タイトル: | 特許公報(B2)_重合防止性組成物、重合防止剤、及び重合防止方法 |
出願番号: | 2000534521 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 7/20,C07C 11/20,C07C 239/08,C07F 9/02,C08F 2/40 |
浮田 啓三 小野寺 優子 JP 4238962 特許公報(B2) 20090109 2000534521 19990303 重合防止性組成物、重合防止剤、及び重合防止方法 日本ゼオン株式会社 000229117 浮田 啓三 小野寺 優子 JP 1998067872 19980303 JP 1998292987 19980930 20090318 C07C 7/20 20060101AFI20090226BHJP C07C 11/20 20060101ALI20090226BHJP C07C 239/08 20060101ALI20090226BHJP C07F 9/02 20060101ALI20090226BHJP C08F 2/40 20060101ALI20090226BHJP JPC07C7/20C07C11/20C07C239/08C07F9/02C08F2/40 C07C 7/20 C07C 11/20 C07C 239/08 C07F 9/02 C08F 2/40 CAplus(STN) REGISTRY(STN) JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開平10−147603(JP,A) 特開平09−316026(JP,A) 22 JP1999001017 19990303 WO1999044972 19990910 33 20050104 近藤 政克 技術の分野本発明は、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、α−オレフィンなどの単量体の重合防止技術に関し、さらに詳しくは、これらの単量体や単量体混合物、単量体を含有する炭化水素混合物などの製造、精製、貯蔵、輸送、調合、使用などの様々な作業段階において、好ましくない早期重合の発生を防ぐための重合防止性組成物、重合防止剤、及び重合防止方法に関する。背景技術共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、α−オレフィンなどの単量体は、その製造、精製、貯蔵、輸送、調合、使用などの様々な作業段階において、早すぎる重合を起こしやすい。早期重合が起こると、単量体の重合体による汚染、粘度の増加、ゲル化、反応性の喪失などが生じる。また、早期重合により、熱交換器、貯蔵容器、移動ライン、ポンプ、蒸留装置などが重合体により汚染され、洗浄の経費の増大、製造効率の低下、材料の損失などの問題が発生する。このような早期重合に関連する問題点について、共役ジエンの精製工程を例にとって、さらに具体的に説明する。共役ジエン、共役ジエンを含有する炭化水素混合物(例えば、C4炭化水素留分及びC5炭化水素留分)、共役ジエンを含有する不飽和オレフィン系炭化水素混合物(ガス及び液体分解操作の後のオレフィン系炭化水素化合物の回収工程での混合物)、共役ジエンを含有する単量体混合物(例えば、合成ゴム製造用の単量体混合物)などは、例えば、蒸留、抽出蒸留、抽出、向流抽出、水素処理、水素化精製、熱処理、その他の類似の処理、処理前の予熱、あるいは貯蔵、移送、加工などをする際に、共役ジエンの重合及び/または共役ジエンと他の共重合可能な不飽和化合物との共重合が起こりやすい。例えば、共役ジエンを含有する炭化水素混合物から、抽出蒸留を含む蒸留操作により、精製共役ジエンを分離回収する際に、重合反応が起こりやすく、溶媒可溶性ポリマーや架橋した溶媒不溶性ポリマーが生成する。溶媒可溶性ポリマーは、ゴム状ポリマーとも呼ばれ、抽出蒸留塔、蒸留塔、熱交換器、配管などの諸装置を汚す。架橋した溶媒不溶性ポリマーは、多孔質不溶性のポリマーであって、その外観からポップコーンポリマーと呼ばれている。このポップコーンポリマーは、共役ジエンの蒸気や液体の存在下に自己増殖し、装置を急速に詰まらせるだけではなく、除去及び制御が極めて困難であるため特に望ましくない。ポップコーンポリマーは、一旦生成すると、それを種(シード)として、いわば指数的に増殖する。ポップコーンポリマーは、強靭な架橋ポリマーであるため、既知の溶媒に不溶で、しかも加熱しても溶融しない。したがって、ポップコーンポリマーを除去するには、機械的手段によりクリーニングする以外に有効な除去法がない。クリーニングのためには、装置を一時停止して解体し、ポリマーの堆積物を機械的に除去する必要があり、手間がかかると共に、経済的な不利は免れない。また、機械的なクリーニングでは、ポップコーンポリマーを完全に除去することができないため、再稼働すると、装置中に残存する微量のポップコーンポリマーが種となって、再びポップコーンポリマーの増殖が始まる。共役ジエンを含有する炭化水素混合物を、抽出蒸留を含む蒸留操作に付して精製共役ジエンを製造する方法では、気相と液相との共存、適度の操作温度、高いモノマー純度、水分の混入、鉄鎖の存在など、重合反応が生じ易い条件が揃っている。したがって、従来より、各種重合禁止剤を使用する方法が提案されているが、それらの重合禁止効果が不充分なため、ゴム状ポリマーやポップコーンポリマーの生成を抑制することが困難で、装置の目詰まりを生じることがあった。重合禁止効果を高めるために、重合禁止剤を多量に用いると、タール状になり、エネルギーの無駄となったり、抽出蒸留の抽出効率が低下するといった問題が生じる。また、ガス及び液体分解操作の後、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、及びこれらの混合物などのオレフィン系炭化水素化合物を回収するプロセスでは、オレフィン系化合物やアセチレン系化合物の水素添加による変換、蒸留、または抽出などにより、各種オレフィン系炭化水素化合物の分離操作などの処理が行われる。これらの処理機器には、共役ジエン等の重合に起因すると推定される堆積物(着き垢)が生成しやすい。このような堆積物が過剰に蓄積すると、装置の熱効率や蒸留塔の分離効率を下げたり、配管詰まりを引き起こす。さらに、共役ジエンとスチレンなどのビニル芳香族化合物とを含む単量体混合物は、貯蔵中に重合する傾向を示すことが知られている。従来、共役ジエンを含有する石油留分の蒸留装置内での重合を防止するため、N,N−ジアルキルヒドロキシルアミンの存在下にC5炭化水素留分を蒸留する方法が提案されている(特開昭50−112304号公報)。しかし、N,N−ジアルキルヒドロキシルアミン単独では、重合防止効果が充分ではない。米国特許第3,371,124号公報には、SBRの製造工程から排出される少なくとも一種の共役ジエンを含有するモノマーの分別蒸留による回収系において、ポップコーンポリマーの生成を抑制するために、N,N−ジアルキルヒドロキシルアミンとそのシュウ酸塩〔ビス(ジエチルヒドロキシルアミン)オキサレート〕を重合禁止剤として使用する方法が提案されている。シュウ酸塩は、N,N−ジアルキルヒドロキシルアミンとシュウ酸とを反応させることにより得ることができる。しかしながら、シュウ酸は、抽出蒸留塔を腐食するという問題がある。シュウ酸塩単独では、重合防止効果が充分ではない。特開平4−189810号公報には、エステル部分にシクロヘキセニル基を有する(メタ)アクリレート混合物にエポキシ化剤を作用させて、当該シクロヘキセニル環の二重結合をエポキシ化するに当たって、熱重合を防ぐために、分子状酸素含有ガスと共に、〔A群〕ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェニル、フェノチアジン、ピペリジンなどと、〔B群〕リン酸、リン酸カリウムなどのリン含有化合物とを共存させる方法が開示されている。しかし、該公報にA群の代表例として示されているハイドロキノンと、B群のリン含有化合物との組み合わせを用いて、共役ジエンを含有する炭化水素混合物の抽出蒸留を行ったところ、充分な重合防止効果を得ることができないことが判明した。また、従来より、分子中に安定なNOラジカル(遊離ラジカル)をもつ化合物や、処理条件下で安定なNOラジカルをその場で生成する化合物を重合防止剤として使用することが提案されている(特開平4−26639号公報など)。しかしながら、これらの化合物を単独で使用したのでは、充分な共役ジエンの重合防止効果を得ることができない。このような早期重合の問題は、共役ジエンのみならず、その他の多数の単量体においても、様々な作業段階で起こりやすい。発明の開示本発明の目的は、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、α−オレフィンなどの単量体や単量体混合物、該単量体を含有する炭化水素混合物などの製造、精製、貯蔵、輸送、調合、使用などの様々な作業段階において、好ましくない早期重合の発生を防ぐための重合防止剤、並びに重合防止方法を提供することにある。また、本発明の目的は、前記単量体と重合防止剤とを含有する重合防止性組成物を提供することにある。特に、本発明の目的は、共役ジエン、共役ジエンを含有する炭化水素混合物、共役ジエンを含有する不飽和オレフィン系炭化水素混合物、共役ジエンを含有する単量体混合物などを処理、貯蔵などする際に、共役ジエンの(共)重合を高度の水準で防止するための新しい重合防止剤、重合防止方法、重合防止剤と共役ジエンとを含有する重合防止性組成物を提供することにある。本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、重合防止剤として、分子中にNOラジカル(NO・)をもつ化合物及びNOラジカルを形成可能な前駆体化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物とリン含有化合物とを組み合わせて使用することが、共役ジエンなどの各種単量体の早期重合を防止する上で、極めて有効であることを見いだした。本発明の重合防止剤は、例えば、共役ジエンを含有する炭化水素混合物から抽出蒸留を含む蒸留操作を行うことによって精製共役ジエンを分離生成するプロセスにおいて、蒸留工程に存在させると、ポップコーンポリマーやゴム状ポリマーの生成を顕著に抑制することができる。本発明の重合防止剤は、共役ジエンを多量に含有する炭化水素混合物などだけではなく、共役ジエンを微量に含む炭化水素混合物などにも極めて有効である。本発明の重合防止剤は、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、α−オレフィンなどの単量体の重合防止にも有効である。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。本発明によれば、分子中にNOラジカルをもつ化合物、及びNOラジカルを形成可能な前駆体化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(a)、リン含有化合物(b)、並びに、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、及びα−オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(c)を含有し、該化合物(a)とリン含有化合物(b)との重量比が1:10〜100:1である重合防止性組成物が提供される。また、本発明によれば、分子中にNOラジカルをもつ化合物、及びNOラジカルを形成可能な前駆体化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(a)と、リン含有化合物(b)とを含有し、該化合物(a)とリン含有化合物(b)との重量比が1:10〜100:1である、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、及びα−オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(c)の重合防止剤が提供される。さらに、本発明によれば、分子中にNOラジカルをもつ化合物、及びNOラジカルを形成可能な前駆体化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(a)とリン含有化合物(b)とを、該化合物(a)とリン含有化合物(b)との重量比1:10〜100:1で、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、及びα−オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(c)と共存させる重合防止方法が提供される。発明を実施するための最良の形態1.単量体本発明の重合防止技術は、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、及びα−オレフィンに適用することができる。共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。芳香族ビニルとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。エチレン性不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の重合防止剤は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物から抽出蒸留を含む蒸留操作を行うことによって共役ジエンを分離する精製共役ジエンの製造方法において、ポップコーンポリマーやゴム状ポリマーの生成を抑制するのに特に効果的である。共役ジエンについては、下記に詳述する。2.共役ジエン本発明において、共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどを挙げることができる。本発明の重合防止剤は、共役ジエンまたは共役ジエンを含有する混合物に好適である。共役ジエンを含有する混合物としては、共役ジエンを含有する炭化水素混合物、共役ジエンを含有する不飽和オレフィン系炭化水素混合物、共役ジエンを含有する単量体混合物などを挙げることができる。共役ジエンを含有する炭化水素混合物とは、少なくとも一種の共役ジエンを含有する各種炭化水素の混合物である。精製共役ジエンの分離生成の出発原料として使用する共役ジエンを含有する炭化水素混合物は、特に限定されないが、代表的なものとして、イソプレンを含有するC5炭化水素留分、1,3−ブタジエンを含有するC4炭化水素留分などの石油留分を挙げることができる。C5炭化水素留分は、炭化水素のスチームクラッキングやその他の高温処理によりエチレンを製造する際に副生する。C5炭化水素留分は、通常、25〜70℃の沸点範囲を持ち、飽和度の異なる各種のC5炭化水素が含まれており、さらに、ある種のC4炭化水素やC6炭化水素が含まれることもある。C5炭化水素留分には、一般に、n−ペンタン、イソペンタン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、トランス−2−ペンテン、シス−2−ペンテン、2−メチル−2−ブテン、イソプレン、トランス−1,3−ペンタジエン、シス−1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、2−ブチン、イソプロペニルアセチレン、イソプロピルアセチレン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどが含まれている。ナフサ分解油などのC4炭化水素留分には、一般に、プロパン、プロピレン、イソブテン、アレン、n−ブタン、イソブテン、1−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1,3−ブタジエン、メチルアセチレン、1,2−ブタジエン、ビニルアセチレンなどの各種炭化水素が含まれている。共役ジエンを含有する不飽和オレフィン系炭化水素混合物としては、ガス及び液体分解操作の後、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、及びこれらの混合物などのオレフィン系炭化水素化合物を回収するプロセスでの不飽和オレフィン系炭化水素混合物を挙げることができる。これらの不飽和オレフィン系炭化水素混合物から、水添、蒸留、抽出などの操作により、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンなどが分離回収される。共役ジエンを含有する単量体混合物としては、例えば、SBRなどの合成ゴム製造用の単量体混合物を挙げることができる。本発明の重合防止剤は、上記のもの以外にも、共役ジエンを含有する液体混合物に適用することができる。3.抽出蒸留本発明の重合防止剤は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物から抽出蒸留を含む蒸留操作を行うことにより共役ジエンを分離精製するプロセスにおいて、抽出蒸留工程におけるポップコーンポリマーやゴム状ポリマーなどの生成を抑制するのに特に好適である。そこで、以下、抽出蒸留について詳述する。抽出蒸留を含む蒸留操作としては、単独の抽出蒸留操作または複数の抽出蒸留操作の組み合わせだけでもよいが、多種の炭化水素を含有する炭化水素混合物を出発原料として使用する場合、抽出蒸留操作と沸点差を利用した蒸留操作(分別蒸留操作)とを組み合わせてもよい。抽出蒸留を含む蒸留操作としては、例えば、特開昭47−41323号公報に記載されているC5炭化水素混合物より高純度イソプレンを回収する方法を挙げることができる。より詳細に、該公報には、(1)原料のC5炭化水素混合物を重合禁止剤含有のN−アルキル置換低級脂肪酸アミド溶媒の存在下に抽出蒸留して、イソプレンより難溶解性の炭化水素を除去し、(2)次に、抽出されたイソプレン及びイソプレンより易溶解性の炭化水素を蒸留して、シクロペンタジエンの大部分及びイソプレンより高沸点の炭化水素を除去し、(3)さらに、得られた留分を前記溶媒の存在下に抽出蒸留して、残部のシクロペンタジエン、イソプロペニルアセチレン等の易溶解性炭化水素を除去し、(4)前記抽出蒸留に循環する前の溶媒を放散温度が140℃以下となる減圧下で放散処理する高純度イソプレンの回収方法が記載されている。該公報には、その回収方法のフロー図が示されており、本発明の説明上、参考のために援用する。1,3−ブタジエンを含有するC4炭化水素留分から、抽出蒸留を含む蒸留操作により精製1,3−ブタジエンを製造(回収)する方法としては、図1に示す方法を例示することができる。ただし、図1では、全蒸留工程を簡明に示すために、例えば、再沸器、凝縮器、熱交換器、冷却器、ポンプ、各蒸留塔での循環回路などが省略されている。図1に示すように、ガス化したC4炭化水素留分を管21から第1抽出蒸留塔Aの中段階に供給し、一方、N,N−ジメチルホルムアミドなどの抽出溶媒を管45から供給して、第1段目の抽出蒸留を行う。この第1段目の抽出蒸留では、1,3−ブタジエンより抽出溶媒に対する溶解度が小さな炭化水素(プロパン、プロピレン、イソブテン、アレン、n−ブタン、イソブテン、1−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテンなど)からなるラフィネートが、塔頂から管22を経て除去される。ラフィネートの主成分は、ブテン類である。ただし、図示していないが、塔頂からのガスは、凝縮器により凝縮され、一部の液は、還流により塔頂に戻される。第1蒸留塔内の圧力は、通常1〜15気圧、塔底温度は、通常100〜180℃である。抽出蒸留塔の段数は、適宜設定できるが、C4炭化水素留分を使用する場合には、通常100〜300段、多くの場合200段程度である。第1蒸留塔Aの塔底からは、1,3−ブタジエン及び1,3−ブタジエンよりも抽出溶媒に対する溶解度が大きな炭化水素(メチルアセチレン、1,2−ブタジエン、ビニルアセチレンなど)を含む抽出液が取り出され、管23を経てプレ放散塔Bの上部に供給される。プレ放散塔Bでは、炭化水素が部分的に溶媒から放散され、管24を経て、直接、第2蒸留塔Eに送られる。プレ放散塔Bの塔底液は、管25を経て第1放散塔Cの塔頂に供給され、炭化水素が溶媒から放散される。第1放散塔の塔底からの溶媒は、熱交換器で冷却され、第1抽出蒸留塔Aに循環される。第1放散塔の塔頂からの炭化水素の蒸気は、管26及び27を経て圧縮器Dに導かれ、そこで圧縮されてから、管28を経て第2抽出蒸留塔Eの塔底に供給される。プレ放散塔B及び第1放散塔Cは、塔内圧力が通常1〜2気圧で、塔底温度がその圧力における溶媒の沸点の条件で操作することができる。第2抽出蒸留塔Eには、主として1,3−ブタジエン及び1,3−ブタジエンより抽出溶媒に対する溶解度が大きな炭化水素が供給される。抽出溶媒が管37を経て第2抽出蒸留塔Eの塔頂より数段下の箇所に供給される。第2抽出蒸留塔の塔頂の蒸気は、微量の不純物を含む1,3−ブタジエンであり、凝縮器により還流され、残りの部分は、管29を経て第1分別蒸留塔Hに送られる。第2抽出蒸留塔Eの塔底の主として溶媒からなる液は、最初に管33を経てブタジエン回収塔Fに送られ、次いで、管34を経て第2放散塔Gに送られ、そこで残りの炭化水素が溶媒から放散される。第2放散塔Gの塔底からの溶媒は、熱交換により冷却され、管36を経て第1抽出蒸留塔A及び第2抽出蒸留塔Eに戻される。第放散塔Gの塔頂の蒸気は、凝縮器により還流され、凝縮されないガスは、管35から燃料ガス系へと排出される。第2抽出蒸留塔及び第2放散塔の操作条件は、それぞれ第1抽出蒸留塔及び第1放散塔の操作条件と同様である。2段階の抽出蒸留によっても、いまだ少量の不純物が1,3−ブタジエン留分中に存在するので、これらの不純物を分別蒸留により除去する。第1分別蒸留塔Hでは、1,3−ブタジエンより低沸点の不純物が除去される。第1分別蒸留塔Hの塔頂の蒸気は、部分的に凝縮されて還流させられ、そして、残部は、燃料ガス系に送られる。第1分別蒸留塔Hの塔底の流れは、管30を経て第2分別蒸留塔Iに送られる。第2分別蒸留塔Iの蒸留物は、管31を経て1,3−ブタジエン製品として供給される。第2分別蒸留塔Iの塔底の流れは、廃液とされる。各分別蒸留塔の操作条件は、塔内圧力が1〜15気圧で、塔内温度がその圧力における沸点で操作することができる。蒸留塔の段数は、適宜設定できるが、C4炭化水素留分を使用する場合、通常50〜200段、多くの場合100段程度である。抽出溶媒は、溶媒精製塔Jに送られ、水洗されて精製された溶媒は、管44を経て抽出蒸留塔に還流され、水及び廃液は、管40を経て、水は管41から排出され、廃液は管43から排出される。このように、C5炭化水素留分及びC4炭化水素留分から共役ジエンを分離・回収するには、▲1▼難溶解性炭化水素の除去と易溶解性炭化水素の除去を目的とする2段階の抽出蒸留工程、及び▲2▼2段階の抽出蒸溜工程の間または最終工程として、通常2段階の沸点差を利用した分別蒸留工程とを適宜組み合わせた蒸留工程が採用されている。抽出溶媒としては、共役ジエンを溶解抽出できる溶媒であって、アミド化合物、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、N−ホルミルモルホリンなどの共役ジエンの抽出蒸留に関する技術分野で一般に使用されている各種溶媒が使用される。これらの抽出溶媒の中でも、アミド化合物が好ましい。アミド化合物としては、例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−クロロアセトアミド、N−ブロモアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、バレルアミド、イソバレルアミド、ヘキサンアミド、ヘプタンアミド、オクタンアミド、デカンアミソ、アクリルアミド、クロロアセトアミド、ジクロロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、ピルボアミド、シアノアセトアミド、2−シアノ−2−ニトロアセトアミド、オキサミド、マロンアミド、スクシンアミド、アジポアミド、マルアミド、d−タルトラミド、N,N−ジメチルアセトン酢酸アミドなどを挙げることができる。これらの中でもN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が特に好ましい。上記以外の抽出溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、イソプレンサイクリックサルホン、アセトニトリル、アルコール、グリコール、N−メチロールダミン、N−エチルコハク酸イミド、N−メチルピロリドン、ヒドロキシエチルピロリドン、N−メチル−5−メチルピロリドン、2−ヘプテノン、モルホリン、N−ホルミルモルホリン、N−メチルモルホリン−3−オン、スルホラン、メチルカルビトール、テトラヒドロフラン、アニリン、N−メチルオキサゾリドン、N−メチルイミダゾール、N,N′−ジメチルイミダゾリン−2−オン、メチルシアノアセテート、エチルアセトアセテート、エチルアセテート、マロン酸ジメチルエステル、プロピレンカーボネート、メチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。抽出溶媒の使用割合は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物100重量部に対して、通常、100〜1,000重量部、好ましくは200〜800重量部である。抽出溶媒は、各抽出蒸留塔(カラム)の炭化水素混合物の供給位置よりも上段の位置から塔内に供給される。4.重合防止剤本発明では、共役ジエンの重合防止剤として、分子中にNOラジカルをもつ化合物、及びNOラジカルを形成可能な前駆体化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(a)と、リン含有化合物(b)との組み合わせからなる重合防止剤を使用する。化合物(a)化合物(a)としては、無機化合物及び有機化合物があり、具体的には、以下のような各種化合物を例示することができる。(1)式(I)で表されるN,N−ジアルキルヒドロキシルアミン(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の直鎖状、分岐状または環状アルキル基である。)アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜6である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロヘキシル基などが例示される。N,N−ジアルキルヒドロキシルアミンとしては、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)が好ましい。(2)特公昭60−237065号公報に開示されているような立体障害性アミンのニトロキシル化合物(分子中にNOラジカルをもつ化合物)このニトロキシル化合物(N−オキシルまたはニトロキサイドともいう)は、不対電子を有する遊離ラジカルであり、下記式(II)で表される。(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Tは、5若しくは6員環を形成するのに必要な有機の基を表す。)E1、E2、E3及びE4は、好ましくはメチル基である。ニトロキシル化合物としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、3−カルバモイル−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−1−オキシル、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ε−カプロラクタム、3−オキシル−2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザスピロ[5.1.11.2]ヘンエイコサン−21−オン、4−アザ−3,3−ジメチル−4−オキシル−1−オキサスピロ[4.5]デカンまたは2,4,4−トリメチル−2−フェニルオキサゾリジン−3−オキシルなどを挙げることができる。(3)特公昭60−237065号公報に開示されているような立体障害性アミンのニトロキシル化合物に対応するヒドロキシルアミン化合物該ヒドロキシルアミン化合物は、重合防止剤を添加した系中で、その場でNOラジカル(遊離ラジカル)を形成する前駆体化合物であり、下記式(III)で表される。(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Tは、5若しくは6員環を形成するのに必要な有機の基を表す。)E1、E2、E3及びE4は、好ましくはメチル基である。ヒドロキシルアミン化合物としては、例えば、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジ(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートまたはN−(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ε−カプロラクタムなどを挙げることができる。(4)特公平4−26639号公報に開示されているような安定な遊離ラジカルをもつ窒素酸化物、その場で安定な遊離ラジカルを形成する前駆体化合物など安定な遊離ラジカル(通常の分光学的方法による静的な系において検定され得るだけ永く存在する遊離のラジカル;半減期が通常1年以上)をもつ窒素酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルニトロオキシド、ピペリジニル−1−オキシ化合物、ピロリジン−1−オキシ化合物、ピロリン−1−オキシ化合物などが挙げられる。前記ピペリジニル−1−オキシ化合物としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−1−オキシ、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−1−オキシ、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−1−オキシなどが挙げられる。その場で安定な遊離ラジカルを形成する前駆体化合物としては、例えば、ニトロン、ニトロソ、チオケトン、ベンゾキノン、ヒドロキシルアミンなどが挙げられる。また、ニトロソフェニルヒドロキシルアミン及びそのアンモニウム塩などが挙げられる。(5)米国特許第3,371,124号や特公昭41−17458号公報に開示されているN,N−ジ−低級アルキルヒドロキシルアミンと有機酸との反応物このような反応物としては、例えば、前述のN,N−ジアルキルヒドロキシルアミンのシュウ酸塩〔ビス(ジエチルヒドロキシルアミン)オキサレート〕、特公昭41−17458号公報に記載されているオキシ酸またはポリカルボン酸のN,N−ジ−低級アルキルヒドロキシルアミン塩を挙げることができる。N,N−ジ−低級アルキルヒドロキシルアミンの低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基などが挙げられる。有機酸としては、シュウ酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸などが挙げられる。N,N−ジ−低級アルキルヒドロキシルアミン塩の具体例としては、ジエチルヒドロキシルアンモニウムクエン酸塩、ビス(ジエチルヒドロキシルアンモニウム)酒石酸塩、ビス(ジエチルヒドロキシルアンモニウム)アジピン酸塩、ビス−ジブチル−ヒドロキシルアミンセバシン酸塩などを挙げることができる。(6)特開平4−233905号公報に開示されているN−ヒドロカルビルオキシ置換したヒンダートアミン化合物;特開平4−233906号公報に開示されているフェノチアジンなとの複素環式化合物、及び第1、第2若しくは第3ヒドロキシルアミン化合物;特開平4−233907号公報に開示されているN−オキシカルバモイル置換したヒンダートアミン化合物;特開平4−288302号公報に開示されているN−(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カプロラクタム、ビス(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルベンゾエート、1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルアクリレートなどのN−OH化合物を使用することができる。これらの化合物の代表的なものとしては、式(IV)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)及び(V)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)で表される各化合物を挙げることができる。これらの式において、E1、E2、E3及びE4は、メチル基であることが好ましい。Xとしては、−COO−(CH2)n−COO−(n=1〜20)などの2価の有機基が好ましい。このような化合物の好ましいものとしては、下記式(VI)で表されるビス(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートを挙げることができる。(7)亜硝酸塩亜硝酸ナトリウム(NaNO2)などの亜硝酸塩は、重合防止剤を添加した系中で、その場でNOラジカルを形成する前駆体の無機化合物である。亜硝酸ナトリウムは、後記するリン酸2水素ナトリウムなどの無機のリン含有化合物や、リン酸エステル系界面活性剤、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどと併用すると、特に有効である。なお、上記に示した化合物の内、化合物(1)・(6)は、互いに一部重複している場合がある。また、上記化合物の多くは、各種モノマーの早期重合防止剤などとして公知のものである。しかしながら、本発明者らの検討結果によれば、これらの化合物は、共役ジエンなどの各種単量体の重合防止剤としては、充分ではないことが判明している。本発明では、前記の如き化合物(a)と、リン含有化合物(b)と併用する点に特徴を有する。リン含有化合物(b)リン含有化合物(b)としては、特に限定されないが、例えば、▲1▼リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ジホスホン酸、次リン酸、二リン酸、トリポリリン酸、及びメタリン酸からなる群より選ばれるリン酸化合物、▲2▼リン酸化合物のエステル化物、▲3▼リン酸化合物のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、▲4▼リン酸化合物にエステル結合及びアルカリ金属塩結合またはアンモニウム塩結合を導入した化合物、▲5▼ホスフィン化合物、及び▲6▼ヘキサアルキルホスホラストリアミドなどが挙げられる。より具体的に、リン含有化合物としては、以下のような化合物を例示することができる。<リン酸化合物>(1)リン酸(2)ホスホン酸(亜リン酸)ホスホン酸は、P−H結合を有する酸化数が3のリンの二塩基酸(左式)である。互換異性体(右式)の存在も考えられている。(3)ホスフィン酸(次亜リン酸)ホスフィン酸は、酸化数1のリンの一塩基酸である(左式)。互換異性体(右式)の存在も考えられている。(4)ジホスホン酸(二亜リン酸)(5)次リン酸(6)ピロリン酸(二リン酸)(7)トリポリリン酸(三リン酸)H5P3O10 (7)(8)メタリン酸(HPO3)n (8)<リン酸化合物のエステル化物>(1)リン酸二水素アルキルエステルRとしては、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基などの炭化水素基のみならず、例えば、アルキルフェニル基、ポリエチレンオキシド基、アルキルフェニルポリエチレンオキシド基などの疎水性基も含まれる。この点は、以下の化合物においても同様である。(2)リン酸水素ジアルキルエステル(3)リン酸トリアルキルエステル上記以外に、例えば、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸トリエチル、ホスホン酸トリイソプロピル、ホスホン酸トリフェニルなどのホスホン酸エステル;メタリン酸エステルなどの各種リン酸化合物のエステルがある。ホスホン酸エステルは、下記式(12)〜(14)で表されるリン含有化合物である。HP(O)(OH)(OR) (12)HP(O)(OR)2 (13)P(OR)3 (14)リン酸化合物のエステル化物の具体例としては、例えば、式(15)で表されるトリフェニルホスフェート、式(16)(C9H19−C6H4−O)P (16)で表されるトリス(ノニルフェニル)ホスファイトが挙げられる。疎水基をもつリン酸化合物のエステル化物としては、各種リン酸エステル系界面活性剤を挙げることができ、それらの中でも、一般に防錆剤として用いられているリン酸エステル系界面活性剤が、ポップコーンポリマーやゴム状ポリマーの抑制効果と防錆効果とを合わせもつため、特に好ましい。このようなリン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、式(17)〔式中、R1は、炭素原子数が通常7〜18、多くの場合8〜9のアルキル基、nは、平均付加モル数であり、通常1〜18、多くの場合2〜8である。〕で表されるリン酸二水素アルキルエステル、式(18)〔式中、R1は、炭素原子数が通常7〜18、多くの場合8〜9のアルキル基、nは、平均付加モル数であり、通常1〜18、多くの場合2〜8である。〕で表されるリン酸水素ジアルキルエステル、式(19)〔式中、R1は、炭素原子数が通常7〜18、多くの場合8〜9のアルキル基、nは、平均付加モル数であり、通常1〜18、多くの場合2〜6である。mは、1〜3の整数である。〕で表されるリン酸エステルなどが挙げられる。より具体的に、リン酸エステル系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルホスフェートのごとき、式(20)で表されるリン酸エステル混合物(例えば、花王製、ラテムルP−909)、式(21)〔式中、nは、2〜6である。〕で表されるリン酸トリアルキルエステル(例えば、花王製、ペレックスRP)などが挙げられる。<リン酸化合物のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩>(1)リン酸第一塩式中、Mは、Na、Kなどのアルカリ金属、またはアンモニウム基である。以下の式でも同様である。(2)リン酸第二塩(3)リン酸第三塩リン酸第二塩の具体例としては、例えば、式(25)で表されるリン酸二水素ナトリウム(リン酸2水素Na)が挙げられる。上記以外の各種リン酸化合物のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩も使用することができる。また、同一のリン酸化合物に、アルカリ金属とアンモニウム基が結合した混合塩も使用することができる。その他のリン酸化合物のアルカリ金属塩の具体例としては、例えば、式(26)(式中、nは、通常3〜16であり、n=6の場合、ヘキサメタリン酸ナトリウムである。)で表されるメタリン酸ナトリウム、式(27)で表されるトリポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、リン酸化合物のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩としては、リン酸カリウム、リン酸水素アンモニウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。<リン酸化合物にエステル結合及びアルカリ金属塩結合またはアンモニウム塩結合を導入した化合物>(1)ジアルキルリン酸塩式中、Rとしては、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、前述の如き疎水基なとがあり、Mとしては、アルカリ金属、アンモニウム基がある。以下の式でも同様である。(2)モノアルキルリン酸二塩これらの化合物の具体例としては、例えば、式(30)で表されるモノアルキルリン酸二カリウム塩、式(31)で表されるジアルキルリン酸カリウムなどが挙げられる。この化合物の具体例としては、ピロリン酸カリウム2−エチルヘキシルエステル、ピロリン酸ナトリウム2−エチルヘキシルエステルなども挙げられる。<ホスフィン化合物>ホスフィン化合物としては、例えば、式(32)(R)3P (32)で表されるトリフェニルホスフィン[(C6H6)3P]やトリエチルホスフィン[(C2H5)3P]などが挙げられる。<ヘキサアルキルホスホラストリアミド>リン含有化合物として、式(33)で表されるヘキサアルキルホスホラストリアミドを使用することができる。式中Rがメチル基の場合には、ヘキサメチルホスホラストリアミドである。本発明で使用するリン含有化合物としては、リン酸化合物、リン酸化合物のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ヘキサメチルホスホラストリアミドが好ましく、特にリン酸化合物、リン酸化合物のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が好ましい。本発明で重合防止剤として組み合わせて使用する化合物(a)及びリン含有化合物(b)は、いずれも安定で、炭化水素混合物や抽出溶媒に対する溶解性に優れ、多くの場合、液体であるため、取扱性が良好である。また、本発明の重合防止剤は、多くの場合、耐蝕性に優れており、装置の腐食し難いことに加えて、鉄錆によるポップコーンポリマーの生成をも抑制することができる。化合物(a)とリン含有化合物(b)との重量比は、1:10〜100:1、好ましくは1:1〜80:1、より好ましくは1:2〜70:1である。化合物(a)とリン含有化合物(b)との使用割合が、上記範囲外であると、両者の相乗効果を得ることが難しくなる。本発明の重合防止剤を使用する方法としては、共役ジエンを含有する炭化水素混合物から共役ジエンを分離精製するプロセスで使用する場合には、例えば、▲1▼抽出蒸留に供給する共役ジエンを含有する炭化水素混合物に添加する方法、▲2▼抽出溶媒に添加する方法、▲3▼抽出蒸留塔内で炭化水素混合物と抽出溶媒との混合物に添加する方法などがある。重合防止剤は、抽出蒸留塔(第1抽出蒸留塔)の抽出溶媒供給段よりも上段の抽出蒸留塔の側部、抽出蒸留塔塔頂部の凝縮器の入口または出口から、連続的に供給することが好ましい。また、重合防止剤は、必要に応じて、第2抽出蒸留塔、その他の分別蒸留塔にも供給することができる。供給法としては、重合防止剤を炭化水素混合物や抽出溶媒に所定量を溶解した溶液をスプレーしたり、滴下するなどの方法がある。本発明の重合防止剤は、単量体、単量体混合物、単量体を含有する炭化水素混合物などに添加して使用することができる。また、本発明の重合防止剤は、化合物(a)と化合物(b)を混合してから添加してもよいし、化合物(a)と化合物(b)とを別々に添加してもよい。本発明の重合防止剤は、早期重合を防止するに足る量で使用する。例えば、重合防止剤を共役ジエンの抽出蒸留による精製工程で使用する場合には、共役ジエンを含有する炭化水素混合物と抽出溶媒の合計重量に対して、通常0.1〜2,000ppm、好ましくは50〜1,000ppmである。抽出蒸留に際し、系中に酸素が多量に存在すると、凝縮器などに重合体が生成して付着し、装置を汚す。酸素の混入は避け難いので、例えば、抽出蒸留塔塔頂から出てくる気相中の酸素濃度が、通常1〜300ppm、好ましくは5〜200ppm、より好ましくは5〜100ppm程度となるように、酸素捕捉剤を抽出溶媒に添加するなどして調整することが好ましい。本発明の重合防止剤は、ガス及び液体分解操作の後、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、及びこれらの混合物などのオレフィン系炭化水素化合物を回収するプロセスにおいても、好適に使用することができる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、及びこれらの混合物から選ばれるオレフィン系化合物と、その他の不飽和オレフィン系炭化水素化合物とを含有する有機供給流れを、前記オレフィン系化合物の塔頂流れとその他の不飽和オレフィン系炭化水素化合物を含有する塔底流れとに分離させるプロセスにおいて、本発明の重合防止剤を有機供給流れの中に添加して使用する。本発明の重合防止剤の使用割合は、有機供給流れの重量を基準として、通常0.1〜2,000ppmの範囲から選ばれる。また、本発明の重合防止剤は、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、α−オレフィンなどの単量体や単量体混合物に添加して使用することができる。この場合も、重合防止剤の使用割合は、単量体または単量体混合物の重量を基準として、通常0.1〜2,000ppmの範囲から選ばれる。本発明の重合防止剤を使用するに当たり、本発明の目的を損なわない範囲内において、その他の重合禁止剤、連鎖移動剤、酸素捕捉剤などを使用することができる。本発明の重合防止剤は、両者を混合して使用することができるが、別々に前記の如き各種系中に添加することもできる。実施例以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について、より具体的に説明する。[実施例1]C5炭化水素留分を第1抽出蒸留塔でDMFを用いて抽出蒸留して得られた塔底からの流れ、すなわち、イソプレン及びイソプレンより溶媒に対する溶解度の高い物質(易溶解性炭化水素)を含む抽出液(More Soluble Extract)を「共役ジエンを含有する炭化水素混合物」として用いて、以下の実験を行った。この抽出液中のイソプレン濃度は、約15重量%である。100ミリリットルの耐圧ガラス容器に、抽出液20g、酸素を合計180ppm(60ppmを8時間ごとに3回添加)、鉄片(腐食性の評価のために使用)、及び重合禁止剤を仕込み、密閉した後、125℃で24時間反応させた。重合禁止剤中の化合物(a)としては、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)を用いた。リン含有化合物(b)としては、リン酸エステル系界面活性剤(防錆剤)である下記式(20)で表されるエステル混合物(花王製、ラテムルP−909)を用いた。重合禁止剤の各成分は、それぞれ480ppmを8時間ごとに3回添加した。反応後、内容物を濾紙で濾過し、濾紙上に残ったものを乾燥したものを「ポリマー」とし、濾液を乾燥して残ったものを「ハイボイル」とした。ともにイソプレンが重合した重合体であり、「ハイボイル」は、比較的重合度が低く、溶媒可溶性であるため、ゴム状ポリマーに相当する。ポリマー及びハイボイルの量を測定し、イソプレン量に対する重量割合(重量%)を算出した。また、鉄片の変化を観察し、腐食の程度を評価した。単位は、mg/dm2・day(100cm2当たり1日の腐食減量mg)である。結果を表1に示す。[比較例1〜4]重合禁止剤を表1に示す種類と添加量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。ただし、比較例2では、最初に2.5%のフルフラールを添加した。比較例3〜4では、各成分を8時間ごとに480ppmを3回添加した。結果を表1に示す。表1の結果から明らかなように、本発明の重合禁止剤を用いると(実施例1)、イソプレンの重合反応が抑制され、しかも腐食を起こすことがない。これに対して、重合禁止剤を添加しない場合(比較例1)には、重合体の生成が激しい。従来技術で提案されているフルフラールを用いた場合(比較例2)には、重合反応の抑制効果が小さいが、腐食性がごく僅かであるが認められた。DEHAを単独で用いた場合(比較例3)には、重合反応の抑制効果が不充分である。DEHAとシュウ酸を併用した場合(比較例4)には、重合反応の抑制効果は良好であるものの、腐食性があり、したがって、長期間にわたる抽出蒸留操作を行うと、鉄錆に起因するポップコーンポリマーの生成が予測される。[実施例2〜5、及び比較例5〜20]実施例1において、▲1▼粗イソプレンのDMF溶液に代えて、精製したイソプレンのDMF溶液(イソプレン濃度=15重量%)を使用し、▲2▼鉄片を加えることなく、▲3▼重合禁止剤を表2に示す種類と量比に変え、▲4▼酸素濃度を60ppmから180ppmに変え、さらに、▲5▼反応条件を125℃×24時間から100℃×3日間に変えたこと以外は、実施例1と同様にして実験を行った。ただし、各成分は、表2に示す量を最初に系に添加した。なお、比較例5は、酸素も重合禁止剤も添加しなかった。それ以外の実施例及び比較例では、酸素を180ppm添加した。結果を表2に示す。表2の結果から明らかなように、本発明の重合禁止剤を用いた場合(実施例2〜5)には、重合反応が顕著に抑制されることがわかる。これに対して、重合禁止剤を用いない場合(比較例5〜6)、従来の重合禁止剤や本発明の範囲外の組成の重合禁止剤を用いた場合(比較例7〜20)には、充分な重合反応の抑制効果を得ることができない。したがって、本発明の方法を実際の抽出蒸留を含む蒸留操作に付した場合、ポップコーンポリマーやゴム状ポリマーの抑制効果に優れることが理解できる。[実施例6]精製したイソプレン(純度99.3%)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液(イソプレン濃度=15重量%)20gを、100ミリリットルの耐圧ガラス容器に入れ、酸素を合計で180ppm(60ppmを8時間ごとに3回添加)、亜硝酸ナトリウムを90ppm、及びリン酸2水素ナトリウム90ppmを仕込み、密閉した後、100℃で3日間反応させた。酸素は、反応を加速させるために入れている。反応後、ポリマー及びハイボイルの割合を算出した。結果を表3に示す。[実施例7、及び比較例21〜24]重合防止剤の種類と添加量を表3に示すように変更したこと以外は、実施例6と同様に操作した。ただし、比較例21では、重合防止剤を添加せずに、酸素のみを加えた。また、比較例22〜24及び実施例7においても、実施例6と同様に、180ppmの酸素を添加した。結果を表3に示す。表3の結果から明らかなように、重合防止剤として化合物(a)とリン含有化合物(b)を併用することにより(実施例6〜7)、比較例21〜24の結果と比較して、イソプレンの重合が顕著に抑制されたことが分かる。[実施例8]精製したブタジエン(純度99.2%)のDMF溶液(ブタジエン濃度=15重量%)20gを100ミリリットルの耐圧ガラス容器に入れ、酸素を合計で180ppm(60ppmを8時間ごとに3回添加)、亜硝酸ナトリウムを120ppm、及びリン酸2水素ナトリウム120ppmを仕込み、密閉した後、100℃で3日間反応させた。反応後、実施例1と同様にポリマー及びハイボイルの量を測定し、ブタジエン量に対する割合(重量%)を算出した。結果を表4に示す。[比較例25〜26]重合防止剤の種類と添加量を表4に示すように変更したこと以外は、実施例8と同様に操作した。ただし、比較例25では、重合防止剤を添加せずに、酸素のみを加えた。また、比較例26においても、実施例8と同様に、180ppmの酸素を添加した。結果を表4に示す。表4の結果から明らかなように、重合防止剤として化合物(a)とリン含有化合物(b)を併用することにより(実施例8)、比較例25〜26の結果と比較して、ブタジエンの重合が顕著に抑制されたことが分かる。[実施例9]精製したブタジエン(純度99.2%)のDMF溶液(ブタジエン濃度=15重量%)20gを100ミリリットルの耐圧ガラス容器に入れ、酸素を合計で180ppm(60ppmを8時間ごとに3回添加)、亜硝酸ナトリウムを90ppm、及びリン酸2水素ナトリウム90ppmを仕込み、密閉した後、100℃で3日間反応させた。反応後、ポリマー及びハイボイルの割合を算出した。結果を表5に示す。[比較例27〜28]重合防止剤の種類と添加量を表5に示すように変更したこと以外は、実施例9と同様に操作した。ただし、比較例27では、重合防止剤を添加せずに、酸素のみを加えた。また、比較例28においても、実施例9と同様に、180ppmの酸素を添加した。結果を表5に示す。表5の結果から明らかなように、重合防止剤として化合物(a)とリン含有化合物(b)を併用することにより(実施例9)、これらの化合物の添加量が少ない場合であっても、比較例27〜28の結果と比較して、ブタジエンの重合が顕著に抑制されたことが分かる。[実施例10]精製したイソプレンのDMF溶液(イソプレン濃度=15重量%)20gを、100ミリリットルの耐圧ガラス容器に入れ、酸素を合計で180ppm(60ppmを8時間ごとに3回添加)、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを180ppm、及びリン酸2水素ナトリウム180ppmを仕込み、密閉した後、100℃で3日間反応させた。反応後、ポリマー及びハイボイルの割合を算出した。結果を表6に示す。[実施例11、及び比較例29〜32]重合防止剤の種類と添加量を表6に示すように変更したこと以外は、実施例10と同様に操作した。ただし、比較例29では、重合防止剤を添加せずに、酸素のみを加えた。また、比較例30〜32及び実施例11においても、実施例10と同様、180ppmの酸素を添加した。結果を表6に示す。表6の結果から明らかなように、重合防止剤として化合物(a)とリン含有化合物(b)を併用することにより(実施例10〜11)、比較例29〜32の結果と比較して、イソプレンの重合が顕著に抑制されたことが分かる。[実施例12]精製したイソプレンのDMF溶液(イソプレン濃度=15重量%)20gを、100ミリリットルの耐圧ガラス容器に入れ、酸素を合計で180ppm(60ppmを8時間ごとに3回添加)、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩を180ppm、及びリン酸2水素ナトリウム180ppmを仕込み、密閉した後、100℃で3日間反応させた。反応後、実施例1と同様にポリマー及びハイボイルの割合を算出した。結果を表7に示す。[比較例33〜35]重合防止剤の種類と添加量を表7に示すように変更したこと以外は、実施例12と同様に操作した。ただし、比較例33では、重合防止剤を添加せずに、酸素のみを加えた。また、比較例34〜35においても、実施例12と同様、180ppmの酸素を添加した。結果を表7に示す。表7の結果から明らかなように、重合防止剤として化合物(a)とリン含有化合物(b)を併用することにより(実施例12)、比較例33〜35の結果と比較して、イソプレンの重合が顕著に抑制されたことが分かる。[実施例13]精製したイソプレンのDMF溶液(イソプレン濃度=15重量%)20gを、100ミリリットルの耐圧ガラス容器に入れ、酸素を合計で180ppm(60ppmを8時間ごとに3回添加)、亜硝酸ナトリウム180ppm、及びリン酸2水素ナトリウム180ppmを仕込み、密閉した後、100℃で3日間反応させた。反応後、実施例1と同様にしてポリマー及びハイボイルの割合を算出した。結果を表8に示す。[実施例14]リン酸2水素ナトリウムに代えて、花王社製ペレックスRP(セスキポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルホスフェート)を用いたこと以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表8に示す。[実施例15]リン酸2水素ナトリウムに代えて、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトを用いたこと以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表8に示す。[比較例36]重合防止剤を使用せずに、酸素のみを添加したこと以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表8に示す。[比較例37]重合防止剤として亜硝酸ナトリウム180ppmを添加したこと以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表8に示す。表8の結果から明らかなように、重合防止剤として化合物(a)とリン含有化合物(b)を併用することにより(実施例13〜15)、比較例36〜37の結果と比較して、イソプレンの重合が顕著に抑制されたことが分かる。[実施例16]精製したイソプレンのDMF溶液(イソプレン濃度=15重量%)20gを、100ミリリットルの耐圧ガラス容器に入れ、酸素を合計で180ppm(60ppmを8時間ごとに3回添加)、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)180ppm、リン酸2水素ナトリウム3.6ppm、及び鉄片を仕込み、密閉した後、100℃で3日間反応させた。反応後、実施例1と同様にポリマー及びハイボイルの割合を算出した。結果を表9に示す。[実施例17〜21、及び比較例38〜46]重合禁止剤を表9に示す種類と添加量に変えたこと以外は、実施例16と同様にして反応を行った。結果を表9に示す。表9の結果から明らかなように、重合防止剤として化合物(a)とリン含有化合物(b)を併用することにより(実施例16〜21)、比較例38〜46の結果と比較して、イソプレンの重合が顕著に抑制されたことが分かる。また、各実施例では、鉄片の腐食が認められなかった。[実施例22]精製したイソプレンのDMF溶液(イソプレン濃度=15重量%)20gを、100ミリリットルの耐圧ガラス容器に入れ、酸素を合計で180ppm(60ppmを8時間ごとに3回添加)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(HTPO)180ppm、ヘキサメチルホスホラストリアミド180ppm、及び鉄片を仕込み、密閉した後、100℃で3日間反応させた。反応後、実施例1と同様にしてポリマー及びハイボイルの割合を算出した。結果を表10に示す。[実施例23〜25、及び比較例47〜49]重合禁止剤を表10に示す種類と添加量に変えたこと以外は、実施例22と同様にして反応を行った。結果を表10に示す。表10の結果から明らかなように、重合防止剤として、化合物(a)とリン含有化合物(b)を併用することにより(実施例22〜25)、比較例47〜49の結果と比較して、イソプレンの重合が顕著に抑制されたことが分かる。また、各実施例では、鉄片の腐食が認められなかった。[実施例26]スチレン500mlを1N苛性ソーダ200mlで2回洗浄し、次いで、200mlの水で2回洗浄した後、ゼオライト(東ソー(株)性、ゼオライトA−3)を投入して乾燥させた。ここで、洗浄及び乾燥は、それぞれスチレン等を含有する混合物をボトル中で2〜3分間振ることにより行った。上記で精製したスチレンを取り出してアンプルにチャージした。この際、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)50ppmとリン酸2水素Na50ppmを添加した。雰囲気は、空気雰囲気とした。120℃で1時間反応させた後、乾燥して、ハイボイルの量を測定した。結果を表11に示す。[実施例27〜28、及び比較例50〜53]重合禁止剤を表11に示す種類と添加量に変えたこと以外は、実施例26と同様にして反応を行った。結果を表11に示す。表11の結果から明らかなように、重合防止剤として,化合物(a)とリン含有化合物(b)を併用することにより(実施例26〜28)、比較例50〜53の結果と比較して、スチレンの重合が顕著に抑制されたことが分かる。[実施例29〜30、及び比較例54〜55]化合物(a)及びリン酸2水素Naの使用割合を表12に示すように変え、かつ、120℃で3時間反応させたこと以外は、実施例26と同様に行った。結果を表12に示す。表12の結果から明らかなように、重合防止剤として,化合物(a)とリン含有化合物(b)を併用することにより(実施例29〜30)、比較例54〜55の結果と比較して、スチレンの重合が顕著に抑制されたことが分かる。産業上の利用可能性本発明によれば、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、α−オレフィンなどの単量体や単量体混合物、該単量体を含有する炭化水素混合物などの製造、精製、貯蔵、輸送、調合、使用などの様々な作業段階において、好ましくない早期重合の発生を防ぐための重合防止剤、重合防止方法、並びに、単量体と重合防止剤を含有する重合防止性組成物が提供される。本発明の重合防止剤は、共役ジエンを含有する炭化水素混合物から抽出蒸留を含む蒸留操作を行うことによって共役ジエンを分離する精製共役ジエンの製造方法において、ポップコーンポリマーやゴム状ポリマーの生成を抑制するのに特に効果的である。【図面の簡単な説明】C4炭化水素留分から精製1,3−ブタジエンを得るための抽出蒸留工程を含む蒸留工程を示すフロー図である。 分子中にNOラジカルをもつ化合物、及びNOラジカルを形成可能な前駆体化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(a)、リン含有化合物(b)、並びに、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、及びα−オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(c)を含有し、該化合物(a)とリン含有化合物(b)との重量比が1:10〜100:1である重合防止性組成物。 化合物(a)が、N,N−ジアルキルヒドロキシルアミン、立体障害性ニトロキシル化合物、及び立体障害性ヒドロキシルアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項1記載の重合防止性組成物。 N,N−ジアルキルヒドロキシルアミンが、式(I)(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の直鎖状、分岐状または環状アルキル基である。)で表される化合物である請求項2記載の重合防止性組成物。 立体障害性ニトロキシル化合物が、式(II)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Tは、5若しくは6員環を形成するのに必要な有機の基を表す。)で表される化合物、または式(IV)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)で表される化合物である請求項2記載の重合防止性組成物。 立体障害性ヒドロキシルアミン化合物が、式(III)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Tは、5若しくは6員環を形成するのに必要な有機の基を表す。)で表される化合物、または式(V)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)で表される化合物である請求項2記載の重合防止性組成物。 リン含有化合物(b)が、リン酸化合物、リン酸化合物のエステル化物、リン酸化合物のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、リン酸化合物にエステル結合及びアルカリ金属塩結合またはアンモニウム塩結合を導入した化合物、ホスフィン化合物、及びヘキサアルキルホスホラストリアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の重合防止性組成物。 単量体(c)が、共役ジエンである請求項1記載の重合防止性組成物。 分子中にNOラジカルをもつ化合物、及びNOラジカルを形成可能な前駆体化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(a)と、リン含有化合物(b)とを含有し、該化合物(a)とリン含有化合物(b)との重量比が1:10〜100:1である、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、及びα−オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(c)の重合防止剤。 化合物(a)が、N,N−ジアルキルヒドロキシルアミン、立体障害性ニトロキシル化合物、及び立体障害性ヒドロキシルアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項8記載の重合防止剤。 N,N−ジアルキルヒドロキシルアミンが、式(I)(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の直鎖状、分岐状または環状アルキル基である。)で表される化合物である請求項9記載の重合防止剤。 立体障害性ニトロキシル化合物が、式(II)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Tは、5若しくは6員環を形成するのに必要な有機の基を表す。)で表される化合物、または式(IV)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)で表される化合物である請求項9記載の重合防止剤。 立体障害性ヒドロキシルアミン化合物が、式(III)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Tは、5若しくは6員環を形成するのに必要な有機の基を表す。)で表される化合物、または式(V)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)で表される化合物である請求項9記載の重合防止剤。 リン含有化合物(b)が、リン酸化合物、リン酸化合物のエステル化物、リン酸化合物のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、リン酸化合物にエステル結合及びアルカリ金属塩結合またはアンモニウム塩結合を導入した化合物、ホスフィン化合物、及びヘキサアルキルホスホラストリアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項8記載の重合防止剤。 単量体(c)が、共役ジエンである請求項8記載の重合防止剤。 分子中にNOラジカルをもつ化合物、及びNOラジカルを形成可能な前駆体化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(a)とリン含有化合物(b)とを、該化合物(a)とリン含有化合物(b)との重量比1:10〜100:1で、共役ジエン、芳香族ビニル、エチレン性不飽和ニトリル、及びα−オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(c)と共存させる重合防止方法。 化合物(a)が、N,N−ジアルキルヒドロキシルアミン、立体障害性ニトロキシル化合物、及び立体障害性ヒドロキシルアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項15記載の重合防止方法。 N,N−ジアルキルヒドロキシルアミンが、式(I)(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の直鎖状、分岐状または環状アルキル基である。)で表される化合物である請求項16記載の重合防止方法。 立体障害性ニトロキシル化合物が、式(II)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Tは、5若しくは6員環を形成するのに必要な有機の基を表す。)で表される化合物、または式(IV)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)で表される化合物である請求項16記載の重合防止方法。 立体障害性ヒドロキシルアミン化合物が、式(III)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Tは、5若しくは6員環を形成するのに必要な有機の基を表す。)で表される化合物、または式(V)(式中、窒素原子は、2個の4置換炭素原子と直接結合し、E1、E2、E3及びE4は、各々独立に有機の基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)で表される化合物である請求項16記載の重合防止方法。 リン含有化合物(b)が、リン酸化合物、リン酸化合物のエステル化物、リン酸化合物のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、リン酸化合物にエステル結合及びアルカリ金属塩結合またはアンモニウム塩結合を導入した化合物、ホスフィン化合物、及びヘキサアルキルホスホラストリアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項15記載の重合防止方法。 単量体(c)が、共役ジエンである請求項15記載の重合防止方法。 共役ジエンを含有する炭化水素混合物から抽出蒸留を含む蒸留操作を行うことによって共役ジエンを分離する精製共役ジエンの精製方法において、化合物(a)とリン含有化合物(b)とを共役ジエンと共存させる請求項15記載の重合防止方法。