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タイトル:特許公報(B2)_陽イオン交換樹脂の性能評価方法及びそれを用いた水処理系の管理方法
出願番号:2000294281
年次:2010
IPC分類:G01N 30/96,G01N 30/00,C02F 1/42


特許情報キャッシュ

建持 千佳 府川 潤平 JP 4583570 特許公報(B2) 20100910 2000294281 20000927 陽イオン交換樹脂の性能評価方法及びそれを用いた水処理系の管理方法 オルガノ株式会社 000004400 中尾 俊輔 100081282 伊藤 高英 100085084 大倉 奈緒子 100115314 玉利 房枝 100117190 鈴木 健之 100120385 磯田 志郎 100123858 畑中 芳実 100095326 大澤 斌 100095821 建持 千佳 府川 潤平 JP 1999346006 19991206 20101117 G01N 30/96 20060101AFI20101028BHJP G01N 30/00 20060101ALI20101028BHJP C02F 1/42 20060101ALI20101028BHJP JPG01N30/96 ZG01N30/00 JC02F1/42 B G01N 30/96 C02F 1/42 G01N 30/00 特開平09−210977(JP,A) 特開平05−104000(JP,A) 特開平08−304364(JP,A) 特開平08−248019(JP,A) 特開平09−178737(JP,A) 特開昭59−066403(JP,A) 8 2001228134 20010824 13 20070608 河野 隆一朗 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、火力発電所、原子力発電所の復水脱塩装置や、電子工業における純水製造装置のポリッシャ等で使用する陽イオン交換樹脂の劣化度合いの評価方法に関する。また、本発明は、上記評価方法を用いた水処理系の管理方法に関する。【0002】【従来の技術】陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを組み合わせた脱塩装置のイオン交換樹脂の性能評価方法として、次の方法が知られている。すなわち、▲1▼脱塩装置から樹脂をサンプリングし、▲2▼混合状態の場合は逆洗等の手法により分離し、▲3▼再生が必要な場合は、陽イオン交換樹脂は塩酸等の酸再生剤を通薬してH形に調整し、陰イオン交換樹脂は苛性ソーダ等のアルカリ再生剤を通薬してOH形に調整した後、十分に洗浄を行い、▲4▼樹脂を脱塩装置と同様の組み合わせになるように調整し、▲5▼これを試験筒に充填して試験筒に一定濃度の塩類含有水を通水し、処理水に漏洩するイオン量を電気伝導率の値として測定する方法である。【0003】しかしながら、上述したイオン交換樹脂の性能評価方法は、イオン交換樹脂の反応速度の低下を知ることはできるが、脱塩装置の処理水質に問題を生じる以前に、予めイオン交換樹脂の使用限界を予測することはできなかった。また、陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合いは、TOC溶出量の増加、水分保有能力の増加、TOC溶出物中の高分子物質の増加等によって評価することが可能である。しかし、陽イオン交換樹脂からの溶出物の量は必ずしも使用期間につれて徐々に増加するわけではなく、ある時期から比較的急激に増加するため、上記性能評価方法では陽イオン交換樹脂の使用限界を予測することはできなかった。【0004】これに対し、本出願人は、陽イオン交換樹脂の使用限界を予測できる方法として、陽イオン交換樹脂に銅イオン及び/又は鉄イオンを吸着させた後、ヒドラジン水溶液を接触させて加速劣化させ、次いで劣化させた陽イオン交換樹脂に溶離液を接触させ、この時樹脂から溶出したポリスチレンスルホン酸量を測定する陽イオン交換樹脂の性能評価方法を提案した(特開平9−210977号)。この方法は、陽イオン交換樹脂を加速劣化させた後、劣化させた陽イオン交換樹脂からのポリスチレンスルホン酸溶出量を測定し、その値に基づいて陽イオン交換樹脂の交換時期を決定する方法である。【0005】すなわち、脱塩装置に通常使用されている陽イオン交換樹脂は、イオン交換基としてスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂であり、その溶出物の主成分はポリスチレンスルホン酸(以下、場合によりPSSという)である。この陽イオン交換樹脂を長期間使用した場合、陽イオン交換樹脂の一部が酸化分解されて劣化し、種々の分子量のPSSを溶出するようになる。溶出されるPSSは、陽イオン交換樹脂と対で使用される陰イオン交換樹脂の反応速度を低下させることが知られており、そのため陽イオン交換樹脂の劣化度合いの評価方法が望まれていた。しかし、PSSを溶出するようになっても、通常は陽イオン交換樹脂自体のイオン交換性能には大きな低下が認められないため、劣化度合いをPSSの溶出量によって評価する方法が望まれていた。前述の特開平9−210977号の方法は、かかる要望に応えるものである。【0006】【発明が解決しようとする課題】しかし、本発明者らが検討を行ったところ、特開平9−210977号の方法には、次のような問題があることが判明した。すなわち、劣化した陽イオン交換樹脂から溶出するポリスチレンスルホン酸には、低分子量のポリスチレンスルホン酸(以下、低分子量PSSという)と、高分子量のポリスチレンスルホン酸(以下、高分子量PSSという)があるが、本発明者らは、高分子量PSSには、溶解性のポリスチレンスルホン酸(以下、溶解性PSSという)と、不溶解性のポリスチレンスルホン酸(以下、不溶解性PSSという)が存在し、陰イオン交換樹脂の反応性低下には、特に不溶解性PSSが影響を与えることを見出した。しかし、不溶解性PSSはPSSの特徴を有しているため、特開平9−210977号の評価方法では、不溶解性PSSを溶解性PSSと区別して定量することはできず、陽イオン交換樹脂から溶出するPSSは高分子量PSSと低分子量PSSにしか区別できなかった。そのため、高分子量PSSとして定量されるPSS中の溶解性PSSと不溶解性PSSの割合によっては、陽イオン交換樹脂の劣化度合いをうまく評価することができない場合があることが判明した。【0007】本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、陽イオン交換樹脂の劣化度合いを陽イオン交換樹脂からのPSSの溶出量によって評価する方法であって、陽イオン交換樹脂の劣化度合いを精度よく評価することができる方法を提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者は、前述した課題を達成するために、陽イオン交換樹脂に接触させた後の液体中に含まれるPSSから不溶解性PSSを分離する目的で、まず、メンブレンフィルタを用いた濾過処理によって前記液体から不溶解性PSSを分離することを試みた。しかし、この方法ではフィルタが目詰まりを起こし、溶解性PSSがフィルタ上に残留して、溶解性PSSの測定値が低めになってしまうという不具合が生じた。そこでさらに検討したところ、遠心分離により前記液体中に含まれる微粒子を分離した後、さらにメンブレンフィルタで濾過を行うことにより、前記液体から不溶解性PSSを分離することが可能となり、これにより溶解性PSSの測定値に影響与えることなく、溶解性PSS及び不溶解性PSSをそれぞれ定量できることを知見した。【0009】 本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記(1)〜(7)に示す陽イオン交換樹脂の性能評価方法、及び、下記(8)に示す水処理系の管理方法を提供する。なお、本発明は各種の強酸性陽イオン交換樹脂の評価に適用することができ、陽イオン交換樹脂であればどのような型(例えばゲル型、MR型、ポーラス型等)のものでも評価することができる。【0010】(1)陽イオン交換樹脂に液体を接触させ、次いで陽イオン交換樹脂に接触させた後の液体中に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定する工程と、前記陽イオン交換樹脂に接触させた後の液体を遠心分離し、次いで遠心分離後の液体をメンブレンフィルタで濾過した後、濾液中に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定する工程とを備え、前記両工程で得られたポリスチレンスルホン酸量から算出される微粒子型ポリスチレンスルホン酸量に基づいて前記陽イオン交換樹脂の劣化度合いを評価することを特徴とする陽イオン交換樹脂の性能評価方法。(2)陽イオン交換樹脂に液体を接触させる前に、陽イオン交換樹脂に銅イオン及び/又は鉄イオンを吸着させ、さらにヒドラジン水溶液を接触させて陽イオン交換樹脂を加速劣化させる(1)の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。(3)加速劣化させた陽イオン交換樹脂に液体を接触させる前に、加速劣化させた陽イオン交換樹脂に酸水溶液を接触させて陽イオン交換樹脂に吸着されている銅イオン及び/又は鉄イオンを脱離させる(2)の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。(4)陽イオン交換樹脂に液体を接触させる際に、陽イオン交換樹脂に結晶金属を添加して陽イオン交換樹脂を加速劣化させる(1)の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。(5)ポリスチレンスルホン酸量の測定をゲルフィルトレーションクロマトグラフィーにより行う(1)〜(4)の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。(6)微粒子型ポリスチレンスルホン酸が、孔径0.4〜0.45μmのメンブレンフィルタを透過し、孔径0.1μm以下のメンブレンフィルタを透過しない大きさの不溶解性ポリスチレンスルホン酸である(1)〜(5)の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。(7)遠心分離において回転数を30000rpm以上とする(1)〜(6)の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。(8)(1)〜(7)の陽イオン交換樹脂の性能評価方法を用いて陽イオン交換樹脂の劣化度合いを評価することを特徴とする水処理系の管理方法。【0011】本発明において、微粒子型PSSとは、不溶解性PSSのことをいい、さらに孔径0.4〜0.45μmのメンブレンフィルタを透過し、孔径0.1μm以下のメンブレンフィルタを透過しない大きさの不溶解性PSSのことをいう。本発明では、不溶解性PSSと微粒子型PSSとを実質的に同じものとしている。したがって、本明細書では、以下、不溶解性PSSを微粒子型PSSという。【0012】本発明者らは、陽イオン交換樹脂からの微粒子型PSSの溶出量と、陰イオン交換樹脂の反応性低下の度合いとが相関性を示すことを見出した。本発明では、2つの工程で得られたPSS量から算出される微粒子型PSS量に基づいて、陽イオン交換樹脂の劣化度合いを精度よく評価することができる。【0013】【発明の実施の形態】以下、本発明につきさらに詳しく説明する。本発明では、陽イオン交換樹脂に液体を接触させ、次いで陽イオン交換樹脂に接触させた後の液体(以下、溶出液ということもある)中に含まれるPSS量を測定する工程(以下、第1工程ということもある)を実施する。第1工程で測定を行う溶出液中には、微粒子型PSS、溶解性高分子量PSS及び溶解性低分子量PSSが存在する。【0014】陽イオン交換樹脂に接触させる液体(以下、溶離液ということもある)としては、例えば、純水や、純水に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、アンモニア、ヒドラジン、水酸化ナトリウム等の電解質を比較的低濃度で溶解させた電解質水溶液等が挙げられるが、PSSの溶離効果が高いという点で、特にアンモニアとヒドラジンとを含有する混合水溶液を用いるのが好ましい。陽イオン交換樹脂に溶離液を接触させる方法も特に制限はないが、好ましくは溶離液中に陽イオン交換樹脂を浸漬して撹拌下に接触させる浸漬法を用いるとよく、また、このとき反応系の温度を約40℃程度にするとよい。【0015】陽イオン交換樹脂に接触させた後の液体(以下、溶出液ということもある)中に含まれるPSS量の測定方法に限定はなく、いかなる方法によってもよいが、ゲルフィルトレーションクロマトグラフィー(GFC)によることが特に好ましい。GFCは液体クロマトグラフィーの一種であり、溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する方法である。GFCの検出器としては、例えば紫外線検出器、示差屈折検出器等を用いることができるが、微粒子型PSSは大きさが異なるだけで微粒子といえどもPSSの特徴を有しているため、PSSと同一の波長で定量することができる。この場合、紫外線検出器はピーク面積を測ることにより容易に定量できるため特に好ましい。なお、陽イオン交換樹脂から溶出した微粒子型PSS以外の微粒子は検出されないため定量に誤差が生じることはない。【0016】また、本発明では、前記溶出液を遠心分離し、次いで遠心分離後の溶出液をメンブレンフィルタで濾過した後、濾液中に含まれるPSS量を測定する工程(以下、第2工程ということもある)を実施する。上記遠心分離及び濾過により、溶出液中から微粒子型PSSが除去される。【0017】遠心分離は、溶出液中のほとんどの微粒子を除去する目的で行われるもので、その条件に特に限定はないが、容器の回転数を30000rpm以上、特に45000rpm以上とすることが適当である。この回転数は、通常より高回転であるが、この回転数により微粒子の分離を良好に行うことができる。また、回転時間は30分〜3時間が好ましく、例えば回転数45000rpmの場合は回転時間を1時間程度とすることが適当である。【0018】メンブレンフィルタによる濾過は、遠心分離後の溶出液中に残存する微粒子を除去する目的で行われるもので、メンブレンフィルタとしては、孔径が0.1μm以下のものを用いることが好ましい。孔径0.1μmとは、バブルポイント法(JIS−K3832)などの物理的測定法や、一定粒径の粉末を用いて測定するJIS−Z8901などの粒子保留性測定方法により算出した値を示すものである。また、上記以外の方法で測定される場合もあり、一般には平均孔径と称されているので、本発明においてもこれに倣うものとする。本発明では、メンブレンフィルタとして、上記孔径を有するものであれば、精密濾過膜、限外濾過膜等の任意のものを用いることができるが、操作の簡便性の点でディスク形の精密濾過膜が特に好ましい。【0019】第2工程におけるPSS量の測定手段に限定はないが、第1工程と同様にGFCによることが特に好ましい。【0020】なお、第1工程及び第2工程におけるGFCによるPSS量の測定において、紫外線検出器を用いる場合、紫外線は懸濁物質中では散乱、反射の影響を受けるため、試料中に微粒子が含まれる場合と含まれない場合とでは、PSS濃度と吸光度との関係が異なる。したがって、試料中に微粒子が含まれる場合と含まれない場合の両方の検量線を作成して定量を行うことが適当である。【0021】ところで、第1工程で測定を行う溶出液中には微粒子型PSS、溶解性高分子量PSS及び溶解性低分子量PSSが存在し、第2工程で測定を行う溶出液中には溶解性高分子量PSS及び溶解性低分子量PSSが存在するが、両工程では高分子量PSSのみ、すなわち第1工程では微粒子型PSS及び溶解性高分子量PSS、第2工程では溶解性高分子量PSSを定量することが好ましい。具体的には、分子量1,600以上、特に10,000以上のPSSを定量することが好ましい。溶離液を接触させたときに陽イオン交換樹脂から溶出するPSSは、例えば復水脱塩装置等の実際の水処理系において陽イオン交換樹脂から溶出するものとほぼ同じであると考えられるが、溶出するPSSのうち分子量が約1,600未満の低分子量のものは、たとえ溶出してもこの陽イオン交換樹脂と対で使用される陰イオン交換樹脂を汚染してその反応性を低下させることはほとんどない。したがって、このような低分子量のPSSの溶出はあまり問題とならない。これに対して、分子量が1,600以上のPSSは、比較的少量でも陰イオン交換樹脂を汚染してその反応性を低下させるので、その存在は陰イオン交換樹脂に対して重大な影響を及ぼすこととなる。したがって、陽イオン交換樹脂の性能評価の指標としては、陽イオン交換樹脂と対で使用される陰イオン交換樹脂の性能低下に大きな影響を及ぼす、比較的高分子量のPSSのを指標とするのがよい。【0022】本発明では、前記第1及び第2工程で得られたPSS量から算出される微粒子型PSS量に基づいて、陽イオン交換樹脂の劣化度合いを評価することが好ましい。すなわち、第1工程では、微粒子型PSS、溶解性高分子量PSS及び溶解性低分子量PSSの合計量又は微粒子型PSS及び溶解性高分子量PSSの合計量が測定される。また、第2工程では、溶解性高分子量PSS及び溶解性低分子量PSSの合計量又は溶解性高分子量PSSの量が測定される。したがって、第1工程で得られたPSS量から第2工程で得られたPSS量を差し引くことにより、微粒子型PSS量を得ることができる。【0023】なお、前記第1及び第2工程は、陽イオン交換樹脂のみに対して実施してもよく、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との混合物に対して実施してもよい。また、陽イオン交換樹脂の再生処理を行ってから第1及び第2工程を実施してもよい。【0024】本発明では、陽イオン交換樹脂を加速劣化させてから前記第1及び第2工程を行うことができ、これによって陽イオン交換樹脂の劣化度合いをさらに精度よく評価することが可能となる。【0025】陽イオン交換樹脂を加速劣化させる方法の一例として、陽イオン交換樹脂に液体を接触させる前に、陽イオン交換樹脂に銅イオン及び/又は鉄イオンを吸着させ、さらにヒドラジン水溶液を接触させる方法を挙げることができる。【0026】この場合、陽イオン交換樹脂に銅イオン及び/又は鉄イオンを吸着させる方法はいかなるものでもよく、例えばこれらの金属イオンを含む水溶液に陽イオン交換樹脂を浸漬する浸漬法や、陽イオン交換樹脂を充填したカラムに上記金属イオンを含む水溶液を通液するカラム法等が挙げられる。銅イオン及び/又は鉄イオンを吸着させた陽イオン交換樹脂にヒドラジン水溶液を接触させるとなぜ陽イオン交換樹脂が加速劣化するのかは明らかではないが、上記金属イオンとヒドラジンとの反応によって酸化剤である過酸化水素(H2O2)が発生するためではないかと推定される。【0027】陽イオン交換樹脂にヒドラジン水溶液を接触させる方法も特に限定はなく、例えば上記金属イオン吸着の場合と同様な浸漬法やカラム法を用いることができるが、好適には浸漬法によって接触させるとよく、具体的には上記金属イオン吸着後の陽イオン交換樹脂を例えば濃度0.01〜1.0wt%のヒドラジン水溶液中に浸漬し、撹拌下に10〜70時間程度接触させるとよい。【0028】上述の加速劣化手段を採用する場合において、陽イオン交換樹脂に接触させる溶離液としてヒドラジンを含有する水溶液を用いるときには、加速劣化させた陽イオン交換樹脂に液体を接触させる前に、加速劣化させた陽イオン交換樹脂に酸水溶液を接触させて陽イオン交換樹脂に吸着されている銅イオン及び/又は鉄イオンを脱離させることが好ましい。銅イオン及び/又は鉄イオンを吸着させ、さらにヒドラジン水溶液を接触させて劣化処理を行った陽イオン交換樹脂に、PSSを測定するための溶離液としてヒドラジンを含有する水溶液を接触させる場合は、銅イオン及び/又は鉄イオンが陽イオン交換樹脂に吸着されたままだと溶離液中のヒドラジンとの接触によって陽イオン交換樹脂の劣化がさらに進行し、その結果、溶出するPSSの量や分子量に変化が生じて正確な性能評価が行えなくなるおそれがある。そのため、劣化処理を行った陽イオン交換樹脂に塩酸、硫酸等の酸水溶液を接触させて、樹脂に吸着されている銅イオン及び/又は鉄イオンを予め脱離させてから溶離液と接触させるようにするとよい。【0029】陽イオン交換樹脂を加速劣化させる方法の他の例としては、陽イオン交換樹脂に溶離液を接触させる際に、陽イオン交換樹脂に結晶金属を添加する方法を挙げることができる。結晶金属とはイオン状ではない金属をいい、例としてはFe304、Fe203、CuOなどが挙げられる。陽イオン交換樹脂に結晶金属を添加することにより、実際のイオン交換装置において考えられるのと同様な物理的な劣化を陽イオン交換樹脂に与えることができ、これにより陽イオン交換樹脂の加速劣化を引き起こすことができる。【0030】なお、陽イオン交換樹脂に銅イオン及び/又は鉄イオンを吸着させ、さらにヒドラジン水溶液を接触させる加速劣化方法と、陽イオン交換樹脂に結晶金属を添加する加速劣化方法とを併用してもよい。【0031】【実施例】以下に本発明を実施例に基づいて具体的に示す。(実験1)新品の強酸性陽イオン交換樹脂50mlを硫酸銅(CuSO4)水溶液中に浸漬し、上記陽イオン交換樹脂に銅イオンを樹脂1リットル当たりCuとして0.4g吸着させた。次いで、この銅イオン吸着樹脂をヒドラジン水溶液中に樹脂1リットル当たり0.15当量のヒドラジン量となる条件で16時間浸漬し、加速劣化させた。その後、この樹脂に5%塩酸水溶液を樹脂1リットル当たり400g(35%HCl水溶液として)の割合で通液して該樹脂を再生し、樹脂に吸着されている銅イオンを脱離させた。【0032】再生後の陽イオン交換樹脂を純水で洗浄した後、濃度1%のアンモニアと濃度0.2%のヒドラジンを含む水溶液(溶離液)100ml中に浸漬し、40℃に加温して16時間振とうした。16時間振とう後、溶出液中に含まれる分子量10,000以上のPSS量をGFCで測定した。その結果、溶出液中に含まれる分子量10,000以上のPSS量はゼロであり、新品の陽イオン交換樹脂では、上記の処理によっては分子量10,000以上のPSSは溶出しないことがわかった。【0033】(実験2)溶解性低分子量PSS、溶解性高分子量PSS及び微粒子型PSSの陰イオン交換樹脂への付着量と、陰イオン交換樹脂の物質移動係数(MTC)との関係を調べた。結果を図1に示す。図1より、微粒子型PSSは溶解性低分子量PSS、溶解性高分子量PSSに較べ、陰イオン交換樹脂の反応性低下に大きく影響を与えることが確認された。【0034】(実施例1)実際の混床式復水脱塩装置において使用している強酸性陽イオン交換樹脂A及びB(ただし、A,Bはそれぞれ別の装置から採取したもの)のそれぞれ50mlに、5%塩酸水溶液を樹脂1リットル当たり400g(35%HCl水溶液として)の割合で通液して該樹脂を再生した。【0035】再生後の陽イオン交換樹脂を純水で洗浄した後、濃度1%のアンモニアと濃度0.2%のヒドラジンを含む水溶液(溶離液)100ml中に浸漬し、40℃に加温して16時間振とうした。16時間振とう後、溶出液中に含まれる分子量10,000以上のPSS量(PSS量1)及び分子量10,000未満のPSS量(PSS量2)をGFCでそれぞれ測定した(第1工程)。一方、前記溶出液を回転数45000rpm、回転時間60分の条件で遠心分離し、さらに孔径0.1μmのメンブレンフィルタで濾過した後、溶出液中に含まれる分子量10,000以上のPSS量(PSS量3)及び分子量10,000未満のPSS量(PSS量4)をGFCでそれぞれ測定した(第2工程)。そして、PSS量1からPSS量3を差し引いた値を微粒子型PSS量とした。結果を下記表1に示す。【0036】【表1】【0037】(検討)陽イオン交換樹脂Aを使用している実際の脱塩装置(Aプラント)では、使用開始後約3年で樹脂交換の必要があることがわかっている。この実績から、Aプラントでは、図2に示すように、高分子PSS発生量(前記PSS量1に相当するPSS量)1mgPSS/L−樹脂を基準として樹脂交換を行っている。Bプラントでは、同じく前記PSS量1に相当する高分子PSSの発生量が1mgPSS/L−樹脂となるのは、使用開始後約2年である。しかし、Bプラントでは、実際には2年経過後も陰イオン交換樹脂の物質移動係数は低下しておらず、樹脂交換の必要はない。一方、Aプラント及びBプラントにおける微粒子型PSS発生量の経時変化は図3に示す通りであり、Aプラントでは微粒子型PSS発生量が1mgPSS/L−樹脂となるのは約3年程度であって、図2の高分子PSS発生量の場合とほぼ同じであるが、Bプラントでは4年以上が経過しても微粒子型PSS発生量は1mgPSS/L−樹脂に達していない。したがって、微粒子型PSS発生量を指標とすれば、前記PSS量1に相当する高分子PSS量を指標として性能評価を行う従来法に比べ、陽イオン交換樹脂の劣化度合いを精度よく評価して、陽イオン交換樹脂の交換時期を的確に予測することができる。【0038】(実施例2)実際の混床式復水脱塩装置において使用している強酸性陽イオン交換樹脂A及びB(ただし、A及びBはそれぞれ別の装置から採取したもの)のそれぞれ50mlを硫酸銅(CuSO4)水溶液又は硫酸第一鉄(FeSO4)水溶液中に浸漬し、これら陽イオン交換樹脂にそれぞれ銅イオン又は鉄イオンを樹脂1リットル当たりCuとして0.4g又はFeとして0.37g吸着させた。次いで、この銅イオン又は鉄イオン吸着樹脂をヒドラジン水溶液中に樹脂1リットル当たり0.15当量のヒドラジン量となる条件で16時間浸漬し、加速劣化させた。その後、この樹脂に5%塩酸水溶液を樹脂1リットル当たり400g(35%HCl水溶液として)の割合で通液して該樹脂を再生し、樹脂に吸着されている銅イオン又は鉄イオンを脱離させた。【0039】再生後の陽イオン交換樹脂を純水で洗浄した後、実施例1と同様の方法で溶出液中に含まれる分子量10,000以上のPSS量(PSS量1)及び分子量10,000未満のPSS量(PSS量2)をGFCでそれぞれ測定した(第1工程)。また、実施例1と同様の方法で遠心分離、濾過を行った後、溶出液中に含まれる分子量10,000以上のPSS量(PSS量3)及び分子量10,000未満のPSS量(PSS量4)をGFCでそれぞれ測定した(第2工程)。そして、PSS量1からPSS量3を差し引いた値を微粒子型PSS量とした。結果を下記表2に示す。【0040】【表2】【0041】(実施例3)実際の混床式復水脱塩装置において使用している強酸性陽イオン交換樹脂A及びB(ただし、A及びBはそれぞれ別の装置から採取したもの)のそれぞれ50mlに5%塩酸水溶液を樹脂1リットル当たり400g(35%HCl水溶液として)の割合で通液して該樹脂を再生した。【0042】再生後の陽イオン交換樹脂を純水で洗浄し、次いで陽イオン交換樹脂に結晶金属として酸化第二銅(CuO)又は四酸化三鉄(Fe3O4)を樹脂1リットル当たりCu又はFeとして0.5g添加した。その後、実施例1と同様の方法で溶出液中に含まれる分子量10,000以上のPSS量(PSS量1)及び分子量10,000未満のPSS量(PSS量2)をGFCでそれぞれ測定した(第1工程)。また、実施例1と同様の方法で遠心分離、濾過を行った後、溶出液中に含まれる分子量10,000以上のPSS量(PSS量3)及び分子量10,000未満のPSS量(PSS量4)をGFCでそれぞれ測定した(第2工程)。そして、PSS量1からPSS量3を差し引いた値を微粒子型PSS量とした。結果を下記表3に示す。【0043】【表3】【0044】【発明の効果】以上のように、本発明によれば、陽イオン交換樹脂の劣化度合いを精度よく評価することができ、陽イオン交換樹脂の交換時期を的確に予測することが可能となる。【図面の簡単な説明】【図1】低分子量PSS、溶解性PSS及び微粒子型PSSの陰イオン交換樹脂への付着量と、陰イオン交換樹脂の物質移動係数(MTC)との関係を示すグラフである。【図2】実際の復水脱塩装置で使用した陽イオン交換樹脂からの高分子PSSの発生量の経時変化を示すグラフである。【図3】実際の復水脱塩装置で使用した陽イオン交換樹脂からの微粒子型PSSの発生量の経時変化を示すグラフである。 陽イオン交換樹脂に液体を接触させ、次いで陽イオン交換樹脂に接触させた後の液体中に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定する工程と、 前記陽イオン交換樹脂に接触させた後の液体を遠心分離し、次いで遠心分離後の液体をメンブレンフィルタで濾過した後、濾液中に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定する工程とを備え、 前記両工程で得られたポリスチレンスルホン酸量から算出される微粒子型ポリスチレンスルホン酸量に基づいて前記陽イオン交換樹脂の劣化度合いを評価することを特徴とする陽イオン交換樹脂の性能評価方法。 陽イオン交換樹脂に液体を接触させる前に、陽イオン交換樹脂に銅イオン及び/又は鉄イオンを吸着させ、さらにヒドラジン水溶液を接触させて陽イオン交換樹脂を加速劣化させる請求項1に記載の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。 加速劣化させた陽イオン交換樹脂に液体を接触させる前に、加速劣化させた陽イオン交換樹脂に酸水溶液を接触させて陽イオン交換樹脂に吸着されている銅イオン及び/又は鉄イオンを脱離させる請求項2に記載の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。 陽イオン交換樹脂に液体を接触させる際に、陽イオン交換樹脂に結晶金属を添加して陽イオン交換樹脂を加速劣化させる請求項1に記載の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。 ポリスチレンスルホン酸量の測定をゲルフィルトレーションクロマトグラフィーにより行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。 微粒子型ポリスチレンスルホン酸が、孔径0.4〜0.45μmのメンブレンフィルタを透過し、孔径0.1μm以下のメンブレンフィルタを透過しない大きさの不溶解性ポリスチレンスルホン酸である請求項1〜5のいずれか1項に記載の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。 遠心分離において回転数を30000rpm以上とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の陽イオン交換樹脂の性能評価方法。 請求項1〜7のいずれか1項に記載の陽イオン交換樹脂の性能評価方法を用いて陽イオン交換樹脂の劣化度合いを評価することを特徴とする水処理系の管理方法。


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