生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_体臭抑制剤とその用途
出願番号:2000269165
年次:2011
IPC分類:A61K 8/60,A61Q 15/00,D06M 13/148


特許情報キャッシュ

奥 和之 久保田 倫夫 福田 恵温 三宅 俊雄 JP 4652540 特許公報(B2) 20101224 2000269165 20000905 体臭抑制剤とその用途 株式会社林原生物化学研究所 000155908 奥 和之 久保田 倫夫 福田 恵温 三宅 俊雄 JP 2000058032 20000302 JP 2000159204 20000529 JP 2000202972 20000704 20110316 A61K 8/60 20060101AFI20110224BHJP A61Q 15/00 20060101ALI20110224BHJP D06M 13/148 20060101ALI20110224BHJP JPA61K8/60A61Q15/00D06M13/148 A61K 8/60 A61Q 15/00 D06M 13/148 CA/REGISTRY(STN) 特開平06−122618(JP,A) 特開平06−128136(JP,A) 特開昭58−043910(JP,A) 特開昭62−221613(JP,A) 特開平06−227962(JP,A) 特開平03−251525(JP,A) 特開平11−286423(JP,A) 特開平11−263795(JP,A) 化粧品ハンドブック,日本,日光ケミカルズ株式会社,1996年11月 1日,P.91-93 7 2002080336 20020319 26 20070830 ▲高▼岡 裕美 【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、新規な体臭抑制剤に関し、詳細には、トレハロース及び/又はマルチトールを有効成分として含んでなる体臭抑制剤とその用途に関するものである。【0002】【従来の技術】汗臭、口臭、脇臭等の体臭に対する消臭・防臭指向の高まりにより、体臭を抑えるエチケット製品に対する要望が近年高まりつつある。体臭の発生には、病気、体調、遺伝的体質などのほか、食事、喫煙、入浴頻度などの生活習慣などが影響を与えることが明らかにされている。体臭の原因物質に関しても近年研究が進み、例えば、生体から分泌された高級脂肪酸やそのエステル化誘導体などから生成する揮発性アルデヒドは特に主要な原因物質のひとつであることが確認されている。また、上記のような要因から発生する体臭に加えて、加齢にともなって発生する、中高年層に特有の体臭(高齢者臭)の存在も指摘され始めている。例えば、『フレグランス・ジャーナル』、1999年9月号、42乃至46頁及び特開平11−286428号公報においては、斯かる中高年齢層に特有の体臭が「加齢臭」と命名され、この加齢臭の発生には、ヒトの中高年齢層の皮脂中に増加する9−ヘキサデセン酸などから生じる揮発性アルデヒドの一種である2−ノネナールや2−オクテナールなどの不飽和基を含む物質が深く関わることが記載されている(以下、本明細書においても、ヒトの中高年層に特有の体臭を「加齢臭」という)。また、以上のようなヒトの体臭に加えて、ヒト以外の、愛玩動物や家畜などの動物の体臭についても同様に消臭・防臭への要望が高まり、各方面でその対策が検討されている。【0003】その結果、現在では、様々な観点からヒト及び動物の体臭に対する方策がとられるに至っている。それらを原理により大別すると、(1)芳香成分を利用して体臭をマスキングするもの、(2)体臭成分、あるいは、体臭成分をその前駆物質とともに物理的に吸着して該体臭成分の揮散を抑制するもの、(3)酸化反応やバクテリアの活動などによる、体臭成分の前駆物質からの生成自体を抑制するものなどがある。【0004】上記(1)の方法は、体臭成分の生成自体を抑制するものではなく、また、問題となる体臭と芳香成分による芳香とが混在することにより、必ずしも好ましくない新たな臭気の発生を招く場合があり、根本的な問題の解決とはいい難い。上記(2)の方法の代表的な例としては、例えば、シクロデキストリンや活性炭等による包接能や吸着能を利用して体臭成分の揮散を抑制する方法がある。シクロデキストリンを用いる方法は、一旦包接された体臭成分が他の物質の共存により再び放出される場合があるため、根本的な問題の解決とはいえない。活性炭を用いる方法は、即効性を示し難いことや、生体への直接的な適用には限度があることなどから必ずしも有効とはいえない。上記(3)の方法の代表的な例としては、抗酸化物質や抗菌物質を利用する方法が挙げられる。この方法は、体臭の発生の抑制に奏効する場合がある反面、それ自体で体臭の発生を抑制するに足る用量の抗酸化物質や抗菌物質は、例えば、生体の皮膚などに対する刺激性やアレルギー性など、生体に直接適用する際に対象の健康上望ましくない結果を招く場合があることもまた事実である。【0005】【発明が解決しようとする課題】斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、体臭をその発生の段階で効果的に抑制する、健康上の懸念なく利用できる手段を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、ヒト及び動物への適用の安全性が確認されている糖質ならびにその関連物質を利用して上記の課題を解決する手段を確立することを目指して研究に着手した。そして、本発明者らは、同じ特許出願人による特願平11−248071号明細書に開示された、揮発性アルデヒド類の生成及び脂肪酸類の分解に対してトレハロースならびにマルチトールが有する抑制効果に着目し、トレハロースならびにマルチトールが体臭の原因物質として知られている揮発性アルデヒドの生成に与える影響について、他の糖質による影響を比較参照しつつ鋭意研究を進めた。その結果、トレハロースとマルチトールが、加熱条件下での加速試験系において2−ノネナールをはじめとする体臭の原因物質の生成をとりわけ顕著に抑制することを見出した。また、ヒト生体と同等の温度条件下での試験系においても、トレハロースとマルチトールが同様に効果を発揮することも確認した。さらに、ボランティアを対象とした試験により、トレハロースとマルチトールが実際にヒト生体からの2−ノネナールをはじめとする体臭の原因物質の生成をよく抑制することをも確認した。この発明は以上の知見に基づいて完成されたものである。【0007】すなわち、この発明は、トレハロース及び/又はマルチトールを有効成分として含んでなる体臭抑制剤と、該体臭抑制剤を用いる体臭の抑制方法ならびに、該体臭抑制剤を含有せしめた物品を提供することにより上記の課題を解決するものである。【0008】【発明の実施の形態】この発明は、トレハロースならびにマルチトールが、ヒトならびに哺乳類・鳥類・魚介類を含むヒト以外の動物の体臭を、その発生の段階で効果的に抑制するという独自の知見に基づいて、トレハロース及び/又はマルチトールを有効成分として含んでなる体臭抑制剤とその用途を提供するものである。この発明でいうトレハロースとは、2分子のグルコースが還元性基どうしでα,α結合してなる二糖を意味する。この発明で用いるトレハロースは、ヒト及び動物の体臭の発生を抑制するものであるかぎり、純度、存在形態、性状や調製方法は特定のものに限定されない。【0009】トレハロースは種々の方法で調製することができる。経済性を問題にするのであれば、例えば、特開平7−143876号公報、特開平7−213283号公報、特開平7−322883号公報、特開平7−298880号公報、特開平8−66187号公報、特開平8−66188号公報、特開平8−336388号公報及び特開平8−84586号公報に開示された非還元性糖質生成酵素及びトレハロース遊離酵素を澱粉部分加水分解物に作用させる方法が好適である。この方法によるときには、廉価な材料である澱粉から、トレハロースが好収量で得られる。ちなみに、斯かる方法により調製された市販品としては、例えば、含水結晶トレハロース(商品名『化粧品用トレハロース』、固形分重量当りの含水結晶トレハロース含量99%以上、株式会社林原商事販売)、含水結晶トレハロース(商品名『トレハ』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)、トレハロース含有シロップ(商品名『トレハスター』、固形分重量当りのトレハロース含量28%以上、株式会社林原商事販売)がある。なお、トレハロースは、マルトースに、例えば、特開平7−170977号公報、特開平8−263号公報、特開平8−149980号公報のいずれかに記載されたマルトース・トレハロース変換酵素を作用させるか、あるいは、公知のマルトース・ホスホリラーゼ及びトレハロース・ホスホリラーゼを組合せて作用させることによっても得ることができる。また、上記で例示したようなトレハロースの含水結晶を、例えば、70℃乃至160℃の範囲の温度で常圧乾燥又は減圧乾燥、より望ましくは、80℃乃至100℃の範囲の温度で減圧乾燥するか、あるいは、水分10%未満の高濃度トレハロース高含有溶液を助晶缶にとり、種晶共存下で50乃至160℃、望ましくは80乃至140℃の範囲で攪拌しつつ無水結晶トレハロースを含有するマスキットを製造し、これを比較的高温乾燥条件下で、例えば、ブロック粉砕、流動造粒、噴霧乾燥などの方法で晶出、粉末化することによりトレハロースの無水物を調製することもできる。以上のようにして得られるトレハロースはいずれもこの発明に有利に利用することができる。【0010】この発明でいうマルチトールとは、グルコースがα−1,4結合してなる二糖であるマルトースの還元体を意味する。この発明で用いるマルチトールは、ヒト及び動物の体臭の発生を抑制するものであるかぎり、純度、存在形態、性状や調製方法は特定のものに限定されない。例えば、同じ特許出願人による特公昭47−13699号公報に開示された方法により得られるシラップ状のマルチトールや、特公昭63−2439号公報に開示された方法により得られる無水結晶マルチトールは適宜この発明において有利に利用できる。また、市販の無水結晶マルチトール(商品名『粉末マビット』、固形分重量あたりの無水マルチトール含量93.5%以上、株式会社林原商事販売)や、マルチトール含有シラップ(商品名『マビット』、固形分74重量%以上、固形分重量あたりのマルチトール含量75%以上、株式会社林原商事販売)もこの発明においては有利に利用できる。なお、トレハロースとマルチトールを併用して本発明を実施する際には、同じ特許出願人による特開平8−73482号公報に記載された、トレハロースとマルトースとの混合物を水素添加して得られるトレハロースとマルチトールの混合物を利用することも随意である。【0011】この発明の体臭抑制剤は以上のようなトレハロース及び/又はマルチトールを有効成分として含む。当該体臭抑制剤は、トレハロース及び/又はマルチトールを含んでなり、個々の利用分野や利用形態において所期の体臭抑制効果を発揮するものであるかぎり組成や性状に関しては特に制限はない。当該体臭抑制剤におけるトレハロース及び/又はマルチトールの含量は、その利用分野・利用形態に応じて、無水物換算で総量として、通常、約0.001重量%乃至100重量%、望ましくは、約0.01重量%乃至約50重量%の範囲から適宜選ばれる。また、例えば、水及び/又はアルコールを溶剤として含む液状の当該抑制剤は、幅広い対象において、トレハロース及び/又はマルチトールによる体臭の抑制効果が発揮できる上、その取扱いが容易であるという利点がある。この発明で利用できるアルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級1価アルコールが挙げられる。【0012】また、この発明の体臭抑制剤には、トレハロース及び/又はマルチトールによる効果を妨げない範囲で、さらに、例えば、トレハロース・マルチトール以外の糖質、保湿剤、抗菌剤、静菌剤、殺菌剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、紫外線遮蔽剤、紫外線吸収剤、制汗剤、薬理効果を示す成分、乳化剤、界面活性剤、感触向上剤、粉体原料、清涼化剤、噴射剤、pH調節剤、着香料、芳香剤、着色料、蛋白質、アミノ酸、繊維質、脂質、塩類など、当該体臭抑制剤の個々の利用分野で通常用いられる成分から選ばれる1種又は2種以上の成分を配合して、当該体臭抑制剤に所望の性質ないしは機能を付与することもできる。【0013】この発明で利用できるトレハロース・マルチトール以外の糖質としては、例えば、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオースなどのマルトオリゴ糖、シクロデキストリン、分岐シクロデキストリン、シクロデキストランなどの環状糖質、さらには、プルラン、アミロペクチン、澱粉、可溶性澱粉、セルロース、アミロース、デキストラン、カードラン、ラミナラン、エルシナン、アガロース、カラギーナン、マンナン、イヌリン、レバン、ガラクタン、アラビアガム、ローカストビーンガムなどの中性多糖などが挙げられる。これらの糖質は、当該体臭抑制剤に配合すると、通常、トレハロース及び/又はマルチトールによる体臭抑制の効果を妨げることなく、個々の糖質が有する機能性を当該体臭抑制剤に付与することができるので、目的に応じて適宜利用することができる。また、これらの糖質のうち、プルランをはじめとする水溶性の中性多糖は、当該体臭抑制剤に配合され、皮膚に適用して使用すると、皮膚を保護する作用を発揮するので、目的に応じて有利に利用できる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、約0.01%乃至約50%の範囲が好適である。【0014】この発明で利用できる保湿剤としては、既述の成分で保湿作用を示すもののほか、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ジプロピレングリコール、キシリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、カルボキシメチルキチンなどの多糖誘導体、ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどのアミノ酸及びその塩、乳酸及び乳酸ナトリウムなどの有機酸及びその塩などが挙げられる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、約0.1%乃至約50%の範囲が好適である。【0015】この発明で利用できる抗菌剤、静菌剤、殺菌剤、防腐剤ないしは保存剤としては、例えば、安息香酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、デヒドロ酢酸及びその塩などの有機酸類、パラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸エチルなどの安息香酸エステル誘導体、フェノール、クレゾール、クロルクレゾール、イソプロピルメチルフェノール、トリクロルヒドロキシジフェニルエーテルなどのフェノール類、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、塩化セチルピリミジウムなどの第4アンモニウム塩、クロルヘキシジングルコネート、塩酸クロルヘキシジンなどのクロルヘキシジン誘導体、トリクロルカルバニリド、ハロカルバンなどのジフェニル尿素誘導体、ジヒドロファルネソールなどが挙げられる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、0.001%乃至5%、望ましくは、0.01%乃至1%の範囲が好適である。【0016】この発明で利用できる酸化防止剤としては、既述の成分のうちで抗酸化作用を有するもののほかに、例えば、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸ステアリン酸エステルや糖転移アスコルビン酸などのアスコルビン酸誘導体、クエン酸及びその塩、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、パルミチン酸及びその塩、パルミチン酸アスコルビル、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、茶カテキンなどが挙げられる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、約0.001%乃至約10%、望ましくは、約0.01%乃至約5%の範囲が好適である。【0017】この発明で利用できる紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化チタン、タルク、カオリンなどの紫外線遮蔽能を有する無機物質や、5−クロロウラシル、グアニン、シトシンなどの紫外線遮蔽能を有する有機物質が、また、この発明で利用できる紫外線吸収剤としては、既述の成分で紫外線吸収作用を有するもののほか、例えば、パラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシルエステル、シノキサート、パラメトキシ桂皮酸エチルヘキシルエステル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、オキシベンゾゾン、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルなどが挙げられる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、約0.1%乃至約50%の範囲が好適である。【0018】この発明で利用できる制汗剤としては、例えば、塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウムジルコニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸亜鉛、フェノールスルホン酸アルミニウム、フェノールスルホン酸、塩基性乳酸アルミニウム亜鉛、酸化亜鉛、パラフェノールスルホン酸亜鉛のほか、以上のような化合物とアミノ酸、望ましくは、グリシンとの複合体などの収斂性化合物が挙げられる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、0.01%乃至40%の範囲が好適である。【0019】この発明で用いる薬理効果を示す成分としては、生体の皮膚に適用したときに抗炎症作用、メラニン生成抑制作用、創傷治癒促進などの効果を発揮するものが望ましく、例えば、ビタミン類、詳細には、レチノールをはじめとするビタミンA類、チアミン、パントテン酸ならびにその誘導体をはじめとするビタミンB類、既述のアスコルビン酸ならびにその誘導体をはじめとするビタミンC類、既述のトコフェロールならびにその誘導体をはじめとするビタミンE類、ルチン、ヘスペリジン、ナリンジンなどのフラボノイドならびにその誘導体をはじめとするビタミンP類など、ホルモン類、詳細には、卵胞ホルモン、プレグネロンなど、植物抽出物、詳細には、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物など、動物抽出物、詳細には、胎盤抽出物など、感光素、詳細には、感光素101号(化学名:2,2′[3′−[2−(3−ヘプチル−4−メチル−4−チアゾリン−2−イリデン)エチリデン]プロペニレン]ビス(3−ヘプチル−4−メチルチアゾリウム ヨーダイド)、慣用名:プラトニン)、感光素201号(化学名:3−ヘプチル−2−[(3−ヘプチル−4−メチル−2(3H)−チアゾリデン)メチル]−4−メチルチアゾリウム ヨーダイド、慣用名:ピオニン)、感光素301号(化学名:2−[2−[(5−ブロモ−2−ピリジニル)アミノ]エテニル]−1−エチル−6−メチルピリジニウム ヨーダイド、慣用名:タカナール)、感光素401号(化学名:3,4−ジメチル−2−[2−(フェニルアミノ)エテニル]オキサゾリウム ヨーダイド、慣用名:ルミネキス)などが挙げられる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、0.0001%乃至5%の範囲が好適である。【0020】この発明で利用できる乳化剤ないしは界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル、レシチンなどのリン脂質などが挙げられる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、0.01%乃至20%の範囲が好適である。【0021】この発明で利用できる感触向上剤としては、通常、25℃における、動粘性率で表される粘度が100mm2/sec以下である鎖状及び/又は環状シリコーン油が望ましく、例えば、メチルシクロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、0.01%乃至50%の範囲が好適である。【0022】この発明で利用できる増粘剤としては、既述の成分で増粘作用を有するもののほか、例えば、グァーガム、クインスシード、トラガント、ペクチン、キサンタンガム、キチン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、アルギン酸ナトリウム、カチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチル澱粉、アルギン酸プロピレングリコール、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムなどの電解質のほか、各種の油分などが挙げられる。以上のような増粘剤の利用は、当該体臭抑制剤を皮膚に直接適用して使用する際の使用感の改善ないしは調整に奏効する。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、0.01%乃至30%の範囲が好適である。【0023】また、上記で述べたカルボキシビニルポリマー(市販品としては、例えば、米国、ビー・エフ・グッドリッチ社製造、商品名『カーボポール』、製品番号934、940、941等。)は、アルカリ性成分と併用されたとき溶液をゲル化する作用を有し、カルボキシビニルポリマーにより形成されるゲルは他の増粘剤による場合と比べて温度による粘性の変化が少ないことなどから、当該体臭抑制剤をゲル状の状態で提供する際にとりわけ有利に利用できる。この際利用できるアルカリ性成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等の無機塩基や、トリエタノールアミン、L−アルギニン等の有機塩基が挙げられる。利用分野・利用形態にもよるけれども、ゲル状の当該体臭抑制剤におけるカルボキシビニルポリマーの配合量は、通常、総重量当たり0.1%乃至10%が好適であり、アルカリ性成分は、このカルボキシビニルポリマーを中和する量、通常、pH6乃至7.5程度に調整できる量を用いればよい。【0024】この発明でいう粉体原料とは、水又は有機溶剤に実質的に不溶な、皮膚外用剤分野での利用が通常許容される粉末状の成分を意味する。この発明で利用できる粉体原料としては、既述の成分でこの粉体原料の定義にあてはまるもののほか、例えば、ナイロン(ポリアミド)粉末、ポリウレタン粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、架橋型ポリスチレン粉末、架橋型シリコーン粉末などの合成樹脂粉体、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、マグネシア・シリカ(無水ケイ酸と酸化マグネシウムを含む組成物)、モンモリロナイト、ヒドロキシアパタイト、ケイ酸マグネシウム、マイカ、カーボンブラック、セリサイト、ゼオライト、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、雲母チタン(酸化チタン被膜により被覆された雲母粉末)、酸化カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、真珠粉末をはじめとする、白色、赤色系、褐色系、黄色系、黒色系、紫色系、緑色系もしくは青色系の無機顔料の粉末化物、各種の有機顔料の粉末化物、各種の金属顔料の粉末化物、シルク粉末やウール粉末などの天然粉体などが挙げられる。以上のような粉体原料は、当該体臭抑制剤において、例えば、着色剤、基剤、賦形剤、担体、コーティング剤、光沢化剤などとして利用することができる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、0.01%乃至50%の範囲が好適である。【0025】この発明で利用できる清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ハッカ水、ハッカ油、ケイヒ油、ウイキョウ油、ベルガモット油、ボルネオールなどが挙げられる。以上のような成分を用いる場合の当該体臭抑制剤における含量は、用いる成分の種類や、当該体臭抑制剤の利用分野・利用形態にもよるけれども、総重量当たり、通常、0.001%乃至5%、望ましくは、0.01%乃至1%の範囲が好適である。なお、以上説明したようなトレハロース及びマルチトール以外の成分や、これらの成分以外の噴射剤、pH調節剤、着香料、芳香剤、着色料、蛋白質、アミノ酸、繊維質、脂質、塩類などの成分をさらにこの発明で利用する場合には、当該体臭抑制剤の個々の利用分野で利用することが許容される成分の調製品を用いるのが望ましく、例えば、当該体臭抑制剤が直接的又は間接的に生体に接触して利用される場合には、該生体への外用又は内用が許容される調製品を用いるのが望ましいことはいうまでもない。【0026】この発明の体臭抑制剤に、トレハロース及び/又はマルチトール以外の以上のような成分の中から目的に応じて適宜選ばれる成分を配合することにより、当該体臭抑制剤に所望の性質・機能が付与されることとなる。例えば、ごく一例を挙げると、トレハロース及び/又はマルチトールと溶剤としての水及び/またはアルコールとともに、制汗剤、殺菌剤、感触向上剤、粉体原料を配合してなる当該体臭抑制剤は、生体の皮膚に適用したとき、顕著な体臭抑制効果を発揮するとともに、通常の制汗用品ないしはデオドラント用品と同様に発汗を抑え、爽快な使用感を与えるという特徴がある。【0027】以上のように構成されるこの発明の体臭抑制剤は、利用分野・利用形態にもよるけれども、水溶液、ローション、スプレー液、懸濁液及び乳化液などの液状、粉末、顆粒及びブロック状などの固体状、クリーム及びペーストなどの半固体状、ゲル状等の適宜の状態に調製され、必要に応じて、瓶、袋、缶、スプレー缶、噴霧容器、箱、パック等の適宜の容器に封入して提供される。以上のようなこの発明の体臭抑制剤は、後述するこの発明による体臭の抑制方法にしたがって利用することにより、ヒトの体臭の発生の抑制に奏効するほか、哺乳類・鳥類・魚介類を含むヒト以外の動物、例えば、愛玩用、観賞用もしくは家畜用などとしての、イヌ、ネコ、キツネ、タヌキをはじめとする食肉類、リス、ハムスター、ハツカネズミ、モルモット、ウサギをはじめとする齧歯類、キツネザル、アイアイ、メガネザル、テナガザルをはじめとするヒト以外の霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イノシシ、ブタをはじめとする偶蹄類、ウマをはじめとする奇蹄類(以上哺乳類)、ニワトリ、シチメンチョウ、チャボ、ウズラ、インコ、ブンチョウ、カナリア、ジュウシマツ、キュウカンチョウ、ハトなどの鳥類、熱帯魚、金魚、コイ、タイ、エビ、カニなどの魚介類などの体臭の発生の抑制に奏効する。したがって、当該体臭抑制剤は、個人が日常的に有利に利用できるのみならず、例えば、理容・美容業界、温泉を含む公衆浴場業界、エステティック業界、マッサージ業界、清掃業界、畜産・水産業界、哺乳類・鳥類・魚介類を含む愛玩動物ないしは鑑賞用動物の取扱い業界、医療分野、介護分野等においても有利に利用できる。【0028】この発明の体臭抑制剤は、後述のとおりそれ自体で体臭の抑制に有用であるほか、生体と接触しうる物品に含有された形態としても有利に利用できる。ここでいう生体と接触しうる物品とは、直接的又は間接的にヒト又は動物の生体と接触して利用されることのあるものを意味し、例えば、化粧品分野、日用品分野、衛生用品分野、医用品分野、介護用品分野、運動用品分野などで利用しうる形状に成形された、織布、不織布、スポンジ、多孔性合成樹脂、綿、脱脂綿などが挙げられる。また、この発明の体臭抑制剤を含有させて利用できる個々の物品としては、詳細には、ティッシュ・ペーパー、ウェット・ティッシュ、紙製おしぼり、おしぼり、手ぬぐい、タオル、ハンカチ、足拭き用マット、クッション、ドアカバーなどの日用品、衣類・寝具・日用品等の洗濯用の洗濯洗剤、洗濯仕上げ剤、柔軟剤、糊付け剤などの洗濯用品、紙などにより成形された使い捨て品を含む、肌着、靴下、シャツ、ズボン、スカートなどの衣類、シーツ、布団カバー、枕カバー、毛布、タオルケットなどの寝具手袋、帽子、マフラー、鉢巻き、ヘアバンド、靴などの身の回り品、包帯、眼帯、ガーゼ、パッドつき絆創膏、湿布、湿布の基布、綿棒、マスク、おむつ、使い捨ておむつ、生理用品などの衛生用品、医用品ないしは介護用品、運動靴、トレーニングウェア、サポーター、胴着、ヘルメットあて、グローブ、ミットなどの運動用品、床、手すり、家具等の清掃用の雑巾、布巾、モップなどの清掃用品、エステティック用品、マッサージ用品、体臭ケア用品などとしてのローション、クリーム、ゲル、天花粉などの皮膚外用組成物、シャンプー、ドライシャンプー、リンス、ヘアトニック、ヘアリキッド、ヘアムース、ヘアクリーム、ポマード、育毛剤、養毛剤などの頭皮・頭髪用組成物、マウス・ウォッシュ、練歯磨などの口腔用組成物、魚介類用餌、水槽浄化剤、愛玩動物用浴用剤などの愛玩動物用品が挙げられる。物品の形状や利用方法などにもよるけれども、この発明の体臭抑制剤を含有せしめた以上の様な物品は、総重量あたり、トレハロース及び/又はマルチトールを、無水物換算でその合計として、通常、約0.00001重量%乃至約30重量%、望ましくは、約0.0001重量%乃至約10重量%含有される。以上のような物品は、当該体臭抑制剤を含まない従来の物品と同様にして利用すると、それを利用する生体からの体臭の発生をよく抑制するとともに、当該物品に付着した、生体からの分泌物に起因する体臭ないしは体臭様の臭気の発生をもよく抑制する。また、後記実験で詳述するように、この発明の体臭抑制剤は加齢臭の原因物質として知られている体臭成分2−ノネナール、2−オクテナール、2−ヘキセナールなどの生成をよく抑制するので、以上のような物品は、加齢臭を抑制するための物品としても有利に利用できる。【0029】この発明は、上記のような体臭抑制剤を生体からの分泌物に接触させることを特徴とする体臭の抑制方法を提供するものでもある。この発明でいう生体からの分泌物としては、例えば、皮脂や汗等が挙げられる。この発明による方法は、このような生体からの分泌物と当該体臭抑制剤とを接触させて体臭を発生の段階で抑制するものであるかぎり、該接触のための手段や、当該抑制剤の用量に関しては特に制限はない。例えば、上記のような分泌物が存在する、ヒト又はヒト以外の動物の皮膚・毛髪などの生体表面の適宜の部位や観賞用の魚介類そのものに当該体臭抑制剤を直接適用することは、この発明による方法の一実施例である。当該体臭抑制剤を生体に直接適用して体臭を抑制するには、例えば、水及び/又はアルコールを溶剤として含み、トレハロース及び/又はマルチトールを無水物換算で総量として、通常、約0.0001重量%乃至約20重量%、望ましくは、約0.001重量%乃至約5重量%含有する、液状、クリーム状、ペースト状等の適宜の状態の当該体臭抑制剤を、対象とする生体の全体、又は分泌物の発生が想定される適宜の部位に、適量を噴霧、塗布、清拭などすればよい。【0030】この発明による体臭の抑制方法は、生体と接触しうる物品に当該体臭抑制剤を含有せしめた後、当該体臭抑制剤を生体からの分泌物に接触させることによっても有利に実施できる。この発明の方法の対象となる物品としては、この発明の体臭抑制剤を含有せしめることのできる上記で例示した物品はいずれも有利に利用できる。上記例のような物品に当該体臭抑制剤を含有せしめた後、当該体臭抑制剤を生体からの分泌物に接触させるには、例えば、水及び/又はアルコールを溶剤として含み、トレハロース及び/又はマルチトールを無水物換算で総量として、通常、約0.0001重量%乃至約10重量%、望ましくは、約0.001%乃至約1%含有する、溶液やスプレー等の適宜の形態のものを、対象とする物品の全体又は適宜の部位に適量噴霧するか又は該溶液に対象を浸漬した後、必要に応じて該物品を乾燥させた後、該物品を通常どおりに利用すればよい。なお、当該体臭抑制剤を含有せしめた日用品、衣類、寝具などの物品や、当該体臭抑制剤を含む洗濯用品を用いて洗濯した日用品、衣類、寝具などの物品を通常どおりに利用すると、該物品ならびに該物品と接触する生体における体臭をよく抑制できるとともに、該物品に対する、日常的に発生し得る体臭以外の異臭、例えば、タバコ臭、焼き魚臭、焼き肉臭、ラーメン臭などによる汚染ないしは付着をもよく抑制できるという利点もある。【0031】さらに、本発明による体臭の抑制方法は、生体と接触しうる水に当該体臭抑制剤を含有せしめた後、当該体臭抑制剤を生体からの分泌物に接触させることによっても有利に実施できる。この発明でいう生体と接触しうる水とは、溶質を含むことのある生体と接触しうる水を意味し、具体的には、例えば、競泳用又は遊技用プールの水、浴場の浴湯、観賞動物又は愛玩動物等のための水浴槽の水、観賞用の魚介類のための水槽の水などが挙げられる。以上のような水に当該体臭抑制剤を含有せしめた後、当該体臭抑制剤を生体からの分泌物に接触させるには、例えば、該水に当該体臭抑制剤を、トレハロース及び/又はマルチトールを無水物換算で総量として、濃度が、通常、約0.00001重量%乃至約5重量%、望ましくは、約0.0001重量%乃至約1重量%含有せしめ、該水を利用すればよい。【0032】以上のようなこの発明による体臭の抑制方法を実施すると、対象とする物品ないしは水からの体臭ないしは体臭様の臭気の発生が抑制できるとともに、当該体臭抑制剤や、当該体臭抑制剤を含む物品ないしは水と接触した生体自体からの体臭、例えば、汗臭、脇臭、足臭、フケ臭、加齢臭、口臭等の抑制にも奏効することとなる。とりわけ、この発明の体臭抑制剤は、体臭成分である揮発性アルデヒド、詳細には、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナールをはじめとする飽和揮発性アルデヒドや、2−ノネナール、2−オクテナール、2−ヘキセナールをはじめとする不飽和揮発性アルデヒドなどの生成をよく抑制する。これらの揮発性アルデヒドのうち不飽和揮発性アルデヒドは加齢臭の主要な原因物質として知られていることから、この発明による方法は、加齢臭の抑制方法としても好適である。以上のようなこの発明による体臭の抑制方法は、ヒト又は動物の体臭の発生を抑制することが望まれる物品や水を扱う諸種の分野で有利に実施することができる。ヒトの体臭の抑制が望まれる物品を扱う分野としては、衣類・寝具等のクリーニング業、シーツ・布団等の寝具の賃貸業、ユニフォーム・礼服等の貸衣装業、タオル・おしぼり・足拭き用マット等の日用品の賃貸業、家庭用又は業務用の雑巾・モップなど清掃用品の賃貸業、おむつなどの介護用品取扱業などが挙げられる。ヒトの体臭の抑制が望まれる水を扱う分野としては、公衆浴場、温泉、ジャグジー風呂等の浴場設備のあるアスレチック・ジム、水泳用又は遊技用プールなどが挙げられる。ヒト以外の動物からの体臭を抑制することが望まれる物品又は水を扱う分野としては、金魚等の観賞用魚介類の養殖・販売業、動物のための水浴設備のある動物園、魚介類のための水槽設備のある水族館などが挙げられる。【0033】以下、実験に基づいてより詳細にこの発明を説明する。実験1乃至5においては、脂肪酸を加熱して体臭の主要な原因物質の一つとして知られる揮発性アルデヒドを生成させる体臭発生の加速試験系を設定し、該加速試験系への各種糖質の添加の影響を調べた。実験6においては、ヒトの体温条件下で脂肪酸を保持して揮発性アルデヒドを生成させる体臭発生の試験系を設定し、該試験系への各種糖質添加の影響を調べた。実験7乃至8においては、ボランティアを対象として、生体からの体臭発生に及ぼす各種糖質の影響を調べた。【0034】【実験1】〈加熱によるオレイン酸からの揮発性アルデヒドの生成に及ぼす糖質の影響〉脂肪酸としてオレイン酸100mg、セルロースパウダー500mg、及び0.12Mリン酸緩衝液(pH6.0)1.25mlを20ml容ガラスバイアル瓶に採取し、これに試験糖質として、含水結晶トレハロース、無水結晶マルチトール、無水結晶ソルビトール、無水結晶スクロース、含水結晶マルトース、又は含水結晶ネオトレハロース(実験1乃至6を通して、以下、それぞれ、単に「トレハロース」、「マルチトール」、「ソルビトール」、「スクロース」、「マルトース」、「ネオトレハロース」という。)のいずれか100mgを加え、ブチルゴム栓で密栓した。対照系として試験糖質を加えない点でのみ異なるバイアル瓶を準備した。これらのバイアル瓶を105℃で1時間加熱処理し、室温にまで放冷した後、バイアル瓶を80℃に予熱しておいたアルミニウム製ヒートブロック(以下、単に「ヒートブロック」という。)中で保持した。5分間保持後、各バイアルよりそれぞれヘッドスペースガス(以下、「HSG」と略記する。)2mlをガスシリンジで採取した。【0035】採取したHSGをガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と略記する。)により揮発性アルデヒド含量について分析した。GC装置は『ガスクロマトグラフGC−14A』(株式会社島津製作所製)、分析カラムは『キャピラリーカラムSPERUCO−WAX』(内径0.25mm×長さ60m、膜厚0.25μm、スペルコ株式会社製)を用いた。キャリアーガスとして流速1ml/minのヘリウムガスを用い、試料注入口温度を250℃とし、カラム恒温層温度は80℃で5分間保持後5℃/minの速度で240℃まで昇温した。検出は水素炎イオン化検出器で行った。標準試料として、揮発性アルデヒドのプロパナール、ブタナール及びヘキサナールを用いた。標準試料とHSG試料のガスクロマトグラムにおけるピーク面積に基づいて、HSG中の各揮発性アルデヒドの含量を算出した。【0036】また、HSGを採取した後の各試料を、体臭様の臭気の強弱について、熟練したパネラー6人による官能検査により調べた。パネラーに各バイアルからの臭気を直接嗅がせ、試験糖質を加えた試料におけるヒトの体臭様の臭気の強度を、対照系の臭気と比較して、同程度以上(+++)、やや弱い(++)、明らかに弱い(+)、臭気を感じない(−)の4段階で判定させた。全パネラーによる判定結果を総合して各試料を評価した。【0037】HSGのGC分析結果及び官能検査の結果をまとめ、表1に示した。【0038】【表1】【0039】 表1に示されるとおり、トレハロース又はマルチトールを共存させた系、とりわけ、トレハロースを共存させた系で、対照系に比べてオレイン酸の加熱によりHSG中に生成する揮発性アルデヒド量が総量として少なかった。個々の成分について見てみると、ヒト及び動物において特に主要な体臭成分の一つとされるヘキサナールの生成量も、トレハロースやマルチトールを共存させた系でとりわけ少なかった。また、官能検査の結果に見られるとおり、トレハロース共存系及びマルチトール共存系のいずれにおいても、他の系に比べて体臭様の臭気の発生が抑えられていた。【0040】【実験2】〈加熱によるリノール酸からの2−ノネナールの生成に及ぼす糖質の影響〉脂肪酸としてリノール酸を用い、標準物質として揮発性アルデヒドの2−ノネナールを用いた以外は実験1と同様の方法で操作し、HSG中の2−ノネナール含量をGCにより測定した。また、各試料を、体臭様臭気の強度について、特に加齢臭の観点から、実験1に準じて官能検査により評価した。【0041】HSGのGC分析結果及び官能検査の結果をまとめ、表2に示した。【0042】【表2】【0043】 表2に示されるとおり、トレハロース又はマルチトールを共存させた系、とりわけ、トレハロースを共存させた系で、対照系に比べて、リノール酸の加熱によりHSG中に生じる2−ノネナール量が顕著に少なかった。また、官能検査の結果に見られるとおり、トレハロース共存系及びマルチトール共存系のいずれにおいても、他の系に比べて加齢臭を含む体臭様の臭気の発生が抑えられていた。【0044】【実験3】〈加熱による9−ヘキサデセン酸からの2−ノネナールの生成に及ぼす糖質の影響〉脂肪酸として9−ヘキサデセン酸(パルミトオレイン酸)を用い、標準物質として揮発性アルデヒドの2−ノネナールを用いた以外は実験1と同様の方法で操作し、HSG中の2−ノネナール含量をGCにより測定した。また、各試料を、体臭様臭気の強度について、特に加齢臭の観点から、実験1に準じて官能検査により評価した。【0045】HSGのGC分析結果及び官能検査の結果をまとめ、表3に示した。【0046】【表3】【0047】 表3に示されるとおり、トレハロース又はマルチトールを共存させた系、とりわけ、トレハロースを共存させた系で、対照系に比べて、9−ヘキサデセン酸の加熱によりHSG中に生じる2−ノネナール量が顕著に少なかった。また、官能検査の結果に見られるとおり、トレハロース共存系及びマルチトール共存系のいずれにおいても、他の系に比べて加齢臭を含む体臭様の臭気の発生が抑えられていた。【0048】【実験4】〈2−ノネナールの揮散に及ぼす糖質の影響〉2−ノネナール10mg、セルロースパウダー500mg、及び0.12Mリン酸緩衝液(pH6.0)1.25mlを20ml容ガラスバイアル瓶に採取し、これに試験糖質として、トレハロース、マルチトール、スクロースのいずれか100mgを加え、ブチルゴム栓で密栓した。対照系として試験糖質を加えない点でのみ異なるバイアル瓶を準備した。これらのバイアル瓶を80℃に予熱しておいたヒートブロック中で保持した。5分間保持後、各バイアル瓶よりHSG2mlをガスシリンジで採取した。採取したHSG中の2−ノネナール含量を実験2に準じてGCにより測定した。結果を表4に示す。【0049】【表4】【0050】表4に示されるとおり、いずれの試験糖質共存系も、HSG中の2−ノネナール含量は対照系と同程度であった。この結果より、実験2及び3で確認された、リノール酸又は9−ヘキサデセン酸からの2−ノネナールの生成に対するトレハロース及びマルチトールの抑制効果は、これらの糖質による2−ノネナールの揮散抑制によるものではなく、2−ノネナールの生成そのものの抑制によると考えられる。【0051】【実験5】〈加熱による脂肪酸の分解に及ぼす糖質の影響〉脂肪酸としてリノール酸又は9−ヘキサデセン酸100mg、セルロースパウダー500mg、及び0.12Mリン酸緩衝液(pH6.0)1.25mlを20ml容ガラスバイアル瓶に採取し、これに試験糖質として、トレハロース、マルチトール又はスクロースのいずれか100mgを加え、ブチルゴム栓で密栓した(試験系)。対照系として、試験糖質を加えない点でのみ異なるバイアル瓶を準備した。これらのバイアル瓶を105℃で1時間加熱処理した。また、以上と同じ組成の混合物を含む一方、加熱処理を施さない点でのみ異なるバイアル瓶を準備した(未加熱処理)。【0052】上記の、未加熱処理及び加熱処理後の試験系ならびに対照系を、以下のとおり、メチルエステル化反応に供した後GCにより分析し、それぞれの脂肪酸含量を求めた。すなわち、先ず、上記のバイアル瓶それぞれに、クロロホルム・メタノール混液(体積比2:1)20mlを加えて脂肪酸を抽出し、抽出液の1mlを10ml容ナス型フラスコに採取し、減圧下、濃縮乾固した。該フラスコに、1本あたり、内部標準物質としてのトリコサノイン酸を濃度30mg/mlで含むメタノール溶液1mlを加えて乾固物を溶解した後、再度、減圧下、濃縮乾固した。さらに、該フラスコ1本あたり、三フッ化ホウ素メタノール溶液1mlを加えた後、これを密閉条件下で沸騰水浴中で5分間保持して、脂肪酸のメチルエステル化反応に供した。反応産物を冷却し、該フラスコ1本あたり1mlの脱イオン水を加えて、残存する未反応の三フッ化ホウ素を分解した。さらにこれに1mlのn−ヘキサンを加え、生成した脂肪酸のメチルエステル化物をn−ヘキサン層に抽出した。【0053】上記の抽出処理後のn−ヘキサン層それぞれ2μlをGCにより分析した。GC装置は、『ガスクロマトグラフGC−14A』(株式会社島津製作所)、分析カラムは『キャピラリーカラムFFAP』(内径0.25mm×長さ30m、膜圧0.25μm;ジーエルサイエンス株式会社製)を用いた。キャリアーガスとして流速1ml/minのヘリウムガスを用い、試料注入口温度を250℃とし、カラム恒温層温度は80℃で5分間保持後5℃/minの速度で240℃まで昇温した。検出は水素炎イオン化検出器で行った。得られたガスクロマトグラムのピーク面積に基づいて、各試験系ならびに対照系における、未加熱処理及び加熱処理後の脂肪酸(リノール酸又は9−ヘキサデセン酸)の含量を求めた。【0054】GC分析により得た測定値を下記数1に示す数式に代入し、各系の加熱処理による脂肪酸の分解率を算出した。結果を表5にまとめた。【0055】【数1】【0056】【表5】【0057】表5に示されるとおり、加熱処理による脂肪酸の分解は、スクロース共存系においては対照系と同等であったのに対し、トレハロース又はマルチトールを共存させた系、とりわけ、トレハロースを共存させた系においては、対照系に比べて顕著に抑制されていた。この結果より、トレハロースならびにマルチトールが脂肪酸の分解をよく抑制することが判明し、トレハロースならびにマルチトールには、体臭成分である揮発性アルデヒドの生成そのものを効果的に抑制する作用があることが裏づけられた。【0058】【実験6】〈ヒトの体温下での9−ヘキサデセン酸からの2−ノネナール生成に及ぼす糖質の影響〉脂肪酸として9−ヘキサデセン酸100mg、セルロースパウダー500mg、及び0.12Mリン酸緩衝液(pH6.0)1.25mlを20ml容ガラスバイアル瓶に採取し、これに試験糖質としてトレハロース、マルチトール、スクロースのいずれか100mgを加え、ブチルゴム栓で密栓した(試験系)。対照系として、試験糖質を加えない点でのみ異なるバイアル瓶を準備した。試験系及び対照系ともに、同じ組成のものをそれぞれ2組ずつ準備した。【0059】上記のバイアル瓶を、37℃の恒温層内で、蛍光灯による9000ルクスの照度条件下に放置した。2組の同じ組成物を含むバイアル瓶の一方は放置3日目に、残る一方は放置7日目に、80℃に予熱したヒートブロックに移し、5分間保持した後、実験2と同様にしてHSG中の2−ノネナール含量をGCにより分析した。また、HSG採取後のバイアル瓶からの臭気を、実験2に準じて官能検査により評価した。【0060】HSGのGC分析結果及び官能検査の結果をまとめ、表6に示した。【0061】【表6】【0062】表6に示されるとおり、37℃における9−ヘキサデセン酸からの2−ノネナールの生成は、スクロース共存系では対照系と大差がなかったのに対して、トレハロース又はマルチトールを共存させた系、とりわけ、トレハロースを共存させた系においては、対照系に比べて顕著に抑制されていた。このことから、トレハロースならびにマルチトールは、ヒト及び動物の生体の表面ないしはその近傍に存在する生体からの分泌物に接触させた場合にも、体臭成分の生成を顕著に抑制し、体臭の発生の抑制に有効であることが確認された。【0063】【実験7】〈ボランティア試験〉健康な男性のボランティア(年齢57歳)1名に以下のスケジュールでトレハロースを塗布し、その生体からの体臭の発生に及ぼす該糖質の影響を調べた。先ず、試験開始日の午前10時半に、2重量%トレハロース水溶液(5分間煮沸後放冷し、約40℃としたもの)に浸漬し、かるく絞ったタオルで全身を拭くことにより体表面にトレハロースを塗布し、自然乾燥させた後、ボランティアに通常どおり生活させた。その後、午後9時に通常どおりボランティアに入浴させ、頭髪を含め全身を十分に洗浄させた。入浴直後、上記と同様にしてトレハロースを体表面に塗布した。体表面を自然乾燥させた後、通常の洗剤で洗濯した木綿製の半袖肌着を着用させ、以降、普段どおり生活させた(試験系)。試験開始の翌日の午後5時半に、ボランティアより肌着を回収し、肌着における揮発性アルデヒドの有無及び量を下記の手順で分析した。対照として、日を改めて、トレハロース水溶液に代えて水を用いたこと以外は試験系にしたがって、試験系の場合と同様の肌着を着用させた上でボランティアに通常どおり生活させ、肌着を回収して同じく下記の手順で分析した。【0064】図1に模式的に示すように、着用後の肌着5は、それぞれ回収した直後に、密閉容器1に封入し、密閉容器1の中の気体を配管2を介してエアポンプ3により室温下(約20℃)で揮発性アルデヒド捕集カートリッジ4(商品名『Supelclean LpDNPHカートリッジ』、製品番号LpDNPH S10L、スペルコ株式会社販売)に送り込むとともに配管2により再度密閉容器に戻して気体を1時間循環させることにより、着用後の肌着5に含まれる揮発性アルデヒドをDNPH(ジニトロフェニルヒドラジン)誘導体として該カートリッジに捕集した。その後、該カートリッジを取り外し、これに2mlのアセトニトリルを通液し、該カートリッジからの溶出液を回収した。回収した溶出液は下記のとおりGCにより分析した。【0065】GC装置は『ガスクロマトグラフGC−14B』(株式会社島津製作所製)、分析カラムは『TC−Waxキャピラリーカラム』(内径0.53mm×長さ25m、膜圧0.5μm;ジーエルサイエンス株式会社製)を用いた。キャリアーガスとして流速1ml/minのヘリウムガスを用い、試料注入口温度を240℃とし、カラム恒温層温度は50℃で5分間保持後5℃/minの速度で200℃まで昇温した。試料注入口への分析試料の注入量は2μlとし、試料注入口におけるキャリアガスの流量を常法により制御して、注入した試料の1/30量を分析カラムに通して分析した(split 1:30)。検出は水素炎イオン化検出器で行った。標準試料として2−ノネナール、2−オクテナール、ヘキサナール及びノナナールそれぞれのDNPH誘導体を用い、ここに示した条件で別途GC分析した。以上の分析の結果得られたガスクロマトグラムに基づいて、試験系ならびに対照系の肌着から捕集された2−ノネナール、2−オクテナール、ヘキサナール及びノナナールそれぞれの量(μg)を求めた。結果を表7にまとめた。【0066】【表7】【0067】表7に示されるとおり、ボランティアに、トレハロースを体表面に塗布しない状態で着用させた肌着(対照系)においては分析対象とした体臭成分である4種の揮発性アルデヒドはいずれも検出された。これに対し、トレハロースを体表面に塗布した後に着用させた肌着(試験系)においては、加齢臭の主要な原因物質である2−ノネナールが約53%にまで減少し、2−オクテナールは検出されないレベルにまで減少し、また、その他の体臭成分のヘキサナールおよびノナナールも検出されないレベルにまで減少していることが確認された。以上の結果は、トレハロースが、直接体表面に接触させると加齢臭をはじめとする体臭の発生をよく抑制することを示している。なお、トレハロースに代えてマルチトールを用いて本実験と同様の実験を行ったところ、マルチトールも同様に体臭の発生をよく抑制することが確認された。【0068】【実験8】〈ボランティア試験〉実験7に準じたボランティア試験を、トレハロースによる加齢臭の発生抑制に特に焦点をあてて、対象者数を拡大して以下のとおり実施した。ボランティアとして、年齢48歳から75歳までの健康な男性16名を採用した。試験期間中にボランティアに着用させる肌着として、同一の品質の木綿製半袖肌着を購入し、水のみで2回洗濯・乾燥を繰り返したものを準備した。試験期間中に使用させるタオル及びガーゼも同一の品質のものを購入し、水のみで2回洗濯・乾燥を繰り返して準備した。試験開始日を第0日と表示し、その2日前(第−2日)から試験終了までの間、ボランティアが日常的にデオドラント製品・入浴剤等の体臭ケア用品を使用している場合にはその使用を停止させた。【0069】第0日、午後10時頃までに、通常どおり各ボランティアに入浴させ、頭髪を含め全身を十分に洗浄させた。入浴後、体表面の水滴をタオルで拭き取らせ、準備しておいた肌着を着用させ、以後通常通り生活させた。【0070】第1日、午後5時頃に、各ボランティアより着用後の肌着を回収し、これを対照系の肌着として下記の分析に供した。【0071】第1日、午後10時頃までに第0日と同様に各ボランティアに入浴させた。入浴直後、体表面の水滴をタオルで拭き取らせ、予め準備し、配布しておいた2重量%のトレハロース水溶液を噴霧容器を用いて上半身全体に亙って噴霧させた後、同トレハロース水溶液に浸漬しておいたガーゼで上半身全体を軽くたたくようにして同トレハロース水溶液を一様に延展させた。この噴霧・延展の操作を数回繰り返させて、自然乾燥させることにより、ボランティアの上半身の体表面にトレハロースを塗布した。その後、準備しておいた新たな肌着を着用させ、以後通常通り生活させた。【0072】第2日、午後10時頃までに第0日と同様に各ボランティアに入浴させた。入浴直後、第1日と同様にトレハロースをボランティアの上半身に塗布し、その後、準備しておいた新たな肌着を着用させて、以後通常通り生活させた。【0073】第3日、午後5時頃に各ボランティアより着用後の肌着を回収し、これを試験系の肌着として下記の分析に供した。【0074】ボランティアより回収した対照系及び試験系の肌着は、回収後速やかに、実験7に記載の方法にしたがって処理し、該肌着より揮発性アルデヒドをDNPH誘導体としてカラムに捕集した。カラムに捕集したDNPH誘導体は、実験7に記載の方法にしたがってGC分析に供した。標準試料として2−ノネナール、2−オクテナール、2−ヘキセナールそれぞれのDNPH誘導体を用い、同じ条件で別途GC分析した。以上の分析の結果得られたガスクロマトグラムに基づいて、試験系ならびに対照系の肌着から捕集された2−ノネナール、2−オクテナール、2−ヘキセナールそれぞれの量(μg)を求めた。全ボランティアから得られた個々のデータを表8に示した。【0075】【表8】【0076】表8に示す対照系のデータに見られるとおり、加齢臭の原因物質として知られる2−ノネナール、2−オクテナール及び2−ヘキセナールは、56歳以上のボランティアの肌着において特に顕著に認められた。一方、試験系のデータに見られるとおり、ボランティアごとに個人差はあるものの、これらの加齢臭の原因物質の生成は、体表面へのトレハロースの塗布により顕著に抑制された。トレハロースによる加齢臭の発生に対する抑制効果を対象者の年代ごとに評価するために、上記で得たデータを、ボランティアの年齢により54歳以下(8名)と56歳以上(8名)の2群に分けて、ウィルコクソン(Wilcoxon)検定により統計学的に処理した。結果を表9に示した。【0077】【表9】【0078】表9に示すとおり、トレハロースは、加齢臭の原因物質の生成がより顕著となる年齢層(本実験においては56歳以上)を対象としたとき、より顕著にその生成を抑制した。本実験による以上の結果は、トレハロースによる加齢臭の生成抑制効果は、加齢臭の発生が顕著となる高齢者層を対象としたときに特に著効を発揮することを意味している。【0079】以下、実施例に基づいてこの発明をより詳細に説明するけれども、この発明はこれら実施例に限定されるものではない。【0080】【実施例1】〈体臭抑制剤〉イソプロパノール68重量部に、精製水30重量部、含水結晶トレハロース粉末(商品名『化粧品用トレハロース』、株式会社林原商事販売。以下、実施例をとおして、単に「トレハロース」という。)0.9重量部、無水結晶マルチトール粉末(登録商標『粉末マビット』、株式会社林原商事販売。以下、実施例をとおして、単に「マルチトール」という。)0.9重量部、安息香酸0.2重量部及び適量の香料を加え、溶解させた。100ml容スプレー缶1本あたり、この溶液40mlと噴射剤としての液化炭酸ガス60mlとを充填して、スプレーとしてのこの発明の体臭抑制剤を得た。【0081】本品は、ヒトならびに動物の生体の、体臭発生が懸念される部位に直接噴霧したり、生体と接触して利用される物品、例えば、衣類や日用品などに噴霧することにより、該生体や該物品からの体臭の発生を効果的に抑制することができる。【0082】【実施例2】〈体臭抑制剤〉65%(v/v)エチルアルコール水98重量部、トレハロース2重量部、マルチトール0.2重量部と、適量の香料を混合・溶解した。この溶液を、100ml容手押し式噴霧器に充填し、スプレーとしてのこの発明の体臭抑制剤を得た。【0083】本品は、ヒトならびに動物の生体の、体臭発生が懸念される部位に直接噴霧したり、生体と接触して利用される物品、例えば、衣類や日用品などに噴霧することにより、該生体や該物品からの体臭の発生を効果的に抑制することができる。また、本品は、このように体臭抑制効果を発揮する上芳香剤が配合されているので、良好な芳香が安定して持続する芳香剤としても有利に利用できる。【0084】【実施例3】 〈体臭抑制剤〉 トレハロース2重量部、エタノール65重量部、及び感光素201号0.005重量部を精製水に溶解して全量を100重量部とした。この溶液を、100ml容手押し式噴霧器に充填し、スプレーとしてのこの発明の体臭抑制剤を得た。【0085】本品は、ヒトならびに動物の生体の、体臭発生が懸念される部位に直接噴霧したり、生体と接触して利用される物品、例えば、衣類や日用品などに噴霧することにより、該生体や該物品からの体臭の発生を効果的に抑制することができる。また、本品は、メラニン生成抑制作用やにきびに対する治癒作用を有する感光素201号を配合していることから、皮膚の清浄・健康を保つ機能をも併せもっている。【0086】【実施例4】〈体臭抑制剤〉トレハロース2重量部、エタノール65重量部、塩化ベンザルコニウム0.2重量部、カミツレエキス0.04重量部、及び酢酸dl−α−トコフェロール0.2重量部を精製水に溶解して全量を100重量部として、溶液状のこの発明の体臭抑制剤を得た。【0087】本品を、ヒトの体臭発生が懸念される部位に直接塗布したり、織布や不織布などの適宜の物品に本品を含浸させた上で、該物品で生体表面、頭皮、頭髪などの適宜の部位を清拭するなどして利用すると、該部位からの体臭の発生がよく抑制される。また、本品は、抗炎症作用や抗菌作用を発揮することから、皮膚の健康を保つ機能をも併せ持っている。【0088】【実施例5】〈体臭抑制剤〉トレハロース2.0重量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.1重量部、セージエキス1.0重量部、クエン酸ナトリウム0.2重量部、パラオキシ安息香酸メチル0.05重量部に精製水を加えて全量を100重量部とし、溶解させて、溶液状のこの発明の体臭抑制剤を得た。【0089】本品を、ヒトの体臭発生が懸念される部位に塗布して利用すると、該部位からの体臭の発生がよく抑制される。また、本品は、抗炎症作用や抗菌作用を発揮することから、皮膚の健康を保つ機能をも併せ持っている。【0090】【実施例6】〈体臭抑制剤〉乾燥硫酸ナトリウム60重量部、炭酸水素ナトリウム30重量部、トレハロース5重量部、マルチトール4.5重量部、シトラス系調合香料1重量部、及び青色2号0.5重量部を均一に混合して、粉末のこの発明の体臭抑制剤を得た。【0091】本品は、浴湯100lあたり約20gの割合で添加し、溶解させて利用する。本品は、浴湯にヒトが入浴した後に、浴湯中への生体からの分泌物質に起因する浴湯における体臭の発生をよく抑制する。また、本品を含む浴湯は、これに入浴した後のヒトの生体からの体臭の発生の抑制にも奏効する。さらに本品は、ヒトのみならず、愛玩動物などの動物の体臭を抑制するための体臭抑制剤としても有利に利用できる。【0092】【実施例7】〈育毛剤〉トレハロース0.03重量部、感光素301号0.005重量部、ルチングルコシド0.01重量部、無水エタノール45重量部を精製水に溶解して全量を100重量部とした。この溶液を、100ml容の容器に充填して、この発明の体臭抑制剤を含む育毛剤を得た。【0093】 本品は、感光素301号及びルチングルコシドによる育毛作用を発揮する。また、感光素にはフケ発生軽減作用がある上、本発明の体臭抑制剤であるトレハロースを配合しているので、本品は、フケ臭を含む頭皮からの体臭の発生を抑制する効果をも顕著に発揮する。したがって本品は頭皮・頭髪の清浄・健康を保つ育毛剤である。【0094】【実施例8】〈ウェット・ティッシュ〉トレハロース0.5重量部、マルチトール0.5重量部及びコハク酸0.4重量部、α−グルコシル・ヘスペリジン(商品名『αGヘスペリジン』、東洋精糖株式会社製造)0.2重量部を、グリセリン0.4重量部と精製水98重量部からなる混液に溶解させて、この発明の体臭抑制剤を得た。この体臭抑制剤の適量を銅アンモニアセルロース繊維の不織布に含浸させてウェット・ティッシュを得た。【0095】本品は、通常のウェット・ティッシュと同様に利用できる上、ヒト又は動物の皮膚に適用するとその箇所からの体臭の発生が抑制されるので、体臭抑制用の生活用品としても有利に利用できる。【0096】【実施例9】〈糊付け剤〉10重量%ヒドロキシプロピル化澱粉、3重量%ポリエチレングリコール、1重量%トレハロース、1重量%シリコンエマルジョン、及び10重量%イソプロピルアルコールを含む水溶液を調製し、この発明の体臭抑制剤を含む糊付け剤を得た。【0097】本品は、水で2倍程度に希釈して、ワイシャツ・浴衣などの衣類やシーツなどの寝具の糊付けに利用する。本品は、物品に糊付けされた後、ヒト又は動物の生体と接触して利用されると、その利用中に、又は、利用された後に、該生体からの分泌物に起因する該物品における体臭の発生を抑制する。また、本品で糊付けされた物品は、それを利用した生体からの体臭の発生の抑制に奏効する。【0098】【実施例10】〈柔軟剤〉常法により、メチルジエタノールアミンと脂肪酸メチルエステル(炭素鎖長18)でエステル交換反応を行い、エステル交換率約95%の反応産物を得た。この反応産物における3級アミンを、常法により、メチルクロライドを用いて50%4級化して、柔軟化基剤を得た。該柔軟化基剤のヨウ素価は約62であった。【0099】上記の柔軟化基剤30重量部、ヘキシレングリコール20重量部、水30重量部、トレハロース10重量部、マルチトール10重量部を十分に混合・乳化して、この発明の体臭抑制剤を含む柔軟剤を得た。【0100】本品は、洗濯用の通常の柔軟剤と同様にして、物品の洗濯時又は洗濯後に利用する。本品で処理された物品は、ヒト又は動物の生体と接触して利用されると、その利用中に、又は、利用された後に、該生体からの分泌物に起因する該物品における体臭の発生を抑制する。また、本品で処理された物品は、それを利用した生体からの体臭の発生の抑制に奏効する。【0101】【実施例11】〈マウス・ウォッシュ〉エタノール20重量部、トレハロース4重量部、マルチトール2重量部、ソルビトール4重量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.1重量部、ラウロイルサルコシンナトリウム0.2重量部、サッカリンナトリウム0.08重量部、トリメチルグリシン0.1重量部、及び適量の香料に精製水を加えて全量を100重量部とし、十分に混合・溶解させて、この発明の体臭抑制剤を含むマウス・ウォッシュを得た。【0102】本品は、通常のマウス・ウォッシュと同様にして利用すると、口臭の発生の抑制に奏効する上、口腔内に清涼感が与えられる。【0103】【実施例12】〈魚類用餌〉魚粉67重量部、小麦粉28重量部、トレハロース1重量部、マルチトール1重量部、乾燥ビール酵母0.5重量部、イノシトール0.36重量部、酢酸dl−α−トコフェロール0.04重量部、1重量%β−カロチン水溶液0.05重量部、乳酸カルシウム1重量部、リン酸二水素一カリウム0.6重量部、硫酸マグネシウム7水和物0.3重量部、食塩0.1重量部、1重量%L−アスコルビン酸−2−グルコシド0.05重量部を均一になるまで混合した。この混合物に水8重量部を添加し、均一になるまでさらに混合した。この混合物を常法により造粒し、1粒あたり約100mgの魚類用餌を得た。【0104】本品は、観賞魚等の魚類のための通常の餌と同様にして、水槽に適量を投入して利用する。本品は魚類用の餌として有用であるのみならず、魚類からの分泌物に起因する、水槽の水における魚類の体臭の発生の抑制に奏効する。また、本品においては、その使用時又は保管時に、それ自体に含まれる芳香族化合物や脂肪族化合物の酸化により生じる魚臭様の異臭の発生がよく抑制されている。【0105】【実施例13】〈体臭の抑制方法〉常法により洗濯し、脱水したワイシャツを、実施例9による糊付け剤を水で2倍希釈した水溶液に浸漬した後、常法によりプレスして糊付けした。対照として、同様にして洗濯、脱水した別のワイシャツを、トレハロースを含まない点でのみ異なる糊付け剤を用いて糊付けした。【0106】本実施例によるワイシャツと、対照のワイシャツを、それぞれ日を変えて同じヒトに着用させた。本実施例によるワイシャツにおいては、着用時及び着用後の体臭の発生がよく抑制されていた。また、対照のワイシャツを着用した場合に比べて、本実施例によるワイシャツを着用した場合、該ワイシャツの着用時及び着用後の生体からの体臭の発生も弱いものであった。【0107】このような効果を発揮する本実施例による方法は、ワイシャツに限らず、ヒト及び動物のための衣類一般、寝具一般、日用品一般のクリーニング業や以上のような製品の賃貸業において有利に実施できる。【0108】【実施例14】〈体臭の抑制方法〉使用後のおしぼりを常法により洗濯した後、0.2重量%トレハロース、0.2重量%マルチトール、及び250ppm次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液で濯ぎ、脱水した。対照として、同様に洗濯したおしぼりを、トレハロース及びマルチトールを含まない点でのみ異なる水溶液で濯ぎ、脱水した。【0109】本実施例によるおしぼりと、対照のおしぼりを、日を変えて同じヒトに使用させた。使用後、両おしぼりを放置したところ、本実施例によるおしぼりにおける体臭様の臭気の発生はよく抑制されていた。また、対照のおしぼりを使用した場合に比べて、本実施例によるおしぼりを使用した場合の生体からの体臭の発生も弱いものであった。なお、使用前のムレ臭に関しても、本実施例によるおしぼりは、対照のおしぼりに比べて明らかに低いものであった。このことは、トレハロース及びマルチトールには、体臭のみならず、繊維自身又は洗剤などに起因する異臭に対しても抑制効果があることを示唆している。【0110】このような効果を発揮する本実施例による方法は、おしぼりに限らず、飲食品店、理容院・美容院、サウナなどへのタオルや足拭き用マット等の日用品の賃貸業において有利に実施できる。【0111】【実施例15】〈体臭の抑制方法〉浴場の浴湯に、実施例6による体臭抑制剤を、トレハロース濃度が0.01重量%程度になるように添加し、溶解させた。【0112】上記の浴湯にヒトを入浴させたところ、入浴済の該浴湯における体臭様の臭気の発生がよく抑制されていた。また、通常の浴湯に入浴した場合に比べて、本実施例による浴湯に入浴したヒトの、入浴後の生体からの体臭の発生も弱いものであった。【0113】このような効果を発揮する本実施例による方法は、公衆浴場、温泉、浴場設備のあるアスレチック・ジム等において有利に実施できる。【0114】【発明の効果】以上説明したとおり、この発明は、トレハロースならびにマルチトールが、ヒトならびに哺乳類・鳥類・魚介類を含むヒト以外の動物の体臭を、その発生の段階で効果的に抑制するという独自の知見に基づくものである。この発明で用いるトレハロース及び/又はマルチトールは、皮膚への適用の安全性が確認されている物質であるので、この発明による体臭抑制剤、当該体臭抑制剤を用いる体臭抑制方法ならびに、当該体臭抑制剤を含有せしめた物品は、皮膚の健康に別段配慮することなく、ヒトならびに動物に由来する体臭の抑制が望まれる諸種の分野で有利に利用できる。【0115】この発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な意義のある発明である。【図面の簡単な説明】【図1】ボランティアに着用させた肌着に含まれる揮発性アルデヒドを捕集する様子を示す模式図である。矢印(→)は気体の流れを表している。【符号の説明】1 密閉容器2 配管3 エアポンプ4 揮発性アルデヒド捕集カートリッジ5 着用後の肌着 トレハロース及び/又はマルチトールを有効成分として含んでなる体臭抑制剤。 マルトオリゴ糖、環状糖質、中性多糖、保湿剤、抗菌剤、静菌剤、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線遮蔽剤、紫外線吸収剤、制汗剤、ビタミン類、植物抽出物、感光素、乳化剤、界面活性剤、感触向上剤、増粘剤、粉体原料、清涼化剤から選ばれる1種又は2種以上をさらに含んでなる請求項1に記載の体臭抑制剤。 体臭抑制が、体臭成分2−ノネナール、2−オクテナール及び2−ヘキセナールから選ばれる1種又は2種以上の生成を抑制することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の体臭抑制剤。 液体状、固体状、半固体状又はゲル状の状態にある請求項1、2又は3のいずれかに記載の体臭抑制剤。 請求項1乃至4のいずれかに記載の体臭抑制剤を含有せしめた衣類。 請求項1乃至4のいずれかに記載の体臭抑制剤を生体からの分泌物に接触させることを特徴とする体臭の抑制方法。 体臭抑制剤を衣類に含有せしめた後、生体からの分泌物に接触させることを特徴とする請求項6記載の体臭の抑制方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る