タイトル: | 特許公報(B2)_抗炎症点眼剤 |
出願番号: | 2000549298 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/18,A61K 31/405,A61K 31/54,A61P 27/02,A61P 29/00 |
三宅 謙作 釣谷 昌敞 屋ヶ田 浩子 鈴木 秀一 豊田 好洋 JP 4234907 特許公報(B2) 20081219 2000549298 19990514 抗炎症点眼剤 わかもと製薬株式会社 000100492 中村 稔 100059959 大塚 文昭 100067013 宍戸 嘉一 100065189 竹内 英人 100096194 今城 俊夫 100074228 小川 信夫 100084009 村社 厚夫 100082821 三宅 謙作 釣谷 昌敞 屋ヶ田 浩子 鈴木 秀一 豊田 好洋 JP 1998150788 19980515 JP 1999058173 19990305 20090304 A61K 31/18 20060101AFI20090212BHJP A61K 31/405 20060101ALI20090212BHJP A61K 31/54 20060101ALI20090212BHJP A61P 27/02 20060101ALI20090212BHJP A61P 29/00 20060101ALI20090212BHJP JPA61K31/18A61K31/405A61K31/54A61P27/02A61P29/00 A61K 31/18 A61K 31/405 A61K 31/54 A61K 45/00 BIOSIS(STN) CA(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) 特表2001−514244(JP,A) 特表2001−513563(JP,A) P. STEI,British Journal of Rheumatology,1996年,Vol.35, Suppl.1,Pages 44-50 MASFERRER J.L.,Survey of Opthalmology,1997年,Vol.41, Suppl.2,Pages S35-S40 7 JP1999002522 19990514 WO1999059634 19991125 8 20040518 特許法第30条第1項適用 平成10年5月24日 OPHTHALMIC SURGEON’S WEEK IN SENDAI にて発表 長部 喜幸 技術分野本発明はプロスタグランディンが炎症のメディエーターである眼炎症疾患の治療剤に関するものであり、特徴的な例として白内障手術後等の前眼部眼炎症疾患の予防及び治療のための点眼剤に関するものである。従来の技術炎症のメディエーターであるプロスタグランディンの生合成を阻害することにより抗炎症作用を発揮する、ジクロフェナクナトリウムなどの非ステロイド性抗炎症点眼剤は、経口投与による炎症性疾患の治療以外に、局所投与においても種々の炎症性疾患に用いられている。局所投与である点眼投与でも、眼炎症性疾患、特に白内障手術後の前眼部の炎症症状および術中・術後合併症に広く使用されている。一方、このような非ステロイド性抗炎症点眼剤の使用は、抗炎症作用は優れているが角膜上皮障害のような副作用の発生が臨床の場で1.6%程度指摘されており(わかもと製薬医薬品添付文書1996年)、副作用である角膜上皮障害の少ない非ステロイド性抗炎症点眼剤の開発が望まれている。最近の研究の進歩は、非ステロイド性抗炎症剤の作用点としてシクロオキシゲナーゼ−1(以下COX−1とする)およびシクロオキシゲナーゼ−2(以下COX−2とする)の2つの酵素阻害を指摘している。COX−1は細胞の保護の役割があり、COX−2は炎症に関与する酵素であると考えられていることより、COX−2を選択的に阻害する、細胞障害が少ない抗炎症剤の開発が期待されている。このような観点からの、全身投与抗炎症薬剤の副作用としての胃潰瘍の研究は詳細に研究されCOX−1およびCOX−2の役割はほぼ明確にされており、胃潰瘍の発生にはCOX−1の阻害が関与することが明らかになっている。このように胃潰瘍については作用機序が明確になっているが、胃潰瘍と同様の作用機序が角膜上皮障害の原因であることは明確になっていない。このような角膜上皮障害と眼炎症疾患についてCOX−1およびCOX−2の役割を明確に区別できる薬剤の開発が期待される。前眼部炎症がCOX−2阻害剤で抑制されることはMasferrer,JLら(Surv Ophthalmol 41(suppl 2):S35−S40,1997)が述べているが、ここでは角膜上皮障害について何らの記載もされていない。三宅(臨床眼科医報51(11)190−191(1997))はCOX−2選択阻害剤の使用が角膜上皮障害を軽減することを示唆しているが、この解決のための具体的記載はない。発明の開示本発明者らは非ステロイド性抗炎症剤の中でCOX−2を選択的に阻害する薬剤を点眼剤として使用して、眼の前眼部炎症疾患と細胞障害性について効果を検討し本発明を完成させた。すなわち、本発明はCOX−2選択性の高い薬物を有効成分とする抗炎症性点眼剤に関するものである。本発明者らは、in vivoでの抗炎症効果とin vitroでの細胞障害性をCOX−1およびCOX−2の選択性を有する化合物から選択して試験を試みた結果、COX−2選択性の高い薬物を有効成分とする抗炎症性点眼剤が優れた抗炎症効果及び細胞障害性の軽減を示すことを発見した。本発明は角膜上皮細胞あるいは結膜細胞のような細胞に対する障害性の軽減した抗炎症剤及び角膜上皮障害性の少ない点眼剤を提供するものである。発明を実施するための最良の形態本発明の点眼剤に使用するCOX−2の選択性の高い非ステロイド性抗炎症性薬剤の好ましい例としては、エトドラク(1,8−diethyl−1,3,4,9−tetrahydropyrano[3,4−b]indole−1−acetic acid)、N−(2−(シクロヘキシルオキシ)−4−ニトロフェニル)メタンスルホンアミド(NS−398)及びメロキシカム(4−hydroxy−2−methyl−N−(5−methyl−2−thiazolyl)−2H−1,2−benzothiazine−3−carboxamide 1,1−dioxide)が挙げられる。本発明の点眼剤は無菌製剤が望ましく、エトドラクあるいはNS−398は溶解剤としてヒマシ油、ゴマ油あるいはその他の界面活性剤を使用してもよく、軟こう剤としてもよい。メロキシカムもまた同様にCOX−2の選択性が高い薬剤であり、上記薬剤に比較して水溶性の高いことに特徴があり、水溶性点眼剤として使用でき、軟膏剤としても使用できる。このような炎症性疾患に使用される薬剤の好ましい濃度は、水溶性製剤であるメロキシカムは0.1%から1%の濃度で、エトドラク及びN−(2−(シクロヘキシルオキシ)−4−ニトロフェニル)メタンスルホンアミドのように油製剤としたときは0.5%から5%であり、それぞれ炎症モデル実験で効果を示した。細胞障害性に関しては、角膜上皮細胞および結膜細胞においてCOX−2選択性のある薬剤は何れも細胞障害性の少ないものであった。とくに薬剤に長く暴露したとき、角膜上皮障害性の少ないことが明白になった。このように角膜上皮細胞あるいは結膜細胞などの細胞障害の少ない点眼剤、特に角膜上皮障害の発生を少なくした抗炎症作用を期待できるCOX−2選択的阻害剤が点眼剤として適用されるのは本発明が初めてである。以下、実施例及び試験例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例1エトドラク 5gパラオキシ安息香酸プロピル 0.01gパラオキシ安息香酸メチル 0.05gひまし油 100mLとするひまし油80mLにエトドラク、パラオキシ安息香酸プロピルおよびパラオキシ安息香酸メチルを加えて溶解した後、ひまし油で100mLとし、除菌ろ過して本発明の点眼剤を得た。実施例2N−(2−(シクロヘキシルオキシ)−4−ニトロフェニル)メタンスルホンアミド 5gパラオキシ安息香酸プロピル 0.01gパラオキシ安息香酸メチル 0.05gひまし油 100mLとするひまし油80mLにN−(2−(シクロヘキシルオキシ)−4−ニトロフェニル)メタンスルホンアミド、パラオキシ安息香酸プロピルおよびパラオキシ安息香酸メチルを加えて溶解した後、ひまし油で100mLとし、除菌ろ過して本発明の点眼剤を得た。実施例3メロキシカム 0.5gTween−80 0.5gメチルセルロース 0.5gホウ酸 0.1gEDTA 0.005g塩化ベンザルコニウム 0.005g0.1N塩酸/0.1N水酸化ナトリウム pH7.2になるまで精製水 100mLとする精製水80mLにメロキシカム、Tween−80(Polysorbate−80)、メチルセルロース、ホウ酸、EDTAおよび塩化ベンザルコニウムを加えて溶解した。0.1N塩酸または0.1N水酸化ナトリウムでpH7.2に調整し、精製水で100mLとし、除菌ろ過して本発明の点眼剤を得た。本発明の点眼剤の用法、容量は、患者の症状、年齢等により変動するが、通常1日1〜6回、1回1〜2滴が点眼される。試験例1 白色家兎前眼部炎症に対する効果体重1.8〜2.4kgの日本白色種雄性家兎(日本医科学動物資材研究所)を各群6〜7羽として用いた。ヘパリン(武田薬品工業)250U/kgを家兎の耳静脈内に投与後、被験物質を両眼に約60μL点眼した。その45分後にベノキシール点眼液(参天製薬)にて局所麻酔を施した後、27G注射針にて前房水を全量採取した。これを一次房水とする。房水採取90分後に家兎を過量のペントバルビタールナトリウムにて麻酔死させた後、房水を再度採取した。これを二次房水とする。採取した二次房水中のプロスタグランディンE2(以下PGE2と称する)濃度及び蛋白量を測定し炎症の指標とした。PGE2濃度は、房水100μLをBond Elute C18カラムにて前処理後、バイオトラックPGE2EIAシステム(アマシャム)を用いて測定した。また、蛋白量は、Bovine serum albumin(ナカライ)を標準蛋白としてLowry法にて測定した。被験物質であるエトドラクは局方ヒマシ油に0.5%と5%濃度に溶解した。メロキシカムは生理食塩水に希釈して使用した。図1および図2に示すように、エトドラクは前房穿刺による房水中のPGE2含量および蛋白含量の増大を抑制した。また、表1に示すようにメロキシカムは0.1%から1.0%の濃度の範囲で蛋白及びPGE2量の増大を抑制し,他の薬剤に比べ顕著な効果を示した。試験例2 LPS惹起ぶどう膜炎に対する影響体重1.7〜2.4kgの日本白色種雄性家兎を各群12〜16眼を用いた。家兎耳介静脈よりE.coli由来のリポポリサッカライド(LPS)(055:B5type,Sigma)を1.25μg/kg投与し、ぶとう膜炎を惹起させた。LPS投与4hr後、家兎を過量のペントバルビタール・ナトリウム(東京化成)にて麻酔死させた後、前房水を採取した。採取した房水中のPGE2濃度および蛋白量の測定は実施例1と同様に行った。なお、被験物質はLPS投与1hr前に、両眼に約60μLをそれぞれ点眼した。被験物質であるNS−398は局方ヒマシ油で0.5%と5.0%濃度に溶解または懸濁した。メロキシカムは生理食塩水で希釈して使用した。表2に示すように、NS−398はPGE2量の増大を顕著に抑制した。また、表3に示すように、メロキシカムは0.1%から1.0%の範囲で蛋白及びPGE2量の増大を顕著に抑制し、抗炎症作用に優れていることが判明した。試験例3 角膜上皮細胞および結膜細胞に対するシクロオキシゲナーゼ阻害薬の影響使用細胞:角膜細胞はSV40不死化ヒト角膜上皮細胞株(Araki−Sasaki et al.IOVS 36:614−621,1995)を、結膜細胞はChangヒト結膜細胞株(ATCC CCL−20.2)を使用した。試験方法:細胞を96穴プレートで培養し、30〜50%confluentとした後、培地で段階希釈した被験物を加え、37℃で培養した。培養後、PBS(−)で洗浄し、残存した細胞数をβ−ヘキソサミニダーゼ活性で測定した。毒性の評価法:被験物を溶解した溶媒のみで処置した群を陰性対照とし、その値を細胞生存数100%として、各被験物濃度の細胞生存率による用量相関曲線を作成し、その曲線から生存率50%の被験物濃度(EC50)を毒性値とした。表4に示すように、COX−2の相対活性の大きなエトドラクは、インドメタシンあるいはジクロフェナクナトリウムのようなCOX−1、COX−2選択性の小さい化合物に比べ、角膜上皮細胞および結膜細胞に対して細胞障害性が弱かった。このことは角膜障害性の少ない非ステロイド性抗炎症剤の開発に道を開くものである。また、表5に示すように、メロキシカムは角膜上皮細胞および結膜細胞に対する障害性が弱かった。産業上の利用可能性本発明のCOX−2を選択的に阻害する薬剤は、点眼剤として角膜障害性の少ない眼炎症性疾患の治療に顕著な効果を示す。特にメロキシカムは結膜細胞に比べ、角膜上皮細胞に長時間暴露した場合にも優れた効果を示す。【図面の簡単な説明】図1は、エトドラクの前房穿刺により上昇したPGE2含量に及ぼす効果を示すグラフである。図2は、エトドラクの前房穿刺により上昇したタンパク含量に及ぼす効果を示すグラフである。 シクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する薬剤を有効成分とする抗炎症点眼剤であって、シクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する薬剤が、エトドラク、N-(2-(シクロヘキシルオキシ)-4-ニトロフェニル)メタンスルホンアミド、及びメロキシカムからなる群から選ばれる少なくとも1種である抗炎症点眼剤、ただし眼軟膏および眼用ヒドロゲルは除く。 シクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する薬剤がエトドラクである、請求項1記載の点眼剤。 エトドラクの濃度が0.5〜5%である請求項2記載の点眼剤。 シクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する薬剤がN-(2-(シクロヘキシルオキシ)-4-ニトロフェニル)メタンスルホンアミドである、請求項1記載の点眼剤。 N-(2-(シクロヘキシルオキシ)-4-ニトロフェニル)メタンスルホンアミドの濃度が0.5〜5%である請求項4記載の点眼剤。 シクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する薬剤がメロキシカムである、請求項1記載の点眼剤。 メロキシカムの濃度が0.1〜1%である請求項6記載の点眼剤。