タイトル: | 特許公報(B2)_5α−還元酵素活性を調節するための方法及び組成物 |
出願番号: | 2000518662 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/05,A61P 13/08,A61P 35/00,A61P 43/00 |
リャオ,シューツン ハイパッカ,リチャード・エイ JP 4738592 特許公報(B2) 20110513 2000518662 19981030 5α−還元酵素活性を調節するための方法及び組成物 アーチ・デヴェロップメント・コーポレイション 500205002 奥山 尚一 100099623 有原 幸一 100096769 松島 鉄男 100107319 河村 英文 100114591 吉田 尚美 100118407 中村 綾子 100125380 深川 英里 100125036 森本 聡二 100142996 角田 恭子 100154298 広瀬 幹規 100162330 リャオ,シューツン ハイパッカ,リチャード・エイ US 60/063,770 19971031 20110803 A61K 31/05 20060101AFI20110714BHJP A61P 13/08 20060101ALI20110714BHJP A61P 35/00 20060101ALI20110714BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110714BHJP JPA61K31/05A61P13/08A61P35/00A61P43/00 111 A61K 31/00-31/80 特表平11−507022(JP,A) 特表平10−500657(JP,A) 特開平02−049731(JP,A) 特開平07−238037(JP,A) 特開平08−337510(JP,A) BIOCHEM. BIOPHYS. RES. COMMUN.,1995年,214(3),P.833-838 BIOCHEM. BIOPHYS. RES COMMUN.,1995年,212(1),P.172-177 LIFE SCI.,1993年,52(22),P.1797-1804 ANTICANCER DRUGS,1996年,7(4),P.461-468 CANCER LETT.,1995年,96(2),P.239-243 Res Commun Mol Pathol Pharmacol,1996年,92,3,341-360 4 US1998023041 19981030 WO1999022728 19990514 2003524577 20030819 25 20051031 福井 悟 【0001】技術分野本発明は、一般に、5α-還元酵素のアイソザイムを含むステロイド-還元酵素の活性を調整することによって、男性ホルモン及び他のステロイドホルモンの作用及び機能を調節する化合物と、組成物と、方法とに関する。さらに詳細には、本発明は、動物、ヒト、植物もしくは微生物の細胞もしくは器官において男性ホルモンもしくは他のステロイドホルモンによって調整される、又は男性ホルモンもしくは他のステロイドホルモンの異常な作用によって生じる過程を調節又は疾患を治療するための本発明の化合物の用途に関する。本発明は、5α-還元酵素アイソザイム阻害剤として及び治療剤としての天然及び合成フラボノイド、カテコール、クルクミン関連物質、キノン、カテキン及び脂肪酸並びにそれらの類似物又は誘導体の用途に関する。本発明の化合物は市販目的の具体的な製品の望ましい製造を促進又は調整する際にも使用することができる。【0002】前立腺及び皮膚などの男性ホルモン感受性器官の一部では、テストステロン(T)は5α-還元酵素によってより活性の強い代謝物である5α-ジヒドロテストステロン(DHT)に変換される(アンダーソン(Anderson)及びリアオ(Liao)、1968;ブルチョフスキー(Bruchovsky)及びウィルソン(Wilson)、1968)。5α-還元酵素の他の基質も、ある種の特性を有する場合もある還元型の生成物に変換される。5α-還元酵素の阻害は、良性前立腺肥大、乳癌及び前立腺癌、皮膚疾患、脂漏症、一般的な禿頭症、男性型多毛症及び化膿性汗腺炎などの男性ホルモン依存性疾患の治療法を開発するための独自の方法となる。種々の化合物が5α-還元酵素活性を阻害すると報告されている(リアング(Liang)及びリアオ、1992;ヒルシュ(Hirsh)ら、1993;ラッセル及びウィルソン、1994;リアオ及びヒーパッカ(Hiipakka)、1995)。5α-還元酵素阻害剤であるフィナステライド(プロスカー(Proscar)社)は血清及び前立腺のDHT濃度を低下し、前立腺容積を低下し、一部の患者では尿量を増加する(ストナー(Stoner E.)フィナステライド研究グループ、1992)。γ-リノレン酸(リアング及びリアオ、1992)及びカテキン-3-没食子酸塩(リアオ及びヒーパッカ(Hiipakka)、1995)などのある種の脂肪族不飽和脂肪酸は、インビトロにおいてラット及びヒトの肝臓及び前立腺の5α-還元酵素活性を阻害することができる。【0003】5α-還元酵素は、ハムスターの皮脂腺(タカヤス及びアダチ、1972)及びヒト毛嚢(ランダル(Randall)、1994)を含む多数の器官に見られる(ラッセル及びウィルソン、1994;ヒーパッカら、1993)。2種の5α-還元酵素アイソザイムがラット及びヒトにおいて同定されている(ラッセル及びウィルソン、1994)。1型アイソザイムは肝臓、腎臓、脳及び肺などのラット組織に主に存在するが、2型酵素はラット精巣及び精巣上体により豊富に存在する。両アイソザイムは新生児の皮膚に見られるが、1型アイソザイムは思春期以降の皮膚に発現される主要な形態である。1型アイソザイムは脱毛症が進行中の頭皮にも発現されている。2型アイソザイムが皮膚及び頭髪の成長に独自の役割を果たしているという可能性は排除できない。4-アザステロイドであるフィナステライドは5α-還元酵素の競合阻害剤で、アイソザイム1に対するよりもアイソザイム2に対して30倍親和性が高い(ラッセル及びウィルソン、1994)。一方、緑茶カテキン、エピカテキン-3-没食子酸塩及びエピガロカテキン-3-没食子酸塩は1型酵素のより効果的な阻害剤であり、γ-リノレン酸は両酵素を同程度に阻害する(リアオ及びヒーパッカ、1995)。【0004】男性ホルモン性脱毛症のサルモデルであるベニガオザルでは、経口投与されたフィナステライドは前頭部の禿頭症を防止する(ディアニ(Diani)ら、1992)。肋骨脊柱角の各側に1つずつある器官であるハムスターの一対の側腹部器官は男性ホルモン刺激に感受性が高い。γ-リノレン酸の局所適用は、対側的な側腹部器官に対する全身作用を示すことなく、処理後のハムスターの側腹部器官の男性ホルモン依存的な発育のみを抑制し、この影響は5α-還元酵素の局所的な阻害作用による可能性が非常に高い。【0005】医学分野に周知な男性ホルモンの用途には、例えば、性機能低下症及び貧血の治療が含まれる。成績を向上させるための運動選手の男性ホルモンの乱用はよく知られている。男性ホルモンはまた、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺癌、禿頭症、座瘡、肥満並びに血液及び器官中の望ましくない脂質及びステロイドプロフィールの形成を促進することが知られている。米国の年齢50歳以上の男性の約70%はBPHの病理学的徴候を有する。前立腺癌は米国における男性の癌による死因の第2位である。男性型禿頭症は遺伝的に罹患しやすい男性では十代でも発症することがあり、それは30歳代の白人男性の30%、40歳代の白人男性の40%及び50歳代の白人男性の50%に存在すると推定されている。座瘡は医師によって治療される最も一般的な皮膚疾患である。女性では、男性型多毛症は男性ホルモン過剰の指標の1つである。卵巣及び副腎は女性の主要な男性ホルモン源である。【0006】男性では、血液中を循環する主要な男性ホルモンはテストステロンである。血液中のテストステロンの約98%は血清タンパク質と結合しており(性ステロイド結合グロブリンに対して高い親和性で結合し、アルブミンに対して低い親和性で結合する)、わずか1〜2%が遊離型で存在する。結合が容易に解離可能であるアルブミン結合テストステロン及び遊離型は生物利用可能であると考えられ、総テストステロンの約50%を占める。テストステロンは見かけ上拡散によって標的細胞に侵入する。前立腺、精嚢、皮膚及びいくつかの他の標的器官では、テストステロンはNADPH-依存性5α-還元酵素によってより活性な代謝物である5α-DHTに変換され、5α-DHTは次いで標的器官の男性ホルモン受容体(AR)に結合する。5α-DHT-受容体複合体はゲノムの特定の部分と相互作用して、遺伝子の活性を調節する(リアオら、1989)。テストステロンは同一のARに結合すると思われるが、5α-DHTより親和性が低い。5α-還元酵素活性が低い筋肉及び精巣などの組織では、テストステロンがより活性の強い男性ホルモンである場合もある。【0007】男性ホルモン応答性が異なる組織におけるテストステロンと5α-DHT活性の差は、5α-還元酵素欠損症患者における所見によってさらに示唆されている。5α-還元酵素欠損症の男性は女性様の外生殖器を有して誕生する。彼らが思春期に達したとき、テストステロンの血漿中濃度は正常かわずかに高い。彼らの筋肉の発育は加速し、陰茎は肥大し、声は低くなり、女性に対する性欲が発生する。しかし、彼らの前立腺は依然として触知可能でなく、彼らは体毛が少なく、座瘡及び禿頭症を発症しない。【0008】5α-還元酵素欠損症患者における所見は、5α-還元酵素の阻害剤は前立腺癌、BPH、座瘡、禿頭症及び女性の男性型多毛症の治療に有用であると思われることを示唆している。臨床観察及び動物実験は、精子形成、性欲の維持、性行為及び性腺刺激ホルモン分泌のフィードバック阻害にはテストステロンの5α-DHTへの変換が必要ないことを示している。これは、テストステロン及び5α-DHT両者の作用を排除する他のホルモン療法とは対照的である。【0009】5α-還元酵素阻害剤による男性ホルモン依存性皮膚疾患及び前立腺疾患の治療は、現在利用されているホルモン療法より副作用が少ないことが期待されると思われる。これらには、去勢、エストロゲン療法、高用量のルプロライド(Luprolide)などの超活性生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン並びにフルタミド、酢酸シプロテロン及びスピロノラクトンなどの、テストステロン及び5α-DHTのAR結合を阻害する競合的抗男性ホルモンの使用が含まれる。競合的抗男性ホルモンの長期効果も、生殖腺刺激ホルモン分泌の男性ホルモンによるフィードバック阻害の阻止によって無効にされる。テストステロンは濃度がより高いと抗男性ホルモンの作用より勝ることになる。【0010】過剰量の5α-DHTは、BPH、座瘡、男性型禿頭症及び女性の特発性男性型多毛症を含むある種の男性ホルモン依存性病理学的状態に適応される。5α-還元酵素活性は、禿頭症が進行している男性の頭皮の毛嚢では禿頭症が進行していない男性より高いと報告されていることが示されている。【0011】5α-還元酵素阻害剤による男性ホルモン依存性皮膚疾患及び前立腺疾患の治療は、全ての男性ホルモン作用を無差別に阻害するホルモン療法より副作用が少ないので、異なる種類の5α-還元酵素阻害剤を提供することが望ましい。【0012】本発明は、一般に、5α-還元酵素活性を調整することにより標的器官及び細胞の男性ホルモン活性を抑制するためのある種の化合物の利用に関する。ある種の態様では、本発明の化合物は、標的細胞における活性な男性ホルモンの形成及び利用を阻害することによって男性ホルモン活性を抑制するために使用される。結果として、本発明は、前立腺肥大、前立腺癌、男性型多毛症、座瘡、男性型禿頭症、脂漏症及び男性ホルモンの活性亢進に関連する他の疾患を含むが、それらに限定されない多種多様な状態の治療に有用である。本発明の化合物のいくつかは体重を効果的に低下することが報告されており、いくつかの症例では前立腺及び他の器官などの男性ホルモン依存性器官重量を低下することが報告されている。本発明の化合物の有効性は、血管形成、細胞-細胞相互作用に関与する他の機序に対する作用並びに種々の成分と器官及び細胞との相互作用に依存する場合もある。【0013】本発明を実施する際に有用な化合物には飽和及び不飽和脂肪酸、天然及び合成類似物、及びこれらの脂肪酸から形成することができる誘導体並びにこれらの脂肪酸の代謝物及び酸化生成物が含まれる。これらの脂肪酸及び他の脂肪酸並びにそれらの誘導体の使用も考慮される。カテキン化合物、特に没食子酸エピカテキン(ECG)及び没食子酸エピガロカテキン(EGCG)に構造が類似するカテキンも有用である。EGCGは、5α-還元酵素が介するいくつかの過程を調整する際に驚くべき活性を有することが見いだされている没食子酸エピカテキン分子に追加のヒドロキシル基を有する。変更性ECG分子にこのような追加のOH基を有するEGCG誘導体は、ヌードマウスにおいて体重低下を誘発する際に、特に包皮腺、前立腺腹側部、前立腺側背部、凝固腺、精嚢、ヒト前立腺癌及び乳癌などの男性ホルモン感受性器官のサイズを低下する際に活性であることが示されている。【0014】脂肪酸化合物との類似性によって、ある種の活性な没食子酸カテキンは容易に標的細胞に侵入することができない。しかし、阻害剤化合物のヒドロキシル基のエステル化はこれらの化合物が標的細胞に侵入する能力を増強するはずである。一旦細胞内に侵入すると、エステルはエステラーゼによって容易に5α-還元酵素を阻害することができるアルコールに加水分解されると思われる(ウィリアムズ、1995)。【0015】本発明のさらに詳細な態様では、本発明者らは、ある種のカテキン、特にEGCGは総体重の低下と前立腺重量の低下を区別してそれらに影響を与える体重低下を促進するために投与することができることを発見した。具体的な実施例では、総体重の低下に対する割合については、前立腺重量の低下は割合的には3倍よりも多いことが示された。体重及び器官重量の低下は、体重及び器官重量の増加を制御する経路における共通の段階をEGCGが妨害することによると思われる。EGCG及び関連化合物はある種の脂質合成及び蓄積を調整する(おそらくタンパク質を含有する)受容体高分子と相互作用し、それを妨害することができる。脂質は遺伝子発現、細胞の発生及び分化並びに器官の成長を調整することができる。細胞及び器官における脂質代謝のある種の妨害は器官、特に、前立腺、皮脂性器官、包皮性器官及び他の分泌器官の成長を制御することができる。ある種の適用では、これらの器官の良性又は異常な成長又は癌がカテキン関連化合物の投与によって治療され得る又は予防することさえできることが期待される。【0016】カテキン化合物はヒト前立腺癌及び乳癌の細胞増殖を停止又は低下することが実証されている。カテキン化合物の有効性はこれらの化合物が実験動物に投与される方法に依存することが示された。腹腔内適用は経口投与よりさらにより有効であった。前立腺などの器官への直接適用が非常に有効であることが期待される。驚くべきことに、EGCGは動物モデルにおいてヒト前立腺癌及び乳癌を抑制する際にまたそれらのサイズを低下する際にも有効であった。その効果はEGCGで例示したが、構造的に類似しているカテキン化合物、特にECGと比較したとき、少なくとも1つの追加のヒドロキシル基を有する点でEGCGに構造的に類似しているカテキン化合物も有効である。従って、8つのヒドロキシル基を含有するEGCG種は、7つのヒドロキシル基を含有するECGより体重を低下する際に有意により有効である。この一般構造の化合物はヒト前立腺癌の化学的予防及び化学療法に特に有効であることが期待される。EGCGの構造の一部に類似する構造部分を有する化合物も有効であることが期待される。【0017】化合物は局所適用又は全身適用によって抗男性ホルモン剤として使用することができる。この目的のための製剤は担体、防止剤、(ビタミンC又はE及び種々のカテキン及びポリフェノールなどの)抗酸化剤並びに他の薬学的及び薬理学的物質を含んでもよい。このような化合物は、標的部位に送達される分子認識に関与している送達系(経口、局所適用、注射又は植え込み)に使用することができることも期待される。このような送達系は、特に、リポソーム技法又は免疫学的装置に関係してもよい。【0018】受容体及び高分子の産生又は細胞作用を調整することができる天然又は合成化合物は、脂質合成、体重及び/又は男性ホルモンの機能に関連する、肥満、BPH、前立腺癌、皮膚疾患、禿頭症、乳癌及び男性型多毛症などの異常状態の治療に有用である。【0019】種々の癌に対する化合物の有効性を実証するために動物モデルを使用することができる。例えば、シオノギ(Shionogi)腫瘍及び他の腫瘍は雄ラットで検討することができる。ヒト乳癌及び前立腺癌の細胞増殖はヌードマウスで検討することができる。又は、発癌性物質によって誘発される齧歯類の乳癌及びトランスジェニックマウスにおいて誘発される他の癌又はラットにおけるダニング(Dunning)腫瘍も同様にEGCG及び関連化合物による化学療法について分析することができる。【0020】本発明に開示する化合物、又は天然では本発明の化合物の1つ又は複数を含有する治療的に有効な量の薬学的組成物を、ある場合には他の治療剤及び担体と併用して使用すること又は天然もしくは合成産物の状態で使用することは種々の疾患の治療に適当である。これらの疾患には、例えば、男性型禿頭症、女性の男性型多毛症、皮膚疾患、BPH、前立腺癌、乳癌、皮膚癌及び他の器官の癌のように男性ホルモンの過剰な活性が示されている状態が含まれるが、それらに限定されない。【0021】本発明はまた新規化合物に関する。本発明の化合物は式、【化6】(式中、xは-NHCH2CH2-又はCH=CH-であり、R1、R2及びR3は各々-H、-OH又はOCH3であってもよいが、ただしR1、R2及びR3のうち1つだけは-Hであってよく、R4、R5及びR6は各々-H、-OH、-OCH3又はN(CH3)2であってもよいが、ただしR4、R5及びR6のうち1つだけは-Hであってもよく、Nは0又は1である)及び式、【化7】(式中、Rは、【化8】である)を有する。【0022】本明細書に開示し、主張する全ての組成物及び方法は本願の開示内容に鑑みて不当に実験することなく実施することができる。本発明の組成物及び方法は好ましい実施態様に関して記載されているが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく本明細書に記載されている組成物、方法及び方法のステップ又はステップの順序に変更を加えることができることは当業者にあきらかである。さらに詳細には、化学的且つ生理学的に関連があるある種の物質は本明細書に記載されている物質と交換することができるが、同じ又は同様の結果が得られると思われることは明らかである。当業者に明らかな全てのこのような同様の交換及び改良は添付の請求の範囲によって規定される本発明の精神、範囲及び概念の範囲内であると考えられる。【0023】I.5α-還元酵素活性本発明は、本明細書に開示する化合物の1種などの5α-還元酵素阻害剤の有効濃度に細胞を暴露するステップを含む、5α-還元酵素を阻害する方法に関する。異常な男性ホルモン作用を遮断するためにこのような阻害剤を使用することは、他の抗癌剤、化学療法、切除、放射線療法等と併用して癌を治療する働きをすると考えられている。本明細書の化合物は、5α-還元酵素阻害剤として作用する以外に、抗腫瘍作用に至る又は前立腺又は他の器官の異常な成長を抑制することができる他の効果を有し得る。【0024】ほ乳類では、5α-還元酵素は、小胞体膜及び隣接する核膜を含む細胞内の膜と非常に密接に関係がある。活性な5α-還元酵素を溶解化し、精製する試みはほとんど成功していない。従って、5α-還元酵素活性のアッセイは、NADPHの存在下において全細胞又はミクロソーム及び核調製物によるテストステロンの5α-DHTへの変換速度を測定することによって実施される(酵素アッセイ)。又は、5α-還元酵素の活性は、還元酵素との結合に対してテストステロンと強力に競合する、[3H]-4-MA([3H]4-MA-結合アッセイ)などの強力な放射性阻害剤のNADPH-依存性非共有結合を追跡することによって信頼性よくアッセイすることができる。異なる器官又は動物由来のミクロソーム調製物を比較のために使用するとき、この2種のアッセイの結果は非常によく相関する。【0025】A.5α-還元酵素の[3H]4-MA結合アッセイ簡単に説明すると、最終容量0.15 mlの結合アッセイ溶液はミクロソーム(2〜20μgのタンパク質)、0.07μCiの[3H]4-MA、0.1 mM-NADPH、1 mM-ジチオスレイトール及び50 mM-リン酸カリウム、pH 7.0を含有し、示した量の脂質又は阻害剤調製物を含有又は含有しない。脂質はエタノールに溶解して1〜5μlの容量を添加する。対照の試験管には同量のエタノールを添加する。0℃において1時間インキュベーション後、ワットマン(Whatman)ガラス線維フィルターでミクロソームを回収し、0.01%CHAPSを含有する20 mMリン酸カリウム、pH 7.0の10 mlで洗浄して未結合の[3H]4-MAを除去して、ミクロソームに結合した[3H]4-MAを求める。【0026】B.ミクロソーム5α-還元酵素の酵素活性のアッセイ最終容量0.15 mlの標準的な反応混合物はミクロソーム、1μCiの[3H]テストステロン、0.5〜3.0 μMの非放射性テストステロン、0.1 mM-NADPH、1 mM-ジチオスレイトール及び50 mM-リン酸カリウム、pH 7.0を含有し、示した量の脂質又は阻害剤調製物を含有又は含有しない。反応はミクロソームを添加することによって開始され、インキュベーションは37℃において15分間実施される。ステロイドを抽出し、薄層クロマトグラフィーによって分離する。放射性ステロイドは蛍光写真によって位置決めされ、存在する放射能量はシンチレーション計数によって求められる。[3H]テストステロンの[3H]5α-DHTへの変換程度を分析することによって5α-還元酵素活性を測定した。【0027】C.5α-還元酵素活性源ヒト肝臓及び雌のスプラーグ-ドーリー(Sprague-Dawley)ラット成獣の肝臓の緩衝0.32 Mショ糖ホモジネートから4℃において分画遠心分離法によってミクロソームを調製し、5α-還元酵素活性のアッセイに使用する。ポリエチレンエーテルW-1をルブロルックス(Lubrolx)-WXと交換する以外は、いくつかの実験において、ミクロソームは0.1%ポリオキシエチレンエーテルW-1で溶解する。【0028】特定の種類の5α-還元酵素アイソザイムを発現するように遺伝的に工作した細胞を5α-還元酵素活性源として使用することもできる。5α-還元酵素を含有する無傷の細胞、それらのミクロソーム又は核調製物を5α-還元酵素阻害剤をスクリーニングするために使用することもできる。【0029】II.前立腺癌及び乳癌本発明の化合物を乳癌又は前立腺癌を治療するために使用することができる。前立腺癌及び乳癌に対するこのような化合物の有効性は、このような癌組織から誘導される単離細胞系統又はこれらの形態の癌を提示する動物において求めることができる。例えば、ヒト前立腺癌PC-3細胞を培地で増殖する。約100万個の細胞を雄のヌードマウスに注射して、腫瘍の増殖を追跡する。2週間以内に、腫瘍は約100 mm3まで増殖する。3匹の腫瘍形成マウスに毎日試験化合物を注射する。【0030】III.器官重量及び体重の低下本発明の化合物は器官重量及び体重を低下するために使用することができる。従って、本発明の化合物は肥満を治療する際の用途を有する。本発明の化合物の有効性は周知の動物モデルを使用して求めることができる。【0031】例えば、雄のスプラーグ-ドーリー(Sprague-Dawley)(体重180g±10g)を使用する。化合物を1群のラットに毎日7日間腹腔内注射する。対照群のラットには30%エタノールを0.1 ml投与する。体重及び器官重量を求める。【0032】IV.皮膚疾患本発明者らは、局所的には活性であり、全身的には不活性であると思われる5α-還元酵素阻害剤を探索した。このような薬剤は男性ホルモン依存性の皮膚疾患の治療に理想的であると思われる。この検討では、ハムスターの側腹部器官にγ-LAを局所投与することによる男性ホルモン作用の阻害を検討する。ハムスターの側腹部器官は、皮膚作用又は皮脂腺に対する本発明の化合物の影響の評価に特に有用である(フロスト(Frost)及びゴメス(Gomez)、1972)。肋骨脊柱角の角側に1つずつある一対の側腹部器官は男性ホルモン刺激に非常に感受性が強い。側腹部器官において男性ホルモン感受性組織には、真皮メラニン形成細胞、皮脂腺及び毛嚢が含まれる(ハミルトン及びモンタグナ(Montagna)、1950)。この動物モデルは、男性ホルモン化合物(ハミルトン及びモンタグナ、1950;フロストら、1973)及び抗男性ホルモン化合物(ボイクト(Voigt)及びフシア(Hsia)、1973;ワイスマン(Weissmann)ら、1985;チャクラバーティ(Chakrabarty)ら、1980)を試験するために広範に使用されている。この動物モデルの独自の利点は、試験化合物を側腹部器官の一方だけに局所的に適用して、影響を両方の器官について観察することができることである。試験化合物が局所作用しか持たない場合には、処理された側腹部器官だけが影響される。しかし、作用が全身的である場合には、両方の器官が影響される。【0033】4週齢で去勢された思春期前の雄シリアン(Syrian)ゴールデンハムスターをハーランスプラーグ-ドーリー社(Harlan Sprague-Dawley Co.)(ウィスコンシン州マディソン)から入手する。各動物は齧歯類用餌及び水を随時与え、12時間の明/12時間の暗の明暗サイクルで個別にプラスチックケージで飼育する。【0034】去勢の1〜2週間後に、各動物の背面下部の体毛を電動式バリカンで刈り、軽く剃って側腹部器官を露出する。ピペットマン(Pipetteman)及びポリエチレン使い捨てチップを使用して1日1回右側の側腹部に処理溶液(5μl)を局所的に適用する。特に明記しない限り、左側の側腹部器官は処理しない。処理溶液は、(a)エタノール単独(基剤であり、対照である)、又は(b)試験化合物のどちらかを含有する。各処理の前に、アルコールパッドで側腹部器官を拭いて残存する化合物を除去する。各処理の終了時に(17〜25日め)、CO2ガスによる窒息又は過剰量のフェノバルビタール(64.8 mg/ml/動物)の腹腔内注射のどちらかで動物を犠牲にした。色素性斑点及び皮脂腺の成長に対するこれらの処理の影響を判定するために、処理側及び未処理側の側腹部器官を評価する。処理前後に各動物の体重を記録する。【0035】動物の処理4週齢の雄ハムスターを去勢し、性徴を確実に最大に刺激するためにより長い明時間(16時間の明/8時間の暗の明暗サイクル)で飼育する(ルダーシュミット(Luderschmidt)ら、1984)。左右の側腹部器官を毎日0.5μg又は1μgのテストステロンを含有する5μlのエタノールで局所的に処理した。動物を4〜5匹のハムスターの群に分ける。右側の側腹部器官を基剤(エタノール)単独又は試験化合物(1又は2 mg)を含有する5μlの溶液で毎日18日間処理する。全ての動物の左側の側腹部器官には同じ容量の基剤を投与する。【0036】デジタル表示式ノギス(ディジマティック(Digimatic)、ミツトヨ社(MitutoyoCorp.)、日本)を使用して、色素性スポット(色素性斑点)の長軸及び短軸の長さを測定する。積(長軸×短軸、mm2)を表面積の指標として使用する(ウエスト(Wuest)及びラッキー(Lucky)、1989)。【0037】試験化合物で処理した側腹部器官は盛り上がり、触診可能となる。盛り上がった塊の長軸及び短軸の長さをノギスで測定する。長軸×短軸の積(mm2)を、皮脂腺の容積と相関する皮脂腺の面積の指標として使用した。【0038】V.禿頭症頭髪損失及び成長に対する化合物の局所的な影響ベニガオザルはヒトの男性ホルモン性脱毛症に似たパターンの禿頭症を発症する。禿頭症が進行する過程は思春期直後に始まる(約4歳)。これは雄及び雌の動物のほぼ100%で生じ、男性ホルモン依存性である。これはヒトの男性ホルモン性脱毛症の有用な動物モデルであり、頭髪損失に対するポリ不飽和脂肪酸の影響を実証する際に有用であると考えられている。以下は試験プロトコールを記載する。【0039】雄のベニガオザル(4歳)を3〜5匹の動物群に分ける。前頭部及び頭頂部を含む頭皮の規定領域に、例えば入れ墨で印をする。印をした領域の頭髪を剃る。異なる用量及び組み合わせの試験化合物溶液を1日に1回又は2回剃った領域に均等に適用する。対照動物には同じ容量の溶媒(例えば、エタノールもしくは他の有機溶媒、又はクリーム)を適用する。頭皮の同じ領域を4〜6週間ごとに剃って、剃った頭髪の重量を求める。処理は6ヶ月〜2年継続することができる。この動物において禿頭症を予防することが周知の5α-還元酵素阻害剤である4-MA(17-N,N-ジエチルカルバモイル-4-メチル-4-アザ-5-アンドロスタン-3-オン)を陽性対照として加える。処理前及び終了時に頭皮の生検試料(4mmパンチ)を採取する。5α-還元酵素活性について試料を分析し、脱毛症の徴候について組織学的に調査する。【0040】VI.ヒトモデルにおける皮脂産生に対する化合物の影響先ず、いくつかの脂肪酸及びカテキンの局所的な抗男性ホルモン作用をハムスター側腹部器官アッセイ又はラットアッセイにおいて評価する。抗男性ホルモン化合物の有効性及びヒトへの使用の可能性をさらに確認するために、男性被験者で試験を実施する。ヒトへの治療に理想的な化合物は、特に若い男性を含む症例において、局所的には活性であるが、抗男性ホルモンの全身作用を示さない化合物である。【0041】前頭部の皮脂産生の判定前頭部領域の皮脂産生を試験し、分析するために男性志願者を使用する。前頭部を石鹸で2回十分に洗浄し、70%イソプロピルアルコールで2回すすぐ。各測定において、56mm2の面積を覆う皮脂計測テーププローブ(7 mm×8 mm)を用いて30〜60分後に皮脂の産生を測定する。眉とヘアーラインとの間の額の左側又は右側の真ん中に位置する4 cm四方の面積(16 cm2)内で10回の測定を実施する。【0042】皮脂計測計は、テープを額に30秒間配置する前後のテープの透明度の差を検出し、0〜300(又はそれ以上)の間の任意の数の差(S-値)を表す。男性の額に蓄積する皮脂のS-値は、通常、200〜300である。手の皮膚表面は、通常、非常に低い数(5〜20)を示す。洗浄直後の額のS-値は5より小さい。男性では、S-値は洗浄後30分以内に約50まで増加し、45分〜55分後には100〜200に達する。【0043】皮脂産生速度を求めるために、両側の比較領域の左側及び右側額領域を交互に、各時間に測定する。各側について10回の測定(すなわち、両側では20回の測定)には約15〜20分かかり、皮脂値は30〜200の範囲であると思われる。S-値は額の異なる領域ではかなり異なり、天候、食事及び生理学的条件を含む環境条件によって影響されると思われる。しかし、左側の額の総S-値(10回の測定の合計)及び右側の額の総S-値の比は一定である。従って、左側の額に適用されてL/R比を1.1より低い値に低下する化合物は、皮脂産生を抑制する局所的に活性な薬剤であると考えられる。【0044】VII.薬学的組成物本発明の水性組成物は、薬学的に許容可能な水性媒体に溶解又は分散された有効量の5α-還元酵素阻害剤を含む。「薬学的に許容可能な」という句は、ヒトに投与したときアレルギー反応又は同様の好ましくない反応を生じない分子的要素及び組成物をいう。【0045】活性成分としてこのような阻害性化合物を含有する水性組成物製剤は当技術上十分に理解されている。典型的には、このような組成物は溶液又は懸濁液として注射用として製造される。注射前に溶液又は懸濁液にするのに好適な固形剤形も製造することができる。製剤は乳化されてもよい。【0046】本明細書に開示する薬学的組成物は、例えば、不活性な希釈剤もしくは吸収可能な食用担体と共に経口投与されてもよく、又はそれらは硬殻もしくは軟殻ゼラチンカプセルに封入されてもよく、又は錠剤に打錠されてもよく、又はそれらは経皮及び浸透圧用具、注射用用具及び植え込み用用具などの放出制御用に製剤化されてもよく、又はそれらは直接食事の食物に組み込まれてもよい。経口治療投与のためには、作用化合物に賦形剤が添加されてもよく、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤等の剤形で使用することができる。組成物及び製剤の割合は当然異なってもよく、都合のよいことには、100%であってもよい(純粋な化合物の適用)。このような治療上有用な組成物中の作用化合物の量は、好適な用量が得られるようである。【0047】錠剤、トローチ、ピル、カプセル等は以下を含有してもよい:トラガカントゴム、アカシアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸等などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及びショ糖、乳糖又はサッカリンなどの甘味剤;又はペパーミント、ウインターグリーン油もしくはサクランボ着香剤などの矯味剤。投与単位剤形がカプセルである場合には、上記の種類の材料以外に液体の担体を含有してもよい。他の種々の材料がコーティングとして、又は投与単位の物理的剤形を変更するために存在してもよい。例えば、錠剤、ピル又はカプセルは、シェラック、糖又はその両方をコーティングされてもよい。エリキシルシロップは作用化合物;甘味剤としてのショ糖;保存剤としてのメチル及びプロピルパラベン;サクランボ又はミカン風味などの染料且つ風味剤を含有してもよい。当然、いかなる投与単位剤形を製造する際に使用されるいかなる材料も薬学的に純粋で、実質的に無毒性でなければならない。また、作用化合物は徐放性調製物及び製剤に組み入れられてもよい。【0048】作用化合物は非経口投与、静脈内投与又は腹腔内投与されてもよい。遊離塩基又は薬学的に許容可能な塩としての作用化合物の溶液は、適当に、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と混合した水で調製されてもよい。分散剤はグリセロール、液化ポリエチレングリコール及びこれらの混合物中並びに油中で調製されてもよい。通常の保存及び使用条件下において、これらの調製物は微生物の増殖を防止するために保存剤を含有する。【0049】注射用の用途に好適な薬学的剤形は、注射用滅菌溶液又は分散剤の即時調製のための滅菌水溶液又は分散剤及び滅菌粉末を含む。全ての場合において、剤形は滅菌されていなければならず、注射剤形が容易に存在する程度に流動性でなければならない。それは製造及び保存条件下において安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から防護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物及び植物油を含有する溶液又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングを使用することによって、分散剤の場合には必要な粒子サイズを維持することによって及び界面活性剤を使用することによって維持することができる。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等のような種々の抗菌及び抗真菌剤によって実施することができる。多くの場合、例えば、糖又は塩化ナトリウムのような等張剤を含むことが好ましい。注射用組成物の吸収の長期化は、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収遅延剤を組成物中に使用することによって実施することができる。【0050】本明細書に使用する「薬学的に許容可能な担体」は、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等の任意のもの及び全てを含む。薬学的作用物質のためのこのような媒体及び物質の使用は当技術上周知である。任意の従来の媒体又は物質が作用成分と相溶性でない場合を除いて、治療用組成物へのその使用が考慮される。補助的な作用成分が組成物に組み入れられてもよい。【0051】経口投与のためには、組成物に賦形剤を導入してもよく、非飲用のうがい剤及び歯磨き剤の剤形で使用してもよい。うがい剤は、必要量の作用成分をホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル(Dobell's)溶液)などの適当な溶媒に添加して調製することができる。又は、作用成分を、ホウ酸ナトリウム、グリセリン及び炭酸水素カリウムを含有する防腐剤に添加してもよい。作用成分を、ゲル、ペースト、粉末及びスラリーを含む歯磨き剤に分散してもよい。治療的に有効な量の作用成分を、水、結合剤、研磨剤、香味剤、発砲剤及び保湿剤を含んでもよいペースト状の歯磨き剤に添加してもよい。【0052】組成物は中性すなわち塩の剤形で製剤化することができる。薬学的に許容可能な塩は酸添加塩(タンパク質の遊離のアミノ基から形成される)を含み、例えば、塩酸もしくはリン酸又は酢酸、シュウ酸、酒石酸酸、マンデル酸等などの有機酸から形成される。遊離のカルボキシル基から形成される塩も、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化鉄などの無機塩基及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等などの有機塩基から誘導することができる。【0053】溶液が形成されたら、投与製剤に合致する方法及び治療的に有効な方法で投与される。製剤は、注射用溶液、薬剤放出型カプセル等などの種々の投与剤形で容易に投与される。【0054】他の実施態様では、本明細書に開示する組成物の局所適用が望まれる場合もある。このような組成物は、具体的な適用に応じてクリーム、ローション、溶液又は固形の剤形に製剤化することができる。局所投与のための薬学的に許容可能な基剤の製剤化は当業者に周知である(すなわち、「レミントンの製薬の科学(Remington's Pharmaceuticals Science)」、第15版参照)。本明細書に開示する組成物の用量の変更は、常に、具体的な被験者及び治療される状態の性質に応じる。【0055】水溶液での非経口投与のためには、例えば、溶液は適宜適当に緩衝剤で調節されるべきであり、先ず希釈用の液体が十分量の生理食塩液又はグルコースで等張にされるべきである。これらの具体的な水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与及び腹腔内投与に特に好適である。これに関連して、使用することができる滅菌水性媒体は本願の開示内容に鑑みて当業者に周知である。例えば、1回量を1 mlの等張NcCl溶液に溶解して、1000 mlの皮下注射用もしくは静脈注射用液に添加するか、又は提案されている注入部位に注射してもよい(例えば、「レミントンの製薬の科学」、第15版、1035〜1038ページ及び1570〜1580ページ参照)。用量の変更は常に治療される被験者の状態に応じて変更する。投与責任者が常に個々の被験者に適当な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与のためには、調製剤はFDA当局の生物基準(FDA Office of Biologics standards)によって要求される滅菌性、発熱物質、一般安全性及び純度基準を満たさなければならない。【0056】実施例候補物質のアッセイヒト5α-還元酵素の発現。異なる種類のヒト5α-還元酵素を発現するラット1A細胞を調製するために、ヒト1型及び2型5α-還元酵素のcDNAsを、報告されている5α-還元酵素の配列、PCR及び基準ライブラリースクリーニング技法を使用して、ヒト前立腺λgt11及びPC-3細胞λZAP II cDNAライブラリーから単離した。1型及び2型のcDNAsをレトロウィルス発現ベクターpMV7にサブクローニングし、1型及び2型cDNAsを含有する高力価ウィルスストックをパッケージング細胞BOSC 23 293を使用して作製した。ラット1A細胞にウィルスを感染させ、レトロウィルスが組み込まれている細胞をG418耐性について選択した(ブラウン及びスコット、1987)。【0057】5α-還元酵素のアッセイ。特定の種類のヒト5α-還元酵素を発現するラット1A細胞からミクロソームを調製した。酵素アッセイは、ヒト1型又は2型5α-還元酵素のどちらかを含有するラット1A細胞から調製したミクロソームの存在下において、テストステロンから5α-DHTの生成を測定することに基づいていた。テストステロンのジヒドロテストステロンへの変換を50%阻害する試験化合物の濃度を適当なデータポイント間に内挿することによって求めた。【0058】5α-還元酵素活性の阻害本発明者らは、2種の天然産物、緑茶カテキンである没食子酸エピカテキン(ECG)及び没食子酸エピガロカテキン(ECGC)並びに不飽和脂肪酸はヒト5α-還元酵素の阻害剤であることを先に示した。この活性の構造的な要件を探索するために構造-活性相関の検討を開始した。この検討のデータを表1〜7及び図1〜6に要約する。【0059】1.フラボノイド緑茶カテキンに関連する構造を有する種々の天然型フラボノイドを試験した(図1、表1)。【0060】【表1】【0061】緑茶カテキンであるECG及びEGCGは試験したフラボノイド中最も高い活性を有し、5α-還元酵素の2型(HRED2)より1型(HRED1)のより良好な阻害剤であった。緑茶カテキンであるエピカテキン(EC)及びエピガロカテキン(EGC)は活性がほとんどない。4種のフラボノイドであるミリセチン、クエルセチン(quercitin)、バイカライン(baicalein)及びフィセチンはかなりの(IC50<100μM)活性を有し、2型イソ酵素より1型に対してより活性を示した。ビオカニン(biochanin)A、ケンフェロール(Kaempferol)、ゲニステイン及びダイゼインは2型イソ酵素の効果的な阻害剤であるが、1型イソ酵素の阻害剤ではない。クリシン、ケンフェロール、モリン、ミリセチン及びクエルセチンの活性を比較することにより、特にカテコール又はピロガロール配置ではB-環のヒドロキシル基が重要であること、1型アイソザイムに対する活性には3位のヒドロキシルがおそらく重要であることが示される。クエルセチンの3-ルチノースグリコシドであるルチンはどちらのイソ酵素に対しても効果がなかった(IC50>100μM)。クエルセチンと比較してルチンに活性がないことは、オリゴサッカライドルチノースが存在すること(おそらく立体障害のため)又は3位のヒドロキシルが修飾されているためのどちらかによる。フラバノンであるタキシフォリン(Taxifolin)はどちらのアイソザイムに対しても効果がなかった(IC50>100μM)。タキシフォリンの弱い活性は、その活性を構造上関連のあるクエルセチンと比較すると、2,3-不飽和結合がないことによる可能性が高い。完全な細胞において阻害活性を試験すると、ほとんどのフラボノイドは1型のイソ酵素に対してほとんど又は全く活性を示さなかった。おそらくこれはこれらのポリヒドロキシ化合物の細胞膜の浸透性の低さを示している。1型酵素で得られた結果とは対照的に、4種のフラボノイド、ビオカニンA、ダイゼイン、ケンフェロール及びゲニステインは完全な細胞アッセイでは2型イソ酵素に対してかなりの阻害活性を示した。これらのうち最も活性の強いビオカニンA及びダイゼインはヒドロキシル基をそれぞれ2つ及び3つしか持っておらず、従って他のフラボノイドより容易に細胞に浸透することができる。【0062】2.カテコールフラボノイドを用いて検討した5α-還元酵素阻害作用は、高い阻害活性のためにはカテコール及びピロガロール部分が重要である可能性を示した。従って、活性についてカテコール基を有する一連の化合物を調査した(表2、図2)。【0063】【表2】【0064】掲載した24種の化合物のうち13種はIC50が100μMより低かった。全て2型イソ酵素より1型に対して活性が強かった。これらの化合物のうち6種、アントラロビン、没食子酸ドデシル、ゴシポール(gossypol)、没食子酸オクチル、カフェー酸フェネチルエステル及びノルジヒドログアイアレチン酸(nordihydroguaiaretic acid)は完全な細胞アッセイにおいて活性であった(以下の表7)。アントラロビンは2型イソ酵素より1型に対してさらにより効果的であったが、他の5種の阻害剤は両方のイソ酵素の効果の等しい阻害剤であった。合成化合物HZIV 82は細胞を含まないアッセイではほとんど活性を示さなかったが、完全な細胞アッセイでは非常に活性で、1型イソ酵素に特異的であった。【0065】3.クルクミン及び関連化合物クルクミンは1型又は2型イソ酵素どちらかの非常に効果的な阻害剤であった(表3、図3)。【0066】【表3】【0067】市販のクルクミンをPt/H2で化学的に還元し、生成物であるテトラヒドロクルクミン及びデメトキシテトラヒドロクルクミンはクルクミンと比較してかなり活性が低かった。しかし、鮮やかな黄色のクルクミンと比較して無色であるテトラヒドロクルクミン(HZIV 81-2)は完全な細胞アッセイではかなりの活性を有した。構造的に関連のある化合物4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェノール)-3-ブテン-2-オン、フェルラ酸、カプサイシン(capsaicin)、オイゲノール及び針葉樹アルコール(coniferyl alcohol)はどちらのイソ酵素に対しても阻害剤活性をほとんどもたなかった(IC50>100μM)。これは5α-還元酵素に対する活性にはジフェルロリル(diferulolyl)構造が重要であることを示している。ノルジヒドログアイアレチン酸(nordihydroguaiaretic acid)も細胞を含まないアッセイ及び完全な細胞アッセイにおいて1型(IC50=19μM)及び2型(OC50=50μM)アイソザイムの効果的な阻害剤であった。【0068】4.キノン種々のキノンを5α-還元酵素に対する活性について試験した(表4、図4)。【0069】【表4】【0070】天然型のアントラキノンであるアリザリンは1型アイソザイムの非常に効果的な阻害剤であるが、2型の阻害剤ではない。アリザリンの水溶性の硫酸誘導体であるアリザリンレッドSはどちらのイソ酵素に対してもほとんど活性を持たなかった(IC50>100μM)。荷電した硫酸基が、膜結合型の5α-還元酵素との相互作用を妨害する可能性がある。アリザリンと比較して、追加のヒドロキシルを有するプルプリンはアリザリンと同様の阻害活性を有した。隣接するヒドロキシル基を持たないアリザリンの構造異性体であるアントラフラビン酸、アントラルフィン及びキニザリンは活性がかなり低い。これはこのクラスのアントラキノンの強力な阻害活性にはカテコール部分が重要であることを強調している。アントラキノンは効果的な阻害剤ではなかった(IC50>100μM)。メナジオン、補酵素Q及び2,6-ジクロロインドフェノールは両イソ酵素の強力な細胞不含阻害剤であった。この化合物はキノン還元酵素反応に関与し、NADPHを枯渇させて、観察された阻害作用を生じることができる。完全な細胞アッセイでは、アリザリンは1型イソ酵素の非常に効果的な阻害剤で、メナジオンは中程度の活性を有した。【0071】5.エピガロカテキン誘導体EGCGが細胞を含まないアッセイにおいて高い阻害活性を示すが、完全な細胞アッセイでは活性が低いことにより、本発明者らは完全な細胞アッセイにおける活性を増強するために、一連のEGC誘導体を設計し、合成した(表5、図5)。【0072】【表5】【0073】検討は、EGCGのヒドロキシル基をメチル又は酢酸塩基で誘導体化することにより、細胞を含まないアッセイにおける阻害活性が消失し、完全な細胞アッセイにおける低い阻害活性が増強しないことを示した。従って、本発明者らは、完全な細胞アッセイにおける阻害活性を増強するために、EGCGの没食子酸エステル部分の変更に構造-活性の検討を限定した。これらの構造変化体のうち20種を表5に要約する。完全な細胞アッセイにおける活性に至る最も重要な構造変化は、EGCGの没食子基の代わりに脂肪酸エステルを導入したことであった。特に、ある程度の不飽和度を有する脂肪酸は完全な細胞アッセイにおいて5α-還元酵素の両イソ酵素に対して良好な阻害活性を示した。これらの誘導体のうち最も強力なものは、EGCの3-ヒドロキシルにγ-リノレン酸がエステル化されたものであった。不飽和結合を1つ有するある種の脂肪酸も活性であった。例えば、EGCのミリストレインエステルであるHZIV 160は両方のアッセイ系において効果的であった。不飽和度の低い脂肪酸は酸化を受けにくく、従ってより好適な修飾剤となり得る。【0074】【表6】【0075】【表7】【0076】本発明者らの先に見いだされたように、不飽和度が大きいほど、脂肪酸の阻害活性は良好であった。不飽和脂肪酸は容易に酸化を受けやすく、それらの有用性が損なわれることがあるので、本発明者らは酸化を受けにくいいくつかの不飽和脂肪酸を調査した。合成脂肪酸である共役オクタデカジエン酸(CODA)(シス又はトランス-9,11又は10,12オクタデカジエン酸)及び5,8,11,14-エイコサテトライン酸(eicosatetraynoic acid)(ETYA)は両イソ酵素の良好な阻害剤であった。CODA及びETYAはIC50が、それぞれ10及び15(1型)並びに30及び3(2型)μMであった。天然型脂肪酸であるγ-リノレン酸は両イソ酵素に対してIC50が3μMである。ETYAなどの脂肪酸は、細胞による取り込みを増強し、5α-還元酵素阻害剤のインビボにおける活性を促進するために、他の5α-還元酵素阻害剤を誘導体化するために有用となり得る。γ-リノレン酸のメチル及びコレステロールエステルは完全な細胞アッセイでは活性がほとんどなく(表7)、従ってγ-リノレン酸にエステル化したEGCの活性はこれらのエステルの細胞内加水分解によるとは思われない。【0077】表1〜7に示す活性な5α-還元酵素阻害剤はポリフェノール又はそれらの誘導体であり、特に空気又は酸素の存在下で、7.0より大きいpHにおいて数時間〜数日以内に容易に酸化又は加水分解される。本発明者らは、これらの化合物の溶液のpHを7.0より低いpHに維持することによって、これらの化合物は酸化及び加水分解に対してより安定であることを見いだした。酸化又は加水分解の80%より多くは、塩酸、硫酸もしくはリン酸などの無機酸又はクエン酸もしくは酢酸などの有機酸を添加することによって防止することができる。【0078】以下に掲載し、本願の開示内容に引用した文献を以下に示す:【表8】【図面の簡単な説明】【図1】 本発明のフラボノイド化合物の構造を示す。【図2】 本発明のカテコール化合物の構造を示す。【図3】 本発明のクルクミン及び関連化合物の構造を示す。【図4】 本発明のキノンを示す。【図5】 本発明のエピガロカテキン誘導体化合物を示す。【図6】 本発明のエピガロカテキン誘導体の一般式を示す。【図7】 本発明に有用な没食子酸塩の一般式を示す。【図8】 本発明に有用なクルクミン誘導体の一般式を示す。【図9】 本発明に有用なキノン及びカテコールの一般式を示す。【図10】 本発明の脂肪酸を示す。 ノルジヒドログアイアレチン酸を用いる5α−還元酵素活性の阻害剤。 ノルジヒドログアイアレチン酸を用いる前立腺癌の治療剤。 ノルジヒドログアイアレチン酸を用いる乳癌の治療剤。 ノルジヒドログアイアレチン酸を用いる良性前立腺肥大又は前立腺炎の治療剤。