タイトル: | 特許公報(B2)_オレイン酸の製造法 |
出願番号: | 2000332702 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07C 51/36,C07C 57/12 |
野田 浩三 西本 吉史 加藤 徹 JP 4969721 特許公報(B2) 20120413 2000332702 20001031 オレイン酸の製造法 花王株式会社 000000918 古谷 聡 100087642 古谷 馨 100063897 溝部 孝彦 100076680 持田 信二 100091845 義経 和昌 100098408 野田 浩三 西本 吉史 加藤 徹 20120704 C07C 51/36 20060101AFI20120614BHJP C07C 57/12 20060101ALI20120614BHJP JPC07C51/36C07C57/12 C07C 51/36 C07C 57/12 C07C 51/42 C07C 53/126 CA/REGISTRY(STN) 特開昭63−051498(JP,A) 特開平08−099036(JP,A) 特許第182193(JP,C2) 阿部 芳郎 監修,油脂・油糧ハンドブック,株式会社 幸書房,1988年,初版,第457頁 3 2002138065 20020514 6 20070706 今井 周一郎 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、滑剤、可塑剤、油剤、乳化剤、洗浄剤等の原料として広く使用されているオレイン酸の製造法に関する。【0002】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】オレイン酸は、一般的に牛脂等の油脂を加水分解した脂肪酸を液体酸と固体酸に分別後、得られた液体酸を蒸留し、全留出物を取得することにより製造されている。しかしながら、この方法により製造されたオレイン酸は、リノール酸等の多不飽和脂肪酸を含有し、それがオレイン酸の純度を低下させるばかりでなく、色相、匂い、酸化安定性など品質低下の原因となっており、従来より改善が望まれていた。【0003】オレイン酸中のリノール酸等の多不飽和脂肪酸を除去する方法として、粗オレイン酸中の多不飽和脂肪酸のみを選択的に水素添加してオレイン酸へ転換する方法があり、例えば、触媒として、パラジウム、ロジウム、銅等の固体触媒を用いる方法が知られているが、反応速度や選択性に問題があり、多不飽和脂肪酸含量が低減された高純度のオレイン酸は得られていない。【0004】従って、本発明の課題は、リノール酸等の多不飽和脂肪酸含量が少ないオレイン酸の製造法を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、多不飽和脂肪酸を含有するオレイン酸(以下粗オレイン酸という)を水素添加してオレイン酸を製造するに際し、粗オレイン酸を硫酸及び/もしくはリン酸、又はそれらの塩と接触させた後に水素添加を行うオレイン酸の製造法である。【0006】【発明の実施の形態】本発明において、多不飽和脂肪酸とは不飽和結合を2個以上含む脂肪酸であり、リノール酸等が挙げられる。また、多不飽和脂肪酸を含有するオレイン酸としては、油脂を脂肪酸とグリセリンに加水分解し、得られた脂肪酸から更に固体酸を分別除去することによって得られる液体酸が挙げられ、多不飽和脂肪酸含量が5〜10重量%のものが好ましい。【0007】ここで用いられる油脂としては、牛脂、羊脂、豚脂、パーム油、パーム油を分別して得られるパームステアリンもしくはパームオレイン、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、落花生油、大豆油、ヤシ油、パーム核油等の動植物油脂が挙げられるが、動物油、特に牛脂が好ましい。【0008】これらの油脂を脂肪酸とグリセリンに加水分解する方法としては、高圧連続分解法、中圧法、酵素法等が挙げられる。また脂肪酸を液体酸と固体酸に分別する方法としては、溶剤分別法、活性剤分別法等が挙げられる。【0009】本発明においては、上記のようにして得られる、リノール酸等の多不飽和脂肪酸を含有する粗オレイン酸を、水素添加する前にまず硫酸及び/もしくはリン酸、又はそれらの塩(以下処理剤という)と接触させる。硫酸又はリン酸の塩としては、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。これらの処理剤の中では、リン酸、硫酸マグネシウムが好ましい。【0010】本発明において、粗オレイン酸を処理剤と接触させる方法は、例えば、処理剤水溶液で粗オレイン酸を洗浄する方法、処理剤水溶液で粗オレイン酸を洗浄後、更に水洗する方法、処理剤粉末を粗オレイン酸に添加する方法等が挙げられる。処理剤は粗オレイン酸に対して0.01〜0.5重量%添加するのが好ましい。【0011】処理剤水溶液を用いる場合のより好ましい方法は、例えばリン酸、硫酸マグネシウム等の処理剤の0.5〜2重量%水溶液を、粗オレイン酸に対して、5〜10重量%添加し、90〜95℃に昇温して攪拌後、同温度で静置し、水層を分離し、その後更に必要により水洗する方法である。【0012】また、処理剤粉末を用いる場合のより好ましい方法は、例えば硫酸マグネシウム等の処理剤を、粗オレイン酸に対して0.01〜0.04重量%添加する方法である。【0013】本発明においては、上記のように粗オレイン酸と処理剤を接触させた後、水素添加を行う。本発明に用いられる水素添加触媒としては、多不飽和脂肪酸に対して選択的に水素添加できるものが好ましく、具体例としては、パラジウム、ロジウム等の貴金属や銅等の固体触媒が挙げられ、貴金属触媒、特にパラジウム触媒が好ましい。また本発明の触媒は担体に担持されていてもよく、担体としては、活性炭、ケイソウ土、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ニオビア等が挙げられる。水素添加触媒の添加量は、粗オレイン酸に対し、0.01〜1.0重量%が好ましい。【0014】本発明における水素添加反応の条件は、水素圧0.1〜1.0MPa、特に0.1〜0.5MPaが好ましく、反応温度30〜100℃、特に30〜50℃が好ましい。また反応は、攪拌速度300〜1000rpm、特に300〜600rpmの撹拌下で行うのが好ましい。【0015】【発明の効果】本発明によると、多不飽和脂肪酸含量が低減され、飽和脂肪酸含量も少ない高純度オレイン酸を得ることができる。【0016】【実施例】例中の%は特記しない限り重量%を示す。また脂肪酸組成中のC18は炭素数18の飽和脂肪酸、C18:1はオレイン酸、C18:2はリノール酸を示す。【0017】実施例1牛脂を高圧加水分解した後、活性剤法で分別して得た牛脂分別液体酸(脂肪酸組成 C18:0.8%、C18:1:73.3%、C18:2:5.7%)を底抜き1L四つ口フラスコに取り、攪拌しながら1%リン酸水溶液を、液体酸に対して5%添加した後、90℃に昇温し10分間攪拌した。その後、温度を維持しながら静置し、水層を分離した。水層分離後、攪拌を行い、更に温水を液体酸に対して5%添加し、10分攪拌した。水層を静置分離後、油層を100℃、6.65kPaにて脱水した。【0018】上記の処理を行った牛脂分別液体酸を回転式オートクレーブに500g仕込み、5%Pd/C触媒を液体酸に対して0.06%添加した後、攪拌しながら30℃まで昇温し、その後、0.5MPaの圧力を維持しながら120分間水素添加反応を行った。反応終了物から触媒を濾別後、ガスクロマトグラフィーで脂肪酸組成分析を行った。その結果を表1に示す。【0019】実施例21%リン酸水溶液の代わりに1%硫酸マグネシウム水溶液を用いる以外は実施例1と同様に牛脂分別液体酸の処理を行い、同様の水素添加反応を80分間行い、同様に脂肪酸組成を分析した。その結果を表1に示す。【0020】比較例11%リン酸水溶液処理を行わない牛脂分別液体酸について、実施例1と同様の水素添加反応を180分間行い、同様に脂肪酸組成を分析した。その結果を表1に示す。【0021】【表1】【0022】実施例3〜5実施例1と同じ脂肪酸組成の牛脂分別液体酸を底抜き1L四つ口フラスコに取り、攪拌しながら、表2に示す各濃度の硫酸マグネシウム水溶液を、液体酸に対して7.5%添加し、10分攪拌後水層を静置分離した。その後、油層を100℃、6.65kPaにて脱水した。【0023】上記の処理を行った牛脂分別液体酸を実施例1と同様の水素添加反応を100分間行い、各濃度における反応終了物の脂肪酸組成を同様に分析した。結果を表2に示す。【0024】【表2】【0025】実施例6〜7実施例1と同じ脂肪酸組成の牛脂分別液体酸を底抜き1L四つ口フラスコに取り、攪拌しながら硫酸マグネシウムの粉末を表3に示す量添加した。【0026】その後、実施例1と同様の水素添加反応を表3に示す時間行い、同様に脂肪酸組成を分析した。結果を表3に示す。【0027】比較例2硫酸マグネシウム粉末を添加しない牛脂分別液体酸について、実施例1と同様の水素添加反応を240分間行い、同様に脂肪酸組成を分析した。結果を表3に示す。【0028】【表3】 多不飽和脂肪酸を含有するオレイン酸(以下粗オレイン酸という)を水素添加してオレイン酸を製造するに際し、粗オレイン酸を硫酸及び/もしくはリン酸、又はそれらの塩の0.5〜2重量%水溶液と接触させた後に、固体触媒を使用して水素添加を行うオレイン酸の製造法。 硫酸及びリン酸の塩が、アルカリ土類金属塩である請求項1記載の製造法。 粗オレイン酸が、油脂を加水分解して得られる脂肪酸から固体酸を分別除去することによって得られる液体酸である請求項1又は2記載の製造法。