生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_唾液成分の免疫学的測定法
出願番号:2000378575
年次:2010
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/50,G01N 33/543


特許情報キャッシュ

大島 光宏 JP 4590581 特許公報(B2) 20100924 2000378575 20001213 唾液成分の免疫学的測定法 合同酒精株式会社 303036670 学校法人日本大学 899000057 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 的場 ひろみ 100101317 山本 博人 100111028 大島 光宏 20101201 G01N 33/53 20060101AFI20101111BHJP G01N 33/50 20060101ALI20101111BHJP G01N 33/543 20060101ALI20101111BHJP JPG01N33/53 KG01N33/50 GG01N33/543 521 G01N 33/48-98 CAplus/MEDLINE(STN) JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII) 特表平10−511469(JP,A) 特開平11−201969(JP,A) 特開平10−293131(JP,A) 大島光宏,唾液潜血試験におけるモノクローナル抗体を用いたヘモグロビン検出試験紙の有用性―ペルオキシダーゼ試験紙法との比較―,日本歯周病学会会誌,日本,岡田宏,1997年 6月28日,Vol.39/No.2,273-280 6 2002181815 20020626 10 20071015 淺野 美奈 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、歯周病等の診断に有用な唾液中の成分の免疫学的測定法及びこれに用いるキットに関する。【0002】【従来の技術】歯周病の早期診断は、有効な早期治療を可能にし、その結果、病変の重症化及び合併症を防止するうえで有用である。歯周病のスクリーニングテストが具備すべき条件としては、(1)疾病や異常が精度良く的確に把握できること、(2)簡便で結果が早くわかること、(3)受診者になるべく苦痛を与えないこと、(4)費用が安価であることなどが挙げられている。【0003】歯周病ポケットからの滲出液には、ハイドロキシプロリン、グリコサミノグリカンなどの細胞組織崩壊マーカーや、プロスタグランディンE2、インターロイキン1βなどの炎症メディエータ及びアミノトランスフェラーゼ、コラゲナーゼなどの酵素類が含まれているので、当該滲出液は歯周病の優れた診断材料であることが知られている(CDA JOURNAL 21巻 35−41頁 1993年)。しかしながら、これらの指標では歯周組織特異性が確認できない。また、滲出液を採取して測定に供するための試料に調整するまでには、マウスリンスで唾液を除くことや遠心分離操作などが必要(J. Periodont. Res 25巻 257−267頁 1990)であり、高価な装置及び複数の操作を要することから、一般歯科診療室や集団検診で行うことが出来る歯周病のスクリーニングテストとしては未だ実用化されていない。【0004】このほかにも、採取した歯周ポケット滲出液の病因微生物を分離して検出する方法や病因微生物由来の酵素活性を測定する方法も報告されている(日本歯周病学会誌 32巻 249−260頁 1990年)が、歯周ポケットからの微生物の採取や酵素活性の測定に時間がかかるという欠点があった。【0005】一方、歯肉にあるレベル以上の炎症があると歯周溝や歯周ポケットから出血がおこり、その結果、唾液中に潜血が検出されることが報告されている(日本歯周病学会誌 18巻 406−413頁 1976年)。この潜血の濃度を潜血由来ヘモグロビンのペルオキシダーゼ様反応にて測定する試験紙は、すでに歯周病診断用医薬品として発売されている。しかし、唾液中には好中球由来のミエロペルオキシダーゼや唾液ペルオキシダーゼが普遍的に存在しているために、潜血由来ヘモグロビンのペルオキシダーゼ様反応による測定は、偽陽性を呈することが問題として指摘されていた。【0006】そこで、本発明者らはヒトヘモグロビンを特異的に認識するモノクローナル抗体を用いた試験紙による唾液の潜血反応の測定を検討してきた(日本歯周病学会誌 40巻 111−118頁 1998年)。【0007】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、血液成分であるヒトヘモグロビンを特異的に認識するモノクローナル抗体を用いた試験紙による測定においても、唾液の粘稠性のためサンプリングしにくく、クロマト法として直接展開することが困難であること、及び充分な測定精度を得るためには、採取した唾液を適正な濃度に均一に希釈し赤血球を迅速に溶血させる処理(1997年日本歯周病学会春季学術大会にて発表)が必要であることなど、一般歯科診療室及び集団検診で容易には実施できないという問題があった。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らはヘモグロビンに代表される唾液成分を一般歯科診療室等で簡便かつ精度良く測定すべく種々検討した結果、唾液を直接検体とするのではなく、あらかじめ洗口液で口腔内を漱いだ吐出液を検体として用い、これを抗ヘモグロビン抗体に代表される抗唾液成分抗体と接触させれば、唾液成分が高精度かつ簡便、迅速に測定でき、歯周病等の診断が短時間で行えることを見出し、本発明を完成するに至った。【0009】本発明は、洗口液で口腔内を漱いだ吐出液を、抗唾液成分抗体に接触させることを特徴とする唾液成分の測定法を提供するものである。また、本発明は、洗口液及び抗唾液成分抗体を含む唾液成分測定用キットを提供するものである。さらに、本発明は、洗口液及び抗ヘモグロビン抗体を含む歯周病診断用キットを提供するものである。【0010】【発明の実施の形態】本発明においては、検体として洗口液で口腔内を漱いだ吐出液を用いる。かかる吐出液を用いることにより、唾液を直接検体とした場合に比べて、唾液中のムチン等の粘質物による反応妨害を排除できるため反応が速やかになるとともに、抗体を多孔性担体に担持して用いた場合の操作性が飛躍的に改善される。【0011】また、洗口液は低浸透圧液を用いるのが好ましい。すなわち、例えば測定対象の唾液成分が、ヘモグロビン等のような赤血球内の成分の場合、洗口液として低浸透圧液を用いると、赤血球がバーストすることにより、ヘモグロビン等が溶出し、抗体との反応が速やかに進行する。従って、低浸透圧液としては、赤血球内浸透圧よりも低い液であればよく、例えば、水、低張食塩水等が挙げられる。【0012】この洗口液としては、カチオン界面活性剤を含有する水溶液が、唾液中のムチン等の粘質物を凝集させて唾液の粘稠性を低下させる効果が高く、唾液中に含まれている上皮細胞等の有形物による濁りを消失させる効果があることから、より好ましい。さらに、測定対象がヘモグロビンの場合には、カチオン界面活性剤含有水溶液を洗口液として用いると、前記のように赤血球のバーストが速やかに進行するとともに、静菌作用により口腔内に存在する微生物によるヘモグロビンの分解を防止できるので、特に好ましい。【0013】カチオン界面活性剤としては、長鎖アルキルピリジニウム塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩及びテトラブチルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。具体例としては、塩化セチルピリジニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、硫酸ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム等が挙げられ、このうち塩化セチルピリジニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムが特に好ましい。【0014】洗口液中のカチオン界面活性剤濃度は0.005〜1重量%、特に0.01〜1重量%が好ましい。【0015】また、洗口液中には、上記カチオン界面活性剤及び水以外に、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類、エタノール等の低級アルコール、pH調整剤、香料等を配合することができる。【0016】口腔内の漱ぎに用いる洗口液の量は1〜10mLで十分である。【0017】抗唾液成分抗体としては、抗ヘモグロビン抗体、抗トランスフェリン抗体等が挙げられる。このうち、抗ヘモグロビン抗体を用いれば、唾液中の潜血、すなわちヘモグロビンが測定できることから、歯周病の診断に有用である。抗ヘモグロビン抗体としては、抗ヒトヘモグロビンモノクローナル抗体が好ましい。【0018】吐出液と抗唾液成分抗体との接触は、吐出液中の測定対象唾液成分と抗唾液成分抗体とが反応し、生成した免疫複合体が検出できる方法であれば特に限定されないが、抗唾液成分抗体を担持した多孔性担体を用いる方法、ラテックス凝集法、EIA法等が挙げられるが、抗唾液成分抗体を担持した多孔性担体を用いる方法が、反応時間の厳密な管理が不要である;判定が容易である;多検体を同時に処理可能である;操作が簡便である等の点で特に好ましい。【0019】抗唾液成分抗体を担持した多孔性担体としては、例えば図1に示すようにスティック状多孔性担体の下端に標識抗唾液成分抗体が担持され、当該部位と離れた位置に捕捉試薬が固定化されているものが好ましい。ここで、多孔性担体としては、前記吐出液が毛細管現象により移動し得るものであればよく、例えば濾紙(天然繊維濾紙、ガラス繊維濾紙等を含む)、セルロース膜、ニトロセルロース膜、ナイロン膜等が挙げられる。多孔性担体の方法は、制限されないが、例えば幅2〜20mm、長さ50〜150mm、厚さ20〜2000μmが好ましい。抗体の標識としては蛍光発色性物質、放射性同位元素を用いることもできるが、コロイド状金粒子、染料粒子(分散染料、染料ゾル)等が直接目視可能である点で特に好ましい。【0020】捕捉試薬としては、測定対象唾液成分に対する第二抗体、抗唾液成分抗体に対する第二抗体等が挙げられる。また、この捕捉試薬は多孔性担体上に固定されているが、標識抗唾液成分抗体は多孔性担体上に移動可能なように担持されている。【0021】多孔性担体の下端を吐出液中に浸すと、標識抗唾液成分抗体が溶解し、吐出液中の測定対象唾液成分と反応し免疫複合体が形成される。複合体は毛細管現象により移動し、固定化された捕捉試薬に捕捉され、標識が検出される(例えばコロイド状金粒子の場合赤紫色に発色する)。この標識、例えば赤紫色のスポットを肉眼で観察することにより唾液中の測定対象成分の有無が判定できる。ヘモグロビンの場合、検出感度は0.05〜200μg/mLである。【0022】本発明においては、前記洗口液と抗唾液成分抗体とを組み合せて唾液成分測定用キットとして供給するのが好ましい。また、ここで抗唾液成分抗体として抗ヘモグロビン抗体を採用した場合には、唾液中の潜血が測定でき、歯周病診断用キットとして有用である。【0023】【実施例】本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0024】実施例10.05%塩化セチルピリジウム(以下、CPCと示す)水溶液3mL、あるいは0.05%塩化セチルトリメチルアンモニウム(以下、CTACと示す)水溶液3mLを洗口液として用いて口腔内を漱ぎ、この吐出液の性状を観察した。そのままの唾液、蒸留水3mLを洗口液とした場合も同様に試験した。【0025】実施例で用いた洗口液の組成を表1に、この試験の結果を表2に示した。【0026】【表1】【0027】【表2】【0028】この結果から、カチオン界面活性剤を含む洗口液によって、唾液のムチン等の粘質物は容易に凝集し、唾液の粘稠性を低下させることが確認された。また、唾液に含まれている上皮細胞等の有形物などによる濁りは消失し、その後のクロマトの展開性は水と同程度の速さに改善された。また、洗口後の吐出液は、遠心分離操作が不要であり、そのままあるいは希釈してクロマトに供することが可能であった。【0029】実施例2(検体の調製法):表1の組成による洗口液(0.05%CPC含有液)3mLを口に含み口腔内を漱ぎ、容器に吐出したものを直接サンプル(検体)とした。通常、口腔内の唾液含量は1mLと言われている。【0030】(抗体法):検体の入った容器に直接試験紙の下端を浸し、検体液がすべて上昇した時点(浸した時点から約3分)で試験紙中央のスポット(抗体結合部分)を観察した。輪郭明瞭な赤紫色のスポットが観察できた場合にこれを陽性(+)と判断した。ここで、試験紙として、図1のようにスティック状の反応試験紙の下端に抗ヒトヘモグロビン・マウスモノクローナル抗体結合金コロイドが塗布され、試験紙中央部に抗ヘモグロビン・マウスモノクローナル抗体がスポット状に固定化されているもの(合同酒精製「クイックゴールドHem」)を用いた。【0031】(化学法):ペルオキシダーゼ試験紙(商品名:サリバスター潜血用、昭和薬品化学工 東京)を用いた。この試験紙は、有機過酸化物であるクメンヒドロペルオキシドを唾液中のヘモグロビンの触媒作用により分解して活性酸素を発生させ、3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジンを酸化して発色させる原理に基づいている。発色の程度はヘモグロビン濃度に対応する。ヘモグロビン検出感度は、+に対応する色調が1.0mg/dl、++が2.5mg/dlである。唾液を採唾容器にとり、ペルオキシダーゼ試験紙の試薬貼付部分を浸し、約30秒後に、採唾容器に付属する比色表の基準に従い判定を行った。比色表の1.0mg/dlでの発色程度を基準とし、これに近いもくしは同等以上の発色がみられたものを陽性(+)と判定した。【0032】唾液採取後に、歯科医師による口腔内診査を行い、プロービング時に出血が認められた部位を全プロービング歯面数から判定できるBOP値(%)及び、1本の歯に対して4ヶ所の歯周ポケットの深さ(以下、PDと示す 単位mm)を測定した。【0033】抗体法及び化学法での判定は、(+)、(±)及び(−)の3区とした。歯周病有病者と健常者の区別は、口腔内診査においてBOP20%以上もしくはPD6mm以上の場合を有病者、それ以外の場合を健常者とした。各人数から、スクリーニングテストの有効性を評価した。なお、(±)と判定された場合は陽性(+)の区分に含めた。【0034】スクリーニングテストの有効性を評価する指標は、敏感度(以下、STと示す)、特異度(以下、SPと示す)、陽性反応適中率(以下、PVPと示す)、陰性反応適中率(以下、PVNと示す)の4種を次の式により計算した。83例を対象に行った評価試験結果を表3に示した。【0035】【数1】【0036】【表3】【0037】抗体法と化学法を比較すると、歯周病有病者を陽性(+)とする敏感度(ST)は抗体法88.4%、化学法95.2%とほぼ同等であった。しかし、陽性(+)反応を示した中で実際に有病者である確率をあらわす陽性反応適中率をみると、抗体法が90.5%であるのに比べて、化学法では59.7%と顕著な差がみられた。また、健常者の中で確実に陰性(−)判定となる割合をあらわす特異度(SP)においても、抗体法が90.0%であるのに対して化学法は34.1%と大きな差がみられた。有病者及び健常者(非有病者)に関わらず陽性反応の割合が高くなる化学法に比べて、抗体法による分析は有病者を特異的に検出できる方法であり、歯周病スクリーニングテストとして精度が高いことが示された。【0038】【発明の効果】本発明によれば、唾液に含まれる成分、特に潜血を高精度かつ簡便、迅速に測定することが可能になった。また、本発明において、歯周病のスクリーニングテストを特別な装置を必要とせずに一般診察室内あるいは集団検診等で迅速に行うことが可能になった。さらには、受診者及び歯科医師の負担を軽減することが可能になった。本発明によって歯周病リスクグループの早期発見を可能にしたことは、国民のQOL向上にとって有意義である。【図面の簡単な説明】【図1】標識抗唾液成分抗体を担持し、捕捉試薬を固定化した多孔性担体の概略図である。 長鎖アルキルピリジニウム塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩及びテトラブチルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオン界面活性剤を含有する洗口液で口腔内を嗽いだ吐出液を、多孔性担体に担持された抗ヘモグロビン抗体に接触させることを特徴とする、唾液中のヘモグロビンの測定法。 洗口液中のカチオン界面活性剤濃度が0.05〜1重量%である請求項1記載の測定法。 長鎖アルキルピリジニウム塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩及びテトラブチルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオン界面活性剤を含有する洗口液と、多孔性担体に担持された抗ヘモグロビン抗体とを含む唾液中のヘモグロビン測定用キット。 洗口液中のカチオン界面活性剤濃度が0.05〜1重量%である請求項3記載のキット。 長鎖アルキルピリジニウム塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩及びテトラブチルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオン界面活性剤を含有する洗口液と、多孔性担体に担持された抗ヘモグロビン抗体とを含む歯周病診断用キット。 洗口液中のカチオン界面活性剤濃度が0.05〜1重量%である請求項5記載のキット。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る