タイトル: | 特許公報(B2)_納豆菌由来の生理活性物質 |
出願番号: | 2000221512 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12N 9/54,A23K 1/06,A23K 1/16,A23K 1/165,A23L 1/30,A23L 1/302,C07C 46/10,C07C 50/14,C12F 3/10,C12N 1/20,C12P 7/66 |
須見 洋行 JP 3783915 特許公報(B2) 20060324 2000221512 20000615 納豆菌由来の生理活性物質 須見 洋行 592197061 株式会社 ホンダ トレーディング 599064339 飯塚 雄二 100098143 須見 洋行 20060607 C12N 9/54 20060101AFI20060518BHJP A23K 1/06 20060101ALI20060518BHJP A23K 1/16 20060101ALI20060518BHJP A23K 1/165 20060101ALI20060518BHJP A23L 1/30 20060101ALI20060518BHJP A23L 1/302 20060101ALI20060518BHJP C07C 46/10 20060101ALI20060518BHJP C07C 50/14 20060101ALI20060518BHJP C12F 3/10 20060101ALI20060518BHJP C12N 1/20 20060101ALI20060518BHJP C12P 7/66 20060101ALI20060518BHJP JPC12N9/54A23K1/06A23K1/16 301BA23K1/16 302BA23K1/165 CA23L1/30 ZA23L1/302C07C46/10C07C50/14C12F3/10C12N1/20 AC12P7/66 Z C12N 9/00-86 A23K 1/06 A23K 1/16 A23K 1/165 A23L 1/30 A23L 1/302 C12N 1/20 C12F 3/10 C12P 7/66 C07C 50/14 C07C 46/10 JSTPlus(JOIS) BIOSIS/WPI(DIALOG) 特開平06−153977(JP,A) 特開平03−168082(JP,A) 特開平08−053364(JP,A) 特開平04−370093(JP,A) 特開平08−073396(JP,A) 特開平10−036256(JP,A) 特開平11−032787(JP,A) 特開平11−243873(JP,A) 特開平11−243867(JP,A) 9 2001352975 20011225 6 20021111 左海 匡子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、焼酎製造時などに生じる蒸留粕にグリセリンを添加するなどした培地で納豆菌を培養することにより、生理活性物質であるナットウキナーゼとメナキノン−7の両方を同時に安価に大量生産する、あるいはさらに水抽出、有機溶媒処理などを組み合わせた方法で精製するこれらの生理活性物質とその利用に関する。【0002】【従来の技術】ナットウキナーゼは、本発明者が1987年に納豆中に発見した納豆菌由来の血栓溶解酵素であるが(Sumi et al.,Experientia,43,1110−1111,1987)、その後の研究で血栓(フィブリン)のみならず、プロ−ウロキナーゼの活性化(須見ら、日食科工、43、1124−1127、1996)、あるいはエラスチン分解に働く(須見ら、農化、73、1187−1190、1999)こと、またその血中血栓溶解(線溶)活性の亢進は経口投与でも起こることなどから(Sumi et al.,Thromb.Haemostas,62,549,1989;Acta Haematol.,84,139−143,1990;Thromb.Haemostas.,69,1267,1993)、狭心症や脳梗塞などの血栓症だけでなく、広く老人性痴呆症などの血栓性疾患の予防剤としても注目されている。また一方、ビタミンK、中でも納豆菌由来のメナキノン−7は近年、骨でのカルシウム結合性タンパク(オステオカルシン)の合成に必須のビタミンとして注目されている(折茂、医事新報、3767、1996;Sumi et al.,XVth Int.Cong.on Fibrinolysis & Proteolysis,Hamamatsu,2000;IIIrd Int.Soc.SoybeanProcessing & Utilization Conf.,Tsukuba,2000;須見ら、日本家政学会第52回大会要旨集、p.64、2000)。【0003】これら生理活性物質の製造に関しては幾多の研究が知られている。例えば、ナットウキナーゼは直接納豆から分離する方法(冨家ら、特開昭61−162184;中西ら、特開平3−168082)、大豆ペプトンなどの発酵物、特に液体培養を行いその発酵液から分離する方法(藤田ら、特開平8−53364)、あるいは大豆粕であるオカラの固体培養を行い分離する方法(竹中、特開平10−265396)などである。一方、メナキノン−7については、やはり納豆中に多いことから納豆あるいは大豆成分を主原料とする納豆菌培養液の油成分画から得る方法(磯部ら、特開平8−73396)、大豆タンパクあるいは豆腐カス(オカラ)発酵で得る方法(荒木ら、特開平8−9916)、そして大豆煮汁の発酵で得る方法(荒木ら、特開平8−19378;特開平10−295393)があった。他の穀類利用としては出願者の行った麦類の発酵物から得るという方法(須見、特願2000−46595)があるに過ぎない。これまで産業廃棄物であり現在大量が海洋投棄されている焼酎などの蒸留粕から納豆菌による発酵で極めて効率良く作り出せるということは全く知られていなかった。また、いずれのナットウキナーゼとメナキノン−7の製造も各々の生理活性物質を別々に得るというものであって、両方を同時に大量生産できる方法ではなかった。【0004】【発明が解決しようとする課題】これまでのナットウキナーゼあるいはメナキノン−7は、かなり高価な大豆成分を原料とする、製造過程で生じる大量の粘質物をアルコールなどを用いて取り除く操作が加わる、あるいは何よりもその収率が悪いなどの理由でかなりコストが高くなる欠点があった。本発明は、ナットウキナーゼとメナキノン−7をこれまで知られていなかった酒類の蒸留粕の発酵によって作り出すことができ、また同時に極めて安価に大量生産が可能である。もともと食品であるものを原料とするため安全性にも優れ、乾燥するなどしてそのまま多くの健康食品、加工食品、動物用飼料として応用でき、またそれから精製したナットウキナーゼ及びメナキノン−7は医薬、化粧品製剤としても有望である。【0005】【課題を解決するための手段】これまで本発明者は納豆菌による各種発酵法を検討してきたが(須見洋行、デイリーフード、210、32−37、1997;Food Style 21,3(8),37−40,1999;日本家政誌、50、309、1999;日本農化誌、73、599、1999;日本農化誌、73、1187、1999;日本家政学会第52回大会要旨集、p.64、1999)、今回最も安価な一種の産業廃棄物といえるものから極めて効率良くナットウキナーゼとメナキノン−7を同時に得ることに成功した。即ち、本発明は焼酎製造時などに生じる蒸留粕という、2001年から海洋投棄が禁止されその消却には1トン当たり5,000円もかかるとされ社会問題にもなっている、正にただよりも安価な原料を納豆菌の培養基質とするものであり、それにグリセリンを添加するなどした後に、納豆菌を接種して常法により培養することにより、前記従来の問題点を解決した。焼酎などの製造時に生じる蒸留粕は納豆菌の生育に必要な炭素源、窒素源、無機塩などをバランス良く含んでおり、ナットウキナーゼとメナキノン−7の両方が一度の発酵で同時に大量生産できる。特に、イモ焼酎の蒸留粕は両生理活性物質の生産に最適であることが分かった。【0006】【発明の実施の形態】以下、実施例にて詳細に説明する。なお、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。【0007】実施例1イモ(薩摩酒造、鹿児島)、米(沖縄県酒造組合)、ソバ(雲海酒造、宮崎)、ムギ(宇都酒造、熊本)を原料とした各種焼酎の製造時に生じたスラリー状の蒸留粕に各々1NのNaOHを添加してpH7.0に調整した後、121℃、15分間オートクレーブ処理した後に、100×145cmのステンレス製トレイの中に厚さ約2.5cmになるように拡げ、このものに納豆菌(成瀬醗酵化学研究所、東京)を滅菌水に懸濁したものを107個/mlになるように添加攪拌した後7日間、37℃で静置培養した。得られた培養物を凍結乾燥した後、各々に含まれるナットウキナーゼ活性をフィブリン平板法(Sumi et al.,Experientia,43,1110−1111,1987)で、またメナキノン−7濃度を我々が既に確立しているHPLC法(須見、日本家政誌、50、309、1999)で測定した。いずれの蒸留粕を発酵させたものにも強いナットウキナーゼ活性(臨床用のウロキナーゼを基準にして20万IU以上/100g)とメナキノン−7(5.3mg以上/100g)の両方が含まれることが分かったが、特にイモ焼酎製造で生じる蒸留粕を原料に用いた発酵物は図1及び図2にその分析例を示すように極めて高含量で、各々100g当たり85万IU及び19.2mgであった。これらの測定値はこれまでの同条件下で測定した市販納豆、あるいは大豆やオカラ発酵物の分析値(須見ら、日本家政誌、50、309、1999;日本農化誌、73、599、1999;日本農化誌、73、1187、1999;日本家政学会第52回大会要旨集、p.64、1999)に比較してもはるかに強いものであった。【0008】実施例2イモ焼酎の製造時に生じる蒸留粕(薩摩酒造、鹿児島)に攪拌しながら28%アンモニア水の添加を行いpH7.0に調整した後、さらに蒸留水で1.5倍に希釈しグリセリンを1〜12%(重量%)加え、その各混液0.7Lを2Lのジャーファーメンター内で温度40℃、通気0.5L/分、攪拌速度500rpmで4日間培養を行った。得られた培養物はいずれも強いナットウキナーゼ活性と高メナキノン−7濃度を示したが、特にグリセリン5%添加の場合が最も優れ、ナットウキナーゼ活性は実施例1と同じ方法で830IU/ml、またメナキノン−7のほとんどが水溶性タイプでその濃度はHPLC法(須見、日本農化誌、73、599、1999)で34μg/mlであった。なお、グリセリンの添加量は2%未満では効果が少なく、10%を超えても収量増加は認められなかった。【0009】実施例3ウイスキー製造時に生じる蒸留粕(サントリー白州工場、山梨)とイモ焼酎の蒸留粕(薩摩酒造、鹿児島)を等量混ぜたものを実施例2と同様に醗酵させたもの(ナットウキナーゼ78万IU/100g乾燥品、メナキノン−713.8mg/100g乾燥品)1kgにジエチルエーテル10Lを加えて振盪後、静置して分離したジエチルエーテル層(上層)を分取した。上層の溶媒を2kPa、60℃で留去し、115gの残渣を得た。この残渣を5hPa、180℃、0.08g水蒸気/時間で60分間脱臭を行って、黄色、無味、無臭、油状の脂質1.4gを得た。この脂質分画のナットウキナーゼは失活していたが、メナキノン−7は約10%量含まれており、TLCで観察したところトリグリセライド、ステロールおよびその誘導体、リン脂質、炭化水素類が認められた。【0010】実施例4ソバ焼酎製造時に生じる蒸留粕(雲海酒造、宮崎)に対して2倍容量の3%グリセリンを混ぜ合わせ、それを1NのNaOHでpH7.8に調整した後、121℃、30分間オートクレーブ処理したものに、市販納豆(タカノフーズ、茨城)より分離した納豆菌を植え、37℃、100rpmで4日間振盪培養した。本培養物を3,000rpm、10分間遠心分離したところ、上清中には30.7mg/Lのメナキノン−7が含まれていた。そこで、この上清のpH(pH7.3)を酢酸を用いてpHを2.0〜3.5に調整し、4℃で24時間放置した後、4,000rpm、10分間遠心分離し得られた白色沈殿物中のメナキノン−7を分析したところ、上清の85%以上がこの分画に回収されていることが分かった。なお、ナットウキナーゼの方はもとの上清中にはフィブリン平板法で強い活性が確認されたがこの酸処理物ではほとんどが失なわれていた。【0011】実施例5イモ焼酎の製造時に生じる蒸留粕(薩摩酒造、鹿児島)の湿重量500gに対して5%量のグリセリン、及び28%アンモニア水を加えてpH7.3に調整した後、オートクレーブ処理して滅菌したものをホーローびきのトレイ(29×34cm)中に拡げ、クリーンベンチ内で1×1010個/gの目黒菌(目黒研究所、大阪)を0.1g添加して攪拌した後、アルミホイルで蓋をして40℃で4日間発酵させた。50℃で減圧乾燥後、ブレンダーで粉末化したものに大豆発酵物(一般の納豆)のような臭いはなく、香ばしい香りで、そのメナキノン−7の含量は実施例1と同様のHPLC法で乾燥粉末100g当たり42mgの高含量であった。一方、この処理条件下でもナットウキナーゼ活性は残っておりフィブリン平板法で乾燥粉末100g当たり128万IUを示した。この乾燥粉末を小麦(強力粉+中力粉1:1)に対して5%量加え、2%量の生イースト、3%量の砂糖、その他バター、食塩を少量加えて発酵させた後、180℃で焙焼してできたビタミン高含量パンは大変美味であった。なお、焼くことで含まれるナットウキナーゼは失活したが、メナキノン−7含量が低下することはなかった。【0012】実施例6産卵鶏用基礎飼料1kgに、実施例5の方法で調製した高濃度のメナキノン−7を含む乾燥粉末(メナキノン−7として20mg)を大豆油に溶かし、それを混合添加した。乾燥粉末の未添加のものとの摂取効果の比較を行った。実験は5羽の鶏に水とこの餌を毎日自由に摂取させ、20日目に産んだ各卵の卵黄中に含まれるビタミンK(メナキノン−7)量の分析を実施例1と同様の方法で行った。その結果、平均値は未添加群の卵黄100g当たりの値が0μgであったのに対して、添加群では108μgと著しく高まっていることから、本物質がビタミンK飼料として有効であることが分かった。【0013】【発明の効果】本発明によれば、安価で安全なナットウキナーゼ、メナキノン−7が提供できる。【図面の簡単な説明】【図1】イモ焼酎蒸留粕の発酵物が示す血栓(フィブリン)溶解の写真である。発酵物を10倍量の生理的食塩水で抽出したものを一枚のフィブリン平板上に各々30μL、3ヶ所にのせた。【図2】イモ焼酎蒸留粕の発酵物のメナキノン−7分析パターン。HPLCでRt約17分目のピークがメナキノン−7である。なお、未発酵物ではこのピークは全くみられない。 蒸留酒の製造時などに生じる蒸留粕に納豆菌を接種するとともに、2〜10重量%のグリセリンを添加してなる発酵物。 前記蒸留粕に添加物として前記グリセリンを加え、pH調整した後に、前記納豆菌を接種してなることを特徴とする請求項1に記載の発酵物。 前記蒸留酒は、ウイスキー及び焼酎の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の発酵物。 前記蒸留酒は芋焼酎であることを特徴とする請求項3に記載の発酵物。 前記グリセリンの添加量は、約5重量%であることを特徴とする請求項4に記載の発酵物。 前記請求項1,2,3,4又は5に記載の発酵物を含む食品又は食品素材。 前記食品素材は、小麦粉であることを特徴とする請求項6に記載の食品。 前記請求項1,2,3,4又は5に記載の発酵物を含む動物飼料。 前記動物飼料は、鶏用の飼料であることを特徴とする請求項8に記載の動物飼料。