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タイトル:特許公報(B2)_N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチル、それを用いた香料組成物、および香料保留剤
出願番号:2000338132
年次:2004
IPC分類:7,C07C233/54,A23L1/22,A23L1/226,A61K7/46,C11B9/00


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江村 誠 山▲崎▼ 哲郎 小宮 順 東 信和 大森 史裕 物部 朋子 JP 3602431 特許公報(B2) 20041001 2000338132 20001106 N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチル、それを用いた香料組成物、および香料保留剤 高砂香料工業株式会社 000169466 日本たばこ産業株式会社 000004569 鈴江 武彦 100058479 村松 貞男 100084618 坪井 淳 100068814 橋本 良郎 100092196 河野 哲 100091351 中村 誠 100088683 江村 誠 山▲崎▼ 哲郎 小宮 順 東 信和 大森 史裕 物部 朋子 20041215 7 C07C233/54 A23L1/22 A23L1/226 A61K7/46 C11B9/00 JP C07C233/54 A23L1/22 C A23L1/226 F A61K7/46 B A61K7/46 395 C11B9/00 V C11B9/00 Z 7 C07C233/54 C11B 9/00 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開平5−140585(JP,A) 特開昭53−23944(JP,A) 特開昭49−118841(JP,A) 3 2002145838 20020522 13 20010724 井上 千弥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、天然由来であるグリーンフルーティーな香気を有するN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチル、このN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを有効成分として含有する香料組成物、および香料保留剤に関する。【0002】【従来の技術】近年、各種食品材料、食品添加物、飲食品(嗜好品を含む)、香粧品類、保健衛生材料、医薬品等の多様化に伴い、これらに用いる香料として従来にない新しい要望が高まり、嗜好性の高いユニークな香気を持つ香料物質の開発が要求されてきている。特に、香料の中でも最も需要の高いフルーツ系香料や食品系香料に関して、安全性の面からも、天然物由来、または天然化合物と同一若しくは類似した新しい香料物質の開発が強く望まれていた。【0003】また、従来から、有香物質を調香し、優れた香料化合物を調製するときには、所望の香気を持続させるために、有香物質の芳香持続性および保留性を調整する各種保留剤が香料に配合されている。かかる保留剤として、具体的には、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン、中鎖トリグリセリド、ジプロピレングリコール、トリエチルシトレート、ベンジルベンゾエート等が利用されているが、これらの保留剤は、充分に満足し得る保留効果を有するとはいえなかった。【0004】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、上記の要望を満足するフルーティー香気を有する化合物、当該化合物を有効成分とする香料組成物、および香料保留剤を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】上記課題を解決しようとして、本発明者らは、マンダリンオレンジから得られるマンダリンオレンジ精油中の香気成分を精査したところ、新規な化合物であるN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを見いだした。そこで、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを合成し、その香質、調合香調および香料保留剤としての可能性等について検討を行った結果、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルが、嗜好性の高いグリーンフローラルな香気を有していることを見いだし、さらに顕著な香料保留効果をも有していることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づく。【0006】すなわち、本発明によれば、下記式(I):【化2】(ここで、各Meは、メチル基を示す)で表されるN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルが提供される。【0007】また、本発明によれば、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物が提供される。【0008】さらに、本発明によれば、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを有効成分として含有することを特徴とする香料保留剤が提供される。【0009】天然マンダリン精油やシトラス系柑橘油の成分として、アントラニル酸メチル、N−メチルアントラニル酸メチル、およびN−ホルミルアントラニル酸メチルはよく知られた成分である(「香料の実際知識」(第2版)、東洋経済新報社発行、1985年;パヒューマー・アンド・フレーバリスト,Vol. 22, p 45〜p 53, 1997年)。特に、アントラニル酸メチル、N−メチルアントラニル酸メチルは、有効な香気成分として、化粧品香料のみならず食品系香料としても広く使われている。しかしながら、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルについて単離したとの報告はないし、この化合物の香質についても知られていない。さらに本化合物を合成したという報告もなく、もちろん本化合物を香料保留剤として使用しているという報告もない。【0010】【発明の実施の形態】本発明の式(I)で示されるN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルは、天然物から抽出して得ることもできるし、化学的合成方法により得ることもできる。【0011】天然物から抽出する方法としては、マンダリンオレンジから得られるマンダリンオレンジ精油を減圧下で精密蒸留を行った後、得られた高沸点画分をヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒としたカラムクロマトグラフィーによって精製し、さらに必要に応じて高速液体クロマトグラフィーにより精製を行い、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを得る方法が採用できる。この方法によると、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルは、マンダリンオレンジオイルからその0.0001〜0.001重量%の割合で得ることができる。【0012】本発明のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを多量に取得するためには、化学的合成方法を用いることが好ましい。【0013】本発明のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチル(I)は、下式に示すように、N−メチルアントラニル酸メチル(II)をホルミル化することにより合成することができる。【0014】【化3】【0015】N−メチルアントラニル酸メチル(II)のホルミル化は、例えば、(a)塩基触媒の存在下に、N−メチルアントラニル酸メチル(II)をギ酸エステルと反応させることにより、(b)脱水剤の存在下に、N−メチルアントラニル酸メチル(II)をギ酸と反応させることにより、または(c)N−メチルアントラニル酸メチル(II)をギ酸の酸無水物と反応させることにより達成することができる。原料化合物であるN−メチルアントラニル酸メチル(II)は市販品をそのまま用いることができる。【0016】上記ホルミル化方法(a)において使用するギ酸エステルの具体例としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル等が挙げられるが、好ましくはギ酸メチル、ギ酸エチルを用いる。ギ酸エステルは、N−メチルアントラニル酸メチル(II)に対し、好ましくは約1〜100倍モル、特に好ましくは約2〜4倍モルの割合で用いることが望ましい。【0017】上記ホルミル化方法(a)において使用する塩基触媒の具体例としては、ナトリウムメチラート、リチウムメチラート、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられるが、好ましくはナトリウムメチラートを用いる。塩基触媒は、N−メチルアントラニル酸メチル(II)に対し、好ましくは約0.0001〜0.5倍モル、特に好ましくは約0.01〜0.2倍モルの割合で用いることが望ましい。【0018】上記ホルミル化方法(a)は、通常、溶媒中で行われる。使用する反応溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられるが、好ましくはメタノールを用いる。溶媒は、N−メチルアントラニル酸メチル(II)に対し、好ましくは約0.1〜1000倍容量、特に好ましくは約1〜10倍容量の割合で用いることが望ましい。【0019】さらに、上記ホルミル化方法(a)は、通常、窒素ガスあるいはアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行われる。また、本反応において、反応時間は、通常、1〜48時間程度、好ましくは6〜18時間程度であり、反応温度は、通常、0〜80℃程度、好ましくは40〜70℃程度であるが、これらの条件は使用されるギ酸エステルや塩基触媒等の種類および量により適宜変更され得る。【0020】次に、上記ホルミル化方法(b)は、ホルミル化の一般的な手法を用いて行うことができる(例えば、日本化学会編「第4版 実験化学講座」、有機合成IV(酸・アミノ酸・ペプチド)、第22巻、1992年 丸善 138頁参照)。【0021】上記ホルミル化方法(b)において使用するギ酸は、N−メチルアントラニル酸メチル(II)に対し、好ましくは約1〜1000倍モル、特に好ましくは約1〜10倍モルの割合で用いる。【0022】上記ホルミル化方法(b)に使用する脱水剤の具体例としては、モレキュラーシーブス、塩化カルシウム、ゼオライト等が挙げられるが、好ましくはモレキュラーシーブスを用いる。脱水剤は、N−メチルアントラニル酸メチル(II)に対し、好ましくは約0.0001〜0.5倍重量、特に好ましくは約0.01〜0.1倍重量の割合で用いることが望ましい。【0023】ホルミル化方法(b)は、無溶媒で、または溶媒中で行うことができる。使用する反応溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル等が挙げられるが、好ましくはメタノールを用いる。溶媒は、N−メチルアントラニル酸メチル(II)に対し、好ましくは約0.01〜100倍容量、特に好ましくは約0.1〜10倍容量の割合で用いることが望ましい。【0024】上記ホルミル化方法(b)は、ホルミル化方法(a)の場合と同様、通常、窒素ガスあるいはアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行われる。また、本反応において、反応時間は、通常、3〜48時間程度、好ましくは6〜18時間程度であり、反応温度は通常30〜100℃程度、好ましくは30〜70℃程度であるが、これらの条件は使用される脱水剤などの種類および量により適宜変更され得る。【0025】上記ホルミル化方法(c)において使用するギ酸の酸無水物の具体例としては、ギ酸無水物、ギ酸酢酸無水物等が挙げられるが、好ましくはギ酸酢酸無水物を用いる。ギ酸の酸無水物は、N−メチルアントラニル酸メチル(II)に対し、好ましくは約1〜100倍モル、特に好ましくは約1.5〜4倍モルの割合で用いることが望ましい。【0026】上記ホルミル化方法(c)において、必要に応じて、塩基を添加することができる。塩基の具体例としては、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられるが、好ましくはピリジンを用いる。塩基は、N−メチルアントラニル酸メチル(II)に対し、好ましくは約0.0001〜10倍モル、特に好ましくは約0.01〜1倍モルの割合で用いることが望ましい。【0027】上記ホルミル化方法(c)は、無溶媒で行うこともできるが、通常、溶媒中で行われる。使用する反応溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム等が挙げられるが、好ましくは塩化メチレンを用いる。溶媒は、N−メチルアントラニル酸メチル(II)に対し、好ましくは約0.1〜100倍容量、特に好ましくは約1〜10倍容量の割合で用いることが望ましい。【0028】さらに、上記ホルミル化方法(c)は、通常、窒素ガスあるいはアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行われる。また、本反応において、反応時間は、通常、1〜30時間程度、好ましくは5〜20時間程度であり、反応温度は、通常、0〜70℃程度、好ましくは40〜60℃程度であるが、これらの条件は使用されるギ酸の酸無水物や塩基等の種類および量により適宜変更され得る。【0029】以上述べた各ホルミル化反応の終了後に、通常の後処理を行うことができる。また、分離精製は、得られた反応溶液を蒸留水で希釈した後、ジエチルエーテル等の有機溶媒で抽出を行い、得られた抽出物を濃縮し、蒸留やカラムクロマトグラフィーによって精製できる。【0030】このようにして得られるN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルは、その官能評価を行ったところ、グリーンフローラルかつフルーティーな香気を有していることが明らかとなり、従来知られていない新たな香気化合物であることがわかった。【0031】本発明のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルはグリーンフローラルかつフルーティーな香気を有するばかりでなく、さらに、弱いながらもスズラン様の香気も有していた。N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルは、また、ネロリー感に富み、橙花やマンダリンオレンジの香りを彷彿させる香気の特性および安定性を有し、またコンコードグレープを想起させ、より新鮮で、嗜好性が高く香気付与効果に優れており、これを配合することにより嗜好性の高い香気付与剤または香気改良剤等の香料組成物を提供することができる。【0032】さらに、本発明のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを配合することにより、所望の芳香持続、残香性の作用効果は特に高められる。【0033】本発明のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルに、通常使用されている香料成分をさらに添加した香料組成物も香気成分として使用できる。添加使用することができる他の香料としては、各種の合成香料、天然精油、合成精油、柑橘油などが挙げられ、特にフローラル系の香料組成物が好ましいが、たとえば、Arctander S.,“Perfume and Flavor Chemicals”,published by the author, Montclair,N.J.(U.S.A.)1969年に記載されているような広い範囲の香料成分を使用することができる。代表的なものとしては、α−ピネン、リモネン、cis−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール、スチラリルアセテート、オイゲノール、ローズオキサイド、リナロール、ベンズアルデヒド、ムスコンなどがある。【0034】具体的には、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを例えば、ベルガモット油、ガルバナム油、レモン油、ゼラニウム油、ラベンダー油、マンダリン油等の合成精油中に配合すると、合成精油が本来有する香気香味にマイルドでこくがあり新鮮な、嗜好性の高い、かつ拡散性、保留性を高め持続性のある改良効果を合成精油に付与できる。また、例えばオレンジ、ライム、グレープフルーツ等の柑橘精油;ラベンダー油、ベチバー油、セダーウッド油、シトロネリル油、ゼラニウム油、ラバンジン油、サンダルウッド油等の天然精油に対してもよく調和し、その精油の特徴を強調することができ、まろやかでこくがあり天然らしさがあり、加えて拡散性、保留性を高め優れた持続性のある新規な香料組成物を調製することができる。【0035】さらに、例えば各種合成香料、天然香料、天然精油、柑橘精油等から調製される例えば、ストロベリー、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、アップル、パイナップル、バナナ、メロン等のフレーバー組成物に配合するとマイルドでこくのある天然らしさがあるフローラル様香気を付与し、さらに、新鮮な、嗜好性の高い香気を付与し、かつ拡散性、保留性を高め持続性の強調された香料組成物が調製できる。【0036】本発明のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルの香料組成物中への配合量は、その調合香料の種類や目的により異なるが、一般的には例えば組成物中において0.01〜50重量%、特に0.1〜20重量%となる配合量が好ましい。【0037】また、通常使用される他の香料保留剤の1種または2種以上を配合してもよく、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン、中鎖トリグリセリド、ジプロピレングリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート等と併用することも可能である。【0038】本発明のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチル単独あるいは該化合物を含む香料組成物を、例えば、果汁飲料類、果実酒類、乳飲料、炭酸飲料類の如き飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンデー類の如き冷菓;和・洋菓子類、ジャム類、チュウインガム類、パン類、コーヒー類、ココア、紅茶、緑茶の如き嗜好飲料類;和風スープ、洋風スープ、中華スープの如きスープ類、風味調味料、各種インスタント飲料乃至食品類、各種スナック食品類等に、そのユニークな香気香味を付与できる適当量を配合した飲食品類を提供できる。【0039】また、例えば、シャンプー類、ヘヤークリーム類、ヘヤートニック類、ポマード類、リンス類、その他の毛髪用化粧料基剤;オシロイ、口紅、香水、コロン類、その他化粧料基材や化粧料洗剤に、そのユニークな香気香味を付与できる適当量を配合した化粧品類を提供できる。【0040】さらにまた、洗濯用洗剤類、消毒用洗剤類、防臭洗剤類、室内芳香剤、石鹸、皿洗い洗剤、ソフトナー類、ファーニチアケアー、その他保健・衛生用洗剤類;消毒剤、殺菌剤、忌避剤、漂白剤、その他の各種保健衛生用洗剤類;歯磨き、マウスウォッシュ、ティッシューペーパー、トイレットペーパー等の各種保険・衛生材料類;医薬品の服用を容易にするための矯味、賦香剤など保健・衛生・医薬品類に、そのユニークな香気香味を付与できる適当量を配合した化粧品類を提供できる。【0041】【実施例】以下に実施例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではなく、また本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0042】なお、実施例中において物性の測定に用いた装置は次の通りである。1)化学純度ガスクロマトグラフ:HP−6890(アジレントテクノロジー社製)カラム;HP−20M(0.20mm×25m)(アジレントテクノロジー社製)2)核磁気共鳴スペクトル1H−NMR:DRX−500型(500MHz)(ブルッカー社製)13C−NMR:DRX−500型(125MHz)(ブルッカー社製)3)赤外吸収スペクトル(IR)Avatar360 FT−IR(ニコレージャパン株式会社製)4)質量スペクトル(MS):M−80質量分析計:イオン化電圧20eV(日立製作所株式会社製)。【0043】実施例1:N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルの合成N−メチルアントラニル酸メチル(高砂香料株式会社製)(15.1g;0.1mol)をメタノール(50mL)に溶解し、ナトリウムメチラート(2.7g;0.05mol)およびギ酸メチル(12g;0.2mol)を加え、60℃で12時間加熱撹拌した。反応終了後、水(100mL)を加え、希塩酸にて中和した後、ジエチルエーテルで抽出を行い、減圧下、溶媒を留去し、濃縮した。濃縮物を減圧下で蒸留に供した後、ヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒として、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、表記化合物(化学純度94%)を得た。収量18g(0.09mol)、収率93%。【0044】MS (m/e, %): 193 (6), 155 (100), 132 (40), 105 (72), 77 (22)IR (neat, cm−1): 2950, 1725, 1680, 12651H−NMR (CDCl3;δppm): 3.25 (3H, s), 3.90 (3H, s), 8.00 (1H, dd, J=7.5, 1.5), 7.61 (1H, dt, J=7.5, 1.5), 7.45 (1H, dt, J=7.5, 1.0), 7.27 (1H, dd, J=7.5, 1.0), 8.13 (1H, s)13C−NMR (CDCl3;δppm): 166.0 (s), 162.5 (d), 141,8 (s), 133.3 (d), 131.9 (d), 128.8 (d), 128.3 (s), 128.1 (d), 52.7 (q), 33.8 (q)。【0045】実施例2:N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルの合成N−メチルアントラニル酸メチル(高砂香料株式会社製)(15.1g;0.1mol)にモレキュラーシーブス4A(5g)およびギ酸(9.0g;0.2mol)を加え、50℃で12時間加熱環流し、撹拌した。反応終了後、減圧下に蒸留を行うことにより、表記化合物(化学純度82%)を得た。収量10g(0.05mol)、収率51%。【0046】実施例3:N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルの合成ギ酸(9.2g;0.2mol)および酢酸(12g;0.2mol)の混合物を加熱し、ギ酸酢酸無水物を調製し、これにN−メチルアントラニル酸メチル(高砂香料株式会社製)(15.1g;0.1mol)を加え、60℃で12時間加熱・撹拌した。反応終了後、水100mLを加え、ジエチルエーテルで抽出を行い、減圧下、溶媒を留去し、濃縮した。濃縮物を減圧下で蒸留に供した後、ヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒として、カラムクロマトグラフィーにより精製することにより、表記化合物(化学純度93%)を得た。収量18g(0.09mol)、収率43%。【0047】実施例A:香気質の評価実施例1、実施例2または実施例3で得た高純度のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを瓶口および濾紙につけ、5年以上の経験を有する調香師により、官能評価を行った。その結果、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルはグリーンフローラルな香気を有し、ネロリー感に富み、橙花やマンダリンオレンジの香りを彷彿させる香気特性を有し、またコンコードグレープを想起させるニュアンスも有していた。さらに、弱いながらもスズラン様の香気も有していた。【0048】実施例B:フルーツフレーバー用香料組成物実施例1、実施例2または実施例3で得た高純度のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを用い、下記表1に示す組成のフルーツフレーバー用の香料組成物を調合した。得られた調合組成物は果実様の香気を有し、バランスよく、また残香性も高いものであった。【0049】【表1】【0050】実施例C:フローラルフレグランス用香料組成物実施例1、実施例2または実施例3で得た高純度のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを用い、下記表2に示す組成のフローラルフレグランス用の香料組成物を調合した。得られた調合組成物はフローラルグリーン調の香気を有し、バランスよく、また残香性も高いものであった。【0051】【表2】【0052】実施例D:フローラルフレグランス用香料組成物実施例1、実施例2または実施例3で得た高純度のN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを用い、下記表3に示す組成のフローラルフレグランス用の香料組成物を調合した。得られた調合組成物はフローラルブーケ調の香気を有し、バランスよく、また残香性も高いものであった。【0053】【表3】【0054】実施例E:単品香料における残香性試験(単品香料に対する香り立ち試験)リナロールおよびシトロネラールのそれぞれに対して香り立ち試験を行った。上記の単品それぞれ100mgとN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチル10mgを均一に混和し、底に濾紙を敷いた直径40mm、高さ50mmの広口瓶の濾紙上に約10mgを量り込み、開放系で約8時間放置し、評価サンプルとした。また、リナロールおよびシトロネラールを10mg量り、保留剤なしの比較する対象系として比較を行った。5年以上経験のある調香専門パネリストにより、評価を行ったところ、下記表4に示すように、明らかにN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを添加した方が8時間経過した後でもリナロールおよびシトロネラールの香りが有意に濾紙上に保持されており、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルの保留効果が確認された。【0055】【表4】【0056】実施例F:調合香料における残香性試験専門パネリスト5名により以下の処方に基づき、残香性試験を行い評価を行った。【0057】すなわち、下記表5および表6にそれぞれ示す処方1および2をそれぞれ調整し、匂い紙に含浸させその匂いを評価した。さらに1時間後、および6時間後にも評価を行った。【0058】【表5】【0059】【表6】【0060】匂い紙に含浸させた1時間経過後の香りにおいて、処方1ではかなり弱くなっていると同時にグレープ特有の香りが崩れていた。【0061】それに対して、処方2では、匂い紙に含浸させた直後の香りが1時間後も保持されていた。また、6時間後においても処方2の方が強度、バランス共に優れていた。【0062】【発明の効果】本発明は、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチル、N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを有効成分とする香料組成物、および香料保留剤を提供する。N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルは香気および香料保留性に優れ、これによりN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルは、香料あるいは各種食品材料、食品添加物、飲食品、香粧品類、保険衛生材料等の広い範囲に用いられる。 次式(I):(ここで、各Meは、メチル基を示す)で表されるN−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチル。 N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを有効成分として含有することを特徴とする香料組成物。 N−ホルミル−N−メチルアントラニル酸メチルを有効成分として含有することを特徴とする香料保留剤。


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