| タイトル: | 特許公報(B2)_鉄鉱石粉の評価方法 |
| 出願番号: | 2000249712 |
| 年次: | 2010 |
| IPC分類: | G01N 33/24,C22B 1/16 |
細谷 陽三 岡崎 潤 樋口 謙一 JP 4422307 特許公報(B2) 20091211 2000249712 20000821 鉄鉱石粉の評価方法 新日本製鐵株式会社 000006655 水野 勝文 100087398 秋沢 政光 100057922 細谷 陽三 岡崎 潤 樋口 謙一 20100224 G01N 33/24 20060101AFI20100204BHJP C22B 1/16 20060101ALI20100204BHJP JPG01N33/24 AC22B1/16 Q G01N 33/24 C22B 1/16 鉄と鋼,1992年,Vol. 78 No. 7,1013-1020 鉄と鋼,1992年,Vol. 78 No. 7,1021-1028 4 2002062290 20020228 8 20060919 赤坂 祐樹 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、高炉原料用の焼結鉱の評価方法に関し、特に成品歩留や焼結鉱品質などに大きな影響を与える鉄鉱石粉の融液浸透能の評価方法に関するものである。【0002】【従来の技術】一般に、高炉用原料である焼結鉱は、鉄鉱石粉や篩下粉、副原料(石灰石、蛇紋岩など)、粉コークス、無煙炭、返鉱などを配合し、これらの原料を事前に一次ミキサー、二次ミキサーで混合、造粒して焼結原料を粒径1mm以上の核粒子の周りに粒径1mm未満の微粉が付着(以下付着粉部とする)した構造の擬似粒子とした後、焼結原料を焼結機に装入し、焼結ベッド表層の粉コークスなどの燃料に点火した後に下向きに通風しながら燃料を燃焼させて焼結原料を焼成し製造している。焼結原料の焼成過程では、焼結原料は燃料の燃焼熱で最高1300℃前後まで昇温されるが、一般に、温度が1100〜1200℃を越えると焼結原料の擬似粒子の付着粉部から初期融液が生成し始め、さらに温度が上昇するにつれて初期融液が焼結原料の中に浸透して行き、それらを溶かし込んでより多くの融液を生成して焼結鉱の結合相を形成する。この結合相の量やその拡がり程度、接合の仕方は、焼結鉱の冷間強度などの品質や成品歩留に大きな影響を与える。この焼結原料の中で、焼結鉱の成品歩留や焼結鉱品質に最も大きな影響を与えるのが鉄鉱石粉である。焼結原料で形成される擬似粒子の付着粉部から生成した初期融液が付着粉部の鉄鉱石などへ浸透して焼結鉱の結合相を形成する場合に、初期融液の浸透は「融液の拡がり」を表しており、浸透性の良好な鉱石ほど均一に拡がった結合相を造り易く、焼結鉱製造時の成品歩留や焼結鉱強度を向上させる。【0003】これまでに、主要な焼結原料である鉄鉱石粉の評価方法としていくつか提案されてきた。例えば、粒径3〜5mmの鉱石粒子に試薬である粒径10μm以下のCaO粉末を付着させた擬似粒子または5mm角に切り出した鉱石をCaOタブレットに置いた試料を電気炉で焼成することにより、鉄鉱石粉と石灰石の同化反応を評価する方法を本発明者らは既に提案している(鉄と鋼,78(1992)7,p.1013)。しかしながら、この方法は脈石成分や結晶水含有量の異なる各銘柄の鉄鉱石粉と副原料の一つである石灰石との同化反応挙動を相対的に評価するもので、成品歩留や焼結鉱強度などの品質に大きな影響を与える焼結鉱の結合相の量や拡がり程度、接合の仕方の指標となる鉄鉱石粉への融液の浸透性を評価する方法ではない。【0004】また、発明者らは、結晶水含有量が多いピソライト鉱石を対象として、焼結反応においてその表面に保護層を形成する際の保護層厚の適正化を目的に、擬似粒子の保護層(0.5mm以下の鉄鉱石、石灰石及び蛇紋岩の混合粉あるいは蛇紋岩粉)に相当するタブレット(直径15mm×高さ5mm、水銀圧入法開気孔率:30%)の上に、カルシウムフェライト(CF)系融液の組成に調合した試薬タブレット(直径8mm×高さ5mm)を載せて電気炉内で大気雰囲気中で加熱し、冷却後に試料の中央部を切断、研磨して融液の保護層への浸透深さを測定する方法も提案している(鉄と鋼,78(1992)7,p.1021)。しかしながら、この評価方法は、擬似粒子内の同化反応の抑制効果が大きい成分組成の保護層の浸透深さを測定し、保護層の融液浸入を抑制する割合を評価する方法であり、焼結鉱の結合相の量や拡がり程度、接合の仕方の指標となる鉄鉱石粉への融液の浸透性を評価する方法ではない。【0005】以上のように、従来の製鉄用鉄鉱石粉の評価方法は、焼結用の鉄鉱石の同化反応に影響を与える脈石成分や結晶水、気孔率等などから各種銘柄の鉄鉱石の同化反応性を評価するものであり、焼結鉱の成品歩留や冷間強度などの焼結鉱の品質に大きな影響を与える結合相の量や拡がり程度、接合の仕方の指標となる鉄鉱石粉への融液浸透性を評価する方法はなかった。したがって、高炉の燃料比を低減し、出銑比を大幅に向上させる効果が期待される高い強度の焼結鉱を高歩留で製造するために、焼結鉱の成品歩留や冷間強度などの品質に大きな影響を与える結合相の量や拡がり程度、接合の仕方の指標となる鉄鉱石粉への融液浸透性(鉄鉱石粉の融液浸透能)を相対的に評価できる方法の確立が望まれていた。【0006】【発明が解決しようとする課題】上記従来技術の問題点に鑑みて、本発明は、高炉の燃料比低減および出銑比の大幅な向上を可能とする高品質の焼結鉱を高歩留で製造するために、焼結鉱の冷間強度などの品質や成品歩留に大きな影響を与える焼結鉱中の結合相の量や拡がり程度、接合の仕方の指標となる鉄鉱石粉への融液浸透性を相対的に評価できる方法を提供するものである。【0007】【課題を解決するための手段】 本発明は、上記の課題を解決するものであり、以下の(1)〜(4)の通りである。【0008】(1)成型された鉄鉱石粉の上に成型されたカルシウムフェライト系物質およびシリケートスラグ系物質の内の1種または2種からなる低融点物質を載せた後、大気中または低酸素雰囲気下で1000℃以上に昇温して前記低融点物質を溶融させ、その溶融した融液が鉄鉱石粉中に浸透した距離、断面積および体積の内の1種または2種以上を測定することにより、鉄鉱石粉への融液の浸透性を評価することを特徴とする鉄鉱石粉の評価方法。【0010】(2)前記のカルシウムフェライト系物質がCaO−Fe2O3、CaO−2Fe2O3の内の1種または2種からなることを特徴とする前記(1)の鉄鉱石粉の評価方法。【0011】(3)前記のシリケートスラグ系物質がCaO−SiO2―FeO、Fe2O3、2FeO−SiO2の内の1種または2種からなることを特徴とする前記(1)または(2)の鉄鉱石粉の評価方法。【0012】(4)前記の低融点物質にさらにAl2O3およびMgOの内の1種または2種を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)の内の何れかの鉄鉱石粉の評価方法。【0013】【発明の実施の形態】本発明は、成型された鉄鉱石粉の上に低融点物質を載せた後、大気中または低酸素雰囲気下で1000℃以上に昇温して低融点物質を溶融させ、その溶融した融液が鉄鉱石粉中に浸透した距離または断面積または体積またはそれらを組み合わせて測定することにより、鉄鉱石粉への融液浸透性を相対的に評価する鉄鉱石粉の評価方法である。【0014】加熱雰囲気は、実際の空気中または粉コークスの燃焼雰囲気を考慮した低酸素雰囲気とし、加熱パターンは、実際の焼成反応を模擬した室温から1300℃前後の最高温度までは3分間程度で昇温し、最高温度から1100℃までは3分間程度で冷却し、その後徐冷するのが良い。【0015】また、本発明で低融点物質には、空気中または低酸素雰囲気で1000℃以上の加熱温度で溶融する金属酸化物、金属または金属合金が含まれる。【0016】また、低融点物質として鉄酸化物を使用する場合は、これにCaOやSiO2、K2O、Na2O、他の融点低下剤などを添加して融点を低下しても良い。【0017】低融点物質としては、実際の焼結過程を模擬した図2、図3の状態図に示すカルシウムフェライト系物質とシリケートスラグ系物質のうちの1種または2種類からなるものを用いるのが好ましい。【0018】図2は、空気中におけるCaO−酸化鉄−SiO2系の相関係を示す状態図であり、図3は、極めて酸素分圧の低い金属鉄と接触下におけるCaO−酸化鉄−SiO2系の相関係を示す状態図である。低酸素雰囲気下になると、図2に示すシリケートスラグ系の低融点融液の組織範囲は拡がり、図3に示すシリケートスラグ系の低融点融液の組織範囲に近づいていく。つまり、低酸素雰囲気下になると、シリケートスラグ系の低融点融液がより生成し易くなるといえる。したがって、本発明において、シリケートスラグ系物質として、CaO−SiO2―FeO、Fe2O3や2FeO−SiO2のモル比の明確な低融点物質を使用すれば、鉄鉱石への融液の浸透性の相対的な評価が容易である。【0019】また、実際の焼結鉱には前者の方が多く生成しているので、低融点物質として、カルシウムフェラト系物質またはカルシウムフェラト系物質を主体としたシリケートスラグ系物質との複合物を使用するのがより好ましい。【0020】鉄鉱石粉または低融点物質の成型方法は、特に規定する必要がなく、一般的な冷間加圧成型法を用いることができる。また、低融点物質の気孔率は特に制約の必要がないが、鉄鉱石粉の成型体の気孔率については、実際の焼結原料の擬似粒子の付着粉部の気孔率に近い30%前後にするのが好ましい。【0021】鉄鉱石粉への融液浸透性を評価する方法としては、実験終了後の試料面に垂直な方向(融液浸透方向)または水平な方向に切断し、その垂直断面の特定位置における鉄鉱石粉への融液浸透距離または融液浸透部の面積を測定したり、さらには垂直方向の複数箇所での水平断面の融液浸透部の面積の測定値から融液浸透部の体積を求めることができる。【0022】【実施例】以下、図面にもとづいて本発明を詳細に説明する。【0023】図1は、本発明の鉄鉱石粉の融液浸透性の評価方法を示す図である。【0024】図1に示すように、粒径が0.25mm〜0.5mmの割合が50%、粒径が0.25mm以下の割合が50%に粒度調整した表1に示す複数の銘柄の鉄鉱石粉のタブレット1(直径15mm×高さ5mm、水銀圧入法開気孔率:30%)、初期融液を想定したカルシウムフェライト系物質であるCaO−Fe2O3のタブレット2(直径5mm×高さ5mm)をそれぞれ冷間加圧成型により作成し、その鉄鉱石粉のタブレット1上にCaO−Fe2O3のタブレット2を載せて、Ni製のルツボ(直径20mm×高さ15mm)に充填し、電気炉内で大気雰囲気中で加熱、焼成した。【0025】【表1】【0026】試料の加熱パターンは、常温から1100℃までを2分間で、1100℃から1290℃(最高温度)までを1分間で昇温し、その最高温度から1100℃までは3分間で冷却し、その後電気炉から試料を取り出し空冷した。【0027】試験終了後、試料を冷却し、図1に示すように試料の中央部を試料面に垂直な断面方向で切断し、切断面を研磨して、鉄鉱石粉のタブレット1への融液の浸透距離Xを測定した。今回の浸透距離の測定値は、タブレット切断断面を幅方向に5mm間隔で複数箇所の浸透距離を測定し、それらの浸透距離の平均値を採用した。その結果として図3に表1に示す銘柄の鉄鉱石粉中の脈石成分であるSiO2及びAl2O3の総含有量と銘柄の鉄鉱石粉への融液浸透距離との関係を示す。【0028】図4に示すように、各銘柄の鉄鉱石粉の融液浸透性の違いは、従来知られている各銘柄の鉄鉱石粉のSiO2及びAl2O3の脈石成分の違いで一部は整理できるものの、例えば、鉄鉱石粉Aのようにそれらの関係から大きく外れるものもあることが判る。【0029】図4においてSiO2及びAl2O3の総含有量が同じであるものの、鉄鉱石粉の融液浸透性が大きく異なる鉄鉱石粉A(緻密質なブラジル産ヘマタイト鉱石)と鉄鉱石粉E(多孔質な豪州産ピソライト鉱石)の試験後の試料断面のマクロ組織を図5に示す。【0030】図5に示す緻密質なブラジル産ヘマタイト鉱石である鉄鉱石粉Aと、多孔質な豪州産ピソライト鉱石である鉄鉱石粉Eのマクロ組織を比較して判るように、鉄鉱石粉Eの融液部には気孔の形成が見られ、それが融液の浸透性に大きな影響を及ぼしていることが分かる。つまり、多孔質な豪州産ピソライト鉱石である鉄鉱石粉Eは、表1から判るように鉄鉱石粉Aに比べて鉄鉱石中の結晶水の含有量が高く、加熱によるこの結晶水の熱分解により鉄鉱石の構造が多孔質化され、それが融液の浸透性に大きな影響を及ぼすものと考えられる。【0031】また、図4中の( )内には、各銘柄の鉄鉱石中の結晶水を示すが、例えば、緻密質な豪州産ヘマタイト鉱石である鉄鉱石粉C及びDと、豪州産ピソライト鉱石である鉄鉱石粉E及びFは、結晶水の含有量が大きく異なるが、それらの鉄鉱石粉の融液浸透性は近いことから、従来の各銘柄の鉄鉱石中の結晶水と鉄鉱石粉の融液浸透性の関係をみて判るように、従来のような各銘柄の鉄鉱石の結晶水の含有量のみでは各銘柄の鉄鉱石粉の融液浸透性の違いを評価することはできないものである。【0032】以上から、本発明の鉄鉱石の評価方法により、従来の脈石含有量または結晶水の含有量の違いのみでは十分に評価できなかった鉄鉱石粉の融液浸透性に及ぼす鉄鉱石銘柄間の差異を明確に評価することができる。【0033】【発明の効果】本発明は、従来の鉄鉱石の評価方法では、充分に評価できなかった鉄鉱石銘柄間の差異による鉄鉱石粉の融液浸透性の違いを明確に評価することができ、本発明の鉄鉱石の評価方法の実操業への適用により高品質の高炉用焼結鉱を高歩留で製造することができる。さらには、この高品質の高炉用焼結鉱の使用により高炉の燃料比低減および出銑比の大幅な向上が期待される。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の鉄鉱石粉の融液浸透性の評価方法の一例を示す図である。【図2】空気中におけるCaO−酸化鉄−SiO2系の相関係を示す状態図である。【図3】極めて酸素分圧の低い金属鉄と接触下におけるCaO−酸化鉄−SiO2系の相関係を示す状態図である。【図4】鉄鉱石粉中の脈石成分であるSiO2及びAl2O3の総含有量と本発明法による鉄鉱石粉の融液浸透距離の関係を示す図である。【図5】本発明法により測定した2種の鉄鉱石粉の融液浸透状態を示す試料の垂直断面図(ミクロ組織)である。【符号の説明】1 鉄鉱石粉のタブレット2 CaO−Fe2O3のタブレットX 融液の浸透距離 成型された鉄鉱石粉の上に成型されたカルシウムフェライト系物質およびシリケートスラグ系物質の内の1種または2種からなる低融点物質を載せた後、大気中または低酸素雰囲気下で1000℃以上に昇温して前記低融点物質を溶融させ、その溶融した融液が鉄鉱石粉中に浸透した距離、断面積および体積の内の1種または2種以上を測定することにより、鉄鉱石粉への融液の浸透性を評価することを特徴とする鉄鉱石粉の評価方法。 前記のカルシウムフェライト系物質がCaO−Fe2O3、CaO−2Fe2O3の内の1種または2種からなることを特徴とする請求項1に記載の鉄鉱石粉の評価方法。 前記のシリケートスラグ系物質がCaO−SiO2―FeO、Fe2O3、2FeO−SiO2の内の1種または2種からなることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄鉱石粉の評価方法。 前記の低融点物質にさらにAl2O3およびMgOの内の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3の内の何れか1項に記載の鉄鉱石粉の評価方法。