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タイトル:特許公報(B2)_液体クロマトグラフィー用親水性ODS充填剤の製造方法
出願番号:2000209829
年次:2011
IPC分類:G01N 30/88


特許情報キャッシュ

酒井芳博 澤田 豊 大森紀博 太田鈴枝 JP 4700171 特許公報(B2) 20110311 2000209829 20000711 液体クロマトグラフィー用親水性ODS充填剤の製造方法 関東化学株式会社 591045677 葛和 清司 100102842 酒井芳博 澤田 豊 大森紀博 太田鈴枝 20110615 G01N 30/88 20060101AFI20110526BHJP JPG01N30/88 101LG01N30/88 201G G01N 30/88 JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開平06−174708(JP,A) 特開2000−111535(JP,A) 特開平04−212058(JP,A) 特開平09−049829(JP,A) 酒井 芳博,細田 誠,新しいHPLC用シリカ系逆相充填剤“Mightsil RP-18”の特性,Chromatography,1996年 2月29日,Vol.17,No.1,P.39-45 酒井 芳博,高純度シリカゲル・フルエンドキャップ充填剤 Mightsil RP-18 GP,THE CHEMICAL TIMES,1999年 1月 1日,No.1,P.17-20 須藤 良久,塩基性物質を精度よく分離する液クロ用シリカ系充填剤,機能材料,1999年 3月 1日,Vol.19,No.4,P.35-46 6 2002022721 20020123 8 20070709 河野 隆一朗 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、水系溶離液を用いても撥水現象が生じにくく、化学的安定性に優れた液体クロマトグラフィー用親水性ODS充填剤の製造方法に関する。【0002】【従来技術】オクタデシルシリル化シリカゲル(ODSシリカゲル)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)用充填剤として現在広く使用されている。ODSシリカゲルは、従来、水系100%の溶離液を使用する測定条件下における分析を繰り返すと、化学修飾基であるODSの寝込み(ワックス化による親水性の喪失)から生じるといわれている撥水現象のため、次第に分析目的化合物の保持時間が短くなり化学分析が困難になるという欠点を有していた。【0003】そのため、水系100%の溶離液を使用しても分析目的化合物の保持時間が変化しにくく、かつ化学的安定性に優れた充填剤の開発が強く望まれ、それを目的とした研究が重ねられた結果、前記目的に叶うODS充填剤(親水性ODS充填剤)が開発され、市販されるに至っている。【0004】前記親水性ODS充填剤は、シリカゲル表面のシラノール基にODSを化学修飾した後、HPLC分析実施の際にテーリング現象や再現性欠如の原因となる未反応のシラノール基(活性シラノール基)に短鎖アルキル基を結合させる手法(エンドキャッピング)によって製造されている。該活性シラノール基は、特に塩基性物質との相互作用が強いため、塩基性物質の分析の際にテーリング現象の原因となる。【0005】上記製造法によって水系100%で使用可能な親水性ODS充填剤を製造するに際しては、以下の3種類の技術が用いられている:(1) シリカゲルのODSによる化学修飾密度を下げて親水性を保持することにより、ODSの寝込みを防止する技術(2) 親水性官能基を導入して親水性を保持させ、ODSの寝込みを防止する技術(3) 固定相を変えることにより寝込みを防ぐ技術。【0006】しかしながら、これらの技術を用いて製造した親水性ODS充填剤を用いた場合、それぞれにおいて次のような分析上の欠点が生じる。すなわち、上記(1)の場合、活性シラノール(イオン交換型シラノール)の残存量が多いため塩基性物質との二次相互作用が強くなり、ピークのテーリング現象が起きやすい。また活性シラノールの残存によって、カラムの化学的安定性、特にアルカリ性領域における化学的安定性が低くなる。【0007】上記(2)においては、選択される官能基により溶離特性(選択性)が大きく変化してしまう。また、塩基性物質分析時のみならず、酸性物質分析時にもピークのテーリング現象が起きやすくなる。上記(3)は、化学修飾基を変更すること、例えば炭素鎖がより長いシラン化剤を用いて充填剤を固体化することにより化学修飾基の寝込みを防止するものであるが、有機溶媒系の溶離液を使用した場合、一般的に使用されているODS充填剤に比べ、選択性の変化が大きい。すなわち、現有のいずれの技術を用いた製造方法による親水性ODS充填剤も、水系溶媒を用いた場合、その性能は必ずしも満足できるものではない。【0008】そのため、親水性化合物の分析には水系溶離液を用いることが理想的であるにも拘わらず、従来のODSカラムを使用する際には保持力強化のためにイオンペア剤を添加する等、有機溶媒系の溶離液が多用されている。その結果、現在でもHPLCの移動相としては有機溶媒が用いられることが多く、環境保護の観点から好ましくない状況にある。【0009】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記のような問題のない、すなわち水系溶離液を用いてもピークのテーリング現象がほとんどなく、かつ化学的安定性に優れた親水性ODS充填剤の製造方法を提供することにある。【0010】【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記(1)の技術において、従来より比表面積が小さいシリカゲルに対し、高温エンドキャッピングを含む1または2段階のエンドキャッピングによって活性シラノールを不活化させることによって上記課題を克服できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、比表面積が200〜300m2/gであるシリカゲルにODS基を化学結合させた後に、残存する活性シラノールを高温エンドキャッピングによって不活化してなるODS充填剤の製造方法に関する。【0011】また、本発明は、高温エンドキャッピングが200〜300℃の範囲で行われることを特徴とする、前記ODS充填剤の製造方法に関する。さらに、本発明は、高温エンドキャッピングが、トルエンの還流温度での通常のエンドキャッピングの後に行われることを特徴とする、前記ODS充填剤の製造方法に関する。また、本発明は、ODS基がジメチルオクタデシル基、メチルオクタデシル基またはオクタデシル基である、ODS充填剤の前記製造方法に関する。【0012】【発明の実施の形態】比表面積が比較的小さいシリカゲルにおいては、比表面積が大きいものに比べて活性シラノールの成因となり得る水酸基の数が元々少ないため、化学修飾をより高効率に行い得る。好ましいシリカゲルの比表面積は、200〜300m2/gであり、より好ましくは240〜270m2/gである。シリカゲルの比表面積が小さすぎると、炭化水素量が小さくなりすぎ、化学修飾の効率は低下する。【0013】ここに、適度の比表面積を有するシリカゲルに対して高温エンドキャッピングを行うと、活性シラノールの不活化、すなわち活性シラノールと試料内の塩基性物質との相互作用の低減が効率的に行われることが見出された。即ち、高温エンドキャッピングを、比表面積が200〜300m2/gであるシリカゲルに実施すれば、該シリカゲルを用いた充填剤における活性シラノールの不活化が極めて効率的に行われる。【0014】高温エンドキャッピングは、トリメチルクロロシランとヘキサメチルジシラザンを加えた流動パラフィン中、230〜250℃の温度で加熱すると特に好適に行われる。【0015】シリカゲルにODS基を化学結合させた後、トルエンの還流温度でエンドキャッピング(一次エンドキャッピング)を行うと、水素結合性シラノールを除去することができる。したがって、該一次エンドキャッピング行ってから高温エンドキャッピング(二次エンドキャッピング)を行うと、活性シラノール基の影響をさらに効率的に除去することができる。【0016】前記一次エンドキャッピングに用いるエンドキャッピング剤の例としては、クロロシラン化合物がある。例えば、トリメチルクロロシランとピリジンの存在下、溶媒として用いるトルエンを加熱還流しながら行うエンドキャッピングは好適に行われる。【0017】シリカゲルに化学結合させるODS基として、ジメチルオクタデシル基、メチルオクタデシル基およびオクタデシル基のようなオクタデシル基を用いれば、ODSによる化学修飾を好適に行うことができる。【0018】本発明の製造方法によるODS充填剤の特徴は、後述する図1が示すとおり、シリカゲル表面にシラノール基(図1のピーク1)が残存しているにも拘わらず、該シラノール基のテーリング現象や化学的安定性への影響がほとんどないことである。したがって、本発明によるODS充填剤のシリカゲル表面に残存するシラノールは、不活性シラノールとも言うべきものである。【0019】本発明の製造方法によれば、オクタデシルシリル基によるシリカゲルの化学修飾密度を分離に影響のない範囲に調整するとともに、残存シラノールのうち不活性シラノールのみを残存させることによってODS充填剤に親水性を保たせることができるので、水系100%の溶離液を使用したHPLC分析においても試料の保持時間が安定なODS充填剤を製造することが可能である。以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0020】【実施例】実施例1液体クロマトグラフィー用に製造されたシリカゲル(比表面積270m2/g,細孔直径13nm,細孔容積1.1ml/g)50gを6mol/l塩酸200mlで5時間加熱還流し洗浄する。ろ過後純水にてろ液が中性になるまで洗浄する。その後アセトンにて洗浄し130℃で4時間乾燥する。塩酸洗浄したシリカゲル18gを乾燥トルエン200mlに分散させモノクロロジメチルオクタデシルシラン22gとピリジン5gを加え約6時間加熱還流することによりODSシリカゲルを合成した。生成物はろ別した後、テトラヒドロフラン200ml・メタノール100mlで順次洗浄し130℃で4時間乾燥した。このようにして得られたODSシリカゲル10gを、トリメチルクロロシラン2gとピリジン1.5gを加えたトルエン中で約5時間加熱還流することで一次エンドキャッピングを実施する。反応終了後、生成物をろ別し、テトラヒドロフラン50ml、メタノール50mlで順次洗浄し130℃で3時間乾燥する。一次エンドキャップが終了したODSシリカゲル10gを、活性シラノールを完全に不活性化するためトリメチルクロロシラン1gとヘキサメチルジシラザン3gを加えた流動パラフィン100ml中、230〜250℃の温度で約3時間加熱し二次エンドキャッピングを実施する。反応終了後、ヘキサン100mlを反応液に加え内容物をろ過する。残渣はテトラヒドロフラン200ml、メタノール100mlで順次洗浄し130℃で4時間乾燥した。【0021】実験例1実施例1のODSシリカゲルを、一般的に実施されているスラリー法を使用して内径4.6mm、長さ150mmのステンレススチール製のカラムに充填した。このカラムを用いて、ピリジン、フェノール混合試料を、溶離液としてアセトニトリル:水=30:70(容量比)を用い、流速1ml/分、測定温度40℃、検出波長254nmで分析した。その結果、ほとんどテーリング現象のない、前記試料のクロマトグラムが得られた(図2)。同様に従来の親水性ODSシリカゲルを充填したカラム及び実施例1において一次エンドキャッピングが終了した段階のODSシリカゲルを充填したカラムを用い、同じ試料を同じ条件で分析した。従来の親水性ODSシリカゲルの結果を図3に、一次エンドキャッピングが終了した段階のODSシリカゲルの結果を図4に示す。これらのカラムは、最初に溶出するピリジンのピークがテーリング現象を生じている。従って、本発明の製造方法によるODSシリカゲルを用いたカラムは、塩基性物質との相互作用のない分析が可能であることが明らかとなった。【0022】実験例2親水性ODSシリカゲルとしての特性を確認するため、実験例1と同様にして得たカラムを用い、リン酸二水素カリウム溶液を溶離液に使用して、平均2時間/日ずつ、1ヶ月間使用した場合の核酸類に対する分離能を調べた。溶離液として5mmol/lリン酸二水素カリウム水溶液、流速0.5ml/分、測定温度35℃、検出波長254nmで核酸類混合液(ピークNo.1 CMP、No.2 UMP、No.3 IMP、No.4 AMP)各0.05mg/mlを5μl注入する測定条件によって、各クロマトグラムを測定した。その結果、図5A(測定開始直後)およびB(1ヶ月後)に示すように、1ヶ月を経過しても、カラムの分離能はほとんど変わらなかった。【0023】実験例3化学的安定性を確認するため、酸性およびアルカリ性領域でカラムの化学的安定性試験を実施した。酸性領域の試験においては、20mmol/lリン酸溶液(pH2.2)を使用した。その結果、500時間を経過した後においても、実施例1のカラムの理論段数は初期性能の90%以上の値を示していた。アルカリ性領域の試験においては、20mmol/lリン酸カリウム(pH8.0を調製)を使用し耐久試験を実施したが、その化学的安定性は300時間を経過してもその理論段数は初期性能の90%を示していた。理論段数の測定は、溶離液としてアセトニトリル/水=75/25(容量比)、流速1.0ml/min、測定温度40℃、検出波長254nmでアントラセンを試料に使用した。従来の親水性ODSシリカゲルを充填したカラムおよび実施例1において一次エンドキャッピングが終了した段階のODSシリカゲルを、実施例1と同様にカラムに充填し、同じ試料を分析した。その結果、アルカリ性下(pH8.0)で測定した場合、従来の親水性ODS充填剤を充填したカラムにおいては、約70時間後に、理論段数が初期値の65%まで低下した。また、二次エンドキャッピング実施前のODSシリカゲルを充填したカラムにおいては、70時間後における理論段数は、初期性能の20%以下にまで低下した。これらのカラムの、アルカリ性領域の化学的安定性の比較を表1に示す。【表1】以上の結果から、本発明の製造方法によるODS充填剤は、化学的な安定性が極めて優れていることが明らかになった。【0024】以上の結果から、本発明の製造方法によるODSシリカゲル充填カラムは、従来の親水性ODSシリカゲル充填カラムより化学的安定性が優れ、それには二次キャッピングの寄与が大きいことが明らかになった。【0025】【発明の効果】本発明の製造方法によるHPLC用親水性ODS充填剤によれば、親水性溶媒を用いた塩基性物質の分析においても、ピークのテーリング現象が抑制されることに加え、化学的安定性が高い、確実な定量分析が可能になる。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の製造方法による親水性ODS充填剤の29Si CP/MAS NMR(A)および一般的なフルエンドキャッピングODS充填剤(B)の29Si CP/MAS NMR(B)である。【図2】 実施例1のカラムによって、ピリジンとフェノールの混合試料を分析した際に得られたクロマトグラムである。【図3】 従来のODSシリカゲルによりピリジンとフェノールの混合試料を分析した際に得られたクロマトグラムである。【図4】 二次エンドキャッピング実施前のODSシリカゲルによってピリジンとフェノールの混合試料を分析した際に得られたクロマトグラムである。【図5】 実施例1のカラムの測定開始直後(A)および1ヶ月後(B)の分離能を示す図である。【符号の説明】1・・・残存シラノールのピーク 比表面積が200〜300m2/gであるシリカゲルにODS基を化学結合させた後に、残存する活性シラノールを、常圧下で、200〜300℃の範囲で行う高温エンドキャッピングによって不活化してなる、親水性を保持したODS充填剤の製造方法。 高温エンドキャッピングが、トリメチルクロロシランとヘキサメチルジシラザンとを用いて行われることを特徴とする、請求項1に記載の親水性を保持したODS充填剤の製造方法。 高温エンドキャッピングを、流動パラフィン中で行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の親水性を保持したODS充填剤の製造方法。 高温エンドキャッピングが、トルエンの還流温度での通常のエンドキャッピングの後に行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の親水性を保持したODS充填剤の製造方法。 ODS基が、ジメチルオクタデシル基、メチルオクタデシル基またはオクタデシル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の親水性を保持したODS充填剤の製造方法。 請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造される、親水性を保持したODS充填剤。


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