タイトル: | 特許公報(B2)_関節内疾患治療用のナノカプセル製剤 |
出願番号: | 2000510468 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 47/30,A61K 9/51 |
今里 雄 堀沢 栄次郎 川添 聡子 廣田 剛 山田 潤 川島 嘉明 竹内 洋文 山本 浩充 JP 4272811 特許公報(B2) 20090306 2000510468 19980904 関節内疾患治療用のナノカプセル製剤 マルホ株式会社 000113908 野河 信太郎 100065248 今里 雄 堀沢 栄次郎 川添 聡子 廣田 剛 山田 潤 川島 嘉明 竹内 洋文 山本 浩充 JP 1997241598 19970905 20090603 A61K 47/30 20060101AFI20090514BHJP A61K 9/51 20060101ALI20090514BHJP JPA61K47/30A61K9/51 A61K9/00-9/72 A61K47/00-47/48 REGISTRY/CAplus(STN) 国際公開第97/003657(WO,A1) 特表平09−510477(JP,A) 特開平04−021637(JP,A) 特表平10−508004(JP,A) 特表平04−504404(JP,A) 国際公開第98/014174(WO,A1) 国際公開第99/001114(WO,A1) 10 JP1998003966 19980904 WO1999012571 19990318 13 20041217 安居 拓哉 技術分野本発明は、関節内疾患治療用のナノカプセル製剤に関し、より詳細には、関節内に直接注入しうる持続型関節内疾患治療用のナノカプセル製剤並びに同製剤を関節内に投与して関節内疾患を治療する方法に関する。背景技術従来より関節炎を伴う変形性膝関節症、慢性関節リウマチの治療法として、これらに有効な抗炎症剤を関節腔内に直接注入する局所治療方法がある。この治療方法は、注入時に患者の痛みを伴うという欠点を有するものの、全身への影響が極めて低く、痛みの直接的な部位への局所治療である利点を有し、内服薬治療法に比較して明らかに薬理効果の高いことが示されてきた。しかし、局所治療は、薬物を注射用水溶液又は注射用油液に溶解又は懸濁して調製された注入製剤(注射剤)を用いて行われるため、投与部位である関節腔内から薬物が速やかに消失する。また、患者の安全性を考慮して、治療期間の1クールをせいぜい1週間程度とする治療が一般的であった。よって、効果を持続させるという点、さらには、QOL(Quality of life:患者の生活の質的向上)の点からも、より特効性、持続型の関節注入製剤の開発が望まれている。例えば、ウサギ血清アルブミンを保持担体として使用してコルチコイドをマイクロカプセル化し、ウサギの膝関節に投与する試みが、S.S.Davisらによって提案されている(J.Pharm.Pharmacol.,39,290−295,(1987))。ここでは、薬効の持続性を実現しているものの、マイクロカプセルのサイズによりマクロファージに摂取されたり、マイクロカプセルの材質によって組織に障害を受けるなど、さらに検討の余地があることが記載されている。また、水島、星らによって、ステロイド懸濁型(薬物結晶の懸濁液)の製剤が種々開発されている(Arzneim.−Forsch/Drug Res.,30(I),Nr 2,(1980);日本臨牀、47,(6),1302−1307,(1989))。これらの製剤は、局所で持続的に薬物を放出するという点では良好な成績が報告されており、特にこれらの製剤のうち、ある種の製剤は、QOLを改善した製剤として実際の医療現場で用いられ、評価を受けている。しかし、最近、新たにこれらの製剤に起因する関節腔内での結晶誘因性疼痛の問題がクローズアップされてきた。すなわち、治療を目的とする薬物がその一方で異物として作用し、関節腔内に溶解せずに長く貯留することにより新たに関節部位の損傷、痛みを誘発するというのである。結晶誘因性疼痛の原因は、まだ解明されていないが、痛みの誘発は、これまでの溶液製剤であまり見られていなかったことから、懸濁液中の薬物粒子の諸性質、すなわち懸濁粒子の生体不適合性、投与量等に加えて、薬物粒子の物理化学的性質、すなわち粒子径、粒子形状等が密接に関係していると推測又は指摘されている。また、薬物の結晶が長期にわたり関節腔内に存在することにより累積的な組織の損傷を招くことも考えられる。このような状況下において、患者に痛みを伴なわず、持続性を有する安全な関節注入製剤の必要性が高まっている。発明の開示本発明者らは、結晶誘因性疼痛の問題を回避し、患者の痛みを抑えた持続型の関節炎治療剤の開発を目指して研究を重ねた。すなわち、発明者らは、関節腔内に薬物を含む生体適合性の微粒子の懸濁液を存在させることによって、適切な製剤の設計が可能になるのではないかと考えて、a)薬物を包含するナノカプセルを構成する適切な生体適合性の基剤、b)組織障害を回避するためのナノカプセル製剤の具備する諸性質、c)ナノカプセルにより持続的に薬物放出を行う適切な製剤処方、等の必要な要因について種々検討を行い、持続性を示すとともに患者の痛みを抑制することができる、これまでにない安全な製剤に関する本発明の完成に至った。本発明によれば、生理活性物質と該生理活性物質を持続的に放出しうる生体適合性ポリマーとからなる関節内疾患治療用のナノカプセル製剤が提供される。発明を実施するための最良の形態本発明は、生理活性物質と、この生理活性物質を持続的に放出しうる生体適合性ポリマーとからなる関節内疾患治療用のナノカプセル製剤に関するものである。本発明における「ナノカプセル」とは、レーザー回折式の動的光散乱法による測定で、実質的に平均粒子径が1μm未満、好ましくは0.05〜0.7μm、より好ましくは0.25〜0.45μmのナノサイズの微小カプセルを意味する。粒子形状としては、球形又は球形に近似した形状である。このようなサイズ及び形状を有することにより、すなわち、ナノカプセルが微小であって、かつ球形であるほど、一般に不定形である薬物結晶等に比べて、その表面積を小さくすることができ、関節腔内でこれらに起因した異物としての生体認識を低減させ、かつ組織の損傷に繋がる各種の好ましくない反応を抑制することができる。本発明のナノカプセルは、生理活性物質と生体適合性ポリマーとから基本的に構成されるが、電子顕微鏡的に観察した場合に、生理活性物質の微粒子が生体適合性ポリマーに実質的に分散された形態であることが好ましい。生理活性物質の微粒子は、全てが生体適合性ポリマーに分散されていることは要件とされないが、生理活性物質がナノカプセル化されることにより、生体内において持続的に放出されることを主目的の一つとするため、かかる観点から、生理活性物質の微粒子と生体適合性ポリマーとが少なくとも物理的に結合した形態であることが好ましい。本発明における生理活性物質とは、関節内疾患を治療することができる物質であれば特に限定されるものではなく、例えば、局所麻酔剤、鎮痛剤、抗炎症剤、DMARD、軟骨破壊抑制剤、免疫調節・抑制剤、抗生物質、抗菌剤、抗ウィルス剤、抗腫瘍剤、抗アレルギー剤、骨吸収抑制剤、血管新生阻害剤、生理活性ペプチド、抗体、多糖類、植物由来の生理活性物質、ラジカルスカベンジャー等が挙げられる。なかでも、鎮痛剤、抗炎症剤、DMARD、軟骨破壊抑制剤、免疫調節・抑制剤、抗アレルギー剤、骨吸収抑制剤、ラジカルスカペンジャーが好ましく、関節部位の炎症及び炎症性疼痛を治療することができる抗炎症剤がより好ましい。局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン、ブピバカイン等が挙げられる。鎮痛剤としては、例えば、サリチル酸メチル、フルフェナム酸、スルピリン、モルヒネ、ペチジン、酒石酸レボルファノール、アスピリン、フェナセチン、サザピリン、サリチルアミド等又はこれらの塩が挙げられる。抗炎症剤としては、例えば、変形性膝関節症(OA)及び/又は慢性関節リウマチ(RA)に用いることができる薬剤が挙げられる。具体的には、例えば、デキサメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ハロプレドン、パラメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン等又はそれらの誘導体及び塩を含むステロイド系消炎剤;アセメタシン、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、アンピロキシカム、アンフェナクナトリウム、イブプロフェン、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、エトドラク、エピリゾール、オキサプロジン、ケトプロフェン、ザルトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、スリンダク、チアプロフェン酸、テノキシカム、トルフェナム酸、トルメチンナトリウム、ナプメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、フェノブロフェンカルシウム、フェンブフェン、フルフェナム酸、フルルビプロフェン、フロクタフェニン、プラノプロフェン、マレイン酸プログルメタシン、メフェナム酸、ロキソプロフェンナトリウム、エモルファゾン、塩酸チアラミド、塩酸チノリジン、ケトフェニルブタゾン、ブコローム等又はこれらの誘導体及び塩を含む非ステロイド系消炎剤;COX−2阻害剤;腫瘍壊死因子(TNF)−α、インターロイキン等を含むサイトカインに対する産生阻害剤又は産生促進剤;TNF−αレセプター、インターロイキンレセプター等を含むサイトカインレセプターに対するアゴニスト又はアンタゴニスト;TNF−αレセプター遊離促進剤;細胞接着因子産生阻害剤を含む細胞接着阻害剤;好中球、好酸球、T細胞等の遊走抑制剤又は浸潤抑制剤;スフィンゴミエリナーゼ、MAPキナーゼ、プロテインキナーゼ、チロシンキナーゼ等のリン酸化酵素を阻害する物質、グルココルチコイドレセプター阻害剤、NF−κBリン酸化酵素阻害剤等を含むNF−κB又はAP−1等の転写因子に対する活性化抑制剤;塩化リゾチーム、セラペプターゼ等の酵素等が挙げられる。なかでも、ステロイド系消炎剤、細胞接着阻害剤及び転写因子活性化抑制剤が好ましい。DMARDとしては、例えば、オーラノフィン、金チオリンゴ酸ナトリウム等の金製剤、メトトレキサート、ブシラミン、D−ペニシラミン、ロベンザリット二ナトリウム、アクタリット、スルファサラジン等が挙げられる。軟骨破壊抑制剤としては、例えば、マリマスタット、TIMP等のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤、コラゲナーゼ、ストロメライシン等を含むMMP、エラスターゼ、カテブシン−G等を含むセリンプロテアーゼ等、炎症に関与するプロテアーゼ等の酵素を阻害する生理活性物質が挙げられる。免疫調節・抑制剤としては、例えば、タクロリムス水和物、シクロスポリン、アザチオプリン、塩酸グルペリムス、ミゾリビン等が挙げられる。抗生物質としては、例えば、グンタマイシン、ジベカシン、カネンドマイシン、リビドマイシン、トブラマイシン、アミカシン、フラジオマイシン、シソマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、アンピシリン、ピペラシリン、チカルシリン、セファロチン、セファロリジン、セフォチアム、セフスロジン、セフメノキシム、セフォゾリン、セファタキシム、セファペラゾン、セフチゾキシム、モキソラクタム、チエナマイシン、スルファゼシン、アズスレオナム等又はそれらの塩等が挙げられる。抗ウィルス剤としては、例えば、アシクロビル、ビダラビン等が挙げられる。抗腫瘍剤としては、例えば、塩酸ブレオマイシン、メソトレキセート、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、塩酸ダウノルビシン、アドリアマイシン、ネトカルチノスタチン、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、テトラヒドロフリル−5−フルオロウラシル、レンチナン、レバミゾール、ベスタチン等が挙げられる。抗アレルギー剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、トリペレナミン、メトジラジン、クレミゾール、ジフェニルピラリン、メトキシフェナミン、アステミゾール、アンレキサノクス、イブジラスト、エバスチン、塩酸アゼラスチン、塩酸オザグレル、オキサトミド、クロモグリク酸ナトリウム、セラトロダスト、タザノラスト、テルフェナジン、トシル酸スプラタスト、トラニラスト、フマル酸エメダスチン、フマル酸ケトチフェン、プランルカスト水和物、ペミロラストカリウム、レピリナスト等又はこれらの塩が挙げられる。骨吸収抑制剤としては、例えば、アミノメチレンビスフォスフォン酸等が挙げられる。血管新生阻害剤としては、例えば、血管新生抑制ステロイド、フマギリン、フマギロール誘導体等が挙げられる。生理活性ペプチドとしては、TNF−αレセプター、TIMP、内因性免疫抑制物質等が挙げられる。抗体としては、例えば、抗TNF−α抗体、抗TNF−αレセプター抗体、抗MMP抗体、抗サイトカイン抗体、抗サイトカインレセプター抗体、抗インターロイキン抗体、抗インターロイキンレセプター抗体、抗細胞接着因子抗体等が挙げられる。多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム;ムコ多糖類;多硫酸化ムコ多糖類等が挙げられる。植物由来の生理活性物質としては、例えば、トリテルペン化合物等が挙げられる。ラジカルスカベンジャーとしては、例えば、α−トコフェロール、ポリフェノール類、SOD等が挙げられる。本発明の生体適合性ポリマーとしては、公知の天然又は合成のポリマーが挙げられる。また、このポリマーは、さらに生体分解性であることが好ましい。具体的には、乳酸、グリコール酸、酪酸、ヒドロキシ酪酸又はシュウ酸等からなるホモポリマー(例えば、d,l−ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−β−ヒドロキシブチレート(PHBA)、ポリ−p−ジオキサン(PDS)、ポリエステルアミド、シュウ酸のポリエステル、ポリ−ε−カプロラクトン等);コポリマー(グリコライド/Lラクタイドコポリマー、PHBA/β−ヒドロキシバレレイトコポリマー等);2種以上のホモポリマーの混合物;ホモポリマーとコポリマーの混合物又は2種以上のコポリマーの混合物等が挙げられる。なお、光学活性体は、d体、l体又はそれらの混合物のいずれであってもよい。これらのポリマーは、分子量が2,000〜500,000程度であることが好ましく、2,000〜200,000程度がより好ましく、5,000〜100,000程度がさらに好ましい。なかでも分子量が2,000〜200,000程度のd,l−ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はd,l−乳酸/グリコール酸のコポリマーを用いるのが好ましく、ホモポリマー及び/又はコポリマーの混合物の場合には、特に、分子量が、5,000〜100,000程度のd,l−ポリ乳酸が5%程度以上配合されているものが好ましい。本発明のナノカプセルは、生理活性物質が、ナノカプセル中に0.01〜75%(w/w)程度含有されていることが好ましく、0.01〜20%(w/w)程度であることがより好ましい。本発明におけるナノカプセルは、公知のマイクロカプセル化技術である溶媒拡散法(例えば、特開平5−58882号公報参照)、相分離法、液中乾燥法、噴霧乾燥法、凍結粉砕法等の種々の方法により製造することができる。なかでも、溶媒拡散法(油中法又は水中法)及び相分離法が好ましい。なお、溶媒拡散法においては、油中溶媒拡散法又は水中溶媒拡散法のいずれを使用するかは、生理活性物質の溶解性等により適宜選択することができる。例えば、本発明のナノカプセルは、油中溶媒拡散法(O/O法)により、以下のようにして製造することができる。まず、生理活性物質及び生体適合性又は生体分解性ポリマーを有機溶媒に溶解して溶液を調製する。次いで、この溶液を、両物質が溶解しない油相中に撹拌下で添加する。ここで使用することができる有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール等の低級アルコール、アセトン、アセトニトリル、ジクロルメタン、クロロホルム等又はこれらの混合液が挙げられる。なかでも、アセトンと低級アルコールを適当な割合(例えば、50:1〜1:1程度)で混合して用いることが好ましい。また、油相としては、極性の低い油を使用することが好ましく、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素系、中鎖脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸等)のモノ−、ジ−、トリ−グリセライド、中鎖脂肪酸とアルコールとのエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ヘキシルデシル等)、高級アルコール類(例えば、オレイルアルコール、イソヘキシルデカノール等)又はn−ヘキサン等の有機溶媒等が挙げられる。なかでも、中鎖脂肪酸のグリセライドが好ましい。なお、有機溶媒及び/又は油相中にノニオン、アニオン又はカチオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリソルペート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルピロリドン等)の1種又は2種以上を添加してもよい。上記のように、生理活性物質及び生体適合性又は生体分解性ポリマーを含有する溶液が油相中に添加されると、溶液中の有機溶媒が瞬時に油相に拡散し、生理活性物質を封入したポリマーの微細な球形粒子であるナノカプセルが析出する。なお、溶液を油相中に添加及び/又は攪拌する際、任意に、700mmHg程度以下に減圧してもよいし、ポリマーのガラス転移点以下の温度に油相を加温してもよい。また、添加速度は、0.5ml/分〜10ml/分程度とすることが好ましい。このようにして得られたナノカプセルは、遠心分離操作又は濾過操作により分取することができる。その後、任意にナノカプセル表面に付着する界面活性剤等を除去する目的で、n−ヘキサン、蒸留水、界面活性剤(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース等)を添加した蒸留水等で、得られたナノカプセルを数回繰り返して洗浄してもよく、さらに、洗浄されたナノカプセルを再度蒸留水等に分散し、凍結乾燥してもよい。なお、ナノカプセルを再度蒸留水に分散する際には、凝集防止の目的で、任意にマンニトール等の添加剤を加えてもよい。また、本発明のナノカプセルは、水中溶媒拡散法(W/O法)により、以下のようにして製造することができる。上記の油中溶媒拡散法と同様に、生理活性物質及び生体適合性又は生体分解性ポリマーを有機溶媒に溶解して溶液を調製する。次いで、この溶液を、両物質が溶解しない水相中に撹拌下で添加する。ここで使用することができる有機溶媒は、上記と同様のものが挙げられる。なお、有機溶媒には、上記と同様に、界面活性剤を添加してもよい。また、水相としては、通常、蒸留水が用いられ、蒸留水中には上記と同様の界面活性剤が0.01〜10%(w/w)程度添加されていてもよい。なかでも、蒸留水に2%程度のポリビニルアルコールを添加したものが好ましし)。上記のように、生理活性物質及び生体適合性又は生体分解性ポリマーを含有する溶液が水相中に添加されると、溶液中の有機溶媒が瞬時に水相に拡散し、生理活性物質を封入したポリマーの微細な球形粒子であるナノカプセルが析出する。なお、溶液を水相中に添加及び/又は攪拌する際、上記と同様に、減圧又は加温してもよく、添加速度も上記と同様でよい。また、得られたナノカプセルを洗浄、再分散、凍結乾燥してもよい。さらに、本発明のナノカプセルを、液中乾燥法(W/O/W法)で製造する場合には、以下のように製造することができる。まず、生理活性物質を少量(例えば、ポリマー溶液に対して1〜25%程度)の蒸留水に溶解して水溶液を調製する。この水溶液を、生体適合性又は生体分解性ポリマー、任意に界面活性剤を有機溶媒に溶解して得た溶液に添加して、エマルジョンを調製する。得られたエマルジョンを、高速撹拌剪断機、ホモジナイザー等を用いた乳化操作又は超音波処理等により微細な乳化滴に調製する。この乳化滴を、界面活性剤(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース等)を含有する水相に加えて、W/O/Wエマルジョンを作製した後、有機溶媒を乾燥させてナノカプセルを得る。その後の操作は、上述した油中溶媒拡散法又は水中溶媒拡散法と同様に行うことができる。本発明のナノカプセル製剤は、注射もしくは点滴用等の注入剤又は用時溶解型の製剤(ナノカプセル自体又は必要に応じて適当な添加剤が配合されていてもよい)等を意味するが、なかでも、注入剤の形態であることが好ましい。本発明のナノカプセル製剤は、ナノカプセルを適当な溶媒に分散し、必要に応じて適当な添加剤等に配合することにより、注入剤の形態とすることができる。また、用時溶解型の製剤は、使用する際に適当な溶媒に分散させることにより使用することができる。適当な溶媒としては、生体及び生理活性物質に悪影響を与えないものであればよく、例えば、注射用蒸留水、滅菌精製水等が挙げられる。なかでも、注射用蒸留水が好ましい。ナノカプセルを溶媒に分散させる場合には、ナノカプセルを溶媒、例えば注射用蒸留水中に0.01〜75%(w/w)程度の割合で分散させることが好ましく、1〜50%(w/w)程度で分散させることがより好ましく、5〜25%(w/w)程度で分散させることがさらに好ましい。適当な添加剤としては、当該分野で通常使用される添加剤、例えば、分散剤(例えば、ツィーン80、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、ポリエチレングリコール400等)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール等)、局所麻酔剤(例えば、塩酸キシロカイン、クロロブタノール等)等が挙げられる。さらに、本発明の好ましい形態によれば、ナノカプセル製剤は、例えば、キトサン、プルラン、デキストラン等の生体付着性の高分子多糖類でナノカプセルの表面を被覆するか、ナノカプセル内又はその表面にこれらの高分子多糖類を存在させたものでもよい。それにより、炎症細胞へのナノカプセルの付着、あるいは炎症細胞内への移行をより効果的に行わせることができ、生理活性物質の効果をより高めることができる。この高分子多糖類は、分子量が2,000〜200,000程度であることが好ましい。高分子多糖類を使用する場合には、ナノカプセルに対して0.001〜10%(w/w)程度の範囲が好ましく、2%程度以下がより好ましい。高分子多糖類でナノカプセル表面を被覆する方法としては、例えば、ナノカプセルを作製した後、洗浄する際に、高分子多糖類を、例えば0.005〜5%(w/w)の濃度で洗浄液中に添加する方法が挙げられる。また、高分子多糖類をナノカプセル内又はその表面に存在させる方法としては、ナノカプセルを析出させる際の溶媒に高分子多糖類を、例えば0.2〜2.5%(w/w)の濃度で添加する方法が挙げられる。また、本発明のさらに別の観点によれば、本発明のナノカプセルをヒトを含む哺乳類の関節内に投与する方法が提供される。ここで、関節内への投与とは、本発明のナノカプセル製剤を適切な溶媒に分散させて、関節内、通常関節腔内又はその近傍に注入することを意味する。ナノカプセル製剤の投与量は、生理活性物質の種類及び含量、対象疾患の種類、その症状、年齢等によって種々異なるが、少なくとも生理活性物質の有効濃度が保持される量とすることが必要である。通常生理活性物質を成人1人あたり、1回約0.0001〜100mg/kg程度、1日〜1ヶ月に1回程度投与することができる。以下に、本発明の関節内疾患治療用のナノカプセル製剤の実施例及び試験例を詳細に説明する。実施例1(1)リン酸ベタメタゾンナトリウム(BSP)10mgと乳酸・グリコール酸コポリマー(和光純薬製、PLGA7520)(LA/GLA=75/25、MW=20,000)100mgとを精密に秤り取り、アセトン3ml、メタノール0.3ml及びソルビタンモノオレエート100mg(界面活性剤、スパン80)を含むポリマー・薬物溶液を調製した。得られた溶液を、撹拌モータを取り付けた容器内で、2%のヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(HexaglynPR−15:日光ケミカルズ製)を含むカプリル酸・カプリン酸トリグリセライド60ml(TriesterF−810:日光ケミカルズ 製)に、400rpmで撹拌しながらペリスタポンプを用いて、2ml/分の一定速度で注加した。得られた溶液を20,000rpmで遠心分離し、上澄液を廃棄した残渣(ナノカプセル)に少量のn−ヘキサンを加え、再分散させ、その後、再び同条件で遠心分離した。遠心分離終了後、n−ヘキサンを廃棄し、残渣を充分に乾燥した。乾燥した残渣に少量の2%ポリビニルアルコール水溶液を加えて分散させ、再び遠心分離した。遠心分離終了後、得られた残渣に少量の水を加えて再分散させた液を、凍結乾燥してナノカプセルを得た。また、上記と同様の方法で、乳酸とグリコール酸の共重合比率及び得られたポリマーの分子量を、図1に記載の範囲で変化させたポリマーを用いて、リン酸ベタメタゾンナトリウムの3種のナノカプセルを得た。得られた4種のナノカプセルの平均粒子径を、レーザー回折式粒度分布測定器で測定した。その結果、ナノカプセルの平均粒子径は、いずれも約350nmであった。また、このナノカプセルを電子顕微鏡で観察したところ、いずれも1μm未満であり、かつ球形であることを確認した。試験例1実施例1で得られたナノカプセル(LA/GLA=75/25、MW=20,000)40mgを予め調製した等張リン酸緩衝液(pH=7.2)16mlに添加し、37℃で振とうし、溶液中におけるリン酸ベタメタゾンナトリウムの経時的な放出量を測定した。乳酸とグリコール酸の共重合比率及び分子量の異なる図1に記載のナノカプセルについても同様に試験した。その結果を図1に示す。図1によれば、低分子量ポリマーのナノカプセル(LA/GLA=100/0及び75/25、MW=5,000)はいずれも試験開始後、数時間で80%以上の薬物溶出率を示したが、高分子量のポリマーのナノカプセル(LA/GLA=100/0及び75/25、MW=20,000)は試験開始後、160時間を経過した後においても、30%以下の薬物溶出率であった。この時、LA/GLA=100/0のナノカプセルで約15%、LA/GLA=75/25のナノカプセルで約30%と、GLAの共重合比率が高いほど高率の薬物溶出率を示した。以上の結果より、本発明のナノカプセル製剤におけるリン酸ベタメタゾンの溶出特性は、分子量及びGLAの共重合比率に依存し、分子量が高いほど溶出性を低く抑えることができ、また、GLAの共重合比率が高いほど溶出性が高くなるものと推察された。従って、この両者により薬物溶出をコントロールすることが可能である。特に、高分子量ポリマーのナノカプセル(LA/GLA=100/0及び75/25、MW=20,000)は160時間を経過した後においても、約70〜85%の薬物が残存しており、生体内に投与した場合、ポリマーの生理的な崩壊による薬物溶出が加わって、生体内では良好な持続性を示すことが期待された。試験例2実施例1で得られたナノカプセル(LA/GLA=75/25、MW=20,000)約80mg(薬物量(BSP)として5mgを含有する量)を生理食塩水1mlに分散させて懸濁液を製して、本発明のサンプルとした。また、水島らの方法(例えば、Arzneim.−Forsch/Drug Res.,30,(1),Nr 2,(1980))に従って、ラットの背部に約10mlのエアポーチを作製した。ペニシリン10,000IU10mgを2%カルボキシメチルセルロースナトリウムの水溶液に溶解し、全量を6mlにしたものを、エアポーチ作製24時間後、エアポーチの内部に、注射針を取り付けたシリンジを用いて注入した。さらに24時間後に、リポポリサッカライドを100g/mlの濃度で生理食塩水に溶かして調製した液0.5mlを注入した。さらに1時間経過後に、本発明のサンプルをエアポーチ内に、注射針を取り付けたシリンジを用いて投与した。投与後、24、72、168時間経過後にポーチを開き、内液を生理食塩水で洗浄し、洗液の一部をアセトンで完全に溶解した。その後、この内液に残存したリン酸ベタメタゾンナトリウムの量を測定した。さらに、エアポーチ内に溶解した薬物量を求めるため、この洗液の一部を残存する微粒子を溶解させないように取り出して遠心分離し、この上清を0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、得られた液について定量試験を行った。なお、対照として、リン酸ベタメタゾンナトリウムの水溶液を、薬物量(BSP)として10倍量、50mgで調製し、同様にエアポーチ内に投与した。また、これらの空試験としては、生理食塩水をラットのエアポーチ内に投与した。得られた結果を図2に示す。図2に示したエアポーチ内残存薬物量の経時変化によれば、投与量として10倍相当量であるリン酸ベタメタゾンナトリウム水溶液(薬物水溶液)は、投与後24時間経過時点で既に消失していたのに対し、実施例1のナノカプセルを含むサンプルでは投与後徐々に低下し、168時間経過後も初期投与量の約20%のリン酸ベタメタゾンナトリウムがエアポーチ内に残存していることが分かった。また、図2に示したエアポーチ内溶解又は溶出薬物量の経時変化によれば、エアポーチ内に溶解又は溶出したリン酸ベタメタゾンナトリウムは投与後徐々に増加していくことが分かった。さらに、168時間経過後に、ラットのエアポーチを開き、皮下及び皮内部を肉眼で観察したところ、空試験と比較して炎症を惹起させるような内液の変化・浸透物質、あるいは皮下・内の細胞の浸潤又は増殖の兆候に起因する発赤などの異常所見は見られなかった。上記より、本発明のナノカプセル製剤は、生体腔内に長時間貯留し、かつ安全であることが確認された。試験例3実施例1で得られたナノカプセル(LA/GLA=75/25、MW=20,000)約50mg(薬物量(BSP)として3mgを含有する量)を生理食塩水250μlに分散させて懸濁液を製して、本発明のサンプルとした。E.R.Pettipherらの方法(Br,J.exp.Path.,69,113−122,(1988))に従って、オバアルブミン(FCA)によるウサギアジュバント関節炎の誘導モデルを作製し、感作3週間経過後に再び膝にオバアルブミンでブースティングした。ブースティンクと同時に本発明のサンプルを関節腔内に投与した。なお、対照としてリン酸ベタメタゾンナトリウムの水溶液を薬物量CBSP)としては同一量、3mgで調製したもの、また、空試験として生理食塩水のみを、ブースティングと同時に関節腔内に投与した。投与後1、3、7、14、21、28、35、42日経過毎に、ウサギの膝の外径をノギスで計測した。また、膝の皮膚温度を接触型の表面温度計で測定した。これらの結果を図3及び図4にそれぞれ示す。なお、経時的に測定した膝外径値及び温度値は、膝にブースティングする前を基準値として、ブースティング後の各測定値から基準値を差し引いた値として示した。一般に、ブースティング24時間経過後には膝の腫脹は最大になり、これらは発熱を伴うことが知られている(E.R.Pettipher,G.A.Higgs and B.Henderson.,Agents Action,21,98−103,(1987))が、図3によれば、本発明のサンプルを投与した場合には、投与1日後より有意に膝の腫れは抑制され、5週間経過後も腫れが継続して抑制された。これに対して、リン酸ベタメタゾンナトリウム水溶液を投与した場合には、投与後1日経過後に膝の腫れを抑制したが、その後上昇し、生理食塩水の例とほぼ同様の腫れを示した。また、図4によれば、膝温度については、本発明のサンプルを投与した場合もリン酸ベタメタソンナトリウム水溶液を投与した場合もほとんど差はなく、何れも炎症による発熱を抑えることが分かった。さらに、ブースティング2、4、6週間経過後に、ウサギの採血を行い、オバアルブミンの抗体産生なELISA法(E.R.Pettipherの同文献に従い)で測定した。また、6週間経過後には、ウサギの膝関節を開き、関節腔内及び周辺組織の形態学的観察を行った。この結果、本発明のサンプルを投与した関節内に特徴的な病態である炎症細胞の浸潤等は軽減され、抗体体産生を抑制していることが確認された。実施例2塩化リゾチーム10mg及びヒスチジン1mgを秤量し、0.2mlの精製水に溶解した。この溶液を、ポリ乳酸(MW=20,000)100mg及びソルビタンモノオレエート100mgを予め2mlの塩化メチレンに溶解させた液に添加した後、得られた溶液を撹拌機で18,000rpmで2分間撹拌し、W/Oエマルジョンを作製した。撹拌モータを取り付けた容器内で、2%のヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(HexaglynPR−15)を含むカプリル酸・カプリン酸トリグリセライド(TriesterF−810)100ml中に上記で得られた塩化リゾチームを含有するエマルジョン溶液を、600rpmで撹拌しながら、ペリスタポンプを用いて2ml/分の一定速度で注加した。この後、減圧下でさらに2時間撹拌した。撹拌後、得られた液を20,000rpmで遠心分離し、上澄液を廃棄して残渣(ナノカプセル)を得た。さらに、残渣を2%ポリビニルアルコール水溶液に分散させ、再び遠心分離した。得られた残渣に少量の水を加えて再分散させ、その液を凍結乾燥してナノカプセルを得た。得られたナノカプセルを、電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径は1μm未満であった。実施例3ムコポリサッカライド3g及びアルギニン300mgを秤量し、10mlのリン酸緩衝液に溶解した。この溶液を、乳酸/グリコール酸コポリマー(LA/GLA=50/50、MW=100,000)200g及びソルビタンモノオレエート100gを予め60mlのクロロホルムに溶解させた液に添加した後、得られた溶液を撹拌機で20,000rpmで2分間撹拌してW/Oエマルジョンを作製した。撹拌モータを取り付けた容器内で、2%ポリビニルアルコール水溶液(pH=5.0)2000ml中に、上記で得られたW/Oエマルジョンを含む液を、400rpmで撹拌しながら、チューブポンプを用いて10ml/分の一定速度で注加した。この後、減圧下でさらに2時間撹拌した。撹拌後、得られた液を20,000rpmで遠心分離し、上澄液を廃棄して残渣(ナノカプセル)を得た。さらに、残渣を水に分散させ、再び遠心分離した。得られた残渣に水を加えて再分散させ、その液を凍結乾燥してナノカプセルを得た。得られたナノカプセルを電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径は1μm未満であった。実施例4マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤1mg及び乳酸/グリコール酸コポリマー(LA/GLA=75/25、MW=50,000)100mgを精密に秤り取り、エタノール及びアセトンを含む溶液(1:2)3mlに完全に溶解させた。得られた液を撹拌機で撹拌しながら、0.01%ポリビニルアルコール水溶液100mlに分散させた後、これらの懸濁液を乾燥温度50℃、送液速度5ml/分の条件下で噴霧乾燥してナノカプセルを得た。得られたナノカプセルを電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径は1μm未満であった。実施例5インドメタシン15mg及びポリグリコール酸(MW=100,000)100mgを精密に秤り取り、メタノール及びアセトンを含む溶液(1:2)2mlに完全に溶解させた。得られた液を、撹拌機で撹拌しながら、2%ポリビニルアルコール水溶液60mlに分散させた後、これらの懸濁液を実施例4と同様の方法で噴霧乾燥してナノカプセルを得た。得られたナノカプセルを電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径は1μm未満であった。実施例6リン酸ベタメタゾンナトリウム10mgと予め[FITC](fluorescenin 5−isothiocyanate)で標識した乳酸・グリコール酸コポリマー(LA/GLA=75/25、MW=20,000)100mgとを精密に秤り取り、アセトン3ml、メタノール0,3ml及びソルビタンモノオレエート100mg(界面活性剤、スパン80)を含むポリマー・薬物溶液を調製した。得られた溶液を、撹拌モータを取り付けた容器内で、2%のヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含むカプリル酸・カプリン酸トリグリセライド60mlに、400rpmで撹拌しながらペリスタポンプを用いて、2ml/分の一定速度で注加した。得られた溶液を20,000rpmで遠心分離し、上澄液を廃棄した残渣(ナノカプセル)に少量のn−ヘキサンを加え、再分散させ、その後、再び同条件で遠心分離した。遠心分離終了後、n−ヘキサンを廃棄し、残渣を充分に乾燥した。乾燥した残渣に、pH=4.4の酢酸緩衝液を用いて溶解したキトサン(MW=50,000)を最終濃度として0.2%(w/w)となるように調製した2%ポリビニルアルコール水溶液を加えて分散させ、10秒間超音波処理し、その後、再び遠心分離した。遠心分離終了後、得られた残渣に少量の水を加えて再分散させた液を凍結乾燥して、キトサンで被覆した[FITC]ナノカプセルを得た。このキトサン被覆[FITC]ナノカプセルを少量の水に分散させ、レーザー回折式の粒度分布測定機で測定した結果、平均粒子径は352nmであった。また、走査型の電子顕微鏡(SEM)で測定した結果、平均粒子径は1μm未満であった。次に、このキトサン被覆[FITC]ナノカプセルをpH1〜7に調製した各塩酸・リン酸カリウム緩衝液に分散させ、ゼータ電位を測定機(Zetamaster,ZEM5002)でナノカプセルの表面荷電を測定した結果、pH=4付近よりも酸性側に移行するに従って、ゼータ電位は正荷電(プラス側)にシフトした。これより、キトサンがナノカプセルにコーティングされているか又は付着してることが確認された。また、キトサン被覆[FITC]ナノカプセルと、この対照として被覆していない[FITC]ナノカプセルとを、それぞれ生理食塩水を用いて、コンフルエント培養したヒト滑膜細胞に、500μg/0.5ml/ウェルの量で添加し、37℃でCO25%の条件下でインキュベートした。インキュベート開始1、2、3、4時間後に、滑膜細胞に付着した[FITC]量、すなわち付着ナノカプセル量を計測した。この結果、被覆していない[FITC]ナノカプセルは滑膜細胞にほとんど付着していなかったのに対し、キトサン被覆[FITC]ナノカプセルはインキュベート開始1時間後ですでに20〜30%滑膜細胞に付着していることが分かった。実施例7ムコポリサッカライド3g及びアルギニン300mgを秤量し、10mlのリン酸緩衝液に溶解した。この溶液を、乳酸/グリコール酸コポリマー(LA/GLA=50/50、MW=100,000)200g及びソルビタンモノオレエート100gを予め60mlのクロロホルムに溶解させた液に添加した後、得られた溶液を撹拌機で20,000rpmで2分間撹拌してW/Oエマルジョンを作製した。撹拌モータを取り付けた容器内で、予めキトサン(MW=50,000)を2.5%(w/w)となるように溶解した2%ポリビニルアルコール水溶液(pH=5.0)2000ml中に、上記で得られたW/Oエマルジョンを含む液を、400rpmで撹拌しながら、チューブポンプを用いて10ml/分の一定速度で注加した。この後、減圧下でさらに2時間撹拌した。撹拌後、得られた液を20,000rpmで遠心分離し、上澄液を廃棄して残渣(ナノカプセル)を得た。さらに、残渣を水に分散させ、再び遠心分離した。得られた残渣に水を加えて再分散させ、その液を凍結乾燥してナノカプセル内及びその表面にキトサンを存在させた。実施例8実施例2〜7で得られたナノカプセル20mgを、注射用蒸留水1mlにそれぞれ分散することにより、ナノカプセル製剤を製造した。実施例9実施例2〜7で得られたナノカプセル20mgを、滅菌した0.05%キトサン水溶液0.2ml及び注射用蒸留水0.8mlにそれぞれ分散することにより、ナノカプセル製剤を製造した。【図面の簡単な説明】図1は、本発明の製剤に含有されるナノカプセルの薬剤放出結果を示すグラフである。図2は、本発明のナノカプセル(LA/GLA=75/25、MW=20,000)を含有するサンプルをエアポーチ内に投与した場合のエアポーチ内残留薬物量及びエアポーチ内での溶出又は溶解薬物量の経時的変化を示すグラフである。図3は、本発明のナノカプセル(LA/GLA=75/25、MW=20,000)を含有するサンプルを投与した場合のウサギアジュバント関節炎モデルにおけるブースティング後の経時的な膝の腫れ(上昇値)を示すグラフである。図4は、本発明のナノカプセル(LA/GLA=75/25、MW=20,000)を含有するサンプルを投与した場合のウサギアジュバント関節炎モデルにおけるブースティング後の経時的な膝の表面温度(上昇値)を示すグラフである。 生理活性物質と該生理活性物質を持続的に放出しうる生体適合性ポリマーとからなり、該生体適合性ポリマーが、乳酸、グリコール酸、酪酸、ヒドロキシ酪酸及びシュウ酸からなる群から選択されるモノマーから得られる平均分子量2,000〜500,000のホモポリマー、コポリマー又はそれらの混合物である、0.25〜0.45μmの平均粒子径を有するナノカプセルの、哺乳動物の関節内に投与するための関節内疾患治療用の製剤を製造するための使用。 生理活性物質が、鎮痛剤、抗炎症剤、DMARD、軟骨破壊抑制剤、免疫調節・抑制剤、抗アレルギー剤、骨吸収抑制剤、ラジカルスカベンジャーである請求項1に記載の使用。 抗炎症剤が、デキサメタゾン、トリアムシメロン、トリアムシノロンアセトニド、ハロプレドン、パラメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン又はそれらの誘導体及び塩のようなステロイド系消炎剤;細胞接着因子産生阻害剤のような細胞接着阻害剤;スフィンゴミエリナーゼ、MAPキナーゼ、プロテインキナーゼ、チロシンキナーゼ等のリン酸化酵素を阻害する物質、グルココルチコイドレセプター阻害剤、NF−κBリン酸化酵素阻害剤等を含むNF−κB又はAP−1のような転写因子に対する活性化抑制剤である請求項2に記載の使用。 生理活性物質が、ナノカプセル中に0.01〜75%(w/w)の割合で配合されてなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の使用。 生理活性物質が、ナノカプセル中に0.01〜20%(w/w)の割合で配合されてなる請求項4に記載の使用。 ナノカプセルが、生体付着性の高分子多糖類でその表面が被覆されるか、ナノカプセル内又はその表面に生体付着性の高分子多糖類が存在する請求項1〜5のいずれか1つに記載の使用。 生体付着性高分子多糖類が、分子量2,000〜200,000のキトサン、プルラン又はデキストランである請求項6に記載の使用。 生体付着性高分子多糖類が、ナノカプセルに対して、0.001〜10%(w/w)の範囲で使用されてなる請求項6又は7記載の使用。 製剤が、ナノカプセルと注射用蒸留水との用時調製用の注入剤の形態である請求項1〜8のいずれか1つに記載の使用。 製剤が、さらに生体付着性高分子多糖類を含む請求項9に記載の使用。