生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ICU鎮静のためのデクスメデトミジンの用途
出願番号:2000540820
年次:2011
IPC分類:A61K 31/4174,A61P 25/20,A61P 25/22,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

アーンター、リク バチャンド、ロミオ ヘイノネン、エサ JP 4606581 特許公報(B2) 20101015 2000540820 19990331 ICU鎮静のためのデクスメデトミジンの用途 オリオン コーポレーション 300046083 河村 洌 100098464 藤森 洋介 100149630 谷 征史 100154449 佐木 啓二 100098257 ホスピーラ インコーポレーテッド 507339940 河村 洌 100098464 藤森 洋介 100149630 谷 征史 100154449 アーンター、リク バチャンド、ロミオ ヘイノネン、エサ US 60/080,287 19980401 US 60/110,944 19981204 20110105 A61K 31/4174 20060101AFI20101209BHJP A61P 25/20 20060101ALI20101209BHJP A61P 25/22 20060101ALI20101209BHJP A61P 43/00 20060101ALI20101209BHJP JPA61K31/4174A61P25/20A61P25/22A61P43/00 A61K 31/4174 CA/REGISTRY(STN) International Congress and Symposium Series - Royal Society of Medicine,1998年,Vol.221,p.73-81 Arthur P. Wheeler,Chest,1993年,Vol.104,p.566-577 Crippen D. et al.,Critical Care Nursing Quality,1992年,Vol.15/2,p.52-74 12 FI1999000266 19990331 WO1999049854 19991007 2002509880 20020402 15 20060110 松波 由美子 【0001】[発明の背景]本発明は、集中治療室(ICU)鎮静におけるデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩の用途に関する。ICUにおける患者の実際の鎮静に加えて、ICU状況における用語、鎮静(the word sedation)は、苦痛および不安などの患者の安心感に影響を及ぼす状態の治療も含む。同様に、用語、集中治療室は、集中治療を提供するいかなる設定をも含む。したがって、本発明は、ICUにいるあいだ、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩を投与することにより、患者を鎮静する方法に関する。とくに、本発明は、ICUにいる間、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩を投与することにより、患者を鎮静する方法であり、デクスメデトミジンがこの目的に対して投与される本質的に唯一の活性薬剤または唯一の活性薬剤である方法に関する。本発明は、集中治療室鎮静に使用する医薬品の製造における、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩の用途にも関する。【0002】危機的な病状の段階から回復する患者は、彼らがICU滞在中に最も悩まされた因子を報告している(Gibbons, C. R., et al., Clin. Intensive Care 4 (1993) 222-225)。最も共通した不快な記憶は、不安、苦痛、疲労、衰弱、乾き、様々なカテーテルの存在、および理学療法などの少数派の処置である。ICU鎮静のねらいは、患者が、興奮することなく、快適であり、くつろいでいて、また静脈ライン(iv‐line)またはほかのカテーテルの設置といったような不快感を与える処置に耐えることを保証することである。【0003】今のところ、普遍的に容認された、重篤な患者に対する鎮静プログラム(regimen)はない。したがって、これらの患者はICUにいる間様々な薬剤を与えられ、しばしば、様々な薬剤が同時作用的に与えられている。最も普通に用いられる薬剤が患者を快適にするために与えられる。種々の薬剤が、不快な処置に対して、抗不安(ベンゾジアゼピン)、記憶喪失(ベンゾジアゼピン)、無痛覚(オピオイド(opioides))、抗うつ(抗うつ剤/ベンゾジアゼピン)、筋肉緩和、睡眠(バルビツレート、ベンゾジアゼピン、プロポフォール(propofol)および無感覚(フロポフォール、バルビツレート、揮発性麻酔薬)を生じさせるために投与される。鎮静は、苦痛および不安などの患者の安心感に影響を及ぼす状態の処置をも含んでおり、前記の薬剤の多くはICU鎮静の状況外では鎮静剤とみなされていないけれども、これらの薬剤は、ICU鎮静の状況においては累積的に鎮静剤と呼ばれる。【0004】現在使用できる鎮静剤は、延長された鎮静もしくは過剰鎮静(フロポフォールおよびとくにミダゾラムの低代謝(poor metabolizers))、延長された離脱(prolonged weaning)(ミダゾラム)、呼吸低下(ベンゾジアゼピン、フロポフォール、およびオピオイド)、低血圧(投薬するフロポフォール丸薬)、徐脈、腸閉塞もしくは低下した胃腸の運動性(オピオイド)、免疫抑制(揮発性麻酔薬および亜酸化窒素)、腎機能障害、肝毒性障害(hepatotoxicity)(バルビツレート)、トレランス(ミダゾラム、フロポフォール)高脂質血症(フロポフォール)増加された感染症(フロポフォール)、方向性および協力性の欠如(ミダゾラム、オピオイドおよびフロポフォール)、ならびに潜在的虐待(potential abuse)(ミダゾラム、オピオイドおよびフロポフォール)などのような有害効果と結び付けて考えられている。【0005】すべての個々の鎮静剤の有害効果に加えて、これらの薬剤を組み合わせることによって(多薬療法)有害効果が生じ得る。たとえば、薬剤は相乗的に作用し、それは予想できないものであり、薬剤の毒性は付加的となり、それぞれの薬剤の薬物動態学は予想できない様式で変わる。さらに、アレルギー反応の可能性はひとつの薬剤より多くの薬剤の使用に伴い増加する。さらに、これらの有害効果は、その有害効果を治療するためにさらなる薬剤の使用を必要とする可能性があり、そのさらなる薬剤それ自身が有害効果を有するかもしれない。【0006】重篤患者にとって鎮静の好ましいレベルは、近年かなり変化してきた。今日、ICUにおいて最も集中治療にたずさわっている医師は、彼らの患者が眠っていてしかし容易に覚醒することを好み、今は、鎮静のレベルは患者の個々の要求を考えてあつらえられる。筋肉弛緩剤は集中治療中はめったに使用されない。心臓血管の安定がこのハイリスク患者群において望まれているとき、血行力学的活性薬剤がしばしば、充分な鎮静にもかかわらず適当な血行力学の制御のために必要とされる。【0007】α2−アドレノレセプターアゴニストは、それらの交感神経遮断性、鎮静剤、麻酔、および血行力学安定化効果のために、一般的な麻酔の実施において評価されている。Trybaらは、離脱症状の患者をICUにおいて治療するような状況におけるα2−アゴニストの有用性について議論している(Tryba et al., Drugs 45(3)(1993), 338-352)。オピオイド、ベンゾジアゼピン、ケタミン、および神経弛緩薬と共同して使用された唯一の前記α2−アゴニストはクロニジンであった。Trybaらは、クロニジンは、離脱症状のICU患者において有用である可能性があると示唆しているが、Trybaらは、ICU鎮静におけるクロニジンの用途について簡単に触れているに過ぎない。さらに、TrybaらはICU鎮静に対するほかの鎮静剤の補足剤として単にクロニジンに触れているに過ぎない。【0008】Trybaらによれば、クロニジンは、主にそれぞれの個々の患者に対して滴定しなければならないような、その予測できない血行力学効果、すなわち徐脈および低血圧のために、重篤患者を鎮静することにおいてその限界を有する。重篤患者を長期クロニジンで治療することは、頻脈および高血圧のような反動効果に関連すると報告されている。【0009】α2−アゴニストは、現在ICU鎮静においてそれ自身は使用されていない。さらに、α2−アゴニストは、一般的にほかの鎮静薬剤と共同してさえも、ICU鎮静において使用されていない。クロニジンだけがICU鎮静における用途が評価され、オピオイド、ベンゾジアゼピン、ケタミン、および神経弛緩薬と共同しての用途のみ評価されている。さらに、本質的に唯一の活性薬剤または唯一の活性薬剤として、鎮静を達成させるためのICUにおける患者へのクロニジンの投与は、本出願人の知る限りでは開示されていない。【0010】重篤患者にとって理想的な鎮静薬は、血行力学安定化効果とともに急速な覚醒作用により容易に決定される投与量で鎮静を提供すべきである。さらに、それは抗不安薬および鎮痛薬であるべきであり、悪心、嘔吐および震えを予防するべきである。それは呼吸障害を引き起こすべきではない。好ましくは、理想的な鎮静薬は、多薬療法の危険なしにICU鎮静においてそれ自身で使用できるべきである。【0011】デクスメデトミジンまたは(+)−(S)−4−[1−(2,3−ジメチルフェニル)エチル]−1H−イミダゾールは以下の構造式を有する。【0012】【化1】【0013】デクスメデトミジンは米国特許4,910,214号に、一般的な鎮静/鎮痛ならびに高血圧または不安治療のための、α2−レセプターアゴニストとして記載されている。米国特許5,344,840号および5,091,402号では、デクスメデトミジンの手術時および硬膜外での用途についてそれぞれ論じている。米国特許5,304,569号はデクスメデトミジンの緑内障への用途を論じている。米国特許5,712,301号ではデクスメデトミジンの、エタノールの消費(comsumption)によって起こる神経変性(neurodegeneration)を予防するための用途を論じている。【0014】メデトミジンは、デクスメデトミジンおよびレボメデトミジンのラセミ混合物であり、選択性のある、強力なα2−アゴニストとして知られており、米国特許4,544,664号には抗高血圧薬として、米国特許4,670,455号には獣医の鎮静鎮痛薬として記載されている。【0015】米国特許4,544,664号および4,910,214号には、非経口、静脈内および経口の投与方法が論じられている。米国特許4,670,455号は筋肉内および静脈内投与が記載されている。米国特許5,124,157号および5,217,718号は、皮膚を通したデクスメデトミジン投与のための方法およびデバイスを記載している。米国特許5,712,301号はデクスメデトミジンが粘膜透過的に投与できると明言している。【0016】本明細書中で論じた米国特許は、とくにそのすべてが参考文献によって含まれている。【0017】[発明の要約]デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩が、患者を安心させるためにICUにおいて患者に投与するのに理想的な鎮静薬であることは、不意に見出された。したがって、本発明の目的は、ICUにいるあいだ、目的とする治療効果を与えるのに充分な時間、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩を投与することからなる、患者を鎮静させる方法を提供することである。【0018】ICUにおいて患者を鎮静させる方法は、そのα2−アゴニストとしての活性に導かれるすべての可能性のある用途を含むデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩の可能性のあるICU用途、たとえば、低血圧剤、抗不安薬、鎮痛薬、鎮静薬などとしての用途はすべて包含することに留意すべきである。また、用語、集中治療室は集中治療を提供するようないかなる環境をも包含することにも留意すべきである。【0019】本発明のさらなる目的および利点は、以下の説明である程度述べ、一部は説明から明らかになるであろうし、または本発明の実施により知ってもよい。本発明の目的および利点は、とくに添付の請求項に指摘した要素および組み合わせによって理解され達成されるであろう。【0020】ある側面において、本発明は、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩を投与することによってICUにいるあいだ患者を鎮静させる方法であって、デクスメデトミジンが本質的に唯一の活性薬剤または唯一の活性薬剤である方法に関する。その方法は、本質的にデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩だけが、鎮静および患者の安心感を達成するためにICUで患者に投与するために必要であるという発見を前提とする。さらなる鎮静剤は必要とされない。【0021】さらなる側面においては、本発明はデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩のICU鎮静における用途に関する。【0022】本発明のさらなる側面は、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩のICU鎮静用医薬品の製造における用途に関する。【0023】前述の一般的な記載と以下の詳細な説明は両方とも典型的で説明のためだけのものであり、請求項としての本発明を限定するものではないことを理解すべきである。【0024】[発明の詳細な説明]本出願人は、驚くべきことにデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩が、患者を安心させるためにICUにおいて患者に投与するのに理想的な鎮静剤であることを発見した。とくに、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩が、患者を鎮静させるためにICUにおいて患者に投与される本質的に唯一の活性薬剤または唯一の活性薬剤であり得るということを見い出した。【0025】ICUにおいて患者を鎮静させる方法は、そのα2−アゴニストとしての活性に導かれるすべての可能性のある用途を含むデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩の可能性のあるICU用途、たとえば、低血圧剤、抗不安薬、鎮痛薬、鎮静薬などとしての用途はすべて包含する。【0026】また、集中治療室という用語は集中治療を提供するようないかなる環境をも包含する。患者という用語は、ヒトおよび動物の患者の両方を含むことを意図する。【0027】 デクスメデトミジンの投与によって達成されるICUにおける鎮静の性質は独特なものである。デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩によって鎮静化された患者は、患者の治療が容易にできるよう覚醒され、見当識が保たれる(oriented)。患者は呼び覚まされ、そして彼らは質問に応答することができる。彼らは気づいているけれども、不安そうではなく、気管チューブをよく許容している。もし、鎮静の深いレベルまたはより鎮静が要求されまたは望まれるならば、デクスメデトミジンの投与量の増加が、患者をスムーズに深いレベルの鎮静に推移させる。デクスメデトミジンの投与量は、ほかの鎮静剤と関連して、呼吸器障害、吐気、持続鎮静、腸閉塞もしくは胃腸運動性の減少または免疫抑制などの有害効果を有さない。呼吸器障害がないため、デクスメデトミジンは非通気(non-ventilated)された状態にも使用することができ、鎮静、抗不安薬、鎮痛薬および血行力学的安定の必要な重篤患者は、なお見当識のある状態を維持され、また容易に覚醒されなければならない。さらにそれは水溶性であるので、投与量は長期間鎮静化された患者において、脂質負荷(lipid load)を増加させない。予測できる薬理反応が、ICUにおいて患者にデクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩を投与することによって成し遂げられる。【0028】デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩は、経口的に、経粘膜的、経皮的、静脈内的または筋肉内的に投与できる。当業者は、本発明の方法に適した投与量および剤形がわかるであろう。本発明によって投与される薬物の正確な量は、患者の全体的な状態、治療のための状態、目的の使用持続期間、投与経路、哺乳類のタイプなどの非常にたくさんの因子に依存している。デクスメデトミジンの投与量の範囲は、標的プラズマ濃度として記載することができる。ICUにおける患者の人々に鎮静を提供することを期待されるプラズマ濃度範囲は、鎮静の目的レベルおよび患者の全体的な状態に依存して0.1〜2ng/mlの間で変わる。これらのプラズマ濃度は、瞬時投与(bolus dose)および規則的な維持注入(steady maintenance infusion)による継続投与を用いて静脈内投与によってなされることができる。たとえば、ヒトにおいて前記プラズマ濃度範囲に到達するための瞬時の投与量範囲は、約10分間またはそれよりゆっくり投与されるため、約0.1〜2.0μg/kg、好ましくは約0.5〜2μg/kg、より好ましくは1.0μg/kgであり、ついで、約0.1〜2.0μg/kg/h、好ましくは約0.2〜0.7μg/kg/h、より好ましくは0.4〜0.7μg/kg/hが維持投与される。デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩の投与期間は、目的の使用持続期間に依存している。【0029】デクスメデトミジンの化学的形式(chemical form)は遊離塩基または酸付加塩である。このような酸付加塩は、たとえば、塩酸、臭酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸や、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸で形成されてよい。【0030】本発明を以下の実施例によってさらに明らかにするが、以下の実施例は本発明の単なる典型的なものであることを意図する。【0031】実施例1ICUにおいて鎮静を必要とする、外科手術後の冠状動脈バイパス移植患者(CABG)におけるデクスメデトミジンの有効性、安全性および滴定能力(titratability)を研究した。患者は8〜24時間挿管された。すべての患者に、ICUへの入室の1時間以内にデクスメデトミジンが投与され、デクスメデトミジン注入は、抜管後6時間まで続けられた。デクスメデトミジンは0.9%塩化ナトリウム水溶液中、塩酸塩(100μg/ml、塩基)の形で用いられ、標準注射器ポンプおよび静脈内投与セットを利用して、2段階注入(負荷投与ののち維持注入)で投与された。【0032】 12人の患者を選び、2つのグループに分けた。はじめの6人の患者には、10分間にわたってデクスメデトミジンを、負荷投与量6μg/kg/hで投与し、そののち0.2μg/kg/hで維持注入した。6人の患者の第2グループには、はじめに10分間にわたってデクスメデトミジンを、6μg/kg/h負荷投与量投与し、そののち0.4μg/kg/hの維持注入で投与した。両グループにおける注入速度は0.2から0.7μg/kg/hの範囲で維持された。鎮静の臨床効果が明らかになった(約15分から30分以内)のち、注入の持続速度を、ラムセイ鎮静スコアレベル3以上(図1参照)に到達および維持するため、0.1μg/kg/h以上徐々に増加させて調整することができる。【0033】生命の徴候(vital signs)、副作用、および鎮静スコアが研究中記録された。患者は、デクスメデトミジンの投与中は以下に記載するいかなる医薬品も与えられなかった:鎮静剤、気管チューブ挿入以外では神経筋遮断剤、および硬膜外もしくは脊椎の鎮痛/麻酔剤。2人の患者が痛みのためにモルヒネを必要とした。1人の患者が2つの重大な有害事象:循環器不全および心筋梗塞を起した。不完全な血管再生のための心筋梗塞は、研究薬剤注入の停止後13日で死を導いた。心筋梗塞はデクスメデトミジンにほとんどまたはなんの関係もなかった。事実、不完全な血管再生はCABG手術後の最も一般的な有害事象のひとつであり、それは時々死を招く。【0034】デクスメデトミジンの投与のあいだ、血圧および心拍変動は減少し、高血圧もしくは心拍の治療、たとえばベータブロッカーで、またはベンゾジアゼピンもしくはプロポフォールでの鎮静/抗不安の増加のいずれかのために薬理学的介入の必要ないより安定で予期できる血行力学を意味する。結論として、患者はただひとつの薬理学的デクスメデトミジンによって、好都合に鎮静化され、血行力学的に安定し、自覚的なよい気分の制御のために容易に覚醒したままでいられた。【0035】実施例はデクスメデトミジンが、鎮静化と患者の快適化の独自の性質を提供するので、ICUにおいて患者を鎮静化するための理想的な薬剤であることを示す。【0036】実施例2任意抽出された二重盲(double-blind)プラセボーコントロール研究を、ICUで鎮静を必要とする機械的通気患者におけるデクスメデトミジンの有効性、安全性および滴定能力の評価のため実施した。研究は、ICUで鎮静を必要としている外科的手術後CABG患者で実施された。研究の選抜判定基準にあった、ICUにおいて機械的通気を必要とする12人の成人の外科的手術後CABG患者は、参加に適当であった。【0037】選抜判定基準は以下の通りである。患者は機械的通気のために手術後最低8時間の鎮静、ついで抜管後の6時間の引き続きの鎮静を必要とした。患者はテストに対する評価のために24時間より長く挿管されることはなかった。患者には苦痛をなんとかするためにモルヒネのみが与えられ、薬剤投与研究の間以下の医薬品:ミダゾラム以外の鎮静剤、気管チューブ挿入以外では神経筋遮断剤、および硬膜外もしくは脊椎の鎮痛/麻酔剤はなにも与えられなかった。【0038】有害事象のモニタリング、心臓モニタリング、研究室のテスト(laboratory tests)、生命の徴候、酸素飽和度および共存薬物によって安全性を評価した。【0039】12人の患者は、臨床的に必要とされるばあいはミダゾラムを用いて鎮静の治療を助けて、無作為にデクスメデトミジンまたはプラセボーのどちらかを与えられることが決められた。デクスメデトミジンに任意に選ばれた患者には、10分、6.0μg/kg/h負荷投与量を与え、そののち初期維持注入した。維持注入の速度は0.4μg/kg/hであった。注入維持速度は、ラムセイ鎮静のスコア3以上に到達および維持するために0.1μg/kg/hで徐々に増加させて滴定することができた。維持注入の範囲は0.2から0.7μg/kg/hの間に保つことができた。デクスメデトミジンの投与はICU入室後1時間以内に始め、抜管後6時間は続けるべきであった。デクスメデトミジンは0.9%塩化ナトリウム水溶液中、塩酸塩(100μg/ml、塩基)の形で用いられ、標準注射器ポンプおよび静脈内投与セットを利用して投与された。プラセボーは0.9%塩化ナトリウム水溶液で、デクスメデトミジンを投与されたのと同じ方法で投与された。6人のデクスメデトミジン鎮静化患者は、充分に鎮静化されたままで、ミダゾラムを何も必要としなかった。反対に、6人のプラセボー処置患者のうち5人は鎮静の充分なレベル(ラムセイ鎮静スコア≧3)に到達するためにミダゾラムの投与を必要とした(全平均ミダゾラムmg/kg/h±SEM=0.018±0.005)。2つの処置群間の、研究中に与えられた全ミダゾラム投与量における差は統計的に著しかった(p=0.010)。鎮静の全体的なレベルは2つの群のあいだで同様であったが、プラセボー処置患者のあいだの断続的な鎮静(ラムセイ鎮静スコア≧3)および動揺(ラムセイ鎮静スコア1)と比較して、デクスメデトミジンの投与は、長い時間でごくわずかな変化で特徴付けられる、安定なラムセイ鎮静スコアを生じる。デクスメデトミジンはまた、研究の継続期間中に投与されたモルヒネの全投与量で評価されるように、この患者群において鎮痛特性も示した。プラセボー処置患者6人のうちの5人と比較して、デクスメデトミジン処置患者6人のうち1人が苦痛の処置のためにモルヒネの投与を必要とした。モルヒネ平均全投与量における処置群間の差は統計的に著しい(p=0.040)。【0040】結論として、デクスメデトミジン処置患者は、意味ありげに鎮静に対してミダゾラムをまたは苦痛に対してはモルヒネを、プラセボーを与えた患者と比べて少量必要とした。デクスメデトミジン処置患者の鎮静レベルは、ミダゾラムを与えたプラセボー処置患者の鎮静レベルより、より安定であった。デクスメデトミジンは安全でよく許容され、補助通気中止後の臨床的に明らかな呼吸器障害を生じなかった。【0041】実施例32つのIII期デクスメデトミジン多中心(multicenter)臨床試験(試験1および試験2)が、ヨーロッパおよびカナダでICUにおいて実施された。各試験は2つの部分言い換えると、公開標識部(パートI)および二重盲任意プラセボー標準化部(パートII)を有する。試験はデクスメデトミジンを与えた患者が、ICU鎮静の要求の減少を評価(ほかの鎮静/鎮痛剤の投与によって評価されるように)するために企画された。鎮静および鎮痛に対してそれぞれプロポフォールおよびモルヒネの使用がひとつの試験(試験1)で評価され、もう一方の試験(試験2)ではミダゾラムおよびモルヒネが評価された。総計493人の患者が試験1に登録され処置され、438人の患者が試験2に登録され処置された。【0042】試験のパートIでは、患者に10分間かけてデクスメデトミジンの負荷投与量6.0μg/kg/hを投与し、ついで初期維持注入0.4μg/kg/hを投与すべきであった。研究のパートIIのあいだ、患者は無作為にプラセボー(0.9%塩化ナトリウム水溶液)またはデクスメデトミジンのどちらかを与えられることが決められた。デクスメデトミジンは0.9%塩化ナトリウム水溶液中、塩酸塩(100μg/ml、塩基)の形で用いられ、標準注射器ポンプおよび静脈内投与セットを利用して投与された。研究の両パートに対して、そののち初期維持注入が行なわれ、注入速度は、0.1μg/kg/h以上で徐々に増加させて調整することができた。ラムセイ鎮静スコア3以上に到達および維持するために、挿管中の注入速度を0.2から0.7μg/kg/hの範囲で維持するべきであった。抜管後、注入速度をラムセイ鎮静スコア2以上に到達するために調整するべきであった。【0043】10分の負荷投与のあいだ、付加的な医薬品は避けられたが、試験1ではプロポフォール(0.2mg/kg瞬時)が、および試験2ではミダゾラム(1mg瞬時)が必要に応じて与えられた。デクスメデトミジン注入中、補助(rescue)医薬品は、鎮静に対して試験1ではプロポフォール(0.2mg/kgIV瞬時)に、試験2ではミダゾラム(0.2mg/kgIV瞬時)に、また苦痛に対してはモルヒネ(2mgIV瞬時)に制限した。抜管後、臨床的必要に応じて苦痛に対してはパラセタモールが許可されるべきであった。プロポフォールおよびミダゾラムはデクスメデトミジン注入速度増加後のみ与えられるべきであった。パートIおよびIIにおけるデクスメデトミジンの投与はICU入室後1時間以内に始め、抜管後6時間(全研究薬剤注入は最大で24時間)は続けるべきであった。患者は、デクスメデトミジンの中止後さらに24時間観察され評価された。【0044】試験1および試験2の結果は以下の通りであった。デクスメデトミジンで処置した患者は、プラセボーを与えた患者より、鎮静に対してプロポフォール(試験1)もしくはミダゾラム(試験2)を、または苦痛に対してモルヒネを明らかに少量しか必要としなかった。デクスメデトミジン処置患者の鎮静レベルは、プロポフォールまたはミダゾラムを与えられたプラセボー処置患者のレベルよりより速く達成される。デクスメデトミジンは安全でよく寛容される。つまり、これらの研究において報告された有害事象および研究室変化は外科手術後の人々において期待できた。【0045】試験1のあいだ、パートIで3人のデクスメデトミジン処置患者が死亡し、プラセボー処置患者が1人死亡した。しかしながら、デクスメデトミジンの投与と関係があると認められたような死に導く有害事象はなかった。試験2のパートIおよびパートIIにおいてデクスメデトミジン処置患者は死ななかったが、プラセボー処置患者の5人が死亡した。デクスメデトミジンは、既知のα2−アゴニストの薬理学的効果と一致する収縮期血圧、拡張期血圧、および心拍における変化を生じた。さらに、デクスメデトミジンは、補助通気中止後の臨床的に明らかな呼吸器障害を生じない。【0046】以下の16のケースは前記試験1および2のパートIIのものである。このケースはデクスメデトミジンが鎮痛剤の性質を有し、有効な鎮静および抗不安を提供する一方、患者は関心を示し、意志疎通できる。【0047】1.86歳の女性患者が結腸腫瘍のため腹部切除を受けた。外科手術は短作用無痛法(short-acting analgesia)(remifentanil)で行なわれた。患者は煙草を吸わない人で、高血圧のほかには心臓の病歴はなかった。ICU到着後すぐに、彼女はモルヒネとミダゾラムの2つの投与を必要とした。デクスメデトミジンは10分間の負荷投与6μg/kg/hで開始され30分間0.4μg/kg/hの速度で維持され、そののち平均投与量0.5μg/kg/hとした。患者のラムセイ鎮静スコアは最初の1時間は6で、ついで3まで減少し、最後は2まで減少した。デクスメデトミジンを投与している間、患者は抜管前に5分間のモルヒネの1回投与のみ必要とした。抜管は6.5時間後に行なわれ、平穏無事であった。【0048】2.66歳の男性患者が右肺の葉摘手術(lobectomy)を受けた。患者は以前はヘビースモーカー(1日に3箱)であったが、10年前に止めていた。彼は毎日お酒を飲み、ひどい呼吸機能不全および心不全の病歴があった。ICU入室後すぐに、彼はデクスメデトミジンを10分間の負荷投与6μg/kg/hされ、ついで0.2から0.7μg/kg/h(目的の鎮静レベルまで滴定された)の速度で12時間注入された。注入開始から2時間後、患者は低血圧(血圧70/40mmHg)を示したが、これは昇圧剤の必要なく晶質注入(crystalloid infusion)後に解消された。患者は術後6時間で自発的通気を回復し、6時間と15分で抜管された。患者は12時間のデクスメデトミジン注入のあいだ、モルヒネまたはほかの鎮静剤を必要としなかった。彼は、注入が終了したのち苦痛のためにモルヒネを必要とした。【0049】3.68歳の男性患者が、三管病(three-vessel disease)のために冠動脈バイパス手術を受けたあとICUに入れられた。彼は、非インシュリン依存性糖尿病で、心房性細動および心筋梗塞の病歴があった。彼は1日に1杯ワインを飲む煙草を吸わない人であった。デクスメデトミジンが10分間の負荷投与6μg/kg/hで投与され、ついで0.2から0.3μg/kg/hで維持注入された。患者は、デクスメデトミジンを与えられている間、ミダゾラムまたはモルヒネを必要としなかった。彼のラムセイ鎮静スコアは、始めの1時間は6(ベースラインスコア、つまり患者は手術後完全に麻痺させられていた)で、ついで4に減少し、その後3に達した。血圧の一時的な上昇が術後連続1時間は生じた。患者は約6時間で抜管され、彼の血圧はデクスメデトミジンの注入が中止されたのち再び上昇した。【0050】4.アルコール乱用の病歴を有する55歳の男性患者が、頭と首の癌(head and neck cancer)のため手術を受けた。デクスメデトミジンの注入(0.5から0.7μg/kg/h)が、患者がICUに到着したときから開始された。彼は、注入のあいだ血行力学的安定性を維持していて、禁断症状を示さなかった。彼は、抜管後ただちにモルヒネ2mgとミダゾラム2mgとのみを必要とした。【0051】5.多量アルコール摂取歴を有する47歳の男性患者が、咽頭主要の摘出および空腸弁による再構築を受けた。外科的手術は、患者が300mlの血液を失い、6単位の血液の輸血を必要としたあいだ10時間続いた。ICUにおいて、デクスメデトミジンが10分間、負荷投与6μg/kg/hで投与され、ついで35分間、維持投与0.4μg/kg/hで、20分間0.6μg/kg/hで、その後注入が続けられた間0.7μg/kg/hで注入された。患者は、デクスメデトミジンを与えられている間、穏やかで協力的なままで、彼のラムセイ鎮静スコアは2から3の間に容易に維持された。彼は、デクスメデトミジンの注入開始から46時間後にミダゾラム2mgが与えられ、66時間後にも再び与えられた。手術の性質と患者のアルコール消費歴を考慮すると、はじめの術後のモルヒネ要求はまったく限られたもの(24mg)であった。なお、必要とされたモルヒネ投与量はデクスメデトミジンの注入中止後76mgまで段階的に拡大した。【0052】6.「暴」飲歴の35歳の男性患者が、交通事故で両肺挫傷、いくつかに砕けた肋骨、および大きな骨盤骨折を受けた。彼は、6時間の彼の骨折した骨盤の修復手術のあいだ、平穏な全身麻酔をされた。失った血液は400mlで、セルセーバー(cell saver)で6単位の輸血を必要とした。患者には、手術中にモルヒネ70mgが与えられた。ICUにおいて、デクスメデトミジンが10分間、6μg/kg/hの負荷投与量で投与された。維持注入が0.4μg/kg/hの速度で開始され、最初の3時間のあいだは0.7μg/kg/hに増加された。患者のラムセイ鎮静スコアはおおよそ4に維持された。彼は平穏でくつろいでおり、モルヒネもミダゾラムも必要としなかった。患者は6時間で抜管するのに適当であった。しかしながら、それは午前2時であったので、翌朝まで機械的通気が継続されることが決定された。デクスメデトミジンの投与量は、注入の最後の約160分は0.3から0.5μg/kg/hのあいだで変化した。【0053】患者は目覚め、気がしっかりして、気管内チューブを取り去って欲しいと筆談で伝えることができた。説明書にしたがって、デクスメデトミジンの最大許容投与量に達したとき、および患者が気管内チューブの除去に騒ぎしつこく要求したときは、ミダゾラムの投与量(総計16mg)が投与された。彼の興奮にかかわらず、患者は苦痛のないまま、デクスメデトミジン投与時にはモルヒネは必要としなかった。抜管、およびデクスメデトミジン注入の中止ののち、患者はICUから退室する前にモルヒネを4mg必要とし、病室に戻ったのちの最初の数時間のあいだにモルヒネを50mg近く必要とした。さらなる無痛に対するこの要求は、反動効果というよりも苦痛に対する生理学的な応答と考えられる。【0054】7.60歳の男性アルコール中毒者(超音波での肝臓への脂肪負担(fatty charges on liver ultrasound)で1週間に35単位)が腹部大動脈瘤の修復を受けた。彼は40年の喫煙歴、高血圧、狭心症および肺繊維症をもっていた。手術は技術的に難しく、3時間かかった。失った血液は3100mlで、6単位の血液が輸血された。モルヒネ(30mg)が手術中投与された。患者はICUに到着したとき血行力学的に安定であった。デクスメデトミジンが、10分間、負荷投与量6μg/kg/hで開始され、ついで2時間まで0.7μg/kg/hで滴定された維持投与量0.4μg/kg/hで注入された。ラムセイ鎮静スコアはおおよそ4に維持された。モルヒネの要求は、ICUでの患者の最初の6時間はきわだって変動していた。【0055】 患者は目覚め、見当識のある状態で、ひどい苦痛を経験したことを伝えることができた。デクスメデトミジン投与量0.5μg/kg/hで約7時間、全移植片を取り去り、底部(the bottom)を後ろの腹部壁(posterior abdominal wall)から分解および離脱することが決定された。モルヒネの要求は、継続している出血のために段階的に増加し続けた。デクスメデトミジンのより速い注入速度の使用は、出血の結果である血行力学的不安定さの存在によって制限された。患者はその後手術室に戻った。折りよく、手術的介入は、患者がデクスメデトミジンを与えられているあいだに経験した飛躍的な苦痛を伝える患者の能力によって容易になった。【0056】8.患者は直腸摘出手術および結腸フィステル形成配置術を受けた。プロポフォールが麻酔導入のため用いられ、維持のために酸素/一酸化二窒素/イソフルレンが用いられた。さらに、レミフェンタニルが導入直後に開始され、患者がICUに到着後まで続けられた。プロポフォール注入(70mg)が、患者がICUに移送されたとき投与されていた。患者はICUに到着するまで起きていたが、ラムセイ鎮静スコアは1で、動揺して落ち着かなかった。プロポフォールおよびレミフェンタニルは、患者の到着後数分以内に止められた。患者の動揺を処理するために、たびたびのプロポフォール10mgの瞬時投与を必要とした。デクスメデトミジンの負荷投与量(0.4μg/kg/h)が、ICU到着後約25分にプロポフォール20mgと一緒に投与され、ついでデクスメデトミジン0.7μg/kg/hおよびプロポフォール4mg/kg/hが注入された。デクスメデトミジン注入の最初の20分間は、たびたびのモルヒネ投与量2mgを必要とした。患者のラムセイ鎮静スコアは継続的に、患者がスコア6で過剰鎮静されるまで増加した。ICU到着約2時間後、プロポフォール注入は2mg/kg/hに減少され、その後1mg/kg/hまで減少された。3時間でプロポフォールは中止され、デクスメデトミジンの注入が0.2μg/kg/hまで次第に減少された。さらなるプロポフォールまたはモルヒネは必要とされなかった。【0057】このケースは、ICU前に投与された鎮痛剤がその効果を失う前にデクスメデトミジンを投与することの重要性を説明している。これは、とくにレミフェンタニルのような非常に短い半減期を有する薬剤を使用するとき重要である。とくに手術中のレミフェンタニルによる効果は、その非常に速いオフセットのため、手術後の苦痛に早く気づき、それによって手術後の鎮痛剤に対する要求が増加することを示している。【0058】9.腎臓癌の60歳の男性患者が単純な3時間の根治腎摘出術(radical nephrectomy)を受けた。彼は重大な先の病歴はなかった。手術のあいだ、彼は安定した(balanced)麻酔剤を受けた。手術後、患者はくつろいでおり、呼吸器障害は起こさず、次の日ICUから解放された。デクスメデトミジンを受けているあいだ、彼のラムセイ鎮静スコアは3であった。彼には主要なガス交換の問題はなく、機械的通気、補助された自発的呼吸、抜管、および自発的呼吸のあいだPaCO2は安定であった。彼の呼吸パターンは本質的に手術直後の期間、補助された自発的呼吸および抜管後に変化しなかった。この患者の経験は、デクスメデトミジンの呼吸器障害のない効果の典型的な例である。【0059】 10.58歳の女性患者には二重冠動脈バイパス手術が予定された。彼女の過去の病歴は高血圧、狭心症、タイプII糖尿病を示した。彼女はICUに午後7:20に到着し、10分間にわたるデクスメデトミジン1μg/kgの瞬時投与を受け、ついで0.4〜0.7μg/kg/hで注入された。抜管は翌朝の午前7:50に行なわれ、デクスメデトミジンは午後1:40まで継続された。彼女は、平穏な術後の経過をたどった。デクスメデトミジンで挿管時は彼女のラムセイ鎮静スコアは4であった。彼女は穏やかで、容易に覚醒でき、よい見当識のある状態(well-oriented)を示した。彼女は、彼女の周囲(騒音、職員およびモニター機器)によりびっくりしなかった。抜管後デクスメデトミジン注入は、段々と0.3μg/kg/hまで減少され、彼女のラムセイ鎮静スコアは2と3のあいだで変動した。彼女は穏やかで協力的なままで、呼吸器障害は起こさなかった。彼女は、デクスメデトミジン注入のあいだは、さらなる鎮静剤を必要とせず、また鎮痛剤もほとんど必要としなかった。デクスメデトミジン注入の中止後、彼女は落ち着かず、快適でなく、ざわついた。彼女の不安なプロフィールは、投薬時と非投薬時でかなり異なっていた。質問をされると、彼女は、彼女のICU滞在の記憶を失っておらず、さらに苦痛または不愉快な思い出を示さなかった。【0060】 11.54歳の男性患者が4重(quadruple)冠状動脈バイパス手術を受けた。彼は35年の過剰アルコール飲酒歴をもつが、手術に先立ち6週間のあいだ消費量を減らしていた。アルコール中毒患者は、よくICUにおいて増加した不安および動揺レベルを示すが、この個人は、デクスメデトミジンを投与されているあいだ、すばらしい術後の経過をたどった。彼は、穏やかで静かで、さらによい見当識が保たれたままであった。デクスメデトミジンの注入は0.3と0.7μg/kg/hの間に維持され、さらなる鎮静薬は必要としなかった。彼は手術の日の夕方抜管されたが、デクスメデトミジンの注入は翌朝まで続けられた。質問をされるとすぐに、彼はICUでの滞在に非常に満足していると知らせた。【0061】 12.49歳の女性患者が、ロス手法による大動脈弁交換(replacement)手術を受けた。患者は手術の1週間前まで彼女の心臓の状態に気づいておらず、精神的に準備ができてなく、手術前の高度の不安を示した。ICUに到着してすぐ、彼女は10分間かけたデクスメデトミジン1μg/kgの瞬時投与を受け、ついでデクスメデトミジンの注入が0.2〜0.5μg/kg/hのあいだでされた。彼女は手術の日の夕方には抜管され、デクスメデトミジンは翌朝まで続けられた。彼女の術後経過のあいだ、彼女は少し忘れていたけれども、患者は穏やかで、怖れまたは不安をもたず、よい見当識が保たれた。彼女はすばらしく進歩し、ICU経験で非常に快適だった。【0062】13.患者は高血圧で、腎石症および「無症候性(silent)」左の腎臓を有する51歳の男性であった。彼は腎摘出を認められた。共存症は、裂孔ヘルニア、胃潰瘍および憩室、ならびに肝脂肪変性を含む。これらの異常以外は身体検査は正常であった。彼の手術経過および麻酔経過は平穏無事で、彼はベースラインラムセイ鎮静スコア4でICUに着いた。鎮静の目的レベルは、図2に示すように注入されたデクスメデトミジンの投与量をほとんど調節することなく達成された。患者は容易に目覚めさせられ、看護職員に彼の要求を伝えることができた。気管内チューブがあるにもかかわらず、彼は、外部からの刺激がないときは穏やかで眠っていた。患者はICU入室6時間後に抜管された。彼の苦痛に対してたびたびなされる評価とさらなる鎮痛薬を要求する機会とがあったにもかかわらず、彼は、研究期間6時間でモルヒネ硫酸塩を単一投与量(2mg)だけ要求した。彼の術後経過は、デクスメデトミジンの投与開始後14時間とデクスメデトミジン注入の中止後3時間近くとの、穏やかな高血圧期間以外は平穏無事なものであった。患者は晶質注入に応答し、医師によってその期間はモルヒネの効果およびおそらく軽い容量不足に起因すると考えられた。研究後、患者の唯一の苦情は傷口の痛みだった。会見時、患者は気管内チューブが不快であったが、もしもう一度その集中治療室に再入院したら、現入院期間に受けたのと同じ鎮静剤を要求するだろうと言った。【0063】 14.冠動脈バイパス手術を受けた42歳の男性患者が、ラムセイ鎮静スコア5(眠っている、光による眉間へのタップ(light glabellar tap)または大きな聴覚的刺激に緩慢な応答)でICUに到着した。デクスメデトミジンを負荷投与量6μg/kg/hで投与し、ついで投与量0.4μg/kg/hで維持注入した。患者のラムセイ鎮静スコアは、最初の半時間は6(眠っている、応答なし)であった。しかしながら、注入は急速にまた容易に滴定され、ICUにおける彼の残りの滞在期間は、スコア2(協力的、見当識が保たれている(oriented)、平静)または3(患者は命令に対して応答する)に到達および維持された。血行学的に不安定であるという証拠は観察されず、アヘン剤(opiate)は必要とされなかった。患者は6時間で抜管され、彼のICU静養の経過は平穏無事なものであった。彼は、抜管後穏やかな苦痛を経験した。その苦痛はモルヒネ2mgの単一注入で容易に制御された。【0064】 15.58歳の男性患者が大動脈狭窄症のため弁交換手術を受けた。ICUにおいて、彼はラムセイ鎮静スコア約3に達するように滴定されたデクスメデトミジンの注入を受けた。彼は見当識が保たれており、協力的であった。ある点で、患者が苦痛を経験し始めたので注入速度を増加させた。重要なことに、彼は痛みの緩和が必要なことを伝えることができ、投与量滴定が急速に彼の快適さを取り戻した。【0065】16.患者は62歳の男性であり、大動脈弁逆流、左心室肥大および拡張上行大動脈(dilated ascending aortic)でニューヨーク心臓協会のクラスIIIであった。彼は正常な冠状動脈造影図を有する動脈性高血圧および激しい狭心症(カナダII)であった。彼の手術前の投薬はプロプラノロールであった。患者は動脈弁の交換による適温心肺バイパス術およびベンタル法(Bentall procedure)を受けた。彼は無事に6時間の手術後ポンプから離され、術後は変力性(inotropic)の支持は受けなかった。ICU経過は平穏無事であった。血行力学的プロフィールは、低血圧または徐脈の期間なしでスムーズだった。患者はデクスメデトミジンの中止後血圧の増加を示したが、既存的高血圧として研究に参加していた。【0066】前述したケースは、デクスメデトミジン鎮静の重篤患者における有益性を説明している。ちょうどよく鎮静化されると、患者は生理学的に安定な方向に向かい、最小限の苦痛、不快および不安を経験した。人工呼吸器を放しているあいだ、および呼吸器障害を避けるため抜管後のあいだ鎮静薬を中止することが最近の慣習である。このような慣習はデクスメデトミジンでは必要ない。さらに、デクスメデトミジンは、苦痛の恐れを取り除くことによる治療的介入(たとえば、可動化または胸部理学療法)によって患者のコンプライアンスを増加させる。これは、単一の薬物によるそうそうたる目を見張るべき効果である。【0067】当業者らは、特定の実施態様が説明され記載されている一方、本発明の精神および範囲から離れないものであれば、様々な改変および変化をしてもよいということは理解するであろう。【0068】本発明のほかの実施態様は、本明細書に開示した本発明の詳細な説明および実施を考慮することにより、当業者らには明らかである。詳細な説明および実施例は、以下の請求項に示されている本発明の真実の範囲および精神の単なる例示とみなされるものとする。【図面の簡単な説明】【図1】 図1は、被験者における鎮静の評価のために開発されたラムセイスケールを示す図である。このシステムでは、眠れなさ(wakefulness)のレベルが、聴覚の刺激から強度の痛みをともなう刺激にわたり変動する刺激に対する応答の連続的減退にもとづいた1〜6のスケール(ラムセイ鎮静スコア)で記録される。【図2】 図2は、実施例3、ケース13に記載のIII期デクスメデトミジン研究からの投与期間を示す図である。点線はラムセイ鎮静スコアの変動を示し、実線はデクスメデトミジン投与量の適用を示す。 集中治療を受けている重篤患者の鎮静に使用する医薬品の製造における、デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩の使用であって、該患者が覚醒され、見当識が保たれる使用。 デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩が、本質的に唯一の活性薬剤または唯一の活性薬剤である請求項1記載の使用。 デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩が、1〜2ng/mlプラズマ濃度に達する量投与される請求項1または2記載の使用。 デクスメデトミジンまたはその薬学的に許容し得る塩が、静脈注射で投与される請求項3記載の使用。 デクスメデトミジンの負荷投与量および維持量が投与される請求項4記載の使用。 負荷投与量および維持量がヒトに投与される請求項5記載の使用。 デクスメデトミジンの負荷投与量が0.2〜2μg/kgである請求項6記載の使用。 負荷投与量が約10分で投与される請求項7記載の使用。 デクスメデトミジンの負荷投与量が1μg/kgである請求項8記載の使用。 デクスメデトミジンの維持量が0.1〜2.0μg/kg/hである請求項6記載の使用。 デクスメデトミジンの維持量が0.2〜0.7μg/kg/hである請求項10記載の使用。 デクスメデトミジンの維持量が0.4〜0.7μg/kg/hである請求項11記載の使用。


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