タイトル: | 特許公報(B2)_リン酸化VASP(血管拡張剤−刺激リン蛋白質)に対する抗体、その調製用のハイブリドーマ細胞およびその使用 |
出願番号: | 2000520481 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07K 16/18,A61K 39/395,A61P 3/10,A61P 9/04,A61P 9/10,A61P 9/12,A61P 13/12,C12N 5/10,C12N 15/02,G01N 33/53,G01N 33/68 |
マルティン・アイゲンターラー ハインツ・ホシューツキ ウルリヒ・ヴァルター JP 5031140 特許公報(B2) 20120706 2000520481 19981106 リン酸化VASP(血管拡張剤−刺激リン蛋白質)に対する抗体、その調製用のハイブリドーマ細胞およびその使用 バイオサイテックス 510071769 結田 純次 100127926 三輪 昭次 100105290 竹林 則幸 100140132 マルティン・アイゲンターラー ハインツ・ホシューツキ ウルリヒ・ヴァルター DE 197 49 091.3 19971107 US 60/079,375 19980326 20120919 C07K 16/18 20060101AFI20120830BHJP A61K 39/395 20060101ALI20120830BHJP A61P 3/10 20060101ALI20120830BHJP A61P 9/04 20060101ALI20120830BHJP A61P 9/10 20060101ALI20120830BHJP A61P 9/12 20060101ALI20120830BHJP A61P 13/12 20060101ALI20120830BHJP C12N 5/10 20060101ALI20120830BHJP C12N 15/02 20060101ALI20120830BHJP G01N 33/53 20060101ALI20120830BHJP G01N 33/68 20060101ALI20120830BHJP JPC07K16/18A61K39/395 MA61K39/395 NA61P3/10A61P9/04A61P9/10A61P9/10 101A61P9/12A61P13/12C12N5/00 BC12N15/00 CG01N33/53 DG01N33/68 IPC C07K 16/00 - 16/46 C12Q 1/00 - 1/68 Ulrich W.,“Biochemishe Parameter der Endothelfunktion”Inhaltsverzeichnis BLICK,1/1997 Artikel 7,[Online][retreived on 2006−08−21],Retreived from the Internet<URL:http://www.uni−wuerzburg.de/blick/1997−1/971a.html> 細胞工学、Vol.12,No.12,p.909−917(1993) Genomics,Vol.36,p.227−233(1996) J.Biol.Chem.,Vol.266,No22,p.14808−14812(1991) J.Biol.Chem.,Vol.269,No20,p.14509−14517(1994) Eur.J.Biochem.,Vol.158,p.203−210(1986) 12 DSM ACC2330 EP1998007103 19981106 WO1999024473 19990520 2001522865 20011120 16 20030317 2009019828 20091016 鵜飼 健 中島 庸子 六笠 紀子 【0001】本発明は、VASP(血管拡張剤−刺激リン蛋白質)がリン酸化形態で存在する場合に抗原としてVASPにのみ結合する、VASPに対する抗体、その調製用のハイブリドーマ細胞並びに診断薬および/または治療薬としての抗体または抗体断片の使用に関する。【0002】血管系の疾患は、心筋梗塞、脳卒中、動脈性閉塞症および多くの種類の腎不全などの非常に多くの慢性的で生命を危うくする疾患の原因である。【0003】内皮細胞、特に血液凝固系、血小板の機能状態、炎症および腫瘍細胞の血管壁中への移動、平滑筋細胞の収縮および成長、並びにその結果の血圧および血管壁構造の状態、およびさらに新血管形成を制御する内皮細胞は、血管系の調節に特に重要である。最後には心筋梗塞、脳卒中および多くの型の腎不全を導き得る状況である、重大な血管系疾患において、これら血管壁の機能の多くが妨げられる。【0004】内皮細胞は、重要な物質であるプロスタサイクリン(PGl2)および一酸化窒素(NO)を生成し、これは内皮由来の弛緩因子(EDRF)として知られ、血小板および血管筋肉細胞の両方を阻害する物質である。内皮の機能は、プロスタサイクリン(PGl2)またはEDRF、例えばNOのような前記内皮因子によって制御される。それ故に、特定の様式において内皮の機能障害に関連する疾患を治療するためには、内皮機能障害を診断し、その経過を制御し得る生化学的パラメータを開発する必要がある。【0005】内皮機能不全により引き起こされるアテローム性動脈硬化症病変などの不可逆的損傷を未だ認められない段階で、可能な限り早期に内皮機能不全を認識できるのが望ましい。初期段階での内皮機能不全の同定は、内皮機能不全の可逆的治療をもたらし得る、新しい治療法の開発を可能にする。【0006】インビボ内皮機能を測定する公知の方法は、定量的血管造影法のような観血的検出法、あるいは非観血的な造影法である。これらの方法の欠点は、これらの検査が直接患者に実施すること、定量が難しく且つ非常に高価なことである。従って、生体外で生物学的物質、例えば細胞試料または血液試料において、研究室における定型的検査によって内皮の機能を速やかに且つ簡単に測定できる、生化学的/免疫生物学的方法を利用できるものが望ましい。内皮の機能は、プロスタサイクリン(PGl2)またはEDRF、例えばNOなどの内皮因子によって制御可能な機能である。【0007】本発明の課題は、内皮機能を評価し、且つ調節する試薬を提供することである。本発明のこの課題および他の課題によれば、VASP(血管拡張剤−刺激リン蛋白質)に対するものであり、VASPがリン酸化されている場合にのみVASPと結合する抗体が提供される。【0008】本発明の一態様において、VASPがセリン239位にてリン酸化されている場合(ホスホセリン239VASP)にのみVASPに結合する抗体が開示される。他の態様において、VASPがセリン157位にてリン酸化されている場合(ホスホセリン157VASP)にのみVASPに結合する抗体が開示される。本発明の他の態様には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および抗体断片が包含される。別に態様には、ハイブリドーマ細胞株16C2により産生されるモノクローナル抗体、特にMab 16C2が包含される。【0009】本発明の他の課題は、本発明の抗体の製造に有用なハイブリドーマ細胞を提供することである。さらに、本発明の課題は、リン酸化されている場合にのみVASPに結合する、VASPに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を提供することである。一態様において、ハイブリドーマ細胞株16C2(DSM ACC2330)が提供される。【0010】本発明の別の課題は、内皮機能を評価する方法を提供することである。本発明のこの課題によれば、VASPのリン酸化状態を測定する方法が提供される。本発明の一態様において、生物学的物質は、VASP(血管拡張剤−刺激リン蛋白質)がリン酸化されている場合にのみ抗原としてVASPと結合するVASPに対する抗体と接触させられる。【0011】本発明の他の態様において、生物学的物質に結合するVASP抗体を定量することをさらに包含する定量法が提供される。特別な態様には、電気泳動によりVASPを分割し、リン酸化されている場合にのみVASPに結合する、VASPに対する抗体と接触させる、ウェスタンブロット法が包含される。他の態様は、リン酸化されている場合にのみVASPに結合する、VASPに対する抗体を試料と接触させることを包含するフローサイトメトリー法である。【0012】本発明の他の態様において、診断方法が提供される。代表的な方法は、リン酸化されている場合にのみVASPに結合する、VASPに対する抗体を試料と接触させ、VASPのリン酸化状態を評価することを伴う。一態様において、この方法は、試料中のVASPのリン酸化を定量的に測定することを包含する。別の態様において、抗体をホスホセリン239VASPまたはホスホセリン157VASPに結合させる方法が記載される。さらに他の態様において、試料はヒト血小板またはヒト全血である。【0013】本発明の別の課題は、内皮機能のマーカーを検出する方法を提供することであり、一態様において、cGMPおよび/またはcAMP濃度に作用する物質に曝されている患者の試料を検査し、その試料を、リン酸化されている場合にのみVASPに結合する、VASPに対する抗体と接触させ、そして対照試料に対して相対的なVASPリン酸化状態を評価することを包含する、cGMPおよび/またはcAMPの濃度に作用する物質を検出する方法が提供される。【0014】さらに別の態様において、患者からの試料を、リン酸化されている場合にのみVASPに結合する、VASPに対する抗体と接触させ、そして正常な対照試料に対して相対的なVASPリン酸化状態を評価することを包含する、内皮機能不全を検出する方法が詳述される。【0015】さらに本発明の課題は、本明細書に開示される診断方法を実施するための便利なキットを提供することである。さらにこの課題に対して、リン酸化されている場合にのみVASPに結合する、VASPに対する抗体を含む診断用キットが提供される。さらに、本発明の別の課題は、内皮機能不全に苦しむ患者の治療方法を提供することである。本発明のこのおよび別の治療の課題によれば、治療を必要とする患者に、リン酸化されている場合にのみVASPに結合する、VASPに対する抗体の治療的に有効な量を投与する、治療方法が開示される。【0016】血圧低下(血管拡張)ホルモンおよび薬剤に応答して、血小板および血管壁細胞においてリン酸化されるヒトVASP(血管拡張剤−刺激リン蛋白質)は、最近発見され、単離され、そして分子遺伝学の観点から特徴付けられた(Haffner等,EMBOJ.14,19〜27,1995年)。【0017】VASPは、生理学的、病態生理学的および薬理学的に非常に重要なANF/NO/cGMP/cGMP蛋白質キナーゼシグナル経路の重要な構成成分であり、且つcAMP/cAMP蛋白質キナーゼシグナル経路の重要な構成成分である(U.Walter,Blick 1/97 Wurzburg University,pp.79〜81,1997年)。VASPは、ほとんど全てのヒトおよび動物細胞において発現しており、特に血小板、血管平滑筋細胞および繊維芽細胞において高濃度で見出されている。培養細胞においては、VASPはフォーカルコンタクト(細胞/基質接着部位)、細胞/細胞接着、マイクロフィラメントおよび動的膜領域(例えばリーディングエッジ)と関連する(Walter等,Agents and Actions 45S,255〜268,1995年)。【0018】血管系におけるVASPのリン酸化は、血小板の接着/凝結の阻害、平滑筋の収縮/移動並びに細胞外質内皮浸透性の阻害と相関する。VASPは、異なる3つの部位にてリン酸化および脱リン酸化される。(セリン157,セリン239およびトレオニン278;Horstrup等,Eur.J.Biochem.225,21−27 (1994年)を参照)。セリン239は、特にVASPの最初のメチオニンが数に含まれない場合に、しばしばセリン238と表される。【0019】VASPのセリン239は、生理学的および薬理学的なNO供与体、および血小板阻害剤および血管拡張薬に応答して、無傷なヒト血管細胞(血小板、内皮細胞および平滑筋細胞)においてリン酸化される。VASPのセリン239のリン酸化は特に、cGMP経由で、ナトリウム排泄増加ペプチドのような重要なホルモンまたはNO放出物質および薬剤により活性化される、cGMP依存性蛋白質キナーゼによって媒介される。VASPのセリン239のリン酸化は、さらにcAMP増加ホルモンおよび薬剤により活性化される、cAMP依存性蛋白質キナーゼによって媒介される。【0020】cAMP依存性蛋白質キナーゼは主にセリン157位をリン酸化するが、VASPのセリン239位もまたリン酸化する。セリン157位におけるVASPのリン酸化もまた、ヒト血小板におけるフィブリノーゲンの糖蛋白質IIb−IIIaとの結合の阻害と密接に相関することが観察される(Horstrup等,Eur.J.Biochem.225,21−27 (1994年))。【0021】生物学的物質、例えば組織および細胞の抽出物においてVASPがリン酸化される程度の測定、特に239位および/または157位におけるVASPのリン酸化の測定は、重要な生化学的パラメータとなり、その測定は、心房性ナトリウム排泄増加因子(ANF)、グアニリン[guanylin]、NO−放出物質および薬剤などのcGMP増加および/またはcAMP増加ホルモンまたは薬剤の全てを検出する診断システムの開発を可能にし、さらにインビボ内皮機能に関して結論を引き出すことを可能にする。【0022】可逆的にリン酸化された蛋白質に特異的に結合する抗体は、US 5,599,681、W0 93/21230およびU.Walter,Blick 1/97 Wurzburg University,pp.79−81,1997年に記載されている。【0023】本発明の課題は、生物学的物質中におけるVASPのリン酸化状態を迅速で単純な手法にて定性的および/または定量的に測定し得る生化学的/免疫生物学的方法を開発することである。本課題は、VASPがリン酸化形態で存在する場合に抗原としてVASPにのみ結合する抗体の供給によって達成される。故に、本発明は、一般的にはVASPがリン酸化形態で存在する場合に抗原としてVASPにのみ結合する抗体に関する。【0024】本発明の意味においては、抗体は、VASPにおけるリン酸化領域を特異的に認識する、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体(Mab)の両方およびその断片、さらにSCFV断片または他の合成もしくは組換え蛋白質領域と理解される。【0025】抗体の断片には、標的抗原、この場合VASPまたはその特定の部分に結合し得る抗体の任意の部分が包含される。抗体断片には、具体的にはF(ab′)2、Fab、Fab′およびFv断片が包含される。これらは、抗体の任意のクラスから作成することができるが、典型的にはIgGまたはIgMから作られる。これらは、慣用の組換えDNA技術によって、または古典的方法を用いるパパインもしくはペプシンでの蛋白質分解消化によって作成することができる。CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,chapter2,Coligan等,eds.,(John Wiley & Sons 1991−92)を参照。【0026】F(ab′)2断片は典型的には約110kDa(IgG)または約150kDa(IgM)であり、そしてジスルフィド結合によってヒンジにおいて連結された2つの抗原結合部位を含む。全てではないとしても実質的に全てのFcがこれら断片を欠いている。Fab′断片は典型的には約55kDa(IgG)または約75kDa(IgM)であり、例えばF(ab′)2断片のジスルフィド結合を還元することによって生成させることができる。生じた遊離のスルフヒドリル基は、都合良くFab′断片を検出試薬(例えば酵素)などの他の分子と結合させるために用いることができる。Fab断片は一価であり、(任意の供給源由来で)通常は約50kDaである。Fab断片は、抗体の抗原結合部位の軽(L)鎖および重(H)鎖、可変(それぞれVLおよびVH)領域および定常(それぞれCL、CH)領域を包含する。HおよびL部分は、分子内ジスルフィド架橋によって連結されている。【0027】Fv断片は典型的には約25kDa(供給源を問わず)であり、軽鎖および重鎖両方の可変領域(それぞれVLおよびVH)を含む。通常は、VL鎖およびVH鎖は共に非共有相互作用によってのみ保持され、故にこれらは容易に分離される。しかし、小さいサイズの利点を有しており、より大きいFab断片と同じ結合特性を保持する。従って、例えばグルタルアルデヒド(または他の化学的架橋剤)、分子間ジスルフィド結合(システインの導入による)およびペプチドリンカーを使用して、VL鎖およびVH鎖を連結するために、方法が開発されてきた。生じたFvは、単一鎖(即ち、SCFv)である。【0028】1つの好ましい方法は、組換え法によるSCFvの生成を包含し、別の抗体源からの可変鎖を混合および適合させることによって新規な特異性を有するFvの生成が可能である。典型的な方法において、カセット領域の発現を促進する、適当な制御エレメントを含む組換えベクターが提供される。カセット領域は、ペプチドリンカーをコードするDNAを含み、融合蛋白質を生成するために、リンカーの5′末端および3′末端の両方において好都合な部位を備える。目的の可変領域をコードするDNAをベクター中にクローニングして、リンカーを有する融合蛋白質を生成させる、即ちSCFvを生成させることができる。【0029】模範的な別法において、2つのFvをコードするDNAを、リンカーをコードするDNAに連結することができ、そして生じた3部からなる融合物を慣用の発現ベクター中に直接連結することができる。これらの方法のいずれかにより生成したSCFv DNAは、選択したベクターに依存して、原核細胞または真核細胞において発現させることができる。【0030】好ましくは、VASPがリン酸化形態において存在する場合にのみ抗原としてVASPに結合するモノクローナル抗体およびその断片が堤供される。特に好ましくは、239位のセリンがリン酸化されている(ホスホセリン239 VASP)場合にのみ抗原としてVASP、またはVASPのセリン239周辺のペプチド配列を含むペプチドに結合する、モノクローナル抗体およびその断片がさらに提供される。【0031】本発明の意味の範囲内において、用語VASPは、VASPの誘導体、即ち機能的に等価であるVASPの一部分、突然変異体、断片または変異型をも意味すると理解され、例えば、さらにセリン157位および/またはトレオニン278位においてリン酸化されているホスホセリン239 VASP、並びに例えば、グリコシル化突然変異体、他の共有結合型修飾体および蛋白質/蛋白質相互作用に対して重要な構造エレメントである。本発明の意味の範囲内において、用語VASPは、ヒトVASPおよび他の種由来のVASP、特にラット、マウス、ウサギ、イヌ、ブタまたはサルなどの哺乳類由来のVASPを包含する。【0032】抗体は、慣用の方法、例えばKohlerとMilstein(KohlerとMilstein, Nature 256; 495, 1975年)に記載される技術に従って作製することができる。典型的には、リン酸化部位に基づく選択性を所望する場合、抗体はVASPのリン酸化形態に対して生じたものである。単離した抗体は、慣用の方法を用いて選択性を確実にするためにスクリーニングすることができる。抗体を、セリン157、セリン239および/またはトレオニン278を含むVASPのペプチド断片に対して生じさせるのが好ましい。【0033】抗原性VASPペプチドの長さは、体液応答を引き起こし得る限り、重要ではない。典型的な抗原性ペプチドは、約50アミノ酸未満の長さである。いくつかの好ましいペプチドは、約20アミノ酸の長さ未満である。最も好ましいペプチドは、約6〜約12アミノ酸の範囲の長さである。好ましいペプチドには、KLRKVS239KQまたはRKVS239KQEが包含される。ペプチドは、セリン157、セリン239および/またはトレオニン278においてリン酸化されているのが好ましい。ペプチドは組換え法によって得ることができる。典型的には、ペプチドはVASPの蛋白質分解またはインビトロ合成のいずれか、そしてリン酸化によって作製される。【0034】さらに、好ましくは上述の特性を示し、且つフローサイトメトリーに使用できるモノクローナル抗体が提供される。これは、フローサイトメトリーにおいて慣用的に使用される固定工程にて予測される、抗原のコンフォメーションを変化させ得る条件下に抗原を供した場合であっても、新規な抗体の特異性が保持されることを要求する。新規抗体は、例えばこれらを簡単に試験することにより、フローサイトメトリーにおける使用に対する適合性につき検査される。モノクローナル抗体16C2が特に好ましい。【0035】新規抗体は、それ自体当業者に知られた方法を用いて調製することができる。KohlerとMilstein(KohlerとMilstein, Nature 256; 495, 1975年)により記載される技術を使用するハイブリドーマ細胞の調製は、特にモノクローナル抗体について述べる。精製した抗体の特異性は、例えば下記の試験方法を用いて調査することができる:a) リン酸化VASPを用いて陽性シグナルを観察できなければならないことのみに関連して、cAMP依存性またはcGMP依存性蛋白質キナーゼによって異なる程度までリン酸化した、組換えVASPを用いるウェスタンブロッティング。【0036】b) ヒトVASPまたは異なる様式にて突然変異させ、そしていずれの場合においても3つのリン酸化部位の1つを突然変異させ、これにより消去されたVASP、(S157A)VASP、(S239A)VASPおよび(T278A)VASP、並びにいずれの場合においてもヒトcGMP蛋白質キナーゼをトランスフェクションした細胞、例えばPkt2細胞の抽出物を用いるウェスタンブロッティング。これらの抗体は、ウェスタンブロッティングにおける陽性シグナルがS239A突然変異によって消去されるが、他の2つの突然変異によっては消去されないものが適する。【0037】c) 異なる血管拡張剤(例えばプロスタサイクリンまたはNO供与体)で処理されたヒト血小板またはcAMP蛋白質キナーゼまたはcGMP蛋白質キナーゼの活性化剤で処理されたヒト血小板を用いるウェスタンブロッティング。その結果、抗体は、リン酸化VASPを有する抽出物においてのみ特定のバンドが検出された場合が適する。抗体はまた、ヒト繊維芽細胞を用いる類似の方法、並びにさらにラットおよびマウスの血小板を用いる類似の方法にてスクリーニングすることができる。d) 固定したヒト血小板および内皮細胞を用いる免疫蛍光検査法。陽性シグナルは、VASPがリン蛋白質として存在する場合に観察される。【0038】さらに本発明は、新規モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株に関し、モノクローナル抗体16C2を産生するハイブリドーマ細胞株16C2が特に好ましい。モノクローナル抗体16C2を産生するハイブリドーマ細胞株16C2は、次の番号:DSM ACC2330において、ブタペスト条約の規定に従って、1997年11月6日にDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen (German collection of microorganisms and cell cultures),Mascheroder Weg 1b, D-38124 Braunschweig, Germanyに寄託されている。【0039】新規抗体は、好ましくはインビトロ条件下にて生じるVASPのリン酸化およびインビボ条件下にて生じるVASPのリン酸化の両方を定性的および/または定量的、好ましくは定量的に測定し、VASPのセリン239および/またはセリン157のリン酸化を測定するのに適し、特に好ましくはVASPのセリン239のリン酸化を測定するのに適する。【0040】抗体を用いる定量法は当業者に知られており、例えば上述のCURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY中において見出すことができる。これらの方法には、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノ検定法(RIA)などが包含される。さらに新規抗体は、生物学的物質中のリン酸化されたVASP、好ましくはホスホセリン239 VASPおよび/またはホスホセリン157 VASP、特に好ましくはホスホセリン239 VASPを定性的および/または定量的、好ましくは定量的に測定するのに適する。【0041】生物学的物質は、例えば血小板、白血球、内皮細胞、平滑筋細胞および繊維芽細胞などの細胞抽出物、組織抽出物、細胞切片、細胞組織および細胞と理解される。生物学的物質は、ヒト由来であるか、またはラット、マウス、ウサギ、イヌ、ブタもしくはイヌなどの哺乳類由来とすることができる。ヒト起源の生物学的物質が好ましい。【0042】新規抗体は、当業者に知られた方法に従ってウェスタンブロッティングのオートラジオグラムを定量的に評価する、例えばNIHゲルブロッティング イメージ 1.6[NIH gel blotting Image 1.6]ソフトウェアを用いることによって、または免疫蛍光法によって、生物学的物質中のリン酸化VASP、特にホスホセリン157VASPおよび/またはホスホセリン239VASPを定量的に測定するために用いることができる。【0043】VASPのセリン239およびセリン157のリン酸化とcGMP依存性および/またはcAMP依存性蛋白質キナーゼとの間に存在する相関関係のために、新規抗体は、cGMPシグナル経路およびcAMPシグナル経路の診断、特にcGMPシグナル経路の診断のための薬剤としての使用にも適する。【0044】ウェスタンブロッティング技術および免疫蛍光法を用いて生物学的物質中のホスホセリン239VASPを測定するための新規抗体の使用は、cGMPを増大させる物質、ホルモンまたは薬剤を検出する診断方法の開発を可能にする。挙げることのできる例は、ANF、グアニリン、NO−放出物質または薬剤である。例えば、NO供与体のコースの制御および治療が監視でき、特に進行しうる硝酸耐性現象についての情報を提供する。【0045】VASPのセリン157のリン酸化とcAMP依存性蛋白質キナーゼの活性との間にある相関関係のため、新規抗体は、cAMPを増大させる物質、ホルモンまたは薬物を診断する薬剤としても使用することができる。故に、本発明は、診断および/または治療における新規抗体又はその断片の使用にも関する。新規診断方法は、研究室において人体の外(生体外)で実施することができる方法である。【0046】新規抗体は、異なる種に由来する生物学的物質中のVASPのリン酸化の程度を測定するために使用することができる。述べうる例は、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、ブタまたはサルである。新規抗体を、ヒト、ラット、マウスまたはイヌからの生物学的物質中のリン酸化VASPを測定するために使用するのが好ましい。新規抗体を、ヒトの生物学的物質中のリン酸化VASPを測定するために使用するのが特に好ましい。【0047】新規抗体またはその断片はまた、バイオセンサーにおいて用いることができる。バイオセンサーは、それ自体当業者に知られている。抗体、レクチンまたは受容体などの第2特異的結合パートナーを用いる方法が特に好ましい。この場合において検出および定量するために、特異的結合パートナーの1つに検出可能な標識を行うことができる。これらの標識はそれ自体当業者に知られており、例えば発色団、発光団、蛍光団、酵素、放射性アイソトープまたは着色もしくは無着色粒子とすることができる。未標識の特異的結合パートナーを直接的または間接的に、例えば別の抗体またはビオチン/アビジン架橋によって、それ自体当業者に知られた方法を用いて固相に結合させる方法が好ましい。【0048】新規抗体またはその断片は、当業者に知られた方法によって放射線標識して、イムノシンチグラフィまたは免疫療法に使用することができる。また、これらのモノクローナル抗体は、活性化合物のキャリアとして用いて内皮機能不全に起因する疾患の治療に使用することができる。Mab 16C2のV遺伝子の全ヌクレオチド配列の分析に続いて、例えば超可変領域をヒトMab骨格に挿入することによって抗体構築物を作製することが技術的に可能である(Jones等, Nature 321, 522-525, 1986年;Verhoyen等, Science 239, 1534-1536, 1988年)。【0049】適当ならば、例えば当業者に知られた方法を用いて固定された全血試料においてフローサイトメトリーを実施することによって、血小板中の抗原に結合した抗体を定量するのが好ましい。フローサイトメトリーの方法は当業者に知られており、例えばG. Otten and W.M. Yokoyama (1992年), “Flow cytometry analysis using the Becton Dickinson FACScan", Current Protocols in Immunology, 5.4.1-5.4.19に記載されるように実施することができる。【0050】新規抗体を使用する、VASPのリン酸化、特にVASPセリン239のリン酸化のフローサイトメトリー分析はヒト血小板に限定されるものではなく、リンパ球、単球、白血球、内皮細胞および平滑筋細胞などの他のタイプの細胞においても実施することができる。【0051】フローサイトメトリーを使用して、新たに採取したヒト血小板において新規抗体を用いてVASP、特にホスホセリン239VASPのリン酸化を測定することは、NOおよびプロスタサイクリンなどの内皮因子のインビボ活性を生体外で測定することを可能にし、その結果、例えば動脈硬化、高血圧、糖尿病、心不全および腎不全などの心臓血管の疾患において観察されるような内皮の機能または内皮の機能不全を評価することを可能にする。【0052】新規抗体を用いることによってVASPのリン酸化、特にVASPセリン239のリン酸化を測定することは、上述した疾患の治療の制御を可能にする。硝酸許容性などの治療に対する抵抗性の進行もまた測定することができる。新規抗体はまた、生物学的物質中においてVASPのリン酸化状態および/またはその蛋白質との相互作用に効果を示す治療薬として用いることができる。従って、本発明は、少なくとも1つの新規抗体を含む医薬製剤に関する。【0053】新規製剤は、腸内(経口)、非経口(静脈)、直腸または局所(局所)で用いることができる。これらは、溶液、粉末(錠剤またはマイクロカプセルを包含するカプセル)、リポソーム製剤、脂質複合体、コロイド状分散体、注射溶液または坐剤の形態で投与することができる。医薬上慣用な液体または固体充填剤および増量剤、溶媒、乳化剤、滑剤、矯味薬、色素および/または緩衝物質がこの種の製剤化に適する補助的物質である。常用量として0.1〜100mgを体重kg当たり投与する。これらは、適当には少なくとも新規抗体の有効な日用量、例えば30〜3000mgを含む投与単位において投与される。【0054】投与される日用量は、体重、年齢、性別および被検哺乳類の状態に依存する。しかし、より高いまたはより低い日用量を指示してもよい。日用量は、一回につき、単一回の投与単位の形態または幾つかのより少量の投与単位の形態で投与するか、あるいは予め決められた間隔にて小分けされた投与量の形態で複数回で投与することができる。【0055】製剤を調製するために、新規抗体を治療上不活性な有機または無機賦形剤中に入れることができる。ラクトース、コーンスターチまたはその誘導体、獣脂およびステアリン酸またはその塩が、錠剤、被覆錠剤およびハードゼラチンカプセルに対するそのような賦形剤の例である。水、ポリオール、ショ糖、転化糖およびグルコースが溶液の調製に適する賦形剤である。水、アルコール、ポリオール、グリセロールおよび植物油が、注射液に適する賦形剤である。植物油および硬化油、ワックス、脂肪並びに半固体ポリオールは、坐剤に適する賦形剤である。医薬製剤はまた、防腐剤、溶媒、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、色素、香料、浸透圧を変化させる塩、緩衝剤、被覆剤、酸化防止剤、および適する場合、他の治療上活性のある化合物を含むことができる。【0056】本発明はまた、少なくとも1つの新規抗体が医薬上適し且つ生理学的に許容される賦形剤、適する場合には他の適する活性化合物、添加剤または補助物質と共に適する投与形態とされている、新規医薬の製造方法に関する。さらに本発明は、ごく一般的には、VASP特にホスホセリン239 VASPのリン酸化配列を特異的に認識するポリクローナル抗体、SCFv断片または他の合成もしくは組換え蛋白質ドメインなどの他の特異的なプローブを用いることよって、VASPのリン酸化、好ましくはVASPのセリン239のリン酸化を測定する診断方法に関する。【0057】さらに本発明は、リン酸化されたセリン157および/またはトレオニン278を含むVASPの配列を特異的に認識する、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、SCFv断片または他の合成もしくは組換え蛋白質ドメインなどの特異的なプローブを用いることよって、VASPのセリン157のリン酸化および/またはトレオニン278のリン酸化を測定する診断方法に関する。【0058】ジキシン[zyxin]およびビンクリン[vinculin]などのプロリンに富むペプチドに結合し、そして同時にそれ自身のプロリンに富むアミノ酸ドメインがプロフィリンに結合することによって、アダプター分子としてのVASPが作用するようになり、VASPは繊維状アクチンを形成させ得る。この蛋白質/蛋白質相互作用の障害は、不完全な血小板凝結または血管収縮を導き得る。従って、アクチン/ミオシン架橋の形成は、例えば平滑筋細胞の収縮において必須条件である。セリン157位におけるVASPのリン酸化がフィブリノーゲン受容体糖蛋白質IIb/IIIaの阻害と相関することが見出されている(Horstrup等, Eur. J. Biochem., 225, 21-27, 1994年)。故に、セリン157位におけるVASPのリン酸化の測定は、VASPとその細胞内結合パートナーとの相互作用に働き、そして例えば血管の損傷に関連する血管疾患の治療に適する物質または薬物の体系的な検索を可能にする。【0059】特に好ましい態様を実施例に記載する。下記の実施例は本発明を明確にするためのものであり、いずれにしても本発明を制限するものではない。【0060】【実施例】実施例1ホスホセリン239VASPに対するモノクローナル抗体の単離各々、セリン239の周辺のペプチド配列KLRKVS239KQまたはRKVS239KQEを含むリン酸化ペプチドおよび非リン酸化ペプチドを、当業者に知られたFmoc化学に従ってApplied Biosystems社製ペプチドシンセサイザー(モデル 431A)を用いて合成した。リン酸化ペプチド中のホスホセリンは、ペプチド合成中にCalbiochemからのFmocセリン[PO(Obzl)OH−OH]を用いて導入した。MS確認したペプチドをRPCおよびVYDAC 218TPカラムを用いて精製した(純度>98%)。【0061】ブロモ酢酸またはブロモ酢酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sigma)を用いて活性化した後に、この方法で調製したペプチドをチオール化KLH(keyhole limpet hemocyanin, nanoTools)に結合させた。雌Balb/cマウス(6週齢)を、第1回目の注射では完全なFreundのアジュバンドを、続く3回の注射では不完全なアジュバンドを含有するKLH−ホスホペプチド(10μg/マウス)を用いて、14日間隔で4回皮下注射で免疫化した。次いで、マウス(2週間後)を連続して3日間、PBS(リン酸塩緩衝食塩水)中の10μgの免疫源の追加免疫注射に供した。最後の追加免疫注射の1日後、マウスを屠殺して脾臓を取り出した。脾臓細胞を単離し、確立されているKohler/Milstein方法論を用いて、非産生ミエローマ細胞(例えば、PAI-Zellen, J.W. Stocker等. (1982年) Res. Disclosure, 21713)と融合させた。リン酸化/非リン酸化ペプチドをリン酸化/非リン酸化組換えヒトVASPと同様に用いるデファレンシャルスクリーニング法を使用して、ホスホセリン239VASPに対する抗体を分泌する能力につきハイブリドーマ細胞を試験した。【0062】リン酸化/非リン酸化ペプチドを使用する試験について、これらペプチドをDNA-BIND-ELISAプレート(Costar社製)に共有結合させ、ELISA法を用いて、ハイブリドーマの上清をスクリーニングした。ホスホペプチドを認識する上清を、完全にリン酸化された組換え(E.coli系)ヒトVASPを認識するが、脱リン酸化VASPを認識しない能力について、さらに試験した。上述の方法によって陽性と同定されたハイブリドーマ細胞の上清からのモノクローナル抗体を、親チオ酸吸着クロマトグラフィー(POROS 50-OH,nanoTools)によって血清を含まないハイブリドーマ細胞培養物から精製するのが好ましい。【0063】別の試験方法を用いて、VASPがセリン239位においてリン酸化された場合にこの蛋白質のみを認識するマウスIgG1kクラスのモノクローナル抗体として単離した抗体の1つを(クローン 16C2)を同定し、特徴付けることができた。抗体16C2は、使用した条件下では他の蛋白質および他のVASPリン酸化位置を認識しない。それぞれ抗原として、VASP蛋白質のセリン157またはトレオニン278周辺の公知のペプチド配列を含むリン酸化ペプチドを使用することによって、上述のものと類似する方法において、ホスホセリン157VASPまたはホスホトレオニン278VASPを特異的に認識するモノクローナル抗体を単離することができる。Ser239位においてリン酸化されたVASPを認識するモノクローナル抗体の作成はまた、Smolenski等, J. Biol. Chem., 237, 32, 20029-20035 (1998年)に記載されている。【0064】実施例2VASPセリン239リン酸化のフローサイトメトリー分析洗浄ヒト血小板におけるVASPセリン239リン酸化の分析ヒト血小板を調製し、記載(Eigenthaler等, Eur. J. Biochem., 205, 471-481, 1992年)のように、血管作用物質とインキュベーションすることによってVASPリン酸化を刺激した。この反応は、最終濃度約3.5%のホルムアルデヒドで室温で10分間固定することによって停止させる。洗浄処理(随意)後、細胞をトリトンX−100を用いて浸透化させ、次いで洗浄した。直接蛍光標識したかまたは蛍光標識した第2抗体を用いて着色した適当な抗体とインキュベーションすることによって染色を行った。この目的について1ml当たり、適当には0.5〜5μg、好ましくは1〜2μgの第1抗体を使用する。例えばMab 16C2を第1抗体として使用する場合、0.7μg/mlが適する。次いで、例えばBecton Dickinson FACScan(Current Protocols in Immunology, 5.4.1-5.4.19)を使用したG.OttenとW.M.Yokoyama(1992年)に記載されるように、抗体16C2の結合をフローサイトメトリーにおいて測定し、且つ分析した。【0065】実施例3ウェスタンブロッティングを用いた細胞抽出物中のVASPセリン239リン酸化の測定フローサイトメトリー(実施例2)と平行して、ウェスタンブロッティングを用いて、当業者に知られ、例えばEigenthaler等(Eur. J. Biochem., 205, 471-481, 1992年)に記載の方法によって細胞抽出物中のVASPのリン酸化を測定した。使用した抗体の濃度は、測定すべき試料中のVASPの濃度に依存するが、適当には0.1〜5μg/ml、好ましくは0.5〜1.0μg/mlの範囲である。例えば、ヒト血小板およびラット血小板については0.5μg/mlの抗体を使用するのが有利であるが、ヒト臍帯内皮細胞については1.0μg/mlの抗体を使用するのが有利である。原則的には、ウェスタンブロッティング分析による細胞抽出物中の、そしてフローサイトメトリーによる固定した細胞のVASPセリン239リン酸化の分析では同じ結果が得られた。【0066】実施例4全血または血小板に富む血しょう(PRP)中におけるVASPセリン239リン酸化の分析全血またはPRPを血管作用物質とインキュベートし、最終濃度約3.5%のホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定することによってインキュベーションを停止させた。PRPは、Eigenthaler等(Eur. J. Biochem., 205, 471-481, 1992年)に記載されるようにして全血から調製する。PRP中の血小板を遠心分離によってペレット化して、生理学的緩衝液(上述のEigenthaler等、1992年を参照)中に再懸濁させる。血小板を透過処理し、次いで洗浄血小板について上述したように染色する。【0067】実施例5ニトロプルシドナトリウム(SNP)処理後の洗浄ヒト血小板中におけるVASPセリン239のリン酸化刺激の時間経過ヒト血小板を100μM SNPで処理した。細胞試料を0、1、3および5分にて回収した。抗体16C2を用いて、平行して、回収した細胞試料の抽出物のウェスタンブロット分析、および上述のように固定し、そして浸透化させたヒト血小板におけるフローサイトメトリー測定によってVASPセリン239のリン酸化を測定した。NIHゲル−ブロッティング イメージ1.6 ソフトウェアを使用して、ウェスタンブロットのオートラジオグラムを定量分析した。抗体16C2/ホスホセリン239VASP結合における増加(%増加(5分値=最大効果=100%))を表1に示す。【0068】【表1】【0069】実施例6抗体16C2を使用した、cAMP依存性蛋白質キナーゼまたはcGMP依存性蛋白質キナーゼによる組換えVASPのリン酸化の分析精製した組換えヘキサヒスチジン標識VASP(25μg/ml)を、精製したcAMP蛋白質キナーゼ(cAPK)の触媒サブユニット(11μg/ml)または精製したcGMP蛋白質キナーゼ(cGPK;24μg/ml)によってリン酸化した。アリコートを所定の時間において反応混合物から取り出し、即座にSDS含有停止溶液と混合し、煮沸し、SDS−PAGEによって分画した。VASPのリン酸化を、クマシーブルー染色、およびポリクローナルVASP抗体(M4, Halbrugge M.等,J. Biol. Chem. 265, 3088-3093 (1990年),Alexis Corporation,Alte Hauensteinstraβe 4, CH-4448 Laufelfingen, Switzerlandから入手可能)またはモノクローナルVASP抗体16C2のいずれかを用いたウェスタンブロッティングによって分析した。クマシーブルー染色におけるVASPの下のバンドはcAPKであり、VASPの上方はcGMP−PKである。実施したSDS−PAGEは、セリン157のリン酸化による46kDaから50kDaへのVASPの移動度における変化を示しており、セリン157のリン酸化にはcAPKが好ましい。セリン239のリン酸化(16C2抗体によって検出)はcGMP−PKによるのが好ましい。【0070】実施例7種々のリン酸化変異体を含有するPtk2細胞における、トランスフェクションしたVASPのリン酸化の分析トランスフェクションしたヒトVASPおよびVASP変異体のリン酸化をPtk2細胞において調査した。野生型VASPおよび各々突然変異(不活化)させたリン酸化部位(セリン157,セリン238またはトレオニン277の変更)を含有するVASP変異体を、ヒトcGMP蛋白質キナーゼ1βと共にPtk2細胞にトランスフェクションし、そしてCMVプロモーターの制御下で発現させた。Ptk2細胞は、内在性VASPおよびcGMP蛋白質キナーゼを非常にわずかしか止めていない。トランスフェクションの2日後、細胞を30μM 8pCPT−cGMPと共に30分間インキュベーションして、細胞抽出物を単離した。次にこれらの細胞抽出物中におけるVASPのリン酸化をポリクローナル抗体M4およびモノクローナル抗体16C2を用いるウェスタンブロットによって調査した。46kDaから50kDaへのVASPのリン酸化依存性の変化は、セリン157を不活化した場合(変異体S157A)には存在しなかった。抗体16C2によって認識されるシグナルは、セリン239を不活化した場合(変異体S239A)には存在しなかった。これらの分析において、トレオニン277の変異体は、野生型VASPと同様な挙動を示した。【0071】実施例8種々の血管拡張剤およびcAMP/cGMPアナログで刺激した後のヒト血小板におけるVASPのリン酸化の分析洗浄したヒト血小板(0.7×109個細胞/ml)を1μM Pg−I2(プロスタサイクリン)、0.5mM 5,6−DCI−cBIMPS(細胞膜浸透性cAMPアナログ)、10μM SNP(ニトロプルシドナトリウム)または1mM 8pCPTcGMP(細胞膜浸透性cGMPアナログ)とインキュベートした。アリコート(2.8×107個細胞)を所定の時間後に取り出し、SDS停止溶液と混合し、煮沸し、次いでVASPリン酸化についてウェスタンブロット法を用いて調査した。ポリクローナル抗体M4またはモノクローナル抗体16C2を用いて分析を実施した。セリン157リン酸化は、46kDaから50kDaへのVASPのシフトによって定量し、セリン239リン酸化は16C2抗体によって与えられるシグナルによって定量した。【0072】実施例9ラット血小板中におけるVASPのリン酸化ラット血小板(0.7×109個細胞)を100μMニトロプルシドナトリウム(SNP)、10μMプロスタグランジンE1(PgE1)またはこれらのいずれかを添加せずに5分間インキュベートした。これらラット血小板の抽出物をウェスタンブロッティングによって分析した。ブロットは、46kDaから50kDaへのVASPのリン酸化依存性シフト(セリン157リン酸化)および16C2抗体によって与えられるリン酸化依存性シグナル(セリン239リン酸化)もまたラット血小板中において起こることを示した。同様な結果は、マウス血小板を用いても得られる。【0073】実施例10ヒト血小板において実施したVASPおよびホスホ−VASPの免疫蛍光調査ヒト血小板(血小板に富む血しょう中,PRP)をガラススライド上に置き、押さえつけ、そして45分間拡げた。次にこれらの血小板をガラススライド上で、100μM 8pCPTcGMP無しに(AおよびC)またはこれと共に(BおよびD)15分間インキュベートした。次いで細胞を直ぐに4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.2%トリトンX−100で浸透化させた。これらをポリクローナル抗体M4(1:100)またはモノクローナル抗体16C2とインキュベートし、次いで通常の第2抗体とインキュベートした。写真は16C2抗体を用いた場合におけるリン酸化依存性シグナルの出現を示すのに対して、ポリクローナル抗体M4を用いたシグナル(免疫蛍光法において、分別されていないために、46kDaおよび50kDa VASPの合計)は、リン酸化−非依存性である。【0074】【表2】【0075】【表3】 VASP(血管拡張剤−刺激リン蛋白質)がセリン239位においてリン酸化されている(ホスホセリン239VASP)場合にVASPにのみ結合することができる、受託番号DSM ACC2330を有するハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体16C2またはその断片。 診断薬としての請求項1記載の抗体16C2またはその断片の使用。 生物学的物質中のホスホセリン239VASPを定性的または定量的に測定するための請求項2記載の使用。 生物学的物質がヒト血小板またはヒト血液である請求項3記載の使用。 ホスホセリン239の測定がウエスタンブロッティング法により実施される、請求項3または4記載の使用。 ホスホセリン239の測定がフローサイトメトリーにより実施される、請求項3または4記載の使用。 生物学的物質中のcGMPおよび/またはcAMPの濃度に作用する物質を検出するための請求項2〜6のいずれか一項に記載の使用。 内皮因子のインビボ活性を測定するための請求項2〜6のいずれか一項に記載の使用。 内皮の機能障害を検出するための請求項2〜8のいずれか一項に記載の使用。 モノクローナル抗体16C2を産生するハイブリドーマ細胞株DSM ACC2330。 請求項1記載の抗体16C2またはその断片を含有する診断用キット。 請求項1記載の抗体16C2またはその断片を使用することを特徴とする、生物学的物質中のVASPのホスホセリン239のリン酸化状態および/またはVSAPの蛋白質相互作用の測定方法。