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タイトル:特許公報(B2)_改変された毛様体神経栄養因子、それらを作製する方法およびそれらの使用方法
出願番号:2000533553
年次:2009
IPC分類:C12N 15/09,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,C12P 21/02,A61K 38/00,A61K 47/48,A61P 3/04,A61P 3/10,A61P 25/00,A61P 25/14,A61P 43/00,C07K 14/47,C07K 14/475


特許情報キャッシュ

ファンドル, ジェイムズ ピー. スタール, ネイル JP 4330796 特許公報(B2) 20090626 2000533553 19990226 改変された毛様体神経栄養因子、それらを作製する方法およびそれらの使用方法 リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド 597160510 REGENERON PHARMACEUTICALS, INC. 山本 秀策 100078282 ファンドル, ジェイムズ ピー. スタール, ネイル US 09/031,693 19980227 20090916 C12N 15/09 20060101AFI20090827BHJP C12N 1/15 20060101ALI20090827BHJP C12N 1/19 20060101ALI20090827BHJP C12N 1/21 20060101ALI20090827BHJP C12N 5/10 20060101ALI20090827BHJP C12P 21/02 20060101ALI20090827BHJP A61K 38/00 20060101ALI20090827BHJP A61K 47/48 20060101ALI20090827BHJP A61P 3/04 20060101ALI20090827BHJP A61P 3/10 20060101ALI20090827BHJP A61P 25/00 20060101ALI20090827BHJP A61P 25/14 20060101ALI20090827BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090827BHJP C07K 14/47 20060101ALI20090827BHJP C07K 14/475 20060101ALI20090827BHJP JPC12N15/00 AC12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 AC12P21/02 CA61K37/02A61K47/48A61P3/04A61P3/10A61P25/00A61P25/14A61P43/00 111C07K14/47C07K14/475 C12N 15/00-15/90 C07K 14/475 JSTPlus(JDreamII) BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed UniProt/GeneSeq 特表平07−506005(JP,A) 特開平08−157493(JP,A) 特表2000−507271(JP,A) Neurology., 46[5] (1996) p.1244-1249 Neurosci Res., 23 (1995) p.327-333 実験医学, 13[16] (1995) p.179-184 25 US1999004430 19990226 WO1999043813 19990902 2002504370 20020212 54 20060217 横田 倫子 【0001】本願は、米国特許出願09/031,693(1998年2月27日出願)の優先権を主張する。本願を通じて、種々の特許および刊行物が参照される。これらの特許および刊行物は、本明細書において参考としてその全体が本願に対して援用される。【0002】(発明の背景)本発明は、神経学的または他の疾患または障害の処置のために有用である治療用のCNTF関連ポリペプチドに関する。【0003】毛様体神経栄養因子(CNTF)は、ニワトリ胚毛様体神経節ニューロンのインビトロでの生存に必要とされるタンパク質である(Manthorpeら、1980、J.Neurochem.34、69−75)。毛様体神経節は、解剖学的には、眼窩内に位置し、外側直筋と視神経鞘との間に存在し;これは、動眼神経から副交感神経線維を受ける。動眼神経は、毛様体筋および瞳孔括約筋を神経支配する。【0004】過去十年間に亙って、多数の生物学的効果が、毛様体神経節ニューロンの生存を支持する能力に加えて、CNTFに帰せられている。CNTFは、ラット末梢視神経および脳における両能性の神経節前駆体細胞の分化を誘導すると考えられている(Hughesら、1988、Nature 335:70−73)。さらに、CNTFは、ニワトリ胚脊髄神経節感覚ニューロンの生存を促進することが観察されている(SkaperおよびVaron,1986、Brain Res.389:39−46)。さらに、CNTFは、運動ニューロン、海馬ニューロンおよびシナプス前脊髄ニューロンの生存および分化を支持する(Sendtnerら、1990、Nature 345:440−441;Ipら、1991、J.Neurosci.11:3124−3134;Blottnerら、1989、Neurosci.Lett.105:316−320)。【0005】骨格筋の神経支配が筋肉の構造および機能の維持において重要な役割を果たしていることは永く知られている。骨格筋は、CNTFの正の作用の標的であることが最近示されている。具体的には、CNTFは、骨格筋の脱神経誘導萎縮(湿重量および筋繊維の断面積の減少)および脱神経化した骨格筋の攣縮および強縮性緊張の減少の両方を防止する。Helgrenら、1994、Cell 76:493−504。このモデルにおいて、ヒトCNTFはまた、体重増加の遅延として現れる有害効果ももたらした。この有害効果はまた、ALSの処置のためにrHCNTFを用いた臨床試験においても観察されている。従って、脱神経後の筋肉重量および動物の体重の同時測定は、それぞれ、rHCNTFまたは他の化合物の処置に対する効力および有害反応の尺度として使用され得る。これらの測定値から得られた効力値の比を、治療指数(T.I.)と定義する。これを、本明細書において、TD25/ED50と表現し、その結果、T.I.の値が高ければ、その化合物は治療用量でより安全である。【0006】CNTFは、Masiakowskiら、1991、J.Neurosci.57:1003−1012および国際公開WO91/04316(1991年4月4日公開)(これらは、その全体が本明細書において参考として援用される。)において記載されるように、細菌発現系においてクローニングされ、そして合成されている。【0007】CNTFについてのレセプター(「CNTFRα」という)はクローニングされ、配列決定され、そして発現されている(Davisら、1991、Science 253:59−63を参照のこと)。白血病阻害因子(LIF)として知られるCNTFおよび造血因子は、IL−6シグナル伝達成分gp130および第二のβ成分(LIFRβとして知られる)を含む、共有されたシグナル伝達経路を介してニューロン細胞に作用する;従って、CNTF/CNTFレセプター複合体は、LIF応答性細胞、またはgp130およびLIFRβを有する他の細胞におけるシグナル伝達を開始し得る(Ipら、1992、Cell 69:1121−1132)。【0008】ヒトCNTFに加えて、対応するラット(Stoekliら、1989、Nature 342:920−923)およびウサギ(Linら、1989、J.Biol.Chem.265:8942−8947)の遺伝子がクローニングされており、そして200アミノ酸のタンパク質をコードすることが見出されており、これは、ヒト遺伝子と約80%の配列同一性を共有する。ヒトおよびラットの両方の組換えタンパク質が例外的に高レベル(総タンパク質の70%にもいたる)で発現され、そしてほぼ均質にまで精製されている。【0009】構造的および機能的な類似性にもかかわらず、組換えのヒトおよびラットのCNTFは、いくつかの点で相違する。培養物中のニワトリ胚毛様体ニューロンの生存および神経突起の伸長を支持するにおける組換えラットCNTFの生物学的活性は、組換えヒトCNTFのものよりも4倍良い(Masiakowskiら、1991、J.Neurochem.57:1003−1012)。さらに、ラットCNTFは、ヒトCNTFレセプターについて、ヒトCNTFよりも高い親和性を有する。【0010】大きさが同一であるヒトおよびラットのCNTFの物理的特性における驚くべき相違は、SDSゲルにおけるそれらの異なる移動性である。この挙動の相違は、変性状態においてでさえ維持される、2つの分子のうちの一つにおける異常な構造的特徴の存在を示唆する(Masiakowskiら、1991、J.Neurochem.57:1003−1012)。【0011】遺伝子工学による変異誘発は、組換えタンパク質の機能的ドメインの構造的機構を明らかにするために広汎に用いられている。いくつかの異なるアプローチが欠失または置換変異誘発を実施することについて文献において記載されている。最も首尾よいものは、アラニンスキャニング変異誘発(CunninghamおよびWells、1989、Science 244:1081−1085)および相同体スキャニング変異誘発(Cunninghamら、1989、Science 243:1330−1336)であるようである。これらのアプローチは、成長ホルモンのレセプター結合ドメインを同定し、そしてその同族レセプターに対して変更した結合特性を有するハイブリッドタンパク質を作製することを補助した。【0012】rHCNTFの物理学的、生化学的および薬理学的特性をよりよく理解するために、出願人は、それらの対応する組換えタンパク質の異なる生物学的および物理的特性に基づいて、ヒトおよびラットのCNTF遺伝子の合理的変異誘発を行った(Masiakowski,P.ら、1991、J.Neurochem.57:1003−1012を参照のこと)。出願人は、63位でのアミノ酸の性質が、sCNTFRαに対するヒトCNTFの親和性およびそのインビトロでの生物学的効力を大いに増強し得ることを見出した(Panayotatos,N.ら、J.Biol.Chem.1993、268:19000−19003;Panayotatos,N.ら、Biochemistry、1994、33:5813−5818)。【0013】同時係属中の米国特許出願第07/570,061(1990年8月20日出願、発明の名称「Ciliary Neurotrophic Factor」)および国際公開WO91/04316(1991年4月4日公開)(これらは、その全体が本明細書において参考として援用される。)に記載されるように、出願人が意図するCNTFの使用の一つは、ハンティングトン病(ハンティングトン舞踏病)の処置のためのCNTFの使用であった。ハンティングトン病(HD)は、中枢神経系の遺伝性変性障害である。HDの根底となる病理は、不随意運動および認知活動の統制の局面を担う脳の奥底の構造体である基底核の進行性で容赦ない変性である。HDにおける症状の発症は、一般に、20歳〜40歳の間の成人においてである。この疾患の特徴的な症状は、舞踏病および他の自発的運動、痴呆、ならびに精神医学的症状である。舞踏病性の運動は、短く、非自発的で、流れるような運動からなり、主に遠位端に影響を与える。患者は、しばしば、これらの運動を、その運動と自発的な行動とを混ぜ合わせることによって「繕う」傾向がある。しかし、HD患者はまた、失調(持続性、異常体位)、チック(「習慣性痙攣」)、運動失調(協調不能)および構語障害(どもりのある発話)を含む、種々の他の神経学的異常を示す。HDの痴呆は、原型的な「皮質下」痴呆と特徴付けられる。HDにおける痴呆の症状としては、精神機能の遅延および集中および連続的な課題における困難性が挙げられる。HD患者における行動障害は、多様であり、そして無関心および離脱症状のような人格の変化;動揺、衝動、妄想症、抑鬱、攻撃的行動、妄想、精神病などが挙げられ得る。この執拗な運動、認知および行動減退は、社会的および機能的な不能および、究極的には死をもたらす。【0014】HDは、常染色体で優性形質として遺伝する。米国の集団におけるその罹患率は、10万人あたり5〜10人であると見積もられ、米国の集団では、25,000人の総罹患数となる。しかし、症状の遅い発症に起因して、その集団において「危険あり」である無症候性の個体もまた多い。HD遺伝子を有する無症候性で危険ありの患者の罹患率は、おそらく、症候性の患者の罹患率の二倍である(W.KoroshetzおよびN.Wexler、私信)。従って、新しい治療を受けるに適格であるHD患者の総数は、約75,000人である。【0015】HDの病原性を担うと現在考えられている遺伝子は、第4染色体の短アームのテロメア末端に位置する。この遺伝子は、未知の機能の構造的に新規なタンパク質をコードし、そしてその遺伝子産物とHDの病原性との関係は現在のところ確定していないままである。【0016】HDにおける主要な解剖損傷は、尾状核および被核のいわゆる「中程度の棘っぽい」ニューロン(総称して、齧歯類において線条として知られる)の欠失からなる。これらのニューロンは、突出系を含み、それにより、尾状核/被核は、脳の基底核の別の場所にその出力核を突出させる。中程度の棘っぽいニューロンによって利用される主要な神経伝達物質は、γアミノ酪酸(GABA)であるが、多くのニューロンがエンケファリンまたはサブスタンスPのようなニューロペプチドもまた含有する。しかし、HDにおいて、GABAを神経伝達物質として利用せず、代わりにアセチルコリンおよびニューロペプチドであるソマトスタチンもしくはニューロペプチドYのいずれかを含有する介在ニューロンは、比較的HDにおいて損傷を受けていないことは明らかである。【0017】HDにおいてみられるものを模倣する病理学的および神経化学的変化は、グルタミン酸作用性アゴニスト薬物の線状体への注入によって模倣され得る。適切な条件下でのキノリン酸の注入は、γアミノ酪酸(GABA)をその神経伝達物質として利用する中程度の大きさの内因性線状体ニューロンの選択的涸渇を、大きなコリン作用性介在ニューロンに影響することなく、もたらす。【0018】HDにおける症状または神経保護的処置のいずれにも臨床試験で成功していない。しかし、疾患の進行および患者の機能をモニターし得る、有用な認証された評価装置および神経画像化技術が存在する。【0019】CNTFレセプター複合体は、3つのタンパク質を含む:特異性を決定するα成分(これは、CNTFに直接結合する)、ならびに2つのシグナル伝達β成分(LIFRβおよびgp130)(これ自体では、CNTFには結合し得ないが、CNTFに対する応答でシグナル伝達を開始するのに必要である)。CNTFR複合体のβ成分は、α成分よりもさらに広汎に身体に分布している。CNTFR複合体の3つの成分は、通常、細胞表面に会合していない;CNTFは、まずCNTFRαに結合し、次にgp130を連結し、そして最後にLIFRβを補充することによって、段階的に、完全なレセプター複合体の集合を誘発する。レセプター集合におけるこの最後の工程が生じる場合(β成分のヘテロ二量体化)、細胞内シグナル伝達が、β成分と会合した非レセプターチロシンキナーゼ(JAKキナーゼ)を活性化することによって開始される。JAKキナーゼは、互いにおよびまた、レセプターの細胞質ドメイン上のチロシン残基リン酸化することによって応答し、STATタンパク質のSrc相同性2ドメインについてのホスホチロシン結合(docking)部位を作製する。そのリン酸化後、結合したSTATタンパク質は、そのレセプターから脱離し、二量体化し、そして核へと移行し、そこで、それらはDNAを結合し、そして転写を活性化する(総説:Frank D.およびGreenberg,M.(1996)Perspectives on developmental neurobiology 4:3−18;Stahl,N.およびYancopoulos G.(1997)Growth factors and cytokines in health and disease 2B,777−809)。アキソカイン(axokine)は、物理的特性および化学特性が改善された変異体CNTF分子であり、これは、CNTFレセプターと相互作用し、そして活性化する能力を保持する(Panayotatos,N.ら、(1993)J.Biol.Chem.268:19000−19003)。【0020】ob遺伝子の産物であるレプチンは、脂肪細胞から分泌され、そして脳への末梢シグナルとして機能して食餌摂取およびエネルギー代謝を調節する(Zhang,Y.ら、(1994)Nature 372:425−431)。興味深いことに、一回膜貫通レセプターであるレプチンレセプター(OB−R)は、gp130と考慮すべき配列類似性を有する(Tartaglia,L.ら(1995)Cell 83:1263−1271)、およびCNTFのように、レプチンは、JAK/STAT経路を介してシグナル伝達する(Baumann,H.ら、(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8374−8378;Ghilardi,N.ら、(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:6231−6235)。CNTFおよびレプチンの両方の全身投与は、視床下部の満腹中枢においてtis−11の誘導を生じた(Gloaguen,I.ら(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:6456−6461)およびSTAT3(Vaisse,C.ら(1996)Nature Gen.14:95−97)。このことは、体重および摂食行動の調節におけるその役割を示す。実際、CNTFのヒトへの投与によって、食餌摂取が減少し、そして体重減少がもたらされた(Group、A.C.T.S.(1996)Neurology 46:1244−1249)。【0021】(発明の要旨)本発明の目的は、運動ニューロン疾患および筋肉変性疾患を含むがそれらに限定されない疾患または障害の処置のための新規CNTF関連栄養因子を提供することである。好ましい実施態様において、CNTFおよび関連分子は、ハンティングトン病の処置のために利用される。【0022】本発明のさらなる目的は、本明細書において具体的に記載したもののほかに、治療特性を改良されたCNTF関連因子を同定するための方法を提供することである。【0023】これらおよび他の目的は、本発明に従って達成される。ここで、ヒトCNTFタンパク質におけるアミノ酸置換は、その治療特性を増強する。1つの実施態様において、電気泳動の移動度における変化を使用して、潜在的に有用な改変CNTFタンパク質を最初にスクリーニングする。【0024】 好ましい実施態様において、ヒトCNTFにおける63位のアミノ酸グルタミンを、アルギニン(63Q→Rと称する)または生物学的活性が改良された改変CNTF分子を生じる別のアミノ酸に置換する。さらなる実施態様において、rHCNTF改変体は、63Q→R変異と3つの他の新規の特徴を組み合わせる:1)最後の13個のアミノ酸残基の欠失(ΔC13と称する)。これは、rHCNTFの可溶性の上昇をその活性を損なうことなく与える;2)17位の独特なシステイン残基の置換。これは、生理的緩衝液中で、生理的pHおよび温度条件下で、その活性に影響することなくrHCNTFの安定化をもたらす;または3)アミノ酸残基64Wの置換。これは、rHCNTFのインビトロでの生物学的活性を変化させ、そしてそのインビボでの治療指数に7倍の改良をもたらす。【0025】別の好ましい実施態様において、RG297(rHCNTF、17CA63QRΔC13)と称する分子は、63Q→R置換(これは、より大きな生物学的効力を与える)と、末端の13アミノ酸残基の欠失(これは、生理的条件下での可溶性の上昇を与える)および17CA置換(これは、特に37℃での生理的条件下での安定性を与える)とを組合せ、そして動物モデルにおけるrHCNTFよりも2〜3倍良い治療指数を示す。【0026】別の好ましい実施態様において、二重置換63QR64WAを有するRG242と称する分子が記載され、これは、生物学的効力の異なるスペクトルおよび7倍高い治療指数を生じる。【0027】別の好ましい実施態様において、二重置換63QRΔC13を有するRG290と称する分子が記載され、これは、生理的条件下でのより大きな可溶性を与える。【0028】(発明の詳細な説明)本発明は、ヒトまたは動物における神経学的疾患および障害を処置する方法に関する。これは、一部、組換えラットCNTFが、組換えヒトCNTFよりヒトCNTFレセプターにより効率的に結合するという最初の知見、引き続いて、ヒトCNTFをラットCNTFにより綿密に似せるアミノ酸置換が、改変されたCNTFのヒトCNTFレプセターへの結合の増強および付随する生物学的活性の増強を生じるという発見に基づく。【0029】好ましい実施態様において、ヒトCNTFタンパク質の単一のアミノ酸の変更は、このタンパク質の毛様体神経節の生存性および増殖ならびに他のニューロンの生存性および増殖を促進する能力の有意な増強を生じる。【0030】組換えヒトおよびラットCNTFは、同数のアミノ酸(199)および類似の質量(N末端メチオニンの除去後に、それぞれ、分子量22,798および22,721)を有する。しかし、還元SDS−PAGEゲル上では、組換えヒトCNTFは、分子量=27,500のタンパク質として移動する一方で、ラットCNTFは、予測した移動度で移動した。さらに、ヒトCNTFは、ニワトリ毛様体神経節(CG)ニューロンに対して、ラットCNTFよりも4倍低い生物学的活性を有し、そしてヒトタンパク質は、ラットCNTFよりはるかに低い効率で、細胞表面上のヒトまたはラットレセプターへの結合と競合する。【0031】上記の観察は、これらの相違の原因であるCNTF分子上の領域を同定するためのある方向性をもった取り組みを導いた。この方法は、遺伝子工学方法によって、対応するラットCNTF配列を有するヒトCNTF配列(および逆も同様)の一部分の交換を包含した。これを達成するために、2つのCNTF遺伝子に共通する制限部位およびそれらの対応する発現ベクターにおける独自の制限部位を利用した。必要な場合は、このような部位を、同じタンパク質配列をコードする領域において、2つの遺伝子のうちの一方または他方に操作した。このアプローチを用いて、発現ベクターを図1に示した改変タンパク質の各々について得た。少なくとも60%純粋になるまで個々のタンパク質を単離した後、ヒトおよびラットCNTFのタンパク質を比較して、それらの特性を決定した。【0032】ヒトおよびラットCNTFの電気泳動的移動度は有意に異なるので、各アミノ酸置換の効果を、タンパク質の移動度に対するこのような変化の効果を決定することによって最初にモニターした。本明細書中に記載されるように、電気泳動的移動度のデータは、ラットCNTFと同じ位置に移動する改変型ヒトCNTF分子の全てが、単一のアミノ酸置換Gln63→Arg(Q63→R)を有したことを示した。【0033】ラットCNTF分子の電気泳動的移動度と類似する電気泳動的移動度を示した改変型ヒトCNTFタンパク質を、生物学的活性およびレセプター結合について引き続き試験した。【0034】CNTFは、E8ニワトリ胚の解離した毛様体ニューロンの生存を助けるその能力によって特徴づけられる。この基準によって、精製された組換えラットCNTFは、ラット由来の天然のタンパク質と同じくらいに活性であるが、組換えヒトCNTFより4倍高く活性である[Masiakowskiら、1991、J.Neurosci.57:1003−1012および国際公開WO91/04316(1991年4月4日公開)]。同じアッセイを利用して、上記のように調製された改変した分子の生物学的活性を決定した。本明細書中で記載されるように、Q63→R置換を有する全ての改変型CNTF分子は、親ヒトCNTFタンパク質と比較して、毛様体神経節ニューロンの生存を助ける能力の増加を示した。このような結果は、電気泳動的移動度の変化と生物学的特性の増強との間の強い相関関係を示した。【0035】ヒトCNTFに対する改変の生物学的効果を測定することに加えて、各々の分子の潜在的な生物学的活性の指標もまた、CNTFレセプターに結合する分子の能力に対する各々の改変の効果を決定することによって獲得され得る。【0036】1つの実施態様において、改変型ヒトCNTFタンパク質の、ラット上頸神経節ニューロン(SCG)への結合に対するラットCNTFとの競合する能力を測定する。本明細書中に記載されるように、ヒトCNTFは、これらの細胞から125I−標識ラットCNTF結合と置換する際に、非標識ラットCNTFより、約90倍能力が低い。しかし、本明細書中に記載される改変型ヒトCNTFタンパク質のいくつかは、ラットタンパク質と置換する際に、ヒトCNTFより強力である。競合的結合能力のこのような増加を有する、本明細書中に記載されるこのような増強された競合的結合能力を有した分子の全ては、改変された電気泳動的移動度を示す分子であった。ここで、この分子は、ラットCNTFに類似した様式で移動した。【0037】別の実施態様において、細胞(例えば、MG87線維芽細胞)は、ヒトCNTFレセプターα成分を発現するように操作され、そしてこのような細胞は、ヒトレセプターに対する改変型タンパク質の結合能力をアッセイするために使用される。ヒトCNTFは、ヒトCNTFレセプターへの結合について125I標識したラットCNTFと競合して、ラットCNTFより約12倍能力が低い。本明細書中に記載されるいくつかの改変型ヒトCNTF分子(ヒトCNTFよりむしろラットCNTFに似ている電気泳動的移動度を有するそららの分子の全てを含む)は、ヒトCNTFレセプターを発現する細胞に対する125I−ラットCNTFの結合と競合して、ヒトCNTFよりより強力である。【0038】別の実施態様において、特定の増殖の能力の指標および網膜光受容体の変性を防ぐ他の因子を提供することにおいて実証される有用性を有する動物モデルを使用して、本発明に従う改変型CNTF分子の治療的特性を評価する。実施例4に記載されるように、hCNTF(Gln63→Arg)は、組換えヒトCNTFより10倍高い、網膜変性の光誘導損傷モデルにおける光受容体の変性を防ぐ能力を有する。【0039】従って、本発明に従えば、ヒトCNTFタンパク質の特性のアミノ酸置換は、ヒトCNTFレセプターに対して増強した結合を示す改変型ヒトCNTFタンパク質を生じるため、増強された治療特性を有すると予測される。【0040】本発明の実施に有用な改変型CNTF分子は、例えば、Masiakowskiら、1991、J.Neurosci.57:1003−1012および国際公開第WO91/04316号(1991年4月4日公開)に記載される原核生物発現系または真核生物発現系においてクローニングおよび発現することによって調製され得る。組換えニューロトロフィン遺伝子は、任意の数の方法を利用して発現および精製され得る。この因子をコードする遺伝子は、例えば、pCP110のような細菌発現ベクター(これに限定されない)へサブクローニングし得る。【0041】組換え因子は、引き続き、安定な、生物学的に活性なタンパク質の形成を可能にする任意の技術によって精製され得る。例えば、そして限定はされないが、この因子は、可溶性タンパク質または封入体としてのいずれかで細胞から回収され得る。ここから、この因子は、8Mグアニジン塩酸塩によって定量的に抽出され得、そして透析され得る。さらにこの因子を精製するために、従来のイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーまたはゲル濾過が使用され得る。【0042】本発明に従って、本明細書中に記載されるように生成された改変型CNTF分子またはそれらのハイブリッドまたは変異体を使用して、CNTFに応答性の細胞の、インビトロまたはインビボでの分化、増殖または生存を促進し得る。この細胞としては、CNTF/IL−6/LIFレセプターファミリーのレセプターを発現する細胞、または、例えば、Davisら、1992、Cell 69:1121−1132に記載されるように適切なシグナル伝達成分を発現する任意の細胞が挙げられる。あるいは、変異体またはハイブリッドは、細胞分化または生存をアンタゴナイズし得る。【0043】本発明を使用して、CNTFまたはCNTF/CNTFレセプター複合体に応答する任意の細胞の障害を処置し得る。本発明の好ましい実施態様において、CNTF/IL−6/LIFレセプターファミリーのメンバーを発現する細胞の障害は、これらの方法に従って処置され得る。このような障害の例としては、以下の細胞を含む障害が挙げられるが、これらに限定されない:白血病細胞、造血幹細胞、巨核球およびそれらの前駆体、DA1細胞、破骨細胞、骨芽細胞、肝細胞、脂肪細胞、腎臓上皮細胞、胚性幹細胞、腎臓メサンギウム細胞、T細胞、B細胞など。【0044】従って、本発明は、CNTF関連神経学的障害または疾患、分化障害または疾患、あるいは神経損傷に罹患している患者を、有効量の改変型CNTF、またはそのハイブリッドもしくは変異体で処置する方法を提供する。改変型CNTF分子を利用して、Masiakowskiらの国際公開第WO91/04316号(1991年4月4日公開)においてCNTFについて記載される障害または疾患、ならびにDavisらの国際公開第WO91/19009号(1991年12月12日公開)においてCNTF/CNTFR複合体について記載される障害または疾患を処置し得る(これらの両方が、本明細書中にその全体が参考として援用される)。【0045】このような疾患または障害としては、変性疾患(例えば、網膜変性)、脊髄、コリン作用性ニューロン、海馬ニューロンに関与する疾患または障害、あるいは運動ニューロンに関与する疾患または障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症または顔面神経の疾患および障害(例えば、ベル麻痺)が挙げられる。処置され得る他の疾患または障害としては、末梢神経障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンティングトン舞踏病(ハンティングトン病またはHD)または例えば、脱神経、慢性非活動、代謝ストレス、および栄養不良から、あるいは筋ジストロフィー症候群、先天性ミオパシー、筋の炎症性疾患、毒性のミオパシー、神経外傷、末梢神経障害、薬物もしくは毒素誘導性損傷、または運動神経障害のような状態から生じる筋萎縮症が挙げられる。【0046】1つの実施態様において、本明細書中に記載されるCNTFまたはCNTF関連分子は、ハンティングトン病を処置するために使用される。グルタミン酸レセプター媒介興奮毒性は、ハンティングトン病を含む多くの神経変性疾患または傷害においてある役割を果たすと仮説が立てられていた。ハンティングトン病の優性の神経病理学的特徴は、線条体介在ニューロンの実質的な損失がない、中間サイズのγアミノ酪酸作動性の、線条体出力ニューロンの大量の変性である(Acheson,A.およびR.Lindsay、1994、Seminars Neurosci.6:333−3410)。以下の実施例7において記載されるように、出願人は、動物モデルにおいて、CNTFおよび本明細書中に記載される改変体の両方を使用して研究を続けている。ここで、ハンティングトン病で観察された線条体出力ニューロンの優先的な損失、および生じた運動異常は、齧歯類または霊長類モデルで模倣される。この動物モデルにおいてNMDAグルタミン酸レセプターアゴニストであるキノリン酸が線条体に注射される(DiFiglia,M.Trends Neurosci.1990、13:286−289)。これらの研究において、CNTFおよびその改変体は、キノリン酸への曝露に対して防御を与えた。キノリン酸が損傷線条体の外観がHDで死んだ患者の線条体の外観と酷似していることは、キノリン酸が、HDの容赦のない、かつ比較的緩慢な進行と矛盾して、急性かつ重篤な病変を生成することを示唆する(この破壊的な神経学的障害の適切な動物モデルを構成する)。【0047】今日まで、組換えヒトCNTF(rHCNTF)を使用したヒト臨床治験は、このタンパク質の皮下投与を筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行を遅延させることにおいてその有効性を試験する研究に限定されていた。このようなrHCNTFの投与は、咳、食欲不振および体重減少を含む全身的な副作用に関連し、そして少なくとも1つの研究において、rHCNTFを受ける患者の80%を超える患者が中和抗体を発生させ、その有意性は不確定である。しかし、副作用および抗体形成を有する問題にもかかわらず、ALSの初期段階の患者亜群は、これらの患者が類似した疾患期間でのプラシーボ処置患者と比較して、肺機能の低減した割合を示した点において、rHCNTF投与から利点を得られたようである。【0048】出願人が行った、CSFおよびALS患者へrHCNTFの断続的な、区分分けした投与を用いた予備研究は、全身的な副作用および抗体形成の証拠がないことを実証した。このような研究は、標準的な技術を用いて一般的な感覚脱失下で移植した、CSFをサンプリングするためのサイドポートを伴った、Medtronicによって製造された注入ポンプ(SynchroMed Model 8615/シリーズDAA)の使用を含む(Pennら、1985、2:125−127)。このポンプをクモ膜下カテーテルに取り付け、その先端を蛍光透視法下でL1レベルで配置した。各週、48時間にわたって、1時間当たり1〜8μgのrHCNTFの投与を、4人のALS患者において1年までの期間、許容した。これらの患者は、全身的なrHCNTF投与でみられた範囲の有害な事象を経験しなかった。この患者群における副作用は、2名の患者の坐骨神経痛および1名の患者の頭痛から構成された。白血球およびタンパク質の上昇がCSFにおいてみられた。この研究において、rHCNTFは、クモ膜下腔へ注入したバクロフェンおよびモルヒネのような低分子薬物に類似した分布および薬物動態学的特性を示した。不運にも、rHCNTFは、連続的なCNS注入治療または局所的デポー投与のためにはあまりにも不安定である。なぜなら、その対形成していないシステイン残基によって共有結合ダイマーを形成し、これによって、凝集形成および沈降を導く傾向にあるからである。従って、中枢神経系に直接注射するために利用され得るCNTFの安定な調製物についての必要性が存在する。【0049】Aebischerらとの共同研究において(結果は未公開)、出願人は、rhCNTFを分泌する、カプセル化されたBHK細胞を10名のALS患者のクモ膜下腔へ移植した。6ng/mlまでの定常状態のCSF濃度を達成した。全ての患者が無力および疲労を訴えたが、体重減少、食欲不振および急性期応答タンパク質の活性化は観察されなかった。CSFプレオサイトーシスも白血球数の増加も、認められなかった。CNTFは、これらの患者の末梢血において検出され得ない。今日まで、有効性測定の結果はあまりに貧弱すぎて、有効性に関する結果を結論づけられなかった。ポンプ注入したrHCNTFでみられる応答と比較して、カプセル化された細胞の移植による、合成されたrHCNTFを受けた患者におけるhCNTFに対する炎症性応答の欠失は、rHCNTFのポンプ送達後にみられる変化が、この特定のタンパク質を取り囲む処方および安定性の問題に十分関連し得ることを示唆する。【0050】従って、CNTFの全身注射を用いて観察された副作用および抗体形成が、CNTFもしくはその改変体をCNSへ直接送達することによって避けられ得るという本出願人らの発見と合わせて、ハンティングトン病の当該分野で認識されたモデルにおける線条体ニューロンの細胞外毒素損傷についての保護剤として、CNTFおよびその改変体の有効性を実証する動物モデルデータに基づいて、本出願人は、ハンティングトン病を処理する有用な方法を発見した。従って、本出願人の発明は、CNTFまたはその改変体の、CNTFを分泌する移植細胞または細胞様小胞(例えば、リポソーム)を介するCNSへの直接送達を企図する。あるいは、本明細書中に記載されるCNTF改変体(これは、CNTFと比較して、改善された安定性および可溶性を有する)は、例えば、上記のCNSへの、浸透圧ポンプを介するCNTFの送達のための好ましい処方物を提供する。体温での溶液中のrHCNTFの不安定性は、クモ膜下腔または脳室内注入により慢性的に投与されるその能力を妨げるので、本明細書中に記載されるrHCNTFの改変体は、それらの改善された安定性、可溶性、および減少した抗原性を考慮すると、そのような使用のために好ましい。【0051】従って、本発明は、治療的適用において使用され得る改善された可溶性を有するCNTFの改変体を企図する。この適用において、例えば、浸透圧ポンプを介した注入が薬物送達のために用いられる。組換えヒトCNTF(rHCNTF)の可溶性は、生理学的緩衝液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、pH7.4(PBS))中では非常に制限されている。さらに、少なくともpH4.5〜8.0の範囲を超える可溶性は、温度およびインキュベーションの時間に強く依存する。5℃では、PBS中のrHCNTFの可溶性は、1mg/mlであり、そして溶液は数時間安定であるが、37℃では、その安定性は、2時間後にわずか0.1mg/mlであり、そして48時間後には0.05mg/mlである。この制限された可溶性および熱安定性は、生理学的緩衝液中のrHCNTFの安定な処方を妨害する。このような処方物は、CNSへの連続投与のために特に所望される。【0052】カルボキシル末端から最後の13アミノ酸残基を欠失するrHCNTF(rHCNTF,ΔC13は、RPN160またはRG160とも呼ばれる)は十分な生物学的活性を保持し、そして低温(5〜10℃)で少なくとも12mg/mlまで可溶性であることが発見された。しかし、このはるかに大きな可溶性にもかかわらず、rHCNTF,ΔC13は、0.1mg/mlほどの低濃度であっても37℃で数時間のインキュベーションの際に、PBS溶液にさらに不溶になる。【0053】 rHCNTFおよびrHCNTF,ΔC13の熱不安定性が、分子間ジスルフィド結合形成によって開始され、そしてタンパク質濃度および温度に強く依存した凝集の結果であることが決定された。ヒトCNTFの17位の単一のシステイン残基をアラニン残基で置換することによって、はるかにより大きな安定性を示し、かつPBS中37℃で少なくとも7日間インキュベートした後にそれらの生物学的活性を維持するタンパク質が得られた。この特性は、rHCNTF,63QR改変体において維持され、この改変体は、63位のグルタミン残基のアルギニンにへの置換に起因してより高い効力を有する。特定の例において、rHCNTF,17CA,63QR,ΔC13(RG297とも呼ばれる)は、63QR置換によって、rHCNTFよりも、より高い生物学的効力を示し、ΔC13欠失のためにより高い可溶性を示し、そして17CA置換のためにより高い安定性を示す。【0054】本発明は、本明細書中に記載するCNTFまたは改変体の治療的な有効量を用いる、HDを有する患者の処置を意図する。CNTFまたはその改変体の有効量は、疾患の進行の遅延を生じる量、または疾患と関連する副作用の減少を生じる量である。処置の効力は、処置を受けないコントロールと比較して、処置の効果を比較することによって測定され得る。HDの臨床経過および天然の経歴は、広範囲にわたって、フィールド研究において(Youngら、1996、Ann Neurol.20:296〜303;PenneyおよびYoung、1990、Movement Disorders 5:93〜99)、臨床的評価機器の開発において(ShoulsonおよびFahn、1979、Neurology 29:1〜3;Shoulsonら、1989、Quantification of Neurologic Deficit、TL Munsat(編)Butterworths 271〜284;Feiginら、1995、Movement Disorders 10:211〜214)、およびコンピューター化されたX線断層撮影法を使用する疾患の進行の放射線写真法の相関において(Terrenceら、1977、Neuroradiology 13:173〜175;Barrら、1978、Neurology 28:1196〜1200;Neophytidesら、1979、23:185〜191;Stoberら、1984、Neuroradiology 26:25〜28)、磁気共鳴画像法において(Graffonら、1992、Arch.Neurol.49:1161〜1167)、ならびにポジトロン放出断層撮影技術(Harrisら、1996、Arch.Neurol.53:316〜324)において、両方が特徴付けられてきた。【0055】ハンティングトン病の進行の臨床的な速度は、ShoulsonおよびFahn(1979、Neurology 29:1〜3)によって開発されたHD機能的容量スケール(HDFC)を使用して評価されてきた。十分に機能的な患者は、このスケールにおいて13のスコアを受け取る;0のスコアは、全体の不可能性を反映する。Shoulsonら、1989、Quantification of Neurologic Deficit,TL Munsat(編)Butterworths 271〜284。このスケールを用いる、患者の進行の平均速度は、約0.65単位/年である。Shoulsonら、1989、Quantification of Neurologic Deficit,TL Munsat(編)Butterworths 271〜284;Feiginら、1995、Movement Disorders 10:211〜214。このスケールが本当に直線である場合(試験されていない仮説)、この進行の速度は、患者におけるHDの症状の平均20年間の期間によく対応する。HDFCスコアは、おおざっぱには5の臨床的段階にグループ分けされ得る(Shoulsonら、1989、Quantification of Neurologic Deficit,TL Munsat(編)Butterworths 271〜284)。【0056】神経画像化研究は、神経的な損失の正味の病理学的結果、および基本的な神経節構造の結果的な萎縮に集中してきた。HDが進行するにつれて、尾状核は縮み、側方の室に、特徴的な「ボックスカー(box car)」の外見を与える。尾状核萎縮の程度は、「二尾状核指標(bicaudate index)」を用いて定量され得る。【0057】磁気共鳴画像法は、CTによって与えられるのと同様の指標を生成するために使用され得る。しかし、比較的新しい技術であるインビボNMRスペクトル測定法は、生きている脳の中の代謝的プロセスを評価する能力を提供する。1つの予備的な研究(Jenkinsら、1993、Neurology 43:2689〜2695)は、乳酸の量の増加を検出した。これはおそらく、HD患者の脳における中間代謝の、神経細胞の損失または欠失のいずれかを反映している。【0058】ポジトロン放出断層撮影技術(PET)は、生きている患者において行われる機能的な画像化を可能にする。代謝状態の変化は、2−デオキシグルコース(これは、シナプス活性を反映する)または選択された神経の集団を標識する選択的な放射性リガンドの使用によって評価され得る。グルコース代謝の変化の速度、およびハンティングトン病の危険がある個人における尾状核サイズを決定するために、Graftonら(1992、Arch Neurol.49:1161〜1167)は、42(+/− 9)ヶ月の間隔をあけて、2回のポジトロン放出断層撮影技術グルコース代謝研究、および2回の核磁気共鳴画像化スキャンを用いて、ハンティングトン病の危険がある18人の個人を評価した。7例の個体が、ハンティングトン病遺伝子陰性であった;残りは遺伝子試験または研究参加後の舞踏病の発症によって、遺伝子陽性であった。この遺伝子陽性群は、遺伝子陰性群と比較して、尾状核において1年あたりグルコース代謝速度の3.1%の有意な損失を実証した(95%の信頼区間[CI]−4.64、−1.48)。核磁気共鳴画像化法二尾状核速度において、1年あたり3.6%の増加が存在した(95% CI、1.81、5.37)。これは、尾状核萎縮の直線測定であった。しかし、尾状核サイズの変化の速度は、尾状核代謝の変化の速度とは相関しなかった。これは、代謝の損失および萎縮は、独立して発達し得ることを示唆する。従って、連続的なポジトロン放出断層撮影技術または磁気共鳴画像法は、臨床速度スケールにおいて観察されるもの(1年あたり約5%、上記を参照のこと)とはさほど違わない速度の損失の割合を産生し、従って、HDの危険性にある前症状的な個体における実験的な薬理的介入をモニターするための有用な手段であり得る。臨床的な試みは、このような患者集団を組込むように設計されるべきである。【0059】グルコース代謝のマッピングに加えて、他の放射性リガンドがHDにおける線条体完全性をモニターするために使用され得る。例えば、HDにおいて失われた固有の線条体ニューロンは、均一的にドーパミンレセプターを保有するので、ドーパミンレセプターについてのリガンドは、HDの進行をモニターするために使用されてきた。これらの研究は、HD患者において確かに線条体D1およびD2レセプター両方の平行した減少を示す(Turjanskiら、1995、Brain 118:689〜696)。【0060】同様の代謝的および神経化学的知見が、線条においてキノリン酸で処理した霊長類のPET研究において得られてきた。Brownellら(1994、Exp.Neurol.125:41〜51)は、3例の非ヒト霊長類の線条体のキノリン酸損傷後、ハンティングトン病の症状に類似した症状が、ドーパミンアゴニスト処理によって誘導され得ることを報告した。すべての動物が、[19F]フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース ポジトロン放出断層撮影技術(PET)による尾状核におけるグルコース利用の長期的な40〜50%の減少を示した。D1レセプターについての尾状核−被殻取り込み速度定数は、ニューロンの損失および平均40〜48%の減少を反映した。PETによって評価されたドーパミン再取り込み部位および線維は、穏やかなニューロン損失を有する領域において一時的な減少を示し、そして重篤な破壊を有する線条体領域においては長期の減少を示した。行動変化および死後の試験において見られる神経病理学と一致したこれらの結果は、ハンティングトン病の患者の臨床研究において観察された結果と類似し、そしてキノリン酸モデルをさらに評価するために働き、そしてこれらの測定がヒトの臨床試験において有用であり得ることを示唆する。【0061】HDにおける臨床試験は、精神医学的症状および不随意運動についての待機的な症候性の治療の評価に多くは限定されてきた(Shoulsonら、1981、Neurology 29:1〜3)。しかし、強力な神経保護剤を試験する1つの試みが存在した。この試みは、この薬剤が線条中の皮質の線条体末端からのグルタミン酸の放出を減少させ、それによってHDの進行を遅らせるという理論に基づく、GABA−Bレセプターアンタゴニストであるバクロフェンの使用を含んだ(Shoulsonら、1989、Quantification of Neurologic Deficit,TL Munsat(編)Butterworths 271〜284)。この試みの結果は、バクロフェン処理した患者が、試験の30か月の期間にわたってコントロールよりもよくならなかったという意味で、失敗であった。それにもかかわらず、この試みは、HDFCの使用および確認についての確信的な根拠を提供した。この研究の1つの重要な結果は、この研究の患者において疾患の進行の固有の速度が、もともと研究者らによって見積もられた速度のわずか半分であったことである。この情報は、今やこの測定機器を使用する未来の臨床試験の設計において使用され得る。【0062】現在、HDにおける主要な進行中の臨床試験は存在しない。しかし、臨床試験組織である、ハンティングトン病研究グループが組織され、そしてHDにおける臨床試験の実行のためのその場所での構造基盤を有している。このグループは現在、以下を含む種々の臨床試験オプションを研究している。1)中間代謝を増強するためのコエンザイムQの使用および2)グルタミン酸アンタゴニストおよび/またはグルタミン酸放出ブロッカー(W.Koroshetz、個人的情報)の使用。同様のグループがヨーロッパで設立され、そしてこのグループは、胎児の線条体移植物の潜在的な効力、および最終的には異種移植の移植物の使用を同様に試験するために、PET方法論を使用する。【0063】HDにおける疾患の進行を評価するための、確認された臨床的評価機器の利用可能性および相関する放射線画像化測定の存在は、2つの大きな組織化されたマルチセンター臨床試験組織の存在と組み合わせて、HDにおける臨床試験の実施を直接的に行う。【0064】出願人らは、Ax−13またはAx−1(rHCNTF、17CA63QRΔC13と呼ばれる)として公知の改変されたCNTF分子の産生を本明細書中に記載する。これは、63Q→R置換(これは、より強力な生物学的能力を有する)を、末端の13アミノ酸残基の欠失(これは、生理学的条件下で、より高い溶解度を有する)および17CA置換(これは、特に37℃の生理学的条件下で安定性を有する)と組み合わせ、そして動物モデルにおけるrHCNTFよりも2〜3倍良好な治療指数を示す。しかし、E.coli中で発現させた場合、産生される発現されたタンパク質の実質的な部分は、C末端においてデカペプチドでタグ化されている。このことにより、Ax−13の精製は困難であり、そして精製されタグ化されていない産物の低収量を生じる。このデカペプチドタグ化は、Ax−13が哺乳動物発現系において発現された場合には起こらないようである。さらに、このデカペプチドタグは、分子の免疫原性の増加に寄与し得、そしてまた、おそらく安定性についての問題を引き起こし得ることがあり得る。【0065】しかし、E.coli発現系の使用は、費用および有効性の見地から好ましい。従って、出願人らは、Ax−13の改善された強度、可溶性、および安定性特性を保持する一方、E.coliにおいて発現された場合に、デカペプチドタグ化の問題を回避する、切断されたCNTF分子の開発に着手した。本明細書中に記載されるように、出願人らはAx−15(rHCNTF、17CA63QRΔC15と呼ばれる)として公知の分子を産生することに成功した。この分子は、Ax−13の改善された特性を保持するが、これはまた付加されるアミノ酸タグが減少して、E.coliによって発現される、追加された利点を有する。従って、この新規な分子Ax−15は、より高い収率でより容易に精製される利点を有する。さらに、細菌のアミノ酸タグ化が非常に減少しているので、Ax−15は、Ax−13によって起こされ得る分子の免疫原性または安定性に関する心配を生じない。【0066】従って、本発明の目的は、改善された改変された毛様体神経栄養因子分子を提供することである。特に、本発明の1つの実施態様は、Cys17→Ala、Gln63→Argの改変、および末端15アミノ酸残基の欠失を有する改変されたヒト毛様体神経栄養因子である。本発明はまた、本発明の改変されたヒト毛様体神経栄養因子をコードする、単離された核酸分子を提供する。本発明によってまた意図されるものは、本発明の改変されたヒト毛様体神経栄養因子をコードし、そして発現制御配列に作動可能に連結されている組換えDNA分子、ならびに組換えDNA分子で形質転換した宿主細胞である。 この宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であり得、従って、例えば、E.coliのような細菌、Pichia pastorisのような酵母細胞、Spodoptera frugiperdaのような昆虫細胞、またはCOSもしくはCHO細胞のような哺乳動物細胞であり得る。このような宿主細胞は、改変された毛様体神経栄養因子分子を産生する方法において使用され得る。この方法は以下の工程を含む:(a)本発明の組換えDNA分子で形質転換された宿主細胞を増殖させ、その結果、そのDNA分子が宿主細胞によって発現され、本発明の改変された毛様体神経栄養因子分子を産生する工程、および(b)その発現された、改変された毛様体神経栄養因子分子を単離する工程。【0067】本発明はさらに、本発明の改変された毛様体神経栄養因子分子(Ax−15)およびキャリアを含む組成物を意図する。【0068】本発明の別の目的は、本明細書中ではAx−15と記載される改変された毛様体神経栄養因子を投与する工程を包含する神経系の疾患または障害を処置する方法を提供することである。処置される疾患または障害は、変性性疾患であり得るか、そして/または脊髄、運動ニューロン、コリン作用性ニューロン、または海馬の細胞を含む。あるいは、処置の方法は、外傷、手術、梗塞、感染、悪性疾患、および毒性因子への暴露からなる群から選択される事象によって引き起こされる神経系への損傷を含む、神経系の疾患または障害の処置をするためであり得る。本発明によってまた意図されるものは、筋萎縮を含む疾患または障害の処置の方法であり得る。【0069】本発明のさらなる目的は、変性から線条体ニューロンを保護する方法を提供することであり、これは、本明細書中ではAx−15と記載される改変された毛様体神経栄養因子の有効量でこの線条体ニューロンを処置する工程を含む。【0070】本発明によってまた意図されるものは、本明細書中ではAx−15と記載される改変された毛様体神経栄養因子の中枢神経系への直接投与を含む、ハンティングトン病の処置の方法である。【0071】本発明のさらなる目的は、本明細書中ではAx−15と記載される改変された毛様体神経栄養因子の哺乳動物への投与を含む、哺乳動物における体重損失を誘導する方法を提供することである。本発明の特定の実施態様は、ヒトにおける体重損失を誘導する工程を含む。【0072】Ax−15の投与方法は、遺伝的に決定された起源の病的な肥満または肥満の処置において使用され得る。本明細書中で記載されるAx−15はまた、ヒトにおける妊娠発症糖尿病または成人発症糖尿病の発生を予防/または処置する方法において使用され得る。【0073】Ax−15の投与を含む上記の方法のいずれかは、静脈内、筋肉内、皮下、クモ膜下腔、脳室内、および実質内からなる群から選択される送達の経路を介して、Ax−15を投与することによって実行され得る。あるいは、Ax−15は、改変された毛様体神経栄養因子を放出する細胞の移植を介して投与され得る。【0074】本発明はまた、神経系への損傷から生じる疾患または障害を意図し、ここでこのような損傷は、外傷、手術、梗塞、感染、および悪性疾患によって、または、毒性因子への暴露によって引き起こされ得る。【0075】本発明はまた、適切な薬理学的キャリアにおいて、単一の治療剤として、またはCNTFレセプターとの複合体において、本明細書中に記載されるように、改変されたCNTF分子またはそのハイブリッドもしくはその変異体を含む、薬学的組成物を提供する。【0076】本明細書中に記載されるCNTF分子または改変されたCNTF分子を含み得る活性成分は、任意の適切な経路(以下を含むがこれらに限定されない:実質内、心室内または脳室内送達)によるまたは徐放性移植物(例えば、公開出願、1996年2月1日に公開されたWO96/02646、1995年10月26日に公開されたWO95/28166、または1995年2月23日に公開されたWO95/505452に記載されるような、細胞または組織移植物を含む)によるインビボでの投与のために適切な薬学的キャリア中で処方されるべきである。【0077】投与の様式に依存して、活性成分は、液体キャリア(例えば、生理食塩水)中に処方され得るか、リポソーム、マイクロカプセル、ポリマー、またはワックスに基づきそして制御された放出調製物に組込まれ得る。好ましい実施態様において、改変されたCNTF調製物は、安定であるか、または錠剤、丸薬、もしくはカプセル形態に処方される。【0078】処方物において使用される活性成分の濃度は、必要とされる有効用量および使用される投与の様式に依存する。使用される用量は、有効である活性成分の循環血漿濃度を達成するに十分であるベきである。有効な用量は、インビトロまたは動物モデル試験系に由来する用量−反応曲線から外挿され得る。有効用量は、約.001〜約1mg/日の範囲内にあることが予測される。【0079】(実施例)(実施例1−改変ヒトCNTF分子の電気泳動の移動度)(材料と方法)(改変CNTF分子の調製)(細菌株およびプラスミド)E.coli K−12 RFJ26は、ラクトースオペロンリプレッサーを過剰産生する株である。【0080】ヒトCNTF遺伝子およびpRPN110(これは、ラットCNTF遺伝子を保有する)を保有する発現ベクターpRPN33は、ほぼ同一である(Masiakowskiら、1991,J.Neurosci.57:1003〜1012および1991年4月4日に公開された、国際公開番号WO 91/04316)。【0081】プラスミドpRPN219を、制限酵素Nhe1プラスHind3を用いたpRPN33の最初の消化、および4,081bpのフラグメントのゲル精製により構築した。第2に、ヒトCNTF遺伝子の部分をコードする、ずっと小さいフラグメントを、引き続き、RAT−III−dniHプライマー:5’ACGGTAAGCTTGGAGGTTCTC 3’;およびRAT−Nhe−I−Mプライマー:5’TCTATCTGGC TAGCAAGGAAGATTCGTTCA GACCTGACTG CTCTTACG 3’を用いたラット遺伝子からのPCR増幅により得た167bpのNhe1−Hind3フラグメントで置換した。【0082】プラスミドpRPN228は、167bpの置換フラグメントをDNAプライマーRat−III−dniH−L−R:5’AAG GTA CGA TAA GCT TGG AGG TTC TCT TGG AGT CGC TCT GCC TCA GTC AGC TCA CTC CAA CGA TCA GTG 3’およびRat−Nhe−I:5’TCT ATC TGG CTA GCA AGG AAG 3’を用いて増幅したこと以外は、pRPN219と同じ様式で構築した。【0083】プラスミドpRPN186、pRPN187、pRPN188、pRPN189、pRPN192、pRPN218およびpRPN222を、類似の方法により、または図1に示した特有の制限部位を用いるDNAフラグメントの直接交換により生成した。【0084】すべてのプラスミドの同一性を、制限解析およびDNA配列決定により確認した。【0085】(タンパク質精製)タンパク質合成の誘導、選択的抽出、可溶化および封入体からの精製は、ラットおよびヒトCNTFについて記載された(Masiakowskiら、1991,J.Neurosci.57:1003〜1012および1991年4月4日公開、国際出願番号WO91/04316)。ただし、イオン交換クロマトグラフィーにかわって、または追加してゲル濾過を時に用いた。あるいは、タンパク質は、他のタンパク質について記載(Panayotatosら、1989,J.Biol.Chem.264:15066〜15069)のように、ストレプトマイシンおよび硫酸アンモニウム分画により、次にカラムクロマトグラフィーにより細胞溶解物の上清から精製した。すべてのタンパク質を、少なくとも60%の純度まで単離した。【0086】酵素反応、DNA電気泳動、およびこれらの研究で用いられる他の技術のための条件は、詳細に記載されている(Panayotatos,N.1987,Engineering an Efficient Expression System in Plasmids:A practical Approach(Hardy,K.G.編)163〜176頁、IRL Press,Oxford,U.K.)。【0087】(結果)還元SDS−ポリアクリルアミドゲルにおけるヒト、ラットおよびいくつかのキメラCNTF分子の移動度を、図2に示す。キメラ分子RPN186、RPN189、RPN218およびRPN228は、ラットCNTFに匹敵する移動度を示す、一方、RPN187、RPN188、RPN192およびRPN222は、ヒトCNTFに匹敵する移動度を示す。図1におけるこれらのタンパク質の整列配列に対するこれらの結果の相互参照は、63位(R63)でアルギニン残基を保有するすべてのタンパク質がラットCNTFの移動度を示すことを明らかにする。RPN228の場合、単一アミノ酸置換(Q63−>R)は、ヒトCNTFに対してラットCNTFの正常な移動度を与えるのに十分である。【0088】図2はまた、異なる組換えタンパク質の純度測定を提供する。視覚的検査により、純度は、RPN189についての60%からRPN228についての90%より良好まで変化する。【0089】(実施例2−改変CNTF分子の結合活性の測定)(材料および方法)(125I−CNTFの調製)37μlの0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液、pH8.5中の組換えのラットCNTF(28μg)を、窒素の穏やかな流れのもとで乾燥された4mCi(2,000Ci/mmole;NEN)の125Iおよび試薬(BoltonおよびHunter,1973,Biochem J.133:529〜539)を含有するバイアルに移した。反応物を、0℃で45分間、続いて室温で15分間インキュベートし、そして30mlの0.2Mグリシン溶液の添加により停止した。15分後、0.08%ゼラチンを含む0.2mlPBSをまた添加し、そしてこの混合物をSuperdex−75カラム(Pharmacia)を通過させ、二量体誘導体および他の多量体誘導体から標識単量体CNTFを分離した。組み込みのパーセンテージは、代表的には、薄層クロマトグラフィーにより決定されたように20%であり、そして比活性は、代表的には約1,000Ci/mmoleであった。単量体125I−CNTFは、4℃で保管し、そして調製後1週間までに使い切った。構造的整合性および立体配置的な整合性の試験として、125I−CNTF(およそ、10,000cpm)を5μgの未標識のCNTFと混合し、そして未変性のゲル電気泳動により分析した。1つのメジャーなバンドがクマシー染色またはオートラジオグラフィーのいずれかによって見られた。125I−CNTFはまた、培養においてE8ニワトリ毛様体(chick ciliary)神経細胞の生存の支持において、天然のCNTFと匹敵する活性を示した。【0090】(組織培養技術)新生仔ラット由来の上頸神経節(SCG)を、トリプシン(0.1%)で処理し、機械的に分離し、そしてポリ−オルニチン(30μg/ml)基層に置いた。増殖培地は、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(Hyclone)含有Ham’s栄養混合物F12、神経発育因子(NGF)(100ng/ml)、ペニシリン(50U/ml)およびストレプトマイシン(50μg/ml)から構成された。培養物は、加湿した95%空気/5%CO2雰囲気下、37℃で維持した。神経節の非神経細胞を培養の第1および3日目にaraC(10μM)での処理により取り除いた。培養には、3回/1週給餌し、そして2週間以内に結合アッセイに慣用的に用いた。【0091】MG87/CNTFRは、ヒトCNTFαレセプター遺伝子で形質転換した線維芽細胞株である(Squintoら,1990,Neuron 5:757〜766;Davisら,1991,Science 253:59〜63)。【0092】(結合アッセイ)結合を、細胞単層で直接実施した。培養ウエル中の細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS;pH7.4)、0.1mMバシトラシン、1mM PMSF、1μg/mlロイペプチンおよび1mg/ml BSAからなるアッセイ緩衝液で1回洗浄した。室温での2時間の125I−CNTFとのインキュベーションの後、細胞をアッセイ緩衝液で2回すばやく洗浄し、1%SDS含有PBSで溶解し、そしてPackard Gamma Counterで計数した。非特異的な結合を未標識のCNTFの1,000倍過剰の存在下で決定した。MG87/CNTFRへの特異的結合は、80〜90%であった。データは、GRAPHPADプログラム(ISI,Philadelphia,PA)を用いて解析した。【0093】(結果)ラットSCG神経細胞への結合についての125I−ラットCNTFに対する精製組換えヒト、ラットおよびCNTF RPN219の競合カーブを図4aに示す。ラットCNTFおよびヒトCNTFの両方は、SCG神経細胞への結合について125I−ラットCNTFと競合するが、ヒトCNTF(IC50=25nM)は、未標識ラットCNTF(IC50=0.28nM)よりも125I−ラットCNTF結合への置換が90倍弱い。対照的に、RPN219は、ラットCNTFとほぼ同等に強力であり、そしてヒトCNTFより明確により強力である(IC50=0.3nM)。【0094】同様の結果を、ヒトCNTFレセプターの発現を指向するプラスミドで形質転換されたマウス線維芽細胞を用いた競合実験から得た(図4b)。ラット、ヒトおよびRPN228の両方は、MG87/CNTFR細胞への結合について125I−ラットCNTFと競合する。ヒトCNTF(IC50=30nM)は、ラットCNTF(IC50=2.8nM)よりも12倍弱いが、一方、RPN228は、ヒトタンパク質よりも明白により強力である(IC50=5.6nM)。【0095】図1に示された他の改変CNTFタンパク質を用いた競合結合実験はまた、R63を有するタンパク質がラットCNTFの生物学的活性を示し、一方、Q63を有するタンパク質がヒトCNTFの結合特性を示したことを実証する(データ示さず)。これらの結果は、単一アミノ酸置換(Q63−>R)がヒトCNTFに対して、ラットCNTFの特徴であるレセプター結合特性を与えるのに十分であることを示す。【0096】(実施例3−改変CNTF分子の生物学的活性の測定)(材料および方法)組換えCNTFを、記載されているように(Masiakowskiら、1991,J.Neurosci.57:1003〜1012および1991年4月4日公開、国際公開番号 WO91/04316)、ニワトリ毛様体神経節(CG)神経細胞の分離培養においてアッセイした。ただし、生存細胞はMTTで染色した(Mosmann,T.1983;J.Immunol.Methods 65:55〜63)。【0097】(結果)図3は、精製した組換えヒト、ラットおよび改変CNTFタンパク質RPN219およびPRN228についてのE8ニワトリ胚毛様体神経節の分離され、神経細胞富化された培養物の用量反応曲線を示す。このアッセイにより、キメラタンパク質の生物学的活性は、精製組換えラットCNTFの活性と識別不能であり、そして組換えヒトCNTFの活性より明白に高い。図3の用量反応曲線の比較はまた、RPN219、RPN228またはラットCNTFで得られた生存神経細胞の最大レベルが、ヒトCNTFで得られたレベルより高いことを示す。これらの結果は、ラットCNTFのようにRPN219およびRPN228がヒトCNTFよりも神経細胞のより大きい集団に対して活性であることを示唆する。並行した実験において、図1に示される他の改変CNTFタンパク質の生物学的活性を試験した。どの場合においても、置換(Q63→R)を保有する改変CNTFタンパク質は、ラットCNTFの生物学的活性を示し、一方、Q63を有するタンパク質は、ヒトCNTFの活性を示した(データ示さず)。【0098】全般に、これらの結果は、単一のアミノ酸置換(Q63→R)がヒトCNTFにラットCNTFの生物学的活性を与えるのに十分であることを示す。【0099】(実施例4:光誘導性光受容器損傷を防ぐ改変CNTFの使用)F344またはSprague−Dawley系統のいずれかのシロネズミを2〜5月齢で用いた。このラットを定常光に曝露する前、9日以上、周期的な光環境(25ft−c未満のケージ内照度で、12時間オン:12時間オフ)において維持した。このラットをケージの床上60cmに吊るした白色反射板で2つの40ワットGeneral Electric「cool−white」蛍光電球により提供される115〜200ft−cの照度レベル(ほとんどのラットは125〜170ft−cを受けた)で定常光に1〜2週間曝露した。光曝露の間、ラットをステンレス鋼ワイヤー棒カバーを備える透明なポリカーボネートケージに維持した。【0100】定常光曝露の2日前、ケタミン−キシラジン混合物で麻酔したラットに1μlのラットCNTF、ヒトCNTFまたは改変CNTF[hCNTF(Q63→R)](0.1〜500ng/μlの濃度でリン酸緩衝液化生理食塩水(PBS)に溶解している)を硝子体内に注射した。この注射は、眼の鋸状縁と赤道との間のほぼ中心経路の強膜、脈絡膜および網膜を通じた32ゲージの針の挿入を用いて行った。すべての場合、注射は、眼の上位半球に行った。【0101】定常光の曝露直後、そのラットを二酸化炭素の過剰投与により屠殺し、直後に混合アルデヒドを血管灌流した。眼を眼の垂直経線にそった全網膜の切片を提供するための1μmの厚さに切片化するためにエポキシリジンに埋め込んだ。光誘導性網膜変性の程度を、0〜4+の病理学スケールのレスキューによる光受容体レスキューの程度を評価することにより定量した(ここで4+は、最大レスキューであり、そしてほとんど正常な網膜整合性である)。同じラットにおけるコントロールの眼との比較に基づいて、それぞれの切片における光受容体レスキューの程度を、4人の個人によりスコアづけした。この方法は、ONLの厚さだけでなく光受容器内側および外側セグメントに対するよりわずかな変性的変化ならびに眼の内部における空間的な変性性勾配を考慮する利点を有する。3つの眼を、用量反応曲線を生成するために、それぞれの時間点について試験した。【0102】(結果)レスキューの程度を、ヒト、ラットおよびhCNTF(Q63→R)について測定した。このデータは、ラットおよびhCNTF(Q63→R)の両方が組換えヒトCNTFがレスキューするよりも光損傷モデルにおいて光受容体をレスキューする能力が10倍大きいことを示した。【0103】好ましい特定の実施態様と組み合わせて、本発明が上記で記載される場合、その詳細な説明および実施例は、例証を意図し、そして添付の請求の範囲の範囲により規定される本発明の範囲を制限しないことが理解される。【0104】(実施例5)(材料と方法)組換えヒトCNTF改変体を、以前に記載(Masiakowskiら、1991,J.Neurosci.57:1003〜1012および1991年4月4日公開、国際公開番号WO91/04316;Panayotatosら、1993,J.Biol.Chem.268:19000〜19003)のように、遺伝子的に操作し、E.coli内で発現し、そして90%より大きい純度で回収した。【0105】以下の保存溶液を5℃でPBS中に新鮮に調製した。rHCNTF・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.5mg/mlRG160(rHCNTF、ΔC13)・・・・・・・・0.5mg/mlRG162(rHCNTF、17CA、ΔC13)・・・0.5mg/mlRG290(rHCNTF、63QR、ΔC13)・・・1.2mg/mlRG297(rHCNTF、17CA、63QR、ΔC13)0.4mg/ml。【0106】37℃での生理学的緩衝液におけるrHCNTFおよびいくつかの誘導体の安定性を決定するために、保存溶液を5℃でPBSに対して徹底的に透析し、0.1mg/mlまでPBSで希釈し、そして濾過により滅菌した。アリコート(0.2ml)を、0.5ml容積のポリプロピレン遠心チューブに移した。このチューブを37℃のインキュベーターに入れ、そして指示された時間で個々のチューブを取りだし、そして室温で3分間15,000rpmで遠心し不溶性の沈査から可溶性のタンパク質を分離した。上清をピペットでとり、2×タンパク質ゲルサンプル緩衝液の等量を含有するきれいなチューブに入れ、2分間、85℃の水槽に置き、混合し、そして15%SDS−PAGEによる分析まで−20℃で保管した。ペレットを水の1/10のもとの容量に再懸濁し、2×タンパク質ゲルサンプル緩衝液の等量と混合し、そして上記のように処理した。【0107】E8ニワトリ毛様体神経細胞での生物学的活性のアッセイのため、およびタンパク質ゲル電気泳動のための方法は記載されている(Masiakowskiら、1991,J.Neurosci.57:1003〜1012および1991年4月4日公開、国際公開番号WO91/04316;Panayotatosら、1993,J.Biol.Chem.268:19000〜19003)。タンパク質ゲルサンプル緩衝液(2×)は、12.5mlのTrisHCl、pH6.8−20ml グリセロール−40mlの10%SDSおよび5mgのブロモフェノールブルー(100mlあたり)からなる。【0108】(結果)rHCNTFの溶解度は、中性のpHで生理学的緩衝液においてとくに制限される。さらに、広いpH範囲(4.5〜8.0)にわたる溶解度は、温度およびインキュベーション時間に強く依存する。5℃で、PBSにおけるrHCNTFの溶解度は、1.4mg/mlであり、そしてタンパク質は2〜3時間溶液中に存在する。rHCNTFの制限された溶解度と明白に対照的に、改変rHCNTF、ΔC13は、5℃で少なくとも12mg/mlに濃縮され得る。しかし、このより大きい溶解度にかかわらず、rHCNTF、ΔC13はなお、生理学的な緩衝液、pHおよび温度条件において強い不安定性を示す。37℃でのインキュベーションの際に、rHCNTF、ΔC13は、最初の濃度に依存する速度で溶液から析出する。【0109】この不安定性の原因を決定するために、本発明者らは、並行実験において、rHCNTFおよびいくつかの改変体の物理的完全性を分析した。図5は、生理的緩衝液中での、37℃、0、2、7および14日間のrHCNTFのインキュベーション(それぞれ、レーン1〜4)が、上清由来のタンパク質の進行性の消失を引き起こし、ペレットにおいて、同時の進行性の出現を伴うことを示す。さらに、ペレット中の良好な割合のrHCNTFが、二量体rHCNTFの大きさに対応する48kDの種として現れた(図5、二重矢印)。より長いインキュベーション時間で、少ない割合のより高次の凝集体もまた、明らかになった。しかし、同じサンプルを同じ型のゲル上ではあるが、ジスルフィド還元剤の存在下で分析した場合、48kDの種は、単量体rHCNTFに転換され、このことは、48kDの種が、ジスルフィド結合によって共有結合的に結合するrHCNTFの二量体を表すことを証明する。このような二量体は、rHCNTFの唯一のシステイン残基を介して形成することが予期された。従って、これらの結果は、37℃でのrHCNTFの不安定性が、分子間ジスルフィド結合の形成によって引き起こされる凝集によって生じることを示した。【0110】同様の結果を、2つのrHCNTF改変体、rHCNTF,ΔC13、およびrHCNTF,63QR,ΔC13を用いて得た(rHCNTF,ΔC13の場合で、ペレット中の不溶性凝集体の出現が幾分遅かったことを除く)(図5)。ΔC13欠失がrHCNTFに生理的緩衝液中でのより高い可溶性を与えるという事実を考慮すると、rHCNTF,ΔC13の改善された安定性は、おそらく、そのより高い可溶性の間接的な結果である。【0111】 37℃でのrHCNTFの不安定性が、分子間ジスルフィド結合の形成により引き起こされる凝集によリ生じるという可能性をさらに試験するために、17位の唯一のシステイン残基を、確立された遺伝子操作方法論を使用して、アラニンに置換した。このプロセスによって生成された、2つのrHCNTF改変体、rHCNTF,17CA,ΔC13およびrHCNTF,17CA,63QR,ΔC13を、非還元的な15%SDS−PAGEによる同じ分析に供した。図5は、37℃で14日間のインキュベーション後でさえ、両方のタンパク質が、明らかな二量体化または凝集体形成を伴なわず、可溶性のままであったことを示す。ペレット中に見出された少ない割合のタンパク質(それはほとんど、上清の除去後の遠心管に残存している少量の可溶性タンパク質を示した)においてでさえ、二量体化がほとんど明らかにならなかった。これらの結果は、rHCNTFの不安定性が、分子間ジスルフィド結合の形成によって引き起こされる凝集によって生じるという結論を確証し、そして他のrHCNTF改変体(例えば、RG297)における遊離の−SH官能基の除去がまた、より高い安定性を生じることを実証した。【0112】37℃でのインキュベーション後の溶液中に残存するタンパク質が、依然生物学的に活性であるか否かを試験するために、サンプルを、ニューロン生存活性について分析した。図6は、標準の、未処置のストック溶液、ならびに37℃で7日間、インキュベーションした4つのrHCNTF改変体を用いて得られた、ラットCNTFおよびrHCNTFについてのコントロール濃度の応答曲線を示す。後者に関して、17CA変異を有するタンパク質、RG297およびRG162を、それらの名目上の濃度でアッセイしたが、一方RG290およびRG160は、溶液中に残存するタンパク質の量に対して、それらの濃度を補正した後にアッセイした。図6は、これらの化合物により提示された濃度応答曲線が、これらのタンパク質がそれらの完全な活性形態にあることから予期される曲線であることを示す:以前に観察された(Panayotatos,N.ら、1993、J.Biol.Chem.268:19000−19003)ように、そして図7に示されるように、RG160およびRG162は、実験的誤差内で、rHCNTFと同じ効力を示すが、63QR置換を有するRG290およびRG297は、rHCNTFより4〜5倍高い効力を示す。従って、rHCNTFおよびその誘導体の37℃で7日間のインキュベーションは、生物学的活性の損失を生じず、二量体化後の沈殿によるタンパク質の損失のみを生じる。【0113】(実施例6)(材料および方法)(タンパク質の操作および精製)−以下のrHCNTF改変体をrHCNTFと比較した:RG228(rHCNTF,63QR);RG297(rHCNTF,17CA,63QR,ΔC13);RG242(rHCNTF,63QR64WA)。【0114】これらのタンパク質を、rHCNTFについて記載された方法論(Masiakowskiら、1991、J.Neurosci.57:1003−1012および1991年4月4日に公開された、国際公開番号WO91/04316;Panayotatosら、1993、J.Biol.Chem.268:19000−19003)によって、遺伝子的に操作して、E.coli内で発現し、そして90%より高い精製度で回収した。【0115】(生物学的活性アッセイ)−E8ニワトリ毛様体ニューロンに対する生物学的活性アッセイの方法は、記載されている(Panayotatosら、1993、J.Biol.Chem.268:19000−19003)。【0116】(薬物動態の決定)−ラットを、rHCNTF(n=1)およびRG242(n=2)を100μg/kgで、ならびにRG228(n=1)を200μg/kgdで、静脈内(i.v.)に注射した。ラットをまた、rHCNTF(n=2)、RG242(n=2)およびRG228(n=1)を200μg/kgで、皮下(s.c.)に注射した。血液試料を、投薬前および投薬後の種々の時点で収集し、そして血漿を得るために処理した。血漿試料を、げっ歯目血漿のためのrHCNTF ELISA方法(D.B.Lakingsら、DSER93/DMAP/006、「8つの投薬レベルでの皮下投与後の、ラットにおけるrHCNTFの容量比例性および絶対的なバイオアベイラビリティ」(Phoenix International Project No.920847)1993年11月10日)を使用して分析した。【0117】血漿濃度は、非区画技術を使用して評価した。各化合物に対する標準曲線は、各アッセイプレートについて含まれ、そしてそれを使用して、そのプレート上で分析した試料に存在するその化合物の量を計算する。このアッセイの感度は、化合物間で2倍未満まで変化した。【0118】(インビボでの効力および毒性の決定)−体重約220gの雌Sprague−Dawleyラットを、手術前に麻酔した。右坐骨神経を、膝のレベルで切除し、そして神経の5mmのセグメントを取り出した。偽手術を、各動物の左側で行った。手術後の朝に開始して、ラットを計量し、ビヒクル(PBSまたは乳酸/リン酸/マンニトールのいずれか、pH4.5)、あるいは試験されるrHCNTF化合物(0.01〜1.0mg/kgの範囲の容量で同じビヒクルに溶解させた)を皮下投与した。ラットを、1週間の間、毎日計量し、そして注射し、その時点で、ラットを屠殺して、そしてそのヒラメ筋を解剖して、そして計量した。各動物の左ヒラメ筋(偽)に対する右ヒラメ筋(除神経した)の湿重量の比を計算して、除神経により生じた萎縮症の程度および各化合物での処置によるそれらの防止を評価した。毒性の評価に関しては、その体重を、ビヒクルで処置したラットの体重増加のパーセントとして計算した。両方のビヒクル溶液は、萎縮症および体重増加において同様の結果を生じた。【0119】(結果)(インビトロでの生物学的活性)−rHCNTFのインビトロでの活性を特徴付けるために、本発明者らは、原発性の解離したE8ニワトリ毛様体ニューロンの生存の媒介に対するその効果を測定した。漸増濃度の種々のヒトCNTF改変体に対する応答におけるニューロン生存を、図6、7および8に示す。63QR置換を有する改変体RG228(図7)およびRG297(図8)は、rHCNTFより4〜5倍のより高い効力を示したが、改変体RG242は、それが63QR置換を有しているという事実にもかかわらず、rHCNTFより10倍弱い効力を示した。従って、CNTF配列の種々の位置での種々のアミノ酸側鎖の導入は、インビトロでの原発性ニューロンの生存に対して、非常に異なる効果を有し、それは、rHCNTFと比較した、活性の大きな損失〜強い増大まで変化させる。【0120】(薬物動態)−化合物のセットのインビトロでの生物学的効力を、それらのインビボでの薬物動態学的効力に相関させる試みの前に、同じ動物モデルでのその絶対的なバイオアベイラビリティを決定することが有用である。以下に記載の実験において、静脈内投与後の配置動態、ならびにRG228およびRG242の皮下投与後の絶対的なバイオアベイラビリティを決定して、rHCNTFのそれらに対して比較した。【0121】rHCNTF、RG228およびRG242の静脈内投与後のラットにおける平均血漿濃度時間プロフィールを、図9に示す。これらは、3つ全ての化合物について100μg/kg用量に正規化されている。平均薬物動態パラメーターを表1に要約する。【0122】ラットに対する静脈内投与後、RG242は、rHCNTFおよびRG228よりも幾分速い分布相αを有した。RG242およびRG228についての配置相βは、rHCNTFのそれよりも速い。従って、RG242は、rHCNTFよりも幾分より迅速に体内に分布され、そして全身循環から排出されるようであったが、RG228は、rHCNTFと同じ速さで体内に分布され、そして幾分速く全身循環から排出されるようであった。RG242についての濃度時間曲線下の領域(AUC)は、rHCNTFのそれに匹敵し、これは、全身のクリアランス(ClT)が、2つの化合物についてほぼ同じであったことを示す。2倍大きい領域が、RG228で観察された。しかし、βおよびAUCの両方の関数である、分布の見かけ上の容量(Varea)は、RG228およびRG242の両方について、rHCNTFと比較して約2倍小さかった。これは、これらの改変体があまり広くは分布されていないことを示唆する。これらの推測で使用された限定数の動物は、これらの値の定量的区別を可能にしなかった。しかし、これらの結果は、静脈内投与後のRG228およびRG242の分布ならびに配置動態が、rHCNTFのそれらと実質的に異ならないことを明らかに示す。【0123】皮下投与後、RG228およびRG242は、rHCNTFと比較して、2〜3倍長い吸収相(Ka)を有した(図10および表2)。RG242の配置相はまた、幾分長い。静脈内注入後と比較した、皮下投薬後のRG242のより長い明らかな末端配置相は、静脈内注入後の末端相の不完全な特徴付けに起因され得る。全体的には、2つの以前の独立した研究において、rHCNTFの絶対的なバイオアベイラビリティは、14.2%(n=18)および7.5%(n=8)であると見出されたという事実(D.B.Lakingsら、DSER 93/DMAP/006,「8つの投薬レベルでの皮下投与後の、ラットに皮下投与したrHCNTFの容量比例性および絶対的なバイオアベイラビリティ」(Phoenix International Project No.920847)1993年11月10日;D.B.Lakingsら、ラットに皮下投与されたrHCNTFの容量比例性および絶対的なバイオアベイラビリティ、AAPS Ninth Annual Meeting,San Diego,CA,1994年11月)を考慮すると、RG228の絶対的なバイオアベイラビリティ(13.7%)およびRG242の絶対的なバイオアベイラビリティ(10.9%)は、rHCNTFのそれ(6.0%)に匹敵する。従って、rHCNTF、RG228およびRG242のバイオアベイラビリティは、実験的誤差内で有意に異ならない。【0124】(インビボでの効力および毒性)−コントロール実験において、ヒラメ筋の除神経は、7日までに筋肉湿重量の40%の損失を生じた。この値は、非常に正確であり、かつ再現性がある。なぜなら、それは、独立した実験の間で、ただ3%までしか変化しないからである。rHCNTFの毎日の投与は、ED50=0.12mg/kgで筋肉湿重量の容量依存性のレスキューを生じ、0.3mg/kgで最大効果を生じた(図11)。同時に、動物が、これらの実験の過程の間で体重を増加し続けた場合でも、その動物は明らかに、それらのビヒクル処置した対照と、特に最大の有効用量で、同じくらい多く増加しなかった(p<0.01;図12)。【0125】rHCNTFで並行して行なわれたいくつかの実験の過程において、63QR置換は、インビボでの効力で2倍の増加を生じた(図11)が、また毒性においても同時に2倍の増加を生じたことが決定された(図12)。対照的に、さらなるC17AおよびΔC13改変を有するRG297は、rHCNTFと比較して2.6倍のより大きな効力を示すが、同じ毒性を示す。最後に、RG242は、rHCNTFと比較して、2.8倍の増加した効力、および2.4倍減少した毒性を生成した。これらの結果を、表3に要約する。【0126】これらの化合物の各々に対する相対的治療的指数(T.I.)を、TD25おおびED50値の比として計算し、rHCNTFの値に対して正規化した。RG228のT.I.は、rHCNTFの値と等しいが、RG297およびRG242のT.Iは、rHCNTFの値より、それぞれ、2.5倍および6.8倍優れている。【0127】従って、RG297およびRG242は、rHCNTFより優れた薬理学的特性を有する。これは、ヒトにおけるrHCNTF処置の際に、体重の減少が観察される臨床状況に非常に適切である。【0128】当業者は、CNTFのアミノ酸配列における他の変更が、増強された特性を有し得る生物学的に活性な分子を生じ得ることを認識する。例えば、出願人は、17位のシステイン残基の代わりにセリン残基を有し、そして生物学的に活性である17CS変異体を調製した。出願人はまた、生物学的に活性な、4重の変異体、17CA,ΔC13,63QR,64WAを調製した。さらなるCNTF変異体(その全てが生物学的活性を保持する)を、表4に示す。【0129】【表1】【0130】【表2】【0131】【表3】【0132】【表4】(実施例7−ハンティングトン病の動物モデルにおけるCNTFおよび改変体の効力)(背景)グルタミン酸レセプター媒介興奮毒性は、多くの神経変性疾患(ハンティングトン病および運動ニューロン疾患を含む)において役割を果たすことが仮定されてきた(DiFiglia,M.1990、Trends Neurosci.13:286−289;Rothsteinら、1995,J.Neurochem.65:643−651)。ハンティングトン病の優勢な神経病理学的特徴は、中程度のサイズのGABA作動性線条体出力ニューロン(striatal output neuron)が、線条体介在ニューロンの実質的な損失なしに、大量に変性することである(Albinら、1989、Trends Neurosci.12:366−375;Harringtonら、1991、J.Neuropathol.Exp.Neurol.50:309)。ハンティングトン病において観察される線条体出力ニューロンの優先的な損失、およびその結果としての運動障害は、NMDAグルタミン酸レセプターアゴニスト、キノリン酸が線条体に注射される齧歯類または霊長類モデルにおいて模倣される(DiFiglia,M.1990,Trends Neurosci.13:286−289)。【0133】HDについての遺伝的動物モデルの非存在下で、神経科学者は、HD表現型の研究については、急性の病変モデルに依存し続けている。HDの古典的な動物モデルには、NMDAレセプタークラスのグルタミン酸アゴニストを使用するラットの線条体の興奮毒性病変の産生が関与している。このような病変パラダイムにおいて、神経毒を直接線条体に注射することは、γアミノ酪酸(GABA)をその神経伝達物質として利用する中程度のサイズの内因性線条体ニューロンの損失を生じ、そして神経伝達物質としてアセチルコリンまたはソマトスタチンのいずれかおよびニューロペプチドYを利用する2つのクラスの線条体介在ニューロンの相対的な保存を生じる。最近の研究は、キノリン酸の線条体内注射に依存しており、これはHD線条体の出現を最も忠実に再現するようである。【0134】Figueredo−Cardenasら(1994,Exp.Neurol 129:37−56)は、キノリン酸(QA)を、成体ラットの線条体中へ注射し、そして病変後の2〜4ヶ月目には、種々の異なる型の線条体投射ニューロンおよび介在ニューロンならびに異なる線条体投射領域における線条体遠心性神経線維の生存の相対的なパターンを探索した。全ての投射ニューロン型(線条体淡蒼球系(striatopallidal)、線条体黒質系、および線条体脚内(striato−entopeduncular))の神経細胞形質は、コリン作動性介在ニューロンよりも脆弱である。投射ニューロン神経細胞形質のうち、異なる脆弱性の証拠が存在した。そして線条体黒質系のニューロンが最も脆弱であるようである。線条体標的領域における免疫標識した線条体繊維の検査は、線条体脚内繊維が、線条体内QAを線条体淡蒼球系または線条体黒質系の繊維よりも良好に生存したことを示した。この研究において投射ニューロンおよび/またはそれらの遠心性神経線維叢の間で観察された見かけの脆弱性の順序、ならびにコリン作動性介在ニューロンのこの研究において観察された非脆弱性は、HDにおいて観察されたものと類似している。【0135】別の動物モデルにおいて、3−ニトロプロピオン酸(3−NP)の全身性の投与により、ハンティングトン病(HD)において観察されるものと類似する神経病理学的変化が導かれる。これらの動物において観察される行動機能低下は、HDのほとんどの興奮毒性のモデルにおいて観察される機能亢進とは異なるが、3−NPは、若年型の発症および進行したHDのよりよいモデルを提供すると考える者もいる。3−NPの神経病理学的効果には、内因性の線条体コリン作動性ニューロンの損失が含まれるが、大きなAChE陽性ニューロンのいくつかの保持、NADPHジアホラーゼ含有ニューロンの最小の損傷およびグリアの浸潤が含まれる(Borlonganら、1995、Brain Res.Bull.365:49−56)。3−NPをHDの神経毒性モデルとして用いる比較的少数の研究が行われてきた。その忠実さおよび効用は、依然として研究されるべきである。【0136】最近の研究は、線条体における興奮毒性傷害とハンティングトン(Huntingtin)の役割との間の関係を追求し始めている。マウスにおけるキノリン酸の線条体注射は、いくつかの残存するニューロンにおいて、ハンティングトン(Huntingtin)についての増大した免疫反応性を誘導するが、しかしグリア細胞においては誘導しない。この増大は、興奮毒性チャレンジ後6時間における白質におけるニューロン細胞体と細胞プロセスの両方において明らかである。従って、ハンティングトン(Huntingtin)は、これらのニューロンにおける興奮毒性ストレスへの応答に関与され得る(Tatterら、1995、Neuroreport 6:1125−1129)。1時間と6時間の間の初期増加に続いて、IT15 mRNAレベルは、ニューロン特異的遺伝子の群に相同なパターンで減少した。24時間後の減少したmRNAレベルは、グリア転写が神経変性または神経膠症によって活性化されないことを実証した。1時間および24時間のmRNAレベルは、IT15転写が、変性ニューロンに優先的に局在することを強力に示唆する。Carlockら、1995、Neuroreport 6:1121−1124。【0137】線条体に対する興奮毒性傷害はまた、HD脳において観察される細胞死の特定の局面を模倣する(Bealら、1986、Nature 321:168−171)。HDを有する個体の新線条体において、TUNEL陽性ニューロンおよびグリアの分布のパターンは、神経系の正常な発達の間のアポトーシス細胞死において見られるものを思い起こさせた;同じ領域において、ふぞろいでないDNA断片化が、ときどき観察された。ラットの線条体の興奮毒性傷害の後に、ヌクレオソーム間DNA断片化(アポトーシスの証拠)を、初期の時間間隔で観察し、そしてランダムDNA断片化(壊死の証拠)を後の時点で観察した。さらに、EMにより、中程度の棘のあるニューロンの壊死プロフィールが、病変ラットにおいて検出された。従って、アポトーシスは、HDおよび興奮毒性動物モデルの両方において生じる。さらに、ニューロン死のアポトーシスおよび壊死の機構は、細胞毒性的に傷害を受けた脳における個々の死にゆく細胞において同時に生じ得る(Porteraら、1995、J.Neuroscience 15:3775−3787)。【0138】Tdt媒介dUTPビオチンニック末端標識(TUNEL)技術は、ヒト脳の種々の病理学的状態の予備的研究において調査されている(例えば、神経膠腫、外傷性脳傷害、パーキンソン病、パーキンソン−アルツハイマー複合症(Parkinson’s−Alzheimer’s compex)、多系統萎縮症、線条体黒質変性症)。ハンティングトン病のみが、この方法により有意かつ定常的な標識を明らかにした(Thomasら、1995、Experimental Neurology 133:265−272)。c−fos発現は、キノリン酸注入のすぐ後に増大し、ラット脳において広範に広がるが、しかし注射後24時間で実質的に存在しなくなる。しかし、DNAの断片化は、線条体に限定され、そして注射の24時間後に最大となる。これらの結果は、領域神経病理学の検出のためのインサイチュニックトランスレーションの感度を実証し、そして興奮毒性ニューロン死に対するc−fos発現の時間的および空間的関係を例示する(Dureら、1995、Exp.Neurol.133:207−214)。【0139】興奮毒性病変はまた、HDにおける可能な治療的手段を探索するために使用されてきた。キノリン酸によって誘導される興奮毒性線条体病変は、ハンティングトン病のモデルであり、キノリン酸病変(150nmol)の後に、成体ラットにおいて線条体コリン作動性およびGABA作動性ニューロンに対する神経発育因子(NGF)の神経保護作用を試験するために使用されてきた。1週間の毎日の線条体内NGF投与により、コリンアセチルトランスフェラーゼメッセンジャーRNAの細胞内発現を、コントロールレベルの3倍増大させ、そしてTrk AメッセンジャーRNA発現のレベルをコントロールレベルまで回復した。コリン作動性細胞に対する保護的効果とは対照的に、NGF処理は、グルタミン酸デカルボキシラーゼメッセンジャーRNAレベルにおけるキノリン酸誘導性減少を弱められなかった。従って、ハンティングトン病において変性する線条体グルタミン酸デカルボキシラーゼメッセンジャーRNA発現GABA作動性ニューロンは、NGFに対して応答性ではない。【0140】Frimら(1993、J.Neurosurg.78:267−273)は、線維芽細胞分泌NGFを、キノリン酸病変ラット線条体へと移植した。彼らは、脳梁内に配置されたNGF分泌線維芽細胞の予備的移植が、同側性の線条体における引き続く興奮毒性病変の最大断面積を、非NGF分泌線維芽細胞移植片の効果と比較した場合、80%、そして移植されていない動物における興奮毒性病変と比較した場合、83%減少させたことを見出した(p<0.003)。【0141】(材料および方法)(栄養性因子) 組換えヒトBDNF、神経発育因子(NGF)およびNT−3、および組換えラットCNTFを、記載のように(Maisonpierreら、1990、Science 247:1446−1451;Masiakowskiら、1991、J.Neurochem.57:1003−1012)E.coliにおいて調製し、そして特徴づけた。アキソカイン1(Axokine1)(Ax1)は、以下の改変を有する組換えヒトCNTFについての命名である:17位のシステインのアラニンでの置換および63位のグルタミンのアルギニンでの置換、13個のC末端アミノ酸の欠失。このCNTFアナログは、増大した可溶性を有し、生理学的緩衝液中で少なくとも1週間37℃で安定であり、そして天然のヒトCNTFに対してインビトロで4〜5倍より大きい効力を示す(Panayotatosら、1993、J.Biol.Chem.268:19000−19003)。【0142】動物の処理。全ての動物手順を、施設動物保護および用途委員会によって承認されたプロトコルを厳格に遵守して実施した。【0143】(浸透圧ポンプによる栄養性因子送達) 30ゲージの浸透圧ポンプ注入カニューレおよび22ゲージガイドカニューレ(それぞれ、長さ5.0mmおよび2.2mm)を、250〜300gの雄のSprague−Dawleyラットの左半球(ブレグマに対して定位固定の座標AP0.7、ML3.2;耳間線(interaural line)の下3.3mmの切歯バー)に、抱水クロラールおよびペントバルビタール(35mg/kg)の深い麻酔下で、平行に並べて長期的に移植した。30日後、ラットを再び麻酔し、そして0.1Mリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)または組換えヒトNGFのPBS溶液(0.9mg/ml)、ヒトBDNF(1mg/ml)、ヒトNT−3(1mg/ml)、ラットCNTF(0.78mg/ml)、またはAx1(0.4mg/ml)を含有するAlzet浸透圧ミニポンプ2002(0.5μl/hrの送達速度で2週間容量)を、プラスチックチューブによって注入カニューレに連結し、そして皮下移植した(Andersonら、1995,J.Comp.Neurol.357:296−317)。注入カニューレおよびチューブのデッドボリュームのために、神経栄養性因子の脳への送達は、ポンプ移植の約1日後に始まった。37℃で、12日間、浸透圧ポンプにおいて維持されたニューロトロフィンは、バイオアッセイによって決定したところ、完全に安定であり、そしてニューロトロフィンの有効な線条体内送達は、適切な因子についての切片の免疫組織化学染色によって評価された(Andersonら、1995、J.Comp.Neurol.357:296−317)。ポンプ移植の3〜4日後、麻酔したラットに、キノリン酸の注射(1μlリン酸緩衝液、pH7.2中、10分間にわたって50nmol)を、ガイドカニューレを通して、28ゲージの先端が鋭くないニードルを備えた10μlのHamiltonシリンジを使用して与えた。【0144】(毎日の注射による栄養因子送達) 22ゲージガイドカニューレ(2.2mm長)を、上記のように、麻酔したラットの左半球(定位固定の座標AP0.5、ML3.0)へと長期的に移植した。1週間後から開始して、麻酔したラットに、Ax1(1μl中0.4μgを10分間にわたって)またはビヒクルの毎日線条体内注射をガイドカニューレを通して、Hamiltonシリンジを使用して与えた。Ax1を、3日連続で、上記のように注射されたキノリン酸の注射1日前および1日後に注射した。【0145】(組織学的手順および分析) 4%パラホルムアルデヒドで還流固定した脳を、キノリン酸注射後8または9日目に収集し、そして前頭面をチオニンで染色した40ミクロン厚の切片に切り出した。各実験において、一連の、12Nissl染色した切片のうちの1つを、処理条件を知らされていない調査員により評価し、そして中程度のサイズの線条体ニューロンの相対的な損失を以下のスケールで格付けした:0(ニューロン損失なし)、1(明確であるがわずかなニューロンの損失)、2(中程度のニューロンの損失)、3(重篤であるが、ニューロンの全損失ではない)、4(キノリン酸注射の範囲内での中程度のサイズのニューロンの全損失)。ニューロン損失が2つの基準に対して中間であるように見える場合、2つの最も近接するスコア間の半分のスコアが割り当てられた。BDNFおよびNT−3を使用する実験における2つの異なる観察者によって独立して割り当てられたニューロンの損失スコアは、42匹のラットのうち40のラットについて互いに0〜0.5ポイント内であった(相関係数=0.8;p=0.0001)。【0146】CNTFを使用する実験において、ニューロンの損失はまた、注入カニューレに対して0.5mm吻側で得られた切片におけるニューロンを計数することによって評価された。各切片について、処理された線条体内の7つの視野(0.4×0.4mm)上に配置された10×10サンプリンググリッドの全ての垂直線を横切るニューロンを計数した。第一の視野は、線条体の中心に対してわずかに外側に、代表的なキノリン酸誘導病変の中心(すなわち、注入カニューレの先端に対してすぐ吻側)に配置された。6個の他の視野を、第一の視野から対角線上に、背側正中の方向および腹側正中の方向にそれぞれ2回、ならびに側背の方向および腹外側の方向にそれぞれ1回、移動させることによって選択した。切片の厚みにおける可能な変動について制御するために、等価な位置における7つの視野を対側線条体(約600ニューロンが7つの視野において計数された)においてサンプリングし、そしてニューロン生存を、インタクト側に対して、処理側のニューロンのパーセンテージとして表した。実際のニューロン計数の結果(CNTF処理群およびPBS処理群のそれぞれについて、31および61%ニューロン損失)は、回帰分析(Spearmanランク相関係数=0.82、p<0.05)により評価したところ、ニューロン損失スコアリングシステムの結果と密接に一致していることを示した(それぞれ、1.67および3.25の平均ニューロン損失スコア)。【0147】実験群とそれらのそれぞれのコントロール群との間の差異を、対応のないt検定により評価した。【0148】(結果)一連の実験において、キノリン酸(50nmol)を、浸透圧ポンプ(名目上の送達速度:ヒトNGF、10.8μg/日;ヒトBDNFまたはNT−3、12.0μg/日;ラットCNTF、9.4μg/日)による神経栄養因子の線条体内注入の開始後3日目または4日目に、成体ラットの左線条体へと注射した。キノリン酸のこの用量は、中程度のサイズの線条体出力ニューロン(これは全ての線条体ニューロンの90%より多くを構成する)に対して毒性であるが、なおコリン作動性介在ニューロンおよびパルブアルブミン/GABA作動性介在ニューロンの線条体集団をほとんどインタクトなまま残す(Qinら、1992、Experimental Neurology 115:200−211;Figueredo−Cardenasら、1994、Exp.Neurol.129:37−56)。キノリン酸の注入後8〜9日目に収集した脳由来のNissl染色切片の顕微鏡分析は、BDNF−、NGF−、またはNT−3処理脳における中程度のサイズの線条体ニューロンの有意な保持を示さなかった(図13)。更なるセットの実験において、キノリン酸をBDNFまたはNGF注入開始の7日後に注入したとき、ニューロンの保持は、明らかではなかった。【0149】著しく対照的に、ニューロンの生存は、それぞれ69±17および29±11%の平均パーセント生存(±SEM)を示したニューロン計数(対応のないt検定、t(5)=2.12、p=0.04)によって決定されるように、または半定量的ニューロン損失スコアの割り当てによって評価されるように(図15)、ビヒクル単独で処理されたラットと比較して、CNTFで処理されたラットにおいて有意により大きかった(図14)。CNTF処理脳において生存しているニューロンは、キノリン酸注入によって影響を及ぼされる線条体領域全体に広まった。【0150】CNTFによって実証された有利な効果があったと仮定して、類似の実験を、ポリペプチドCNTFレセプターアゴニスト、アキソカイン1(Ax1)を使用して行った(24)。CNTFの投与後に観察されるように、Ax1(4.8μg/日)の注入は、キノリン酸に曝露された中程度のサイズの線条体ニューロンの有意な保持を生じた(図15)。この結果は、CNTFレセプター媒介機構が、NMDAレセプター媒介興奮毒性由来の線条体ニューロンの保護をもたらすという結論を支持する。【0151】CNTFまたはAx1の神経保護効果は、例えば、体重によって示されるような、行動または健康に対して明らかな有害な効果なしに達成された。実験の最後に測定される体重は、CNTFまたはAx1処理によって有意には影響されなかった(対応のないt検定)。CNTF実験における栄養因子処理群およびビヒクル処理群の平均の体重(±SEM)は、それぞれ369±20gおよび331±15gであった(p=0.21);Ax1実験における平均体重は、それぞれ431±26gおよび453±14gであった(p=0.44)。【0152】CNTFレセプターリガンドの神経保護的効果が、神経栄養性因子投与の終結後に持続可能であるか否か、および低用量の栄養性因子が断続的に送達される場合に、処置が有効であるか否かを決定するために、2つのさらなる実験を実施した。第1の実験において、ラットに、Ax1(4.8μg/日)またはビヒクルを3日間線条体内に注入し、次いで浸透圧ポンプの除去によって送達を終結した。その後、キノリン酸を線条体内に3日間注入した(図16A)。第2の実験において、ラットに、キノリン酸の線条体内注入の前3日間およびその後1日間の間に毎日、Ax1(0.4μg/日)またはビヒクルを線条体内注入した(図16B);従って、これらのラットは合計でわずか1.6μgのAx1を投与されたにすぎなかった。両方の実験において、ニッスル染色した切片の顕微鏡解析により、CNTFまたはAx1を実験の続く間連続的に注入した場合に観察される保持(sparing)に匹敵する、Ax1処置した脳における中程度のサイズの線条体ニューロンの有意な保持が示された(図16)。【0153】(考察)線条体内の90%を超えるニューロンが、中程度の大きさであり、GABA作動性であり、線条体黒質性であり、そして線条体淡蒼球系の(striatopallidal)投射路ニューロンであるので(Graybiel,A.M.、1990、TINS 13:244−254)、この結果は、CNTFまたはCNTFレセプターアゴニストでの処置が、興奮毒性発作に対して線条体出力ニューロン(output neuron)を保護することを示す。従って、CNTFは、ハンティングトン病の成体動物モデルにおける薬理学的な適用後に線条体出力ニューロンを保護することが実証された、最初の精製された栄養性因子の1つである。特徴付けられた他の因子の中で、とりわけ、塩基性線維芽細胞成長因子での処置のみが、成体ラットおよび新生児ラットでN−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA)またはマロン酸の注入後に誘導される線条体病変の大きさを減少することが報告されている(Nozakiら、1993、J.Cereb.Blood Flow Metab.13:221−228;Kirschnerら、1995、J.Cereb.Blood Flow Metab.15:619−623)。ラットにおいて、線条体付近に移植されたNGF分泌線維芽細胞が、キノリン酸から中程度の大きさの線条体ニューロンを保護することが示されているが(Frimら、1993、NeuroReport 4:367−370;Emerichら、1994、Exp.Neurol.130:141−150)、本発明者らは、いくつかの初期の研究(Daviesら、1992、Neurosci.Lett.140:161−164;Veneroら、1994、Neuroscience 61:257−268;Kordowerら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9077−9080)と一致して、精製されたNGFでこれらのニューロンに対する生存促進効果を全く得られなかった。この知見は、NGFが、NGF分泌線維芽細胞によって提供される神経保護の唯一のメディエイタではないことを示唆する。しかし、本発明者らは、大きな暗く染色する、おそらくコリン作用性の介在ニューロンが、以前に報告されたように(Daviesら、1992、Neurosci.Lett.140:161−164;Kordowerら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9077−9080;Perez−Navarroら、1994、Eur.J.Neurosci.6:706−711)、NGFで処置された脳内においてより顕著であることを観察した。高親和性NGFレセプターであるTrkAの線条体の発現は、コリン作用性の介在ニューロンに制限され(Steiningerら、1993、Brain Res.612:330−335)、これはこれらのニューロンに対するNGFの選択的作用の知見と一致するが、一方、BDNFおよびNT−3についての高親和性レセプター(TrkBおよびTrkC)は、多くの中程度の大きさの線条体ニューロンによって発現される(Altarら、1994、Eur.J.Neurosci.6:1389−1405)。BDNFおよびNT−3は(NGFと異なり)、胚の、GABA作動性の、線条体出力ニューロンのインビトロでの生存および表現型分化を促進する(Mizunoら、1994、Dev.Biol.165:243−256;Ventimigliaら、1995、Eur.J.Neurosci)。さらに、これらのニューロトロフィンは、インビトロでグルタミン酸毒性から特定のニューロン集団を保護し得る(Lindholmら、1993、Eur.J.Neurosci.5:1455−1464;Shimohamaら、1993、Neurosci.Lett.164:55−58;Chengら、1994、Brain Res.640:56−67)。それにもかかわらず、BDNFまたはNT−3の注入は、インビボでのNMDAレセプター媒介性興奮毒性に対して線条体出力ニューロンを保護するようではないが、同等の用量でのBDNFまたはNT−3の大脳内注入は、線条体および脳内の他の箇所において明白な生物学的効果を誘発する(Lindsayら、1994、TINS 17:182−190)。インビボ研究とインビトロ研究との間での対照的な結果は、ニューロン型の差異(線条体対海馬、皮質または小脳)、ニューロンの発達段階における差異(成体対胚性)、またはインビボでのグルタミン酸作動性のシナプスの投入(input)によって説明され得る。【0154】CNTFレセプターリガンドによって提示される神経保護効果は、中程度の大きさの線条体ニューロン上での直接的な作用を通して生じ得る。なぜなら、線条体には、CNTFレセプターの成分(CNTFRα、LIFRβ、gp130)についてのmRNAが豊富に発現しているからである(lpら、1993、Neuron 10:89−102;Rudgeら、1994、Eur.J.Neurosci.6:693−705)。潜在的なメカニズムとしては、グルタミン酸レセプターの発現または機能の改変(それによってグルタミン酸作動性刺激に対するニューロンの感受性を改変する)か、または細胞質内のカルシウムイオン濃度を調節するニューロンの能力の増強を含み得、ここにおける増加は、神経変性プロセスを開始する重要な事象であると考えられる(Choi,D.W.1988.Neuron 1:623−634)。CNTFがグルタミン酸レセプターのアンタゴニストとして作用して、キノリン酸毒性をブロックする可能性は有りそうにない。なぜなら、CNTFは、インビトロでグルタミン酸の毒性作用をブロックしないからである(Mattsonら、1995、J.Neurochem.65:1740−1751)。【0155】他方で、CNTFレセプターリガンドは、潜在的に、線条体の他の成分を介して間接的に作用に作用し得る。例えば、キノリン酸への曝露の前の線条体への黒質または皮質の投入の排除は、線条体ニューロンの喪失における有意な減少を生じ(DiFiglia,M.1990、Trends Neurosci.13:286−289;Buissonら、1991、Neurosci.Lett.131:257−259)、このことは、外因性毒素および内因性神経伝達物質の組合わせ作用が細胞死を誘導するために必要とされることを示す。従って、グルタミン酸作動性シナプスまたはドーパミン作動性シナプスのいずれかでのシナプス伝達における減少が、キノリン酸の注入から線条体ニューロンを保護するようである。星状細胞は、通常はインビボで検出可能なCNTFRαを発現しないが(lpら、1993、Neuron 10:89−102)、脳損傷によって活性化される場合、またはインビトロで維持される場合には、星状細胞は全てのCNTFレセプター成分を発現する(Rudgeら、1994、Eur.J.Neurosci.6:693−705)。さらに、CNTFの大脳内送達は、グリア原線維の酸性タンパク質およびそのmRNAの含量の増加によって示されるように、曝露の10〜48時間後に星状細胞を活性化するようである(Levisonら、1995、Soc.Neurosci.Abst.21:497;Winterら、1995、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:5865−5869)。CNTFによって間接的または直接的にのいずれで活性化されるにかかわらず、星状細胞は、興奮性アミノ酸の壊死巣分離の増加を通してか、またはニューロンを保護する物質の放出によってニューロンの生存を促進し得る。【0156】本研究において、CNTFレセプター媒介性事象によって、興奮毒性損傷から保護される線条体ニューロンの集団は、ハンティングトン病において選択的に喪失されるものと同じ型である(Albinら、1989、Trends Neurosci.12:366−375)。興奮毒性刺激とハンティングトン病遺伝子の発現の増加との間の潜在的な関連が、近年示唆されてきた(Carlockら、1995、NeuroReport 6:1121−1124;Tatterら、1995、NeuroReport 6:1125−1129)。ハンティングトン病を導くメカニズムを同定するために、広範な研究が進行中であるが、現存の証拠の多くは、NMDAレセプター媒介性興奮毒性についての役割を明らかに意味する(DiFiglia,M.1990、Trends Neurosci.13:286−289)。【0157】(実施例8−アキソカイン(axokine)タンパク質のPEG化)タンパク質のPEG化は、安定性およびバイオアベイラビリティを増強する一方で免疫原性を最小化することによって、それらのインビボでの効力を増強することが示されている。特定のタンパク質の特性が、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーの付着によって調節され得ることは公知であり、これはタンパク質の流体力学的容積を増加して、それによって腎の濾過によるそのクリアランスを緩徐にする(例えば、Clark,R.ら、1996、J.Biol.Chem.271:21969−21977を参照のこと)。本発明者らは、Ax−13に対してポリエチレングリコール(PEG)を共有結合的に連結することによって、PEG化したアキソカインを産生した。本発明者らはまた、改変されていない分子からアキソカインの種々のPEG化形態を分離するための精製方法を開発した。PEG化Ax−13は、PEG化されていないAx−13よりも、生理学的pHにおいてより可溶性でありそして安定な特性を有する。PEG化は、Ax−13の薬物速度論的特性を顕著に増強することが示されており、そして他のアキソカイン分子の特性を同様に増強することが期待される。【0158】E.coliに由来する精製Ax−13を、これらの研究のために使用した。20kDのmPEG−SPAをShearwater Polymers,Bicine(Sigma)、およびTris−グリシンの成型済みゲル(Novex,CA)から得た。小規模の反応研究を、反応条件を決定するために組み立てた。20kDのmPEG SPAを、アミンを含まない緩衝液(pH8.1)中で4℃にて、精製Ax−13(最終濃度0.6mg/ml)と反応させた。タンパク質に対するPEGのモル濃度比を変化させ、そして2つの反応時間を使用した。大過剰の一級アミンの添加によって反応を停止した。反応産物を還元SDS−PAGEによって分析した。主要な改変種は、約60kDの分子量で泳動した。より高い分子量で泳動したより高次元の改変バンドもまた観察された。この研究に基づいて、タンパク質に対するPEGの割合が4での一晩の反応を選択した。0.6mg/mlでのAx−13は、Bicine緩衝液中で20kDのmPEG SPAと反応した(4℃にて一晩、pH8.1)。大過剰の一級アミンを添加することによって、反応を停止した。この反応産物を低塩緩衝液で希釈し、そしてイオン交換カラムにかけた。このカラムを低塩緩衝液で洗浄し、そしてNaCl勾配を用いて溶出した。より高次元の形態(SDS−PAGE上で見かけ上の分子量が66kDを超える)間での良好な分離、約60kDに泳動した明確な改変種と改変されていないAx−13とが得られた。60kDのバンドに対応する画分を、バイオアッセイで試験した。60kDのバンドに対応する画分において、非常にわずかな改変されていないAx−13のバンドが認められた。バイオアッセイの結果がこの物質によって有意に影響されていないことを確証するために、60kDのバンドをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってさらに精製した。このクロマトグラフィーは、改変されていないAx−13と60kDのバンドとの間で基線となる分離を生じた。この精製された改変Ax−13をバイオアッセイにおいて試験した。そしてこの結果は、SEC前の材料で得られた結果と識別不可能であった。【0159】(実施例9−Ax−15発現プラスミドpRG643の構築)発現プラスミドpRG632は、アンピシリン耐性およびヒトCNTF−C17A、Q63R、ΔC13についての遺伝子(本明細書中で、Ax1またはAx−13のいずれかともいわれる)をコードし、唯一のEagI制限酵素認識配列を終止コドンに対して3’に有する高コピー数のプラスミドである。このプラスミドを使用して、ΔC15変異を組み込んだ187bpのBseRI−EagI DNAフラグメントをPCR増幅することにより、ヒトCNTF変異C17A、Q63R、ΔC15(Ax−15と命名する)を構築した。5’プライマー{ΔC15−5’(5’−CCAGATAGAGGAGTTAATGATACTCCT−3’)}は、BseRI部位をコードし、そして3’プライマーであるΔC15−3’{(5’−GCGTCGGCCGCGGACCACGCTCATTACCCAGTCTGTGAGAAGAAATG−3’)}は、Gly185で終結するAx−15遺伝子のC−末端と、次いで2つの終止コドンおよびEagI制限酵素認識配列をコードする。このDNAフラグメントを、BseRIおよびEagIで消化し、そしてpRG632中の同じ部位に連結した。得られたプラスミド(pRG639)は、Ax−15(ヒトCNTF C17A、Q63R、ΔC15)についての遺伝子をコードする。次いで、このΔC15変異を、339bpのHindIII−EagI DNAフラグメントとして、pRG421内の対応部位中に転移した。このpRG421は、カナマイシン耐性およびヒトCNTF C17A、Q63R、ΔC13についての遺伝子をコードする高コピー数の発現プラスミドである。得られたプラスミド(pRG643)は、lacUV5プロモーターの転写制御下でAx−15についての遺伝子をコードし、そしてカナマイシン耐性を付与する。このAx−15遺伝子のDNA配列を、配列決定分析によって確認した。【0160】(実施例10−Ax−15タンパク質の小規模の発現および精製)pRG639を含有するE.coliのRFJ141株を、LB培地中で増殖し、そしてAx−15タンパク質の発現を、ラクトースの1%(w/v)までの添加によって誘導した。誘導された細胞を遠心分離によって回収し、20mMのTris−HCl(pH8.3)、5mMのEDTA,1mMのDTT中に再懸濁し、そして10,000psiで細胞をフレンチプレスセルを通過させることによって溶解した。この細胞溶解物を遠心分離し、そしてペレットを8Mのグアニジニウム−HCl、50mMのTris−HCl(pH8.3)、0.05mMのEDTA中に再懸濁し、次いで5容量の50mMのTris−HCl(pH8.3)、0.05mMのEDTA(緩衝液A)を用いて希釈し、次いで緩衝液Aに対して透析した。透析物を、緩衝液Aで平衡化したQ−sepharoseカラム上にロードした。Ax−15タンパク質を、10カラム容量の緩衝液中で1MのNaClに対する線形勾配によって溶出した。Ax−15を含有する画分をプールし、そして固形(NH4)2SO4の緩徐な添加とその一方でのNaOHの添加によりpHを8.3に維持することによって、1Mの(NH4)2SO4にした。このプールを、緩衝液A中の1M (NH4)2SO4を用いて平衡化されたフェニル−Sepharoseカラム上にロードした。このカラムを緩衝液A中の0.5Mの(NH4)2SO4を用いて洗浄し、そしてAx−15タンパク質を、(NH4)2SO4濃度を減少する線形勾配によって溶出した。Ax−15タンパク質を含有する画分をプールし、5mMのNaPO4(pH8.3)に対して透析し、次いで限界濾過によって濃縮した。濃縮されたプールを5mMのNaPO4(pH8.3)を用いて平衡化されたSephacryl S−100カラム上に分画した。【0161】(実施例11−Ax−15タンパク質の大規模の発現および精製)lacプロモーターの制御下でAx−15タンパク質を発現する、組換えのカナマイシン耐性E.coli RFJ141株(pRG643)を、20μg/mlのカナマイシンを含有する最少塩のグルコース培地中で、30〜35のAU550(550nMの吸光度)の中間密度まで増殖させた。Ax−15タンパク質の発現をIPTG(イソプロピルチオガラクトシド)を1.0mMまで添加することによって誘導し、そしてさらに8時間発酵を持続した。Ax−15タンパク質を、IPTG誘導後に可溶性の封入体として発現した。誘導後、細胞を回収し、細胞のペーストを濃縮し、そしてAGT500,000の分子量カットオフ(mwco)の中空繊維ダイアフィルトレーション(ACG Technologies、Inc.)を介して、20mMのTris、1.0mMのDTT,5.0mMのEDTA(pH8.5)に緩衝液交換した。連続的フローの高圧(8,000psiを超える)Niro Soaviホモジナイザーを通して、冷却した(0〜10℃)細胞ペースト懸濁物を繰り返し通過させて破壊することによって、封入体を、回収された細胞から放出した。ホモジネートを、冷却した(4〜8℃)連続フローの高速(17,000×Gを超える)Sharples遠心分離器(source)を2回通過させて、封入体を回収した。回収された封入体を、1.0mMのDTTを伴う8.0MのグアニジンHCL中に抽出した。Ax−15タンパク質/グアニジン溶液を、50mMのTris−HCl、1.0mMのDTT、0.05mMのEDTA(pH8.0〜8.3)中に希釈し、そしてAGT5,000mwco中空繊維フィルター(ACG Technologies,Inc.)を用いて希釈緩衝液に対してダイアフィルトレーションした。再折り畳みされたAx−15を含有する得られた溶液を、クロマトグラフィー精製の前にMicrogonの0.22μm中空繊維フィルター(ACG Technologies,Inc.)を通して濾過した。【0162】(実施例12−再折り畳みされたAx−15のカラムクロマトグラフィー精製)上記のように濾過されたAx−15溶液を、10.9mg/ml樹脂で16.4LのDEAE Sepharose(Pharmacia)カラム上にロードし、そして50Lの50mL Tris(pH8.0〜8.3)、1.0mMのDTT、および0.05mMのEDTA緩衝液で洗浄した。Ax−15タンパク質を同じTris緩衝液中で、120mM NaClの工程を用いてカラムから溶出した。以前に確立した、ピークの上昇部分にある最大A280の40%およびピークの下降部分にある最大A280の20%の280nM吸光度基準を超える溶出物をプールし、冷凍保存(−30℃)するかまたは精製手順の次の工程に使用した。プールされた溶出Ax−15タンパク質を、pHを8.0〜8.3に維持しつつ、固形化合物を段階的に添加することによって1.0Mの硫酸アンモニウムへと調整した。この溶液を0.22μmのSartoriousカプセルフィルターを通して濾過し、8.24mg/ml樹脂で12.5LのフェニルSepharoseHP(Pharmacia)カラム上にロードし、そして0.05mMのEDTA(pH8.0〜8.3)を有する50mMのTris緩衝液中の55Lの1.0Mの硫酸アンモニウムを用いて洗浄した。同じTris緩衝液中の250mMの硫酸アンモニウムを用いた12.0Lの洗浄に続いて、Ax−15タンパク質を、125mMの硫酸アンモニウム、Tris緩衝液洗浄工程を用いて溶出した。以前に確立した、ピークの上昇部分にある最大A280の100%およびピークの下降部分にある最大A280の20%の280nM吸光度基準を超える溶出物をプールした。溶出物を、その伝導度を減少させるために、塩を含まない50mMのTris(pH8.0〜8.3)緩衝液中に、1:4に同時に希釈した。プールされた物質を、冷凍保存(−30℃)するか、または次の工程に使用した。プールされた疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)物質を25Lに濃縮し、そして5,000mwcoのAGT中空繊維フィルター(ACG Technologies、Inc.)を使用して、5.0mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0〜8.3)に対してダイアフィルトレーションした。濃縮(85%)リン酸を段階的に添加することによって、スルフィル(sulfyl)プロピル高速流(SP FF)Sepharoseクロマトグラフィーの直前にpHを7.0〜7.2に調整した。pHを調整したプールされた物質を、9.0mg/ml樹脂まで7.7LのSP FF Sepharose(Pharmacia)カラム上にロードし、そして最少の25Lの5.0mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を用いて洗浄した。Ax−15タンパク質を、5.0mMのリン酸ナトリウム、130mMのNaCl(pH7.0〜7.2)の77.0Lの工程で溶出した。溶出物を、その伝導度を減少させそしてpHを上昇させるために、塩を含まない10.0mMのリン酸ナトリウム(pH9.0〜9.2)緩衝液中に、1:5に同時に希釈した。ピークの上昇部分にある最大A280の20%およびピークの下降部分にある最大A280の20%を超えるピーク物質をプールした。プールしたAx−15タンパク質を、冷凍保存(−30℃)するか、または次の工程に使用した。プールしたSP FFSepharoseカラムAx−15タンパク質を濃縮し、そして5,000mwcoのAGT中空線維フィルター(ACG Technologies,Inc.)を用いて、5.0mMのリン酸ナトリウム(pH8.0〜8.3)緩衝液に対してダイアフィルトレーションした。プール(24.66g)を、5.0L以下に濃縮した。濃縮され、ダイアフィルトレーションされたAx−15タンパク質を50LのS−100 Sephacryl(Pharmacia)サイジングカラム上にロードし、そして250Lの同じ5.0mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0〜8.3)を用いて溶出した。ピークの上昇部分にある最大A280の40%およびピークの下降部分にある最大A280の40%を超えるピーク物質をプールした。プールされたAx−15タンパク質を、Millipak 0.22μmフィルターを通して濾過し、そして調剤または処方の前に保存(−80℃)した。作製されたAx−15のアミノ酸配列は、以下の通りである。あるいは、最初のアラニンの前にメチオニン残基を含む配列を作製し得る。【0163】【化1】(実施例13−肥満症の処置のためのAx−15の使用)(動物モデル)(正常マウス)正常な(8週齢)C57BL/6Jマウスを、Taconicから入手した。このマウスに、ビヒクルまたはAx−15の皮下注射を毎日した。この動物を毎日計量し、そして24時間の食物摂取量を、3〜4日間測定した。【0164】(ob/obマウス)第6染色体における単一遺伝子の突然変異の結果、ob/obマウスは、短縮された、非機能的遺伝子産物(レプチン)を産生する。これらのマウスは、摂食亢進症で、高インスリン血症で、および明らかに肥満であった。【0165】C57BL/6J ob/obマウスを、Jackson Laboratoryから入手し、そして12〜14週齢で実験に用いた。このマウスに、ビヒクル、Ax−15またはレプチンの皮下注射を毎日した。対で給餌した(pair−fed)グループに、動物をAx−15(0.3mg/kg)で処置することによって消費される平均量(g)の食物を与えた。体重を毎日入手し、そして24時間の食物摂取量を、3日目と4日目との間に測定した。8日目に、この動物を屠殺し、そして屠体分析を行った。【0166】(食餌誘導性(Diet−induced)肥満症(DIO)マウス)AKR/Jマウスは、体脂肪含有量の増加によって、食餌誘導性肥満症に非常に感受性であることが示された。遺伝環境(食餌)相互作用は、この種の食餌の肥満症に関して完全には知られていないが、ヒト肥満症においても同様にこの遺伝子型は多遺伝子性である。【0167】AKR/JマウスをJackson Laboratoryから入手し、そして10〜12週齢で高脂肪食餌(45%脂肪;Research Diets)を与えた。全ての実験は、高脂肪食餌の7週間後に開始した。このマウスに、ビヒクル、Ax−15またはレプチンの皮下注射を毎日した。対で給餌した(pair−fed)グループに、Ax−15(0.1mg/kg)で処置した動物によって消費される平均量(g)の食物を与えた。この動物を毎日計量し、そして24時間の食物摂取量を、3日目〜4日目との間に測定した。8日目に、この動物を屠殺し、そして血清を、インスリン測定およびコルチコステロン測定のために得た。【0168】(II.試薬:)組換えヒトAx−15を、上記に示されるように製作し、そしてレプチンをR&D Systemsから購入した。【0169】(結果)(正常マウス)Ax−15は、用量依存様式で正常マウスにおいて体重を減少した。6日目に、この動物は、0.1mg/kg、0.3mg/kg、および1mg/kgで、それぞれそれらの体重の約4%、11%、および16%を失った(図17)。【0170】(ob/obマウス)ob/obマウスにおけるAx−15処置後の体重において、用量に関連した(0.1mg/kg〜3mg/kg)減少が存在した(図18)。0.1mg/kg〜3mg/kgの範囲の用量で、体重の8%〜25%の減少が存在した。特定の用量のAx−15(0.3mg/kg)を対で給餌した動物は、この用量のAx−15を与えられたマウスで同量の体重の減少を示した。このことは食物摂取量が、体重減少の主な原因であることを示唆する。【0171】レプチンはまた、ob/obマウスにおける体重の減少に有効であった。1mg/kgでレプチンは、7日目までに6%の体重を減少し、これは0.1mg/kgでAx−15を与えた経過とほぼ同じ経過に従った(図18)。【0172】屠体分析は、Ax−15処置およびレプチン処置で、ならびに対で給餌したコントロールにおいて、総体脂肪の有意な減少が存在したことを示した(表5)。ビヒクルコントロール動物と比較して、全てのグループにおいて、除脂肪量の少量だが有意ではない減少が存在した。食餌制限(対で給餌した)のみを受けたマウスは、ビヒクルコントロールと違いのない脂肪量/除脂肪量の割合を有した。このことは、それらが、脂肪量および除脂肪量を等しく減少したことを示した。しかし、Ax−15およびレプチン処置した動物は、脂肪量/除脂肪量の割合の減少によって反映されるように体脂肪の優先的な減少を示した(表5)。【0173】(DIOマウス)Ax−15は、DIOマウスにおける体重を用量依存的に減少した。1週間以内で、この動物は、Ax−15を0.1mg/kg、0.3mg/kg、および1mg/kgで与えた場合、それぞれ、それらの体重の約14%、26%、および33%を失った(図19)。Ax−15処置動物の効果と、対で給餌したコントロール動物の効果とを比較すると、2グループの間に小さいが有意な差異が存在した。このことは、食物摂取量の低下がおそらく主要であるが、それのみではない、Ax−15処置での体重の減少の原因となることを示唆する。実際、Ax−15は、DIOマウスにおける肥満症に関連した高インスリン血症を有意に減衰させるが、単なる食物摂取量の減少(対で給餌した)は、減衰させなかった(図20A)。さらに、Ax−15は、食餌制限の一般的な効果であるコルチコステロンレベルの上昇を引き起こさなかった(図20B)。【0174】Ax−15を同じ用量範囲(0.1〜1mg/kg)で投与した場合、DIOマウスは、正常なマウスと比較した場合より2倍を超えて体重を減少した(図17を参照のこと)。食餌誘導性肥満動物のAx−15に対するこのより高い感受性は、肥満症が標準化された後に、Ax−15が持続的な体重減少を引き起こさないように、肥満症がAx−15の効力を調節し得ることを示唆する。【0175】DIOマウスは、レプチン耐性であり;体重減少効果は、毎日レプチンの注射(1mg/kg;図19)を行ったこれらの動物では観察されなかった。【0176】本発明者らは、以下のように結論づける。【0177】1.Ax−15は、用量依存様式で正常なマウスにおいて体重減少を引き起こした。【0178】2.Ax−15は、用量依存様式でob/obマウスにおいて体重減少を誘導した。Ax−15(0.1mg/kg)は、ob/obマウスにおいて体重減少を引き起こす際にレプチン(1mg/kg)と同じくらい有効であった。Ax−15処置およびレプチン処置の両方は、除脂肪量より多く総体脂肪を優先的に減少したか、対で食餌した処置は、減少しなかった。【0179】3.Ax−15は、用量依存様式で、食餌誘導性肥満症マウスにおいて体重減少を引き起こした。一方レプチンは効果が無かった。Ax−15処置は、DIOマウスにおける肥満症に関連した高インスリン血症を減衰させた。この効果は、対で給餌したコントロール動物においては観察されなかった。さらに、Ax−15は、正常マウスまたはob/obマウスよりもDIOマウスにおいて体重減少を誘導する際により有効であった。ひとまとめにして考えると、本発明者らの結果は、II型糖尿病に関連した肥満症のようなレプチン耐性の肥満症の処置におけるAx−15の特定の有用な適用を示唆する。【0180】4.レプチン耐性マウスモデルにおいて体重を減少する際のAx−15の有効性は、Ax−15がまた、レプチンに対して耐性かまたは非応答である肥満のヒトにおいて体重を減少する際に有効であり得ることを示唆する。【0181】表5:ob/obマウスの屠体分析の結果【0182】【表5】(実施例14−PEG化Ax−15)出願人らは、Ax−15ポリペプチド分子に対して異なる長さおよびタイプのポリエチレングリコール鎖を共有結合的に連結することによって、いくつかの異なるPEG化をされたAx−15分子を生成した。【0183】出願人らはまた、非改変化Ax−15分子からAx−15の異なるPEG化された形態を分離するための精製方法論を開発した。【0184】(材料および方法)E.coli(前出)由来の精製されたAx−15を、これらの研究に用いた。アミンに特異的な末端部分で機能化された種々の分子量のPEG鎖を、Shearwater Polymers,ALから入手した。BicineをSigma,MOから入手し、そしてBis−TrisプレキャストゲルをNovex,CAから入手した。小スケール反応研究を準備し種々の反応条件を試験した。異なる反応条件を用いかつ以下のように変えた:1. Ax−15タンパク質濃度:0.6mg/ml〜6.0mg/mlの範囲。2. PEG/Ax−15タンパク質モル比、30:1まで。3. 温度:4℃〜室温。【0185】さらに、例えば、アルデヒド化学を用いた場合、異なる濃度の還元剤(例えば、Aldrich Chemicals,Milwaukiee,WIからナトリウムシアノボロハイドライド)を用いてシッフ塩基を還元した。この反応を、Life Technologies,Gaithersburg,MDから入手した1M保存溶液からの大過剰のTris−HCl(pH7.5)の添加によって停止した。代表的には、50mM Tris−HCl(pH7.5)を、タンパク質濃度がμM範囲にあったので用いる。【0186】精製のために、代表的には反応生成物を低塩緩衝液で希釈し、そしてイオン交換カラムに適用した。このカラムを低塩緩衝液で洗浄し、そしてPharmacia,Piscataway,NJより入手したQ−HPアニオン交換樹脂を充填したカラム通じて、15mM Bicine緩衝液中の0〜300mM NaClの範囲のNaCl勾配で溶出した。異なる数の結合化PEG鎖に対応する非改変化Ax−15とPEG化された形態との間の良好な分離が、観察された。イオン交換精製からの異なるプールを濃縮し、さらに標準的な分取サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。いくつかの場合では、PEG Ax−15タンパク質の2つの近い形態が、共にプールされ、そして1つのサンプルとして処理された(例えば、PEG 5K(3,4)−2°Amine−Ax 15とマークされたサンプルは、2級アミン結合を用いて約5KD PEG分子の3または4鎖と結合したAx−15分子から主に成る)。【0187】精製の実行からの反応生成物およびサンプルを、以下の標準的な方法のいずれかまたは全てによって分析した:1.還元条件下および非還元条件下のSDS−PAGE2.分析用イオン交換クロマトグラフィー3.分析用サイズ排除クロマトグラフィー。【0188】各Ax−15分子に結合した鎖の数をまず、SDS−PAGEゲル上のバンドパターンに基づいてサンプルに割り当てた。確証を遊離アミンアッセイを用いて公開されている技法に基づいて、1級アミンを検出することでか(Karr,L.J.ら、Methods in Enzymology 228:377−390(1994))、または一連のUV、RI(屈折率)およびMALLS検出器を有するMALLS(多角レーザー光散乱)システムと連結した分析用サイズ排除カラムを用いることによって得た。光散乱は、巨大分子の質量および濃度の関数である。分子量を決定するために、このタンパク質サンプルを、ゲル濾過カラムに注入し、そして溶出物をオンラインの光散乱検出器ならびに屈折率検出器および/またはUV検出器でモニタリングする。光散乱検出器は、Wyatt Technology Corporation(Santa Barbara,CA)からのMiniDawnレーザー光散乱検出器である。この機器は、静的光を3つの異なる角度で測定する。オンラインの屈折率検出器またはUV検出器は、タンパク質濃度を測定するために働く。Astra 4.7 Software(Wyatt Technology Corporation,Santa Barbara,CA)を用いて、dn/dc(dn=屈折率の変化;dc=濃度)か、またはタンパク質の吸光係数のいずれかに基づいてタンパク質濃度を算出する。SEC−MALLSシステムもまた用い、PEG Ax−15調製物の純度または分子量を決定した。【0189】種々のPEG Ax−15分子を、以下のようにインビボにおける実験で試験した。【0190】(実施例15−PEG Ax−15を用いた肥満症を処置するためのインビボでの実験)AKR/Jマウスは、体脂肪含有量の増加により食餌誘導性肥満症に対して感受性であることが示されている。この遺伝子環境(食餌)相互作用は、この種の食餌性肥満症に関しては完全に理解されてはいないが、ヒト肥満症の場合、遺伝子型は多遺伝子である。以下の実験を、食餌誘導性肥満症のこの実験動物モデルのにおいて体重および食物摂取量に対するPEG Ax−15の効果を試験するために行った。実験に記載されるこの特定の分子は、1−20−PEG Ax−15と呼ばれ、そして上記の手順によって生成されそしてインビボ実験で試験される多くのPEG化Ax−15分子のまさに1つである。この分子は、2級アミン結合を介して20KD PEG鎖とモノPEG化されている。表6は、種々のPEG化されたAx−15調製物のインビボ活性の比較を示す。【0191】(表6 PEG−Ax−15の種々の調製物のインビボ活性比較)【0192】【表6】(実験手順)雄AKR/Jマウス(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)に、10週齢で始めて、高脂肪食餌(脂肪から45kcal%を有する)を給餌した。17週齢までに、マウスは、通常の固形試料を給餌したやせた同腹子の約30%を超える重さであり、これを食餌誘導性肥満症(DIO)マウスと称した。6匹のDIOマウスの4つのグループは、ビヒクル(PBS)、非PEG化されたAx−15(0.7mg/kg)、または1−20−PEG Ax−15(0.23または0.7mg/kg)のいずれかの皮下注射を毎週受けた。処置期間の間の体重測定および24時間の食物摂取量測定を毎日、13日間記録した。【0193】(結果)1−20−PEG Ax−15処置は、用量依存様式でDIOマウスにおいて体重を減少した(図21)。0.7mg/kgで、1−20−PEG Ax−15はおよそ32%体重減少を引き起こし、一方同じ用量での非PEG化Ax−15は体重をわずか8%減少したにすぎなかった。さらに、体重減少は、食物摂取量の減少に密接に関連しており、最高の食欲の減退を伴うことが高用量(0.7mg/kg 1−20−PEG Ax−15)処置グループで観察された(図22)。同様に食欲抑制の持続期間は、この処置グループにおいて最も長かった(図22)。これらの知見は、PEG化がDIOマウスの体重減少においてAx−15の効力を4倍増強することを示唆する(図21)。従って、Ax−15のPEG化は、より少ない用量かつ少ない頻度の投与養生を可能にし得る。【0194】前述の発明は、明確に理解する目的のために例証および例示の方法によって、いくつかについて詳細に記載されているが、本発明の教示を考慮すると、特定の変化および改変が、添付の特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなくそれらに対してなされ得ることが当業者に容易に明白である。【図面の簡単な説明】【図1】 CNTFタンパク質配列の整列。A.ヒト、ラット、ウサギ、マウスおよびニワトリ(Leungら、1992、Neuron 8:1045〜1053)の配列。点は、ヒト配列中に見出される残基を示す。パネルB.ヒトCNTFアミノ酸残基(点)およびラットCNTF(示される残基)を示す、改変されたCNTF分子。各配列に対応する精製された組換えタンパク質の名前を左に示す。【図2】 還元SDS−15%ポリアクリルアミドゲル上の、ヒト、ラットおよびいくつかの改変されたCNTF分子の移動度。精製された組換えタンパク質を、示したように充填した。示されたMWのマーカーを、レーンMに充填した。【図3】 2つの改変されたCNTF分子の生物学的活性。A.ヒトCNTF(黒菱形)、ラットCNTF(白四角)、およびRPN219(黒四角)。B.ヒトCNTF(黒菱形)、ラットCNTF(白四角)、およびRPN228(黒四角)。2ng/mlのラットCNTF存在下で生存するニューロン数の百分率として、示されたタンパク質濃度で生存する、解離したE8ニワトリ毛様体ニューロンの用量応答。各実験の点は、3つの測定の平均を示す。【図4】 A.)SCGニューロン、およびB.)MG87/huCNTFR線維芽細胞に対する、競合的リガンド結合。3つの測定の平均からの標準偏差を垂直なバーで示す。【図5】 SDS−15%ポリアクリルアミドゲル上のヒトCNTF分子およびいくつかの改変されたCNTF分子の移動度。組換えヒトCNTF(HCNTFと命名)およびいくつかの改変されたCNTFタンパク質の上清(A)調製物およびペレット(B)調製物を、示されるように充填した。示される改変されたタンパク質は、ΔC13(RG160としても公知);17CA、ΔC13(RG162);ΔC13、63QR(RG290);および17CA、ΔC13、63QR(RG297)である。示されたMWのマーカーをレーンMに充填した。0日目、2日目、7日目および14日目の37℃での生理的緩衝液中のインキュベーションを、それぞれレーン1〜4に示す。【図6】 種々のCNTF改変体の濃度の上昇に対する応答における、解離した初代E8ニワトリ毛様体ニューロンの生存。標準的な非処置ストック溶液を用いて、ならびに4つのrHCNTF改変体(RG297、RG290、RG160およびRG162)を用いて得られる、ラットCNTFおよびrHCNTFについてのコントロール濃度応答曲線。【図7】 種々のCNTF改変体の濃度の上昇に対する応答における、解離した初代E8ニワトリ毛様体ニューロンの生存。標準的な非処置ストック溶液を用いて、ならびにrHCNTF改変体RG228(RPN228としても公知であり、そして変異63QRを有する)を用いて得られる、ラットCNTFおよびrHCNTFについてのコントロール濃度応答曲線。【図8】 種々のCNTF改変体の濃度の上昇に対する応答において、解離した初代E8ニワトリ毛様体ニューロンの生存。標準的な非処置ストック溶液を用いて、ならびに4つのrHCNTF改変体RG242(これは、変異63QR、64WAを有する。)を用いて得られる、ラットCNTFおよびrHCNTFについてのコントロール濃度応答曲線。【図9】 ラットにおいて、全ての3つの化合物について100μg/kg用量に正規化した、rHCNTF、RG228およびRG242の静脈内(iv)投与後の平均血漿濃度の時間プロフィール。【図10】 ラットにおいて、全ての3つの化合物について200μg/kg用量に正規化した、rHCNTF、RG228およびRG242の皮下(SC)投与後の平均血漿濃度の時間プロフィール。【図11】 (A)hCNTF対RG228;(B)hCNTF対RG297および(C)hCNTF対RG242、のラット筋肉湿性重量の用量依存性レスキューの比較。【図12】 hCNTF、RG228、RG242およびRG297についてのインビボでの毒性の比較。【図13】 ニューロトロフィンで処置し、そしてキノリン酸を注射した脳からの代表的なNissl染色切片(冠状平面)。一番上の左:インタクトな尾状の被殻(CPu)の表示。近接するパネル:NGF、BDNFまたはNT−3で処置され、そしてキノリン酸を注射された脳からの切片の比較表示。ニューロトロフィンで処置された脳において、周囲の領域(白矢印で示される)は、中程度のサイズのニューロンを実質的に欠く。CPuにおける2つのトラックを、注入カニューレ(c)およびキノリン酸注射針(矢印頭部)により残した。ecは、外部カプセル;LVは、外側脳室。目盛りバー=0.5mm。【図14】 CNTFまたはPBSで処置し、そしてキノリン酸を注射した脳からの代表的なNissl染色切片(冠状平面)。一番上の左:インタクトな尾状の被殻(CPu)の表示。一番上の右:多数の中程度のサイズのニューロン(これらの少数を矢印で示す)を示す外側のCPuのより拡大した表示。中段および一番下の左:PBSまたはCNTFで処置し、そしてキノリン酸を注射した脳における左CPu。CPuにおける2つのトラックは、PBSまたはCNTF注入カニューレ(C)およびキノリン酸注射針(矢印頭部)により残る;白矢印は、病変の内側の境界を示す。中部および一番下の右:PBSで処置した脳において培地サイズの線条体ニューロンの実質的な完全な非存在(ニューロンスコア=4)、およびCNTFで処置した脳において多数の正常のようであるニューロンの存在(いくつかの生存しているニューロンを矢印で示す;ニューロン損失スコア=2)を例示するカニューレの250μm外側の拡大表示。ecは、外部カプセル;LVは、外側の脳室。左の目盛りのバー=0.5mm;右の目盛りバー=30μm。【図15】 キノリン酸(QA)の線条体内注射により誘導される中程度のサイズの線条体ニューロン損失における神経栄養因子での処置の効果。A、B、C、D、E。神経栄養性因子またはPBSで処置およびキノリン酸を注射され、そしてキノリン酸で処置された群についての平均ニューロン損失スコア(±SEM)。各々の栄養因子で処置された群におけるラットの数は、以下の通りである:NGF=5;BDNF=12;NT−3=10;CNTF=3;Ax1=7;等価な数を、各実験においてPBS処置したコントロール群に使用した。統計学的比較を、片側t検定によった。NT−3処置は、PBSで処置した群と比較して、有意に大きい(+)平均ニューロン損失スコア)を生じた:t(17)=2.75、p=0.01。CNTFまたはAx1処置は、PBSで処置した群と比較して、有意により低い(*)平均ニューロン損失スコアを生じた:それぞれ、t(5)=2.7、p=0.04およびt(13)=4.2、P=0.001。【図16】 キノリン酸(QA)の線条体内注射により誘導される培地サイズの線条体ニューロン損失における神経栄養因子での処置の効果。各グラフの上の時間系列は、実験計画を示す。A.浸透ポンプを、4日間だけ移植し、そしてキノリン酸の注射を、ポンプの除去した3日後に与えたことを除いて、図1の解説に記載されたものと類似する実験概念図においてAx1(n=6)またはPBS(n=5)で処置された群についての平均ニューロン損失スコア(±SEM)。B.キノリン酸の注射の3日前および1日後にA×1(n=6)またはPBS(n=6)の線条体内注射を毎日受けている群についての平均ニューロン損失スコア。*片側t検定、A:t(9)=2.5、p=0.03;B:t(10)=2.3、p=0.04。【図17】 正常なマウスにおけるアキソカイン−15(Ax−15)の効果。正常C57BL/6Jマウスに、0.1mg/kg、0.3mg/kg、または1.0mg/kgでビヒクルまたはAx−15のいずれかを、6日間毎日皮下に注射した。ビヒクルで処置したコントロールに対するAx−15で処置した場合の体重の変化の百分率を示す。【図18】 ob/obマウスにおけるAx−15の効果。C57BL/6J ob/obマウスは、ビヒクル、レプチン(1.0mg/kg)あるいは0.1mg/kg、0.3mg/kg、または1.0mg/kgのAx−15のいずれかを用いて7日間毎日皮下に注射された。食餌制限した対で餌を与えられたマウスに、体重の減少における食物摂取の効果を調査するために、0.3mg/kgのAx−15を注射した。ビヒクルで処置したコントロールに対する、Ax−15で処置した場合およびレプチンで処置した場合の変化の百分率を示す。【図19】 マウスにおいて食餌で誘導した肥満におけるAx−15の効果。AKR/Jマウスは、ビヒクル、レプチン(1.0mg/kg)あるいは0.03mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、または1.0mg/kgでAx−15のいずれかを用いる処置の前に7日間高脂肪食に置いた。食餌制限し、対で餌を与えられたAKR/Jマウスに、体重の減少における食物摂取の効果を調査するために、0.3mg/kgのAx−15を注射した。ビヒクルで処置したコントロールに対する、Ax−15で処置した場合およびレプチンで処置した場合の変化の百分率を示す。【図20】 食餌で誘導した肥満AKR/Jマウスにおける血清インスリンおよびコルチコステロンのレベルにおけるAx−15および食餌制限の効果。図20A.ARK/J食餌誘導肥満マウスにおいて、肥満関連高インスリン血症における食餌および/またはAx−15処置の効果を決定するために、ビヒクル、食事制限およびAx−15(0.1mg/kg)またはAx−15単独(0.1mg/ml)での処置の後に、血清インスリンレベルを測定した。図20B.ARK/J食餌誘導肥満マウスにおいて、肥満関連高インスリン血症における食餌および/またはAx−15処置の効果を決定するために、ビヒクル、食事制限およびAx−15(0.1mg/kg)またはAx−15単独(0.1mg/ml)での処置の後に、血清コルチコステロンレベルを測定した。【図21】 食餌で誘導された肥満を有するマウスにおいて、1−20−PEG Ax−15(モノ−20K−PEG−Ax−15)は、体重減少を生じる際に非PEG化Ax−15よりも4倍効果的であった。DIOマウスは、13日間にわたって、PBS、Ax−15(0.7mg/kg)、または1−20−PEG Ax−15(0.23および0.7mg/kg)のいずれかに毎週皮下注射(*)を与えた。この動物の体重を毎日測定し、そして平均体重の変化を、基準からの変化の百分率+/−SEM(1群当たりn=6)として表した。【図22】 食餌で誘導された肥満を有するマウスにおいて、1−20−PEG Ax−15は、非PEG化Ax−15よりも効果的に食物摂取を減少させた。13日間にわたって毎日、PBS、Ax−15(0.7mg/kg)、または1−20−PEG Ax−15(0.23および0.7mg/kg)のいずれかを、DIOマウスに皮下注射(*)を与えた。食物摂取を24時間毎に記録し、そして結果を、消費されたペレットの平均g体重+/−SEM(1群当たりn=6)として表した。 17位のシステイン残基のアラニン残基への置換、63位のグルタミン残基のアルギニン残基への置換、および、カルボキシル末端15アミノ酸残基の欠失を有する、改変されたヒト毛様体神経栄養因子。 請求項1に記載の改変されたヒト毛様体神経栄養因子をコードする、単離された核酸分子。 発現制御配列に作動可能に連結された、請求項2に記載の組換えDNA分子。 請求項3に記載の組換えDNA分子で形質転換された、宿主細胞。 改変された毛様体神経栄養因子分子を産生するための方法であって、以下:(a)請求項3に記載のDNA分子を含む組換え宿主細胞を増殖させる工程であって、その結果、該DNA分子が該宿主細胞により発現されて、該改変された毛様体神経栄養因子分子を産生する、工程、および(b)該発現され、改変された毛様体神経栄養因子分子を単離する工程、を含む、方法。 前記宿主細胞が真核生物細胞である、請求項5に記載の方法。 前記宿主細胞が原核生物細胞である、請求項5に記載の方法。 前記真核生物細胞が細菌細胞である、請求項7に記載の方法。 前記細菌細胞がE.coliである、請求項8に記載の方法。 ポリエチレングリコールでPEG化されている、請求項1に記載の改変されたヒト毛様体神経栄養因子。 17位のシステイン残基のアラニン残基への置換、63位のグルタミン残基のアルギニン残基への置換、および、カルボキシル末端13アミノ酸残基の欠失を有し、ポリエチレングリコールでPEG化されている、改変されたヒト毛様体神経栄養因子。 20kDのPEGでモノPEG化されている、請求項10または11に記載の改変されたヒト毛様体神経栄養因子。 請求項1、10、11または12に記載の改変された毛様体神経栄養因子分子、およびキャリアを含む、組成物。 神経系の疾患または障害の処置において使用するための組成物であって、該組成物は、請求項1、10、11もしくは12に記載の改変された毛様体神経栄養因子分子または請求項13に記載の組成物を含む、組成物。 前記疾患または障害が変性疾患である、請求項14に記載の組成物。 前記疾患または障害が脊髄、運動ニューロン、コリン作用性ニューロンまたは海馬の細胞に関する、請求項14に記載の組成物。 請求項14に記載の組成物であって、ここで前記神経系の疾患または障害が外傷、手術、梗塞形成、感染、悪性疾患および毒性因子への曝露から選択される事象により生じる神経系に対する損傷を含む、組成物。 前記疾患または障害が筋萎縮症を含む、請求項14に記載の組成物。 線条体ニューロンを変性から保護するために使用するための組成物であって、該組成物は、請求項1、10、11もしくは12に記載の改変された毛様体神経栄養因子分子または請求項13に記載の組成物を含む、組成物。 中枢神経系への直接投与によりハンティングトン病の処置において使用するための組成物であって、該組成物は、請求項1、10、11もしくは12に記載の改変された毛様体神経栄養因子分子または請求項13に記載の組成物を含む、組成物。 哺乳動物において体重の減少の誘導に使用するための組成物であって、該組成物は、請求項1、10、11もしくは12に記載の改変された毛様体神経栄養因子分子または請求項13に記載の組成物を含む、組成物。 前記哺乳動物がヒトである、請求項21に記載の組成物。 前記組成物が、病的な肥満または遺伝的に決定された起源の肥満の処置に使用される、請求項22に記載の組成物。 ヒトにおける妊娠発症糖尿病または成人発症糖尿病の発生の予防または処置に使用するための組成物であって、該組成物は、請求項1、10、11もしくは12に記載の改変された毛様体神経栄養因子分子または請求項13に記載の組成物を含む、組成物。 投与が、静脈内、皮下、筋肉内、クモ膜下腔、脳室内および実質内から選択される送達経路を介するか、または前記改変された毛様体神経栄養因子を放出する細胞の移植を介する、請求項20〜24のいずれか1項に記載の組成物。


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