タイトル: | 特許公報(B2)_キトサン含有高分子エマルジョンの製造法 |
出願番号: | 2000401836 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C08F 251/00,C08F 2/22,C08F 2/44,A01N 63/00,A61K 31/722,A61L 9/01,A61P 31/04 |
赤荻 亮 JP 4334759 特許公報(B2) 20090703 2000401836 20001228 キトサン含有高分子エマルジョンの製造法 花王株式会社 000000918 古谷 聡 100087642 古谷 馨 100063897 溝部 孝彦 100076680 持田 信二 100091845 義経 和昌 100098408 赤荻 亮 20090930 C08F 251/00 20060101AFI20090903BHJP C08F 2/22 20060101ALI20090903BHJP C08F 2/44 20060101ALI20090903BHJP A01N 63/00 20060101ALN20090903BHJP A61K 31/722 20060101ALN20090903BHJP A61L 9/01 20060101ALN20090903BHJP A61P 31/04 20060101ALN20090903BHJP JPC08F251/00C08F2/22C08F2/44 CA01N63/00 AA61K31/722A61L9/01 KA61P31/04 C08F251-289 C08F2 C08L 特許第2817968(JP,B2) 特許第2790322(JP,B2) 特開平07−242772(JP,A) 特開平09−003106(JP,A) 2 2002201235 20020719 8 20061201 渡辺 陽子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、皮膚化粧料、毛髪化粧料、医薬品、衣料用洗剤、衣料用処理剤、繊維処理剤、消臭剤、殺菌/抗菌剤等に有用な、キトサン含有高分子エマルジョンの製造法に関する。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】キトサンはカニやエビ等の甲殻類の甲皮に含まれるキチンをアルカリ処理等により脱アセチル化して得られる塩基性多糖であり、その特異な性質を生かして吸着剤、凝集剤、化粧品原料、医療材料、抗菌剤、食品材料等、広範囲の用途への利用が行われている。しかしキトサン単独では酸性水溶液以外には溶解せず、微粒子化やそのエマルジョン化が重要となる。【0003】微粒子化に関しては、キトサンを酸に溶解後、アルカリ凝固液中に滴下する方法と、キトサン溶液または分散液を機械的に処理する方法がある。しかしながらいずれも数十μm〜数百μm程度の粒子しか得られず、水には分散しない。微粒子の水分散化に関してはキトサンと高分子化合物とを複合粒子化する方法(特許第2790322号及び特許第2817968号)があるが、平均粒径は30μm〜100μmと大きく、水中の分散安定性にも不十分である。さらに平均粒径が1μm以下に微少粒径化する方法(特開平9-3106号公報)もあるが、分散液中への非重合性の酸の混在が不可避であり、用途によっては不適当である。【0004】従って、本発明の課題は、非重合性の酸を使用せずに、分散安定性の良好な、平均粒径1μm以下のキトサン含有高分子エマルジョンを製造する方法を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体により、アミノ基の全部または一部を中和したキトサンの存在下、エチレン性不飽和単量体を重合する、非重合性の酸を使用しない、平均粒径1μm以下のキトサン含有高分子エマルジョンの製造法である。【0006】【発明の実施の形態】[キトサン]本発明に用いられるキトサンとは、(1,4)−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルカン構造を有するキチンの脱アセチル化物であり、(1,4)−2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルカン構造を有するものである。一般に、天然に存在するキチンはアセトアミド基の一部がアミノ基となっているため、本発明で用いられるキトサンとは脱アセチル化度が30%以上のものを指す。また、本発明においては、キトサンのアミノ基や水酸基の一部がアシル化、エステル化、エーテル化、その他の反応によって修飾されたキトサン誘導体も含むものである。本発明においてキトサンの分子量は特に限定されないが、1万〜100万程度のものを使用するのが好ましい。【0007】[酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体]本発明に用いられる酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体とは、キトサンを溶解し溶液とすることが可能な、分子内に反応性不飽和基を一個以上かつ酸性基を一個以上有する水溶性の有機酸である。【0008】具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸単量体;スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビニルスルホン酸等の不飽和スルホン酸単量体や;ビニルホスフェート、ビス((メタ)アクリロイロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等の不飽和リン酸単量体等が挙げられ、これらは1種以上を使用することができる。また、この中では、酸性度の比較的低い不飽和カルボン酸単量体が好ましく、特にポリマーの酸性度が低いメタクリル酸が最も好ましい。【0009】本発明の高分子エマルジョンは、酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体により、キトサンのアミノ基の全部または一部を中和するものであり、酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体の使用量は、キトサンの溶解性、及び粒子の安定性の観点から、キトサンのアミノ基当たりに換算して、1.5倍モル以下、好ましくは0.6〜1.2倍モル、さらに好ましくは0.6〜1.1倍モルである。【0010】[その他の単量体]本発明の高分子エマルジョンには、単量体として、酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体だけを使用することが好ましいが、酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能な他の単量体も使用することができる。【0011】共重合可能な他の単量体として、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン;塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオライド等のハロゲン化オレフィン;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸或いはメタクリル酸のエステルである(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの4級化物、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル及びこれらの4級化物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びこれらの4級塩等のアクリルアミドまたはメタクリルアミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系単量体;その他、N−ビニルピロリドン等を併用することもできる。【0012】また、本発明においては、多官能性単量体を用いても良く、多官能性単量体としては、ジビニルベンゼン、テトラアリロキシエタン、N,N−メチレンビス−アクリルアミド、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1.5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、N,N−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種以上を使用することができる。【0013】[重合開始剤]本発明に用いられる重合開始剤としては、熱または還元性物質の存在下でラジカル分解し、単量体の付加重合を開始されるもので、水溶性のペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾ化合物等が一般的に用いられる。例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等のペルオキソ二硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物;2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩(V−50等)、2,2’−アゾビス−2−メチルブタンアミドオキシム塩、4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノン酸等のアゾ化合物が挙げられる。必要に応じて還元剤と組み合わせて、レドックス系開始剤としても使用することができる。重合開始剤の使用量は重合性単量体に対し0.05〜25重量%の範囲が好ましい。【0014】[その他の成分]本発明の重合に際し、キトサン以外の水溶性高分子化合物や界面活性剤を適宜併用することも可能である。水溶性高分子化合物や界面活性剤としてはキトサンの溶解及び重合により生じる高分子の分散安定性を妨げないものであれば特に限定されるものではない。例えば、水溶性高分子化合物としてはポリビニルアルコール、デンプン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プルラン、ポリエチレンオキシド等のノニオン性水溶性高分子化合物、これらに疎水基、カチオン基等を導入することにより得られる誘導体が挙げられ、これらは1種以上を使用することができ、その全使用量はキトサンに対して50重量%以下が好ましい。【0015】界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸塩、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸塩、ドデシルリン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤;オクタデシルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ドデシルポリグルコシド等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらは1種類以上を使用することができ、その全使用量は全溶媒に対して10重量%以下が好ましい。また、連鎖移動剤、停止剤等を用いることも可能である。【0016】本発明の製造法は、溶媒として水を用いることが好ましいが、親水性あるいは疎水性溶剤を適宜併用することも可能である。これらは重合終了時に減圧留去等の操作によって除去されるものであっても、そのまま製品中に含有させるものであっても良い。親水性又は疎水性溶剤として、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、パラフィン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、カルビトール等のポリオール類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;その他ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは1種類以上を使用することができ、その全使用量は、水100重量部に対して好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。【0017】尚、本発明の製造法では非重合性の酸は使用しない。ここで非重合性の酸とは、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、ジクロル酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸をいう。【0018】[合成法]本発明の高分子エマルジョンの製造は、まずキトサンと酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体を、溶媒、主として水に溶解し、場合により他の単量体を加える。 さらに、この水溶液に重合開始剤、必要により水溶性高分子化合物、界面活性剤、及び連鎖移動剤を添加し、攪拌下、30〜80℃の温度で1〜24時間重合を行うことにより、目的とする高分子エマルジョンを得る。重合開始剤は昇温後に系中へ添加してもよい。【0019】本発明の製造法により得られる高分子エマルジョンの平均粒径は、保存安定性の観点から1μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。なお、本発明において平均粒径はレーザー回析型粒径分布測定装置(LA−910、堀場製作所製)を用いて測定することで求めた。【0020】本発明の製造法により得られる高分子エマルジョンは塩基を用いて中和することができる。塩基として、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、炭素数2〜9のアルカノールアミン、エチレンジアミン、アミノ変性シリコーン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、炭素数1〜22のアルキル又はアルケニルアンモニウム、炭素数1〜18のアルキルもしくはアルケニル置換ピリジニウム、第3級アミン、イミダゾリン、塩基性アミノ酸等が挙げられる。塩基の添加量は酸性重合体の酸官能基に対して0.1〜2.0倍モルが好ましい。【0021】【発明の効果】本発明の製造法により得られた高分子エマルジョンは、キトサンが粒子表面または粒子表面及び内部に存在している高分子エマルジョンであり、紙、繊維等に塗布または浸漬することによりキトサン含有高分子を残留させることができる。また、化粧料、衣料処理剤にも配合でき、粒径が小さいため透明系として使用することもでき、安定性が高い。【0022】本発明の製造法では、非重合性の酸を用いないため、低コストで製造出来、また、化粧料に配合した時、酸やその塩の低分子が溶出することがないため、安全性も高い。【0023】【実施例】実施例1市販のフレーク状キトサン(SK−10;甲陽ケミカル製、脱アセチル化度85%以上、粘度10mPa・m;1%酢酸溶液/20℃)7.50gにアクリル酸1.14g(キトサンのアミノ基に対して0.45倍モル)、メタクリル酸1.37g(キトサンのアミノ基に対して0.45倍モル)を加え、さらにイオン交換水を加え390gとした。これを室温で攪拌させながら溶解させ、キトサン/アクリル酸・メタクリル酸水溶液を調製し、還流冷却管、温度計、攪拌翼、窒素吹き込み口を備えたガラス製重合容器に移し、窒素置換の後に攪拌しながら加熱し液温を70℃にした。ここに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩(V−50;和光純薬工業製)0.3gをイオン交換水10gに溶解したものを添加し4時間重合反応を行い高分子エマルジョンを得た。【0024】得られた高分子エマルジョンにネガティブ染色剤を少量加えイオン交換水で希釈し、これの少量を透過型電子顕微鏡(TEM)用支持膜上で乾燥させ、TEM(JEM−2000FX(日本電子製))にて観察したところ、100nm以下の球状微粒子が確認された。TEM写真を図1に示す。【0025】実施例2実施例1においてキトサンをP(VL)(大日精化工業製、脱アセチル化度80%以上、粘度8mPa・m;1%酢酸溶液/20℃)7.5gとし、実施例1と同様にして高分子エマルジョンを得た。【0026】実施例3実施例1においてポリビニルアルコール(PVA)(ゴーセノールEG−30;日本合成化学工業製、部分鹸化型)1.0gを加える以外は同様にしてキトサン/アクリル酸・メタクリル酸水溶液を調製し、その後は実施例1と同様にして高分子エマルジョンを得た。【0027】実施例4実施例1においてアクリル酸を用いず、メタクリル酸量を2.73g(キトサンのアミノ基に対して0.90倍モル)とする以外は実施例1と同様にして高分子エマルジョンを得た。【0028】実施例5実施例4においてキトサン量を6.0gに、メタクリル酸量を3.63g(キトサンのアミノ基に対して1.50倍モル)とする以外は実施例4と同様にして高分子エマルジョンを得た。【0029】比較例実施例4においてキトサン量を5.8gに、メタクリル酸量を4.22g(キトサンのアミノ基に対して1.80倍モル)とする以外は実施例4と同様にして高分子エマルジョンを得た。【0030】試験例実施例1〜5及び比較例で得られた高分子エマルジョンについて、平均粒径、保存時の安定性を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。【0031】<評価方法>・平均粒径レーザー回析型粒径分布測定装置(LA−910、堀場製作所製)にて測定した。【0032】・保存時の安定性高分子エマルジョンを40℃で1ヶ月放置した時の粒子の分散状態(クリーミング、凝集等)を目視観察した。【0033】【表1】【図面の簡単な説明】【図1】 実施例1で得られた高分子エマルジョンのTEM写真である。 酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体により、アミノ基の全部または一部を中和したキトサンの存在下、単量体として、酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体だけを使用して重合する、非重合性の酸を使用しない、平均粒径1μm以下のキトサン含有高分子エマルジョンの製造法であって、キトサンのアミノ基当たりに換算して、酸官能基を有するエチレン性不飽和単量体の使用量が、1.5倍モル以下である、製造法。 水溶性高分子化合物と共に重合する、請求項1記載の高分子エマルジョンの製造法。