タイトル: | 特許公報(B2)_立体障害性化合物の結晶化法 |
出願番号: | 2000514867 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07B 63/00,C07C 231/24,C07C 237/46 |
ヤーン・セルヴェンカ JP 4509375 特許公報(B2) 20100514 2000514867 19981002 立体障害性化合物の結晶化法 ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ 396019387 荒川 聡志 100137545 高木 千嘉 100091731 西村 公佑 100080355 ヤーン・セルヴェンカ GB 9720969.6 19971002 20100721 C07B 63/00 20060101AFI20100701BHJP C07C 231/24 20060101ALI20100701BHJP C07C 237/46 20060101ALI20100701BHJP JPC07B63/00 EC07C231/24C07C237/46 C07B C07C 7 GB1998002955 19981002 WO1999018054 19990415 2001519320 20011023 6 20050930 冨永 保 【0001】 本発明は、複数の立体配座を有し、それらの立体配座間の遷移が立体障害を受ける化学種の溶液からの結晶化法に関する。【0002】 一般にシグマ結合の周りの回転の結果として、膨大な数の有機化合物が異なる立体配座をとることができる。しかし、化合物が嵩高い基を含む場合には、このような回転には著しい立体障害が存在し、そのため安定(又は準安定)な立体配座間の遷移は比較的遅い。【0003】 物質の結晶化を起こすには、その物質が結晶構造に必要な立体配座をとらなければならない。従って、立体障害性化合物の結晶化は比較的遅い。結晶化の促進には通常高度の過飽和が必要とされ、結晶性生成物の純度に限界が生じる。 このことは、例えばX線造影剤として常用されるヨードフェニル化合物についていえ、特に1分子当たり2つのヨードフェニル基を有するいわゆるダイマー化合物、例えばイオジキサノール及びイオトロランのような化合物に当てはまり、それらの結晶化には何日もかかる。 その結果、こうした化合物の製造は時間及び装置の面での要求が厳しい。【0004】 今回、本発明者等は、高い熱エネルギーでの結晶化によって、かかる立体障害性化合物の溶液からの結晶化を促進し、及び/又は高度の過飽和の必要性を低減し得ることを見出した。必要な熱エネルギーは沸騰溶媒(もしくは沸騰溶媒混合物)又は加圧下での結晶化を用いることによって達成される。加圧下での結晶化は、溶液の沸点(大気圧における)を超える温度で実施される。【0005】 そこで、本発明は、時間の節約された方法及び/又は生成物の純度向上をもたらす方法を提供する。 従って、一つの態様では、本発明は、立体障害性有機化合物のその溶媒中での飽和溶液(さらに好ましくは過飽和溶液)から該化合物を結晶化する方法であって、結晶化を高い熱エネルギーで実施する方法を提供する。【0006】 本発明の好ましい一態様では、立体障害性有機化合物のその溶媒中での飽和溶液(さらに好ましくは過飽和溶液)から該化合物を結晶化する方法であって、結晶化を加圧下で、大気圧(つまり、周囲圧力、例えば1bar)における上記溶液の沸点よりも高い温度から上記溶液の上記加圧における沸点までの範囲内の温度で実施することを特徴とする方法を提供する。 必要な熱エネルギーは、大気圧条件での溶媒又は溶媒混合物の沸点での結晶化によっても達成し得る。かかる作業条件下での熱エネルギーの投入は、使用する溶媒又は溶媒混合物の沸点によって制限される。【0007】 そこで、本発明のさらに好ましい態様では、立体障害性有機化合物のその溶媒中での飽和溶液(又はさらに好ましくは過飽和溶液)から該化合物を結晶化する方法であって、結晶化を、使用した溶媒又は溶媒混合物の沸点で実施することを特徴とする方法を提供する。【0008】 本発明の方法において、過飽和溶液は、例えば不飽和溶液から(例えば、溶媒の蒸発又は冷却によって)生成させることもできるし、或いは昇温下での非晶質物質の溶解によって生成させることもできるし、或いは結晶化すべき物質の溶媒系中の溶解度を低下させる物質(例えば貧溶媒)の添加によっても生成させることができる。 過飽和溶液からの結晶化は、結晶化開始剤(例えば立体障害性化合物の種晶)の使用によって開始させることができる。結晶化開始剤は、温度及び圧力を上昇させる前、途中又は後に、過飽和溶液に添加し得る。【0009】 本発明の方法で使用する溶媒は単一の溶媒でも、溶媒混合物でもよい。立体障害性化合物の溶液を形成し得るあらゆる溶媒又は溶媒混合物が使用できるが、水、アルコール、ケトン、エステル、エーテル及び炭化水素のような溶媒、特に水、アルコール、アルコール−エーテル、エーテル及びケトン、例えばC1〜C4アルコールが好ましい。【0010】 好適な溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、第2−ブタノール、t−ブタノール、イソアミルアルコールを含めたペンタノール、メトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトン、エチル−メチルケトン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチル−エーテル、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、シアン化メチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどが挙げられる。【0011】 特に好ましくは、溶媒は、1種以上のC1〜C6アルカノール、アルコキシアルカノール、線状又は環状エーテルを、適宜少量(例えば、10重量%以下)の水と共に含む。 特に好ましくは、用いる溶媒又は溶媒混合物は、低沸点又は中程度の沸点の物質、例えば、周囲圧力における沸点が―10〜+100℃、特に30〜80℃、好ましくは40〜70℃である物質である。ただし、溶媒又は溶媒混合物は用いる温度及び圧力で安定であるべきである。結晶化を200℃未満、特に150℃未満、最も好ましくは120℃未満の温度で実施することも好ましく、加圧下での結晶化では、温度は、周囲圧力における溶液の沸点よりも10℃以上、特に15℃以上高い温度であるのが好ましい。【0012】 本発明の加圧結晶化の態様の追加の利点は、用いる温度における立体障害性化合物の溶解度が、周囲圧力での溶液の沸点未満の温度における溶解度よりも大きいことである。その結果、溶媒の使用量を低減でき、結晶化槽の容積も同様に低減できる。さらに、立体障害性化合物が周囲条件で比較的僅かしか溶解しない溶媒も使用でき、その結果、環境に優しい溶媒系を結晶化(又は再結晶化)に使用できる。【0013】 本発明の方法で結晶化した立体障害性化合物は、好ましくは、室温の溶液(例えば、水、C1〜C4アルコール又はC1〜C4エーテル)中で2以上の安定な立体配座を有する化合物で、それらの立体配座間の遷移のための活性化エネルギーが周囲条件で50kJ/モル以上、好ましくは80kJ/モル以上、好ましくは200kJ/モル以下であるものである。この活性化エネルギーは、量子化学などの常法で算出し得る。 一般に、本発明の方法は、結晶成長の活性化エネルギーが高い(例えば50kJ/モルを超える)化合物に適している。【0014】 好適な化合物の具体例には、X線造影剤(特に非イオン性造影剤)として提案又は使用されているような2,4,6−トリヨードフェニルモノマー及びダイマーのヒドロキシアルキル及び/又はアシルアミノ及び/又はアルキルアミノカルボニル誘導体、例えばジアトリゾ酸塩、イオベンザム酸塩、イオカルム酸塩、イオセタム酸塩、ヨーダミド、イオジパミド(iodipamide)、イオジキサノール、イオヘキソール、イオペントール、イオベルソール、イオパミドール、イオトロラン、ヨードキサム酸塩、イオグリク酸塩、イオグリカム酸塩、イオメプロール、イオパノ酸塩、イオフェニレート(iophenylate)、イオプロミド、イオプロン酸塩、イオセル酸塩、イオシミド、イオタスル、イオタラメート、イオトロクス酸塩、イオキサグル酸塩、イオキシタラム酸塩、メトリザミド及びメトリゾ酸塩、並びに国際公開公報第96/09285号及び同第96/09282号記載のモノマー及びダイマーがある。【0015】 こうしたヨウ素化X線造影剤に加えて、本発明の方法は、その他の立体障害性化合物、特に医薬化合物、殊に側鎖の回転その他のコンフォメーション変化が大きく制限される物質の結晶化にも応用できる。かかる物質の結晶化は無論その物質が安定な温度で実施すべきである。立体構造の変化の活性化エネルギーとは無関係に、本方法は、選択した低沸点溶媒中での溶解度が低いあらゆる物質に応用できる。【0016】 本発明の加圧結晶化の態様で用いる圧力は、飽和溶液又は過飽和溶液の沸点が、周囲圧力での沸点よりも10℃以上、特に15℃以上、殊に20℃以上高くなるようにするのが好都合である。最大圧力は概して使用する装置の設計上の制約によって決まるが、一般に0.05〜20bar、特に0.2〜10bar、殊に1.5〜6barの過圧を用いることができる。 従って、結晶化は、用いる温度及び圧力条件に耐え得る槽内で実施すべきである。一般に、撹拌手段、加熱手段を備え、加圧及び圧力解放手段を備えた回分式又は連続式ステンレス鋼反応器が使用できる。【0017】 本発明の「沸点」の態様では、溶媒の選定には、液体混合物の形成能力だけでなく、効果的な結晶化法の達成に必要な熱エネルギーが反映される。本方法は、メタノール又はメタノール(0〜100体積%)とプロパン−2−オール(0〜80体積%)と水(0〜10体積%)との混合物を溶媒とするイオジキサノールの結晶化に特に好適である。 以下の非限定的な実施例を参照して本発明を説明する。【0018】 実施例1 3重量%の水を含む80gの固形イオジキサノールを374mLのメタノール中に周囲圧力下還流下で溶解した。48mLのプロパン−2−オールを添加し、溶液に1.6gのイオジキサノール結晶を種晶として添加した。混合物を還流条件下に保ち、母液のイオジキサノール含有量をモニターすることによって結晶化を追跡した。この含有量が24時間後に安定化したとき、結晶性イオジキサノールを回収した。 収率:89%【0019】 実施例2 実施例1に記載の通り調製し種晶を添加したイオジキサノール溶液をオートクレーブ内に入れ、約2barの過圧下で90℃で5時間撹拌した。オートクレーブを冷却し、結晶性イオジキサノールを回収した。 収率:91%【0020】 実施例3 オートクレーブ内で150gの乾燥粗イオヘキソールを50mLの2−メトキシエタノール中に溶解した。イオヘキソールの種晶を1.5g添加し、溶液を100℃まで加熱した。100℃の一定温度で5時間にわたって150mLの2−プロパノール(沸点82.4℃)を制御下に添加して溶解度の勾配を生じさせ、次いで3時間70゜に制御下で冷却した。さらに3時間平衡化した後、結晶を濾過によって単離し、2−メトキシエタノール/2−プロパノールで洗浄し、最終的に乾燥させた。 収率:90% 純度:99.1% 還流下で実施した参照実験で得られた純度は98.6%であった。 立体障害性有機化合物のその溶媒中での飽和又は過飽和溶液から該有機化合物を結晶化する方法であって、上記立体障害性有機化合物がジアトリゾ酸塩、イオベンザム酸塩、イオカルム酸塩、イオセタム酸塩、ヨーダミド、イオジパミド、イオジキサノール、イオヘキソール、イオペントール、イオベルソール、イオパミドール、イオトロラン、ヨードキサム酸塩、イオグリク酸塩、イオグリカム酸塩、イオメプロール、イオパノ酸塩、イオプロミド、イオプロン酸塩、イオセル酸塩、イオシミド、イオタスル、イオタラメート、イオトロクス酸塩、イオキサグル酸塩、イオキシタラム酸塩、メトリザミド及びメトリゾ酸塩からなる群から選択されるものであり、結晶化を加圧下で、上記溶液の大気圧における沸点を超える温度から上記加圧における沸点までの範囲内の温度で実施する、方法。 前記溶媒の大気圧(1bar)における沸点が―10〜+100℃である、請求項1記載の方法。 前記加圧が0.05〜20barの過圧である、請求項1又は請求項2記載の方法。 前記結晶化を、溶液の大気圧(1bar)における沸点よりも10℃以上高い温度で実施する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。 前記溶媒が、1種以上のC1〜C6アルカノール、アルコキシアルカノール又は線状もしくは環状エーテルを適宜10重量%以下の水と共に含有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。 前記化合物がイオジキサノールであり、前記溶媒がメタノール又はメタノール(0〜100体積%)とプロパン−2−オール(0〜80体積%)と水(0〜10体積%)との混合物である、請求項5記載の方法。 前記立体障害性化合物がイオジキサノール又はイオヘキソールである、請求項1記載の方法。