タイトル: | 特許公報(B2)_好気性培養における培養装置及び消泡制御方法 |
出願番号: | 2000239836 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12M 1/00,C12M 1/21,B01D 19/02 |
岡田 篤 寺谷 貴孝 門田 尚洋 伊藤 寿夫 JP 4273643 特許公報(B2) 20090313 2000239836 20000808 好気性培養における培養装置及び消泡制御方法 味の素株式会社 000000066 高島 一 100080791 岡田 篤 寺谷 貴孝 門田 尚洋 伊藤 寿夫 20090603 C12M 1/00 20060101AFI20090514BHJP C12M 1/21 20060101ALI20090514BHJP B01D 19/02 20060101ALI20090514BHJP JPC12M1/00 DC12M1/21B01D19/02 C12M 1/00-3/10 B01D 19/00-19/04 特開平05−146286(JP,A) 米国特許第03220166(US,A) 特開昭51−081449(JP,A) 4 2002051763 20020219 9 20060222 田中 晴絵 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、好気性培養における有用物質の発酵生産において、培養液から生じる泡の消泡装置を含む培養装置及び泡の消泡制御方法に関するものである。【0002】【従来の技術】発酵工業では多く好気性培養が行われており、通気撹拌により酸素供給を行っている。培養槽2に張り込んだ微生物を含む培養液は、多量の空気が吹き込まれると、通常、泡が発生する。泡の発生が大量になると、培養槽内は泡沫で満たされ、さらに発泡すると泡が排気系へ溢流する。特に、培養液量を多くすると、泡は容易に排気系へ流出する可能性が高くなる。【0003】培養中の発泡は、消泡剤として界面活性剤、シリコン系薬剤等を添加することによって制御する方法(例えば、C.L.Kroll et al.:I.E.C.,48,2190(1956)参照)や、消泡羽根と消泡剤等との併用によって制御する方法(例えば、特公昭46−30786号公報参照)がとられているが、消泡剤の制御が困難であることや、動力費がかかるといった問題点があり、有用生産物の生産性が低下する問題点があった。【0004】更に、その他の消泡装置としては、電動器により回転体を高速度で回転させ泡沫を無くす方法(例えば、I.H.MULLER: Process Biochem. June,37(1972)参照、実公昭39−36996号公報参照)があるが、培養槽が大型になり培養液量が増大すると、電動器の動力費が大きくなり培養液量に制限が生じるといった欠点があった。【0005】その他、培養槽外でサイクロンや邪魔板等に泡を衝突させて消泡した後、そのまま培養槽内に戻すといった方法(特公昭39−29800、特公昭39−26041号公報参照)がある。これらの方法は、消泡能力は低く、戻る培養液中に泡が多いことや、サイクロンからさらに泡が溢流するなど、結局培養槽に張り込める培養液量は増加せず、実際の生産プロセスとしては、生産性が低い等の問題点があった。【0006】その他、超音波の発振を利用した消泡装置(特開平5−277304、特開平5−317606、特開平7−68104、特開平8−196994号公報参照)は、リザーブタンク等の消泡専用の容器および専用の循環ポンプが必要になるため消泡器の殺菌が難しいことや、気泡を完全に消泡させるには大きなエネルギーが必要となり、そのエネルギーを得るため、超音波を反射させて局所的に音波を集中させているので、大口径の配管内では全面に有効に機能しない等の問題があるため、培養槽の消泡に使用された例はない。【0007】上述した消泡装置、泡面制御方法だけでは、いずれも実生産プロセスにおいて、目的生産物の収率をさほど減らすことなく、培養液量を培養槽全容積の70%以上に増加させることが不可能であった。【0008】【発明が解決しようとする課題】目的生産物の収率に悪い影響を与えることなく、培養槽中の培養液量を70%以上に増加でき、しかも、雑菌混入の問題もなく、適正な消泡剤量で培養運転できる培養装置及び泡を消泡制御する方法を開発することにある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者は、目的物質の生産性に悪い影響を与えることなく、培養槽から発生してくる泡沫を消泡するために、サイクロン等の気液分離装置を取り付けた消泡装置の気液分離効率を増大させることを目的とし、上記培養槽と気液分離装置との間の配管の垂直部に泡検知センサーと超音波発振ホーンを取り付け、超音波により気泡をたたき破泡して気泡の液密度を増加させ、気液分離装置を使用することにより、気液分離効果が上がることを見い出し、本発明を完成させるに至った。【0010】 すなわち、本発明は、1)好気性培養による発酵生産の培養槽において、該培養槽の排気出口に気液分離装置が取り付けられ、さらに 該気液分離装置の入り口配管、戻り配管、及び、本体のうちの少なくとも1カ所に泡を検知するセンサーが取り付けられ、さらに 超音波発振ホーンが該気液分離装置の入口配管に取り付けられ、 前記センサーが泡を検知すると超音波ホーンが超音波を発振する構成とされている、培養装置、2)超音波発振ホーンが、 培養槽の排気出口配管の垂直部の上部に取り付けられ、かつ、該垂直部の管路に沿って下方へ超音波が照射されるように取り付けられるか、または、 気液分離装置の入口配管の垂直部の上部に取り付けられ、かつ、該垂直部の管路に沿って下方へ超音波が照射されるように取り付けられることを特徴とする、上記1)に記載の培養装置に関するものである。更には、3)好気性培養による発酵生産の培養において、培養槽の排気出口に気液分離装置を取り付け、さらに 該気液分離装置の入り口配管、戻り配管、及び、本体のうちの少なくとも1カ所に泡を検知するセンサーを取り付け、さらに 超音波発振ホーンを該気液分離装置の入口配管に取り付け、 前記センサーが泡を検知すると超音波ホーンが超音波を発振する構成とすることにより泡を消泡制御する方法、4)超音波発振ホーンを、 培養槽の排気出口配管の垂直部の上部に取り付け、かつ、該垂直部の管路に沿って下方へ超音波が照射されるように取り付けるか、または、 気液分離装置の入口配管の垂直部の上部に取り付け、かつ、該垂直部の管路に沿って下方へ超音波が照射されるように取り付けることを特徴とする、上記3)に記載の方法に関するものである。 また、上記1)の培養装置の気液分離装置の通気出口にさらに気液分離装置を取り付けるとさらに効率的に気液分離が可能である。【0011】【発明の実施の形態】超音波は振幅が大きいほど消泡能力は高いが、本発明に於いては超音波と気液分離装置との併用によって消泡を行うため、超音波によるエネルギーは完全に消泡する場合と比較して低くても良く、また、超音波発振ホーンを排気管の垂直部分に設置することにより照射時間を長くとり、超音波照射による破泡効率を向上させる効果がある。【0012】本発明の対象となる好気性培養の例として、アミノ酸・核酸等の発酵が挙げられるが、これに限定されるものではない。アミノ酸の例として、グルタミン酸、リジン、アルギニン等、核酸の例として、イノシン、グアノシン等がある。また、培養条件は常法に従って行えばよい。【0013】本発明に用いる気液分離装置の一例として、図1に示す様な形状で数式1で示される寸法比のサイクロンおよび衝突型のもの、バージェスミューラー等がある。気液分離装置としては、2つ以上重ねると、さらに効果的である。【0014】b=D/5h=D/2d1=2D/5d2=8D/25L=DH=2DAC=3D/5【0015】(数式の略号説明)D : サイクロン直径d1 : サイクロン気体出口直径b : サイクロン入口横長さh : サイクロン入口縦長さd2 : サイクロン気体出口直径L : サイクロン円筒部長さH : サイクロン円錐部長さAC : 上流上層管【0016】また、超音波により気泡をたたき、気泡の液密度を増加させ、気液分離装置に於ける分離効率を上げる装置は、超音波ホモジナイザーや超音波ウェルダとして市販されている超音波発振器と超音波発振ホーンとからなる。超音波の発振周波数は19〜21kHz、最大振幅は少なくとも55μm程度を必要とする。ホーンは市販のホモジナイザー等に用いられるもので良い。本発明による好気性培養の発酵生産に於ける泡制御を実施するための培養装置の概略図を図2に示し、以下に説明する。【0017】図2は、以下に記載した実施例を行った際の培養装置の縦断面図である。培養槽1内には、培養液16が満たされ、下部には空気供給管2が設けられ、一方上部には培養槽1内で生じた泡沫3を槽外に排出する排気管4が設けられている。排気管4はサイクロン5に連結され、サイクロン5は還流液管11を介して培養槽に連結している。サイクロン5における気液分離効率を向上させるための超音波発振ホーン13は、排気管4の垂直部に取り付けられている。8は撹拌羽根、9は撹拌モーターである。7は超音波発振用の泡センサー、13超音波発振器である。7の泡センサーは、排気管4及び/または還流管11のどちらに付けても良いし、両方付けても良い。【0018】培養槽1の下部より吹き込まれた空気と撹拌羽根によって発生した泡沫3は槽上部の排気管4から排出される。泡の発生が激しくなり、泡が排気管4を通って排出されると、排気管4に付けた泡センサー7が泡を検知して超音波ホーン13から超音波を発振するようにする。超音波が発振されると、泡は音波によってたたかれ破泡する。破泡され液密度の増加した泡は、サイクロン5で気液分離され液を培養槽に戻す。以後、培養終了までこれを繰り返す。【0019】本発明の培養装置を用いて泡を制御することにより、発泡が盛んになっても気液分離装置に於ける分離効率が向上し、雑菌混入の問題点もなく、消泡剤が入りすぎることなく運転でき、培養液量を培養槽全容積の75%に上げることができる。以下、実施例により本発明を具体的に説明する。【0020】【実施例】<実施例1>グルタミン酸の生産菌であるブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)ATCC13869を用いて、図2の培養装置(培養槽の全容量は310kL。また、取り付けたサイクロンの入口気流速度は15〜30m/sec。)によりグルタミン酸発酵を以下のように行った。糖濃度80g/Lの糖蜜140kLに表1の組成になるよう添加物を添加し培地を調整した。これに予め培養したBrevibacterium lactofermentum ATCC13869を約10kL接種し、31.5℃にてpHをアンモニアガスにて7.5に保ちつつ、通気撹拌下培養した。培養中培地中の糖濃度が3%を切った時、糖濃度350g/Lの濃度の糖蜜を少量ずつ添加し糖濃度を2〜4%に調節しつつ培養した。また、培養途中所定の菌量に達した時点で界面活性剤トウイーン60を培地に対し0.6%になるように添加した。消泡剤としてはPPG系(ポリプロピレン・グリコール AZ20R(日本油脂(株)))を用いた。【0021】【表1】【0022】培養開始後5時間目に、発泡が激しくなり一時的に泡が排気管から気液分離装置のサイクロンに入りだした。排出された泡は該排気管に設置された泡センサーで検知されて超音波が発振された。超音波の発振により泡は破泡され、液密度の増加した泡は気液分離装置のサイクロンによって効率よく気液分離され、還流液管を経て培養槽内に戻された。培養開始後15時間目程度から泡が盛んに発生し、超音波は常時発振して気液分離装置にて培養液は捕集された。培養時間27時間後、気液分離装置内が超音波によって破泡された培養液で満たされ、泡面の制御が難しくなったため、糖の添加をやめ、培養を終了した。最終の培養液量は233kLに達し、87g/Lのグルタミン酸を得た。【0023】このようにして行った結果、最終的に75%の培養液量まで至っても気液分離装置のサイクロンの排気口から培養液が溢れることなく運転ができた。【0024】<比較例1>実施例1と比較する為、図3に示したように、超音波発振ホーンを取り付けていない培養装置を用いて培養を行った。当該装置にて発生した泡は気液分離装置にて捕集される仕組みになっている。実施例1と同様の培養条件でBrevibacterium lactofermentum ATCC13869の培養を行い、糖蜜も同じ濃度のものを使い培養した。培養開始後5時間目程から泡が盛んに発生し、一時的に培養槽の排気口から該サイクロンに溢れ出した。培養時間25時間後、泡面の制御が困難になったため、糖の添加をやめ培養終了した。最終の培養液量は217kLに達し、82g/Lのグルタミン酸を得た。表2に実施例1と比較例1の結果をまとめて示した。【0025】【表2】【0026】<実施例2>図2の培養装置に於いて、L−フェニルアラニン生産菌であるBrevibacterium lactofermentum FERM BP−1071を培養した。糖濃度150g/Lの糖液140kLに表3の組成になるように添加物を添加し培地を調整した。これに予め培養したBrevibacteriumlactofermentum FERM BP−1071を約10KL接種し、30.0℃にてpHをアンモニアガスにて7.5に保ちつつ、通気撹拌下培養した。培養中培地中の糖濃度が3%を切った時、糖濃度450g/Lの濃度の糖を少量ずつ添加し糖濃度を2〜4%に調節しつつ培養した。消泡剤としては、シリコン系(ポリジメチルシリコンオイル TMA812(東芝シリコーン(株)))を用いた。【0027】【表3】【0028】<比較例2>実施例2と比較する為、比較例1と同様に図3の培養装置を用いた。実施例2と同様の培養条件でBrevibacteriumlactfermentum FERM BP−1071の培養を行った。糖液も同じ濃度のものを使い培養した。消泡剤としては、シリコン系(ポリジメチルシリコンオイル TMA812(東芝シリコーン(株)))を用いた。表4に実施例2と比較例2の結果をまとめて示した。【0029】【表4】【0030】【発明の効果】本発明によって、実生産用培養槽で生産性をそれ程落とすことなく、培養液量を培養槽全容積の76%以上に増やすことができる。また、配管のつまりや雑菌が発生するといったこともなく運転できる。これにより、1回の培養における目的物質の生産量を増やすことができ、生産性を上げることができる等のメリットを得ることができる。【図面の簡単な説明】【図1】気液分離装置の説明図である。【図2】本発明の培養装置図である。【図3】比較例の培養装置である。【符号の説明】1 培養槽2 空気供給管3 泡沫4 排気管5 サイクロン6 培地フィード管7 泡センサー8 撹拌翼9 撹拌モーター10 排気管11 還流液管12 超音波発振器13 超音波発振ホーン14 培養液15 消泡翼 好気性培養による発酵生産の培養槽において、該培養槽の排気出口に気液分離装置が取り付けられ、さらに 該気液分離装置の入り口配管、戻り配管、及び、本体のうちの少なくとも1カ所に泡を検知するセンサーが取り付けられ、さらに 超音波発振ホーンが該気液分離装置の入口配管に取り付けられ、 前記センサーが泡を検知すると超音波ホーンが超音波を発振する構成とされている、培養装置。 超音波発振ホーンが、 培養槽の排気出口配管の垂直部の上部に取り付けられ、かつ、該垂直部の管路に沿って下方へ超音波が照射されるように取り付けられるか、または、 気液分離装置の入口配管の垂直部の上部に取り付けられ、かつ、該垂直部の管路に沿って下方へ超音波が照射されるように取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の培養装置。 好気性培養による発酵生産の培養において、培養槽の排気出口に気液分離装置を取り付け、さらに 該気液分離装置の入り口配管、戻り配管、及び、本体のうちの少なくとも1カ所に泡を検知するセンサーを取り付け、さらに 超音波発振ホーンを該気液分離装置の入口配管に取り付け、 前記センサーが泡を検知すると超音波ホーンが超音波を発振する構成とすることにより泡を消泡制御する方法。 超音波発振ホーンを、 培養槽の排気出口配管の垂直部の上部に取り付け、かつ、該垂直部の管路に沿って下方へ超音波が照射されるように取り付けるか、または、 気液分離装置の入口配管の垂直部の上部に取り付け、かつ、該垂直部の管路に沿って下方へ超音波が照射されるように取り付けることを特徴とする、請求項3に記載の方法。