タイトル: | 特許公報(B2)_光ファイバのモード複屈折率の測定方法 |
出願番号: | 2000363075 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01M 11/02,G01N 21/23 |
石井 裕 姫野 邦治 西出 研二 和田 朗 JP 4574000 特許公報(B2) 20100827 2000363075 20001129 光ファイバのモード複屈折率の測定方法 株式会社フジクラ 000005186 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 石井 裕 姫野 邦治 西出 研二 和田 朗 20101104 G01M 11/02 20060101AFI20101014BHJP G01N 21/23 20060101ALN20101014BHJP JPG01M11/02 HG01N21/23 G01M 11/00- 11/02 G01J 1/00 G01J 4/00- 4/04 G01N 21/21- 21/23 G02B 6/00 G02B 6/10 H04B 3/46- 3/48 H04B 10/08- 10/12 H04B 17/00- 17/02 特開2002−228856(JP,A) 電子情報通信学会技術研究報告,(社)電子情報通信学会,2001年 8月16日,Vol.101 No.259,p.19〜24 5 2002168731 20020614 13 20070529 平田 佳規 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、光情報通信分野で用いられる伝送用ファイバ、光デバイス用光ファイバなどの光ファイバのモード複屈折率の測定方法に関する。【0002】【従来の技術】モード複屈折率は、光ファイバを伝搬するふたつの偏波モード間の伝搬定数差を波数で割ったものである。モード複屈折率は、PANDAファイバなどの複屈折光ファイバ(偏波保持光ファイバともいう)のクロストークを決定するパラメータのひとつである。また、通常の1.3μm用シングルモード光ファイバなどの非複屈折光ファイバの伝送特性を決定づけるパラメータのひとつでもある。【0003】また、光ファイバグレーティング、光ファイバカプラなどのファイバ型光デバイスにおいては、用いる光ファイバ(材料ファイバ)のモード複屈折率が、これらの光デバイスの光学特性、特にPDL(挿入損失の偏波依存性)に大きく影響する。PDLは光ファイバを伝搬する光(導波モード)を構成するふたつの偏波成分間の挿入損失の差である。具体的には、例えば光ファイバグレーティングの挿入損失の波長依存性を測定すると、特定の波長が減衰した挿入損失ピークが得られるが、材料光ファイバのモード複屈折率によって、挿入損失のピークの中心波長や挿入損失ピークの最大値(阻止率)が偏波成分によって異なる値となり、所望の値からずれてしまう。また、光ファイバカプラは、材料光ファイバのモード複屈折率によって、各ポートに結合する光の波長の中心波長が偏波成分によって異なる値となり、所望の値からずれてしまうという影響がある。そして、その結果、これらの光デバイスのPDLが劣化する。【0004】従来実施されている光ファイバのモード複屈折率の測定方法としては、以下のようなものが挙げられる。(1)異方性軸に対して45度の傾きを持った直線偏光を入射した光ファイバに外乱を与え、外乱の位置と2偏光間の干渉の関係からビート長を求め、このビート長からモード複屈折率を求める方法。これには、側圧による光弾性効果を利用し、偏波モード間結合を利用する方法[1]と、磁界によるファラデー効果による偏波モード間結合を利用する方法[2] が知られている。(2)異方性軸に対して45度の傾きを持った直線偏光を入射した光ファイバをカットバックして光パワーを測定し、その明暗の周期をビート長として直接測定し、このビート長からモード複屈折率を求める方法[3]。(3)光ファイバの偏波モード分散(以下、PMDと略記する)を測定し、この値からモード複屈折率を見積もる方法。(参考文献:[1]高田和正 他、OQE85−12(1985)「周期的側圧測定法による複屈折ファイバのモード複屈折の測定」[2]J. Noda, et al., Electoron. Lett., v.20, n.22, pp 906-907 (1984), "Dispersion of verdetconstant in stress-birefringent silica fibre"[3]大越孝敬 他、「光ファイバ」 オーム社,pp 307-308 (1983),”単一偏波ファイバの伝搬伝数差Δβの測定”)【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの従来の測定方法のうち、前記(1)、(2)に示した方法は、複屈折光ファイバのモード複屈折率を測定することはできるが、非複屈折光ファイバのモード複屈折率を測定することはできなかった。すなわち、これらの方法においては、測定中、ビート長以上の長さの光ファイバを外乱を与えない状態で、好ましくはまっすぐに維持しなければならない。そのため、ビート長が数mmのオーダーの複屈折ファイバについては測定可能であるが、ビート長が通常数km程度の非複屈折光ファイバの測定は実質上不可能であった。【0006】また、前記(3)に示した測定方法ではPMDを求めるが、PMDは群遅延差であって、モード複屈折率、すなわち位相遅延差とは本質的に異なる。また、光ファイバグレーティングや光ファイバカプラなどの光デバイスのデバイス長はおよそ1mm〜数10mm程度である。このように短い光ファイバのPMDは非常に小さい値となるため、PMDを精度良く測定することは大変困難であった。【0007】本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、複屈折光ファイバと非複屈折光ファイバの両方のモード複屈折率を測定することができる測定方法を提供することを課題とする。また、精度の高い光ファイバのモード複屈折率の測定方法を提供することを課題とする。【0008】【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明においては、以下のような解決手段を提案する。第1の発明は、コアとその外周上に設けられたクラッドとを備えた光ファイバに該光ファイバの長さ方向にそって、少なくともコアの一部またはクラッドの一部の屈折率が所定の周期で変動したグレーティング部を形成し、その挿入損失の波長依存性と挿入損失の偏波依存性の波長依存性を測定し、以下の式(3)【数5】(式中、Bはモード複屈折率、δλは2つの偏波成分間の挿入損失ピークの中心波長の差、Λはグレーティング部のグレーティング周期を示す。)から、前記光ファイバのモード複屈折率を算出することを特徴とする光ファイバのモード複屈折率の測定方法である。第2の発明は、コアとその外周上に設けられたクラッドとを備えた光ファイバに該光ファイバの長さ方向にそって、少なくともコアの一部またはクラッドの一部の屈折率が所定の周期で変動したグレーティング部を形成し、その挿入損失の波長依存性を測定し、該測定値と以下の式(1)【0009】【数4】【0010】(式中、Lossは波長λのときの挿入損失の値、ΔLは挿入損失ピークの阻止率、λpeakは挿入損失ピークの中心波長、σは挿入損失ピークの帯域半幅を示す。)から、ΔL、λpeak、σの値を求め、前記グレーティング部の挿入損失の偏波依存性の波長依存性を測定し、該測定値と以下の式(2)【0011】【数5】【0012】(式中、PDLは波長λのときの挿入損失の偏波依存性の値、δλは2つの偏波成分間の挿入損失ピークの中心波長の差を示す。)から、δλを求め、以下の式(3)【0013】【数6】【0014】(式中、Bはモード複屈折率、Λはグレーティング部のグレーティング周期)から、前記光ファイバのモード複屈折率を算出することを特徴とする光ファイバのモード複屈折率の測定方法である。第3の発明は、前記第1または第2の発明の係る測定方法において、前記グレーティング部を形成するにおいて、当該グレーティング部に、前記屈折率の変動に起因する偏波依存性が導入されないようにすることを特徴とする光ファイバのモード複屈折率の測定方法である。第4の発明は、前記第1〜第3の発明に係るいずれかひとつの測定方法において、少なくともコアの一部またはクラッドの一部が特定波長の光の照射によって屈折率が上昇する材料からなる石英系光ファイバの側面から、該光ファイバの長さ方向にそって所定の周期で前記特定波長の光を照射し、該照射部分の屈折率を上昇させることによってグレーティング部を形成することを特徴とする光ファイバのモード複屈折率の測定方法である。第5の発明は、前記第4の発明に係る測定方法において、前記照射部分において、光ファイバの円周方向全体から均等に光を照射することを特徴とするモード複屈折率の測定方法である。【0015】【発明の実施の形態】本発明の光ファイバのモード複屈折率の測定方法においては、測定対象の光ファイバにグレーティング部を形成し、その挿入損失の波長依存性と、PDL(挿入損失の偏波依存性)の波長依存性とを測定し、これらの結果を解析してモード複屈折率を求めることを特徴とする。PDLは、通常、伝搬定数差が最も大きい、すなわち、モード複屈折率が最も大きくなるふたつの偏波成分間の挿入損失の大きさの差とされる。まず、グレーティング部(以下、グレーティング部と略記する)の製造方法の一例について説明する。この方法はフォトリフラクティブ効果を利用したものである。フォトリフラクティブ効果とは、特定の石英系ガラスに特定波長の光を照射すると屈折率が上昇する現象のことで、光デバイスの場合は、主にゲルマニウム添加石英ガラスに波長240nm付近の紫外光を照射すると、屈折率が上昇する現象を利用する。【0016】まず、コアとその外周上に設けられたクラッドからなり、コアがゲルマニウム添加石英ガラス、クラッドが純粋な石英ガラスなどからなる石英系光ファイバ(材料光ファイバ)を用意する。なお、測定対象とする光ファイバは種々の屈折率分布を備えたものを用いることができるが、少なくともコアの一部またはクラッドの一部がゲルマニウム添加石英ガラスからなる部分が設けられているものを用いると好ましい。さらに好ましくはこの光ファイバの中心付近にゲルマニウム添加石英ガラスからなる部分が設けられているものを用いると好ましい。ついで、必要に応じて、紫外光への感受性を高めるために水素含浸処理を行う。具体的には、例えば20〜60℃、100気圧の水素ガス雰囲気中に7〜14日間、光ファイバを暴露する。なお、いわゆる高光感受性の光ファイバを用いる場合はこの処理は不要である。ついで、光ファイバの外側(クラッドの上)にこの光ファイバを保護するためのプラスチックからなる被覆層が設けられている場合は、グレーティング部を形成する部分について、この被覆層を除去する。なお、被覆層が例えば紫外光を透過する紫外光透過樹脂からなる場合は被覆層を除去する必要はない。【0017】そして、図1に示したように光ファイバの側面から、光ファイバの長さ方向にそって所定の周期で紫外光を照射すると、ゲルマニウム添加石英ガラスからなる部分の、紫外光の照射部分の屈折率が上昇する。その結果、光ファイバの長さ方向にそって、少なくともコアの一部またはクラッドの一部の屈折率が所定の周期で変動しているグレーティング部が得られる。【0018】このとき、前記照射部分については、光ファイバの円周方向の全体に均等に光を照射し、光ファイバの断面において、屈折率の分布や複屈折が生じないようにすると好ましい。その結果、照射部分、すなわち屈折率上昇部に導入される屈折率の変動(上昇)は、偏波依存性をもたないものとなる。例えば、図1に示したように、光ファイバの側面に、ひとつの方向から光を照射するにおいて、光ファイバを回転させながら、前記照射部分の光ファイバの円周全体に光を均等に照射する方法などを例示することができる。【0019】この屈折率の変動の周期をグレーティング周期という。なお、グレーティング周期を比較的長くすることによって、コア内を入射方向と同方向に伝搬するモードをこのモードと並進する(同方向に伝搬する)クラッドモードと結合させ、減衰(損失)させることができる。本発明においては、グレーティング部がこのような特性を持つように設計すると好ましい。そして、波長1550nm付近を使用波長帯とする場合は、例えばこの波長帯に上述のσの値が10nm程度の損失特性が得られるようにすると好ましい。【0020】例えば、コア径8μm、コア−クラッド間の比屈折率差が0.4%のステップ型の屈折率分布をもつシングルモード光ファイバにおいては、以下のような設計条件によって上述のような好ましい特性が得られる。設計例1:グレーティング周期498μm、グレーティング数84、グレーティング長約42mm設計例2:グレーティング周期438μm、グレーティング数104、グレーティング長約46mm設計例3:グレーティング周期380μm、グレーティング数135、グレーティング長約52mmまた、コア径5.6μm、コア−クラッド間の比屈折率差が1.0%の高比屈折率型で、ステップ型の屈折率分布をもつシングルモード光ファイバにおいては、以下のような設計条件によって、上述のような特性が得られる。設計例4:グレーティング周期197μm、グレーティング数77、グレーティング長約16mm設計例5:グレーティング周期187μm、グレーティング数83、グレーティング長約16mm設計例6:グレーティング周期176μm、グレーティング数92、グレーティング長約17mm【0021】なお、PDLの測定精度を向上させるためには、測定誤差よりもPDLの測定値が大きくなるようにする必要がある。そのためには、後述する式(4)(前記式(1))において、σの値を小さくするか、ΔLを大きくする必要がある。一般に、上述のようにコア内を入射方向と同方向に伝搬するモードとこのモードと並進するクラッドモードとを結合させる特性を備えたグレーティング部においては、グレーティング長を長くするとσが小さくなり、ΔLが多くなる。そして、測定精度を良好にするためには、σが15nm程度以下、ΔLが4dB程度以上であると好ましい。そのため、グレーティング長などの条件はこれらの数値範囲を満足する特性が得られるように設計すると好ましい。【0022】紫外光を照射するにおいて、光源には、例えばKrFエキシマレーザなどが用いられる。この場合、紫外光の波長は248nm付近である。また、紫外光を周期的に照射する方法としては、強度マスクを用いる方法、レンズなどを用いて光ファイバの一点に紫外光を集光させた後、この集光位置を光ファイバの長さ方向に移動させて同様の照射操作を繰り返す方法(ステップバイステップ法)などの公知の方法を用いることができる。【0023】ついで、好ましくは光ファイバ中に残った水素ガスを除去する脱水素処理を行う。具体的には、例えば、光ファイバを100〜150℃大気雰囲気中に12〜24時間暴露することによって行う。最後に、必要に応じてグレーティング部の補強を行う。例えば、ガラスやセラミックスなどからなる補強台に接着剤を用いてグレーティング部を固定する。【0024】なお、グレーティング部の製造には、この他、光ファイバを、その長さ方向にそって所定の周期で加熱して、実効屈折率を変動させる方法を用いることもできる。この場合も光ファイバの円周方向全体から熱を加えることによって、屈折率変動に起因する複屈折、すなわち偏波依存性が導入されないようにすると好ましい。この方法の場合は加熱手段として、CO2レーザ、アーク放電などを用いることができる。【0025】このようにしてグレーティング部を形成し、以下のようにしてその光学特性の評価と解析を行う。上述のように測定するのは挿入損失の波長依存性とPDLの波長依存性のふたつである。いずれにおいても、スペクトラムアナライザ、光パワーメータなどを用いた公知の方法によって、測定波長λを変化させながら測定波長毎の挿入損失、あるいはPDLを順次測定することによって求めることができる。挿入損失の測定方法としては、例えば以下のような方法を例示することができる。すなわち、図2に示したような測定系を構成し、白色光よりも狭帯域の波長成分を取り出し、被測定光デバイスに入射し、出射する光を高感度の光パワーメータ等で測定する。PDLの測定方法としては、例えば以下のような全偏波測定方式を例示することができる。すなわち、図3に示したような測定系を構成し、被測定光デバイスにあらゆる偏光状態の光を入射し、透過光の光パワーを測定して、その結果の最大値と最小値の比を演算してPDLを求める。【0026】まず、グレーティング周期が一定のグレーティング部の挿入損失Lossと波長との関係は、無偏光(あるいは全偏光)に対して以下の式(4)のようなSinc型の関数で近似できることが知られている。なお、前記式(1)はこの式(4)の関係を簡単に示したものである。【0027】【数7】【0028】そして、測定波長とこの測定波長のときの挿入損失の測定値を、複数組、それぞれこの式(4)(すなわち、前記式(1))に代入することによりフィッティングし、これらの複数組の測定波長と挿入損失との関係を同時に満足するΔL、λpeak、σを求める。図4は、挿入損失の波長依存性の一例を示したグラフであって、中心のピークが挿入損失ピークである。グラフ中には、挿入損失の波長依存性の測定値の曲線(測定結果)と、これらの測定値を前記式(4)(すなわち式(1))にフィッティングして求めたΔL、λpeak、σの数値をそれぞれ代入した式(4)を示した曲線(フィッティングの結果)が示されている。これらの曲線は非常によく一致している。【0029】一方、上述のように光ファイバの円周方向の全体(円周上の全体)に均等に光を照射してグレーティング部を製造すると、屈折率の変動に起因する偏波依存性を持たないグレーティング部が得られる。したがって、このグレーティング部のPDLの原因は、光ファイバを伝搬する導波モードを構成する偏波成分間の伝搬定数差、もしくは偏波成分間の実効屈折率差(すなわち、モード複屈折率)のみである。また、長周期型のグレーティング部は、原理上、偏波成分間の伝搬定数の差がわずかであれば、λpeakのみが変動し、ΔLとσは変化しない。なお、通常の複屈折光ファイバまたは非複屈折光ファイバであれば、この条件を満足することができる。【0030】ここで、偏波成分間の伝搬定数差が最大になる、すなわちモード複屈折率が最大になるふたつの偏波成分をx偏波成分、y偏波成分とする。上述のようにPDLは通常これらの偏波成分間の差である。そして、これらの偏波成分の挿入損失の波長依存性において、それぞれの挿入損失ピークの中心波長をλpeak(x) 、λpeak(y) とする。ここで、λpeak(x) とλpeak(y) の差をδλとすると、λpeak(x) とλpeak(y) はそれぞれ以下の式(5)で表される。【0031】【数8】【0032】そして、PDLは以下の式(6)の第1列目に示されているように、x偏波成分の挿入損失Loss(x)とy偏波成分の挿入損失Loss(y)の差である。そして、この第1列目の式は、前記式(4)より、第2列目の式のように表すことができ、さらに、前記式(5)より、第3列目の式のように表すことができる。前記式(2)はこの式(6)の関係を簡単に示したものである。【0033】【数9】【0034】そして、測定波長とこの測定波長のときのPDLの測定値を、複数組、それぞれこの式(6)(すなわち、前記式(2))に代入することによりフィッティングし、これら複数組の測定波長とPDLとの関係を同時に満足するδλを求める。図5は、PDLの波長依存性の一例を示したグラフである。グラフ中にはPDLの波長依存性の測定値の曲線(測定結果)と、これらの測定値を前記式(6)(すなわち式(2))にフィッティングして求めたδλの数値を代入した式(6)を示した曲線(フィッティングの結果)が示されている。PDLの測定値は小さいため、実測値のプロットがやや変動しているが、これらの曲線はほぼ一致している。【0035】また、グレーティング部のグレーティング周期Λと、光ファイバの導波モードとクラッドモード(クラッドを伝搬するモード)の実効屈折率をそれぞれne1、neNとすると、これらの関係は以下の式(7)で表される。【0036】【数10】【0037】また、上述のようにδλはλpeak(x)とλpeak(y)の差であって、以下の式(8)の第1列目の様に表される。そして、前記式(7)より、この第1列目の式はこの式(8)の第2列目の式のように表される。【0038】【数11】【0039】ここで、通常の光ファイバの断面において、この光ファイバの非円化によって生じる最も長いコアの外径と最も短いコアの外径の差は0.0〜0.5%程度である。また、クラッドにおける同様の差は0.5〜1.0%程度である。そのため、クラッドモードのモード複屈折率neN(x) −neN(y) は、導波モードのモード複屈折率nel(x) −nel(y) に対して十分に小さくなる。そこで、前記式(7)は、以下の式(9)のように近似することができる。【0040】【数12】【0041】そして、この式(9)を変形すると、モード複屈折率Bは以下の式(10)のように表される。前記式(3)はこの式(10)の関係を簡単に示したものである。【0042】【数13】【0043】グレーティング部のグレーティング周期Λはグレーティング部の製造時に設定できるため、既知の値である。また、δλは上述のように、グレーティング部の挿入損失の波長依存性の測定値と、PDLの波長依存性の測定値から求めることができる。したがって、この式(10)(すなわち前記式(3))にΛの値とδλの値を代入することによって、モード複屈折率を算出することができる。【0044】【実施例】以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。コアの中心がゲルマニウム添加石英ガラスからなるフジクラ製分散シフト光ファイバを用意し、KrFエキシマレーザを用いて波長248nmの光を照射してグレーティング部を形成した。なお、グレーティング周期は285.0μm、グレーティング数は80(グレーティング長22.8mm)とした。このグレーティング部について挿入損失の波長依存性を測定し、また、この測定値を用いて前記式(1)のフィッティングを行ったところ、図4に示したグラフと同様の結果が得られ、測定値とフィッティングの結果がよく一致した。このとき求めたλpeak、σ、ΔLの値は以下のようになった。【0045】【数14】【0046】また、このグレーティング部についてPDLの波長依存性を測定し、前記式(2)のフィッティングを行ったところ、図5に示したグラフと同様の結果が得られ、測定値とフィッティングの結果がほぼ一致した。このとき求めたδλの値は以下のようになった。【0047】【数15】【0048】そして、このようにして求めた値を上述のグレーティング周期の値を前記式(3)に代入すると以下のようになり、モード複屈折率を求めることができた。【0049】【数16】【0050】また、同様の方法で同時にグレーティング部を形成した同一ロットの光ファイバについて、挿入損失の波長依存性の測定値とPDLの波長依存性の測定値からモード複屈折率を算出したところ、3.72×10-7 〜3.84×10-7 の範囲の値が得られ、非常に高精度(10-8 )での測定ができた。したがって、本発明に係る測定方法によって、精密、かつ再現性がよく、モード複屈折率を測定できることが明らかとなった。【0051】【発明の効果】以上説明したように本発明においては、光ファイバのグレーティング部を形成し、その挿入損失の波長依存性とPDLの波長依存性を測定することによって、精密にかつ再現性よくモード複屈折率を測定することができる。また、複屈折ファイバと非複屈折光ファイバのいずれについてもモード複屈折率の測定が可能である。【図面の簡単な説明】【図1】グレーティング部の形成方法の一例を示した説明図である。【図2】挿入損失の測定方法の一例を示した説明図である。【図3】PDLの測定方法の一例を示した説明図である。【図4】挿入損失の波長依存性の一例を示したグラフである。【図5】PDLの波長依存性の一例を示したグラフである。【符号の説明】λpeak…挿入損失ピークの中心波長、ΔL…挿入損失ピークの阻止率、σ…挿入損失ピークの帯域半幅。 コアとその外周上に設けられたクラッドとを備えた光ファイバに該光ファイバの長さ方向にそって、少なくともコアの一部またはクラッドの一部の屈折率が所定の周期で変動したグレーティング部を形成し、その挿入損失の波長依存性と挿入損失の偏波依存性の波長依存性を測定し、以下の式(3)(式中、Bはモード複屈折率、δλは2つの偏波成分間の挿入損失ピークの中心波長の差、Λはグレーティング部のグレーティング周期を示す。)から、前記光ファイバのモード複屈折率を算出することを特徴とする光ファイバのモード複屈折率の測定方法。 コアとその外周上に設けられたクラッドとを備えた光ファイバに該光ファイバの長さ方向にそって、少なくともコアの一部またはクラッドの一部の屈折率が所定の周期で変動したグレーティング部を形成し、その挿入損失の波長依存性を測定し、該測定値と以下の式(1)(式中、Lossは波長λのときの挿入損失の値、ΔLは挿入損失ピークの阻止率、λpeakは挿入損失ピークの中心波長、σは挿入損失ピークの帯域半幅を示す。)から、ΔL、λpeak、σの値を求め、前記グレーティング部の挿入損失の偏波依存性の波長依存性を測定し、該測定値と以下の式(2)(式中、PDLは波長λのときの挿入損失の偏波依存性の値、δλは2つの偏波成分間の挿入損失ピークの中心波長の差を示す。)から、δλを求め、以下の式(3)(式中、Bはモード複屈折率、Λはグレーティング部のグレーティング周期)から、前記光ファイバのモード複屈折率を算出することを特徴とする光ファイバのモード複屈折率の測定方法。 請求項1または2に記載の光ファイバのモード複屈折率の測定方法において、前記グレーティング部を形成するにおいて、当該グレーティング部に、前記屈折率の変動に起因する偏波依存性が導入されないようにすることを特徴とする光ファイバのモード複屈折率の測定方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光ファイバのモード複屈折率の測定方法において、少なくともコアの一部またはクラッドの一部が特定波長の光の照射によって屈折率が上昇する材料からなる石英系光ファイバの側面から、該光ファイバの長さ方向にそって所定の周期で前記特定波長の光を照射し、該照射部分の屈折率を上昇させることによってグレーティング部を形成することを特徴とする光ファイバのモード複屈折率の測定方法。 請求項4に記載の光ファイバのモード複屈折率の測定方法において、前記照射部分において、光ファイバの円周方向全体から均等に光を照射することを特徴とする光ファイバのモード複屈折率の測定方法。