識して、いずれかの検出系、例えば酵素系(例:ELISA、酵素に基づく組織化学的アッセイ)、蛍光系、放射能系、発光系を含むがこれらに限らない検出系で検出できるようにすることが考えられる。本発明はどのような特定の検出系または標識にも制限されない。【0037】本明細書中で用いる「標的」とは、ポリメラーゼ連鎖反応に関して用いる場合は、ポリメラーゼ連鎖反応用のプライマーによって挟まれた核酸の領域をさす。こうして、「標的」は他の核酸配列から選別されるべきものである。「セグメント」は標的配列内の核酸の領域として定義される。【0038】本明細書中で用いる「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)とは、クローニングや精製を行なわずにゲノムDNAの混合物中の標的配列のセグメントの濃度を増加させる方法を開示しているK.B. Mullisの米国特許第4,683,195号、第4,683,202号および第4,965,188号(それぞれの開示内容を参照によりここに組み入れる)に記載の方法をさす。標的配列を増幅するこの方法は、目的の標的配列を含むDNA混合物に大過剰量の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを導入し、続いてDNAポリメラーゼの存在下で一連の熱サイクルを行なうことから成る。2つのプライマーは二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅反応を行なうには、混合物を変性し、次いでプライマーを標的分子内のその相補的配列にアニーリングする。アニーリング後、ポリメラーゼによってプライマーを伸長させ、新しい対の相補鎖を形成させる。変性、プライマーアニーリングおよびポリメラーゼ伸長の各ステップを多数回繰り返す(つまり、変性とアニーリングと伸長が1「サイクル」を構成し、多数の「サイクル」を行なう)と、目的とする標的配列の増幅セグメントが高濃度で得られる。標的配列の増幅セグメントの長さはプライマーの互いに対する相対位置によって決まり、したがって、この長さは制御可能なパラメーターである。このプロセスの繰り返すという特性ゆえに、この方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以後「PCR」)と言われる。目的とする標的配列の増幅セグメントは混合物中で(濃度に関して)優勢な配列となるので、それらは「PCR増幅された」と言われる。【0039】PCRを用いると、いくつかの異なる方法論(例えば、標識プローブとのハイブリダイゼーション、ビオチン化プライマーの組み込みとその後のアビジン−酵素コンジュゲートによる検出、32P-標識デオキシヌクレオチド三リン酸(例:dCTP、dATP)の増幅セグメントへの組み込み)により検出できるレベルにまで、ゲノムDNA中の1コピーの特定の標的配列を増幅することが可能である。ゲノムDNAに加えて、どのようなオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列も適切なセットのプライマー分子を用いて増幅することができる。特に、PCR法により作られた増幅セグメントはそれ自体が後続のPCR増幅反応にとって有効な鋳型となる。【0040】本明細書中で用いる「PCR産物」、「PCR断片」および「増幅産物」とは、変性、アニーリング、伸長のPCRステップを2サイクル以上行なった後に得られる化合物の混合物をさす。これらの用語は1以上の標的配列の1以上のセグメントの増幅が存在した場合を包含する。【0041】本明細書中で用いる「増幅試薬」とは、プライマー、核酸鋳型および増幅酵素を除いて、増幅に必要とされる試薬(デオキシリボヌクレオシド三リン酸、バッファーなど)をさす。典型的には、増幅試薬を他の反応成分と共に反応容器(試験管、マイクロウェルなど)に入れ、その中に収容する。【0042】発明の一般的説明本発明は、タンパク質の安定化、特にカチオン界面活性剤による水溶液中のポリメラーゼの安定化のための方法および組成物を提供する。保存バッファーまたは反応バッファー中に溶解状態で存在するポリメラーゼの活性は、非イオン性界面活性剤の添加により安定化することができる。本発明は特定の作用機構に制限されるものではない。実際、タンパク質の安定化に係わる作用機構を理解することは本発明の完成および使用にとって必要ではない。しかし、界面活性剤によるタンパク質安定化の作用機構に関する1つの理論は、タンパク質に界面活性剤が結合することで、タンパク質のほぐれ(unfolding)や変性を防止する架橋作用が働くというものである。非イオン性界面活性剤の場合には、この結合がタンパク質表面の疎水性部位で起こる。【0043】タンパク質への界面活性剤結合のメカニズムおよびいくつかのイオン性界面活性剤による変性はすでに検討されている(例えば、Jones, in Surface Activity of Proteins, S. Magdassi (ed.), Marcel Dekker, Inc., New York, pp. 237-284 [1996]参照)。イオン性界面活性剤とタンパク質との初期の相互作用は、タンパク質表面の高エネルギー部位へのイオン性ヘッド基の結合により仲介される。タンパク質表面の荷電部位とヘッド基との相互作用は静電的である。アニオン界面活性剤はカチオン部位(例:リシル、ヒスチジル、アルギニル残基)と結合し、カチオン界面活性剤はアニオン部位(例:グルタミル、アスパルチル残基)と結合する。その後、界面活性剤の疎水性テイルがタンパク質表面の疎水性領域と相互作用する。【0044】さらに、多くのイオン性界面活性剤はタンパク質と協同的に結合することが知られている。協同的結合(cooperative binding)はタンパク質の三次構造のほぐれにより特徴づけられ、これはより多くの界面活性剤分子の結合を可能にする。この初期のほぐれはタンパク質の疎水性内部への界面活性剤の疎水性テイルの挿入に起因すると考えられる。協同的結合は一般にタンパク質を完全に変性させ、活性の低下をもたらす。【0045】タンパク質に対する界面活性剤の結合親和性は、その界面活性剤のヘッド基の性質、疎水性テイルの鎖長および臨界ミセル濃度(CMC)により影響される。アニオン界面活性剤については、一定の疎水性テイルの鎖長をもつ界面活性剤の場合、極性ヘッド基がSO4-->SO3-->CO2->OHの順で変化するにつれて結合親和性が低下する。鎖長も一要因となる。例えば、アルキル硫酸塩は、アルキル鎖長がC12(つまり、12個の炭素原子)であるとき広範なほぐれを伴う結合を示し、アルキル鎖長がC12より短いときは広範なほぐれのない結合が生じる。これに対して、アルキルスルフィン酸塩の場合には、C12鎖長は協同的結合にとって不十分であることが示された。【0046】協同的結合は次第に増加する界面活性剤濃度で起こる。協同的結合が起こるか否かはその界面活性剤のCMCに依存する。界面活性剤のCMCとは、溶解状態で存在する遊離の界面活性剤分子が集合してミセルを形成する濃度のことである。界面活性剤とタンパク質との協同的結合の場合、界面活性剤のCMCよりかなり低い界面活性剤濃度で初期の静電結合が起こる。多くの強力な変性界面活性剤のCMCは比較的高い。CMCの低い界面活性剤の場合は、界面活性剤が比較的低濃度でミセルを優先的に形成するだろう。したがって、タンパク質の変性を引き起こすのに十分な界面活性剤濃度に溶液中で到達し得ない。非イオン性界面活性剤はそのCMCおよびそれが達成しうる遊離濃度の点で制限を受け、その結果、かなり過剰に添加された界面活性剤の場合にも協同的結合と変性が起こらない。【0047】界面活性剤とタンパク質との結合は、結合等温線を作製することにより調べられる。等温線は、遊離界面活性剤濃度の対数の関数としてプロットした、タンパク質分子あたりの界面活性剤分子の平均数を適用することにより作成されたS字状曲線である。結合等温線は多数の領域を有する。第1の領域は、天然タンパク質の表面上の荷電部位または疎水性部位への界面活性剤の特異的結合に対応する比較的急な増加スロープからなる。これらの部位が飽和されると、プラトー様の領域が現れる。タンパク質と協同的に結合する界面活性剤では、第3の険しいスロープの領域が出現する。この領域は一般に、遊離の界面活性剤が臨界ミセル濃度に近づくときに現れる。【0048】結合誘発ほぐれ(binding-induced unfolding)の数学的モデルからは、少量の高親和性イオンの結合が他の作用物質によるほぐれからタンパク質を保護することが推測される(例えば、Steinhardt and Reynolds (eds.), Multiple Equilibrium and Proteins, Academic Press, New York, pp. 234-350 [1969] 参照)。ほぐれからの保護は、界面活性剤の荷電ヘッド基とタンパク質表面の荷電残基との静電相互作用に基づいている(Markusら, J. Biol. Chem., 239: 3687 [1964])。次いで、タンパク質の疎水性部位への疎水性テイルのその後の結合が非共有結合の架橋作用を提供する。【0049】本発明は、酵素活性を安定化する界面活性剤を提供する。いくつかの実施形態において、エトキシル化アルキルアミン系カチオン界面活性剤であるTomah E-18-5およびTomah E-18-15 (Tomah Prod Inc, Milton, WI)は、Tween 20、TRITON X-100、NP-40などの常用される非イオン性界面活性剤と比べて、溶解状態で存在するポリメラーゼの同等のまたは優れた安定化をもたらした。一つのアッセイにおいて、Thermus aquaticus、Thermus thermophilusおよびThermus flavusから単離された熱安定性DNAポリメラーゼ(それぞれTaqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ)の界面活性剤安定化がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を触媒する能力により測定された。得られた反応産物の量を、反応に使用した酵素の安定性の尺度として用いた。低レベルのTaqまたはTthポリメラーゼをカチオン界面活性剤と共に使用したときに優れた結果が観察された。標的DNA配列の増幅は、非イオン性界面活性剤を含む対照反応混合物中で標的を増幅するのに要した量より50%も少ないポリメラーゼ活性を含む反応混合物において、容易にかつ再現可能に見られた。別のアッセイでは、カチオン界面活性剤を含有するバッファー中のTthおよびTaqポリメラーゼの半減期は、非イオン性界面活性剤を含むバッファーで観測されたそれらの半減期と同等であるかまたはそれより優れていると測定された。【0050】本発明の他の実施形態においては、T4 DNAポリメラーゼ、MMLV(モロニーマウス白血病ウイルス)逆転写酵素、AMV(トリ骨髄芽球症ウイルス)逆転写酵素を含むがこれらに限らない他の酵素を安定化するためにもカチオン界面活性剤が使用される。これらの酵素の安定化を実証する実験では、DNAまたはRNA鋳型を含む重合反応混合物が標準的な安定剤BSA(ウシ血清アルブミン)またはカチオン界面活性剤のいずれかを用いて調製された。T4ポリメラーゼとMMLVおよびAMV逆転写酵素の活性は、核酸への放射性dNTPの取込みで測定したとき、BSAを含む反応バッファーと比較してカチオン界面活性剤を含む反応バッファーにおいて増大していた。【0051】したがって、本発明のカチオン界面活性剤は、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、AMV逆転写酵素、MMLV逆転写酵素を含むがこれらに限らない熱安定性と熱不安定性の両ポリメラーゼを安定化するのに有用である。これらのカチオン界面活性剤は反応バッファーまたは保存バッファーのいずれにおいても安定剤として使用できる。【0052】発明の詳しい説明A. 酵素活性を安定化する界面活性剤の同定いくつかのアッセイ(実施例1〜12参照)を用いて、約30種類のアニオン、カチオンおよび両性界面活性剤の安定化または不安定化作用を調べた(表1にまとめてある)。これらの実験から、カチオン界面活性剤は酵素活性を安定化するために利用できることが示された。カチオン界面活性剤は、殺真菌剤、殺虫剤、化粧品の防腐剤としての使用を含めて、多様な用途が見いだされている。カチオン界面活性剤は2つのグループに大別される。すなわち、1)窒素含有界面活性剤と、2)ホスホニウム、スルホニウム、スルホキソニウムおよびアルソニウム界面活性剤を含む非窒素系の「オニウム」界面活性剤である。窒素含有界面活性剤は製造が簡単で安価であり、数の上では非窒素系の界面活性剤を圧倒している。窒素含有界面活性剤は窒素含有基の性質において相違する2つのカテゴリーに分割される。第1のカテゴリーは、疎水性を賦与する長鎖アルキル基と1個以上のアミン水素を含む単純なアンモニウム塩のようなアルキル窒素化合物を含む。アルキル窒素化合物は第二級、第三級または第四級アンモニウム化合物(すべてのアミン水素が有機基で置換されている)であり得る。第二級、第三級および第四級アミンにおいて、置換された基は長鎖もしくは短鎖アルキル、アルキルアリール、アリールまたはエトキシルであってよい。窒素含有界面活性剤の第2のカテゴリーは、ピリジニウム、モルホリニウム、イミダゾリニウム誘導体などの複素環式物質を含む。【0053】【表1】【0054】従って、いくつかの実施形態においては、本発明は酵素活性を安定化させるカチオン界面活性剤を提供する。好ましい実施形態においては、カチオン界面活性剤は、好ましくは約10〜17、最も好ましくは約11〜16の親水性-親油性バランス(Hydrophile-Lipophile Balance: HLB)指数を有する。HLB指数とは、界面活性剤分子の化学構造をその界面活性と相関させる指数である。HLB指数は、様々な実験式によって計算され得る(例えばMeyers, Surfactant Science and Technology, VCH Publishers Inc., New York, pp.231-245[1992]を参照されたい。参照により本明細書に組み入れる)。HLB指数は、市販の界面活性剤については0から約70以上の範囲にわたっている。親水性界面活性剤は、尺度の高い末端にあるが、その理由はそれらの水に対する高い溶解度と可溶化特性によるものであり、他方、水に対する溶解度が低く、水の油中への良好な可溶化剤である界面活性剤は尺度のより低い末端にある。【0055】本発明のいくつかの実施形態においては、カチオン界面活性剤は好ましくはエトキシル化アミンである。エトキシル化アミンは疎水性アルキル側鎖および1以上の長鎖ポリオキシエチレン官能基(grouping)を含有する。エトキシル化アミンの水への溶解度は、大部分はアルコキシル化の度合いに依存しており、常に塩形成によるというものではない。単純なポリオキシエチル化アミン(POEアミン)は、エトキシル化によって長鎖アルキルアミンから調製される。大部分のエトキシル化アミンは水溶性であり、比較的弱い塩基である。エトキシル化アミンは主に乳化剤およびヘアコンディショニング剤として使用される。【0056】カチオン界面活性剤は好ましくは、エトキシル化アルキルアミンであって、水溶液中で以下の一般構造を有する群から選択される:式中、zは約15〜20の整数であり、xおよびyはそれぞれ少なくとも1、かつx+yは約5〜15の平均値を有し、HLB指数を約10〜17、好ましくは約11〜16としている。窒素原子を、硫黄原子で置換してエトキシル化アルキル硫化物を形成してもよく、リン原子で置換してエトキシル化アルキルホスフィンを形成してもよく、またはヒ素で置換してエトキシル化アルキルアルセニン(arsenine)を形成していてもよい。【0057】最も好ましくは、カチオン界面活性剤は水溶液中において下記の構造を有する群から選択される:(式中、x+yは平均値5を有する)、および(式中、x+yは平均値15を有する)である。【0058】B. 保存バッファー中および反応バッファー中のカチオン界面活性剤の使用上記のカチオン界面活性剤は、保存バッファーと反応バッファーの両方において酵素を安定化するために使用できる。これらの界面活性剤は多様な酵素(Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、MMLV逆転写酵素、AMV逆転写酵素およびT4 DNAポリメラーゼを含むがこれらに限定されない)の安定化に有用である。いくつかの実施形態においては、当技術分野で知られている通り、酵素は組換えで生産してもよく、また天然の生物から精製してもよい。他の実施形態においては、酵素は界面活性剤の不在下でカラムクロマトグラフィーによって精製してもよく、または、本発明のカチオン界面活性剤以外の界面活性剤の存在下で精製した場合には、これらの界面活性剤は、クロマトグラフィーによって除去し得る(例えば、M. P. Deutscher(編), Methods in Enzymology-Guide to Protein Purification, Academic Press Limited, London[1990]を参照されたい)。【0059】本発明のいくつかの実施形態においては、熱安定性酵素および他の酵素のための保存バッファーは、緩衝剤を約10〜70mM(好ましくは約50mMのTris-HCl pH 8.0)の濃度で、塩を約50〜150mM(好ましくは約100mMのKClまたはNaCl)の濃度で、キレート化剤を塩に対するモル比約1:500〜1:1,500(好ましくは約0.1mM EDTA)で、還元剤を約1〜10mM(好ましくは約1mMのDTT(ジチオトレイトール))の濃度で、グリセロールを約50体積%の濃度で、および本発明のカチオン界面活性剤を約0.001%〜1.0%(好ましくは約0.1%)の濃度で含むものである。【0060】本発明の別の実施形態においては、熱安定性ポリメラーゼおよび他の酵素のための反応バッファーは、緩衝剤を約5〜15mM(好ましくは約10mMのTris-HCl、25℃でpHは約8.0〜9.0)の濃度で、1価の塩を約20〜100mM(好ましくは約50mMのKClまたはNaCl)の濃度で、2価カチオンを約1.0〜10.0mM(好ましくはMgCl2)の濃度で、dNTPをそれぞれ約0.05〜1.0mM(好ましくはそれぞれ約0.2mM)の濃度で、および本発明のカチオン界面活性剤を約0.001%〜1.0体積%(好ましくは約0.1%)の濃度で含むものである。【0061】本発明のさらに別の実施形態においては、T4 DNAポリメラーゼなどの熱安定性DNAポリメラーゼのための反応バッファーは、緩衝剤を約5〜15mM(好ましくは約10mMのTris-HCl、pH8.0)の濃度で、1価の塩を約30〜70mM(好ましくは約50mMのNaCl)の濃度で、2価カチオンを約5〜15mM(好ましくは約10mMのMgCl2)の濃度で、還元剤を約0.5〜5mM(好ましくは約1mMのDTT)の濃度で、およびカチオン界面活性剤を約0.001%〜1.0体積%(好ましくは約0.01%)の濃度で含むものである。【0062】本発明のさらに別の実施形態においては、MMLV逆転写酵素などの逆転写酵素のための反応バッファーは、緩衝剤を約30〜70mM(好ましくは約50mMのTris-HCl、pHは約8.3)の濃度で、2価カチオンを約5〜15mM(好ましくは約7mMのMgCl2)の濃度で、1価の塩を約20〜60mM(好ましくは約40mMのKCl)の濃度で、還元剤を約1〜20mM(好ましくは約10mMのDTT)の濃度で、およびカチオン界面活性剤を約0.01%〜1.0体積%(好ましくは約0.01体積%)の濃度で含むものである。【0063】上記の反応バッファーおよび保存バッファーの成分には、多くの等価物が存在し、容易に交換できる。従って、これらの好ましいバッファーは、中で酵素およびポリメラーゼが保存されるバッファー、および、中で重合および他の酵素反応が行われるバッファー調製のためのガイドとしてのみの役割を担うものであり、本発明を限定するものとは意図されていない。実際に、本発明はタンパク質一般の安定化において好適であるので、本発明をポリメラーゼの安定化に限定することは意図されていない。【0064】実験以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態および態様を示し、さらに説明するために提供されており、本発明の範囲を限定するものと解されてはならない。【0065】以下の実験の開示においては、以下の略語が適用される。℃(度、摂氏)、bp(塩基対)、kb(キロ塩基対)、kD(キロダルトン)、gm(グラム)、mg(ミリグラム)、μg(マイクログラム)、ng(ナノグラム)、μl(マイクロリットル)、μCi(マイクロキュリー)、M(モル濃度)、mM(ミリモル濃度)、μM(マイクロモル濃度)、nM(ナノモル濃度)、U(ユニット)、MW(分子量)、sec(秒)、min(分)、hr(時間)、ab(抗体)、HCl(塩酸)、MgCl2(塩化マグネシウム)、KCl(塩化カリウム)、NaCl(塩化ナトリウム)、PBS(リン酸緩衝食塩水[150mM NaCl、10mMリン酸ナトリウムバッファー、pH 7.2])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール-ビス(B-アミノ-エチルエーテル)N,N,N’,N’,-四酢酸)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸)、w/v(重量対体積)、v/v(体積対体積)、Sigma(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、MMLV(モロニーマウス白血病ウイルス)、AMV(トリ骨髄芽球腫ウイルス)、RT(逆転写酵素)、Taq(Thermus aquaticus)、Tfl(Thermus flavus)、Tth(Thermus thermophilus)。【0066】実施例1界面活性剤の存在下または不在下で、TaqポリメラーゼがDNAセグメントを増幅する能力本実施例においては、界面活性剤によるポリメラーゼの安定化に関するPCRに基づくアッセイの開発を記述する。界面活性剤の不在下ではポリメラーゼが検出可能な増幅産物を産生できないが、Tween 20などの安定化界面活性剤の存在下では検出可能な増幅産物を産生できる条件を規定した。【0067】以下の反応混合物を調製した。【0068】2mM dNTP混合物 100μl2ng/μl pGEM luc 10μlプライマー A(1μg/μl) 10μlプライマー B(1μg/μl) 10μl10× Taq バッファー 100μl25mM MgCl2 100μlナノピュア(nanopure)水 670μl総量 1000μlpGEM luc(Part # E1541)および25mM MgCl2(Part # M1902)をPromega Corp, Madison WIから入手した。10× Taqバッファー調製物は、500mM KCl、100mM Tris-HCl(25℃でpH 9.0)であった。10×Taqバッファーは、KClとTrizmaをナノピュア水に溶解させ、pHを濃塩酸で調整して作製した。ナノピュア水は、NANOPURE water システムで処理された脱イオン水をオートクレーブして作製した。2mM dNTP混合物は、100mMのdATP、dCTP、dGTP、およびdTTPのストック溶液(それぞれPromega U120, U122, U121,およびU123)をナノピュア水と混合し、各ヌクレオチドを2mMの濃度で含む溶液を作製した。使用したプライマーのDNA配列は、TAATACGACTCACTATAGGGCGAAT(配列番号1)およびGAATCGTCGTATGCATGTAAAACTC(配列番号2)である。【0069】100μlの反応混合物を0.2mlのチューブに入れ、50μlを別の5つのチューブに入れた。別の反応混合物を、10μlの10%(v/v) Tween 20(Sigma, P-1379)を670μlの水のうちの10μlと交換した以外は上記の配合を使用して調製した。この反応混合物は、最終界面活性剤濃度が0.1% v/vのTween 20であった。続いてこの第2の反応混合物を、1つのチューブが100μlの反応混合物を含み、別の5つのチューブが混合物50μlを含むように分配した。【0070】いずれの工程においてもいかなる界面活性剤も添加することなく精製されたTaqポリメラーゼ(10U/μl)を1μlずつ、界面活性剤を含む反応混合物および界面活性剤を含まない反応混合物に添加し、チューブの内容物を混合した。以下の通り、界面活性剤を含む反応物および界面活性剤を含まない反応物の連続希釈を行った。50μlの第一の混合物を取り出し、反応混合物の残りの5つのチューブの1つの中にある、50μlの同じ反応混合物に添加した。このチューブを混合し、その結果得られる混合物の50μlを、50μlの反応混合物を有する次のチューブに移した。この混合と移動を、反応混合物を含む5つのチューブ全てが、酵素を含む反応混合物と混合されるまで続けた。このチューブをサーモサイクラー中に置き、以下のプログラムを行った。【0071】前サイクル条件:温度を調整し(94℃、1分間)、続いてサイクル条件へ進めた。サイクル条件:各サイクルごとに、温度を調節し(94℃、15秒間)、温度を下げる(65℃、2分間)。温度サイクルを25サイクル繰り返す。後サイクル条件へ進める。後サイクル条件:温度を調節し(68℃、4分間)、続いて温度を下げる(4℃まで)。【0072】上記のプログラム条件でチューブをサイクルに付した後、5μlの停止溶液を各チューブへ添加した。停止溶液は、0.4% SDS, 160mM EDTA, 0.16% Orange Gおよび24%グリセロールを含むものであった。【0073】アガロースゲル電気泳動によって反応産物を分析した。アガロース(3g)を300mlの1×TBEバッファーを含むフラスコへ添加した。溶液をマイクロ波で加熱して沸騰させ、フラスコの内容物を混合した。続いて10mg/mlのエチジウムブロミド溶液30μlを添加し、溶解しているアガロースを、BRL Model H4 水平ゲル電気泳動システム用の、コームを有するゲルカセット中に注ぎ、硬化させた。硬化後、コームを取り除き、ゲルカセットを、予め1×TBEバッファーで満たしておいた電気泳動システムのベッドの中に置いた。各増幅反応物の、25μlのサンプルをpGEMマーカーのサンプルとともに、ゲル中の個々のウェルにロードした。電気泳動を100Vで2時間、Hoffer PS500X DC電源を用いて行った後、Ambis systemを使用してゲルをU.V.光の下で可視化した。【0074】1.5kb DNAの強いバンドが、最も多量のTaqポリメラーゼと0.1% Tween 20を有していた増幅反応物に由来するサンプルを含むレーンにおいて見られた。より弱い1.5kbバンドが、2番目に高レベルのTaqポリメラーゼと0.1% Tween 20を有していた増幅反応物を含むレーンにおいて見られ、添加された界面活性剤を有しないで最も高レベルのTaqポリメラーゼを有していた増幅反応物を含むレーンにおいては1.5kbバンドは見られなかった。【0075】このように、これらの条件は、増幅反応の間にTaqポリメラーゼを安定化させる界面活性剤の能力を試験するために有用である。該酵素を安定化する物質は、界面活性剤なしでは反応中に生成されない、上記の反応で生成される1.5kb DNAバンドの強度を増加させる。非常に優れた安定化物質は、0.1% Tweenを用いて観察された濃度よりも低い酵素濃度で、1.5kb DNAバンドの産生をもたらすものとして同定される。【0076】実施例2界面活性剤のスクリーニングこの実施例においては、界面活性剤を、酵素を安定化するそれらの能力に関してスクリーニングした。以下の化合物を、終濃度10%で(それぞれ、物質が固体である場合はw/v、液体である場合はv/vで)ナノピュア水中に溶解させた。テトラデシル-トリメチル-アンモニウムブロミド(Sigma T4762)、ジオクチルスルホスクシネート(Sigma D-4422)、コール酸(Sigma C-1254, lot 56H0339)、タウロコール酸(Sigma T-4009, lot 15H5001)、Chaps(Sigma C-3023, lot 86H5032)、Chapso(Sigma C-3649, lot 35H5065)、セチルピリジニウムクロリド(Sigma C-9002, lot 77H1047)、Tween 20(Sigma P-1379)およびTRITON X-100。【0077】これらの各界面活性剤溶液について10×バッファーを作製した。各10×バッファーは、500mM KCl、100mM Tris-HCl pH 9.0(25℃)、1%界面活性剤を含んでいた(調製の間に、上記の界面活性剤溶液をバッファー中に1:10で希釈して作製した)。実施例1に記載したように、これらの実験において使用したTaqポリメラーゼは、いずれの界面活性剤にも曝すことなく精製した。これらの各バッファー溶液は、以下の通りTaq-界面活性剤溶液を調製するために使用した。【0078】ナノピュア水 255μl10×界面活性剤バッファー 32μl25mM MgCl2 32μlTaqポリメラーゼ(10U/μl) 1μl総量 320μl【0079】対照溶液を、界面活性剤を有しない32μlの10×バッファーを用いたこと以外は、上記の通りに作製した。溶液を95℃でインキュベートし、サンプル(10μl)を0、5、10、30、60、90および120分に取り出して、新品のチューブ内に入れ、氷上で保存した。続いて、Taqポリメラーゼ活性に関してサンプルをアッセイした。【0080】Taqポリメラーゼ活性を、サンプルの酵素が取り込むことができたトリチウム化デオキシヌクレオチド塩基の量を測定することにより決定した。アッセイを下記の通りに行った。dATP、dCTP、dGTP、およびdTTPの溶液(それぞれPromega U120, U122, U121,およびU123)を、ナノピュア水を用いて、2mMの終濃度まで希釈した(オリジナルは100mM)。トリチウム化ヌクレオチド3H-TTPを、Amershamより入手した(TRK424, 250μCi/250μl)。取込みのためのテンプレートは、10mM Tris-HCl pH 7.3, 5mM MgCl2中に2.5mg/mlの終濃度で溶解させたウシ胸腺DNA(Sigma, D-1501)であった。使用に先立ってDNAを、RQ1 DNAse(Promega M610)の1:10希釈液(希釈は10mM Tris-HCl, 5mM MgCl2で行った)1μlで処理し、10分間、37℃でインキュベートし、続いて68℃で30分間インキュベートした。これは取込み用DNAを「活性化」するために実行した。10×Taqアッセイバッファーは、500mM Tris-HCl(25℃でpH 9.0)、500mM NaCl、100mM MgCl2を含んでいた。【0081】以下の反応混合物を調製した。【0082】10× Taq アッセイバッファー 500μlナノピュア水 1700μldATP(2mM) 500μldCTP(2mM) 500μldGTP(2mM) 500μldTTP(2mM) 500μl活性化ウシ胸腺DNA 600μl3H-TTP(1μCi/μl) 100μl【0083】時点サンプル(10μl)を40μlの反応混合物に添加し、続いて74℃で10分間インキュベートした。インキュベーションの後、溶液を500μlの氷冷10% TCAで希釈した。TCA溶液をGF/Aフィルターを通して濾過した。チューブを1mlの5% TCAで3回洗浄し、続いて洗浄液を同じフィルター上で濾過した。続いてフィルターを3回、5% TCAで濯ぎ、続いてアセトンで濯いだ。濾紙を加熱ランプで10分間乾燥させ、続いて放射能強度をカウントした。いずれの時点においても、存在する活性%は、その時点のサンプルにおける正味のカウント数を、その酵素溶液の0分サンプルにおける正味のカウント数で割り、100をかけることによって決定した。溶液の活性%を時間に対してプロットした。続いて点を滑らかな曲線でつなぎ、選択された条件における、見積もられた酵素の半減期は、線が50%活性と交差している点に基づいて見積もったものである。【0084】続いて、異なる時間において残存している活性%を測定してプロットし、界面活性剤の存在下における酵素の半減期を見積もった。この結果は、ChapsおよびChapsoを含むイオン性界面活性剤溶液の、見積もられた半減期は約5分であることを示す。Tween 20およびTRITON X-100を含む非イオン性界面活性剤溶液の半減期は約40分であった。界面活性剤を有しない対照溶液の半減期は5分未満であった。他のイオン性界面活性剤溶液はすべて、5分未満の半減期であった。【0085】このように、このアッセイは、ChapsおよびChapsoに関して観察されたような、Taqポリメラーゼの安定化をいくらかの度合いで提供するイオン性界面活性剤を同定するために有用である。さらに、このアッセイを使用してTaqポリメラーゼを高度に安定化させるイオン性界面活性剤を同定できる。そのような界面活性剤は、これらの条件下でTaqポリメラーゼの半減期を、Tween 20に関してみられるものと同程度かまたはより大きく増加させる。【0086】実施例3追加の界面活性剤のスクリーニングこの実施例では、タンパク質を安定化する能力に関して、さらに界面活性剤をスクリーニングした。下記の物質の溶液(10% w/vまたはv/v)を、ナノピュア水中に作製した。N-ドデシル-n,n’-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート(Sigma D-4516, lot 95H5045)、Mega 10(Sigma D-6277, lot 37H5041)、N-オクタデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパン-スルホネート(Sigma O-8004, lot 44H5006)、SB 3-10、N-テトラデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート(Sigma T-7763, lot 96H5001)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、TRITON X-200(Sigma X200 lot 75H0989)、TRITON W-30(Sigma Chem Co., W-30, lot 18F0766)、TRITON X-301(Sigma X301, lot 13H7706)、TRITON 770(Sigma 770, lot 18F0768)。【0087】実施例1に記載のマスター反応混合物の99μlのアリコートを別々の0.2mlチューブ中に置き、続いて1μlの10%界面活性剤溶液、および界面活性剤の不在下で精製した2μlのTaqポリメラーゼ(10U/μl)を各チューブに添加した。対照反応物は、1μlの10% Tween 20(陽性対照)を含むチューブと、界面活性剤を含まないチューブ(陰性対照)からなる。上記の実施例1に記載の通りに、チューブを増幅条件およびゲル分析手順に付した。【0088】Tween 20を添加した反応物においては、強力な1.5kb DNAバンドが生成され、界面活性剤を添加しなかった反応物においても、より弱いが視覚可能なバンドが生成された。N-デシル-N,N-ジメチル-3-アンモニウム-1-プロパンスルホネートを添加した反応物を除き、他の反応物は全て、視覚可能な1.5kb DNA断片を生成しなかった。この反応物は、界面活性剤のない反応物(陰性対照)とTween 20を添加した反応物との中間の強度を有するバンドを生成した。【0089】反応物の第二のセットを調製した。95μlのマスター反応混合物を、5μlの界面活性剤溶液および2μlのTaqポリメラーゼ(10U/μl)を含むチューブに入れた。Tween 20の対照および界面活性剤を含まない対照も調製した。上記の通り、反応は増幅条件に従って行い、ゲル電気泳動により分析を行った。【0090】Tween 20を添加した反応物においては、強力な1.5kb DNAバンドが観察され、界面活性剤を添加しなかった反応物においては、バンドは観察されなかった。他の反応物は全て、N-デシル-N,N-ジメチル-3-アンモニウム-1-プロパンスルホネートを添加した反応物でさえも、視覚可能な1.5kb DNA断片を生成しなかった。この結果から、これらの界面活性剤には、Taqポリメラーゼに関する安定化剤としては、Tween 20に匹敵するものはないことが示された。【0091】実施例 4追加の界面活性剤のスクリーニングこの実施例では、追加の界面活性剤を、タンパク質を安定化する能力についてスクリーニングした。以下に示す物質の溶液(10% w/vまたはv/v)をナノピュア水中に作製した。Miracare ZMHT、Miracare ZMCA、Mirataine BB、Mirataine ACS、Mirataine CBRおよびMirataine CB (Rhone-Poulenc, North American Chemicals,Cranbury, NJ)である。該界面活性剤溶液を0.1%レベルで、実施例3に記載のようにTween 20と、また 界面活性剤を含まない対照と比較することにより試験した。ただし酵素濃度は、100μlの反応混合物あたりTaq 10Uとなるまで減じた。【0092】強い1.5kbのDNAバンドがTween 20を加えた反応物において観察され、添加の界面活性剤を含まない反応物においてはバンドは全く観察されなかった。その他すべての反応物で、目に見える1.5 kbのDNA断片は生成しなかった。この結果は、これらの界面活性剤はいずれも、Taqポリメラーゼのための安定剤としてTween 20には匹敵しないことを示している。【0093】実施例 5Tomahからの界面活性剤の初期評価この実施例では、エトキシル化アミンのタンパク質を安定化する能力について試験した。以下に示す物質の溶液(10% w/vまたはv/v)をナノピュア水中に作製した。Tomah E-14-2、Tomah E-14-5、Tomah E-18-15およびTomah E-18-5 (Tomah Prod. Inc., Milton, WI)である。該界面活性剤溶液を0.1%レベルで試験し、上記の実施例3のように、Tween 20と、また 界面活性剤を含まない対照反応物と比較することにより評価した。ただし酵素濃度は、100μlの反応混合物あたりTaq 10Uとなるまで減じた。【0094】強い1.5kbのDNAバンドがTween 20、Tomah E-18-15 およびTomah E-18-5を加えた反応物において生じた。Tomah E-14-2 および Tomah E-14-5を加えた反応物では、認識しうる1.5 kbのDNA断片は生成されなかった。この結果は、Tomah E-18-15およびTomah E-18-5はTaqポリメラーゼを安定化するが、Tomah E-14-2およびTomah E-14-5はTaqポリメラーゼを安定化しないことを示している。さらに、Tomah E-18-5およびTomah E-18-15は、Tween 20とほぼ同等に効果的に該酵素を安定化すると考えられる。従って、更なる試験はこれらの界面活性剤を用いて実施した。【0095】Tomah界面活性剤はすべてエトキシル化アミンとして化学的に説明される、カチオン界面活性剤である。しかしそれらは、McCutcheon's Volume 1: Emulsifiers and Detergents North American Edition, 1996に報告されるように、HLB指数において異なる。これらの物質、およびTaqポリメラーゼを安定化するいくつかの非イオン性界面活性剤のHLB値を表2に示す。この結果は、HLB指数が11〜16の範囲にあるカチオン界面活性剤は、Taqポリメラーゼの安定化に有効であることを示唆している。【0096】【表2】【0097】実施例 6エトキシル化アミンの更なる試験Tomah E-18 界面活性剤を用いたときに観察された最初の結果は、この物質が非イオン性界面活性剤と少なくとも同程度に、Taqポリメラーゼを安定化しうることを示唆した。これらの物質がどのように機能するかについてのより明確な知見を得るために、より低レベルの酵素および界面活性剤を用いて実験を行った。【0098】反応混合物は、0.1%、0.01%および0.001%のTween 20、Tomah E-18-15およびTomah E-18-5を含有するよう上記の実施例3に記載したように合わせた。界面活性剤を含まないTaqポリメラーゼをこれらの混合物に添加して、反応物あたり10、5、2.5および1.25UのTaqポリメラーゼを含有する反応物を調製した。該反応物を熱サイクラー中でインキュベートし、反応生成物を上記実施例1に記載のように分析した。【0099】ほぼすべてのレーンが、予期された1.5kbのDNA断片を含んでいた。ほとんどの場合、ある界面活性剤を含む任意のレーンが、別の界面活性剤を含むレーンより強いバンドを有するか否かを判断するのは困難であった。しかし、低レベルで酵素および/または界面活性剤が存在する場合、イオン性界面活性剤を含有する反応物は、非イオン性界面活性剤を含有する反応物よりも、生成物を多量に生成するように見えた。【0100】実施例 7イオン性界面活性剤の存在下における高温のインキュベーション条件下での改善されたTaqポリメラーゼの半減期この実施例では、エトキシル化アミンの、高温下で熱安定性タンパク質を安定化する能力を試験した。界面活性剤を含まないTaqポリメラーゼ溶液(2.5U/100μ1の溶液)にて0.005%のTomah E-18-15、Tomah E-18-5、Tween 20、NP-40およびTRITON X-100を含有する溶液を実施例2のように作製した。これらの溶液を95℃でインキュベートし、サンプルを0、10、30、60および120分の時点で採取し、実施例2のように分析した。これらの界面活性剤存在下における酵素の半減期をグラフで見積もった。Tomah E-18-5、TRITON X-100およびNP-40を含有する溶液はすべて、Taqポリメラーゼの半減期が約8分であった。Tween 20を含有する溶液では半減期が50分であり、Tomah E-18-15を含有する溶液では半減期が70分と見積もられた。これらの結果は、この2種類のカチオン界面活性剤が高温条件下で、通常該酵素の安定化に使用される非イオン性界面活性剤と同程度またはそれ以上にTaqポリメラーゼを安定化することを示している。【0101】実施例 8Tthポリメラーゼの性能を向上させるためのイオン性界面活性剤の使用Tomah E-18-5およびTomah E-18-15がTaqポリメラーゼの性能を向上させることが判明した後、この効果がその他の酵素でも示されうるのかを確認するために、更なる実験を行った。この実験では、カチオン界面活性剤および非イオン性界面活性剤存在下における熱安定性Tthポリメラーゼの安定化を試験した。【0102】以下の溶液を合わせた10mlのサンプルを3つ調製した:2M Tris-HCl pH 7.5 50μl3M KCl lml1M DTT 10μl0.5M EDTA、pH 8.0 2mlウシ血清アルブミン (lOmg/ml) 500μlグリセロール 5ml界面活性剤ストック 2mlナノピュア水 1Omlになるまで【0103】溶液Aは、TRITON X-100の10%のストックを2ml含有した。溶液Bは、Tween 20の10%ストックを1mlおよびNP40の10%ストックをlml含有した。溶液Cは、Tomah E-18-15の10%ストックを2ml含有した。Tthポリメラーゼ(Promega M210,lot 8502201)のサンプルをこれらの溶液のそれぞれと等量で混合し、2.5U/μlのTthポリメラーゼを含有する3種の酵素界面活性剤溶液を作製した。反応混合物を、実施例1の物質を用いて記載のように合わせた。ただし、新たな10Xバッファーを使用した。このバッファーは、1.67mlの3M KCL、0.5mlの2M Tris-HCl pH 8.3 (25 ℃)および7.83mlのナノピュア水を混合することによって作製した。続いて酵素界面活性剤溶液4μlをそれぞれ200μlの反応混合物に添加して混合した。次にこの溶液100μlを採取して別の100μlの反応混合物と混合し、そして第2の100μl混合物を採取した。この混合物を第2の100μl反応混合物に添加して混合した。この工程を、反応混合物および5、2.5、1.25、0.625および0.3125ならびに0.156ユニットのTthポリメラーゼを含有する6個のチューブが作製されるまで続けた。実施例1に記載のように熱サイクルにかけた。その後、該反応の生成物を実施例1に記載のように分析した。【0104】5、2.5および1.25ユニットの酵素を含むTRITON X-100で酵素を安定化したものから分取したレーンに明確な1.5kbのバンドが存在した。Tween 20およびNP40で安定化した酵素を分析するために使用した5、2.5、1.25 および 0.625 ユニットの酵素を含むレーンにも明確な1.5kbのバンドが存在した。Tomah E-18-15で安定化した酵素反応物を分析するために使用したレーンでは、0.156ユニットの酵素反応物を除いたすべてのレーンに明確な1.5 kbのバンドが存在した。【0105】この結果は、イオン性界面活性剤Tomah E-18-15がTthポリメラーゼの性能を向上させ、その向上のレベルはこの研究で使用された非イオン性界面活性剤で見られたものより大きなものであることを示している。この事実は、この酵素が逆転写酵素でもあり、DNAポリメラーゼでもあることから、本発明の界面活性剤はこれらの種類の酵素の双方を安定化するのに有用であることを示しているという点において、特に興味深い。【0106】実施例 9イオン性界面活性剤の使用による T4 DNAポリメラーゼの性能の向上Tomah E-18-15は、2種の異なる熱安定性DNAポリメラーゼ(うち1種は逆転写酵素活性を有するものであった)の性能を向上させたので、熱不安定性DNAポリメラーゼ(すなわち、T4 DNAポリメラーゼ)の活性に与える影響を試験した。【0107】以下の溶液を調製した:ナノピュア水 960μl10 X バッファー* 200u12mM dNTP混合物 200μ1活性化DNA 200μl3H-TTP (1μCi/μl) 40μl*この実施例における10Xバッファーは、1 mlの5M NaCI、0.5mlの2M Tris-HCl pH 8.0 (25℃)、lmlの1M MgCl2、100μlの1M DTTを含有し、ナノピュア水を添加して最終体積が10mlに調製されている。2mMのdNTP混合物を実施例1のように作製した。【0108】T4 DNAポリメラーゼ(Promega M421)を1 Xバッファー中に1:100で希釈した。該反応物は氷上で、表3に示したように合わせた。【0109】【表3】【0110】チューブを37℃にて15分間インキュベートし、TCA沈殿のカウント量を測定して、このような界面活性剤レベルでの該酵素の活性を評価した。データを表4に示す。この結果は、この酵素は0.001%および0.01%の界面活性剤が存在する場合にそれぞれ約79%および68%活性が増加することを示す。【0111】【表4】【0112】この発見を確かめるため、かつBSA存在下で該界面活性剤がこの酵素の活性を増加させることがきるのかを判断するために、以下の実験を実施した。2種類の反応混合物を上記のように合わせた。ただし、一方の混合物(すなわち、+BSA混合物)のための10X反応バッファーは、1.7mlの10mg/ml BSAを用いて、成分溶液の体積を10mlに調節するために使用するナノピュア水の量を対応して減少させることにより作製した。2セットの反応物を氷上で、表5に示したとおり合わせた。【0113】【表5】*T4 DNAポリメラーゼを再び上記のように1Xバッファーで1:100に希釈した。**チューブの各セットのについて1種類の反応混合物を用い、一方のセットはBSAを含有し、もう一方のセットはBSAを含有しないようにした。【0114】チューブを15分間、37℃でインキュベートし、TCA沈殿のカウント量を測定してこれらの溶液中における該酵素の活性を判定した。データを表6に示す。この結果は、1)イオン性界面活性剤はこの熱安定性ポリメラーゼの活性を向上させること、2) 活性の増大は、BSA(該酵素の希釈した際の活性の維持を補助することが知られている物質)の添加にともなって見られたものと同様であること、3) 界面活性剤を添加したときにみられた活性の増加は、BSAを別個に添加したときに見られた活性の増加よりもわずかに大きいものであること、および 4) これらの物質双方の存在下における該酵素の活性は、BSAを単独で添加したときに見られたものよりわずかに高いものであること、を示している。【0115】【表6】【0116】実施例 10イオン性界面活性剤を添加したときのMMLV逆転写酵素の性能の向上イオン性界面活性剤Tomah E-18-15は、逆転写酵素活性を有する熱安定性性酵素(Tthポリメラーゼ)の性能を向上させたので、この界面活性剤が別の逆転写酵素、MMLV-RTに与える影響を試験した。【0117】10X MMLV-RT反応バッファーを以下のように調製した:2M Tris-HCl pH 8.3 (25℃) 2.5ml1M MgCl2 0.7ml3M KCl 1.33ml1M DTT lmlナノピュア水 総体積が10mlになるまでアッセイ混合物を以下のように作製した:成分 量10X MMLV反応バッファー 500μlナノピュア水 3200μ1100mM dTTP 25μ1ポリrA/オリゴ dT* 1250μ13H-dTTP 25μl【0118】ポリA/オリゴdT (Supertech、cat # 111020A)は、1mMのポリA、0.1 mMのオリゴdTである。MMLV-RT(Promega M170、lot# 8157702)のサンプルは、アッセイバッファーで1:100に希釈した。反応物は氷上で、表7に示すように合わせた。【0119】【表7】【0120】これらの反応物を10分間、37℃にてインキュベートし、lmg/ml 仔牛胸腺DNAを10μlおよび10% TCAを0.5ml添加した。そしてチューブを氷上に10分間放置した。続いて反応物をGF/Cフィルターを用いて濾過し、該フィルターを洗浄してカウントした。データを表8に示す。これらのデータは、上記の条件下においてイオン性界面活性剤で安定化したときに、逆転写酵素の性能が向上することを示している。【0121】【表8】【0122】実施例 11イオン性界面活性剤の添加によるAMV逆転写酵素の性能の向上イオン性界面活性剤Tomah E-18-15はMMLV逆転写酵素の性能を向上させた(実施例 10)ので、この界面活性剤が別の逆転写酵素(AMV-RT)に与える影響を実施例10に詳述した手順に従って試験した。これらのデータ(表9を参照)は、AMV逆転写酵素の性能が、実施例10に詳述した条件下においてイオン性界面活性剤を用いてアッセイした場合に向上することを示している。【0123】【表9】【0124】実施例 12イオン性界面活性剤の添加によるTfl DNAポリメラーゼの性能の向上界面活性剤を含まないTflポリメラーゼ溶液を、Tomah E-18-15 界面活性剤存在下でのPCR反応にて試験した。第1反応物には0.1%の界面活性剤および5ユニットのTflポリメラーゼを含有させた。一連のPCR反応物は、第1反応物を1:2で連続的に希釈して、最終的に0.003%の界面活性剤および0.15ユニットのTflポリメラーゼを含有する反応物まで作製した。界面活性剤を含まない対照実験も実施した。得られたPCR産物をアガロースゲル上に泳動させ、エチジウムブロミドで染色し、UV光を使用して可視化した。【0125】データを表10に示す。いずれの界面活性剤も添加されていない場合、Tflポリメラーゼは、25サイクル後に視覚的に認識しうるPCR産物を全く産生していなかった。Tomah E-18-15の存在下では、0.1%〜0.0005%の界面活性剤存在下において5ユニットから0.039ユニットまでのTflを使用した場合、PCR産物が目で検出可能であった。【0126】【表10】【0127】上記の明細書中で挙げた出版物および特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明の記載の方法および組成物の種々の改変および変更が当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態と関連させて記載したが、特許請求の範囲内に記載の本発明が、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきでないことが理解されなければならない。実際、分子生物学、生化学、タンパク質化学、または関連分野における当業者に明らかな、記載した様式についての本発明を実施するための種々の改変が、添付の特許請求の範囲内に包含されることを意図する。 a)ポリメラーゼと、b)HLB指数が11〜16であるポリエトキシル化アミン界面活性剤とを含有する組成物。 前記ポリエトキシル化アミンが下記の分子構造:を有し、ここでzは15〜20の整数であり、x+yの相加平均値は5〜15である、請求項1記載の組成物。 ポリエトキシル化アミンが0.0005〜1.0体積%の濃度である、請求項1記載の組成物。 zが17で、x+yの相加平均値が5である、請求項2記載の組成物。 zが17で、x+yの相加平均値が15である、請求項2記載の組成物。 10〜70mMの濃度でバッファーをさらに含有する、請求項1記載の組成物。 NaClおよびKClからなる群より選択される塩をさらに含有する、請求項1記載の組成物。 MgCl2およびCaCl2からなる群より選択される2価の塩をさらに含有する、請求項1記載の組成物。 キレート化剤をさらに含有する、請求項1記載の組成物。 還元剤をさらに含有する、請求項1記載の組成物。 a)ポリメラーゼまたは逆転写酵素、b)HLB指数が11〜16であるポリエトキシル化アミン、およびc)バッファーを含有する組成物。 ポリエトキシル化アミンが0.0005〜1.0体積%の濃度である、請求項11記載の組成物。 ポリエトキシル化アミンが下記の分子構造:を有し、ここでzは15〜20の整数であり、x+yの相加平均値は5〜15である、請求項11記載の組成物。 zが17で、x+yの相加平均値が5である、請求項13記載の組成物。 zが17で、xとyの相加平均値が15である、請求項13記載の組成物。 a)活性のあるポリメラーゼおよびHLB指数が11〜16であるポリエトキシル化アミン界面活性剤を用意し、b)該ポリメラーゼの活性が安定化される条件下で、該ポリメラーゼと該界面活性剤とを組み合わせて混合物をつくる、ことを含んでなる方法。 ポリエトキシル化アミンが下記の分子構造:を有し、ここでzは15〜20の整数であり、x+yの相加平均値は5〜15である、請求項16記載の組成物。 zが17で、x+yの相加平均値が5である、請求項17記載の方法。 zが17で、x+yの相加平均値が15である、請求項17記載の方法。


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